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人間科学研究 Vol. 28, Supplement(2015)
修士論文要旨
怒り反芻に対するディタッチト・マインドフルネスの効果
The Effect of Detached Mindfulness on Anger Rumination
金 ヌルプルンソル(Nurpurunsol Kim) 指導:野村 忍
【問題と目的】Wells(2009 熊野他訳 2012)によると,怒り 反芻のような固執的な思考は,情動障害の発症・持続させる 要因である。Wells(2005)は,内的出来事に反応せず,距 離をおいて気づいている状態であるディタッチト・マインド フルネス(以下,DM)を促進することが情動障害の介入で は重要であると提唱している。これまで,DM状態を促進さ せる介入は,全般性不安障害(Wells & King, 2006)や反復 性うつ病(Wells, Fisher, Myers, Wheatley, Patel &
Brewin, 2009)等への効果が示されてきた。しかし,怒り反 芻においてはDM状態との関連性について検討した知見が蓄 積されていない。そこで,本研究では,DM状態と怒り反芻,
ネガティブな信念,ポジティブな信念,特性怒りの関連性に ついて検討し(研究1), DM技法の介入効果を検討する(研 究2)。
研究1:DMと怒り反芻,メタ認知的信念,
特性怒りの関連の検討
【方法】調査対象:記入漏れがない学部生209名(男性95名,
女性114名,20.49±1.31歳)を有効回答として分析対象とした。
調査材料:①フェイスシート,②Detached Mindfulness Mode Questionnaire(DMMQ;今井・今井・熊野,2012),
③STAXI日本語版の下「特性怒り尺度」(鈴木・春木,1994),
④日本語版怒り反すう尺度(八田・大渕・八田,2013),⑤ 怒り反芻に対するメタ認知的信念尺度(MBARQ;金・山 口・今井・熊野・野村, 2014)。
【結果】相関分析の結果,DMMQは全ての尺度との間に有意 な負の相関を示した(特性怒りr= -.19;怒り反芻r= -.32;ネ ガティブな信念r=-.35;ポジティブな信念r=-.18,全てp<.01)。 共分散 構造 分 析の結果,満 足できるモデルが 得られた
(GFI=.998, AGFI=.985, CFI=1.000, RMSEA=.000)。
DMMQからポジティブな信念,怒り反芻,ネガティブな信 念には有意な弱い負のパス係数(β=-.18, p<.01; β=.-24, p<.001; β=-.24, p<.001)が示された。また,ポジティブな信 念から怒り反芻には有意な中程度の正のパス係数(β=.46, p<.001)が示され,怒り反芻からネガティブな信念と特性怒 りには有意な中程度の正のパス係数(β=.34, p<.001, β=.42, p<.001)が示され,ネガティブな信念から特性怒りには有意 傾向の弱い正のパス係数(β=12, p<.10)が示された。
【考察】ポジティブな信念が怒り反芻を強め,怒り反芻はネ
ガティブな信念と特性怒りを強め,強められたネガティブな 信念がさらに特性怒りを強めることが示された。しかし,DM 状態は,ポジティブな信念,怒り反芻,ネガティブな信念を 弱めることが示され,DM状態の促進が全ての変数に影響を 与える可能性が示唆された。
研究2:怒り反芻へのDM技法の効果の検討
【方法】実験対象:学部生25名を対象にし,無作為に,2群 に分けた(実験群12名:女性10名,男性2名,19.67±1.44歳;
統制群13名:女性8名,男性5名,19.31±1.38歳)。 調査材料:研究1の①〜⑤と,STAXIの「状態怒り尺度」を 加えた。
手続き:実験群は1週間ごとに,自由連想課題・記録シート の記入・質問紙(pre,post1,post2)の回答を求め,ホー ムワークとして,毎日自由連想課題と記録シートへの記入を 求めた。統制群は1週間ごとに,質問紙(pre,post1,post2)
への回答を求めた。
自由連想課題:中性的な単語5つと怒りに関連する単語5つ を聞き,1単語につき1分間程度DM状態で見てもらい,記 録シートへの記入を求めた。
【結果】 実験群と統制群の各尺度得点についてt検定を行っ
た結果,preにおける群間差は見られなかった。次に,群(実
験群,統制群)と時期(pre,post1,post2)を独立変数,各 尺度得点を従属変数に設定し,二要因分散分析を行った結 果,一部の尺度得点において有意傾向または有意な交互作用 が示された。各尺度における分散分析の詳細な結果は,
Table1に示した。
Table 1 各尺度得点における群×時期の分散分析の結果
【考察】2週間のDM技法を実施した結果,DM状態が有意 に向上し,怒り反芻,ポジティブな信念は有意に減少した。
ネガティブな信念と状態怒りの群と時期についての交互作 用には,中程度の効果量が見られたことから,DM技法が有 効であった可能性が考えられる。