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Mining & Sustainability 30 欧州化学物質規制 REACH と欧州 リスク アセスメントの動向 特集 連載 ロンドン事務所 フレンチ香織 6. カドミウム はじめに 金属資源レポート と欧州リスク アセスメントの動向 REACH 2009年 20

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Mining & Sustainability

〕 (30)  欧州化学物質規制 〝 REACH 〟 と欧州リスク・アセスメントの動向

特集

・連載

〔Mining & Sustainability〕(30)

欧州化学物質規制“REACH”と欧州

リスク・アセスメントの動向

ロンドン事務所

フレンチ香織

6-1. カドミウムコンソーシアム (参加企業 :25社、ブ ラッセル拠点) 6-1-1. コンソーシアムの概要 ICdA は、2007 年 7 月 1 日、REACH 施 行 の 1 か 月 後に、カドミウムコンソーシアムを正式に結成した。 カドミウムコンソーシアムの主な役割は、予備登録の サポート、CSR(化学物質安全性報告書)を含む対象 物質の REACH 登録に要する技術書類一式の準備であ る(ただし現時点では、REACH の“評価”と“認可” の対応はアジェンダに含まれていない)。なお、ICdA は、 国際亜鉛協会(International Zinc Association:IZA)と 同じ事務局が運営しているため、活動内容には共通点 が多い。これは、カドミウムの大部分が亜鉛の副産物 として生産されるためである。 カドミウムコンソーシアムによれば、会員企業の登 録期限は、最初の登録期限である 2010 年 12 月 1 日と なるケースが多い。その理由は、カドミウム及び酸化 カ ド ミ ウ ム は、 従 来 の EU 危 険 物 質 指 令(67/548/ EEC)で CMR 物質(発がん性、変異原性または生殖 毒性のある物質)に分類されており、生産量・輸入量 に限らず最初の登録期限に該当するためである。ただ し、顔料として利用される Cadmium Sulfoselenide や Cadmium Zinc Sulphide は CMR と分類されていない た め、 生 産 量 / 輸 入 量 が 1,000t/ 年 以 下 の 場 合 は、 2010 年に登録する必要が無いとされている。 本コンソーシアムでの対象物質は合計9種で、3つ のサブグループに分かれている。サブグループ 1 は『金 属』でカドミウムの 1 種、サブグループ 2 は『カドミ ウム化合物』で、酸化カドミウム、硝酸カドミウム等 の 7 種を含み、サブグループ 3 は『中間産物』で、硫 酸カドミウムの 1 種がある。 (詳細:http://www.reach-cadmium.eu/pg_n.php?id_ menu=37) 6-1-2. コンソーシアムの動向 ◎2008年12月 ・2008 年 12 月、金属カドミウムのみで 610 企業以上 が REACH の予備登録を行った。カドミウムコンソ ーシアムも他のコンソーシアムと同様、SIEF 運営の 円滑化に向けて、SIEF 形成の第一歩となる同一物質 の定義を HP にて提供した(“SIEF”については、『欧 州化学物質規制“REACH”と欧州リスク・アセスメ ントの動向 −銅−』(「金属資源レポート 2009 年9 月号」)を参照)。 ・既存のカドミウム・リスク・アセスメントは、1997 年1月以来、論評国ベルギーが作成してきた。これ に対して、カドミニウムコンソーシアムの親元とな る ICdA やその他の関連産業団体は、域内の生産、 輸入データ、排出・注入データ、作業場における現 状等に関するデータの提供を積極的に行ってきた。 従って、同コンソーシアムは、REACH 登録に対応 する基本情報(CSR、危険物質の分類など)そして、 技術書類一式のほとんどの要項は、ほぼ準備できて いるとの見解を示していた。 ・EU15 か国を対象とする既存リスク・アセスメント から、REACH により対象が EU27 か国に拡大した ことで、他の金属と同様に追加のリスク・アセスメ ント作業を開始した。 ・NiCd 電池にカドミウムを利用する企業に対する情報 収集のためにも、パナソニック、三洋、Siemens 等 が 加 入 し て い る Rechargeable Battery Association と密接に協力している。 ◎2009年 ・2009 年前半、SIEF にはコンソーシアム非会員も多 く存在するため、同コンソーシアムは、利用状(Letter of Access)を購入することで、コンソーシアムの非 会員でも技術書類を参照できるようにした(詳細は

