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( 3 ) 糖代謝 ; 糖代謝の特徴としては 新生児 特に低出生体重児では 生後しばらくは肝臓での糖新生が未熟であり 栄養障害状態では特に低血糖を生じやすい 1 )2 ) またインシュリン受容体の飽和度 肝臓や膵臓の反応性も未熟であり 糖質の投与速度を増加させる場合は高血糖にも陥りやすい点も注意が必

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【はじめに】

 最近の新生児医療の進歩は著しく、現在では1,000g 未満の超低出生体重児であってもintact survivalを 得ることができるようになってきている。この進歩目覚し い新生児医療における総合的な治療の一貫として、栄養 管理は極めて重要な役割を担っている。  新生児は単に体格が小さいというだけでなく、諸臓器 の形態的機能的な未熟性が存在している。そのため、こ の時期における栄養管理には、成人や年長児などと異な り、その生理的特性を十分に考慮することが重要であり、 病態に合わせた栄養基質の選択、投与量の設定が必要 となる。そこで本稿ではまず、栄養管理をする上での新 生児の代謝上の注意点、及び、三大栄養素の消化吸収の 特性について述べ、続いて新生児栄養管理の原則、静脈 栄養、経腸栄養の注意点について概説する。

【Ⅰ.新生児の代謝上の注意点】

(1)水分バランスと腎機能;新生児の体組成は、約80% が水分であり、しかもその半分以上が細胞外液であると いう特徴がある1)。また、体重に比べて体表面積が広く、 皮膚が薄く透過性が高いため不感蒸泄が多く、容易に 脱水に陥りやすい1)。腎機能では、糸球体濾過率が低く 希釈に時間がかかり、尿細管機能が未熟なため、濃縮能 が低い1)。そのため、特に経腸栄養では栄養素の投与に あたっては、同時に十分な水分を与えることが必要であ り、カロリー/水比を0.6-0.8kcal/mLとし、窒素源や無 機質の過剰投与にならないようにする必要がある1) (2)投与熱量;新生児は体重当たりの基礎代謝量が大 きいこと、体表面積が大きいという特徴のため熱を失い やすいこと、成長のための熱量が必要なこと等の理由か ら、投与熱量は110-130kcal/kg/dayと大きい。 *Nutritional management in neonatal patients

特集:NSTのための小児の栄養管理

新生児における栄養管理*

keywords:

新生児、静脈栄養、経腸栄養

増本幸二 Kouji MASUMOTO 新開統子 Toko SHINKAI 上杉 達 Toru UESUGI ◆筑波大学医学医療系小児外科

Department of Pediatric Surgery, Faculty of Medicine, Tsukuba University

 新生児は、各種栄養素の代謝や消化管における消化・吸収において、成人や小児と は大きく異なっている。さらに児の出生体重や在胎週数によっても、各種栄養素の代謝 や消化管における消化・吸収は異なっている。そのため、新生児の栄養管理を行う上 では、児の出生体重や在胎週数を考慮した、生理的な特殊性を理解する必要がある。  新生児の栄養管理でも、まず成人や小児と同様に栄養アセスメントと栄養管理計画 書作成を行う。病的な新生児では特に栄養障害を有することが多く、栄養アセスメント と栄養管理計画書に基づき、可能な限り早期に栄養療法を開始する。  栄養療法は消化管が使用可能であれば経腸栄養を用いるのが原則であるが、投与 量が不十分あるいは、病態的に必要であれば、静脈栄養を躊躇せず行う。なお、静脈栄 養、経腸栄養ともに、新生児の代謝や消化吸収の特殊性を考慮し、成長発達を考えた 慎重な管理を行う必要がある。

