エチオピアの果てまでイッテQ
実践場所 福井県 福井市豊小学校 実践者 河合 理恵子 対 象 小学5年生 実践教科 総合的な学習の時間・道徳・学活(14時間) ねらい ○エチオピアという国の実情を知り、異文化にふれる中で、国による違いやつながりを感 じ、世界へ目を向ける視点を持つ。 ○世界で活躍する日本人の姿を学び、自分にもできる国際協力について考える。 ○エチオピアの人々の生活から、身近な人や物を大切にするとともに感謝し、自分の考え 方や生き方を見つめる。 実践内容 回 プログラム 備 考 1 2・3 4 【先生、エチオピアに行ってくるよ!】 ・国旗から、どこの国かを予想する→南アメリカ?・アフ リカ? ・アフリカのイメージ、エチオピアのイメージを考える。 ・担任に見てきてほしいこと、調べてきてほしいことを考 える。 【みんなの代わりに 見てきたよ 聞いてきたよ 調べて きたよ!】 ~「エチオピアの果てまでイッテQ①」~ ・エチオピアに関するクイズを解きながら、エチオピアを 知る。 ・エチオピアについてのイメージが変わってきたことを感 じる。 ・これからもっと知りたいことや感じたことについて、今 日の学習の振り返りをする。 【エチオピアと日本のお金の価値ってちがうの?】 ~「エチオピアの果てまでイッテQ②」~ ・エチオピアのお金に触れて、日本のお金との違いを感じる。 ・実物のお金から気づいたこと、分かることについて考える。 ・働いている子供がいることや、安いと感じていたものが エチオピアではとても高価なことを知り、お金の価値を 学ぶ。 ・エチオピアの人々が物を大切にしている理由について考 える。 国旗 地図 パワーポイント 布・くし・本 エチオピア正教のシ ンボル 持って行った写真 パワーポイント ブル紙幣・硬貨 コーヒー 〈エチオピアクイズの内容〉 位置・気候や風土・民族・言語や文字・動植物・人々の 顔や髪型・衣服・文化や踊り・町の様子・遊牧民の暮ら し・日本の小学校の様子を見せた時の反応・エチオピア の子供たちとの交流実践内容 5 6・7 【エチオピアの人々はどんな食事をしているの?】 ~「エチオピアの果てまでイッテQ③」~ ・インジェラや飲み物(コーヒーなど)について知る。 ・コーヒーセレモニーについて知り、ドバイのデーツをお やつに、エチオピアのコーヒーを飲む ・国によって様々な食文化があり、そこで暮らす人々の思 いや知恵が詰まっていることについて考える。 【日本の当たり前は、エチオピアの当たり前なの?】 ~「エチオピアの果てまでイッテQ④」~ 《学校編》 ・エチオピアの小学校について知る(校舎や教室、学校に 通う年齢など) ・学校に通いたくても通えない子ども多くいることを知 り、なぜそんなことが起こるのか、学校に通えないとど うなるのかを考える。 ・学校に通っている自分についてふり返る。 《水編》 ・安全な水を飲めない人はどのくらいいるのかを知り、エチ オピアの様々な水を例に挙げ、安全な水はどれか考える。 ・なぜ、安全な水が手に入らないのか。また、安全な水を 飲めないとどうなるのかについて考える。 ・感染症によって、多くの子どもが命を落としていること を学ぶ。 ・遊牧民の人々の水くみ体験の様子を知り、実際に水道か ら水をくんで違いを実感する。 ・自分の日常をふり返り、水の大切さや当たり前だと思っ ている日本の生活について考える。 パワーポイント コーヒー デーツ パワーポイント 20リットルのタンク 8 9 【世界で活躍する日本人はどんな人々なのかな?】 ~「エチオピアの果てまでイッテQ④」~ ・これまでの学習を振り返り、「自分たちにも何かできる ことはないか・・・」と感じ始めていることを確認する。 ・道徳教材「ブータンに日本の農業を」を読む。 ・エチオピアで活躍する日本人を紹介する。 (清水さん・白鳥さん・瀬尾さん・清水隊員・佐戸隊 員・高旗さん) ・青年海外協力隊でセネガルへ行っていた大澤先生に聞き たいことを考える。 【協力隊員としてセネガルへ行っていた大澤先生の話を聞こう!】 ~「エチオピアの果てまでイッテQ⑤」~ ・大澤先生よりセネガルについての話や、体験したことに ついて聞く ①セネガルについての紹介 ②なぜ協力隊に参加したのか ③協力隊を経験して得たこと、感じたこと パワーポイント 光村図書6年 道徳副読本 「ブータンに日本の農 業を」 パワーポイント セネガルの衣装
授業実践報告
