Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Gorlin syndrome-derived induced pluripotent stem
cells are hypersensitive to hedgehog-mediated
osteogenic induction
Author(s)
長谷川, 大悟
Journal
歯科学報, 119(4): 356-357
URL
http://hdl.handle.net/10130/4971
Right
Description
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 遺伝性疾患を有する患者から樹立した疾患特異的 iPS 細胞は創薬のスクリーニング,癌研究,シグナル伝達 経路の研究などに応用が可能である。Gorlin 症候群は基底細胞癌,多発性顎嚢胞,大脳鎌の石灰化などさまざ まな症状を有し,常染色体優性疾患であり原因遺伝子はヘッジホッグ(Hh)受容体である PTCH1が同定され ている。Hh 経路は人体の発生と腫瘍形成において重要な役割を果たしています。Gorlin 症候群患者由来 iPS 細胞(G-OFiPS)は,Hh 経路の解明とともに,癌化のメカニズム,骨形成,石灰化の異常機構の解明に有用で あると考えらえた。本研究では Gorlin 症候群患者群由来線維芽細胞(G-OF)を用い疾患特異的 iPS 細胞を樹立 し,樹立した G-OFiPS の機能解析を行い細胞の特性を検討した。 2.研 究 方 法 本研究は東京歯科大学倫理員会にて承認済みである(承認番号527,575)。本校口腔外科外来を受診した Gor-lin 症候群患者で,同意書に署名を得た後に口腔粘膜組織を採取し線維芽細胞の初代培養を行った。イルミナ HiSeq2500を使用しエクソーム解析を行い,その後,変異解析を行った。また,産総研より提供を受けたセン ダイウイルスベクター SeVdp(KOSM)302L を用いて4因子(Klf-4,Oct3/4,Sox2,c-Myc)を線維芽細胞 に導入し,iPS 細胞の誘導を行った。誘導した細胞が iPS 細胞と証明するために,未分化能と多分化能の確認 を行った。細胞の薬剤感受性を調べるために正常時と血清飢餓状態において SMO のアゴニストとインヒビ ターを用いた実験を行い,Hh 経路の標的遺伝子である GLI1の発現を評価した。また,正常培地で培養した
iPS と骨芽細胞分化誘導を行った iPS を Hh 関連遺伝子84種類についての発現解析を QIAGEN の RT2
Profiler PCR Array を用いて分析をし,専用のソフトを用いて解析を行った。 3.研究成績および結論 4人の Gorlin 症候群患者から同意を得て,線維芽細胞の初代培養に成功した。エクソーム解析により原因 遺伝子である PTCH1の各々異なった変異と新規の変異を認めた。SeVep(KOSM)302L によって4種類の細 胞で iPS 細胞の誘導を行った結果,誘導したすべての細胞で未分化能と多分化能の確認ができ,4種類の G-OFiPS を樹立することに成功した。qRT-PCR の結果より,正常培養において G-OF と KD では G-OF の方が GLI1の高値を認め,Hh 経路の恒常的な機能亢進が示唆された。血清飢餓状態で SAG, cyclopamin を添加し
氏 名(本 籍) は せ がわ だい ご
長 谷 川
大
悟
(群馬県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 2143 号(甲第1348号) 学 位 授 与 の 日 付 平成28年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Gorlin syndrome-derived induced pluripotent stem cells are hypersensitive to hedgehog-mediated osteogenic induction
掲 載 雑 誌 名 PLOS ONE 第12巻 10号 e0186879 2017年
doi:10.1371/journal.pone.0186879 論 文 審 査 委 員 (主査) 新谷 誠康教授 (副査) 柴原 孝彦教授 野村 武史教授 東 俊文教授 笠原 正貴教授 歯科学報 Vol.119,No.4(2019) 356 ― 98 ―
培養したものにおいては,SAG を添加した時に高い値を示し,SAG と cyclopamin を同時に添加した状態で は SAG による亢進の抑制を示唆するような値を示した。このことから,今回樹立した G-OFiPS は血清飢餓状 態で薬物感受性が亢進し,それに合わせて Hh 経路も反応することが示唆され,本症候群に認められる基底細 胞癌のみならず Hh と関連が報告されている癌についての創薬の研究に有意義な結果であると考えられます。 次に,PCR Array による Hh シグナル関連遺伝子の解析を行った結果,インヒビターが抗癌剤として有用と されている HHAT と SHH が同様の反応を示したことより同じ抑制経路上にあることが示唆できた。また, 骨芽細胞分化誘導を行った G-OFiPS において Hh 経路の亢進に加え WNT 系の遺伝子の増加傾向,BMP6, RUNX2などの増加傾向を認めたことから,G-OFiPS 細胞は骨芽細胞分化に有利な状態に変化していること が示唆された。このことは大脳鎌の石灰化などの本症候群に認められる骨系の病態と関連している可能性が示 唆された。我々は PTCH1の機能不全により Hh 経路に異常がある Gorlin 症候群患者由来の疾患特異的 iPS 細胞を樹立することに成功した。腫瘍形成と骨格異常などの症状を有する Gorlin 症候群患者由来の iPS 細胞 は癌研究,骨形成,石灰化の研究とともに Hh 経路のメカニズムの解明に有用であると考えられた。 論 文 審 査 の 要 旨 遺伝性疾患を有する患者から樹立した疾患特異的 iPS 細胞は創薬のスクリーニング,癌研究,シグナル伝達 経路の研究などに有用であると報告されている。本論文は Gorlin 症候群から疾患特異的 iPS を樹立し,Hh 関 連遺伝子の発現解析を行い細胞の特性について報告したものである。本研究において,今回樹立した Gorlin 症候群患者由来 iPS 細胞は Hh 経路の恒常的な亢進を認め,関連遺伝子の特異的な反応も認めた。このことか ら今回樹立した Gorlin 症候群患者由来 iPS 細胞は癌研究,骨形成,石灰化の研究とともに Hh 経路のメカニズ ムの解明に有用であると考えられた。 本審査委員会では,⑴血清飢餓での培養時間について,⑵なぜ BMP4と BMP6を選んだのか,⑶臨床症状 と遺伝子変異の関連について,⑷創薬の研究への応用としてどのような考えがあるか,について質疑がなされ た。 ⑴について先行論文と予備実験の結果を参考に,線維芽細胞と iPS 細胞において一番安定して細胞が培養で き,結果としても差を認める時間を設定した。⑵については BMP4は中胚葉系の形成に重要で BMP6は骨形 成促進作用があるとの報告があり,また,比較的大きな変化を認めたので選んだ。⑶については現段階では臨 床症状と遺伝子変異については関連がないと報告されており,今回の実験においても関連性については検討を 行っていないが,今後,症例数を増やしたり家族性を追って比較検討していくことは意義があると考える。⑷ については現在 SMO をターゲットした薬剤の応用がされはじめているが,SMO よりさらに下流の因子を ターゲットとした,より副作用の少ない薬剤の研究などに応用が可能と考える,との回答を得た。また,英文 表記,図表の修正等についての指摘が行われた。論文内容およびその質疑により概ね妥当な回答が得られたこ とにより,本研究は今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値すると判定した。 歯科学報 Vol.119,No.4(2019) 357 ― 99 ―