Title
琉球諸島におけるシマクサラシ儀礼の民俗学的研究(
Text_全文 )
Author(s)
宮平, 盛晃
Citation
Issue Date
2016-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12000/33728
Rights
論 文 題 目
琉 球 諸 島 に お け る シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 民 俗 学 的 研 究
平 成 27 年 度
琉 球 大 学 大 学 院
人 文 社 会 科 学 研 究 科
比 較 地 域 文 化 専 攻
氏 名 宮 平 盛 晃
目 次 序 章 先 行 研 究 と 課 題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第 一 節 先 行 研 究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第 二 節 課 題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 第 三 節 研 究 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 第 一 章 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 諸 相 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 第 一 節 分 布 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 第 二 節 名 称 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18 第 三 節 目 的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 第 四 節 祈 願 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 第 二 章 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 第 一 節 防 災 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47 第 二 節 屠 殺 方 法 と 場 所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58 第 三 節 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 の 分 析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・63 第 四 節 シ マ ク サ ラ シ と 鬼 餅 ( 肉 と 餅 ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83 第 三 章 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 期 日 と 定 期 化 説 の 検 証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 第 一 節 期 日 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 第 二 節 定 期 化 説 の 検 証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・116 第 四 章 屠 ら れ る 動 物 の 変 遷 と 意 味 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 第 一 節 動 物 の 種 類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127 第 二 節 動 物 の 変 遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 第 三 節 屠 ら れ る 動 物 の 意 味 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・133 終 章 総 括 と 課 題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139 参 考 文 献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・151 聞 取 り 調 査 ( 調 査 年 ・ 話 者 一 覧 ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・155
序 章 先 行 研 究 と 課 題 琉 球 諸 島 に は シ マ ク サ ラ シ と 呼 ば れ る 儀 礼 が あ る 。 村 へ の 災 厄 の 侵 入 を 防 ぐ こ と を 主 眼 と し た 村 落 レ ベ ル の 儀 礼 で 、 主 に 動 物 の 骨 を 挟 ん だ 左 縄 が 村 の 入 口 に 張 り 渡 さ れ る 。 本 儀 礼 は 、2002~ 15 年 ま で の 悉 皆 調 査 に よ っ て 、沖 縄 諸 島 、宮 古 諸 島 、八 重 山 諸 島 と 琉 球 諸 島 全 域 に 広 く 、 か つ 高 い 密 度 で 分 布 す る こ と が 分 か っ て き た 。 そ の 名 称 や 期 日 、 屠 ら れ る 動 物 の 種 類 や 防 災 方 法 な ど に は 、多 様 な バ リ エ ー シ ョ ン や 地 域 的 特 色 が み ら れ る 。 具 体 的 に は 、 ま ず 、 沖 縄 本 島 中 南 部 や 先 島 諸 島 で は 主 に シ マ ク サ ラ シ と 呼 ば れ る が 、 沖 縄 本 島 北 部 や 中 部 で は ハ ン カ や カ ン カ ー と 呼 ば れ る 。 そ の 他 、 フ ー チ ゲ ー シ ( 流 行 病 返 し )や フ ニ サ ギ ー( 骨 下 げ )と い っ た 儀 礼 の 目 的 や 行 為 に 関 す る 名 称 も み ら れ る 。ま た 、 儀 礼 の 大 半 は 実 施 月 の 定 ま っ た 年 中 行 事 で あ る も の の 、 地 域 差 が 大 き く 、 1~ 12 月 ま で の す べ て の 月 に 儀 礼 が 確 認 で き た 。 さ ら に 、 流 行 病 の 蔓 延 に 際 し て 、 臨 時 に 行 う 事 例 も あ る 。 儀 礼 に 使 わ れ る 動 物 の 種 類 も 多 様 で 、 村 落 や 地 域 に よ っ て 、 牛 の ほ か 、 馬 や 豚 、 山 羊 、 鶏 な ど が 使 わ れ る 。 防 災 の 方 法 に も 地 域 的 特 徴 が あ り 、 沖 縄 本 島 中 南 部 で は 、 村 の 入 口 に 骨 を 挟 ん だ 左 縄 を 張 り 渡 す 方 法 が 一 般 的 で あ る の に 対 し て 、 北 部 で は 左 縄 は 使 わ ず 、 骨 や 肉 だ け が 路 上 に 並 べ ら れ る 。 同 じ 先 島 諸 島 で も 、 肉 や 骨 を 縄 に 挟 む 方 法 が 多 い 宮 古 諸 島 に 対 し て 、 八 重 山 は 、 縄 に は 動 物 の 血 を ぬ り 、 骨 肉 で は な く 塩 や ニ ン ニ ク を 吊 る 例 が 多 い 。 本 論 で は 、 主 に シ マ ク サ ラ シ や カ ン カ ー と 呼 ば れ 、 動 物 を 用 い 、 防 災 を 目 的 と す る 村 落 レ ベ ル の 儀 礼 を シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 と し て 扱 う 。 本 論 は 、 悉 皆 調 査 に よ り 確 認 で き た シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 整 理 分 析 を 行 い 、 儀 礼 の 実 態 を 明 ら か に し た 上 で 、 先 行 研 究 で 提 示 さ れ た シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に 関 す る 仮 説 の 検 証 や 、 問 題 に つ い て 検 討 す る も の で あ る 。 第 一 節 先 行 研 究 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 全 国 の 防 災 儀 礼 の 1 つ と し て 捉 え 、 儀 礼 を 構 成 す る 名 称 、 期 日 、 意 識 さ れ る 災 厄 、 動 物 、 吊 さ れ る も の の 意 味 な ど に 関 し 、 様 々 な 指 摘 や 仮 説 を 提 示 し た の が 小 野 重 朗 で あ る 。 小 野 は 以 下 の 点 か ら 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 日 本 全 国 に 分 布 す る 防 災 儀 礼 の 1 つ と 捉 え た 。ま ず 、奄 美 の 加 計 呂 麻 島 と 喜 界 島 の 多 く の 村 落 で 、旧 6 月 ,10 月 な ど の 庚 申 の 日 に 行 わ れ る カ ネ サ ル 儀 礼 に つ い て 、 そ の 内 容 か ら 、 牛 や 豚 、 山 羊 な ど の 骨 肉 を 悪 病 か ら 村 落 を 守 る た め に あ る 場 所 に 吊 す も の と 、 カ ー サ 餅 を 束 ね 家 に 吊 っ て 子 供 の 健 康 を 願 う も の の 2 つ に 分 け ら れ る と し た 。 カ ネ サ ル と 内 容 の 類 す る 沖 縄 の 儀 礼 が 、 シ マ ク サ ラ シ と ム ー チ ー で あ る と い う 。期 日 の 地 域 差 が 大 き い シ マ ク サ ラ シ の 中 に 、12 月 8 日 の ム ー チ ー と 同 日 の 例 が 多 い 点 か ら 、 両 儀 礼 を 同 系 の 儀 礼 と 捉 え た [ 小 野 1970:32-33]。 さ ら に 、12 月 8 日 と い う 期 日 や 防 災 と い う 目 的 、方 法 な ど の 類 似 性 か ら 、南 九 州 の ト
