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〈研 究 ノー ト〉
企 業 買 収 に よ る 海 外 進 出 一1970年 後 半1980年 前判 二見 る一
百 海 正 一
目 次 は じめ に
1進 出 動 向 の変 化 2貿 易摩 擦 へ の対 応 3海 外 進 出 の方 法 4買 収 に よ る進 出 5買 収 の 目的 6買 収 の方 法 7買 収 の執 行 8買 収 後 の経 営
は じめ に
日本 企 業 は1970年 代 後 半 か ら,米 国 を主 舞 台 に して,企 業 買 収 に よ る 海 外 進 出 を 積 極 的 に 展 開 し は じめ た 。 そ れ 以 前 の 海 外 進 出 は 東 南 ア ジ ア が 中 心 で あ りr進 出 方 法 と して は既 存 企 業 の買 収 は 全 く行 わ れ な か っ た。 しか し,1970年 代 後 半 か ら の 海 外 投 資 の 特 徴 で あ る 先 進 国 の 場 合 は,進 出 形 態 と して 既 存 企 業 の 買 収 も い くつ か 行 わ れ て きて い る。 買 収 の規 模 も大 日本 イ ンキ 化 学 工 業 の ポ リ
ク ロ ー ム 社 の 買 収 に み ら れ る よ う に 買 収 金 額 も 6,000万 ドル と大 規 模 化 した 。 この小 論 文 は 当 時 の 日本 企 業 に よ る欧 米 企 業 の買 収 に焦 点 を あ て, そ の経 営 を レ ビ ュ ー した もの で あ る。
1進 出動向の変化
1975年 か ら1980年 代 に か け て,日 本企 業 の海 外 進 出 が 活 況 を 呈 した。 東 洋 経 済 の調 査(図1参 照)に よ る と,日 本 を 代 表 す る上 場 企 業 会 社 の な
か か ら,製 造 業1 ,083社 中525社(進 出 率 で は 83%)が 進 出 済 で あ る。 な か で も
,精 密 機 器 (64・5%)・電 気 機 器(5&0%),イ ヒ学(55 .5%),繊 維 (54.9%),非 鉄 金 属(51.3%) ,機 械(48.1%),輸 送 用 機 器(47.5%)業 界 が 製 造 業 の な か で,海 外 進 出 が 進 ん で い る業 界 で あ る。
ま た,過 去1972年 か ら1981年 ま で の9年 間 の 間 に,製 造 業 の 海 外 進 出 率 は29.7%か ら48 .5%へ と急 速 に 増 加 した。 更 に,1970年 代 前 半 に 進 出 率 が 既 に44%に も達 して い た繊 維 産 業 の よ うに,以 後 進 出 率 が 次 第 に 鈍 化 した 産 業 や 鉄 鋼,機 械 ,電 気 機 器 業 界 の よ う に業 界 内 に も変 化 が 見 られ る。
一 方,進 出 地 域 に も変 化 が 見 られ,地 域 別 ・年 代 別 に進 出 状 況(図2参 照)を 整 理 して み る と,
1960年 代 進 出 の 中 心 で あ っ た ア ジ ア ・中 南 米 の ウ ェ ー トは次 第 に低 下 し,1970年 代 後 半 よ り,欧 米 先 進 国 に 対 す る進 出 が 急 速 に増 加 した 。
そ こ で,地 域 別 の 投 資 目 的(図3参 照)を 見 る と,ア ジ ア で は 「市 場 拡 大 」 「労 働 力 利 用 」 が,中 南 米 で は 「市 場 拡 大 」 と 「現 地 政 府 の 保 護 上 有 利 」 が そ れ ぞ れ 投 資 目 的 の 第 一 位 お よ び 二 位 を 占 め る。 こ れ に対 し,欧 米 先 進 国 の場 合 に は 「情 報 収 集 」 を 含 め る と 「市 場 拡 大 と確 保 」 が 圧 倒 的 多 数 を 占 め た 。
次 に,現 地 に進 出 した 場 合 の 販 売 先 で は,北 米 で は 「現 地 市 場 」 の 占 め る比 率 が75 .5%と 圧 倒 的 に 高 い 。欧 州 で は,「現 地 市 場 」の比 率 が59%と や や 低 い が,こ れ は進 出 国 ば か りで な く,「第三 国へ の 輸 出 先 」で あ るEC域 内(21%)を 一 っ の 市 場 と と らえ た進 出 が 多 い た め で あ る。 こ れ に 対 し,オ セ ア ニ ア ・ア ジ ア で はr日 本 に対 す る輸 出 」 を 目
一88一 企業買収による海外進出 図1上 場 会 社 の海外 進 出状 況
1972年 1975年 1981年
合計
進出率 進出率 進出率 進出数
(社数)全産業 28.2 33.0 45.3 763 1,693
農林 水産 ioo.0 100.0 100.0 7 7
鉱 業 29.4 38.5 40.0 4 10
製造業
29.7 34.6 48.5 525 i,as3食品
22 27 37.5 33 88繊維
44 4fi 54.9 45 82化学
32 36 55.5 91 164鉄鋼
23 27 41.7 25 60非鉄金属
38 45 51.3 20 39機械
23 sa .・ 78 162電気機器
38 44 58.0 91 157輸送用機器
34 33 47.5 38 80精密機器
44 52 64.5 20 31商業
40.7 43.2 50.0 79 158金融
25.6 1 29.2 3$.2 47 123 (注)進 出率e進 出数/合 計資料:1982年 週刊東洋経済 「海外進 出要 覧」 東洋経済 新報社 より作成 図2地 域 別.年 代 別 進 出状 況
地域別 年代
〜1964 1965〜69 1970〜741
1975^‑79 1980〜
合計
ア ジ ア
103
(s2>
283 (fi2)
669 (68)
414 (58)
127 (51)
1,596 (64)
中南米
37(22)
32 (9)
127 (13)
98 (14)
23 (9)
317 {13)
北米 12
7)
29 (8)
75 C$)
96 (14)
52 (2i)
264 (11)
欧州 3
(Z}
8 (2)
48 (5)
54 (s)
21 C9)
134 {5)
オ セ ア ニ ア
2
(1)
8 (2)
39 (4)
19 (3)
12 (5)
80 (3)
ア フ リ カ
8
(5)
11 (3)
14 (1)
20 (3)
s (2)
62 (2}
中近東
一 3{1)
12 (1)
11 (2)
6 (2)
32 1)
合計 165
(100)
374 98 712 247 2,485
(注)複 数 回 答 件,括 弧 内%,
資 料:1981年 週 刊 東 洋 経 済 「海 外 進 出要 覧」 東洋 経 済 新 報 社 よ り作 成
企業買収 によ る海 外進 出 一89一 図3地 域 別 に み た投 資 目的 ・販 売 先
投資目的 製品の主な販売先
原 材 料 資源 確 保
資現 源地 が生 豊産 富容 で易
労 コ 働 ス カ ト 利
減 用
現保 地護 政政 府策 の上
有利
現 地 市・場 第 へ 三 の 国 拡 大情 報 収 集
そ含
窟 督
T
日
歪
輸 出
現 地 市 場
第 三 F' 輸 出 ア ジ ア
168
(5.5) 70 (2.3)
835 (27.1)
482 (15.7)
1130 (36.?}
22fi (7.3)
166 (5.4)
226 (16.6)
790 (57.9)
348 (25.5}
中南米
89
(io.$)
46 (5.6)
84 (10.2)
137 (is.$)
325 (39.4)
77 (9.3)
66 (s.o)
48 (12.8)
252 (67.0)
7s (2a.2)
北 米
125
(s.7) 42 (2.9)
24 Cl.̀r)
21 (1.5}
774 (53.8)
373 (25.9)
81 (5.6)
i17 (16,1)
548 (75.5)
61 (8.4)
欧州
14
(1.6) 4 (0.5)
14 (i.$)
29 (3.4)
557 (64.g)
197 (23.0)
43 C5.o)