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(3)糖代謝;糖代謝の特徴としては、新生児、特に低出 生体重児では、生後しばらくは肝臓での糖新生が未熟で あり、栄養障害状態では特に低血糖を生じやすい1)2)。ま たインシュリン受容体の飽和度、肝臓や膵臓の反応性も 未熟であり、糖質の投与速度を増加させる場合は高血糖 にも陥りやすい点も注意が必要である3)。そのため血糖や 尿糖について頻回のモニタリングが必要である。一方で、 過剰な糖質投与は、肝臓における脂肪産生を引き起こし やすく、肝障害や脂肪肝を引き起こす危険性がある1)2) (4)蛋白代謝;蛋白代謝では、未熟な腎機能に負担をか けず、窒素の利用効率を良くするため、非蛋白カロリー/ 窒素比を200-250kcal/gと十分に高くする必要がある1)2) また、肝のアミノ酸代謝が未発達であり、成人では非必 須アミノ酸であるシステイン、タウリンなどが、新生児に とって必要な準必須アミノ酸となる。またフェニルアラニ ン、チロシンの分解酵素やメチオニンの変換酵素などの 酵素活性が低く、フェニルアラニンやチロシン、メチオニ ンなどを多く含むアミノ酸製剤の投与は避けるよう心掛 けるべきである1)2) (5)脂質代謝;脂質代謝の特徴は、まず肝臓の未熟性が あること、中性脂肪を加水分解するリポプロテインリパー ゼの活性が低いこと、長鎖脂肪の脂肪酸酸化に必要なカ ルニチンの不足、コレステロールをエステル化する lecithin-cholesterol acyltransferaseの活性が低いこ と、中性脂肪代謝のための脂肪組織が少ないことなどが あり、脂肪投与の際にはこれらの考慮が必要となる。ま た体内脂肪蓄積が少ないため、静脈栄養時に長期間に 無脂肪輸液を続けると、容易に必須脂肪酸欠乏に陥り1)2) その結果、脳のミエリン形成障害を起こす4)危険性があ ることも留意すべき点である。また、黄疸のある児では、 脂肪乳剤の静脈投与により生じる遊離脂肪酸が、血中ビ リルビンとアルブミンとの結合において競合するため、核 黄疸を引き起こす危険性がある1)2)

【Ⅱ .新生児の消化・吸収の特殊性

(表1)】

 消化吸収能は胎生26週以降より徐々に発達するとさ れており5)、特に、低出生体重児ほど栄養基質の消化吸 収に関係する酵素の活性が低い1)2) (1)糖質の消化吸収:低出生体重児では乳糖の分解酵 素であるラクターゼの活性が未熟であり、乳糖の消化吸 収が悪い1)2)。成熟児においては、ラクターゼ活性は高い 値を示すが、膵アミラーゼは活性が低いため、多糖類は 利用されにくい。 (2)蛋白質の消化吸収:蛋白分解酵素であるペプシン の活性は新生児期を通して低い状態であり、また膵のプ ロテアーゼ活性なども低いため、ガゼインは分解されにく い1)2)。一方、母乳に含まれる乳清蛋白は、母乳中のリゾ チームやプロテアーゼにより分解され吸収されやすく なっている1)2) (3)脂質の消化吸収:新生児期では脂肪分解酵素であ る膵リパーゼの活性が低く、それを舌リパーゼや母乳中 の胆汁酸塩促進性リパーゼが補っている1)2)。そのため、 新生児期の投与脂質としては母乳が最も適している。 表1 消化吸収の発達 因子 (胎齢週数)現時期 成熟新生児(成人 %) 糖質 α -アミラーゼ  膵臓 22 0  唾液腺 16 10 ラクターゼ 10 >100 スクラーゼ、イソマルターゼ 10 100 グルコアミラーゼ 10 50-100 単糖類吸収 11-19 <100 タンパク質 H+ 16 <30 ペプシン 20 <10 トリプシノーゲン 20 10-60 キモトリプシノーゲン 20 10-60 プロカルボキシペプチダーゼ 20 10-60 エンテロキナーゼ 26 10 ペプチダーゼ <15 >100 アミノ酸輸送 ? >100 大分子吸収 ? >100 脂質 舌リパーゼ 30 >100 膵リパーゼ 30 5-10 胆汁酸 22 50 中鎖トリグリセライド吸収 ? 100 長鎖トリグリセライド吸収 ? 10-90