キ 儀 礼 、 北 九 州 か ら 本 州 に 広 く 分 布 す る コ ト 儀 礼 な ど も 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 や カ ネ サ ル 儀 礼 と 同 系 の 儀 礼 で あ る と し た 。具 体 的 な 共 通 点 と し て 、(1)み な 病 気 な ど の 厄 、厄 神 を 除 け よ う と す る 傾 向 が あ る 。 (2)2 月 と 12 月 の 8 日 と い う 期 日 が 、 シ マ ク サ ラ シ と コ ト で 一 致 す る 。(3)部 落 や 家 の 入 口 に 食 物 、ま た は そ れ に 関 与 し た も の を 吊 り 下 げ る 。例 え ば 、骨 、ム ー チ ー の 葉 、箸 、竹 籠 、藁 苞 で あ る 。(4)吊 り 方 が す だ れ 状 で あ る 、と い う 点 を 挙 げ た [ 小 野 1970:34]。 そ し て 、 全 国 の 防 災 儀 礼 を 名 称 、期 日 、儀 礼 に 意 識 さ れ る 来 訪 神 、防 災 方 法 、農 耕 と の 関 係 と い う 5 つ の 項 目 毎 に 分 析 し た 。 単 純 で 具 体 的 な 呼 称 で 、 流 行 病 と い う 具 体 的 な 災 厄 を 意 識 し 、 餅 で は な く 肉 を 吊 し 、 南 九 州 の よ う な 農 耕 と の 関 係 が う か が え る 事 例 が み ら れ な い と い う 特 徴 か ら 、沖 縄 の シ マ ク サ ラ シ は 日 本 の 防 災 儀 礼 の 古 形 で あ る と 捉 え た[ 小 野 1979:20-27]。 全 国 的 な 防 災 儀 礼 の 調 査 と 、 分 析 を 踏 ま え た 上 で の 実 証 性 に 基 づ い た 仮 説 や 指 摘 は 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 研 究 す る 上 で 非 常 に 重 要 と 考 え ら れ る 。 本 論 の 論 点 と な る 「 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 」、「 期 日 と 定 期 化 説 の 検 証 」、「 屠 ら れ る 動 物 の 変 遷 と 意 味 」 に 関 す る 先 行 研 究 を テ ー マ ご と に 整 理 し た い 。 ま ず 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 論 を め ぐ る 問 題 に 考 察 を 試 み た 研 究 者 と し て 、 山 下 欣 一 が 挙 げ ら れ る 。 山 下 は 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 奄 美 諸 島 か ら 琉 球 諸 島 の 広 い 範 囲 で 行 わ れ て い る 動 物 供 犠 の ひ と つ と し て 捉 え た 。 南 島 に お い て 共 同 体 が 関 与 し て 行 う 動 物 供 犠 を 以 下 の 5 系 列 に 分 類 し た 。(1)ユ タ が 司 祭 す る 系 列 、(2)年 中 行 事 と し て 、部 落 共 同 体 が 行 う 系 列 、 (3)新 築 儀 礼 に 関 す る 系 列 、 (4)葬 制 と 関 連 す る 系 列 、 (5)悪 疫 が 流 行 し た 際 、 動 物 の 血 を 塗 っ た 左 縄 を 部 落 の 入 口 や 門 に 張 る 系 列 の 5 つ で あ る 。計 21 例 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 地 域 や 村 落 ご と に 整 理 し 、定 期 的 な シ マ ク サ ラ シ を (2)系 列 、不 定 期 の シ マ ク サ ラ シ を (5)系 列 と し て 捉 え て い る [ 山 下 1969:70-72]。 さ ら に 、 琉 球 諸 島 に お け る 動 物 供 犠 に 関 す る 予 備 的 考 察 を 行 っ て い る 。 山 下 は 、 動 物 の 儀 礼 的 屠 殺 、 動 物 の 様 体 を 象 徴 す る 肉 の 供 え 方 、 動 物 の 聖 地 で の 屠 殺 、 聖 地 へ の 肉 の 供 進 と い う 4 つ の 行 為 が み ら れ る 儀 礼 を 動 物 供 犠 と 捉 え た [山 下 1982:241-243]。具 体 的 に は 、ウ シ ヤ キ( 名 護 市 世 富 慶 、安 和 )、ワ ー コ ン コ ロ ス ニ ガ イ( 旧 伊 良 部 町 佐 良 浜 、旧 平 良 市 池 間 )、結キ ツ願ガ ン( 石 垣 市 川 平 )、節シ チ( 八 重 山 諸 島 )、神 祝カ ン ヨい( 石 垣 市 四 箇 )、竜 宮 祭( 竹 富 町 竹 富 )、9 月ク ン ガ チ大 願 いフ ウ ニ ガ イ( 竹 富 町 竹 富 )の 9 例 で あ る 。9 例 と は 別 に 、旧 伊 良 部 町 東 区 と 佐 良 浜 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 扱 っ た が 、そ の 具 体 的 な 供 犠 的 要 素 の 指 摘 は 行 っ て い な い 。 浜 田 泰 子 は 、『 文 化 人 類 学 事 典 』の「 動 物 な ど を 儀 礼 的 に 屠 殺 し 、こ れ を 神 霊 そ の 他 に 捧 げ る 行 為 」と い う 供 犠 の 定 義[ 佐 々 木 1987:221-222]を 踏 ま え 、シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 供 犠 と 捉 え た [浜 田 1992:230]。 具 体 例 と し て 、 守 護 神 や 祖 先 神 に 肉 を 供 え る 行 為 ( 旧 玉 城 村 中 山 ) と 、 動 物 を 儀 礼 的 に 殺 す 行 為 ( 瀬 戸 内 町 西 阿 室 ) を 挙 げ た 。 萩 原 左 人 は 、 一 般 に 供 犠 の 儀 礼 は 、 ① 対 象 動 物 の 死 、 ② 神 霊 へ の 供 献 、 ③ 参 会 者 に よ る 共 食・饗 宴 な ど の 要 素 に よ り 構 成 さ れ る と い う 渡 辺 欣 雄 の 指 摘 [渡 辺 1977:87-89]を 引 用 し 、 奄 美 や 沖 縄 に は 防 災 、 祖 先 祭 祀 、 竜 宮 神 祭 祀 、 治 病 、 葬 送 な ど 、 様 々 な 供 犠 の 事
例 が あ る と し た [萩 原 2009:260]。防 災 は 奄 美 の カ ネ サ ル や 、沖 縄 の シ マ ク サ ラ シ 、祖 先 祭 祀 は 沖 縄 本 島 北 部 の ウ シ ヤ キ 、 竜 宮 神 祭 祀 は 宮 古 の ヒ ダ ガ ン ニ ガ イ 、 治 病 は 沖 永 良 部 の ワ ー ト ー ト ー 、 葬 送 は 沖 縄 の 死 者 儀 礼 に お け る 牛 や 豚 を 屠 殺 す る 儀 礼 な ど を 動 物 供 犠 と し て 挙 げ て い る 。 旧 玉 城 村 糸 数 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 事 例 に 、 村 落 レ ベ ル の 防 災 の た め に 屠 ら れ る 牛 を 屠 り ( 要 素 ① )、 牛 肉 を 旧 家 や 拝 所 、 村 入 口 な ど 供 え ( 要 素 ② )、 村 人 た ち に よ る 肉 料 理 の 共 食 が 行 わ れ る ( 要 素 ③ ) 点 か ら 、 本 儀 礼 を 供 犠 と 捉 え た [萩 原 2009:244-248,260]。 こ れ ま で の 研 究 者 は 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 動 物 供 犠 と 捉 え て い る が 、 唯 一 、 供 犠 で は な い と 考 え た 研 究 者 が 小 野 重 朗 で あ る 。 全 国 の 防 災 儀 礼 に お い て 吊 る さ れ る も の の 意 味 を 考 察 し 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 を 分 析 し て い る 。 全 国 の 防 災 儀 礼 に お い て 、 村 落 や 家 の 入 口 に 懸 架 さ れ る 餅 を 包 ん で い た 葉 、 お 箸 、 目 籠 、 骨 、 血 を ぬ っ た 枝 葉 な ど は 、 災 厄 に 引 き 返 し て も ら う た め 、 肉 や 餅 を 食 べ て 守 り を 固 め た 証 拠 、 祭 を 済 ま せ た 証 拠 の 品 々 と し て 表 示 さ れ た も の で 、 骨 や 血 に も 供 犠 性 は み ら れ な い と 考 え た [ 小 野 1970:38-39]。 後 に 、 神 観 念 の 変 化 と 共 に 、 神 へ の 供 物 と 考 え る よ う に な り 、 南 九 州 の ト キ や コ ト 八 日 、 春 ゴ ト に お い て 、 団 子 や 餅 な ど 、 食 物 を 吊 る 例 が 出 て き た と し て い る [小 野 1979:26]。 村 入 口 に 吊 る す も の が 骨 か ら 餅 を 包 む 葉 へ 変 わ っ た と い う 事 例( 加 計 呂 麻 島 須 子す こ)と 、 供 物 が 牛 肉 か ら 餅( 大 島 郡 喜 界 町 小 野 津 )、あ る い は 豆 腐( 竹 富 町 竹 富 )に 変 わ っ た 事 例 を 挙 げ 、 防 災 儀 礼 吊 る さ れ た り 供 え ら れ る 骨 や 肉 な ど は 、 供 犠 性 が な い か ら こ そ 、 餅 や 葉 、 豆 腐 な ど に 変 わ っ た と し た [小 野 1970:37]。 籠 の 目 の 多 さ を み て 一 つ 目 の 災 厄 が 驚 い て 逃 げ 出 す 、 動 物 の 部 位 を み て 災 厄 が 驚 く 、 そ の 臭 い で 逃 げ る と い っ た 理 解 は 、後 の 人 々 の 思 い つ き と し た [小 野 1970 38-39]。肉 で は な く 骨 を 吊 す こ と も 、 そ れ が 災 厄 神 へ の 供 物 で は な く 、 動 物 を 使 う 儀 礼 が 終 わ っ た こ と の 証 拠 で あ る こ と を 示 し て い る と い う [小 野 1982b:454]。 さ ら に 、 小 野 は 、 奄 美 に お い て 火 災 の あ っ た と き や 、 ユ タ が 祭 司 と な り 病 人 の 身 代 わ り の た め な ど に 臨 時 に 行 わ れ る 防 災 儀 礼 の 中 に み ら れ る 、 牛 、 豚 、 鶏 を 儀 礼 的 に 屠 殺 す る 供 犠 儀 礼 に つ い て 、 次 の よ う に 述 べ て い る 。 こ れ ら は か つ て は 単 に 動 物 の 肉 を 供 物 と し た 儀 礼 で あ っ た も の が 、 と く に ユ タ に よ っ て 深 刻 に 意 味 づ け さ れ 、 供 犠 化 し た も の と 考 え た [小 野 1970:39]。 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 含 め た 、 奄 美 や 沖 縄 の 動 物 を 使 う 儀 礼 は 、 供 犠 化 す る 傾 向 を も ち な が ら も 、 本 来 は 動 物 の 肉 を 供 物 に し 、 共 食 す る と い う 意 味 を も つ だ け で 、 餅 が 供 物 に な る 儀 礼 と 本 質 的 に は 変 わ り な く 、 動 物 の 生 命 を 捧 げ る と い っ た 供 犠 的 意 味 は な い と い う 。 儀 礼 に み ら れ る 骨 や 血 と い っ た 動 物 の 要 素 は 、 肉 を 重 視 す る 古 い 食 生 活 の 姿 が 残 留 し て い る た め と し た [小 野 1970:39]。 次 に 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 期 日 に つ い て は 、 小 野 重 朗 は 、 期 日 の 実 態 の 分 析 や 、 バ リ エ ー シ ョ ン の 意 味 な ど 考 察 し た 。 最 初 に 小 野 は 、65 例 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 実 施 月 を 月 別 に 整 理 し 表 1 を 作 成 し た 。儀
