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Vascularization for developing three-dimensional cardiac tissues using cell sheets and explanted tissues

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(1)

細胞シート及び生体由来組織を用いた

立体心筋組織作製のための血管網付与技術の開発

Vascularization for developing three-dimensional cardiac tissues using cell sheets and explanted tissues

2016年2月

竹内 涼平

Ryohei TAKEUCHI

(2)

細胞シート及び生体由来組織を用いた

立体心筋組織作製のための血管網付与技術の開発

Vascularization for developing three-dimensional cardiac tissues using cell sheets and explanted tissues

2016年2月

早稲田大学大学院 先進理工学研究科

生命理工学専攻 医用機械工学研究

竹内 涼平

Ryohei TAKEUCHI

(3)

第 1 章 序章

1.1 本研究の目的 ... 2

1.2 本研究の背景 ... 2

1.2.1 慢性心不全と治療方法 ... 2

1.2.2 新たな治療法としての再生医療の現状 ... 6

1.3 本研究の位置付け ... 19

1.4 医学的・社会的観点から見た本研究の意義 ... 21

1.5 本論文の構成 ... 21

第 2 章 細胞シート移植後の細胞生存及び血管新生評価

2.1 背景と目的 ... 24

2.2 方法 ... 24

2.1.1 心筋細胞シートの作製 ... 25

2.1.2 心筋細胞懸濁液の作製 ... 25

2.1.3 心筋細胞シート及び心筋細胞懸濁液のラットへの移植 ... 25

2.1.4 移植細胞のin vivoイメージングシステムを用いた生存評価 ... 26

2.1.5 移植細胞のTUNEL染色を用いた細胞死評価 ... 26

2.1.6 移植細胞シートの血管のマクロ形態的評価 ... 26

2.1.7 移植細胞シートの血管の組織学的評価 ... 26

2.1.8 移植細胞シートの血管の密度及び成熟度の定量評価 ... 27

2.1.9 移植細胞シートの血管のミクロ形態的及び透過性評価 ... 27

2.1.10 移植細胞シートの血管の血管形成と血流開始のタイミング評価 .... 27

2.1.11 移植細胞シートの血管新生因子の発現評価 ... 27

2.1.12 データ解析 ... 28

2.3 結果 ... 28

2.3.1 移植細胞の細胞生存及び細胞死の定量評価 ... 28

2.3.2 細胞シート内の血管の形態的及び透過性評価 ... 30

2.3.3 細胞シート内の血管密度と成熟度の組織学的評価 ... 32

2.3.4 細胞シート内の血管形成と血流開始のタイミング評価 ... 33

2.3.5 細胞シート内の血管新生因子の発現評価 ... 33

2.4 考察 ... 36

2.4.1 細胞シート移植後の高い生存能 ... 36

2.4.2 細胞シート移植後の高い血管新生能 ... 36

2.4.3 細胞生存評価における移植後の生体発光ピーク ... 38

2.5 結論 ... 39

(4)

第 3 章 細胞シート及び生体組織を用いた in vitro での組織作製

3.1 背景と目的 ... 41

3.2 方法 ... 41

3.2.1 脂肪血管床の作製 ... 41

3.2.2 脂肪血管床の組織学的評価 ... 42

3.2.3 脂肪血管床の血管網のμCT評価 ... 42

3.2.4 心筋細胞シートの作製 ... 42

3.2.5 脂肪血管床を用いた心筋細胞シートの灌流培養 ... 43

3.2.6 心筋細胞シート灌流培養後の組織学的評価 ... 44

3.3 結果 ... 44

3.3.1 脂肪血管床の作製 ... 44

3.3.2 脂肪血管床の血管網のμCT評価 ... 44

3.3.3 脂肪血管床を用いた心筋細胞シートの灌流評価 ... 46

3.4 考察 ... 48

3.4.1 脂肪血管床の血管網増加 ... 48

3.4.2 脂肪血管床上での細胞シート灌流培養による血管網付与 ... 48

3.4.3 灌流培養時の圧力変化 ... 49

3.4.4 脂肪血管床からの灌流液の漏れ ... 49

3.5 結論 ... 51

第 4 章 細胞シート及び脱細胞生体組織を用いた in vitro での組織 作製

4.1 背景と目的 ... 53

4.2 腸管組織での細胞シート灌流培養検討 ... 56

4.2.1 目的 ... 56

4.2.2 方法 ... 57

4.2.3 結果 ... 59

4.2.4 考察 ... 61

4.2.5 結論 ... 61

4.3 脱細胞腸管組織での細胞シート灌流培養検討 ... 61

4.3.1 目的 ... 61

4.3.2 方法 ... 61

4.3.3 結果 ... 65

4.3.4 考察 ... 71

(5)

4.3.5 結論 ... 74

第 5 章 総論

5.1 研究の成果 ... 76 5.2 今後の展望 ... 80 5.3 社会的貢献 ... 80

参考文献

謝辞

研究業績

(6)

第 1 章 序章

1.1 本研究の目的 ... 2

1.2 本研究の背景 ... 2

1.2.1 慢性心不全と治療方法 ... 2

1.2.2 新たな治療法としての再生医療の現状 ... 6

1.3 本研究の位置付け ... 19

1.4 医学的・社会的観点から見た本研究の意義 ... 21

1.5 本論文の構成 ... 21

(7)

1.1 本研究の目的

本研究では、移植可能な動静脈付きの立体心筋組織を作製するために、in vitro で細胞シートに血管網を付与する技術の開発を目的とした。本章では、重症心不 全と治療方法、新たな治療法として期待される再生医療について本研究の背景と してまとめ、社会及び医療に対して本研究に期待されることについて述べた。最 後に本論文の構成を図示した。

1.2 本研究の背景

1.2.1 慢性心不全と治療方法

慢性心不全とは、“慢性の心筋障害により心臓のポンプ機能が低下し、末梢主 要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を絶対的にまた相対的に拍出できない 状態であり、肺、体静脈系または両系にうっ血を来たし日常生活に障害を生じた 病態”と定義される[1]。2015年度の心不全入院患者数は238,840人、心不全入院 中死亡数は18,636 人、慢性心不全入院患者数は104,694 人と報告されている[2]。 慢性心不全の5年生存率は、重症度などによるが平均で50-60%と言われている[3]。

心不全の治療は薬物により行われるが、薬物での維持・改善が見込めなくなっ た重症心不全に対しては、心臓移植が標準的な治療である。心臓移植は1967年に 南アフリカで世界で初めて行われた[4]。当初は、拒絶反応のために成績が良くな かったが、現在では拒絶反応の診断法と拒絶反応を抑える免疫抑制剤の進歩で成 績が良くなってきている[5]。1982年1月~2013年6月までの世界での心臓移植 後の生存率曲線はFig. 1.1 に示すとおりであり、生存期間中央値は11 年と長く、

心臓移植は重症心不全に対する最も有効な治療法である[6]。

しかし、重症心不全に対する心臓移植の症例数は世界的にも限定的であり、移植 希望者に対するドナーの不足が大きな問題となっている。Fig. 1.2に示すように、ア メリカでは1990年頃より年間2,000~2,500例で横ばい、ヨーロッパでは1990年頃は