6. カドミウム

はじめに

 本稿では、『欧州化学物質規制“REACH”と欧州リスク・アセスメントの動向 −カドミウム−』と題して、銅、鉛、 貴金属、ニッケル、亜鉛に引続き、カドミウムコンソーシアムの動向及びカドミウムのリスク・アセスメントの進捗 を紹介したい。なお、本稿は、カドミウムコンソーシアム及び国際カドミウム協会(International Cadmium Association: ICdA)の公式 HP 及び現地インタビュー取材、Eurometaux が公開する REACH Gateway(http:// www.reach-metals.eu)、欧州委員会の共同研究センター(JRC:http://ecb.jrc.ec.europa.eu/esis)等に基づいて作成 した。

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〕 (30)  欧州化学物質規制 〝 REACH 〟 と欧州リスク・アセスメントの動向 6-1-4 に記載)。 ・リード登録企業(Lead Registrant:SIEF メンバー での共同提出の際の代表者)は、2010 年9月までに、 カドミウム及び同化合物の登録を完了するよう目標 を立てた。 ・REACH 登録に要する技術書類では、物質の曝露シ ナリオ(『欧州化学規制“REACH”と欧州リスク・ アセスメントの動向 −亜鉛−』の補足⑬(「金属資 源レポート 2010 年3月号」)を参照)を明示しなけ ればならない。従って、亜鉛コンソーシアムと同様、 本コンソーシアムは、会員企業のための包括的な曝 露シナリオを作成するために、SIEF に対する一般公 開ウェブサイトで、カドミウムコンソーシアムが認 識しているカドミウム及び同化合物等の各利用段階 を示し(例は、下図②を参照)、それ以外の利用段階 が SIEF 会員の中で存在する場合は、情報提供する よう呼び掛けた。 6-1-3. コンソーシアムの主な課題 欧州では、カドミウムの発がん性や環境汚染等が注 視されているため、主なカドミウムの用途である NiCd 電池の製造も制限されており、利用量が減少傾向にあ る。従って、ICdA の General Manager である Christian Canoo 博士は、「曝露シナリオの追加も少ないと予想さ れ、特に注目すべき課題は無い」と述べており、2010 年3、4月で、全ての技術書類の Read-across を完成し、 2010 年9、10 月までにカドミウムの登録を完了する予 定である。一方、カドミウム及びカドミウム化合物の 一部の用途は、REACH 規則の制限(Restriction)の 項目にて既に禁止されているが、CMR 物質として、今 後も REACH の認可(Authorisation)で、更なる利用 制限が拘束される可能性がある。従って、コンソーシ アムは現状、REACH 認可の対応を計画していないが、 同博士は「今後は状況に応じて対応するであろう。」と の見解を示していた。 6-1-4. その他の情報 カドミウムコンソーシアム会員企業は 25 社で、コン ソ ー シ ア ム の 公 式 HP に 掲 載 さ れ て い る。 例 え ば、 Boliden(本社:Stockholm)、Umicore(本社:Brussels) が加入しており、金属カドミウムのリード登録企業は、 Xstrata(本社:スイス)である。なお、総会は、春季・ 秋季の2回行われる。 カドミウムコンソーシアムの加入料は、物質の生産 量 / 輸入量、そして登録する物質の数によって異なる。 その他のサービスとして、コンソーシアムは、他のコ ンソーシアムに先立ち、利用状(Letter of Access)の サービス提供を 2009 年9月 30 日より開始した。なお、 図1. カドミウムの各利用段階 (出典:カドミウムコンソーシアムの公式 HP) (詳細: http://echa.europa.eu/doc/press/na_09_19_du__communication_final_20091012.pdf     http://www.reach-cadmium.eu/pg_n.php?id_menu=33)