表 1 . シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 実 施 月 表 [ 小 野 1979:15] 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 事例数 2 12 3 0 0 3 0 9 7 13 4 12 礼 が 年 中 ほ と ん ど の 月 に 行 わ れ て い る と し た 上 で 、「 2 月 、 10 月 、 12 月 が 特 に 多 い 。 6 月 、 8 月 も 前 後 の 月 に 比 べ て は 明 ら か に 多 い 。 つ ま り 、 4 月 を 除 け ば 2 月 か ら 12 月 ま で 偶 数 の 月 が 皆 多 く な っ て い る 」 と し た [ 小 野 1979:15]。 小 野 の 分 析 は 、 主 に 旧 暦 2 月 で 、 そ れ 以 外 の 月 も あ る と い う 従 来 の 報 告 を 鑑 み る と 、 重 要 で あ る [ 島 袋 1941:207 ][ 比 嘉 1959:130 ][ 琉 球 政 府 文 化 財 保 護 委 員 会 編 1972:178-179][ リ ー ブ ラ 1974:198-19][ 沖 縄 大 百 科 事 典 刊 行 事 務 局 編 1983:中 巻 327] [ 大 城 2003:1044-1047]。 偶 数 月 に 多 い 理 由 を 、 奄 美 の 防 災 儀 礼 か ら 考 察 し て い る 。 奄 美 大 島 の カ ネ サ ル は 10 月 頃 の 庚 申 の 日 に 行 う が 、瀬 戸 内 町 西 古 見 で は 10 月 に 限 ら ず 、年 に 6 度 あ る 庚 申 の 日 に は 山 の 神 や ケ ン ム ン の 活 動 す る 日 だ か ら 山 に 行 っ て は い け な い と い う 。 そ こ か ら 、 古 く は 年 6 回( 60 日 ご と )の 庚 申 の 日 に 行 わ れ て い た も の が 、10 月 頃 の 庚 申 だ け に 略 化 し て 、 現 在 の カ ネ サ ル に な っ た と 推 測 し た 。 そ し て 、 沖 縄 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 も 奄 美 の カ ネ サ ル と 同 じ よ う に 、60 日 ご と で あ っ た も の が 年 間 実 施 回 数 が 減 少 し 、偶 数 月 の 2 カ 月 毎 と な り 、 さ ら に 4 月 や 6 月 な ど の 農 作 業 の 多 忙 な 月 が 略 さ れ て 、 現 在 の 期 日 が 成 立 し た と 考 え た [ 小 野 1979:16]。 ま た 、 臨 時 に 行 わ れ る 防 災 儀 礼 が 古 く 、 後 に 定 期 化 し た と い う 仮 説 を 提 示 し た 。 根 拠 と し て 、 ま ず 、 臨 時 の も の は 沖 縄 、 奄 美 、 南 九 州 に 多 く 、 本 州 に は み ら れ な い と い う 分 布 形 態 は 、 古 い 形 は 周 縁 に 残 る と い う 民 俗 周 圏 論 の 視 点 か ら 、 定 期 よ り 臨 時 の 防 災 儀 礼 が 古 い こ と を 示 し て い る と し た[ 小 野 1979:23]。熊 本 県 の 天 草 下 島 の 防 災 儀 礼 で あ る コ ト を 例 に 、 臨 時 が 多 い な か 、 村 落 に よ っ て は 定 期 的 に 行 わ れ る の は 、 本 来 は 臨 時 で あ っ た コ ト が 定 期 化 す る 傾 向 を 意 味 し て い る と し た 。 東 日 本 の コ ト 八 日 が 定 期 的 な も の だ け な の は 、 か つ て 村 落 に よ っ て 臨 時 、 あ る い は 定 期 の 防 災 儀 礼 が 行 わ れ る 状 態 を 経 て 、 臨 時 の 儀 礼 が 消 失 し た 結 果 で あ る と 考 察 し て い る [ 小 野 1979:4-5]。 シ マ ク サ ラ シ を 含 め た 防 災 儀 礼 は 、 定 期 よ り 臨 時 の 方 が 古 く 、 定 期 化 し て い っ た と い う 、 防 災 儀 礼 の 定 期 化 説 を 提 示 し た 。 あ と 、 災 厄 の 中 で 最 も 古 い の が 臨 時 の 防 災 儀 礼 に 意 識 さ れ る 、 疫 病 や 火 災 と い っ た 具 体 的 な 災 厄 で あ る が 、 儀 礼 が 定 期 化 す る と 、 死 霊 や 餓 鬼 仏 と い っ た 霊 的 な 災 厄 神 が 加 わ る と し て い る 。 例 と し て 、 難 破 や 鮫 に よ る 海 難 者 の 死 霊 を 意 識 す る 、 沖 縄 本 島 の 北 中 城 村 熱 田 の 定 期 的 な シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 挙 げ て い る[ 小 野 1979:24-25]。12 月 8 日 の ム ー チ ー 儀 礼 に 意 識 さ れ る 鬼 も 、 厄 病 神 や 死 霊 が さ ら に 抽 象 化 さ れ 作 ら れ た 新 し い 観 念 で あ る と い う 。 最 後 に 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に お い て 牛 が 使 わ れ る 意 味 や 、 肉 を 食 べ る 意 味 を 考 察 し た
研 究 を 整 理 し た い 。 小 野 重 朗 は 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 な ど の 奄 美 や 沖 縄 の 防 災 儀 礼 に 牛 が 使 わ れ る 意 味 に つ い て 、 農 耕 な ど の 使 役 に 重 要 で あ る か ら で は な く 、 牛 そ の も の が 聖 な る 動 物 と 考 え ら れ て い た た め と 考 察 し た 。 そ し て 、 牛 肉 に は 、 外 か ら の 危 害 を 防 ぎ 、 身 を 守 る よ う な 不 思 議 な 力 が あ る も の と 認 識 さ れ て い た と い う [ 小 野 1982b:453,456]。 牛 か ら 豚 、 山 羊 、 鶏 な ど に 変 化 し た 事 例 が あ る も の の 、 そ れ ら は 牛 の 入 手 が 困 難 な た め と い う 理 由 か ら の 単 な る 代 用 で 、 聖 な る 動 物 で は な か っ た [ 小 野 1982b:455]。 牛 が 聖 な る 動 物 で あ る こ と の 傍 証 と し て 、 南 九 州 の 盆 や 8 月 に 牛 の ツ ク リ モ ノ が 出 現 す る こ と 、 奄 美 の オ ム ケ 、 オ ホ リ と い う 祭 り に 、 海 の 他 界 か ら 怪 牛 が 現 れ て 活 動 す る と い う 伝 承 が あ る こ と 、 宮 古 島 に は 海 や 地 下 の 他 界 に い る 怪 牛 が 人 界 に 現 れ 、 神 ・ 祖 神 と し て 活 動 す る と い っ た 説 話 が あ る こ と な ど を 挙 げ た [ 小 野 1982b:456]。 ま た 、 小 野 は 、 全 国 の 防 災 儀 礼 に 食 さ れ る 肉 と 餅 は 、 力 が 付 与 さ れ た 食 べ 物 で あ る と 捉 え た 。 肉 の 方 が 古 い が 、 狩 猟 民 的 な 古 い 生 活 か ら 畑 作 民 、 稲 作 民 の 生 活 へ と 、 食 べ 物 の 価 値 転 換 に よ っ て 餅 へ と 変 化 し た と い う [小 野 1982b:455]。 防 災 儀 礼 に 食 さ れ る 肉 や 餅 に 力 が 付 与 さ れ 、 そ れ が 肉 か ら 餅 へ と 変 化 し た 例 証 と し て 、 九 州 本 土 の 防 災 儀 礼 に お け る チ カ ラ 餅 や ハ ガ タ メ 餅 と い う 餅 の 名 称 や 、 牛 肉 か ら カ ー シ ャ モ チ ( 餅 米 の 団 子 ) へ 変 化 し た 奄 美 の 防 災 儀 礼 ( シ マ ガ タ メ ) を 挙 げ た 。 第 二 節 課 題 本 論 で の 課 題 と し て 、 ま ず 、 琉 球 諸 島 全 域 に お け る シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 実 態 把 握 が 挙 げ ら れ る 。 本 儀 礼 は 、 名 称 、 期 日 、 動 物 の 種 類 、 防 災 方 法 な ど に 、 多 様 な 地 域 的 特 色 が み ら れ る に も 関 わ ら ず 、 先 行 研 究 で は 、 そ れ が 把 握 さ れ な い ま ま 、 琉 球 諸 島 の 一 地 域 あ る い は 少 な い 事 例 を 根 拠 に し て 議 論 が 進 む こ と が 多 か っ た と 言 え る 。 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に み ら れ る 特 徴 の 普 遍 性 や 特 殊 性 、 地 域 的 特 性 な ど を 把 握 し た 上 で 議 論 を 進 め る 必 要 が あ る 。 本 論 で は 、 悉 皆 調 査 に よ り 確 認 で き た 事 例 群 の 分 布 形 態 、 名 称 、 期 日 、 目 的 、 災 厄 の 種 類 、 祈 願 、 動 物 の 種 類 、 屠 殺 方 法 、 供 犠 的 要 素 な ど の 分 析 を 行 い 、 そ れ ら の 実 態 を 把 握 し た 上 で 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に 関 す る 問 題 の 検 討 や 、 仮 説 の 検 証 な ど を 行 う 。 明 ら か に し な け れ ば な ら な い 課 題 を 論 点 ご と に 整 理 し た い 。 ま ず 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 に つ い て は 、 前 項 で 整 理 し た よ う に 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 動 物 供 犠 と 捉 え る 研 究 者 が 多 い が 、 そ の 根 拠 が 十 分 で は な い 場 合 が 多 い 。 山 下 欣 一 は 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 供 犠 で あ る 根 拠 と し て 、 4 つ の 行 為 を 挙 げ て い る が [山 下 1982:241-243]、そ れ ら の 要 素 が み ら れ る シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 事 例 は 提 示 し て い な い 。 浜 田 泰 子 は 、 2 つ の 供 犠 的 要 素 を 挙 げ 、 そ れ が み ら れ る シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 供 犠 と 捉 え た [浜 田 1992:230]。6 例 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 挙 げ て い る が 、供 犠 的 要 素 が み ら れ る