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【Ⅲ .栄養管理の原則】

 新生児における栄養管理はすべての症例に必要とな るが、特に在胎 36週未満の早産児、低出生体重児およ び病的状態にある新生児においては、慎重かつ適切な 栄養管理を行うことが勧められている6)〜8)  新生児でも小児や成人同様に、すべての症例に対して 栄養スクリーニングを行う必要がある。栄養学的リスク を有する場合、栄養アセスメントと栄養管理計画書作成 を行い、これに基づき可能な限り早期に栄養療法を開始 する。基本的には消化管の問題がなければ、経腸栄養 を選択する6)〜8)。一方、経腸栄養が困難な症例では、静 脈栄養を選択する。特に、栄養学的リスクを有する新生 児、特に在胎 36週未満の早産児、低出生体重児および 病的状態にある新生児では、長期予後における成長発 達や神経学的成績などから、早期に栄養療法を開始す ることが推奨されている6)〜8)。また、静脈栄養中であって も、経腸栄養が使用可能となれば、静脈栄養の合併症 予防も考慮し、可及的早期に経腸栄養を併用することが 重要である1)2)6)7) 

【Ⅳ.静脈栄養】

(1)適応  静脈栄養の適応は、経腸栄養の行うことのできない 症例であり、特に在胎 36週未満の早産児、低出生体重 児および病的状態にある新生児では静脈栄養での管理 が必要となる1)〜3)。特に低出生体重児では、早期からの 積極的な栄養管理が重要であり、経腸栄養が困難な症 例では、可能な限り早期より静脈栄養をスタートする必 要がある3)〜7)。なお、経腸栄養が少しでも可能となった 場合は、静脈栄養の合併症である肝障害予防効果も考 慮し、経腸栄養の併用をスタートさせることが重要であ る1)2)6)7) (2)エネルギー投与量  新生児における静脈栄養における必要エネルギー投 与量は、消化吸収機能に必要な熱量が要らず、糞便中へ の喪 失 熱量がないため、目標として成熟 児では 80-100kcal/kg/day、低出生体重児では110-130kcal/ kg/dayが推奨されている1)2)6)。病態的に目標とするエ ネルギー投与量に到達できない場合でも、体重維持のた めには最低50-60kcal/kg/day以上のエネルギー投与 を行う必要がある。 (3) 各種栄養素の投与量と注意点  糖質投与量については、非蛋白エネルギー量の 60-70%程度を投与する必要がある6)7)9)。糖質の投与量 は低出生体重児で12g/kg/day、成熟児でも18g/kg/ dayを上限とした方がいいとされており9)10)、使用する糖 質はグルコースのみ安全性が確立しているため9)、グル コースを用いる。静脈栄養用の輸液製剤を用いる場合は、 国内では小児用高カロリー輸液製剤(リハビックス®)が 市販されており、その使用が望ましい。ただし、新生児 では肝臓での糖新生が未熟であり、栄養障害状態では 低血糖を生じやすいため、血糖値の変動に注意する必 要がある11)12)。一方で、過剰な糖質投与は、肝臓におけ る脂肪産生を引き起こし、肝障害や脂肪肝を引き起こす 危険性があり、血糖などの定期的なモニタリングを行う 必要がある13)  蛋白源であるアミノ酸の新生児における代謝には前述 した問題点があり、投与に際して十分な注意が必要であ る。本邦ではこれらの問題点に対し BCAA、アルギニン、 システインを増量し、フェニルアラニンなどを低濃度に抑 え、さらにタウリンを加えた小児用アミノ酸輸液製剤(プ レアミン®‐P注射液)が市販されており、この製剤の投 与が望ましい。一般的投与法は、0.5g/kg/dayで開始し、 徐々に2.0g/kg/day程度まで増加していくが、前述した 通り、窒素源が十分に有効利用されるためには、目標と するエネルギー投与量に達した際に、非蛋白カロリー/ 窒素比を230-250kcal/gにする必要がある。  脂肪源としては、国内で市販されている大豆油から精 製された脂肪乳剤は、必須脂肪酸であるリノール酸を 50%含み、新生児への投与にも適している。10%乳剤と 20%乳剤があるが、10%乳剤には卵黄レシチンが多く 含まれており、血中コレステロールの上昇を招くことがあ る。新生児、特に低出生体重児では、肝臓の未熟性、血 中リポ蛋白リパーゼ活性が低いこと、カルニチン貯留量 も少ないこと、中性脂肪代謝のための脂肪組織が少な いことなどより、中性脂肪やリン脂質の代謝が十分でな