55 (10.8)
sas {59.4)
152 (29.8)
オ セ ア
ニ ア 92
(27.0)
21 C6.2)
6 (1.8)
19 (5.6)
137 (40.2}
42 (12.3)
24 (7.0)
48 (26.2)
113 (61.7)
22 (12.0)
ア フ リ カ
32 (19.8)
2 (1,2)
28 (17.3)
29 (17.9)
45 (27.8)
6 C3.7}
20 (12.3)
14 (28.6)
31 (63.3)
4 ($.2)
中近 東
6
(6.1)
2 (2.0)
8 (s.2)
15 (15.3)
4p (40.$)
15 (15.3)
12 (5.i)
2 (5.1)
3i (79.5)
s (15.4)
合計
526
(7.7)
187 {2,8)
999 (14.7)
732 (10.8)
11:
(44,2)
936 (3.8)
412 (6.1)
510 (15.7)
1・:
(63.7)
669 (20.6)
(注)(複 数 回答 件,括 弧 内%)
資 料:1981年 週 間東 洋経 済 「海 外 進 出 要 覧 」 東 洋 経 済 新 報 社 よ り作 成
的 と した 進 出 が や や 多 か っ た と い え る。
2貿 易摩擦への対応
前 説 で み た よ う に,製 造 業 の ア ジ ア,中 南 米 地 域 か ら欧 米 先 進 国 へ の 進 出 動 向 の変 化 に は,欧 米 先 進 国 と の 貿 易 摩 擦 が そ の 背 景 に あ る。(図4参 照)
特 に,1970年 代 後 半 に お け る貿 易 摩 擦 は (1)日 本 と欧 米 諸 国 の 産 業,貿 易 構 造 に お け る
比 較 優 位 が 変 化 した こ と,
(2}摩 擦 対 象 が 相 手 国 の基 幹 産 業 に ま で 移 行 し て き た こ と,
(3)石 油 危 機 と そ れ を 契 機 と した 欧 米 諸 国 経 済 貿 易 の 景 気 停 滞 か ら生 じた 国 内 の諸 問 題 が 貿
易摩擦 と結 びやすい こと,
な どの理由で,そ れ以前 の貿易摩擦 と異 な り, 政治的意味あいをます ます強 めた ことであ った。
貿易摩擦解消の対応策 として,政 府間では輸 出 自主規制や市場秩序維持協定,行 政指導 による輸 入制限,業 界間の紳士協定 など打開の道 が度 々行
われた。
これに対 し,貿 易摩擦 に対 する日本企業の とり うる対応策 には,
(1}輸 出 自主規制 あるいは市場秩序維持協定下 で,相 手 国 へ の高 生産 性 ・高 品 質 製品 を輸 出 す る(輸 出方針継続)
② 日本か らの輸出が従来 よりも困難 にな るこ とか ら,輸 出市場 を守 る対応策 として
1)直 接投資 による現地生産,
一90一 企業 買収 に よる海外進 出
図41969‑1980年 間 に お け る 貿 易 庫 擦
経 緯 対 応
1969 ア メ リカ政 府,繊 維 自主規 制 要 請 1970 ア メ リカ 政 府 日本 製 カ ラ ーTV,板 ガ
ラ ス に つ き ダ ン ピ ン グ事 実 認 定
1971 ECに 鉄 鋼 輸 入急 増 1971
日米繊維業界対米輸出自主規制
1972 高炉6社 輸 出入取 引法 に よ り鉄 鋼 輸 出
自主規制
1976 経 団 連 訪 欧使 節 団 に対 し,対 日批 判 集
中
EC委 員 会 鉄 鋼 ・自 動 車 ・造 船 ・ベ ア リン グに関 し自主 規 制 要 求
1977 ア メ リカ 政 府 特 殊 鋼,カ ラ ーTVに 関 1977 カ ラ ーTVに っ き 日米 政 府 間 で,OM
し輸入救済措置を発動
A(輸 出秩 序 維持 協 定)を 締 結 ECベ ア リ ン グ に ダ ン ピ ン グ課 税 決 定 対 イギ リス 自動 車輸 出 自粛 に関 し,日 1978 ア メ リ カ 政 府 鉄 鋼 輸 入 に 関 し ト リガ ー英自動車産業間で情報交換
価格制度導入
アメ リカ政 府電 々公 社 資 材 調達 方 法 の "1 電 々調 達方 式 につ き 日米政 府 間 合 意
門戸開放を要請
EC鉄 鋼 に 関 して ベ ー シ ッ ク プ ラ イ ス
制度導入
"1 全 米 自動 車 労 組 ・フ ォ ー ド社 日本 製 自
動車輸入に対する輸入救済措置発動
1981 自動 車 に つ き168万 台 に対 米 自主 規 制 EC日 本 に対 して 自動 車 輸 出 自粛 要 請資 料:『 昭和56年 度 通 商 白書 』,野 村 総 研 『日本 企 業 の世 界戦 略』 よ り作 成
欧 米 諸 国 にお け る 政 治 ・社 会 的 要求 貿 易 摩 擦 の 発 生
市 場 秩 序
塵]雛 協 定
自主規制
図5「 貿易摩擦解消の対応策」
輸出自主 高生産性
規制下 高品質製
での輸出 品の輸出
方針継続
海外生産 現地一貫生産 現地経営
相手国市場向 第三国へ輸出 多角化
1慧 産f」7"'TVVTRビ
企 業 との交 流(ク ロ ス ライ セ ンス,技 術 援 助) なん らか
な対 応 輸 出 市場 の
多 角 化(含 開発 途 上 国 か らの代 替 輸 出) そ の 他(含 第
3国 で 生 産 し 先 進 国 へ 輸 出)
資 料:「 財 界 観 測 」 野 村 総 研"1s,日 経 新 聞1981.4,28,日 経 産業 新 聞1983.3.10を 参 考 に して 作 成
2)相 手 国 競 争 企 業 と のi提携, 3)輸 出 市 場 の 多 角 化,
企業買収 によ る海外進 出
4)第 三 国 で 生 産 し,先 進 国 へ 輸 出 す る,な どが 考 え られ る。(図5参 照)
過去 の対応策で は繊維産業 の場合,国 際競争力 の源泉 が低賃金 にあったため,高 賃金であ る欧米 先進 国への直接投 資 によ る現地進 出 はあ り得 な
図6
一91一
い。 ま た,鉄 鋼 の よ うに 大 規 模 な 投 資 を 必 要 と す る直 接 投 資 は リス ク が 大 きす ぎ る た め ,輸 出 自主 規 制 下 で 省 資 源,省 力 化 な ど の 技 術 輸 出 と い う形 で 相 手 国 競 争 企 業 と の 交 流 が 対 応 策 と な っ た 。 カ ラー テ レ ビの ケ ー ス は 直 接 投 資 に よ り リ ス ク が 小 さ い こ と か ら,現 地 生 産 移 行 が 可 能 で あ り,図6 に 見 ら れ る よ う に は貿 易 摩 擦 が 激 化 した1976年 電子機械工業 の対先進国向け,海 外投資件数の推移(件 数)
設 立 ・投 資 開始 時
期 ^‑60 61〜69 70〜75 76^一 一80
合計
ア メ リ カ 2 4 s i7 29
カ ナ ダ 2 1 3
西 ドイ ツ 2 X 3
フ ラ ン ス 1 1
イ ギ リ ス 2 3 5
ベ ル ギ ー 2 1 3
イ タ リア 1 1
ア イ ル ラ ン ド 1 1
合計
2 4 15 25 46資料:日 本電子機 械工業会 「電 子産業 の国際化 の方向 とその影響 に関す る調査報告書」1981
図7現 在 お よび 今 後貿 易 摩 擦 を 回 避 す る た めの 対 応 策
(回答 社 数%)
何 ら か の 対 応
輸出方針
継 続 海外生産
移 行
相 手 国 競 争 企 業 と の交 流
輸 出 市 場
の 多 角 化 そ の 他
回 答
(企業社 数)
繊維
44 4 11 44 s7 100(9社)化学
5 11 0 Q 0 100(19社)窯業 ・土 石 50 0 0 100 17 100(6社)
鉄鋼
50 d 42 50 75 100(12社)非鉄金属
33 0 17 0 n 100(6社)一 般 機 械 32
59 18 46 27 100(22社)
電気機械
40 80 50 78 18 100(40社)自動車
82 41 71 71 29 100(17社)造船
100 5a 50 100 33 100(9社)精密機械
9 9 1 9 0 100(11社)そ の他 共 計
39 (66)
47 (so)
2?