の は 6 例 中 2 例 の み で 、 う ち 1 例 は 奄 美 諸 島 の 事 例 で あ っ た 。 萩 原 左 人 は 、 対 象 動 物 の 死 、 神 霊 へ の 供 献 、 参 会 者 に よ る 共 食 ・ 饗 宴 の 3 つ の 要 素 を 持 つ 儀 礼 を 供 犠 と 捉 え て い る [萩 原 2009:260]。 動 物 を 屠 り 、 神 に 供 え 、 共 食 す る 要 素 を 持 つ 儀 礼 は 琉 球 諸 島 に 少 な く な い 。 村 落 に よ っ て は ク シ ユ ッ ク ィ ー や ア ブ シ バ レ ー と い っ た 農 耕 儀 礼 や 祖 先 祭 祀 に も 、 上 記 の 3 要 素 を 持 つ 事 例 が あ る 。 萩 原 の 定 義 に 沿 え ば 、 そ れ ら も 動 物 供 犠 と い う こ と に な る 。 琉 球 諸 島 に お い て 動 物 供 犠 を 定 義 す る 場 合 に は 、 も う 少 し 限 定 し た 要 素 の 設 定 が 必 要 と 考 え ら れ る 。 こ れ ま で シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 に 関 す る 研 究 は 、 限 ら れ た 事 例 の 分 析 か ら 考 察 す る 傾 向 が み ら れ る 。 も し 、 供 犠 の 要 素 を 持 つ 事 例 が 特 殊 な ケ ー ス で あ れ ば 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 供 犠 と い う 枠 組 み に 無 理 に は め 込 む こ と に な る で あ ろ う 。 各 家 庭 で 家 畜 が 養 わ れ 、 多 く の 年 中 行 事 や 人 生 儀 礼 に 動 物 が 使 わ れ て き た 琉 球 諸 島 の 特 質 を 考 慮 し 、 供 犠 的 要 素 を 検 討 し た 上 で 、 供 犠 的 要 素 を 持 つ シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 、 全 体 の 中 で 普 遍 的 に み ら れ る の か 、 あ る い は 特 殊 な 事 例 な の か を 、 琉 球 諸 島 全 域 の 事 例 群 の 分 析 か ら 明 確 に す る 必 要 が あ る 。 小 野 重 朗 は 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 は 供 犠 で は な い と 捉 え た 。 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 含 め た 奄 美 や 沖 縄 の 動 物 を 使 う 儀 礼 は 、 供 犠 化 す る 傾 向 を も ち な が ら も 、 本 来 は 動 物 の 肉 を 供 物 に し 、 共 食 す る と い う 意 味 を も つ だ け で 、 餅 が 供 物 に な る 儀 礼 と 本 質 的 に は 変 わ り な く 、 動 物 の 生 命 を 捧 げ る と い っ た 供 犠 的 意 味 は な い と い う [小 野 1970:39]。 根 拠 と し て 、 儀 礼 に 吊 る さ れ た り 、 供 え ら れ る 骨 や 肉 が 、 供 犠 性 の 無 い 餅 や 葉 、 豆 腐 な ど に 変 わ っ た と い う 、 竹 富 町 竹 富 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 と 、 奄 美 の カ ネ サ ル と ハ ネ イ ー の 2 つ の 事 例 を 挙 げ て い る 。 小 野 が 根 拠 と し て 挙 げ た 琉 球 諸 島 の 実 例 は 八 重 山 諸 島 の 1 例 の み と 少 な く 、 ま た 、 吊 す も の で は な く 、 供 物 が 変 わ っ た と い う 事 例 で あ っ た 。 琉 球 諸 島 全 域 を 対 象 に 、 吊 す も の と 供 物 の 整 理 分 析 を 行 い 、 供 犠 性 の 問 題 を 詳 細 に 検 証 す る 必 要 が あ る 。 著 者 自 身 、 2004~ 2012 年 ま で に 発 表 し た 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に 関 す る 論 考 の 中 で は 、 中 村 生 雄 の 定 義 し た 、「 牛 ・ 羊 ・ 豚 ・ 鶏 な ど の 動 物 を 殺 し て 神 に 供 え る 宗 教 儀 礼 」[ 中 村 1999:523] と い う 裾 野 の 広 い 供 犠 の 考 え 方 を 踏 襲 し 、 動 物 が 屠 ら れ る 点 と 、 拝 所 に 供 え ら れ る 点 か ら 、シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 供 犠 と し て 扱 っ て き た[ 宮 平 2004:59。宮 平 2006:126。 宮 平 2008a:33。 宮 平 2008b:103。 宮 平 2012a:22-23]。 本 儀 礼 が 動 物 供 犠 で あ る こ と を 示 す 根 拠 と し て は 不 十 分 で あ り 、 前 述 し た よ う に 、 そ れ だ け で は 動 物 を 要 す る 琉 球 諸 島 の 多 く の 儀 礼 が 動 物 供 犠 と な っ て し ま う 。 著 者 な り に 琉 球 諸 島 に お け る 動 物 供 犠 を 定 義 し 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 に つ い て 考 察 し た い 。 次 に 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 臨 時 か ら の 定 期 化 し た と い う 仮 説 に 関 す る 課 題 で あ る が 、 小 野 重 朗 は 、 全 国 の 防 災 儀 礼 を 分 析 し 、 臨 時 の も の が 沖 縄 、 奄 美 、 南 九 州 に 多 く 、 本 州 に は み ら れ な い と い う 分 布 形 態 や 、 村 落 に よ っ て 臨 時 ま た は 定 期 的 に 行 わ れ る 熊 本 県 の 天 草 下 島 の 防 災 儀 礼 で あ る コ ト を 対 象 に 、 マ ク ロ と ミ ク ロ の 両 方 の 分 析 か ら 、 シ マ ク サ
ラ シ を 含 め た 防 災 儀 礼 の 臨 時 か ら の 定 期 化 説 を 提 示 し た [ 小 野 1979:4-5,23] 。 だ が 、 臨 時 か ら 定 期 化 し た と い う 防 災 儀 礼 の 実 例 が 挙 げ ら れ て い な い 。 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 期 日 や 、 臨 時 事 例 の 分 布 形 態 、 変 化 例 な ど の 分 析 結 果 に 基 づ い た 仮 説 の 検 証 が 必 要 と 考 え る 。 あ と 、 小 野 は 臨 時 と 定 期 の 防 災 儀 礼 の 関 係 を 、 臨 時 か ら 定 期 化 と い う 期 日 の 変 化 と 捉 え て い る が 、 定 期 と 臨 時 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 併 行 す る 村 落 が あ る こ と が 分 か っ た 。 小 野 は 、 熊 本 県 の 天 草 下 島 や 奄 美 に お い て 、 村 落 に よ っ て 臨 時 あ る い は 定 期 的 に 行 わ れ る 2 種 類 の 防 災 儀 礼 を 比 較 し て い る 。 そ の 結 果 、 下 島 で は 内 容 は ほ ぼ 同 じ で あ る が 、 奄 美 で は 防 災 を 目 的 と し て い る 点 、 動 物 の 肉 を 食 べ る 点 、 そ の 骨 を 村 入 口 に 吊 す 点 な ど の 類 似 点 と 、臨 時 は キ ト ウ と 呼 ば れ 、火 災 や 伝 染 病 を 意 識 し 、定 期 は カ ネ サ ル と 呼 ば れ 、 山 の 神 や ケ ン ム ン と い っ た 妖 怪 が 災 厄 と さ れ て い る と い う 相 違 点 を 挙 げ て い る [ 小 野 1979:12]。 臨 時 か ら 定 期 化 し た の で あ れ ば 、 下 島 や 奄 美 の 事 例 の よ う に 、 臨 時 に 行 う 村 落 と 、 定 期 的 に 行 う 村 落 に 分 か れ 、 同 じ 村 落 で 両 儀 礼 が 併 行 さ れ る こ と は 無 く な る と 思 わ れ る 。 小 野 も 、 同 じ 村 落 で 臨 時 と 定 期 の 防 災 儀 礼 が 行 わ れ る 事 例 を 把 握 し て い た よ う で あ る ( 加 計 呂 麻 島 須 子 茂 ) が 、 同 じ 村 落 に 臨 時 と 定 期 の 防 災 儀 礼 が 併 存 す る 意 味 や 、 異 な る 名 称 で 呼 び 分 け ら れ た 意 味 に つ い て は 言 及 し て い な い [ 小 野 1982a:76] 。 同 じ 村 落 に 定 期 と 臨 時 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 併 存 す る 意 味 を 、 両 儀 礼 を 比 較 し 、 相 似 点 や 相 違 点 を 明 ら か に し た 上 で 、 考 察 す る 必 要 が あ る 。 最 後 に 、「 屠 ら れ る 動 物 の 変 遷 と 意 味 」を 考 察 す る 上 で の 課 題 を 整 理 し た い 。シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に 使 わ れ る 動 物 の 変 遷 に つ い て 、 小 野 重 朗 は 、 3 例 の 変 化 例 を 根 拠 に 、 古 く は 牛 で あ っ た の が 豚 へ 山 羊 へ と 略 化 さ れ 、 終 い に 鶏 に な っ た と し た [小 野 1970:32]。 具 体 的 に は 、 豚 か ら 山 羊 ( 旧 勝 連 町 浜 比 嘉 )、 豚 や 山 羊 か ら 鶏 ( 座 間 味 村 座 間 味 )、 供 物 が 牛 肉 か ら 豆 腐 に 変 化 し た 事 例 ( 竹 富 町 竹 富 ) で あ る 。 最 も 古 い 動 物 が 牛 で あ る こ と の 根 拠 と な る 、 牛 か ら 他 の 動 物 に 変 わ っ た 事 例 が 示 さ れ て い な い こ と が 問 題 点 と し て 挙 げ ら れ る 。 多 く の 動 物 の 変 化 例 を 分 析 し 、 動 物 の 変 化 に つ い て 検 討 す る 必 要 が あ る 。 ま た 、 防 災 儀 礼 に 牛 が 使 わ れ る の は 、 農 耕 の 使 役 に 重 要 で あ る か ら で は な く 、 牛 が 神 性 を も っ た 聖 な る 動 物 で 、 そ の 肉 に 、 災 厄 か ら 身 を 守 り 、 祓 い ど け る 不 思 議 な 力 が あ る と 考 え ら れ て い た た め と し た [小 野 1982b:456]。 