実践内容 10 11~ 14 時間外 【エチオピアの人々が笑顔なのはなぜだろう?】 ~「エチオピアの果てまでイッテQ⑥」~ ・エチオピアの人々が楽しいと感じていることと、自分た ちが楽しいと感じていることを比較して、共通点が多い ことに気づく。 ・それに対して、エチオピアの子供や大人が辛いと感じて いることが、私たち日本人からは想像できないことだと いうことを知る。(親がいない・お金がなくてしたいこ とができない・雨が降らなくて辛かった など) ・エチオピアの人々の「夢」や「大切にしているもの」を 知り、エチオピアの人々が笑顔な理由を考える。 (小学校を卒業したい・スポーツ選手になりたい・もっ と家族の生活を豊かにしたい) ・エチオピアの人々が堂々と「今が幸せ」と答える姿から、 エチオピアの人々の強さやたくましさに気づき、自分の 生き方について考える。 【学んだことを4年生に伝えよう!】 ・これまでの学習を通して、5 年 1 組に出来ることは何か を考え、実践する。 ・自分たちが学んだこと、感じたことを4年生に発表する。 (写真による紹介・ペープサート劇・感じたことの発表など) 【エチオピアって こんなところだったよ!!】 ・全校朝礼として、全児童にエチオピアについての紹介を する。 ・これまでのパワーポイントをまとめたものを見せなが ら、文化・食べ物・コーヒー・学校・衣服・家・お金・ エチオピアが抱える問題・幸福感などについて紹介す る。 パワーポイント ペープサート劇 模造紙 クイズ 写真 パワーポイント 成 果 ・エチオピアの習慣や異文化にふれる中で、国による違いやつながりを感じ、世界の広さ を感じ取ることができた。 ・エチオピアについて学ぶことで世界には様々な価値観や文化があることを知り、世界に 興味を持てるようになったことで、広い視野で物事を考えたり、自己と他者を比較して 考えたりできるようになった。 ・エチオピアの人々の生き方を通して、自分の考え方や生き方を見つめることができた。 課 題 ・毎時間、パワーポイントで資料を作って子ども達にエチオピアのことを紹介してきたが、 伝えたいことが多くなってしまい、児童が受け身になる時間が多くなってしまった。そ のため、児童は常に興味を持って学習に参加していたが、子ども達がお互いの感想を交 流したり、考えを深め合ったりする時間を十分に持てなかったことが課題である。 備 考 ・全校朝礼では、「エチオピアの果てまでイッテ Q ①~⑥」の内容をまとめたパワーポイン トを見せながら、25 分程度で文化や食べ物、学校、水、幸福感などについて紹介した。 1年生から6年生まで楽しみながらも真剣に聞いてくれて、それぞれの発達段階に応じて エチオピアという国を感じ取っていたように思う。
1
時限目
▲ ▲ ▲
「先生、エチオピアに行ってくるよ!」
ね ら い
・アフリカのエチオピアという国から、思い浮かぶイメージを考え、担任が夏にエチオピアへ行く ことを知り、興味・関心を持つ。1
子どもの活動の流れ
①国旗を見て、どこの国の国旗なのかを予想する。 ②アフリカのイメージ、エチオピアのイメージを考える。 ③担任に見てきてほしいこと、調べてきてほしいことを考える。2
子どもの活動の成果・反応
◇子ども達は、国旗の色からメキシコ・アルゼンチン・ジャマイカなどの中南米諸国や、南アフリカな どのアフリカ諸国を予想していた。その後、エチオピアであることを知り、アフリカやエチオピアに 対するイメージを考えた。すると「暑い」「肌の黒い人が多く住んでいる」「砂漠が多い」などの感想 があった。また、良いイメージとしては「動物が多い」「広くて自然がいっぱい」などがあったが、 悪いイメージの方が多く、「発展していなくて生活が不便」「貧しい」「戦争をしている」「自由がな い」「水がきたない」などの感想が目立った。その後、担任からエチオピアに行ってくることを聞く と一斉に驚きの声を上げ、不安そうにしていた。「行かない方がいい」や「帰って来られないのでは ないか」と心配する児童も多くいた。しかし、見てきて欲しいこと、調べてきて欲しいことを考えさ せたところ、文化の違うアフリカの生活にとても興味・関心が高く、ワークシートいっぱいに知りた いことを書いていた。最近は海外の暮らしなどを紹介するテレビ番組も多く、児童の多くは漠然とア フリカに対するイメージを持っていることが分かったが、やはり負のイメージが強いことを再認識し た。児童の反応から、自分自身も未知の世界であるエチオピアに行くことが少々不安になったが、子 ども達が行くことのできないエチオピアへ代わりに行き、見たり聞いたりしたことを伝えることがと ても意味のあることに感じた。そして、少しでも良さを伝えたいと思った。3