(46)
50 Cgs>
23
(39)
(171社)(注)1)百 分 比=当 該 対 応 措 置 回 答 企 業 数/回 答 企 業 社 数 資 料:「56年 度 通 商 白 書」
2)複 数 回 答
一一92 企業買収 によ る海 外進出 度 以 降 急 速 に 先 進 国 に 対 す る投 資 が 増 大 した 。
貿 易 摩 擦 に対 す る対 応 策 は図7の よ う に各 業 界 に よ っ て 異 な っ て い る が,1980年 代 に は 一 般 機 械 (59%),電 気 機 械(80%),自 動 車(41%)業 界 で は 海 外 進 出 に対 して 一 層 積 極 的 に な った 。
3海 外進 出の形態
先 進 国 へ の 海 外 進 出 に は 大 き く分 け て,
(1)自 社 の 持 つ 人 ・物 ・金 ・の 経 営 資 源 を活 用 して 工 場 を 新 設 す る方 法 と
(2)外 部 の 機 能 や 他 社 の経 営 資 源 を 自社 の 海 外 進 出 の た め に利 用 す る方 法,例 え ば 買 収 ・合 弁 に よ る方 法 とが あ る。
先 程 の カ ラ ー テ レ ビ の場 合,輸 出 環 境 の 悪 化 を 契 機 に 各 社 は表1の 方 法 で 現 地 生 産 化 を 推 進 して い る。
企 業 が ど ち らの 方 法 を 選 択 す る か は,そ の 企 業
の 属 す る業 種,現 地 に お け る競 争 企 業 の対 応,技 術 ・製 品 の 優 位 性,現 地 で の販 売 力 な ど 自社 の 持 つ 経 営 資 源,親 会 社 の 経 営 戦 略 な ど 客 観 的,主 体 的 条 件 に よ って 異 な る。
一一般 に新 規 工 場 設 立 に よ る方 法 と買 収 に よ る方 法 と で は 図8の よ う な メ リ ッ ト ・デ メ リ ッ トが あ
る。
新 規 工 場 設 立 の場 合,
(1)生 産 開 始 に 要 す る期 間 は 長 い が,一 般 に 自 社 に と って 望 ま しい 経 営 お よ び生 産 管 理 体 制
を 導 入 しや す い,
② 自 社 の 事 業 に最 適 な 土 地 と人 材 を 主 体 的 に 選 定 で き る,
(3)自 社 に と って 望 ま しい 工 場 を 設 計 で き る, な ど の メ リ ッ トが あ げ られ る 。
一・方 ,買 収 の場合 に は,
(1)被 買 収 企 業 の 生 産 設 備 を利 用 で き る場 合 に は,生 産 開 始 に要 す る期 間 を 短 縮 す る こ とが 表1海 外 進 出一 各 社 の 選 択一
(1)自 力 に よ る海 外 進 出
一一
ニ ニ 下 菱 芝 ソ ソ 松 三 束
1972年 1974年 1976年 1978年 1978年 シ ヤ ー プ1979年 日立1980年 東 芝1980年
(2}他 力 に よ る海 外 進 出 1)買 収
松 下1972年 ソ ニ ー1975年 三 洋1976年
ア メ リ カ イ ギ リ ス イ ギ リ ス ア メ リ カ ア メ リ カ ア メ リ カ ア メ リ カ イ ギ リ ス
ア メ リ カ ド イ ツ ア メ リ カ
三 菱1979年 イ ギ リス 三 洋1981年 イ ギ リ ス
カ ル フ ォ ル ニ ア州 サ ン デ ィ エ ゴ に 工 場 設 立 南 ウ ェ ー ル ズ ブ リ ッ ジ エ ン ドに工 場 設 立
カ ー デ ィ ッ ク に 工 場 設 立
カ ル フ ォ ル ニ ア 州 サ ン タ ア ナ に 工 場 設 立 テ ネ シ ー 州 レ バ ノ ン に 工 場 設 立
テ ネ シ ー 州 メ ン フ ィ ス に 工 場 設 立 カ ル フ ォ ニ ア 州 コ ン プ ト ン に 工 場 設 立
ラ ン ク社 と の 合 弁 を 解 消 後,プ リマ ス に 工 場 設 立
イ リノ イ州 フ ラ ンク リ ンパ ー クに あ る クエ ーザ ー社 を買 収 ベ ガ 社 を 買 収
ア ー カ ン ソ ー 州 フ ォ レ ス トシ テ ィ に あ る ウ オ ー イ ッ ク 社 を 買 収
ハ デ ィ ン グ ス ト ン に あ る タ ンバ ー ク社 を 買 収
サ フ ォ ー ク州 ロ ー ス ト ッ ト市 に あ る フ ィ リ ッ プ の タ イ 工 場 を 買 収
弁 合 と 巧 弛 業 弁 弁 工 合 合 ス と と レ 社 社 ナ ク C ス ン E ア ラ G
ンススイリリペギギスイイ
年 年 年
O﹂OQQりρ07.710ゾQゴ0り1111二
餅 護 眩
の
資 料:日 経 産 業 新 聞1977.4.30,1977.5.25,1979.4.7,1979.4.23,1980.4.23,1980」2.3,1982.3.9,
「通 商 ジ ャ ー ナ ル 」1981.5よ り 作 成
企業貿収 に よる海外進 出 一93一
図8新 殴 ・買 収 の得 失 比較
新 設 買 収
1生 産 開 始 まで の 期 間 操 業 開 始 まで に 時 間 がか か る 自社 工 場 を建 設 す る よ り も短 い 2投 下 資 本 高 くつ くが長 期 的 に は有 利 な 新 設 と比 較 して 安 くつ くが,長 期
例 もあ る 的 に は不 利 な例 もあ る
資金調達
困難 な場 合 もあ る 概 して 容易収益性 数年間は赤字覚悟
問題 会 社 を買 収 しな けれ ば,黒 字 に な るの は比 較 的 早 い3販 売 網 販 売 網 設立 に時 間 が か か る 既 存 の販 売網 を利 用 で きる
顧客
対応 に時間 が か か る こ とに よ 短 期 間 に顧客 の エ ー ズ に対 応 で き4生 産 設 備
り顧 客 ニ ー ズを 満 た せ な くな る
最 新 の設 備導 入 可 能
る
既 存 の設 備 が 古 い場 合 に は更 新 す る必 要 が あ る
技術 日本企業の技術移転容易 被買収企業の技術取得可能
日本的技術移転 比較的容易 困難大
品質管理 軌道に乗れば容易 困難大
自動化 比較的容易 抵抗大
5原 材 料 ・部 品入 手 当 初 は困難 な場 合 もあ る
比較的容易
6労 働力確保 未熟練労働者に対する教育訓 熟練労働者確保可能 練が必要
労働組合
当初 は存 在 しな い 存 在 して い る こ とが 多 い日本的経営導入 ある程度導入可能
導 入 に対 して抵 抗 が 多 い7地 元 との 関係 雇 用増 の た め,歓 迎 を受 け る 雇 用 増 の効 果 はあ ま り大 き くな い 8そ の 他 州 政 府 等 に よ る金 融,税 制 面
州政府
で の優 遇 措 置 が あ る許認可
取 得 が 必 要 とな る許 認 可 の 数 が 多 く,長 時 間 を要 す る資 料:宍 戸 寿 雄 編 『日本 企 業 イ ンUSA』p.49,上 野 明 『新 海 外 投 資立 国 論 』p.201.を 参 考 に し て作 成
で き る,
② 被 買 収 企 業 の持 っ 強 み,例 え ば 既 存 の 販 売 網 や 技 術 を 利 用 で き る,あ る い は 人 材 や 製 品 の ブ ラ ン ドを 活 用 で き る,
(3}新 規 工 場 を 建 設 す る よ り も買 収 の 方 が 資 金 面 で 比 較 的 に 安 くっ く,な どの メ リ ッ トが あ げ られ る。
新 規 工 場 設 立 か 買 収 か の 選 択 は,企 業 の ニ ー ズ と条 件,被 買 収 企 業 の 強 み,弱 み な ど を 中 心 に綿 密 な フ ィ ー ジ ビ リテ ィ ー ・ス タ デ ィ(事 前 調 査)
を 行 っ た 上 で,経 営 上 の 選 択 を す べ き で あ る。
4買 収 による進出
過 去,ア メ リ カ に 進 出 し て い る 日 本 の 製 造 業 225社 の う ち149社(66%)が 新 規 工 場 設 立 を,残
りの76社 が 買 収 を 選 択 して い る。
ま た,1981年6月 時 点 に お け る 日本 企 業 の 企 業 買 収 数 は124件,そ の うち ア メ リカ が 約 半 数 の60 件 に達 して お り,年 次 別 内 訳 で は1973年 に5件 , 1975年4件 と1979年 ま で5件 前 後 で あ っ た が
, 1980年 に11件,1981年 上 半 期7件 と 急 激 に 増 加
して い る(1)0
これ ら企 業 を 個 々 に見 る と,買 収 に至 った 経 緯
一94一 企業買収 による海外進 出 は様 々 で あ る が,
(1}当 初 日米 合 弁 で 発 足 した が,次 第 に 日本 側 の 出 資 比 率 を 高 め て い っ た ケ ー ス ・
{2)最 初 は 相 手 企 業 と 販 売 提 携 し,そ の 後 合 弁 ・買 収 に至 った ケ ー ス,