そ の 傍 証 と な る 年 中 行 事 や 説 話 も 例 示 し た 。 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 実 例 を 挙 げ る 必 要 が あ る と 思 わ れ る 。 小 野 の 仮 説 を 肯 定 あ る い は 否 定 す る 事 例 の 有 無 を 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 動 物 の 種 類 と 地 域 的 特 性 、 肉 を 食 べ る 意 味 な ど の 分 析 結 果 を 踏 ま え 、 多 角 的 な 視 点 か ら 分 析 が 不 可 欠 と 考 え る 。 以 上 、本 論 の 論 点 と な る「 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 」、「 臨 時 か ら の 定 期 化 説 の 検 証 」、 「 屠 ら れ る 動 物 の 変 遷 と 変 遷 」 に 関 す る 課 題 を 整 理 し て き た 。 こ れ ら を 、 琉 球 諸 島 に お け る シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 対 象 と し た 分 析 に 基 づ い て 、 明 ら か に し て い き た い 。 こ の こ と は 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 琉 球 諸 島 全 域 に 分 布 す る 儀 礼 で あ り な が ら 、 そ れ を
扱 っ た 研 究 が 限 ら れ て い る 点 や 、 儀 礼 に 関 す る 問 題 や 仮 説 に 対 す る 十 分 な 考 察 や 検 証 が 行 わ れ て い な い 点 か ら も 意 義 あ る も の と 考 え ら れ る 。 第 三 節 研 究 方 法 1 . 調 査 対 象 本 論 で は シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 調 査 対 象 と す る 。 地 域 的 特 性 の 大 き い 本 儀 礼 の 実 態 を 把 握 す る た め 、 沖 縄 諸 島 、 宮 古 諸 島 、 八 重 山 諸 島 か ら な る 、 琉 球 諸 島 全 域 を 調 査 対 象 地 と す る 。 各 地 の 特 性 を 明 ら か に す る た め 、 本 論 で は 事 例 群 を 沖 縄 本 島 北 部 、 中 部 、 南 部 、 周 辺 離 島 、 宮 古 諸 島 、 八 重 山 諸 島 の 6 つ に 分 け て 扱 う 。 2 . デ ー タ 収 集 法 デ ー タ は 、 琉 球 諸 島 全 域 を 対 象 と し た 聞 取 り 調 査 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に 関 す る 研 究 や 民 俗 誌 な ど の 文 献 資 料 、 そ し て 、 儀 礼 観 察 に よ っ て 収 集 す る 。 本 儀 礼 に 関 す る 資 料 や 先 行 研 究 は 限 ら れ て い る た め 、 聞 取 り 調 査 が 有 効 な 方 法 に な る と 考 え る 。 著 者 の 聞 取 り 調 査 に よ る デ ー タ に は [聞 ]と 付 し 、 本 論 の 末 尾 に 、 調 査 年 、 話 者 の 頭 文 字 、 年 齢 、 性 別 な ど を 記 し た [ 凡 例 : M(80 代 男 性 )、 T(80 代 女 性 ) → M(8M)、 T(8W)]。 3 . デ ー タ の 整 理 ・ 分 析 方 法 本 論 は 、シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に 関 し て 指 摘 さ れ た 、「 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 」、「 臨 時 か ら の 定 期 化 説 」、「 屠 ら れ る 動 物 の 変 遷 と 意 味 」 な ど の 問 題 や 仮 説 に 対 し て 、 こ れ ま で の 悉 皆 調 査 に よ り 確 認 で き た 事 例 群 の 整 理 、 分 析 に 基 づ き 、 検 証 及 び 考 察 を 試 み る も の で あ る 。 第 一 章 で は 、 分 布 、 儀 礼 名 称 、 目 的 、 祈 願 と い う 項 目 に 分 け て 、 儀 礼 の 諸 相 を 整 理 す る 。 あ と 、 本 儀 礼 の 分 布 及 び 名 称 に ま つ わ る 重 要 な 問 題 と し て 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 非 分 布 地 域 の 意 味 、 シ マ ク サ ラ シ や カ ン カ ー の 語 意 に つ い て も 考 察 を 試 み る 。 第 二 章 で 、 儀 礼 の 防 災 方 法 や 、 村 入 口 に 吊 さ れ る も の と そ の 意 味 、 屠 る 方 法 と 場 所 の 整 理 分 析 を 踏 ま え た 上 で 、 研 究 者 に よ っ て 肯 定 ま た は 否 定 さ れ る シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 供 犠 性 の 問 題 を 検 討 す る 。 先 行 研 究 で 指 摘 さ れ た 供 犠 性 の 根 拠 と な る 要 素 の 普 遍 性 や 特 殊 性 、 そ し て 、 供 犠 性 が 無 い こ と の 根 拠 と さ れ た 肉 と 餅 と の 互 換 性 の 問 題 を 事 例 群 の 整 理 分 析 か ら 明 ら か に す る 。 第 三 章 で は 、 小 野 重 朗 に よ っ て 提 示 さ れ た 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 は 臨 時 の も の が 古 く 、 後 に 定 期 化 し た と い う 仮 説 の 検 証 を 試 み る [ 小 野 1979:23] 。 ま ず 、 実 施 月 、 年 間 実 施 回 数 、 暦 日 、 臨 時 、 期 日 の 変 遷 と い う 項 目 ご と に 分 析 を 行 い 、 儀 礼 の 期 日 の 実 態 を 明 ら か に す る 。 そ の 分 析 結 果 を 踏 ま え た 上 で 、 定 期 と 臨 時 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 新 旧 の 問 題 に 考 察 を 加 え る 。 定 期 化 あ る い は 臨 時 化 し た 事 例 の 分 析 や 、 同 じ 村 落 に 定 期 と 臨 時 の シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 併 存 す る 意 味 に つ い て も 考 察 す る 。
第 四 章 で は 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に 屠 ら れ る 動 物 の 種 類 と 変 化 例 を 分 析 し 、 小 野 重 朗 に よ っ て 提 示 さ れ た 、 変 遷 の 問 題 や 牛 が 使 わ れ る 意 味 、 食 さ れ る 肉 の 持 つ 意 味 に 関 す る 仮 説 の 検 証 及 び 考 察 を 行 う [小 野 1970:32。 小 野 1982b:456]。
第 一 章 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 諸 相 第 一 節 分 布 1 . 分 布 地 2002~ 15 年 ま で の 悉 皆 調 査 の 結 果 、39 市 町 村 534 村 落 ( 文 献 25・ 聞 取 り 509) で シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 確 認 す る こ と が で き た( 1 )。 表 2 は 儀 礼 を 確 認 で き た 事 例 数 を 6 地 域 に 分 け て 整 理 し た も の で あ る 。 そ の 村 落 名 一 覧 が 表 3 、 分 布 地 図 が 地 図 1 , 2 で あ る( 2 )。 地 域 別 に み る と 、 沖 縄 本 島 北 部 で 107 例 (文 献 7 ・ 聞 取 り 100)、 中 部 145(文 献 4・聞 取 り 141)、南 部 110(文 献 6・聞 取 り 104)、 本 島 周 辺 離 島 26(文 献 3・ 聞 取 り 23)、 宮 古 諸 島 112(文 献 2・ 聞 取 り 110)、 八 重 山 諸 島 34 (文 献 3・ 聞 取 り 31)と な る 。 事 例 数 が 沖 縄 の 村 落 の 総 数 を 占 め る 割 合 に つ い て 考 察 し た い 。 ま ず 、 戦 前 ま た は 現 時 点 で の 沖 縄 の 村 落 の 全 体 数 を 正 確 に 把 握 す る こ と は 困 難 で あ る 。 そ こ で 、 お お よ そ の 目 安 に な る の が 、近 世 来 の 村 落 名 を 踏 襲 し て い る 場 合 が 少 な く な い 現 在 の 字 と 考 え る 。『 沖 縄 県 市 町 村 別 大 字 ・ 小 字 名 集 』 を 参 照 し 、 著 者 が 概 算 し た 結 果 、 字 の 数 は 約 720 あ っ た [ 沖 縄 県 土 地 調 査 事 務 局 編 1976]。 1 つ の 字 の 中 に 複 数 の 村 落 が 含 ま れ る 場 合 も あ り 、 村 落 数 の 実 態 は よ り 多 い こ と が 見 込 ま れ る 。 そ れ を 考 慮 し て も シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 を 確 認 で き た 534 と い う 数 は 非 常 に 多 く 、 琉 球 諸 島 に お け る 村 落 全 体 を 占 め る 割 合 は 高 い と 言 え る 。 琉 球 諸 島 に お い て 、 こ れ ほ ど 広 域 的 か つ 多 く の 村 落 で 確 認 で き る 、 同 じ よ う な 名 称 で 呼 ば れ る 村 落 レ ベ ル の 儀 礼 は 限 ら れ て い る と 思 わ れ る 。 41 市 町 村 中 、南 北 大 東 村 の 2 村 を 除 く 、39 市 町 村 に 儀 礼 が み ら れ 、地 域 ご と の 数 の 差 は 村 落 数 の 差 と 言 え る ほ ど 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 は 琉 球 諸 島 全 域 に 広 く か つ 高 い 密 度 で 分 布 し て い る 。 地 図 1 、 2 か ら も 、 分 布 圏 の 広 さ と 、 密 度 の 高 さ が 分 か る 。 儀 礼 が 確 認 で き た の は 伝 統 的 な 村 落 、 い わ ゆ る 古 村 が ほ と ん ど で 、 沖 縄 本 島 に お い て 屋 取 と 呼 ば れ る よ う な 比 較 的 新 し い 村 落 [ 田 里 1983:12,246-299] に み ら れ る こ と は 少 な い ( 19 例 )。 古 村 に 比 べ 共 同 体 意 識 が 比 較 的 弱 く 、 村 落 レ ベ ル の 年 中 行 事 が 少 な い こ と 、 さ ら に 村 落 の 形 態 と し て 散 村 が 多 い こ と が 、 村 落 を 1 つ の 空 間 と み な し 、 そ の 防 災 を 目 的 と し た シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 根 付 か な か っ た 一 因 と な っ た の で は な い だ ろ う か 。 表 2 . シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 確 認 村 落 数 ( 2002~ 15) 事例数 沖縄本島北部 107 沖縄本島中部 145 沖縄本島南部 110 周辺離島(沖縄諸島) 26 宮古諸島 112 八重山諸島 34 合計 534