年間2,000例、2000年頃より年間1,000例程度で横這いとなっている[6]。日本では日

本移植協会から心臓移植に関する統計情報が公開されている[7]。移植症例数は、

2014年12月31日までの累計で222例と少なく、2010年の脳死改正法の施行で増加し たものの年間30例前後である(Fig. 1.3)。この心臓移植件数の増加により、一旦は待 機患者数が170人くらいに減り、横這いとなったように思われたが、新規登録患者 の急増により待機患者数は2011年後半から再び増加し、2014年末現在の待機患者数 は385人である。心臓移植を希望する患者はドナー不足により待機することを余儀 なくされており、心臓移植を受けた患者の待機日数は平均981日(29~3,838日)と 長い。また、心臓移植を必要とする患者の予後は悪く、2014年12月31日までの登録

(8)

待機患者939人のうち待機中に248人が亡くなっている。このように、心臓移植は重 症心不全の治療におけるゴールドスタンダードであるものの、多くの患者は限られ た臓器提供者数及び臓器拒絶により手術をおけることができないのが現状である。

Adult and Pediatric Heart Transplants Kaplan-Meier Survival

(Transplants: January 1982 – June 2013)

N = 112,521

N at risk at 30 years = 16

JHLT. 2014 Oct; 33(10): 996-1008

2015

JHLT. 2015 Oct; 34(10): 1244-1254

Fig. 1.1 Adult and pediatric heart transplants Kaplan-Meier Survival in world[6]. Median survival is 11 years in 112,521 transplants.

(9)

Adult and Pediatric Heart Transplants Number of Transplants by Year and Location

NOTE: This figure includes only the heart transplants that are reported to the ISHLT Transplant Registry. As such, the presented data may not mirror the changes in the number of heart transplants performed worldwide.

JHLT. 2014 Oct; 33(10): 996-1008

2015

JHLT. 2015 Oct; 34(10): 1244-1254

Fig. 1.2 Adult and pediatric heart transplants number of transplants by year and location[6].

The number of transplants per year in North America hovered around 2,000 to 2,500 from 1990, and that in Europe hovered around 1000 from 2000.

Fig. 1.3 Adult and pediatric heart transplants number of transplants by year in Japan[7]. Even though a change in the law made the number of transplants per year in Japan increase to around 30, it is still much lower than the number of that in North America and Europe.

(10)

この心臓移植のドナー不足の問題に対して、人工心臓を用いて心機能を補う治 療が行われている。心不全ガイドラインでは、”心臓移植待機中に心不全が悪化し、

最大限の内科的治療を行っても改善がみられなくなった時点で補助人工心臓は施 行する”とされている[1]。

補助人工心臓は1963年に世界で初めて心臓移植へのブリッジとして移植され、

体外設置型から植込み型へと開発が進められていった[5]。体外設置型は血液ポン プと駆動装置が体外に設置されたものであり、国立循環病研究センターにより開 発された補助人工心臓(ニプロ.東洋紡製)が多く用いられた。しかし、装着後の 管理のため入院が必要であったため、自宅管理できる補助人工心臓の開発が1960 年代に米国で進められた。それにより1980年代に拍動流植込み型が臨床試験され、

1990年初頭に在宅使用できる2種 (Novacor、HeartMate VE) が販売され始めた。

それ以降は、小型化と耐久性の向上が進められ、1990年代に小型の非拍動流植込 み型が欧米で臨床応用された。日本では長らく体外設置型のみしか使用できなか ったが、産官学の協力体制のもと最新の非拍動流植込み型の使用が認められた。

日本で開発されたEVAHEARTおよびDuraHeartが2011年に、米国で開発された HeartMateIIおよびJarvik 2000がそれぞれ2013年および2014年に臨床使用が認め

られた。Fig. 1.4に拍動流体外設置型、非拍動流(連続流)植込み型の補助人工心

臓の製品を示す。

補助人工心臓の適用は心臓移植へのブリッジが基本であったが、小型で安全で 長期使用可能な植込み型補助人工心臓の登場により、心臓移植の適応とならない 重症心不全患者に対して最終的治療 (Desitination Therapy) として使用されるケ ースが欧米で飛躍的に増加している。INTERMACSによると、現在ではDestination

Therapyが40%程度を占めるに至っている[8]。日本では、補助人工心臓の適用範

囲は心臓移植へのブッリジに限定され、心臓移植の適応でない患者には使用でき ないため、Destination Therapyへの適用拡大を検討されているが、まだ実現してい ない。

このように、薬物による治療法では対応できない重症心不全患者のうち、心臓 移植や補助人工心臓の適応とならない患者及び移植待機状態の重症心不全患者に 対しては、現在では治療法が無いため、ヒトの細胞や組織を用いた新しい治療方 法である再生医療に期待が集まっている。

(11)

Fig. 1.4 Left ventricular assist devices. They have been downsized from pulsatile flow extracorporeal installation type to continuous flow implantable type[5].

1.2.2 新たな治療法としての再生医療の現状

これまで、重症な心不全患者に対しては、心臓移植またはブリッジとして適用 される補助人工心臓しか治療法がなかった。しかし、心臓移植はドナー不足の問 題、補助人工心臓は移植後の感染管理、血栓、長期耐久性に課題がある。また、

心臓移植や補助人工心臓の適応とならない患者も多い。そうした課題に対して、

細胞や組織を用いて心機能を再生する新しい治療法として再生医療が期待されて いる[9], [10]。

細胞を使った再生医療は、細胞の単離、プロセッシング、細胞の調製、移植の 4つのプロセスで行われる (Fig. 1.5)。細胞は、患者自身の細胞(自家細胞)、患 者以外の同種細胞(他家細胞)がある。プロセッシングでは、目的の細胞の純化・

濃縮、培養、遺伝子操作等がある。細胞調製では、細胞懸濁液、材料と細胞の調 製、機能化等がある。移植形態は、細胞懸濁液、ハイドロゲルと細胞の混合物、

(12)

スフェロイド、組織工学で作製された移植片、細胞シート等がある。

Fig. 1.5 Cell-delivery concepts for tissue repair either intraoperative or extraoperative, currently applied in pre- and clinical trials[11]. Autologous or allogenic cells used for cell therapy are isolated from a patient or a donor, respectively. The isolated cells are procssed by purification or

concentration and transplanted to the patient. In other ways, the isolated cells are processed by cell expansion or genetic modification, and then the cells are prepared as single cell preparation, biomaterial/cell preparations, or functional tissue preparations. The prepared cells are delivered to the target site of the patient through invasive way or minimal invasive way.

1) 細胞懸濁液

細胞移植による心不全治療は、1998年に骨格筋芽細胞による臨床での治療が初め てレポートされた後、非臨床及び臨床研究において、造血幹細胞、心筋幹細胞等の 様々な細胞を用いて心筋へ直接細胞を注射する方法により行われた[12]–[14]。既に、

胚性幹細胞(ES細胞)または人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の心筋細胞を用い て、げっ歯類の損傷心筋を改善したという報告もされている[15], [16]。Table 1.1に 心不全における細胞治療の動物実験の結果、Table 1.2に心不全における細胞治療の

(13)

臨床試験の結果を示す。細胞は、骨格筋芽細胞、骨髄単核球、間葉系幹細胞または 心筋幹細胞が使用され、投与は心筋内または冠動脈内への注射で行われている。

(14)

Table 1.1 Animal studies of stem cell therapy in heart failure[17].

(15)

Table 1.1 Continued.

(16)

Table 1.2 Clinical trials of stem cell therapy in heart failure[17].

(17)

Table 1.2 Continued.

(18)

Table 1.2 Continued.

(19)

Table 1.2 Continued.