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本利用状のアクセス内容は、亜鉛コンソーシアムの内 容と同じで、例えば、金属カドミウム生産・輸入が5t / 年未満で、2010 年 11 月までに登録を行う企業に対し て は、27 千€と設定されている(利用状の詳細は、 http://www.reach-cadmium.eu/pg_n.php?id_menu=32 を参照)。 6-2. カドミウムのリスク・アセスメント (以下、RA) 6-2-1. EU RAに提供していたデータ等を、REACH登録 で利用 前述 6-1-2 のとおり、論評国ベルギーが作成してきた 欧州委員会のカドミウム・リスクアセスメント(以下、 EU RA) に 対 し て、 コ ン ソ ー シ ア ム の 親 元 と な る ICdA 及び産業界は、域内の生産、輸入データ、排出・ 注入データ、作業場における現状等に関するデータの 提供を積極的に行ってきた。また、業界は自主的なリ スク評価調査も実施してきたため、REACH 登録に要 する技術書類一式や化学物質安全性報告書のほとんど は、従来から分析してきたデータから適用できる状態 である。なお、カドミウム及び酸化カドミウムは、産 業界が CMR 物質と認識しているため、カドミウムを 扱う産業界は安全性を最も重視しており、ICdA は、 カドミウムの安全な取り扱いに関するガイダンスを早 期から作成してきた。従って、REACH 登録に要する 曝露シナリオでのリスク削減ストラテジーも充実して いる模様である。 6-2-2. EU RAの沿革 1997 年1月、欧州委員会は、金属カドミウム及び酸 化カドミウムを既存化学物質のリスク・アセスメント に関する規則(793/93/EEC 及び 1488/94/EC)対応の 優先物質と指定した。このことによって、論評国ベル ギーが、本2種の欧州における RA を担当することと なった。なお、ベルギーからの論評の管轄部門は、食 物 連 鎖 安 全 環 境 局(Federal Public Service Health, Food Chain Safety and Environment)である。 6-2-3. EU RAの動向 〜2007年5月、軟水の生態毒性に 関する追加調査を完了 〜 論評国ベルギーが行ってきたカドミウムの EU RA (ドラフト)は、健康(人体への影響)パート及び環境 パート共に、2004 〜 2005 年に終了した。一方、軟水 中におけるカドミウムの生態毒性(Ecotoxicity)につ いては、論評国のベルギーから調査要請の勧告を受け、 欧州のカドミウム産業界が資金支援をして、ICdA 及 び産業界によって行われた。ICdA の Christian Canoo 会長によれば、この追加調査は、2007 年5月 31 日に 完了している。 6-2-4. EU RAの内容 〜リスク削減ストラテジーが重 要〜 論評国ベルギーが実施してきた EU RA は、欧州委 員 会 の 共 同 研 究 セ ン タ ー(JRC:http://ecb.jrc.ec. europa.eu/esis)で公開されている。また、同公式サイ トでは、2008 年6月 14 日に欧州連合が発表した金属 及び酸化カドミウムのリスク削減ストラテジー(官報 2008/C 149/03、官報 2008/446/EC)も入手可能である。 以下、これらを参考にして、金属カドミウムについて EU RA の結論の要点を紹介する。 カドミウムコンソーシアムに関する参考資料: http://www.reach-cadmium.eu http://www.reach-metals.eu ※本 RA によれば、欧州では、カドミウムの主な用途は NiCd 電池の製造で、その他、顔料や塩化ビニールなど の安定剤(Stabilizer)、そしてペイント等の表面処理等にも利用されている。 Ⅰ)健康(人体への影響)パート 内容:人体への影響、毒性 / 有害性に関する評価 要点: ・神経毒性、特に発育中の脳に関する神経毒性の試験情報が十分でない。神経毒性の性質、そして曝露影響及び 神経毒性への作用機能をさらに正確に分析するためには、疫学的且つ実験的情報が必要と考えられる。一方、 しきい値なしの発がん性(Non-threshold Carcinogen: 論理上、許容値が無く、微量で発がん性の反応が生じ うること)は確認されているため、エンドポイントの発達毒性(End point developmental toxicity)の追加 情報に影響されない厳重なリスク管理方法が要求される。

・作業場での労働者のリスク評価:神経毒性に関する追加試験及び追加情報が必要。吸入曝露による人体リスク (急性毒性、発がん性、変異原性、生殖毒性等)を軽視できないため、特別なリスク削減措置が必要。

・消費者:神経毒性に関する追加試験及び追加情報が必要。カドミウム含有の日曜大工道具を利用する際の、急

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〕 (30)  欧州化学物質規制 〝 REACH 〟 と欧州リスク・アセスメントの動向 6-2-5. 産業界の EUリスク・アセスメントの反応と今後 の対策