(3)販 売 を 担 当 して い た 商 社 と共 同 出 資 で 現 地 企 業 を 買 収 し た ケ ー ス,
(4)相 手 企 業 を 企 業 ぐ る み あ る い は あ る事 業 部 門 な り,工 場 を 買 収 した ケ ー ス,
㈲ 日本 企 業 の 現 地 法 人 を 通 じて,現 地 企 業 を 買 収 した ケ ー ス,な ど に 分 類 さ れ る。
と こ ろ で,買 収 に っ い て は我 が 国 に 企 業 の 中 で は実 施 が 難 し い,あ る い は 実 施 し た と して も,十
表2
分 な 効 果 を 発 揮 し な い と い う通 念 が あ り,既 存 企 業 の 買 収 に よ る海 外 進 出 と い う方 法 を 取 っ て い な か っ た 。 初 め て 買 収 し た ケ ー ス を 分 析 す る と,取 引 先 や 投 資 銀 行 な ど か ら話 しを 持 ち か け られ て 買 収 に 応 じた 企 業 が 殆 ど で あ る。
例 え ば,日 立 金 属 の 場 合,こ れ ま で5件 の会 社, 工 場(表2参 照)を 買 収 して き た 。
最 初 に 買 収 した の はGEの 磁 石 工 場 で,現 在 の ヒ タ チ ・マ グ ネ テ ィ ッ ク ス(HMC)で あ る 。 この 時 はGEか ら直 接,日 立 金 属 に 「工 場 を 買 って く れ な い か 」 と の 話 しが 持 ち 込 ま れ,社 内 で 検 討 し た 結 果,買 い 取 っ た と い う。 当 時,日 立 金 属 に は 明 確 な 現 地 生 産 開 始 へ の 戦 略 が あ っ た わ け で は な 日立 金 属 によ る 買収 企 業,
企 業 名(カ ッコ内 は略 称)
買収時期
所 在地(州)備 考ヒ タ チ ・マ グ ネ テ ィ ッ ク ス(HMC) ヒ タ チ ・ マ グ ナ ロ ッ ク(HMLC) マ ク ス コ
ア メ リ カ ン ・マ グ ネ チ ッ ク ス(AMC) コ ン サ イ ス ・キ ャ ス テ ィ ン グ(CCC)
1973年3月 1974年4月 1977年9月 1978年9月 1981年7月
ミ シ ガ ン ミ シ ガ ン
イ ン デ ィ ア ナ カ ル フ ォ ル ニ ア
磁 石 工 場 電 磁 石 メ ー カ ー 専 門 商 社
フ ェ ラ イ ト磁 石 メ ー カ ー ア ル ミ鋳 物
資 料:日 立 金 属 会 社 案 内,日 経 産 業 新 聞1984.3.5よ り作 成 表3米 国 企 業 買 収 例
企業名
買 収 時期 買 収 対 象 企 業 ・部 門 買 収 価 格(一 部 推 定)松 下電 器 三 洋 電 機 堀 場 製 作 所
日本 電 気 大 日本 イ ンキ
化学 工 業 花 王 石 鹸 東 洋 曹 達 工 業 サ ン ト リー ・
1974年5月 1977年1月 1977年4月 1978年6月 1979年3月
1979年4月 1980年6月 1980年9月 イ ン タ ー ナシ ョナ ル 昭 和 無 線 工 業1981年1月 三 菱 化 成 工 業1981年12月
ミネ ベ ア ソ ニ ー ブ リ ジ ス ト ン 東 京 窯 業
ダ イ ワ 精 工 住 友 金 属 工 業
1982年1月 1982年2月 1982年2月 1982年 1982年 1983年
モ ト ロ ー ラ 社 カ ラ ー テ レ ビ 部 門 シ ア ー ズ 社 子 会 社 ウ オ ー イ ッ ク 社 イ ン タ ー オ ー ト メ ー シ ョ ン 社 エ レ ク ロ ニ ッ ク ア レ イ 社 ポ リ ク ロ ー ム 社
ヘ レ ナ ・ル ビ ン ス タ イ ン AZS社
ペ プ コ ム 社
T.A.ハ ン ド ン 社 及 び ド ネ ッ ト社
オ プ テ ィ カ ル ・ イ ン フ ォ ー メ イ シ ョ ン ・ シ ス テ ム 社 パ シ フ ィ ッ ク ・ プ ロ ペ ラ 社
MCI社
フ ァ イ ア ー ・ ス ト ー ン 社 工 場 ス ワ ン ク ・ リ フ ラ ク ト リ ー ズ 社 ハ ン ソ ン ・イ ン ダ ス ト リ ー
チ ュ ー ブ ・ タ ー ン ズ 社
5,000万 ドル 1,300万 ドル 約37万 ド ル 850万 ド ル 6,240万 ドル
7,500万 ド ル 1,200万 ド ル 9,700万 ドル
600万 ド ル
5,240万 ド ル
数十億円
資 料:日 経 産 業 新 聞1977.4.30,1977.5.25,1979.4.7,1997.4.23,1980.4.23,1980.12.3,1982.3.9,「 通 産 ジ ャ ー ナ ル 」1981.5 よ り 作 成
企業買収による海外進出 か っ た 。 文 字 通 り外 か ら買 収 話 が 飛 び 込 ん で き
て,同 社 の 買 収 作 戦 が始 ま っ た と い え る
。 以 後,日 立 金 属 は1,2年 ご と に 買 収 を続 け て い る が,こ の 間 の経 緯 を み る と
,当 初 の"習 う よ り慣 れ ろ"方 式 の企 業 買 収 か ら,企 業買 収 の ノ ウ ハ ウ を身 に つ け て,米 国 で 磁 石 関 連 事 業 の 多 角 化 を 図 っ て い く と い う戦 略 目 的 に 沿 っ た 形 で 買 収 を 成 立 させ て い る。
こ の よ う に 日本 企 業 に よ る ア メ リカ企 業 買 収 は 表3に 見 られ る よ うに 業 種 的 な 広 が り を み せ て お り,サ ン ト リー ・イ ン タ ー ナ シ ョナ ル の よ う に買 収 金 額 が1億 ドル と い う大 型 買 収 もお こ な わ れ る よ う に な った 。
5買 収 の 昌的
一一95
一般 に企 業 買 収 は ,
(1D生 産 拠 点 の 確 保 や 開 発 拠 点 ・販 売 網 な ど現 事 業 に必 要 な経 営 機 能 を 獲 得 で き る,
② 既 存 事 業 以 外 へ の 多 角 化(非 関連 事 業 分 野) に必 要 な 成 長 機 会 を 提 供 す る,
(3)株 式 保 有 に よ って キ ャ ピ タ ル ・ゲ イ ンを 得 る,
(4)人 材 の 確 保 や ソ フ トや ノ ウ ハ ウ の 獲 得 ,な ど を 目 的2}と して 行 わ れ る。
米 国 企 業 が 経 営 多 角 化 を 目 的 と して 既 存 企 業 を 買 収 す る こ と が 多 い の に 対 して,日 本 企 業 の 場 合 に は表4に 見 られ る よ うに 自社 事 業 の 補 完 を 目 的 表4貿 収 目的
目的 社名 買収対象 事業内容
生産 ブリジス トン 拠点
松下電器 三洋電機 日本精工 東京電気
化学工業 花王石鹸
日魯漁業 菊地色素
工業 技術 日本電気
大 日本インキ 化学工業
原 材 料 日本 楽 器の確 保 タ カ ラ
販売網
関連 分野
ベ ル モ ン ト サ ン ト リー サ ン ト リー ワ コ ー ル 旭 化 学 工 業 古 野 電 気 堀 場 製 作 所
フ ァ イ ア ー ス ト ー ン 社 ナ ッ シ ュ ビ ル 工 場
モ トロ ー ラ社 テ レ ビ事 業 部
シ ア ー ズ 社 の 子 会 ウ オ ー イ ッ ク社 工 場 フ ー バ ー社 ベ ア リ ン グ工 場
MCA社 事 業 部 ヘ レ ナ 社
ピ ー タ ー パ ン 社
ト ラ ッ ク用 ラ ジ ア ル タ イ ヤ ー カ ラ ーTV生 産 カ ラ ーTV生 産 ベ ア リ ン グ の 製 造 磁 気 ヘ ッ ドの 製 造 化 粧 品事 業
さけ ・ます 水 産 加 工 ア メ リカ ・カ ラ ー ・ア ン ド ・ケ ミカ ル 社 黄 鉛 顔 料 の 生 産 パ タ ー ソ ン工 場
エ レ ク トロ ニ ッ ク ア レ イ 社 ポ リ クmム 社
エ ベ レ ッ ト社
コ ー ケ ン マ ニ ュ フ ァ ク チ ャ リ ン グ 社
メ ー プ ル ・グ ロ ー ブ社 キ ン ボ ー ル ・タ イ ラ ー 社 OLGA社(資 本 参 加) ハ ネ ウ エ ル 社 写 真 部 門
コ ネ ル 社
イ ン タ ー オ ー トメ ー一シ ョ ン社
LSI製 造 ・販 売 印刷 材 料 製 造
ピア ノ 理容 機 器
樽 材 の製造 ・販 売 樽 材 の製 造 ・販 売 婦 人 下 着 の製 販 写 真 の販 売
電 子 計 器 の販 売 ・補 修 自動 車排 ガ ス測 定 用 ソ フ トウエ ア
資 料:日 経 産 業 新 聞1977.4.30,1977.5.25 ,1979.4.7,1979.4.23,1980.4.231980
9.1981年 ジ ェ トロ 「在 米 日経 進 出企 業 の 経 営 の 実 態 」 よ り作 成 1980.12.3,1982.3.