表 3 . シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 確 認 村 落 一 覧 表 沖縄本島北部 1 国頭村辺戸 20 大宜味村野国名 39 名護市親川 58 名護市大浦 77 宜野座村松田 96 恩納村久良波 2 国頭村宜名真 21 大宜味村屋嘉比 40 名護市田井等 59 名護市辺野古 78 宜野座村前原 97 恩納村アジマー 3 国頭村宇嘉 22 大宜味村一名代 41 名護市振慶名 60 名護市久志 79 宜野座村宜野座 98 恩納村山田 4 国頭村佐手 23 大宜味村根謝銘 42 名護市伊差川 61 今帰仁村古宇利 80 宜野座村惣慶 99 恩納村寺原 5 国頭村謝敷 24 大宜味村城 43 名護市仲尾 62 今帰仁村湧川 81 宜野座村漢那 100 恩納村上間・垂川 6 国頭村与那 25 大宜味村木下前 44 名護市呉我 63 今帰仁村上運天 82 恩納村名嘉間 101 恩納村塩屋 7 国頭村伊地 26 大宜味村饒波 45 名護市我部祖河 64 今帰仁村謝名 83 恩納村喜瀬武原 102 恩納村真栄田 8 国頭村宇良 27 大宜味村大宜味 46 名護市古我知 65 今帰仁村崎山 84 恩納村熱田 103 恩納村宇加地 9 国頭村桃原 28 大宜味村根路銘 47 名護市山入端 66 今帰仁村仲尾次 85 恩納村安富祖 104 金武町並里 10 国頭村奥間 29 東村平良 48 名護市屋部 67 今帰仁村与那嶺 86 恩納村瀬良垣 105 金武町金武 11 国頭村比地 30 東村慶佐次 49 名護市宮里 68 今帰仁村諸志 87 恩納村太田 106 金武町伊芸 12 国頭村浜 31 東村有銘 50 名護市数久田 69 今帰仁村今泊 88 恩納村恩納 107 金武町屋嘉 13 国頭村奥 32 名護市源河 51 名護市幸喜 70 本部町具志堅 89 恩納村馬場 14 国頭村楚洲 33 名護市済井出 52 名護市喜瀬 71 本部町備瀬 90 恩納村赤崎 15 国頭村安田 34 名護市屋我 53 名護市天仁屋 72 本部町浜元 91 恩納村屋嘉田 16 国頭村安波 35 名護市我部 54 名護市嘉陽 73 本部町辺名地 92 恩納村谷茶 17 大宜味村見里 36 名護市真喜屋 55 名護市安部 74 本部町健堅 93 恩納村冨着 18 大宜味村親田 37 名護市仲尾次 56 名護市汀間 75 本部町石嘉波 94 恩納村前兼久 19 大宜味村野国 38 名護市川上 57 名護市瀬嵩 76 本部町瀬底 95 恩納村仲泊 沖縄本島中部 1 石川市石川 26 嘉手納町野国 51 与那城町伊計 76 沖縄市安慶田 101 中城村奥間 126 宜野湾市大山 2 石川市嘉手苅 27 嘉手納町野里 52 与那城町池味 77 沖縄市胡屋 102 中城村津覇 127 宜野湾市真志喜 3 石川市伊波 28 北谷町砂辺 53 与那城町上原 78 沖縄市諸見里 103 中城村伊集 128 宜野湾市宇地泊 4 石川市東恩納 29 北谷町砂辺ヌ前 54 与那城町宮城 79 沖縄市山内 104 中城村和宇慶 129 宜野湾市神山 5 石川市山城 30 北谷町浜川 55 与那城町桃原 80 沖縄市古謝 105 西原町棚原 130 宜野湾市大謝名 6 読谷村宇座 31 北谷町伊礼 56 与那城町平安座 81 沖縄市高原 106 西原町翁長 131 宜野湾市宜野湾 7 読谷村瀬名波 32 北谷町桑江 57 与那城町東照間 82 沖縄市泡瀬 107 西原町幸地 132 宜野湾市嘉数 8 読谷村儀間 33 北谷町平安山 58 与那城町西原 83 沖縄市与儀 108 西原町小橋川 133 宜野湾市我如古 9 読谷村渡慶次 34 北谷町玉代勢 59 与那城町与那城 84 北中城村瑞慶覧 109 西原町内間 134 浦添市牧港 10 読谷村長浜 35 北谷町北谷 60 与那城町屋慶名 85 北中城村仲順 110 西原町掛保久 135 浦添市屋富祖 11 読谷村高志保 36 北谷町伝道 61 与那城町饒辺 86 北中城村渡口 111 西原町津花波 136 浦添市小湾 12 読谷村上地 37 具志川市栄野比 62 与那城町安勢理 87 北中城村喜舎場 112 西原町呉屋 137 浦添市城間 13 読谷村波平 38 具志川市川崎 63 勝連町南風原 88 北中城村安谷屋 113 西原町嘉手苅 138 浦添市仲西 14 読谷村座喜味 39 具志川市兼箇段 64 勝連町平安名 89 北中城村荻堂 114 西原町安室 139 浦添市勢理客 15 読谷村都屋 40 具志川市天願 65 勝連町内間 90 北中城村和仁屋 115 西原町桃原 140 浦添市宮城 16 読谷村楚辺 41 具志川市宇堅 66 勝連町平敷屋 91 北中城村大城 116 西原町小那覇 141 浦添市内間 17 読谷村喜名 42 具志川市田場 67 勝連町浜 92 北中城村熱田 117 西原町小波津 142 浦添市沢岻 18 読谷村伊良皆 43 具志川市宮里 68 勝連町比嘉 93 中城村久場 118 西原町与那城 143 浦添市仲間 19 読谷村比謝 44 具志川市高江洲 69 勝連町津堅 94 中城村伊舎堂 119 西原町我謝 144 浦添市前田 20 読谷村大湾 45 具志川市喜屋武 70 沖縄市池原 95 中城村泊 120 宜野湾市安仁屋 145 浦添市西原 21 読谷村渡具知 46 具志川市仲嶺 71 沖縄市登川 96 中城村新垣 121 宜野湾市伊佐 22 読谷村古堅 47 具志川市具志川 72 沖縄市大工廻 97 中城村屋宜 122 宜野湾市東組 23 読谷村比謝矼 48 具志川市江洲 73 沖縄市美里 98 中城村添石 123 宜野湾市喜友名 24 嘉手納町嘉手納 49 具志川市上江州 74 沖縄市宮里 99 中城村安里 124 宜野湾市新城 25 嘉手納町屋良 50 具志川市大田 75 沖縄市照屋 100 中城村当間 125 宜野湾市野嵩
沖縄本島南部 1 那覇市安謝 20 豊見城市長堂 39 南風原町照屋 58 佐敷町佐敷 77 玉城村志堅原 96 糸満市武富 2 那覇市識名 21 豊見城市与根 40 南風原町喜屋武 59 佐敷町手登根 78 玉城村奥武 97 糸満市北波平 3 那覇市上間 22 豊見城市伊良波 41 南風原町山川 60 佐敷町平田 79 玉城村屋嘉部 98 糸満市阿波根 4 那覇市仲井真 23 豊見城市座安 42 大里村古堅 61 佐敷町外間 80 玉城村前川 99 糸満市潮平 5 那覇市国場 24 豊見城市渡橋名 43 大里村嶺井 62 佐敷町屋比久 81 玉城村糸数 100 糸満市座波 6 那覇市壺屋 25 豊見城市渡嘉敷 44 大里村島袋 63 知念村安座間 82 玉城村船越 101 糸満市兼城 7 那覇市古波蔵 26 豊見城市平良 45 大里村平良 64 知念村久手堅 83 東風平町外間 102 糸満市照屋 8 那覇市鏡水 27 豊見城市翁長 46 大里村南風原 65 知念村知念 84 東風平町宜次 103 糸満市与座 9 那覇市宇栄原 28 豊見城市保栄茂 47 大里村西原 66 知念村具志堅 85 東風平町友寄 104 糸満市新垣 10 那覇市大嶺 29 豊見城市高嶺 48 大里村当間 67 知念村山口 86 東風平町小城 105 糸満市名城 11 那覇市宮城 30 与那原町大見武 49 大里村仲程 68 知念村仲里 87 東風平町当銘 106 糸満市喜屋武 12 那覇市高良 31 与那原町与那原 50 大里村真境名 69 知念村上志喜屋 88 東風平町志多伯 107 糸満市石原 13 那覇市具志 32 与那原町上与那原 51 大里村目取真 70 知念村下志喜屋 89 東風平町伊覇 108 糸満市米須 14 豊見城市高安 33 与那原町板良敷 52 大里村高宮城 71 玉城村垣花 90 東風平町東風平 109 糸満市大度 15 豊見城市真玉橋 34 南風原町宮城 53 大里村稲福 72 玉城村仲村渠 91 具志頭村新城 110 糸満市摩文仁 16 豊見城市根差部 35 南風原町兼城 54 大里村大城 73 玉城村百名 92 具志頭村具志頭 17 豊見城市嘉数 36 南風原町与那覇 55 佐敷町津波古 74 玉城村中山 93 具志頭村安里 18 豊見城市金良 37 南風原町本部 56 佐敷町小谷 75 玉城村富里 94 具志頭村与座 19 豊見城市饒波 38 南風原町津嘉山 57 佐敷町新里 76 玉城村當山 95 具志頭村仲座 周辺離島(沖縄本島) 1 伊江村川平 6 伊是名村内花 11 渡嘉敷村渡嘉敷 16 座間味村阿真 21 粟国村浜 26 久米島町具志川 2 伊平屋村田名 7 伊是名村諸見 12 渡嘉敷村阿波連 17 座間味村阿嘉 22 渡名喜村渡名喜 3 伊平屋村前泊 8 伊是名村仲田 13 渡嘉敷村前 18 座間味村慶留間 23 久米島町真謝 4 伊平屋村我喜屋 9 伊是名村伊是名 14 座間味村阿佐 19 粟国村東 24 久米島町嘉手苅 5 伊平屋村島尻 10 伊是名村勢理客 15 座間味村座間味 20 粟国村西 25 久米島町仲村渠 宮古諸島 1 平良市池間 20 平良市地盛 39 城辺町与那原・中組 58 城辺町高阿良後 77 城辺町東里 96 下地町川満 2 平良市大神 21 平良市七原 40 城辺町ニシウズラ嶺 59 城辺町川底屋 78 城辺町中里 97 下地町ツンフグ 3 平良市狩俣 22 平良市盛加 41 城辺町南ウズラ嶺 60 城辺町西東 79 城辺町保良 98 下地町与那覇 4 平良市島尻 23 平良市細竹 42 城辺町花切 61 城辺町仲原 80 上野村野原 99 下地町上地 5 平良市大浦 24 平良市山中 43 城辺町最寄 62 城辺町箕後 81 上野村側嶺 100 下地町洲鎌 6 平良市荷川取 25 平良市野原越 44 城辺町砂川 63 城辺町福北 82 上野村屋原 101 下地町嘉手苅 7 平良市下崎 26 平良市宮積 45 城辺町友利 64 城辺町大道 83 上野村アガリテマカ 102 下地町皆愛 8 平良市成川 27 平良市サワジ 46 城辺町長中 65 城辺町東嶺原・西嶺原 84 上野村賀阿良原 103 下地町棚根 9 平良市西原 28 平良市ムテヤ 47 城辺町北根間地・南根間地 66 城辺町福西 85 上野村宮国 104 下地町入江 10 平良市福山 29 平良市サガーニ 48 城辺町東根間地 67 城辺町北川久道 86 上野村山根 105 下地町来間 11 平良市阿旦岳 30 平良市北増原 49 城辺町吉田 68 城辺町東川久道 87 上野村豊原 106 伊良部町前里添 12 平良市西添道 31 平良市中増原・南増原 50 城辺町長間底・山底 69 城辺町西長底 88 上野村西青原 107 伊良部町池間添 13 平良市東添道 32 平良市瓦原 51 城辺町イケマヤ 70 城辺町東長底 89 上野村東青原 108 伊良部町国仲 14 平良市前福 33 城辺町山田 52 城辺町東与並武 71 城辺町大原 90 上野村東大嶺 109 伊良部町仲地 15 平良市棚原 34 城辺町山川 53 城辺町西底原・中底原 72 城辺町サジフ子 91 上野村西大嶺 110 伊良部町伊良部 16 平良市久貝 35 城辺町屋敷原 54 城辺町東底原 73 城辺町新城 92 上野村ソバル 111 多良間村仲筋 17 平良市松原 36 城辺町越地 55 城辺町比嘉 74 城辺町福嶺 93 上野村長立 112 多良間村塩川 18 平良市腰原 37 城辺町西更竹 56 城辺町北加治道 75 城辺町七又 94 上野村新里 19 平良市富名腰 38 城辺町更竹 57 城辺町南加治道 76 城辺町吉野 95 下地町カツラ嶺 八重山諸島 1 石垣市平久保 7 石垣市登野城 13 竹富町干立 19 竹富町小浜 25 竹富町仲本 31 竹富町名石 2 石垣市安良 8 石垣市平得 14 竹富町祖納 20 竹富町玻座間 26 竹富町東筋 32 竹富町前 3 石垣市伊原間 9 石垣市真栄里 15 竹富町船浮 21 竹富町上地 27 竹富町鳩間 33 竹富町北 4 石垣市川平 10 石垣市大浜 16 竹富町網取 22 竹富町下地 28 与那国町祖納 34 竹富町南 5 石垣市新川 11 石垣市宮良 17 竹富町崎山 23 竹富町保里 29 与那国町比川 6 石垣市大川 12 石垣市白保 18 竹富町古見 24 竹富町宮里 30 竹富町冨嘉