ICdA の Christian Canoo 会長は、「亜鉛は環境パー トが課題、カドミウムは健康パートが課題」と述べる。 上述の 6-2-4. のとおり、カドミウムは水界生態系への 重度な影響が懸念され、また、発がん性も確認されて いるため、リスク削減措置が、持続可能な利用のため にも重要と考えられる。EU RA の環境パートに関して は、ICdA 及び産業界によって、軟水中におけるカド ミウムの生態毒性(Ecotoxicity)の追加調査が行われ たこともあり、特に異議が無いと Canoo 博士は述べて いた。しかし、健康(人体に対する影響)パートに関 しては、CMR 要素が懸念され、厳重なリスク管理が必 要と認識されている。従って、ICdA は、カドミウム の安全利用ガイダンスを多く作成し、最近では、2009 年5月に ICdA 会員のための、カドミウムのリスク削 減ストラテジーを新たに作成し、発表した。 現在、カドミウムは環境及び人体に対して有害物質 と認識され、欧州では複数の指令・規則によって、カ ドミウムの利用の制限またはリスク削減措置がなされ 性の呼吸障害の誘発及び発がん性・変異原生の懸念や、(輸入された)装飾品を着用した際の、金属カドミウ ムの皮膚曝露による発がん性・変異原性の懸念があるため、特別なリスク削減措置が必要。ただし、NiCd 電 池の使用に関しては、金属カドミウムは NiCd 電池の製造時のみに利用されるため、消費者のカドミウムの曝 露は無視できると推測する。 Ⅱ)環境パート 内容:水系(Aquatic)、陸上(Terrestrial ≒土壌(Soil))、堆積物(Sediment)、海洋(Marine)区域での曝露 評価(実測と実測の限界を埋めるための推算)、そして各区域に棲息する生命体への影響評価。加えて、二次 中毒(食物連鎖を通じた高蓄積毒性)及び、間接的な人体への曝露に関する評価。 要点: ・カドミウム製錬所、(顔料、合金製造等の)カドミウム加工工場、リサイクル工場、埋立地などで、水界生態 系への影響が懸念される。結論、特別なリスク削減措置が必要。 ・陸上生態系、下水処理場での微生物、二次中毒へのカドミウム影響が懸念され、特別なリスク削減措置が必要。 なお、大気へのカドミウムのリスク評価は実施されていない。 まとめ: 欧州委員会の共同研究センターの EU RA の分析では、総合的には以下の結果が得られた。 上図の(ⅰ)は「追加情報 / 追加試験が必要」、(ⅱ)は「更なるリスク回避及び追加試験が不要」、(ⅲ)は、「リ スク削減が必要。既に適用されているリスク回避方法に注意すべき」を示す。 (情報元: 欧州委員会の共同研究センター(JRC:http://ecb.jrc.ec.europa.eu/esis)から入手できる公開 Finish RAR(RA 報告書)及び官報 2008/C 149/03、官報 2008/446/EC に基づいて作成)

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ている。例えば、労働指令(2004/37/EC、98/24/EC、 2004/37/EC)、 使 用 制 限 に 関 す る 規 則(76/769/EEC での制限が REACH 規則(EC No.1907/2006)へ移行)、 RoHS 指 令(2002/95/EC)、 水 枠 組 み 指 令(2000/60/ EC:『欧州化学規制“REACH”と欧州リスク・アセス メントの動向 −亜鉛−』(「金属資源レポート 2010 年 3 月号」)の補足⑮を参照)等でカドミウムが含まれてい る。今後も、カドミウムの持続可能な開発を目指すた めにも、ICdA は、カドミウムの厳重なリスク管理を 設定し、十分安全に利用できる方法を推進していく姿 勢を見せていた。なお、欧州ではカドミウムの生産・ 使用は減少基調にあるが、特に中国でのカドミウムの 使用の増加を懸念して、2011 年までにカドミウムの安 全利用ガイド(Safe Use Guide)を完成する予定である。