一一96一 企業買収 によ る海 外進出 と す る も の が 多 い。
ま た,買 収 に よ り株 式 保 有 を 行 い キ ャ ピ タ ル ゲ イ ンの取 得 を 目 的 とす る場 合 も欧 米 企 業 で は見 ら れ る が,こ の よ うな 買 収 戦 略 は 日本 の 企 業 の例 は
きわ め て 少 な い 。
一 般 的 に ,日 本 企 業 はキ ャ ピタルゲ イ ンあ るい は既 存 事 業 以 外 の 多 角 化 を 目的 と して 企 業 を買 収 す る の で は な く,米 国 を 始 め とす る先 進 国 政 府 の 圧 力 や 輸 入 規 制 に対 応 して 生 産 拠 点,技 術,原 材 料(生 産要 素)お よ び 販 売 チ ャ ネ ル な ど を 求 め て 現 地 に進 出 す る の が 特 徴 で あ る。
6買 収 の 方 法(3)
企 業 買 収 の具 体 的 手 法 は 買 収 企 業 の 事 情 に よ り 若 干 異 な る が,基 本 的 ア プ ロ ー チ は共 通 で あ る。図 10は 買 収 計 画 の ス テ ップ を 要 約 した もの で あ る。
ま ず,被 買 収 企 業 の 探 査 ・選 定 に あ た っ て は 買
収 に関 す る豊 富 な 情 報 量 と優 秀 な ス タ ッ フ を 揃 え た 投 資 銀 行 や コ ンサ ル テ ィ ン グ会 社 な ど企 業 買 収 の 仲 介 あ っせ ん 業 者 の 介 在 が 買 収 経 験 の 少 な い 企 業 の 場 合 に は特 に 必 要 で あ る。 これ ら専 門 業 者 の 役 割 は買 収 を 希 望 す る企 業 の た め に,買 収 目的, 被 買 収 企 業 の規 模 な ど各 種 条 件 に基 づ い て,候 補
とな る企 業 群 を 選 び 出 す こ と で あ る。
次 に,被 買 収 候 補 企 業 そ れ ぞ れ の企 業 の強 み, 弱 み,営 業 力,製 品 の 品 質,労 働 組 合,労 使 関 係, 経 営 者 の 能 力 な ど 定 性 的,定 量 的 な 面 か ら分 析 し,依 頼 企 業 の 買 収 目 的 と適 合 す る か ど うか ス ク
リー ニ ング に か け る。
一 方 ,依 頼 企業 と して も,被 買収 候 補 企業(ど う ゆ う会 社 を買 収 した い のか?の 定 義)を 選 定 す る に 際 し,い くつ か の 基 準(事 業 分 野,事 業 規 模,買 収 金 額 収 益 力,そ の他)を 確 立 して お く必 要 が あ る(4)。
例 え ば,東 洋 曹 達 工 業 が1980年AZS社 を 買 収 す る 際,候 補 会 社 に 対 す る要 件 と して 以 下 の 要 図10「 買 収 計 画 プ ロ セ ス 」
被買収企業 の 探 査
自社の経営 資源 分 析 及 び新 規設 立か買収かの検討
外 部 か らの購買 意 思 の診 断
被 買 収候 補 企 業 の リ ス ト ア ツプ
買収 の必要 条件 選択 基準 の作 成
被 買 収 候 補 企 業 に 対 す る第 一 次 買 収 基 準 の 適用 ・評 価
買収折衝
買 収後 の企 業 統合 ・運営 計 画
一→
被買収候補 企業の事前 調査分析
→
事 前 調 査 分 析 の結 果第 二 次 買 収 基 準 の 適 用 ・評 価
↓
←
必 要 な ら買 収 条 件 ・選択 基 準 の再 検 討
E‑一 一
買 収 に必 要 な資金 検 討 ・財 政 へ の 影 響 調 査
i
灘 轍[亟 亟二=L欝 舘難
分 折 評 価
資 料:大 前 研 一 編 『マ ッキ ンゼ ー成 長 期 の 成 長 戦 略 』 第6章,同 「買 収 に よ る海 外 進 出 の 光 と影 」 ダ イヤ モ ン ド1981.3.28よ り作 成
企業 買収 による海外進 出 件(表5参 照)を あ げ て い る。
これ に 対 して,被 買 収 企 業 候 補AZS社 の 概 況 (表6参 照)は っ ぎ の通 り で あ っ た 。
一 般 的 に,
(1)販 売:既 存 の 流 通 経 路 ,販 売 組 織,広 告, ブ ラ ン ドな ど の 利 用 可 能 性 ,
② 生 産:既 存 の人 員,設 備,施 設 ,資 材 の一 括 仕 入 な ど の利 用 可 能 性,間 接 費 の抑 制 , (3)投 資:技 術 の 転 用 可 能 性 ,
(4)経 営:専 門 的 な 経 営 能 力 を活 用 で き る可 能 性 な ど の 面 で,買 収 候 補 企 業 と の 間 に ど の よ う な シ ナ ジ ー効 果 が あ る か を 見 極 め る こ と が 重 要 で あ る。(一 次 評価)
次 に,被 買 収 候 補 企 業 に は何 らか の 売 り に 出 る 背 景 な り,買 収 対 象 に な る よ うな 問 題 点 が あ る。
売 りに 出 る理 由 と して,
(1)業 種 は よ い が,後 継 者 が 見 っ か らな い,(前 出のCCC社)
(2}業 績 は よ い が,同 族 経 営 か ら脱 却 した い, (3)業 績 は悪 い け れ ど も,技 術 に は み るべ き も
衷5
97 の が あ り,販 売 力 な ど技 術 以 外 の 要 因 で 低 迷
して い る,
(4)当 該 企 業 グル ー プ の 体 質 に あ わ な い の で, 特 定 の 事 業 部 あ る い は 工 場 を 売 却 した い(前 出HMC社),
⑤ 経 営 の 悪 化 か ら採 算 の 悪 い事 業 部 あ る い は 工 場 を 手 放 した い(前 出 フ ァィ アー ス トー ン社 ナ ッシ ュ ビル工場)f5),な どが あ げ られ る。 売 却 理 由 に つ い て は,当 事 者 が 正 直 に説 明 す る と は 限 らな い。 そ の 上,そ の 企 業 の弱 点 は
,簿 外 の 不 良 債 権 や 不 良 資 産 の 有 無 な ど必 ず し もバ ラ ン ス ・シ ー トや 損 益 計 算 書 だ け で は判 断 で き な い場 合 も あ り,や は り信 頼 の お け る外 部 機 関 の 調 査 に 依 頼 した 方 が 安 全 で あ る。
一 方,依 頼 側 で も被 買 収 候 補 企 業 の ど の よ うな 弱 点 な ら許 容 で き る 範 囲 か 注 意 深 く,候 補 企 業 を
しぼ り こむ 。(2次 評 価)
買 収 候 補 企 業 が 選 び 出 さ れ た ら,買 収 に必 要 な 資 金 を 推 定 しな け れ ば な ら な い が ,そ の た め に は,ま ず 買 収 資 金 お よ び 買 収 価 格 算 出 の基 礎 と な
候補会社に対する要件
(1)事 業 分 野:鐙 諜 躍 肇 イヒ学品(Perf・‑anceCh・
mi・a1)も し く1一 イ ン ・ケ ミカ ル を (2)事 業 規 模:年 間 売上 高20百 万 〜50百 万 ドル
(3)買 収 金 額:10百 万 〜20百 万 ドル (4}収 益 力:投 資 利 廻 り年 率15%以 上
(5)そ の 他:ω 当 分 の 間,現 経 営 人 が 引続 き経 営 で き る こ と :(ロ)社内 の人 間 関 係 が 安定 して い る こ と
:の 技 術 九 販 売 力,製 造設備 などが業界平均以上であ ること :ω 対 象 企 業 の経 営 陣 の支 持 を 前提 と し
,か つ100%の 買収 可 能 な こと, 資 料:企 業 研 究 会 「国 際事 業 戦 略 と実 際 展 開 」p .260.