使用した教材
〈教材1〉 エチオピアの国旗 〈教材2〉 エチオピアの位置を 示した地図 〈教材3〉ワークシート授
業実
践の詳細
授業実践報告
5
時限目
▲ ▲ ▲
「エチオピアの人々はどんな食事をしているの?」
ね ら い
・エチオピアの食文化に触れ、日本との違いを楽しみながら感じ取る。1
子どもの活動の流れ
①エチオピアの人々がインジェラを主食としていることを知る。 ②コーヒーやコーヒーセレモニーについて知る。 ③エチオピアの人々が大好きなコーヒーを飲む。2
子どもの活動の成果・反応
◇ エチオピアへ行く前から、お土産にコーヒーを 買ってくることを約束していたため、この時間を 児童はとても楽しみにしていた。また、前時まで の学習でエチオピアの文化や人々の暮らしについ ても学んできていたため、児童はエチオピアに対 してとても親近感を持っていた。そんなエチオピ アの人々が大好きなコーヒーを飲めるとあって児 童だけでなく、保護者の方にも参加してもらい一 緒にコーヒーセレモニーを行った。おやつにドバ イで購入したデーツを食べながら楽しいひととき を過ごすことができた。遠い遠いエチオピアの味 に、少し緊張しながらも、嬉しそうに味わっていた。また、インジェラに興味津々で「先生の言って たすっぱい味ってどんな味かな?食べてみたい」と多くの児童が感想に書いていた。3
使用した教材
こうやってコーヒーを 飲むのは初めてなん だ。エチオピアのコー ヒーってどんな味がす るのか楽しみだな! コーヒーで乾杯~♫ ちょっぴりエチオピ アに行った気持ちに なってきたよ 〈教材1〉パワーポイント(食事編・飲み物編) 「エチオピアの果てまでイッテQ③」 〈教材3〉ワークシート6・7
時限目
▲ ▲ ▲
「日本の当たり前は、エチオピアの当たり前なの?」
ね ら い
・エチオピアの学校や水に関する問題点を知ることで、日本の当たり前がエチオピアでは当たり前 でないことを感じ、自分の生活を振り返る。1
子どもの活動の流れ
《学校編》 ①エチオピアの小学校について知る。 ②学校に通いたくても通えない子ども多くいることを知り、なぜそんなことが起こるのか考える。 ・学校に通えないとどうなるのかを考え、ワークシートに記入する。 ・考えたことをもとにグループごとに話し合う。 ・学校に通えない様々な理由を知る。 (働かなくてはいけない。近くに学校がない。親の理解がない。など) ③学校に行けないと、どんな困ることが起こるのかを知る。 ( 文字が読めず、名前なども書けない。計算ができなくてだまされることもある。生きる上での知識 が得られないことから命に関わる危険もある。) ④学校に通っている自分についてふり返る。 《水編》 ①安全な水を飲めない人はどのくらいいるのかを知り、エチオピアの様々な水を画像で紹介し、その中 から安全な水はどれか考える。 ②なぜ、安全な水が手に入らないのか。また、安全な水を飲めないとどうなるのかについて考える。 ③感染症によって、多くの子どもが命を落としていることを 学ぶ。 ④遊牧民の人々の水くみ体験の様子を知る。 ⑤水道から 20 リットルのポリタンクで水をくんで水を得る ことの大変さやありがたみを知り、水に対する価値の違い を実感する。 ⑥自分の日常をふり返り、水の大切さや当たり前だと思って いる日本の生活について考える。授業実践報告
2
子どもの活動の成果・反応
◇これまでの、楽しいエチオピアの授業と一変し、本時ではエチオピアが抱える様々な問題について学 習した。事前に「次の授業は、先生が一番みんなに考えて欲しいし知って欲しい事だよ。」と伝えて いたこともあり、児童一人ひとりが、エチオピアの抱える教育や水問題について真剣に向き合いなが ら、学習に参加していた。自分が日本に生まれたこと、学校に通えること、安全な水を飲めて命の心 配なく生活ができること、すべての当たり前が世界では当たり前ではないことを実感した。そして、 「今、ここに存在している事へのありがたさ」や「自分にも何かできることはないだろうか」と、そ れぞれが自分の言葉で感想を伝え合った。 また、エチオピアの人々に対してただ可哀想だという感想ではなく、一生懸命生きるエチオピアの 人々の逞しさに触れて敬意を持ったり、自分のこれまでの行いを振り返ったりする児童が多かった。3