※補足:Canoo 博士に取材したところ、現在、欧州 でのカドミウムの人体への曝露は、実は NiCd 電池で はなく、肥料に一番多く見られると分析していた。同 氏は、適量のカドミウムは作物にとって有益と分析し ていたが、日本でのイタイイタイ病等の過去の汚染を 真摯に受け止め、安全値での利用を最重視している。 参考資料: http://ecb.jrc.ec.europa.eu/esis http://www.jogmec.go.jp/mric_web/kogyojoho/2007-09/MRv37n3-06.pdf http://www.jogmec.go.jp/mric_web/EU_eco/EU_26.html http://ec.europa.eu/health/ph_risk/committees/04_scher/docs/scher_o_043.pdf 6-3. カドミウムの分類・ラベル表示 6-3-1. 分類・ラベル表示の義務 REACH 規則のもと、EU 全域における製造業者及び 輸入者には以下の義務が課せられる。 ① ECHA へ届出:2010 年 12 月1月までに、既存入 手可能データに基づく共通的に合意された危険物質の 分類・ラベル表示を、登録手続きの一部または別途、 ECHA へ通知しなければならない。これは、後に欧州 委員会が REACH の「認可」物質の決定や、今後の新 CLP 規則の修正及び追加に利用されることとなる。 ② 2010 年 12 月1日迄にラベル表示:REACH 規制 に派生する新 CLP 規則により、新 CLP 規則(加えて、 新 CLP 規則 ATP-1 の更新版)で分類されている化学 物質を EU 全域内へ輸出する場合は、2010 年 12 月1 日以降は、新 CLP 規則 ATP-1 に基づき、安全データ シートやラベル表示に危険性・有害性・毒性を表示し なければならない(新 CLP 規則に関しては、『欧州化 学物質規制“REACH”と欧州リスク・アセスメントの 動向 −銅−』の補足④を参照)。 6-3-2. 分類・ラベル表示の動向 前述の 6-2-3. の EU RA の結果のもと、コンソーシア ムが対象とする9種のカドミウム物質のうち、金属カ ドミウム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、硫酸カ ドミウムは、発がん性カテゴリー1(発がん性の可能 性あり)に分類され、CMR 物質(発がん性、変異原性 または生殖毒性のある物質)となった。ただし、変異 原生及び生殖毒性に関しては、それらは予想されるが、 確証するには未だ証拠が不十分ということからか、カ テゴリー2に分類されている(詳細は新 CLP 規則の原 文を参照)。コンソーシアムの Canoo 博士は、現時点 では、本 CLP 規則の記載に異議は無く、公式な分類と ラベル表示で十分であると捉えている。 例:金属カドミウム及び酸化カドミウムの分類及びその分類の定義 (出典:新 CLP規則の原文に基づいて作成) Cadmium (non-pyrophoric) EINECS:231-152-8、 Cadmium oxide (non-pyrophoric) EINECS:215-146-2

Carc. 1B May cause cancer

Muta. 2 Suspected of causing genetic defects

Repr. 2 Suspected of damaging fertility or the unborn child

Acute Tox. 2 * Fatal

STOT RE 1 Specific target organ toxicity — repeated exposure

Aquatic Acute 1 (Acute) Hazardous to the aquatic environment

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〕 (30)  欧州化学物質規制 〝 REACH 〟 と欧州リスク・アセスメントの動向 6-4. おわりに ICdA は、REACH 規則に対応するためにも、即座に コンソーシアムを設立した。それにより、SIEF の対応 や、多種の利用法に対応できる曝露シナリオの作成な どを率先してサポートしてきた。欧州ではカドミウム は有害物質として認識され、使用を制限する傾向があ り、カドミウムの生産・利用は減少基調にある。従って、 REACH の登録技術書類の準備に関しては、曝露シナ リオの追加作成も少ないとされ、2010 年9月には問題 なく、リード登録企業によって、REACH 第一登録期 限の実登録が行われる予定である。 カドミウムの問題は、人体に対する影響評価である。 カドミウムは人体に影響する CMR 物質としてすでに 多くの規制によって使用制限・利用管理が警告されて きた。今後も、認可でカドミウムの利用が更に制限さ れる可能性があるため、その場合は、徹底したリスク 削減ストラテジーの提示のもと、社会経済評価(Socio Economic Analysis)で意見すると予想される。