表6AZS社 の 概 況 AZSCorporation
(1)本 社:Atlanta (2)工 場
(3}従 業 員:約200人,労 働 組 合 な し (4}年 間 売 上 高:約40百 万 ドル
:Atlanta(G…gia) ・Lak・1and(F1・ ・ida),NewY・ ・k(N・wJ・,sey)の 三 工 場
(5)製 品(化 学品):㌶ ンキ・織物処理洋化学品 塗料用期儲 醗 選鉱轍 鰍 原料 建 設用材
㈲ 年 間税 引後 利 益:約1百 万 ドル
(7)推 定 買 収 価 格:約10百 万 〜15百 万 ドル 資料:企 業 研 究 会 「国 際 事 業 戦 略 と実 際展 開 」p .260、
一98一
る 企 業 価 値 を よ り正 確 に把 握 す る必 要 が あ る。
今 日,ア ナ リ ス ト間 で 支 持 され て い る主 な 企 業 評 価 の 方 法 に は,次 の方 法 が あ る。
(1)資 産 時 価 評 価 法{6)
この 方 法 は企 業 を構 成 して い る総 資 産 を 現 時 点 で の 清 算 価 格 で も って 現 金 評 価 し た も の か ら負 債 お よ び 資 産 現 金 化 に 要 す る費 用 を 差 し引 い た 残 り を評 価 額 とす る方 法 で あ る。 しか しな が ら,企 業 は営 業 活 動 に 関 係 の あ る,暖 簾,顧 客 リス ト,信 用,営 業 権 の 如 き価 値 を 有 して お り,こ れ ら非 財 務 的 要 因 を も資 産 評 価 に加 え る必 要 が あ る。
② 株 価 評 価 法
こ の 方 法 は 同 一 業 種 で の 過 去 の 買 収 ケ ー ス を 参 考 に して,株 式 市 場 で の市 場 価 格 に プ レ ミア ム を 加 え て 買 収 価 格 を 算 定 す る方 法 で あ る。 株 価 は必 ず し も企 業 の 価 値 を 適 性 に 反 映 して い る と は い え な い が,TOB(TakeOverBit)に よ る企 業 買 収 で
は よ く利 用 さ れ て い る。
(3)RODCF(ReturnOnDiscountCashFlow) 法
こ の 方 法 は 被 買 収 企 業 の 将 来 の 予 想 利 益 (キ ャ ッシ3・ フ ロー)を 考 慮 し,現 在 価 値 に 割 り 引 い て,現 時 点 で の 投 資 利 益 を 予 想 し,支 払 う投 資 金 額 を 決 め る方 法 で あ る。
(4)設 備 代 替 評 価 法
こ の方 法 は 被 買 収 企 業 の 現 有 設 備 と同 一 の もの を 新 設 す る に 要 す る費 用 を 計 算 し,評 価 額 と す る 方 法 で あ る。
買 収 を 計 画 して い る企 業 は い ず れ か の 評 価 方 法 に も とつ い て,適 正 な 買 収 価 格 お よ び 買 収 に 要 す る 資 金 を検 討 す る こ と に な る。
企業買収 による海外 進出
7買 収の執行
買 収 に 際 し,買 収 対 象 企 業 と コ ネ ク シ ョ ンが な い 場 合 に は,対 象 企 業 と の コ ン タ ク ト,買 収 価 格 の 交 渉,取 引 条 件 の 設 定 に あ た り,投 資 銀 行 な ど 外 部 機 関 が 折 衝 時 に主 要 な 役 割 を 演 じ る。 当 時 の
日本 企 業 は表7の 投 資 銀 行 を 利 用 して い る。
さ て,実 際 の 買 収 価 格 の 設 定 は,買 い 手 と売 り 手 の 交 渉 に よ っ て 決 ま る もの で あ るが,外 資 に よ る 買 収 の場 合 に は買 収 プ レ ミア ム が つ く こ とが 多
い 。
プ レ ミア ム要 因 と して は, (1)被 買 収 企 業 の 株 主 構 成,
② 買 収 企 業 の 被 買 収 企 業 の 保 有 株 式 数, (3>被 買 収 企 業 の 株 価 が あ げ られ る。
株 式 の 買 収 に あ た り,買 上 げ 予 定 株 数 は 株 式 の 分 散 状 態 に よ って 異 な る が,被 買 収 企 業 の 株 主 の 中 で,特 に持 株 比 率 が 高 い 株 主 が 存 在 す る場 合 に は,株 主 個 人 な り,法 人 株 主 の意 向 が 買 収 に大 き く影 響 す る。 従 っ て,買 収 交 渉 以 前 に 大 株 主 の 支 持 を と りつ け る こ とが 重 要 で あ る。 ま た,買 収 企 業 が 買 収 以 前 に 被 買 収 企 業 の 保 有 株 式 数 の大 小 は 経 営 権 掌 握 に 必 要 な株 式 数 に影 響 す る上,現 行 経 営 陣 の 買 収 に 対 す る支 持 と協 力 を 獲 得 で き るか ど う か に も影 響 を 及 ぼ す 。 更 に,買 収 時 に お け る株 式 市 場 の 動 き お よ び被 買 収 企 業 の 過 去 お よ び将 来 の 予 想 株 価 は プ レ ミア ム の 大 小 に影 響 を及 ぼ す 。 米 国 の 場 合,プ レ ミ ア ム 幅 は 表8の 通 り で あ る。
こ の 他,プ レ ミア ム幅 に影 響 を 与 え る要 因 と し て,
表7投 資 銀行
投資銀行 買収企業 被買収企業
1978FirstBoston 1978GoldmanSacks 1978SmithBarney 1980DillonReod
1980ラ ザ ー ル フ レ ー ル 1982DillonRead
気ル電一本コ日ワ
大 日本 イ ンキ 東洋 曹 達 サ ン ト リー 三 菱 化成
ElectronicArray OLGA Polychrome
AZSI7}
ペ プ コ ム
オ プ テ ィ カ ル ・ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン シ ス テ ム
資 料:日 経 産 業 新 聞1980.12.3,1982.1.18よ り 作 成
企業買収 によ る海外進 出 表8プ レ ミ ア ム 幅
一99一
買収企業 被買収企業
プ レ ミ ア ムAlleghenyLudlum AtlanticRichfield Borg‑Waver CadburySchweppes ContinentalGroup HookerDhemicai Motorola Pepsico Uniiever
UnitedTechnologies
Chemetron Anaconda BakerIndustries PeterPaul RichmondCorp Zoecon Codex TacoBell
NationalStarch&Chemical AMBAC
% % % % % % % % % % 79 23 00 38 43 38 50 50 64 46 1
資 料:"AcquisitionandMergerTrendsAffecting
FinancialAnalysisJournal ,Nov‑Dec1977.