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い14)。そのため、リン脂質含有量の少ない20%脂肪乳剤 投与が望ましい。脂肪乳剤も開始時は0.5g/kg/dayと し、徐々に増加して1.0-2.0g/kg/dayを目標に投与する。 しかし実際の新生児症例のなかには、新生児黄疸のある 症例がある。そのような症例では核黄疸の危険性を回避 するため、黄疸が低下(10mg/dL以下)するまで待って 投与する。また、必須脂肪酸欠乏症予防のためには、非 蛋白熱量の最低7-8%を脂肪で与える必要がある。  表2に当科における静脈栄養時の基質の投与量の例 を示す。新生児外科症例で成熟児の場合、全身状態が 安定する術後2-3日目よりアミノ酸製剤を開始し、新生児 黄疸の改善を待って脂肪乳剤を加え、full strengthで 総熱量70-90kcal/kg/dayになるようにしている。なお、 新生児ではビタミンや微量元素の蓄積量も少ないため、 長期の PN管理を行う必要性がある場合は、欠乏症を 予防するため、総合ビタミン製剤や微量元素製剤の投与 が必要である(表3、表4)。 (4)合併症  静脈栄養を行う上での合併症で、新生児期に最も問 題となるのは肝障害である4)  新生児の静脈栄養に伴う肝障害の特徴は胆汁うっ滞 であり、高度になれば肝硬変から肝不全へと進むことが 知られている15)16)。その原因には、各栄養素の過剰投与 や欠乏などの輸液側因子と、腸管を使用しないことによ る粘膜障害、肝の未熟性、腸肝循環障害や感染といった 生体側因子に分けられるが、未だ明確な結論はでてい ない15)16)。静脈栄養中の肝障害に対する確立した治療 法はないが、まずは適切な栄養評価を行い、必要な投与 熱量、栄養素の選択を行うことが大切である。栄養素の 持続投与ではなく、間歇的投与を行う高カロリー輸液 (cyclic PN、図1)が有用との報告もある17)。治療法は、 肝障害の継続期間が短ければ、少しでも早く経腸栄養 を併用することであり、静脈栄養から経腸栄養へ移行す ることが解決法となる。一方で静脈栄養を回避できない 場合、肝障害が長期に持続している場合には、最近、ω3 系脂肪乳剤(Omegaven®)の有用性が報告されてきて いる16)。現在国内では市販されておらず、個人輸入での使 用となるが、本特集でも他項でその使用について言及さ れている。 表2 静脈栄養時の基質の投与量(一日あたり)