細胞注射による心機能改善は、移植された細胞が心筋細胞に分化することや機 械的なサポートによるものを期待されていたが、そのような役割を果たす細胞は 極めて少なく別の作用機序であるといわれている。現在では、移植された細胞か ら産生される因子によるパラクライン効果が主と考えられ、パラクラインにより、

内在性の心筋幹細胞の活性化、血管新生の誘導、アポトーシス抑制、心肥大抑制、

ECMの再構築等が誘導されるとされている[17]。

細胞懸濁液は開胸して心臓に注射、経皮的に冠動脈内または心室内に注射される が、効果を限定しうるサイズ、形状、場所等の因子を調節するのが難しく、患部に 注射された移植細胞が生着しないという課題がある。生着しない理由は、細胞注射 時のロス、移植部位の虚血、Anoikisによるアポトーシス等がある[17]。また、生着 の障害となっているのは、血管ネットワークによる継続的かつ十分な栄養供給と老 廃物の除去する能力の低さのためと言われている[18]。血管ネットワークはすべて の組織中を正確に張り巡らされ、臓器の正常な機能をサポートする役割を果たして いる。このように、細胞注射は生着しないために効果が限定的であるが、投与量が 多いと効果が高まるとの報告がある。そのため、治療効果を上げるため、細胞のプ レコンディショニングや足場と移植する方法の研究などが多く行われている。

(20)

2) 組織工学

細胞懸濁液移植の生着の課題を解決する一つの手段として、組織工学を用いた 手法がある。1999年にランガーとバカンティにより細胞や材料から工学的手法を 用いて生体組織を構築する組織工学の概念が提唱された。組織工学により、機能 を有し、拒絶反応の無い組織を作製できる可能性があり、それにより患者 QOL を大きく改善することが期待されている。組織工学のゴールは臓器を丸ごと作る ことであり皮膚や軟骨は製品化され、シンプルな構造の血管、膀胱、気管支、角 膜は多くの臨床研究が行われ、有望な結果が得られている。

心臓においては、ハイドロゲルやマトリクスといった足場材料を使ったアプロ ーチ、細胞懸濁液、細胞シートやスフェロイドといった足場材料を使わないアプ ローチが研究されている (Fig. 1.6)。ハイドロゲルのアプローチは1980年代より 研究されている。力学的特性は高くないが、簡易的にできる特徴があり、Christman らは細胞懸濁液を心臓へ注入し、in situでゲル化させる方法を用いて動物実験で 良い成果を収めている[17]。マトリクスのアプローチは予め成型した多孔質のマ トリクスに細胞を播種する方法であり、骨や軟骨でこれまで多く用いられてきた。

三次元で自由に形状を設計できるのが一番のメリットである[17]。Zimmerman ら は、コラーゲンゲルと心筋細胞を組み合わせ、収縮する心筋組織の作製に成功し ている[19], [20]。

足場材料としては、人工的なものと生物学的なものがある。人工的な足場材料 はアルギン酸、ポリグリコール酸、ポリL乳酸/グリコール酸等があり、組織工 学の研究を主に牽引してきた。生物学的な足場材料は、血管や動脈の細胞外マト

リクス (ECM) で自然に存在するコラーゲン、フィブリン等があり、近年多く使

われるようになってきた。脱細胞処理により組織の細胞成分を除去し、ECM、生 物学的成分、構造は保持することで、生物学的な足場材料を得ることができる[21]。 脱細胞組織は非臨床動物研究やヒト臨床研究において様々な適用で使われている [22]。

これら足場材料を用いた組織工学の技術に対して、足場材料を用いない細胞シ ートの技術がある[23]。細胞シートは培養皿の中でコンフルエント状態で培養さ れ、培養皿から回収される単層の細胞集合体である。培養中に細胞同士の接着お よび ECM の形成が行われる。そして、細胞はタンパクの分解酵素を使わずに回 収される。この技術は東京女子医科大学の岡野らにより開発された。ポリイソプ ロピルアクリルアミドが培養皿に共有結合されており、温度を32℃以下に降下さ せることで、ポリイソプロピルアクリルアミドが物理的に構造を変化し、培養表 面が親水化することで細胞が脱着することを利用している。このように、トリプ シン等の酵素を使わずに細胞を剥離できるため、接着タンパク質を保持した状態 で細胞をシート状に回収でき、移植後の細胞の生着が良いという特徴がある。現 在までに、角膜、心臓、皮膚、軟骨、歯根膜、食道、糖尿病など、多くの臓器に

(21)

おいて臨床応用がされている[24]。

心臓領域においては、温度応答性培養皿で回収した心筋細胞シートを用いた心 筋組織の作製に成功している[25]。酵素処理を使わずに得られるため、細胞シー トは細胞同士の結合と接着タンパクを維持している。これらの接着タンパクがあ ることで、細胞シート同士を積層化して3次元組織を構築することができる。そ れはギャップ結合、伸張したサルコメア構造、in vitro で拍動することができる。

加えて、皮下組織に移植されると、よく構成された血管の形成、ホストとの接続、

長期生存がin vivoで確かめられている[25]–[27]。さらに、心筋細胞シートを損傷 した心臓に移植することで、心筋梗塞の心臓の機能を改善することが報告されて

いる[28], [29]。最近では、細胞シートのインテグリンによる接着によりアポトー

シスを減らすことが報告されている[30]。また、骨格筋芽細胞シートを用いた臨 床試験が日本で行われ、2015年9月に世界で初めて心不全治療用の再生医療等製 品(ハートシート、テルモ株式会社)として承認された。

これらはパラクライン効果を高めるために、細胞の生体内での生着を高めるもの である。悪くなった組織・臓器を代替するためにはより大きな組織が必要である。

Fig. 1.6 Cell-delivery formats can be either scaffold-based or scaffold-free[11]. Cells which are delivered with a scaffold can be grown on a matrix, which can be made of biological or polymeric biomaterials, or embedded within a hydrogel such as fibrin, collagen or alginate. Scaffold-free cells delivery formats are single cell injections, cell sheet technology and microtissue technology.

3) 大きな組織構築に関する研究の現状

組織工学で、製品化されてきた組織は血管を必要としない薄い組織であるが、

現在は設計された血管を有する組織を構築することに注目した研究が盛んに行わ れている。毛細血管はすべての組織中を正確に張り巡らされ、臓器の正常な機能 をサポートしている。厚さが1 mmを超える組織は、毛細血管により酸素や栄養 素を吸収するため血管が必要である。

(22)

ヒトの心壁を補填するのに必要な厚みはおよそ10 mmであるが、より厚い組織を 作るには課題がある。清水らは1~5枚積層した細胞シートを無胸腺ラット皮下に移 植した[31]。移植後4週間で移植部位を摘出しAzan染色して厚みを計測した。厚みは 1枚:25±6 μm、2枚:44±6 μm、3枚:78±14 μm、4枚:80±16 μm、5枚:83±5 μmで

あった (Fig. 1.7)。この結果から、細胞シート3枚分までは比例して厚みが増してい

ったが、4枚、5枚分ではおよそ80 μmで頭打ちとなることが明らかとなった。これ は栄養の拡散が行き渡らず移植した細胞の中心部でネクローシスを起こしたため と考えられる。そこで、細胞シート3枚を2日おきに繰り返し移植する方法が行われ、

合計10回行った結果、約1 mmの心筋組織がラット皮下に構築された (Fig. 1.8)。移 植後に生着する限界である細胞シート3枚を移植し、次の移植までの2日の間に血管 新生が起こり、次に移植された3枚を生着させることができたと考えられる。生体 において厚い組織を構築できることを示す結果である。しかし、臨床に適用する場 合、患者自身の皮膚を繰り返し切開することは、侵襲性が高く現実的な手法ではな い。そこで、生体内ではなく、生体外で組織を構築する技術開発が必要となる。

Fig. 1.7 Mass transport limitations of transplanted tissues due to acute ischemia[31]. Increasing numbers (1–5) of cardiomyocyte sheets were transplanted into subcutaneous tissue and fixed at 4 wk. Azan staining shows viable laminar myocardial tissues for the cases of 1 (A), 2 (B), and 3 layer (C) constructs. Necrotic areas including disordered vascular networks (black arrowheads) and connective tissues are observed in the 4 (D) and 5 layer (E) cases. Bidirectional arrows indicate viable cell sheet layers. Orange-stained red blood cells indicate the presence of vasculature. F) Graph shows that final tissue thickness of transplanted grafts increased linearly up to 3 layer constructs, and plateaus in 4 and 5 layer constructs (25±6, 44±6, 78±14, 80±16, and

(23)

83±5 μm thicknesses, respectively). Data are mean ± SD (n=4).

