九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
インドネシア・サウス・スラウェシ州ビリビリダム 流域における山地災害軽減対策としての斜面崩壊危 険度評価手法ならびに費用便益解析に関する研究
プトゥリ, パチマ, ヌルディン
https://doi.org/10.15017/4060223
出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
氏 名 プトゥリ パチマ ヌルディン
論 文 名 Landslide risk assessment and Cost Benefit Analysis on Mitigation Measures in Bili-bili Watershed, South Sulawesi -
Indonesia(インドネシア・サウス・スラウェシ州ビリビリダム流域
における山地災害軽減対策としての斜面崩壊危険度評価手法ならび に費用便益解析に関する研究)
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 久保田哲也 副 査 九州大学 准教授 藤原 敬大 副 査 九州大学 准教授 水野 秀明
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
山地森林斜面の崩壊は人的被害も多く、深刻な財産の損失の原因となると同時に、森林生態系な どの環境にも被害をもたらすことから、インドネシアをはじめ国内外を問わず主要な山地の自然災 害とされている。森林斜面崩壊の発生には斜面の素因と誘因の両者が関係する素因としては地質(岩 種、断層など地質構造)、土質(土質強度、土の深さなど)、地形(斜面形状、斜面傾斜など)およ びその地域における土地利用(植生や土地利用種別、森林利用形態)とその変更が考えられる。誘 因としては、降雨と地震が考えられるが、本研究では降雨によるものを対象としている。誘因の降 雨はインドネシア・南スラウェシ地域でも気候変動により増加傾向にあり、雨季に山地斜面崩壊が 頻発して土石流化し、多くの犠牲者が生じると同時に多大な資産が失われてきた。しかしながら、
現在、山地崩壊の目録もデータベースもない地域が多い。したがって、当該地域では、発展途上国 に適した山地斜面崩壊発生危険度・危険箇所評価とその災害対策の費用便益解析手法の発展が急務 となっている。
そこで、本研究では研究の第 1段階として、当該地域に対してGIS(地理情報システム)を用い た山地崩壊箇所の目録(崩壊箇所リスト)作成を初めて行い、他の研究に先駆けて、その地形・地 質・土地利用・気象条件など発生の素因・誘因のデータベースを作成した。
その後、当該地域の重要な水資源大ダムのビリビリダム流域における土砂流出緩和策を経済的に 最 適 化 す る た め に 、GIS 環 境 下 に お い て 、 科 学 的 評 価 に お け る エ ビ デ ン ス の 重 み 付 け 手 法
(weights-of-evidence)、 ベ イ ズ 統 計 に 基 づ き 崩 壊 発 生 の 信 用 度 を 解 析 す る 確 信 度 解 析
(CF :certainty factor)、確率論的に発生率を解析する発生頻度解析(FR:frequency ratio approaches)を用いて効果的な崩壊危険度マップを作成した上で、これらをもとに斜面緑化工、治 山・砂防堰堤工、ダムの浚渫工などの対策を比較した山地災害対策の費用便益分析を実行した。こ の結果、長期的には斜面緑化工が最適な方法であることが判明するなど有効な費用便益解析手法が 開発できた。
このような研究は、世界的にみても最新かつ独創的なもので、発展途上国に対して有益な山地崩 壊箇所リストと崩壊危険個所・危険度評価法が確立でき、かつそれらを利用した有効な費用便益解 析手法が開発できた。
崩壊危険度や費用便益比の情報が皆無である地域において、本研究の崩壊危険度・危険個所評価 手法ならびに費用便益解析手法は、将来のこのような地域における山地災害軽減対策に対して重要 かつ実装可能で実用的なものとなったと考える。
以上要するに、このように、本研究は、森林保全学および治山学・砂防学の発展に寄与する価値 ある業績と認められる。よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める。