年齢 (ml/kg)水分 (mEq/kg)Na(Cl) (mEq/kg)K (mEq/kg)Ca(P,Mg) (kcal/kg)熱量 (g/kg)(g/kg)アミノ酸 (g/kg)脂肪 (kcal/g)NPcal/N 新生児 80〜120 2〜4 1〜2 0.5〜1.0 70〜90 12〜18 1.3〜1.7 1.0〜2.0 230〜250 乳児 100〜120 3〜6 2〜4 0.5〜1.0 70〜90 13〜17 1.5〜2.0 1.0〜2.0 230〜250 1〜3才 80〜100 3〜4 2〜4 0.5〜1.0 60〜80 12〜15 1.3〜1.7 1.0〜2.0 230〜250 4〜6才 60〜80 3〜4 2〜4 0.5〜1.0 50〜80 10〜15 1.3〜1.7 1.0〜2.0 200〜250 学童 60〜80 2〜3 1〜3 0.5〜1.0 50〜70 10〜13 1.2〜1.5 1.0〜2.0 200〜250 表3 総合ビタミン剤投与量の目安 低出生体重児 成熟新生児 乳児 幼児 学童 一日使用量 1/10 バイアル 1/4 バイアル 1/3 バイアル 1/2 バイアル 1 バイアル 表4 新生児静脈栄養時の微量元素投与量 ASPEN(2004) ESPGHAN(2005) BW<3kg 3kg≦ BW<10kg 低出生体重児 成熟新生児 Fe(μg/kg/day) - - <200 50-100 Zn(μg/kg/day) 400 50〜 250 450〜 500 250(<3m) 100(>3m) Cu(μg/kg/day) 20 20 - 20 Mn(μg/kg/day) 1 1 - 1 Se(μg/kg/day) 1.5〜 2 2 2〜 3 -

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乳を併用する。腸管運動が認められる、消化吸収 能に障害がない疾患では母乳あるいは人工乳の投 与で十分であるが、消化吸収面積の減少する短腸 症候群や腸瘻造設例、消化管吻合を行う症例など では、経腸栄養剤を投与し、徐々に母乳等への移 行を試みるようにすることが必要となることもある。  わが国で新生児、乳幼児用として認められている 薬剤の区分では、経腸栄養剤は、成分栄養剤(ED) のエレンタール®Pのみである。他の経腸栄養剤も 工夫をすれば、応用可能とされているが、実際には アミノ酸組成が比較的母乳に近い点、必須脂肪酸をエネ ルギー比で約8%含有している点などから、母乳や人工乳 が使用できない場合、経腸栄養剤としてはエレンタール ®Pを使用することが多い。ごく最近国内では、食品の区 分での経腸栄養剤として、小児の腎機能に配慮し、非蛋 白カロリー/窒素比を200に設定した、小児用経口経腸 栄養剤(リソース®1.0 ジュニア、アイソカル®ジュニア)が 販売されている。しかし、まだこの製品が新生児に使用 可能かは十分な評価が行われておらず、新生児への応用 が可能かはまだわからない。 (3)投与経路  新生児や乳児は、幼児期以降の患児に比べ、味覚の発 達が悪く、味に問題のある成分栄養剤でも十分に経口す ることが可能である。また、経口摂取することは、身体発 達の点からも重要であるため、可能ならば、経口投与が 勧められる。もちろん、経口摂取が不十分あるいは、不 可能な場合は、経管的に胃または空腸などに投与するよ うな工夫が必要である。 表5 小児用の経腸栄養剤の比較 ED(ED-P) LRD 人工乳 母乳 糖質 デキストリン デキストリン 乳糖 、(オリゴ糖) 乳糖 、オリゴ糖 窒素源 アミノ酸 カゼイン カゼイン、乳清蛋白 乳清蛋白 、カゼイン、タウリン 脂質 ダイズ油 植物油 植物油置換 母乳脂肪 脂肪エネルギー比 9% 20〜30% 40〜50% 40〜50% Cal/N比 223 130〜200 250 370 残渣 極めて少ない 少ない やや多い やや多い 消化 ほとんど不要 やや必要 必要 必要 特徴 小児用組成 すべて成人用 鉄 、ビタミンを強化している IgAなどの免疫物質を含む 保存形態 粉末 粉末 、液状 粉末 母乳パックで凍結