Fig. 1.8 Thick cell-dense tissues engineered using 10-times polysurgery[31]. Azan staining shows that by using 10-times polysurgery with 1 day intervals, multilayer cell-dense myocardium with well-organized microvessels can be created. Bidirectional arrow indicates viable myocardial cell sheet layers. The measured thickness of the grafts was 0.84 ± 0.16 mm. Data are mean

± SD (n=3).

4) 生体外での大きな組織構築に関する研究の現状

これまで、清水らは筋肉組織または流路付きコラーゲンを血管床として、バイオ リアクターを用いた灌流培養を行い、生体外での心筋組織構築に成功している。関 根らは無胸腺ラットの体内で作製した筋肉の血管床を生体外に取り出し、チャンバ ーにセットし、動脈と静脈を灌流システムにつなぎ、血管床の上に心筋細胞シート を移植した。灌流培養の結果、血管が細胞シート内に入り込み、繰り返し移植によ り、血管網を有する厚い組織を生み出した (Fig. 1.9 A)[32]。坂口らは、灌流システ ムのつながれたマイクロ流路を有するコラーゲンゲルの上に心筋細胞シートを移

(24)

植した[33]。灌流培養の結果、血管が細胞シート内に入り込み、繰り返し移植によ り、血管網を有する厚い組織を生み出した (Fig. 1.9 B)。

いずれも厚い組織の作製に成功しており、生体内で作製する場合に比べて大幅に 侵襲度が低くなっている。しかし、臨床使用に向けては、①自家筋肉を用いる場合 は摘出による侵襲、②他家筋肉を用いる場合は免疫拒絶反応、③コラーゲンゲルを 用いる場合は移植するための動静脈の欠落の課題がある。

Fig. 1.9 In vitro vascularization of 3-dimensional engineered tissues[34]. A, In vitro native vascular bed approach[32]. three-layer cardiac cell sheets cocultured with endothelial cells were placed on top of a resected vascular bed positioned in a bioreactor. The cocultured endothelial cells formed new blood vessels and connected with the blood vessels that originated from the vascular bed. The in vitro vascularized cardiac tissues beat and could be anastomosed to the recipient’s circulation. B, Perfusion bioreactor for cell sheet technology[33]. Triple-layer cell sheets were incubated on a cell-free collagen gel base with perfused microchannels (Ø=300 μm). The culture medium could diffuse into the collagen gel and provide oxygen and nutrients to the cell sheet. Endothelial cells in the cell sheets migrated into the collagen gel and finally connected with the microchannels.

1.3 本研究の位置付け

心臓の再生医療の現状をTable 1.3に示す。細胞懸濁液及び細胞シートといったパ ラクライン効果による治療は臨床応用されているが、機械的に心臓を補助するよう な組織や臓器の作製はまだ研究段階である。機械的補助にはより多くの細胞を移植 して機能させる必要があるため、細胞を維持するための血管網の構築が鍵である。

そこで、Fig. 1.10に示すように、機械的な機能を有する立体心筋組織の構築を最終

的な目標として、本研究では移植可能な動静脈付きの立体心筋組織の作製のための、

細胞シート及び生体由来組織を用いた血管網付与技術の構築を目的とした。

A B

(25)

Table 1.3 Regenerative medicine in heart. Many cells and vasculature are necessary to engineer heart tissues or organs which function mechanically to pump blood. Ratio means that the number of cells in engineered constructs over the approximately estimated number of cells in a left ventricle (6.0×1010). Doctoral thesis is vascularization for developing tissues or organs, shown in red color.

Fig. 1.10 Development scheme of transplantable three dimensional cardiac tissue using cell sheets and explanted tissues.Cell sheets are layered on vasculature-rich explanted tissues and vascularized by perfusion-culture. Repeating the layering makes the tissue thick and function mechanically enough to support heart function. The thick layered tissue is transplanted to a damaged heart by vascular anastomosis. A red box shows doctoral thesis that is vascularization for developing three-dimensional cardiac tissues using cell sheets and explanted tissues.

(26)

1.4 医学的・社会的観点から見た本研究の意義

本研究の医学的な意義は下記の通りである。本研究により組織に血管を付与す る技術が構築でき、移植可能な立体心筋組織が実現すれば、重症心不全治療の新 たな選択肢の一つになる。これまで移植ドナー不足や心臓移植の適用外のために、

治療を受けられなかった重症心不全患者の QOL を向上させることができる。ま た、心臓移植はドナーがいつ出るかわからず長い期間待機することを余儀なくさ れるが、立体心筋組織を計画的に作製することで、予定を組んだ移植が可能とな る。さらに、移植待機期間を減少させることができれば、医療費の抑制につなが り、医療経済性が良い。加えて、本技術は血管を必要とする全ての組織及び臓器 に展開が可能と考えられ、機能を補助または代替が必要な様々な組織及び臓器の 治療に貢献できると考えられる。治療用以外の用途としては、病気の解明のため の疾病モデルとしての活用、新薬候補のスクリーニングとして薬効試験や毒性試 験等の非臨床試験への活用等、広く医療の発展に貢献する可能性がある。

本研究の社会的な意義は下記の通りである。本研究により組織に血管を付与す る技術が構築でき、組織臓器作製システムを確立すれば、再生医療のビジネスの 発展に寄与する。心臓だけでなく他の移植用代替臓器の作製、病気解明の研究、

薬の開発等への展開が考えられ、市場の幅が広い。大量生産が実現すれば、組織 臓器作製システムだけでなく、試薬、細胞のビジネスが拡大することが見込まれ る。このようにして、三次元組織構築に必要な要素技術である、組織に血管を付 与する技術を開発することで、再生医療ビジネスを通して経済を発展させていく ことができる。

1.5 本論文の構成

本論文の構成をFig. 1.11に示した。2章では、立体心筋組織作製に用いる細胞 シートについて、生存及び血管新生する能力を生体内にて評価した。 3章及び4 章では、移植可能な血管付き立体心筋組織の構築において、細胞シートに血管網 を付与するため、動静脈付きの生体組織を血管床として活用できるかを評価した。

3 章では、筋肉に比べて低侵襲に摘出可能である脂肪組織を用いて、生体内での 脂肪血管床の作製、細胞シートへの血管網付与の検討を行った。4章では、3章で 明らかとなった課題に対して、細胞シートを移植する表面近傍に血管が多く存在 する腸管を用いて、腸管血管床の作製、腸管血管床の脱細胞、細胞シートへの血 管網付与を検討した。5章は総論として、研究成果と今後の展望を示した。

(27)

Fig. 1.11 Outline of doctoral thesis.