使用した教材
〈教材1〉 パワーポイント(学校編・水編) 〈教材2〉ワークシート 「エチオピアの果てまでイッテQ③」 〈教材 3〉20リットルのポリタンク 《学校編》《水編》
10
時限目
▲ ▲ ▲
「エチオピアの人々はどんな食事をしているの?」
ね ら い
・大変な状況の中、エチオピアの人々が笑顔で過ごしている理由を考え、夢を持って前向きに生き る姿から、自己の生き方について考える。1
子どもの活動の流れ
①これまでの学習をパワーポイントで振り返る。 ②エチオピアの人々が楽しいと感じていることから共通点を見つける。 ③それに対して、エチオピアの子供や大人が辛いと感じていることが、私たち日本人からは想像できな いことだということを知る。 ④エチオピアの人々の「夢」や「大切にしているもの」を知り、エチオピアの人々が笑顔な理由を考える。 ⑤エチオピアの人々が堂々と「今が幸せ」と答える姿から、自分の生き方について考える。2
子どもの活動の成果・反応
◇これまでの学習から児童は、エチオピアの人々の優しさや強さを知りエチオピアの人々に対する思い が少しずつ深まっていた。そこで本時では、エチオピアの人々が楽しいと感じていること、困ってい ること、さらに人々の願いや夢に触れながら人々が常に笑顔な理由について考え、エチオピアの人々 の生きる力や幸福感についてつなげることができた。児童は自分の心に問いかけながら、これまでの 生き方を振り返ったり、これからの生き方について考えたりすることができた。授業実践報告
3
使用した教材
〈教材1〉 パワーポイント(学校編・水編) 〈教材2〉ワークシート 「エチオピアの果てまでイッテQ⑥」 《学校編》11 14
時限目
▲ ▲ ▲
「学んだことを4年生に伝えよう!」
ね ら い
・エチオピアの人々のために自分たちができることを考えながら、学んできたことを発表会を通し て下学年に伝える。1
子どもの活動の流れ
①これまで学んだことを様々な方法でまとめる。 ②エチオピアについて学んだことや感じたことを4年生に伝える。2
子どもの活動の成果・反応
◇どの児童もこれまで学んできことを少しでも 4 年生に 分かりやすく伝えようと、ペープサート劇や、模造紙 に感想を書き出して紹介するなど、精一杯取り組んで いた。また、話を聞いた 4 年生からも多くの質問が出 たが、これまでの学習を思い出しながら、一つ一つ丁 寧に説明をしていた。全体を通して
私は今回の海外研修前には、「行って感じたことをそのまま伝えればよいのだろう。」と、安易に考え ていた。しかし、帰国後に今回の実践授業をするにあたって、伝えることも大切だが児童に考えさせた いこともたくさんあることに気づいた。そして、せっかく授業実践を行うからには、多少時間を掛けて も良いのではないかと考えるようになった。14時間という長い単元であったが、どの学習テーマであっ ても、児童は毎時間のエチオピア授業をとても楽しみにしており、授業を通して考えることにより、自た、私自身が強く感じた「エチオピアで暮らす人々の力強さ・前向きさ」も子ども達なりに理解し、感 じて取っていたと思う。また、出国前に私も含め子ども達もエチオピアに対して危険・貧困・不便な ど負のイメージを多く持っていたが、それはエチオピアやアフリカの切り取られた一部分しか見てこ なかったのであり、今回の実践を通して、偏ったイメージを持ちすぎていたことに気づかされた。今回 の実践授業は「エチオピアの果てまでイッテ Q」とい う単元名で毎時間多くの写真を見ながらクイズ形式で進 めていった。また、コーヒーを飲む体験や持ち帰った教 材を使い、五感で感じ取ることを重視してきた。日本で 育ち、日本に暮らす児童が、少しでも遠い異国のエチオ ピアへ行った気持ちになり、世界の広さを感じたり国際 協力について考えたりする機会を持たせるには ・・・ と思 い、この形を取って進めていったが、次第にエチオピア が大好きになり、エチオピアの人々を家族のように感じ ていく子ども達の姿を見て、今回の海外研修に参加し、 この実践授業を行って本当に良かった。と思った。ねら いとしていたことが全て達成できたとは言えないかもし れないが、今回のエチオピアの学習が子ども達にとって 何か一つでも意味のあるものになり、子ども達のこれか らの人生の糧となっていることを願っている。