【Ⅴ.経腸栄養】

(1)適応と投与経路  新生児症例における経腸栄養とは、母乳や人工乳、新 生児乳幼児用成分栄養剤の投与をいう。新生児におけ る経腸栄養の適応および投与経路は、在胎週数や児の 状態に左右される。具体的には、在胎32-34週以降に出 生した新生児や病的状態の新生児では、呼吸循環障害 や消化管機能障害がなければ、早期に母乳投与を開始 する1)2)6)7)。在胎32-34週未満に出生した早産児や呼吸 循環が不安定な新生児では、経鼻または経口からの栄 養チューブにより経腸栄養を行う1)2)6)7) (2)製剤の選択(表5)  母乳には児に必要な栄養素が過不足なく含まれ、消 化吸収されやすく、免疫学的にも IgAが多く含まれる利 点があり、新生児に最も有用な経腸栄養剤と考えられ、 第一選択となる1)2)6)18)。母乳が不足する場合には人工 図1 Cyclic PN TPN non-TPN 糖濃度 20.0% 4.3% アミノ酸濃度 5.0% 0.0% 血糖値の変動には十分注意する TPNと non-TPNの糖濃度の 差は徐々に広げていく

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(4)投与量  新生児での経腸栄養での栄養投与量の目標は、栄養 所要量の120kcal/kg/day程度であるが、実際には消 化管の状態を加味し、栄養状態の評価を行いながら、児 の状態に合わせた投与量の設定が必要である。これら の熱量は糖質55-65%、蛋白質15%、脂質35-55%の比 で投与されるのが望ましいとされている19)  経腸栄養剤の投与にあたっては、新生児は消化吸収 機能が未発達の状態であるため、最初は0.3-0.4kcal/ mL前後の濃度で開始する必要がある1)2)。その後、1週間 程度の馴化期間を経て、維持期濃度にもっていく(表6)。 但し、新生児では、成人と同様な1kcal/mLの濃度では 水分が不足するため、維持期濃度は0.6-0.8kcal/mL 程度に留めておくことが大切である。また、新生児で腸 管を初めて使用する際は、可能であれば Bacterial translocation予防も兼ねて、IgAを多く含む初乳を投 与し、その後経腸栄養製剤を投与する。 (5)合併症  経腸栄養の場合でも、チューブ留置による合併症や代 謝上の合併症はあるが、最も多いのは下痢である。経腸 栄養では便性が柔らかくなるのは当然であるが、水様性 となり、回数や便量の増加が問題である。この原因には、 経腸栄養製剤の高浸透圧性、投与速度や濃度が挙げら れている20)が、十分な馴化期間をとり、便性をみながら維 持濃度へ増加していくことで、下痢の頻度は減少させる ことができる。

【Ⅵ . まとめ】

 新生児における栄養管理について概説した。  新生児の栄養管理では、新生児の諸臓器の形態的機 能的な特殊性を十分に考慮し、児の栄養状態の把握を 行い、それに基づいた栄養基質の投与量、投与法の選択 を行う必要がある。 表6 新生児における経腸栄養の馴化スケジュール(成熟児の場合) 投与日 投与製剤の濃度 投与水分量 経腸 経静脈 投与開始日 5%-10% 糖水 維持量の1/4-1/3 維持量の3/4-2/3 2日目 維持濃度の40% 維持量の1/3 維持量の2/3 3日目 維持濃度の40% 維持量の2/3 維持量の1/3 4日目 維持濃度の60% 維持量の2/3 維持量の1/3 5日目 維持濃度の60% 維持量の2/3 維持量の1/3 6日目 維持濃度の80% 維持量の2/3 維持量の1/3 7日目 維持濃度の80% 維持量 ー 8日目 維持濃度 維持量 ー

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参考文献

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