第3章 細胞シート及び生体組織を用いた in vitroでの組織作製

・脂肪組織での細胞シート灌流培養検討

第4章 細胞シート及び脱細胞生体組織を用いた in vitroでの組織作製

・腸管組織での細胞シート灌流培養検討

・腸管組織の脱細胞処理検討

・脱細胞腸管組織での細胞シート灌流培養検討 第1 章 序論

・本研究の目的

・本研究の背景

・社会的・医学的観点から見た意義

第5章 総論

・研究の成果

・今後の展望 第2章 細胞シート移植後の細胞生存 及び血管新生評価

・細胞シートのin vivo生着評価

・細胞シートの血管新生評価

(28)

第 2 章 細胞シート移植後の細胞生存及び 血管新生評価

2.1 背景と目的 ... 24 2.2 方法 ... 24 2.1.1 心筋細胞シートの作製 ... 25 2.1.2 心筋細胞懸濁液の作製 ... 25 2.1.3 心筋細胞シート及び心筋細胞懸濁液のラットへの移植 ... 25 2.1.4 移植細胞のin vivoイメージングシステムを用いた生存評価 ... 26 2.1.5 移植細胞のTUNEL染色を用いた細胞死評価 ... 26 2.1.6 移植細胞シートの血管のマクロ形態的評価 ... 26 2.1.7 移植細胞シートの血管の組織学的評価 ... 26 2.1.8 移植細胞シートの血管の密度及び成熟度の定量評価 ... 27 2.1.9 移植細胞シートの血管のミクロ形態的及び透過性評価 ... 27

2.1.10 移植細胞シートの血管の血管形成と血流開始のタイミング評価 .... 27

2.1.11 移植細胞シートの血管新生因子の発現評価 ... 27 2.1.12 データ解析 ... 28 2.3 結果 ... 28 2.3.1 移植細胞の細胞生存及び細胞死の定量評価 ... 28 2.3.2 細胞シート内の血管の形態的及び透過性評価 ... 30 2.3.3 細胞シート内の血管密度と成熟度の組織学的評価 ... 32 2.3.4 細胞シート内の血管形成と血流開始のタイミング評価 ... 33 2.3.5 細胞シート内の血管新生因子の発現評価 ... 33 2.4 考察 ... 36 2.4.1 細胞シート移植後の高い生存能 ... 36 2.4.2 細胞シート移植後の高い血管新生能 ... 36 2.4.3 細胞生存評価における移植後の生体発光ピーク ... 38 2.5 結論 ... 39

(29)

2.1 背景と目的

In vitroで三次元組織を作るのには、細胞シートと灌流できる血管床が必要であ

る。細胞シートにより心筋及び血管を形成する細胞を供給し、灌流された血管床 の上に繰り返し移植することで厚い三次元組織を作製する。本章では、三次元心 筋組織作製に用いる細胞シートについて、生存及び血管新生する能力をin vivoに て評価した。Fig. 2.1に示すように、無胸腺ラット背部皮下組織に移植した新生仔 ラット心筋細胞シートに対して、①生体イメージング及び組織学を用いて移植後 の細胞シートの生存評価、②生体イメージング、組織学及び分子生物学を用いて 移植後の細胞シートの血管新生評価について検討を行った。

Fig. 2.1 Overview of studies in this chapter. Cardiac cell sheets transplanted in subcutaneous tissue of athymic rat were evaluated on cell survival and blood vessel formation.

2.2 方法

本研究のすべての動物実験は“Guide for the Care and Use of Laboratory Animals”

(NIH Publication No. 85-23, revised 1996) and the “Guidelines of Tokyo Women’s Medical University on Animal Use.”に従い実施した。

Cell sheets

Luc(+) or GFP(+) rat

Athymic rat Evaluations

・ Cell survival

・ Vessel formation

(30)

2.1.1 心筋細胞シートの作製

心筋細胞シートを先行研究の方法で作製した[25]。具体的には、生後 1 日の蛍 ルシフェラーゼを発現する Lewis 新生仔ラット [LEW-Tg (Rosa-luc) 11jmsk][35]

と 緑 色 蛍 光 タ ン パ ク 質 (GFP) を 発 現 す る Sprague-Dawley 新 生 仔 ラ ッ ト [SD-TgN (Act-EGFP) with regard to OsbCZ-004; SLC, Hamamatsu, Japan) の心室から 心筋細胞をそれぞれ単離した。コラゲナーゼ (class II, Worthington Biochemical, Lakewood, NJ, USA) を含んだハンクス緩衝液 (Sigma, St. Louis, MO, USA) を用 いて、心室を 37℃で消化した。6% fetal bovine serum (FBS; Moregate Biotech, Bulimba, QLD, Australia)、35% Medium 199 (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)、71.4 U/mL penicillin solution、71.4 g/mL streptomycin-solution (Sigma)、2.9 mmol/L glucose、 54% balanced salt solution (containing 116 mmol/L NaCl、1.0 mmol/L NaH2 PO4、0.8 mmol/L MgSO4、1.2 mmol/L KCl、0.8 mmol/L CaCl2、26.2 mmol/L NaHCO3) を含む 培地で単離した細胞を培養した。

心筋細胞シートを作製するため、35 mm の温度応答性培養皿 (CellSeed, Inc, Tokyo, Japan) に2.4×106 cellsの細胞懸濁液を播種し、37℃、5% CO2濃度で培養し た。4日間培養後、細胞解離剤を使用することなく、培養皿を20℃のインキュベ ーターに置くことで、1 時間以内にシート状に細胞が剥がした。剥がした細胞シ ートを培地を除いた状態で37℃、5% CO2濃度で約30分培養し、培養皿に接着さ せた。接着した細胞シート上に別の細胞シートを乗せ、再び培地を除いた状態で

37℃、5% CO2濃度で約30分培養して接着させた。同じ操作を繰り返し、3層が

積層した心筋細胞シートを作製した。

2.1.2 心筋細胞懸濁液の作製

トリプシンで心筋細胞シート3枚を解離し、200 μLの培地を用いて細胞懸濁液 を調製した。

2.1.3 心筋細胞シート及び心筋細胞懸濁液のラットへの移植

雄の6~8週齢のF344無胸腺ラット (Charles River Japan, Tokyo, Japan) を2%イ ソフルランで吸入麻酔した。右及び左の背部の皮膚を約3 cm×2 cmのL字状に切 開し、皮下組織を露出させた。心筋細胞シートをポリプロピレン製シート (2

cm×1.5 cm) に乗せて、右又は左の背部の皮下組織に移植した。心筋細胞懸濁液

(7.2×106 cells) を無菌針を用いて細胞シートと反対の背部の皮下組織に注射して

移植した。なお、GFP陽性細胞シートについては、細胞シートと皮膚との癒着を 防止する目的で、0.5 mm厚のシリコーンシート (Unique Medical, Tokyo, Japan) で 細胞シートをカバーし、背骨側の2角を6-0シルク縫合糸で皮下組織に固定した。

切開した皮膚を7-0ナイロン縫合糸で縫合した。

(31)

2.1.4 移植細胞のin vivoイメージングシステムを用いた生存評価

ラットを2%イソフルランで吸引麻酔し、測定15分前に150 mg/kgの D-luciferin firefly potassium salt (Promega, Madison, WI, USA) を陰茎背静脈に注射した。ラッ トをCCDカメラ (Xenogen, Alameda, CA, USA) 付きの遮光チャンバー (43 cm幅、