(4)買 収 を 他 社 と競 っ た場 合 や
⑤ 買 収 の タ イ ミ ン グ に よ って 影 響 を 受 け る。
例 え ば,大 日本 イ ンキ 化 学 は1979年3月 ア メ リカ の 大 手 印 刷 材 料 メ ー カ ー,ポ リ ク ロ ー ム社 を 約145億 円 で83.5%の 株 式 を 買 収 し た。 同 社 は 当 初 の 円 満 な 話 し合 い の 結 果,す ぐ に株 譲 渡 が 出 来 る と考 え,投 資 銀 行 を 使 わ ず,1978年5月12%
の 株 式 を 保 有 す る ポ リ ク ロ ー ム 社 ハ ル パ ー ン会 長 お よ び40%の 株 を 保 有 し,筆 頭 株 主 で あ る フ ラ ン ス の ロ ー ヌ ・プ ー ラ ン社 と交 渉 を 進 め た 。 当 時平 均13ド ル 前 後 の 株 価 に 対 し,ロ ー ヌ ・プ ー ラ ン 社 の 条 件 は,1株 あ た り20ド ル の 希 望 売 却 価 格 と 幾 っ か の 経 営 上 の 条 件 を,大 日本 イ ン キ化 学 に提 示 し た。 そ の 時 点 で,両 社 は合 意 に 達 せ ず ,膠 着 状 態 が しば ら く続 い た 後,1979年2月5日 突 然 ロ ー ヌ ・プ ー ラ ン社 は 株 式 売 却 交 渉 を 中 断 した。 2週 間 後 の2月20日 同 社 は ポ リ ク ロ ー ム 株 にT
OB(TakeOverBid,株 式 公 開買 い付 け)を 公 表 し た 。 そ の 価 格 は1株 当 た り17.25ド ル で ,少 な く と も15.6%(約37万5千 株)を 買 い 増 す こ と を 目 標 と して い た。
これ に 対 して,大 日本 イ ンキ 化 学 は急 拠 一 億 円 を 支 払 っ て,投 資 銀 行 の ス ミ ス ・バ ー ニ ー (SmithBarney)を コ ンサ ル タ ン トと して 雇 い 防 戦 に 入 っ た が,ロ ー ヌ ・プ ー ラ ン社 は オ ッ フ ァー 価 格 を22ド ル に せ り あ げ,最 後 買 収 価 格 は26ド
ル に は ね あ が って しま った 。 この 背 後 に は ,投 資
thePortfolioManager"
銀 行 の ラ ザ ー ル ・フ レー ル が い て,TOBを 指 導 して い た 。 買 収 当 初 か ら,投 資 銀 行 な り,買 収 斡 旋 業 者 が 介 在 して い た ら,大 日本 イ ン キ化 学 も高
い買 物 を しな くて す ん で い た と い え よ う。 TOBは 対 象 企 業 の 株 主 に そ の 株 式 の 提 供 を 呼 び か け る こ と に よ り,相 手 企 業 経 営 陣 の 同 意 が な
くて も,経 営 権 を 掌 握 い得 る 方 法 で あ る が , (f)買 収 の 申 し出 を 相 手 企 業 経 営 陣 に 拒 否 され
た 場 合,
② 買 収 交 渉 を始 め た が,具 体 的 細 目 に 関 して 合 意 に 達 せ ず,交 渉 中 断 に陥 っ た場 合 , (3)相 手 企 業 経 営 陣 に 接 近 す る前 に 始 め か ら拒
否 反 応 が 予 想 さ れ る場 合 に,TOBは 用 い ら れ る。
これ に対 して,相 手 側 経 営 陣 の 反 応 は (1)反 対 す る,
(2}支 持 す る,
(3)中 止 の 立 場 を 守 る,の3形 態 に 大 き くわ か れ る。
経 営 陣 の支 持 を 獲 得 で き る か ど う か は,被 買 収 側 の 経 営 陣 の 地 位 保 証,役 員 報 酬 の 増 加,キ ャ ピ タ ル ゲ イ ン,企 業 の 成 長 が 期 待 で き る,あ るい は 企 業 資 金 の 改 善 な ど の要 因 に よ って 影 響 さ れ る。
TOBの 形 態 に は エ ッ ク ス チ ェ ン ジ ・オ フ ァ ー (ExchangeOffer)と キ ャ ッ シ ュ ー ・オ フ ァー(Cash Offer)と が あ る。
(Dエ ク ス チ ェ ン ジ ・オ フ ァー は 相 手 会 社 の 株
一100一
と 自社 の 株 を 時 価 相 場 を 考 慮 して あ る割 合 で 交 換 す る 方 法 で あ る。 例 え ば,ミ ネ ベ ア の 場 合,上 場 企 業 で あ るIMCマ グ ネ チ ッ ク ス社 (本社 ニ ュ ー ヨー ク)を 子 会 社 と して 使 え る点 を 利 用 して,IMC株 と被 買 収 対 象 企 業 の 株 式 を 等 価 交 換 し て 税 の 支 払 い を 軽 減 して い
る。
(2)キ ャ ッ シ ュ ー ・オ フ ァー は株 式 の 対 象 と し て 直 接 現 金 を 支 払 う方 法 で あ る。 株 主 に と っ て は 課 税 の 対 象 と な る。 現 金 を 対 価 と す る キ ャ ッ シ ュ ー一・オ フ ァー は60年 代 か ら ア メ リカ で は盛 ん に行 わ れ て お り,日 本 企 業 に よ る 買 収 も キ ャ ッ シ ュ ー ・オ フ ァー が 殆 どで あ る。
TOBが 活 発 に 行 わ れ る よ う に な っ た理 由 と し て,
(1)被 買 収 企 業 の 経 営 資 源 獲 得 に必 要 な だ け の 株 式 を 取 得 す る資 金 と広 告 費 な ど の 費 用 だ け で す む,
② た と え,目 的 を 達 せ ず 失 敗 に終 わ って も, 買 い付 け た 株 式 を売 却 して 資 金 の 回 収 を は か
る こ と が で き る,
(3)ま た,市 場 経 由 と異 な り,比 較 的 短 期 間 に 大 量 の 株 式 を 取 得 で き る の で,相 手 企 業 に事 前 に察 知 さ れ に く く,相 手 企 業 に対 応 策 を と
る時 間 的 余 裕 を 与 え な い で,成 功 す る可 能 性 が 大 きい こ と,な ど が あ げ られ る。
8買 収後の経営
企業買収 によ る海外進 出
海 外 進 出後 の 経 営 は進 出 目 的 の違 い や 進 出 形 態 の 違 い に よ って 当 然 異 な って く る。 例 え ば,
1)松 下 電 器(現 地 企 業 ク ェー ザ ー電 機)の よ う に 買 収 後,一 時 期 事 業 の 縮 小 を 行 っ た 後 発 展
して き た も の,
2)タ カ ラ ベ ル モ ン ト(現 地 企 業 コ ー ケ ン ・マ
=sフ ァクチ ャ リング)お よ び 日本 楽 器(エ ベ レ ッ トピア ノ)の 様 に 生 産 品 目 に 買 収 前 の 企 業 ブ ラ ン ド製 品 に 自 社 ブ ラ ン ド製 品 を 逐 次 追 加 して き た も の,
3)ブ リ ジ ス ト ン(現 地 企 業 ブ リジ ス ト ン ・マ
ニ ュ フ ァ クチ ャ リ ン グUSA)の よ う に ス タ ー ト時,フ ァ イ ア ー ス トー ンの ブ ラ ン ド製 品 の み 生 産 を行 って,将 来 自社 ブ ラ ン ド製 品 の 生 産 を行 う こ と を 計 画 して い る もの,
4)日 本 精 工(現 地 企 業 フーバ ーNSKベ ァ リン グ)の よ う に フ ー バ ー社 と の 販 売 提 携 ・合 弁 ・買 収 の ス テ ップ を踏 ん で き た もの,な ど 実 に 多 種 多 様 で あ る。
しか しな が ら,買 収 後 数 年 間 経 過 した 企 業 や 工 場 を 新 設 し た企 業 の 中 に も,い ま だ に 赤 字 で 苦 し ん で い る企 業 が か な りあ り,そ れ らの 間 に は共 通 の 問 題 点 を 抱 え て い る と こ ろ も多 い。