7. あとがき〜 REACH 規則を通じた、金属

産業団体の変貌〜

JOGMEC ロンドン事務所では、REACH 規制の施行 以来、金属関連業界の動向を追ってきた。REACH 規 制が 2007 年 6 月 1 日に施行された当初は、金属関連業 界は、コスト的な負担と時迫る登録期限、そしてリスク・ アセスメントの大掛りな手間などに不安を抱き、激し く反論していた。その結果、鉱石・精鉱に関しては、 自 然 界 に そ の ま ま 存 在 す る 物 質 と し て、“Not Chemically Modified(物質の化学構造が変化しない)” である場合は、登録を免除することが認められたが、 それ以外の登録期限の延期などの提案は承認されなか った。その間、REACH 規制では、欧州域内で1t/ 年 以上の化学物質を生産・輸入する企業が登録を逃すと、 上市(Place on the market)が法律違反となるため、 産業界は、“Learning by doing(実行しながら学ぶ)” という方針で REACH 準備の円滑化を行った(図 2 参 照)。 更には、幾つかの金属産業界は、REACH 規則によ って『期待する点』も見出した。従来は、化学物質の リスク・アセスメントに関する規則(793/93/EEC 及 び 1488/94/EC)によって、EU 論評国が優先物質に対 して評価を行い、それが参考となって使用制限などが 決定されてきたが、REACH 規則の適用により、欧州 圏内で1t/ 年以上製造・輸入される物質に関して、 企業が協力し合って、リスク・アセスメント(安全性 評価)を提出することにより、金属関連業界からの新 リスク評価が提案できるようになった。従って、金属 産業界は、『人間の健康と環境を有害な化学物質から保 護する』という REACH の理念に則って、REACH 登 録で、科学的論拠データやリスク削減対策を提出し、 今後、それらが欧州の環境規制にどのように影響して いくのかを期待しているようにも感じ取れた。 総じて、REACH 規則に対する金属関連業界の反応 は、無論、コスト面等の負担から不満は残っているが、 持続可能な開発のためにも、この 3 年という短期間で、 受身でとにかく反対するという消極的な態度から、与 えられた REACH 規制という条件を自らの力で如何に 克服するかという積極的な態度へと大きく切り替わっ たと評することができる。 今後とも、金属関連業界が様々な規制強化の流れの 中で、どのように戦略を講じていくのか注目したい。 (2010.2.12) 参考資料: ・新 CLP 規則の原文: http://ec.europa.eu/enterprise/sectors/chemicals/documents/classification/index_en.htm http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2008:353:0001:1355:EN:PDF ・新 CLP 規則の初改訂 ATP-1 の原文: http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2009:235:0001:0439:EN:PDF

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図2. 2007年以降、産業界に見られた一般動向 (銅、鉛、亜鉛、ニッケル、カドミウムコンソーシアムの調査より) ※各 REACH コンソーシアムの公式ウェブサイト 銅コンソーシアム:http://www.eurocopper.org/copper/reach.html 鉛コンソーシアム:http://www.reach-lead.eu ニッケルコンソーシアム:http://www.nickelconsortia.org 亜鉛コンソーシアム:http://www.reach-zinc.eu カドミウムコンソーシアム:http://www.reach-cadmium.eu 貴金属コンソーシアム:http://www.epmf.be 2007 年〜 2008 年前半:登録準備を代行するコンソーシアムを結成、 情報管理方法などの運営規程を決定 2008 年 12 月 1 日迄:予備登録のサポート (同一物質の定義、特に中間産物の物質定義を研究) 2008 年 12 月:予想外に対応物質の予備登録者が多かったため、 SIEF の運営サポートを開始(同一物質を定義するための取り纏めなど) 2009 年前半:非会員の登録者のためにも、 利用状(Letter of Access)を作成 2009 年〜 2010 年 12 月 31 日の登録期限まで: ・専ら登録技術書類一式及び CSR の準備 (新 CLP 規則の対応、追加 Read-Across の分析、追加情報の収集、 特に、曝露シナリオの作成に注力) ・Eurometaux(欧州非鉄金属協会) の目標どおり、 第一登録期限の物質に対しては、 2010 年 9 月 30 日までに登録を完了するよう計画