38 cm長、43 cm高) に置き、弱い照明のもとで体表面を参照画像としてグレース

ケールで撮影した。光源を切った後、ルシフェラーゼ陽性細胞から放出され、組 織を通過してくる光子をLiving Image R3.0 system (Xenogen) を用いて定量した。

光の強度を示す疑似カラー(青色:弱、赤色:強)が作られ、解剖学的位置を示 すために参照画像に重ね合わされた状態で示された。同一のラットを用いて移植 後30分、1日、3日、7日、14日、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で解析を行った。

2.1.5 移植細胞のTUNEL染色を用いた細胞死評価

移植後30分、1日、3日に、細胞シートと細胞懸濁液を移植されたラットから 移植部位を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。固定した組織をパラフ ィンに包埋し、7 μmの組織切片を作成した。in-situ cell death detection kit (POD) (Roche, Mannheim, Germany) を用いてTUNEL染色を行った。TUNEL陽性のアポ トーシス細胞を定量するため、顕微鏡を用いて400倍の倍率で3つの組織切片か ら無作為に 15 カ所を撮影し、TUNEL 陽性細胞数をブラインドでカウントした (n=3 per group)。

2.1.6 移植細胞シートの血管のマクロ形態的評価

In-vivo small animal imaging system (OV100) (Olympus, Tokyo, Japan) を用いて、

明視野及びGFP蛍光で移植後の細胞シートを観察した。同一のラットを用いて移 植後30分、6時間、12時間、1日、3日、7日で解析を行った。

2.1.7 移植細胞シートの血管の組織学的評価

移植後30分、1日、3日、7日に、細胞シートと細胞懸濁液を移植されたラッ トから移植部位を摘出し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。固定した組織を パラフィンに包埋し、7 μm の組織切片を作成した。血管内皮細胞 (ECs) と周皮

細胞 (PCs) の染色のため、パラフィン包埋された切片を脱パラフィンし、100倍

希釈したAnti-NG2 Chondroitin Sulfate Proteoglycan (Merk Millipore, Billerica, MA,

USA) で 4℃一晩または室温 2 時間、湿潤チャンバーの中で反応させた。それか

ら、切片をPBSで洗浄し、200倍希釈したAlexa Fluor® 568 F(ab')2 fragment of goat anti-rabbit IgG (Life Technologies, Carlsbad, CA, USA) で室温1時間、反応させた。

その後、切片を PBS で洗浄し、10 倍希釈した rabbit polyclonal antibody against CD31/PECAM-1 (Thermo Scientific, Waltham, MA, USA) で4℃一晩、反応させた。

その後、切片をPBSで洗浄し、200倍希釈した Alexa Fluor® 488 F(ab')2 fragment of

(32)

goat anti-rabbit IgG (Life Technologies) で室温1時間、反応させた。最後に切片を ProLong-Gold antifade reagent with DAPI (Life Technologies) で5分間、核染色した。

染色した切片を共焦点顕微鏡 (LSM 510 META) (Carl Zeiss, Oberkochen, Germany) で観察した。

2.1.8 移植細胞シートの血管の密度及び成熟度の定量評価

移植後30分、1日、3 日、7 日のEC 染色された血管数を数えて、細胞シート 内の血管密度を算出した。定量するため、顕微鏡を用いて400倍の倍率で3つの 組織切片から無作為に15カ所を撮影し、CD31陽性の血管数をブラインドでカウ

ントした (n=3)。また、CD31陽性血管数に対して、CD31陽性かつNG2陽性の血

管数の割合をPC被覆率 (PCI) として算出し、同様に定量した (n=3)。

2.1.9 移植細胞シートの血管のミクロ形態的及び透過性評価

Tetramethylrhodamine(TMR)-conjugated dextran (mol. wt.: 2,000,000, Life Technologies) をPBSで5 mg/mLに希釈した。細胞シート移植後30分、1日、3 日、7日のラットに500μLの希釈液を静脈注射した。in-vivo small animal imaging

system (OV100) を用いて、細胞シート内の血管の形態及び透過性を確認した。

2.1.10 移植細胞シートの血管の血管形成と血流開始のタイミング評価

細胞シート移植後、細胞シート内に形成される血管に血流が確認されるまでの 時間を確認した。

2.1.11 移植細胞シートの血管新生因子の発現評価

移植後30分、6時間、1日、3日、7日、14日、28日の心筋細胞シートを背部 皮下組織から摘出し、トータル RNA を RNeasy fibrous tissue midi kit (Qiagen, Chatsworth, CA, USA)を用いて精製した。トータル RNA を NanoDrop 2000 spectrophotometer (Thermo Scientific) を用いて定量した。トータル RNA を High Capacity RNA-to-cDNA Kit (Applied Biosystems) を用いて転写した。個々のcDNA サンプルを Taqman primers と Probes を用いて、7300 Real Time PCR System (Applied Biosystems) でPCR増幅した。β-actinの発現量をもとにRNA量と逆転写 効率の標準化を行った。Vascular endothelial growth factor a (VEGFa)、matrix metalloproteinase-9 (MMP-9)、basic fibloblast growth factor (bFGF)、granulocyte colony-stimulating factor (G-CSF)、hypoxia-inducible factor 1 α (HIF-1α)、stromal cell-derived factor (SDF-1)、platelet-derived growth factor-BB (PDGF-BB)、angiopoietin

1 (Ang1) について、2−ΔΔCt法を用いて転写因子の定量を行った[36]。測定サンプ

ル数は移植後3 日は4、30分及び 7日は 5、6時間及び28 日は 6、1日は 8、14 日は9であった。

(33)

2.1.12 データ解析

すべてのデータは平均±標準偏差 (SD)で表した。2群を比較する際は、対応の

ないStudent’s t testを用いた。郡内の比較には変数のone-way解析を行った。群間

比較にはF検定が正であればボンフェローニ検定を用いた。p値は0.05以下であ れば有意とした。

2.3 結果

2.3.1 移植細胞の細胞生存及び細胞死の定量評価

ルシフェラーゼ発現細胞シートと細胞懸濁液を無胸腺ラット背部皮下組織に移 植して細胞生存を評価するため、in vivo生体発光イメージングシステムを用いて、

ルシフェラーゼ発現細胞の発光強度をtotal flux (photons/sec) として測定した。測 定は移植後30分、1日、3日、7日、28日、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月の間 隔で行った (Fig. 2.2 A, B)。Fig. 2.2 Aに移植後30分から7日までの細胞シート及 び細胞懸濁液の発光強度のダイナミックな変化を示した。また、移植後1日から 1年で、細胞シートが細胞懸濁液に比べて高い発光強度を示した。

細胞シート及び細胞懸濁液のダイナミックな発光強度の数値変化 (photon/sec)

をFig. 2.2 Bに示した。細胞シートと細胞懸濁液はいずれも同様の挙動であること

が明らかになった。移植後すぐに発光強度が上昇し始め、移植3日後にピークを 迎えた (移植後30 分, 1日, 3日の細胞シートで3.10 ± 2.17、7.96 ± 3.43、8.73 ± 5.64

× 107、細胞懸濁液で 2.06 ± 1.44、4.11 ± 1.95、4.03 ± 4.08 × 107)。その後、発光強 度が下降し始め、7日後にプラトーに達し、評価期間中維持した (移植後 7 日、

14日、28日、3月、6月、12月の細胞シートで 2.75 ± 1.24、2.32 ± 0.70、2.57 ± 1.28、 2.69 ± 0.96、2.02 ± 1.37、1.77 ± 0.68 × 107 、細胞懸濁液で0.55 ± 0.42、0.28 ± 0.14、 0.40 ± 0.26、0.30 ± 0.13、0.25 ± 0.26、0.27 ± 0.35 × 107)。

細胞シートと細胞懸濁液の発光強度の差は移植後に徐々に大きくなった。特に 細胞懸濁液は細胞シートと比べて移植後7日で大きく下降した (細胞シートで 2.75 ± 1.24× 107、細胞懸濁液で0.55 ± 0.42× 107)。細胞シートと細胞懸濁液の差は、

移植後1日から12ヶ月まで有意であった (p < 0.01)。

細胞シートと細胞懸濁液の背部皮下組織への移植後の細胞死を評価するため、

移植後30分、1日後、3日の組織切片をin-situ cell death detection kitで解析した (Fig.