一 般 的 に シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 は 、 戸 数 の 多 少 は あ れ 村 落 が 主 体 と な り 行 わ れ た 。 組 と 呼 ば れ る よ う な 村 落 よ り 小 さ な 団 体 が 主 体 と な り 行 っ た と い う 例 が あ る 。 沖 縄 本 島 中 部 、 宜 野 湾 市 の ア ガ リ グ ミ ( 東 組 ) の 事 例 で あ る [聞 ]。 ア ガ リ グ ミ は 、 同 市 の 安 仁 屋 、 喜 友 名 、 伊 佐 な ど の 古 村 の 村 外 れ な ど に 居 を 構 え る 数 軒 の 家 々 、 計 十 数 戸 に よ り 構 成 さ れ た 団 体 の 俗 称 で あ る 。 近 隣 に は 他 に 、 ナ カ グ ミ ( 中 組 ) や イ リ グ ミ ( 西 組 ) と 呼 ば れ る 団 体 が あ っ た( 3 )。 ク ミ を 構 成 す る 家 の 人 々 は も と も と 古 村 出 身 者 で は な く 、 他 所 か ら の 移 住 者 が 多 か っ た 。 屋 取 集 落 よ り 小 規 模 な 、 行 政 上 は そ れ ぞ れ の 古 村 に 属 す る 家 々 か ら 構 成 さ れ た 団 体 が 儀 礼 の 主 体 と な る 例 は 他 に な い 。 そ の 儀 礼 名 や 祭 日 、 内 容 か ら 安 仁 屋 ま た は 伊 佐 の 儀 礼 を 参 考 に し た と 思 わ れ る 。 そ し て 、 宮 古 島 で は 添 村 [ 沖 縄 大 百 科 事 典 刊 行 事 務 局 編 1983:中 巻 622] と い う 歴 史 的 に 比 較 的 新 し い 、村 落 に も 儀 礼 が み ら れ る こ と が 多 い 。戸 数 が 10 に 満 た な い 小 規 模 な 村 落 も あ る 。 こ の 点 は 、 他 に み ら れ な い 宮 古 の 特 徴 で あ る と と も に 、 そ の 多 さ が 宮 古 が 沖 縄 本 島 中 南 部 に 次 い で 2 番 目 に 事 例 数 の 多 い 地 域 で あ る 理 由 の 1 つ と な っ て い る 。 2 . 非 分 布 地 の 意 味 儀 礼 が 確 認 で き て い な い 地 域 に 目 を む け た い 。 広 域 的 か つ 高 密 度 で 分 布 す る の で あ れ ば 、 確 認 で き な か っ た 地 域 か ら み え て く る も の も あ る と 思 う 。 沖 縄 県 の 41 市 町 村 中 、儀 礼 が 確 認 で き な か っ た 市 町 村 は 南 北 大 東 村 の 2 村 の み で あ る 。 こ れ は 両 村 が 1900 年 代 は じ め に 開 拓 さ れ た 比 較 的 あ た ら し い 地 域 で あ る こ と か ら う な ず け る 。 次 に 各 市 町 村 を 細 か く み て み る 。ま ず 、沖 縄 本 島 南 部 、北 西 に 位 置 す る 那 覇 市 で は 13 村 落 で 儀 礼 を 確 認 で き た が 、い ず れ も 真 和 志 間 切( 7 例 )と 小 禄 間 切( 6 例 )に 属 し て い た 村 落 で あ り 、王 都 で あ っ た 首 里 、そ の 港 町 と し て 発 達 し た 旧 那 覇( 那 覇 四 町 、久 米 村 、 泊 村 ) に は 確 認 で き て い な い 。 那 覇 市 の 周 辺 市 町 村 ( 浦 添 市 、 西 原 町 、 南 風 原 町 、 豊 見 城 市 ) に 儀 礼 が 高 い 密 度 で 分 布 す る 中 、 市 内 の こ の 一 帯 だ け に 儀 礼 が み ら れ な い 。 さ ら に 、 旧 知 念 村 ( 沖 縄 本 島 南 部 ) で は 、 安 座 真 [聞 ]、 久 手 堅 [聞 ]、 知 念 [聞 ]、 具 志 堅 [聞 ]、 山 口 [聞 ]、 仲 里 [聞 ]、 上 志 喜 屋 [聞 ]、 下 志 喜 屋 [聞 ]な ど 、 多 く の 古 村 に 儀 礼 が み ら れ る も の の 、 王 府 時 代 、 国 家 的 聖 地 と さ れ 国 王 の 参 詣 も 行 わ れ た 久 高 島 に は 確 認 で き て い な い 。 同 島 の よ う に 距 離 的 に 沖 縄 本 島 か ら 近 い 離 島 の 中 で 、 伝 統 的 な 村 落 の あ る 有 人 島 に お い て 本 儀 礼 が 確 認 で き な い の は 久 高 島 だ け で あ る ( 伊 是 名 島 、 伊 平 屋 島 、 屋 我 地 島 、 古 宇 利 島 、 伊 江 島 、 瀬 底 島 、 瀬 長 島 、 奥 武 島 、 津 堅 島 、 浜 比 嘉 島 、 平 安 座 島 、 宮 城 島 、 伊 計 島 な ど 、 計 27 村 落 で 儀 礼 が 確 認 で き る )。 久 高 だ け に 古 く か ら シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 無 か っ た 、 あ る い は 、 途 絶 ま た は 他 の 儀 礼 に 変 化 、 吸 収 さ れ た の だ ろ う か 。 後 者 と 考 え る の が 自 然 で あ ろ う 。 琉 球 諸 島 に 広 く 高 密 度 に 分 布 す る シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 、 王 都 首 里 一 円 や 王 府 と の 関 係 が と く に 深 い 地 域 ( 久 高 島 ) に み ら れ な い こ と は 、 本 儀 礼 が 首 里 王 府 の 規 制 や 禁 止 指 導 の 対 象 で あ っ た こ と を 示 唆 し て い る と 考 え ら れ る 。
次 に 、 文 献 史 料 か ら 、 首 里 王 府 と シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 関 係 に つ い て 考 察 し た い 。 1666~ 73 年 の 間 に 王 府 か ら 通 達 さ れ た 文 書 を 集 成 し た『 羽 地 仕 置 』に は 、「 葬 礼 の 時 、 牛 共 殺 大 酒 仕 候 儀 、 前 々 よ り 禁 止 し た り と い え ど も 、 頃 日 、 猥 に こ れ あ り 、 弥 稠 敷 、 申 付 ら る べ く 候 」 と い う 条 文 が み ら れ る [ 沖 縄 県 教 育 委 員 編 1981:16]。 そ し て 、 1697 年 に 沖 縄 本 島 の 各 間 切 に 布 達 さ れ た 文 書 、『 法 式 』 に は 、「 婚 礼 の 時 、 肴 は 豚 以 下 で あ る べ き こ と 、 牛 は 耕 作 の 助 け に な る 為 、 屠 殺 し て 祝 儀 に 用 い る こ と は 今 後 禁 止 す る 」 と あ る [ 沖 縄 県 教 育 委 員 編 1981:61]。 こ れ ら の 通 達 か ら 、 王 府 か ら 各 間 切 に 数 回 に わ た っ て 、 冠 婚 葬 祭 に お け る 牛 の 屠 殺 に 対 す る 禁 止 令 が 出 さ れ て い た こ と 、 に も 関 わ ら ず 続 け ら れ て い た こ と 、 牛 が 王 府 に と っ て 重 要 な 動 物 で あ っ た こ と が わ か る 。 牛 が 王 府 の 貴 重 な 税 源 の ひ と つ で あ っ た こ と は 、 牛 の 頭 数 を 把 握 し た と い わ れ る 「 牛 改 帳 」 か ら も う か が え る [ 沖 縄 大 百 科 事 典 刊 行 事 務 局 編 1983:上 巻 880]。 次 に 、 王 府 が 実 録 風 に 編 集 し た 歴 史 書 で あ る 『 球 陽 』( 1743~ 5) に は 、「 年 浴・柴 指・鬼 餅 等 の 日 を 改 定 す 」と い う 条 文 が あ る[ 球 陽 研 究 会 編 球 陽 研 究 会 編 1974:313]。 こ れ は 、 各 地 で 日 を 選 び 行 わ れ て い た 年 浴 や 柴 指 、 鬼 餅 な ど の 行 事 を 、 そ れ ぞ れ 6 月 25 日 、 8 月 10 日 、 12 月 8 日 に 定 め る と い う も の で あ る 。 こ れ ら の 史 料 か ら 、 祝 儀 に お け る 牛 の 屠 殺 の 禁 止 、 そ し て 、 吉 日 を 選 ん で い た 行 事 の 統 制 化 を 王 府 が 各 間 切 村 落 に 指 導 し て い た こ と が わ か る 。 534 例 中 、そ の 9 割 強 に あ た る 491 例( 文 献 66 例・聞 取 り 425 例 )に 動 物 が 使 わ れ る こ と が 確 認 で き た 。 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 に は 動 物 が 不 可 欠 で あ る と 言 え る 。 ま た 、 実 施 月 は 地 域 あ る い は 村 落 に よ り 大 き く 異 な り 、 月 に よ る 事 例 数 の 多 少 は あ る が 、 す べ て の 月 に 儀 礼 を 確 認 で き た 。 日 に ち も 村 落 に よ っ て 様 々 で 、 年 に 数 回 ま た は 臨 時 に 行 う 事 例 も あ る 。 あ と 、 1768 年 ( 乾 隆 33) 12 月 、 首 里 王 府 の 名 で 宮 古 の 在 番 ・ 頭 ら に 布 達 さ れ た 『 与 世 山 親 方 宮 古 島 規 模 帳 』 と い う 文 書 が あ る 。 内 容 は 、 1767 年 (乾 隆 32)3 月 か ら 10 月 に か け て 、 王 府 の 命 を う け た 与 世 山 親 方 ( 与 世 山 朝 昌 ) ら が 宮 古 の 行 政 状 況 を 視 察 し 、 帰 任 後 そ の 結 果 を 王 府 首 脳 に 報 告 し た も の と な っ て い る 。 百 姓 の 労 働 力 と 生 産 力 を 増 大 さ せ 、 貢 賦 の 順 調 な 納 付 を 目 標 と し て 、 改 善 す べ き 点 と 対 処 策 が 個 別 か つ 具 体 的 に 指 摘 さ れ て い る と い う[ 沖 縄 大 百 科 事 典 刊 行 事 務 局 編 1983:下 巻 807]。そ の 中 に 以 下 の 文 が あ る [ 宮 古 島 市 教 育 委 員 会 文 化 振 興 課 編 2010:72]。 「 一 、 地 船 漲 水 滞 船 之 砌 、 泊 く さ ら し 与 て 上 国 人 数 ニ 而 牛 殺 、 み き ・ 酒 相 調 致 物 入 候 由 不 宜 候 間 、 向 後 可 召 留 事 」 訳 に よ る と 、「 地 船 が 漲 水 に 停 泊 す る 際 、『 泊 く さ ら し 』 と 称 し て 上 国 す る 人 々 が 牛 を 殺 し 、 神 酒 や 酒 を 準 備 し て 出 費 し て い る と い う 。 良 く な い こ と な の で 、 今 後 は 禁 止 す べ き こ と 」 と あ る 。 文 中 の 「 泊 く さ ら し 」 を シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 と 断 定 す る に は い く つ か の 注 意 点 が あ る 。