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〕 (30)  欧州化学物質規制 〝 REACH 〟 と欧州リスク・アセスメントの動向 表2:REACH規則の対応及びリスク・アセスメント(以下、RA)のまとめ 銅 鉛 ニッケル 亜鉛 カドミウム 貴金属 + レニウム コンソーシアム 創立日 2008年2月26日、 公式に結成 2007年7月6日、 公式に結成 2007年1月23日、 公式に結成 2007年7月1日、 公式に結成 2007年7月1日、 公式に結成 2007年9月15日、 公式に結成 予備登録の実行 企業数 銅金属のみで、 4,500企業以上 金属鉛のみで、 約3,200企業 金属ニッケル及びそ の 化 合 物 で、5, 000 企業以上 金属亜鉛のみで、 3,690企業 金属カドミウムのみ で、610企業以上 N/A Letter of Access 有 有 有 有 有 現在作成中 2010年2月時点の 課題 ・ 中間産物の登録準 備 (※なお、銅化合物は 非対応) ・登録期限 ・中間産物の問題は 解決し、本対象を 19種に厳選 ・曝露シナリオの作 成 ・特になし ・登録期限 ・曝露シナリオの  作成 ・特になし 2013年以降の登録が 多く、準備期間は長 い が、 対 象 物 質 は 120種と多い。 リード登録企業の 登録予定日 銅金属及び銅の中間 産物を2010年夏まで に登録予定 鉛と鉛化合物、中間 産物全てを、2010年 9月までに登録予定 金属ニッケル及び硝 酸ニッケルは2010年 Q2、複数のニッケル 化 合 物 は2010年 Q3 予定 亜鉛及びその化合物 は2010年9月を予定 カドミウム及びその 化 合 物 は2010年9月 を予定 銀は2010年、Pt・Pd は 2013 年 で、2018 年 が 登 録 期 限 の 物 も、2013年までに準 備完了 REACH 認可・制限の懸念 現在のところ、無し。 (銅金属(塊状)は、 CMRでは無いと論証 済) 有:仏当局が、2010 年4月15日 に、 装 飾 ジュエリーの鉛及び その化合物の使用の 制限を提案する意図 を宣言。 有:仏当局がめっき 部 門 の CMR物 質 の 使用を懸念し、硫酸 ニッケル及び炭酸ニ ッケルを認可の候補 物質にするよう討議 中。 無 有:CMR物質である た め、 認 可 で Cdの 利用が更に制限され る場合は、社会経済評 価(Socio Economic) で意見する姿勢。 現在のところ、 無し。

既存 RAの種類 産業界の自主的RA (VRA) (VRAL) 産業界の自主的 RA EU RA EU RA EU RA 無

従来の RAの実行者 RA実行者は、コンソ ーシアムの親元であ る ECI (※論評国は、 イタリア) RA実行者は、コンソ ーシアムの親元であ る ILA、そして ILZRO (VRAL評価担当国は オランダ) RA実行者は、論評国 デンマーク (産業界 は 自 主 的 に RAを 行 い、科学論拠データ を提供) RA実行者は、論評国 オランダ (産業界は 自主的に RAを行い、 科学論拠データを提 供) RA実行者は、論評国 ベルギー (産業界は 自主的に RAを行い、 軟水での生態毒性の 評価は産業界の RA が採用) 各企業 開始時期 2000年、 公式に開始 2002年1月、 公式に開始 1996年、EU RAが開 始(産業界の自主的 RA は、2000 年 公 式 に開始) 1995年、EU RAが開 始 (産業界の自主的 RA は、2000 年 に 公 式に開始) 1997 年 1 月、EU RA が開始 N/A ドラフト完了時期 2005年5月、 欧 州 委 員 会 及 び EU加 盟 国 へ 提 出。2008年4月 には審議が完了。 2005 年 5 月、EU 加 盟国の技術専門家へ 提出され、一旦完了。 EU RA:2006年に健 康パートを完了。 2008年10月に環境パ ートを完了。 EU RA:2004年に健 康パートを完了。 2008年5月に環境パ ートを完了。 EU RA:2004-2005 年に完了。追加分は 2007年5月31日に完 了。 N/A RAの課題 (2010年2月時点) RAの公開可能な範囲 を検討。 REACH の 登 録 で、 生物学的利用能別の 鉛影響評価や、BLM などを適用して土壌 及び水中に於ける精 度 の 高 い PNEC・ PECを 更 新 す る 予 定。 産 業 界 は、REACH 登録で、訴訟問題と なっているニッケル 化合物の発がん性を 否定するために、産 業界の新たな分析結 果を提示する予定。 産 業 界 は、REACH の登録で、メソコスム 実 験(Mesocosm)を 使って、精度の高い PNEC( 予 測 無 影 響 濃度)を提示し、水 枠組み指令の対象候 補から除外されるこ とを目指す。 特になし。 リスク削減ストラテ ジーの強化。 N/A

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