2.2 C)。TUNEL陽性細胞を黒矢印で示した。Fig. 2.2 Dに示すように、細胞懸濁液

と比べて細胞シートは実験期間中 TUNEL 陽性細胞は少ない傾向であった。移植 後30分でTUNEL陽性細胞数は細胞シートで2.3 ± 2.2、細胞懸濁液で5.7 ± 3.6で あった。1日では細胞シートで5.5 ± 4.5、細胞懸濁液で17.5 ± 3.6 (p < 0.01) であ った。3 日では細胞懸濁液の値が下降したものの、それでもなお細胞シートの値

(34)

が低かった (細胞シートは4.6 ± 1.1、細胞懸濁液は8.0 ± 6.0)。

6.0

4.0

2.0

105 photons/sec/cm2/sr

30 min 1 day 3 days 7 days 14 days 28 days 3 months 6 months 12 months

SheetCell Suspension

- 0.2 × 108 0.0 × 108 0.2 × 108 0.4 × 108 0.6 × 108 0.8 × 108 1.0 × 108 1.2 × 108 1.4 × 108 1.6 × 108

30min 1d 3d 1w 2w 1m 3m

TotalFlux(photon/sec)

0.0E+00 2.0E+07 4.0E+07 6.0E+07 8.0E+07 1.0E+08 1.2E+08 1.4E+08 1.6E+08

03 7 14 28 365

TotalFlux (photon/sec)

Sheet Cell suspension

Days

**

**

** ** **

**

1 day 3 days 30 min

SheetCell suspension

0 5 10 15 20 25

0 1 3

TUNELpositivecells/HPF

Sheet Cell suspension

Days

**

Fig. 2.2 Dynamics of cell survival of the cell sheet and the injected cells in the rat dorsal subcutaneous tissue[37]. (A) Time-course of bioluminescence image from the grafted cell sheets (upper row) and the injected cells (lower row) in the same subjects. (B) Time-course of bioluminescence intensities of the cell sheet grafts (■) and the injected cells (♦). Significance

A

B

C D

(35)

levels: *, p < 0.05, **, p < 0.01. The number of samples was 7 for 1 day and 3, 6 and 12 months and 10 for other time points, except for 12 months of cell injection group, whose number of samples was 6. The error bars are standard deviations. (C) Images of TUNEL staining of the grafted cell sheets and the injected cells. Arrows show TUNEL positive cells. Scale bar is 50 μm.

(D) Time-course of the number of TUNEL positive cells in high power field (HPF) for the grafted cell sheets (■) and the injected cells (♦). Significance levels: *, p < 0.05, **, p < 0.01. The number of samples are 3 for each time point. The error bars are standard deviations.

2.3.2 細胞シート内の血管の形態的及び透過性評価

ラット背部皮下組織に移植した GFP 陽性細胞を含む細胞シートで血管形成を 評価した。ラットに移植された細胞シート内の血管を、移植後30分、1日、3日、

7日で明視野と蛍光イメージングで解析した (Fig. 2.3)。Fig. 2.3 Aは血管の形態を 示す明視野のマクロ像、Fig. 2.3 Bは血管の形態を示すGFP蛍光のマクロ像、Fig.

2.3 CはTMR-conjugated dextranによる血管の形態及び透過性を示す蛍光のミクロ

像である。GFP細胞は細胞内に形成された血管を影絵のように浮かび上がらせる。

移植直後は、明視野では通常の薄黄色でintactの細胞シート、蛍光視野でもintact なGFP蛍光の細胞シートであった (Fig. 2.3 A, B, 30 min)。また、ミクロの蛍光視 野でも血管様のシグナルは認められなかった (Fig. 2.3 C, 30 min)。それから、細胞 シートは徐々に血液で赤色になり、細胞シートへの血液流入のピークは明視野で 1日後に観察された (Fig. 2.3 A, 1 day)。血管流入はGFPイメージでまばらな緑色 及び黒色として確認された (Fig. 2.3 B, 1day, white arrows)。ミクロでは、大小様々 なドット上の強いTMR蛍光を多く観察された (Fig. 2.3 C, 1 day, white arrows)。こ れらは未熟な血管と考えられ、激しく形成及び成長する血管からデキストランが 勢い良く漏れ出していることを示す。その後、細胞シートの赤色は3日までに徐々 に薄くなり、明視野で細胞シート内に毛細血管様の構造、蛍光視野では黒い構造 として確認された (Fig. 2.3 A, B, 3 days, white arrows)。ミクロでは、血管構造は不 均一な径のリボン様の構造として観察され、その透過性は TMR 蛍光シグナルか ら中程度であることが確認された (Fig. 2.3 C, 3 days, white arrows)。最終的には、

細胞シート内に形態的に成熟した血管が7日後に形成された。たくさんの小さい 血管及び大きい血管が均一に配列されたツリー状の構造を GFP 像で確認された (Fig. 2.3 B, 7 days, white arrows)。ミクロでは、それらは均一な直径で直線的な血管 であり、TMRの蛍光シグナルは極めて弱い漏出しない血管に変化した (Fig. 2.3 C, 7 days, white arrows)。

(36)

0 5 10 15

0 7 14 21 28

CD31positivevessels/HPF

1 3 Days A

B

C

D D

E F

0%

10%

20%

0 7 14 21 28

PCI

**

1 3 Days

**

G

(37)

Fig. 2.3 Time-course of neo-vascularization inside the grafted cell sheets[37]. (A) Bright-field view of the grafted cell sheets showing the neo-vascularization inside the sheets at 30 min and 1, 3, and 7 days after transplantation. Scale bar is 5 mm. (B) Green fluorescence protein (GFP) view of the grafted cell sheets showing the neo-vascularization inside the sheet at 30 min and 1, 3, and 7 days. Blood vessels are shown as black, and grafted cells are shown as green. Scale bar is 5 mm. (C) Tetramethylrhodamine-Dextran injected in the capillary of the cell sheets at 30 min and 1, 3, and 7 days after transplantation. Scale bar is 500 μm. (D) CD31 and NG2 immunostaining of the cell sheets at 1, 3, 7, and 28 days. Scale bar is 50 μm. (E) Time-course of the number of vessels stained with CD31 at 1, 3, 7, and 28 days. The number of samples was 3 for each time point. (F) Time-course of percentage of vessels stained with NG2 in CD31 positive vessles at 1, 3, 7, and 28 days. The number of samples was 3 for each time point. (G) Bright-field view of the cell sheets at 6 h later implantation of the cell sheets. Scale bar is 3 mm.