目 的 が 不 明 な 点 、 骨 肉 を 使 っ た 除 厄 方 法 が み ら れ な い 点 、 ま た 、 村 落 の 人 々 で は な く 上 国 す る 人 々 が 主 体 と な り 行 っ た よ う だ が 、そ の よ う な 事 例 は 現 時 点 で 確 認 さ れ て い な い 。 だ が 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 と の 類 似 点 も 多 い 。 確 認 で き た 事 例 群 の 中 に 「 泊 く さ ら し ( ト ゥ マ イ ク サ ラ シ と 推 測 さ れ る )」と い う 儀 礼 名 は な い が 、1 例 の み 、沖 縄 本 島 周 辺 離 島 の 渡 嘉 敷 村 渡 嘉 敷 で は 儀 礼 を ン ナ ト ゥ ク サ ラ シ ( 港 く さ ら し ) と 呼 ん だ と い う [ 渡 嘉 敷 村 史 編 集 委 員 会 1987:233]。 同 類 の 儀 礼 名 称 と 推 測 さ れ る 。 渡 嘉 敷 で も 、 史 料 と 同 じ よ う に 儀 礼 に は 牛 が 屠 ら れ た と い う [聞 ]。 史 料 で 屠 ら れ た 牛 も 、 お そ ら く 上 国 す る 人 々 に よ っ て 共 食 さ れ た と 想 定 さ れ る 。 こ れ ら の こ と か ら 、「 泊 く さ ら し 」は 、シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 そ の も の か 、非 常 に 関 連 性 の 高 い 儀 礼 と 考 え ら れ る 。 そ う で あ れ ば 、 現 時 点 で シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 文 献 上 の 初 見 が 本 資 料 と な る 。 注 目 す べ き は 、牛 の 屠 殺 を 伴 う 儀 礼( 泊 く さ ら し )の 禁 止 が 指 示 さ れ て い る 点 で あ る 。 文 書 は 王 府 首 脳 ( 摂 政 ・ 三 司 官 ) の 許 可 を 得 て 宮 古 側 に 布 達 さ れ た こ と か ら 、 内 容 は 王 府 の 意 向 と 考 え て 良 い だ ろ う 。 ま と め る と 、『 羽 地 仕 置 』、『 法 式 』、『 球 陽 』等 に み ら れ る 王 府 の 意 図 と シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 実 態 が 対 照 的 で あ る こ と 、そ し て 、『 与 世 山 親 方 宮 古 島 規 模 帳 』で は 、本 儀 礼 そ の も の と 思 わ れ る 「 泊 く さ ら し 」 の 禁 止 が 指 示 さ れ て い る こ と か ら 、 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 は 、 王 府 に よ っ て 規 制 や 禁 止 指 導 の 対 象 で あ っ た と 考 え ら れ る 。 琉 球 諸 島 全 域 に 高 い 密 度 で 分 布 す る シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 が 、 王 都 首 里 一 円 や 王 府 と の 関 係 が と く に 深 い 久 高 島 に み ら れ な い こ と は 、 そ の 重 要 な 傍 証 と し て 把 握 で き る 。 第 二 節 名 称 1 . 分 析 こ れ ま で の 調 査 で 、北 部 104、中 部 143、南 部 109、周 辺 離 島 24、宮 古 111、八 重 山 34 の 計 525 例( 文 献 35・聞 取 り 490)で 、儀 礼 の 名 称 を 確 認 で き た 。事 例 群 を 整 理 す る と 、 (1)シ マ ク サ ラ シ 系 、 (2)カ ン カ ー 系 、 (3)シ マ カ ン カ ー 系 、 (4)他 の 儀 礼 と 同 名 系 、 (5) 目 的 名 称 系 、(6)そ の 他 の 6 つ に 分 類 で き る 。分 類 の 基 準 は 、(1)~ (3)が 儀 礼 を 代 表 す る 名 称 で 、 (4)~ (6)は 、 名 称 の 特 徴 や 性 格 に 因 む も の で あ る 。 事 例 群 を 系 統 別 に 整 理 し 作 成 し た の が 表 4 で あ る 。 村 落 を 系 統 別 に 色 分 け し 作 成 し た の が 地 図 3 、 4 で あ る( 4 )。 (1)系 統 が 白 色 、 (2)は 黒 色 、 (3)は 灰 色 、 (4)は 横 縞 、 (5)は 縦 縞 、 (6)の 系 統 は 斑 点 と し た 。 ×は 名 称 不 明 の 村 落 で あ る 。 表 の 合 計 が 525 例 を 超 え る の は 、 儀 礼 が 複 数 の 名 称 で 呼 ば れ て い る こ と を 意 味 す る 。 例 え ば 、 儀 礼 を シ マ ク サ ラ シ や カ ン カ ー 、 フ ー チ ゲ ー シ と も 呼 ぶ 村 落 は 、 地 図 で は 白 、 黒 、 縦 縞 の 3 種 類 の 円 と な っ て い る 。
表 4 か ら 、 事 例 数 の も っ と も 多 い の が (1) シ マ ク サ ラ シ 系 で あ る こ と が 分 か る( 361 例 )。 全 体 の 7 割 弱 を 占 め 、 そ の 次 に 多 い 他 の 儀 礼 と 同 名 系 や 目 的 名 称 系 、 カ ン カ ー 系 に 比 べ 、 そ の 数 は 倍 以 上 多 い 。 シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の も っ と も 一 般 的 な 名 称 で あ る 。 各 地 の 割 合 も 、 北 部 2 割 強 ( 104 例 中 23 例 )、 中 部 7 割 弱 ( 143 例 中 99 例 )、 南 部 8 割 強 ( 109 例 中 88 例 )、 周 辺 離 島 4 割 弱 ( 24 例 中 9 例 )、 宮 古 10 割 弱( 111 例 中 110 例 )、八 重 山 9 割 半 ば( 34 例 中 32 例 )と 、6 地 域 中 4 地 域 と 、 琉 球 諸 島 の ほ ぼ 全 域 で 最 多 の 名 称 と な っ て い る 。 た だ し 、 沖 縄 本 島 北 部 は 2 割 強 と 極 端 に 低 く 、 シ マ ク サ ラ シ 系 名 称 が 少 な い 地 域 で あ る 。 当 地 域 に お け る 聞 取 り 調 査 で も 、 シ マ ク サ ラ シ と い う 言 葉 が 通 用 す る こ と は 非 常 に 稀 で あ っ た 。 (2)カ ン カ ー 系 は 、シ マ ク サ ラ シ 系 と と も に 儀 礼 を 代 表 す る 名 称 で あ る 。主 に カ ン カ ー と ハ ン カ が あ る が 、 両 語 の 違 い は 方 言 の 地 域 差 に よ る も の で 、 主 に 沖 縄 本 島 中 部 で は カ ン カ ー 、 北 部 で は ハ ン カ と い う 。 沖 縄 本 島 に お け る カ ン カ ー と ハ ン カ の 境 界 と な る 村 落 が 本 島 西 海 岸 の 名 護 市 幸 喜 で あ る こ と が 分 か っ た 。 幸 喜 以 北 は ハ ン カ 、 以 南 は カ ン カ ー と い い 、 唯 一 幸 喜 で は 両 方 が 併 用 さ れ て い た [聞 ]。 東 海 岸 で も 、 幸 喜 と ほ ぼ 同 緯 度 の 名 護 市 辺 野 古 の カ ン カ ー 系 は カ ン カ ン で 、 そ れ か ら 北 は ハ ン カ と な る( 5 )。 カ ン カ ー 系 は す べ て 沖 縄 諸 島 の 事 例 で 、 先 島 諸 島 に は み ら れ な い 。 儀 礼 を 代 表 す る 名 称 で あ る が 、 そ の 分 布 圏 は 、 琉 球 諸 島 に 広 域 的 な シ マ ク サ ラ シ 系 と は 対 照 的 で あ る 。 儀 礼 を 代 表 す る 名 称 で あ る が 、 そ の 分 布 圏 は 、 琉 球 諸 島 に 広 域 的 な シ マ ク サ ラ シ 系 と は 対 照 的 で あ る 。 各 地 で の 割 合 は 北 部 5 割 強( 104 例 中 53 例 )、中 部 3 割 半 ば( 143 例 中 51 例 )、南 部 1 割 未 満( 109 例 中 7 例 )、周 辺 離 島 2 割 弱( 24 例 中 4 例 )と 、沖 縄 本 島 北 部 が 最 多 で 、唯 一 カ ン カ ー 系 の 数 が シ マ ク サ ラ シ 系 を 超 え る 地 域 と な っ て い る 。 北 部 に お け る シ マ ク サ ラ シ 系 の 少 な さ は 、 カ ン カ ー 系 の 多 さ が 起 因 し て い る 。 カ ン カ ー 系 の 分 布 形 態 の 特 徴 は 地 図 3 を み る と 分 か り や す い 。 北 部 で は 、 今 帰 仁 村 以 表 4 . シ マ ク サ ラ シ 儀 礼 の 名 称 ( 系 統 別 一 覧 表 ) (イ) 行 動 (ロ) 期 日 (ハ) 特 異 沖縄本島北部 23 53 6 47 35 6 5 1 沖縄本島中部 99 51 8 43 29 28 24 12 沖縄本島南部 88 7 0 33 24 25 13 4 周辺離島(沖縄本島) 9 4 0 1 10 3 0 1 宮古諸島 110 0 0 8 8 1 2 15 八重山諸島 32 0 0 9 9 1 5 0 合 計 361 115 14 141 115 64 49 33 (5) 目 的 名 称 系 (6) そ の 他 (1) シ マ ク サ ラ シ 系 (2) カ ン カ | 系 (3) シ マ カ ン カ | 系 (4) 他 の 儀 礼 と 同 名 系