2.3.3 細胞シート内の血管密度と成熟度の組織学的評価

細胞シート内の血管構造の定性及び定量的な評価として、移植後1日、3日、7 日、28日で内皮細胞と mural細胞(周皮細胞、平滑筋細胞)を、CD31及びNG2 抗体でぞれぞれ染色した。Fig. 2.3 Dの上段にCD31、中段にNG2、下段にマージ 像を示した。

細胞シート内の血管が組織学的に徐々に成熟していく様子をFig. 2.3 Dに示し た。移植後1日は、円形でない蛇行した異常な形態を示し、NG2陽性細胞はなく CD31陽性細胞のみで構成される未熟な血管であった。3日は、円形に近い形態を 示し、僅かにNG2陽性細胞も認められ始めたが、主にCD31陽性細胞で構成され る、比較的成熟した血管であった。7 日は、円形で直線的な形態を示し、CD31 陽性細胞で構成される血管に加えて、NG2陽性細胞とCD31陽性細胞を有する血 管が認められる、成熟した血管であった。28日は、NG2陽性細胞がはっきりと認 められるより成熟した血管が確認された。

移植後1 日、3 日、7日、28日の細胞シート内のCD31陽性の血管数を数値化 して血管密度を定量化した (Fig. 2.3 E)。定量化により、血管密度は1日ですぐに 増加、3日でピーク、3日から28日はそのピークを維持することが明らかとなっ た (1日で5.2 ± 1.0%、3日で9.2 ± 1.8%、7日で8.7 ± 1.5%、28日で8.3 ± 1.6%)。 血管密度は3日、7日、28日は有意に1日よりも高かった (p < 0.05)。

CD31陽性の血管のうち、NG2陽性の血管の割合を成熟度として、移植後1日、

3日、7日、28日で定量化した (Fig. 2.3 F)。1日の細胞シートは最も低い成熟度 であった (0.0 ± 0.0%)。3日では3.4 ± 4.2%、7日では19.5 ± 12.3%の成熟度であっ た。28では比較的高い11.5 ± 3.5%の成熟度であった。7日、28日は1日に比べて 有意に高い成熟度であった (p < 0.05)。

このように、血管密度については3 日でプラトーに達し、成熟度については 7

(38)

日でピークに達した。

2.3.4 細胞シート内の血管形成と血流開始のタイミング評価

ラット背部皮下組織に移植された細胞シート内の血管が形成され血流が開始さ れるタイミングを確認した。わずか6時間で細胞シートの端部に血液の流入が確 認された (Fig. 2.3 G, upper row, black arrow)。拡大像では密な毛細血管網が確認さ れた (Fig. 2.3 G, lower row, black arrow)。また、移植後12時間で、細胞シート内 に形成された血管にFig. 2.4 Aの白矢印に示す方向に赤血球が流れる様子をビデ オにて確認した。細胞シート内に血管が形成されていることが断面像から確認さ れた (Fig. 2.4 B, C, white arrow)。

Fig. 2.4 Blood circulation in the vessels newly formed in the cell sheets 12 hours after transplantation. (A) Top view of GFP imaging of the cell sheets. White arrow shows blood circulation. (B) Cross-sectional view of GFP imaging of the cell sheets. White arrow shows formed vessels inside the cell sheets. (C) Cross-sectional view of bright imaging of the cell sheets. White arrow shows formed vessels inside the cell sheets.

2.3.5 細胞シート内の血管新生因子の発現評価

ラット皮下組織に移植された細胞シート内の血管新生に係るmRNA発現を、移 植後30分、6時間、1日、3日、7日、14日、28日に、リアルタイムPCRで測定 した。移植後30分を初期、6時間、1日を早期、3日、7日、14日、28日を遅期 として発現の挙動を追った。

初期には、VEGFa、MMP-9、bFGF、G-CSF、SDF-1、Ang1 の発現のピークが 確認された (Fig. 2.5 A, B, C, D, F, H)。HIF-1αとPDGF-BBの発現は中程度であっ

断面図

500 μm

B

C A

500 μm 500 μm

(39)

た (Fig. 2.5 E, G)。

早期には、HIF-1αの発現のピークが6時間で確認された (Fig. 2.5 E)。VEGFa、 MMP-9、bFGFの発現は比較的高く、徐々に減少していった (Fig. 2.5 A, B, C)。

SDF-1 と PDGF-BB は比較的低い発現であり、時間と共に徐々に減少していった

(Fig. 2.5 F, G)。反対に、G-CSFとAng1は低い発現であった (Fig. 2.5 D, H)。 遅期には、SDF-1、PDGF-BB、Ang1のコンスタントな高い発現 (Fig. 2.5 F, G, H)、

HIF-1α以外の他の因子のコンスタントな低い発現が確認された (Fig. 2.5 A, B, C,

D)。HIF-1αは3日に二回目のピークが確認され、徐々に減少していった (Fig. 2.5

E)。

(40)
(41)

Fig. 2.5 Real-time PCR analyses of the relative quantities of the gene expressions of various angiogenic factors including (A) vascular endothelial growth factor a (VEGFa), (B) matrix metalloproteinase-9 (MMP-9), (C) basic fibloblast growth factor (bFGF), (D) granulocyte colony-stimulating factor (G-CSF), (E) hypoxia-inducible factor 1 α (HIF-1α), (F) stromal cell-derived factor (SDF-1), (G) platelet-derived growth factor-BB (PDGF-BB), and (H) angiopoietin 1 (Ang1) for the cell sheets[37]. VEGFa, MMP-9, bFGF, G-CSF, HIF1α, SDF-1, and Ang1 were relatively high within 1 day, and SDF-1, PDGF-BB, and Ang1 are relatively high from 3 days to 28 days. The number of samples was 4 for 3 days, 5 for 30 min and 7 days, 6 for 6 h and 28 days, 8 for 1 day, and 9 for 14 days.

2.4 考察

2.4.1 細胞シート移植後の高い生存能

ラット背部皮下組織に移植した細胞の生存の定量評価により、細胞懸濁液を注 射して移植するよりも細胞シートを貼って移植するほうが高い生存を示すことが 明らかになった。細胞シートが高い生存を示す理由としては下記が考えられる。

①保持された細胞外マトリクス、②栄養と酸素の拡散限界に調整された厚み、③ アノイキス(細胞接着の足場が失われることによるアポトーシス)を防ぐ細胞間 の結合、④細胞シート内の内皮細胞ネットワーク[25], [26], [30], [31]。TUNEL染 色の結果で確かめられたように、これらのメリットで細胞シートは細胞死を起こ しにくいことが示唆される。しかし、細胞シートが1年にもわたり生存し続ける メカニズムは明らかではなかった。本研究により明らかとなった、適切なサイト カインを適時に産生し、血管を新生及び成熟させる、細胞シートの高い血管新生 能は、長期生存のメカニズムを説明する一つの候補と考えられる。移植後の細胞 の生存は、血管網による継続的な酸素及び栄養の供給に依存することは明らかで ある。

2.4.2 細胞シート移植後の高い血管新生能

ラット背部皮下組織に移植した細胞シートの血管の評価により、高い血管新生 能があることが明らかとなった。移植後の細胞シートは血管新生の初期の因子と して知られる VEGFa、MMP-9、bFGF、G-CSF、SDF-1、Ang1 の発現が高いこと が観察された。VEGFaは血管の形態を調整する最も重要な因子であり、内皮前駆

細胞 (EPCs) の化学的遊走及び分化、内皮細胞の増殖、内皮細胞の血管構造への

アセンブリ (vasculogenesis) 及び新生血管のリモデリングに必要とされる[39]。ま

た、VEGF とSDF1は循環する骨髄単核細胞を誘導し、血管周囲への位置調整と

保持にも必要とされる[40]。MMP-9 は血管新生のスイッチの一部であり、VEGF

参照

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