そ こで 本 節 で は,既 に米 国 に 進 出 した 企 業 が 経 営 上 い か な る問 題 に 直 面 し,こ れ に 如 何 に 対 処 し
た か,実 情 を 把 握 して み る。
(1)役 員 構 成
ま ず,経 営 上 の 重 要 な 意 思 決 定 に ど の程 度 現 地 法 人 の 意 向 が 反 映 さ れ て い る か を 見 る た め,役 員 の 構 成 を 調 べ て み る と,新 設 の 場 合 に は 当然 の こ と な が ら親 会 社 か らの 派 遣 さ れ た 日本 人 幹 部 で し め られ て い る例 が 多 い。
一 方 ,買 収 の場合 に は,元 の社 長 が その ま ま社 長 を 続 け,殆 ど現 地 陣 幹 部 だ け で 経 営 が 行 わ れ て い る例 が 殆 ど で あ る。 例 え ば,日 立 マ グ ネ テ ィ ッ
ク ス の 場 合 に は,日 本 か らの 幹 部 ク ラ ス の 派 遣 は 営 業 出 身 の チ ェ ア マ ンだ け で あ っ た。 ま た,社 長 な ど の 役 員 を 日本 人 が 占 め て い る 場 合 で も・ 製 造,人 事 な ど直 接 現 地 人 労 働 者 と接 触 す る部 門 で は,不 慣 れ な 日本 人 よ り も現 地 人 が 幹 部 と して 登 用 さ れ て い る例 が き わ め て 多 い 。
② 親 会 社(買 収 企 業)・ 現 地 企 業(被 買 収 企 業) と の 関 係
親 会 社 と現 地 企 業 との 関 係 で は,大 規 模 な 設 備 投 資 を行 う よ う な場 合 以 外 は 現 地 に 権 限 を委 譲 し て い る 企 業 が 多 い 。 しか しな が ら,被 買 収 企 業 の 役 員 が 現 地 人 の場 合 に は,親 会 社 か ら の指 示 が 徹 底 し な くて 困 っ た と い う問 題(コ ン フ リク トの発 生)も 見 受 け られ る。
そ の理 由 と して,被 買 収 企 業 の 経 営 方 式 と 日本
企業買収 に よる海外進 出 の 親 会 社 の 経 営 方 式 と の 相 違 点
,日 本 企 業 の
「マ ー ケ ッ ト ・シ ェ ア ー優 先 」 と欧 米 企 業 の 「利 益 優 先 」 政 策 と の違 い,被 買 収 企 業 の 現 地 人 社 員 と
日 本 人 社 員 と の 行 動 様 式 の 違 い な ど が あ げ られ る。 こ の ほ か,販 売 で は 現 地 企 業 と親 会 社 の 間 で の ブ ラ ン ドや 販 売 網 の 統 合 の 問 題 が あ る。 買 収 後,親 会 社 は 現 地 企 業 に 対 して 販 売 政 策 を は っ き
り と指 示 す る こ とが 必 要 で あ る。
(3)日 本 か ら の 派 遣 ス タ ッ フ
日本 か ら派 遣 さ れ た ス タ ッ フ が 現 地 企 業 で 果 た して い る役 割 に は,
1)ト ッ プ マ ジ メ ン ト補 佐
ゼ ネ ラ ル ・マ ネ ジ ャ ー と して 現 地 企 業 の 管 理 親 会 社 と現 地 企 業 との 連 絡,調 整 を 行 う, 2)生 産 面 や 技 術 面 で の ス タ ッ フ
a)生 産 体 制 が 確 立 す る ま で の 間 ,技 術 面 等 の 指 導 を 行 う,
(b)現 地 企 業 の生 産 性 を 向 上 さ せ る た め に 生 産 管 理 面 で の 支 援 を行 う,
(c)現 地 労 働 者 の み の 場 合 に生 じが ち な 生 産
一101一
ライ ンで の 隙 間 を 機 動 的 に 調 整 し,生 産 能 率 を 高 め る,な どが あ げ られ る。
例 え ば,ブ リ ジ ス トン社 の 場 合(図11参 照) ,ラ バ ー ン工 場 買 収 時 ,従 業 員 は工場 長 以 下全 部 揃 っ て い た の で,そ の 上 に数 人 の 日本 人 を 乗 せ る結 果 と な っ た 。 一 工 場 を 一 つ の 会 社 に した の で 本 社 機 構 が い る。そ こ で 社 長(President),副 社 長(Exec‑
utiveVicePresident),VP(VicePresident
,部 長 ク ラス)に5人 の 日本 人 を 据 え た。 ト ッ プ マ ネ ジ メ ン トに 日本 人 を 据 え た の は 早 く フ ァ イ ァ ー ス トー ン流 の 経 営 を ブ リジ ス トン流 の 経 営 に 切 り換 え る た め で あ る。VPの な か に一 人 米 国 人 を加 え て い る が,そ の ア メ リカ 人VPは も と フ ァ イ ア ー ス トー ン社 に い て 幾 っ か の 工 場 を監 督 し た人 で あ る。 工 場 長 以 下 は も と の 従 業 員 を 引 き 継 い で い る。 日本 人27人 の 出 向 者 の う ち ,23名 が 生 産 ・ 技 術 系 ス タ ッ フ で あ る。 日本 人 は ア ドバ イ ザ ー と
して 製 造 部 長,製 造 課 長 な ど部 課 長 に っ け た ア メ リカ 人 と 日本 人 の マ ン ッ ー マ ン体 制 を と っ た。
幹 部 以 外 の 日本 人 全 員 を ア ドバ イ ザ ー に した 理 由 と して,石 榑 専 務(当 時)は
図11買 収 前 の フ ァイ ア ー ス トー ン社 の ラ バ ー ン工 場 組 織 図
醸 黎
Controller PersonnelMgr IEMgr ProductionMgr QAMgr PlantEngr ChiefChemist
‐TechnicalMgrTechnicalServi
ce
買収 後 の組 織(既 存 組 織 の上 に本社 機構 を乗 せ る) 一 日本 人(2人)
Advisor
‑一 一 日本 人(2人)
[社 長]vP技 術Advisor人)
PresidentE.V.P .IAdvisor ExecutiveController
Vice ・一 … 同 職 制
PresidentT
echnicalMgr‑TechnicalService ア メ リ カ 人PlantMgr
資 料:石 榑 和 夫 「フ ァ イ ア ー ス トー ン社 の 一 工 場 買 収 と 現 地 化 の 実 際 」1988年3月 企 業 研 究 会 月 例 講 演 会,週 刊 「東 洋 経 済 」1982 .2.20
一一102一 企 業 買 収 に よ る海 外 進 出
1)ア メ リカ の 会 社 を よ くす る に は ア メ1鳳 表10従 業 員 との コ ミ ュニ ケコ シ ヨ1鍛 轟 が 主 体 と な るべ き で あ る,
2)労 務 管 理 は 日本 人 に と っ て 非 常 に 難 しい, 3)日 本 人 は あ る一 定 の 期 間 が くれ ば 日本 に帰
る,
4)経 営 の考 え 方 の 違 い が 異 な る こ と,語 学 力 と い う二 重 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 障 壁 を あ げ て い る。
従 業 員 参 加 の ミー テ ィ ング 全 社 の方 針,状 況 の説 明 会 現 場 か らの提 案 制度
ス ロ ー ガ ン,目 標 等 の社 内掲 示 QCサ ー クル
朝礼 社 内報
社社社社社社社30665554609臼‑ニー
(4}意 思 決 定
企 業 に お け る意 思 決 定 を ト ッ プ ダ ウ ン方 式 と コ ン セ ンサ ス形 成 に 重 点 を 置 い た集 団 決 定 方 式 と に 分 類 した 場 合,米 国 に 進 出 した 日系 企 業 が ど ち ら か の 方 式 を 採 用 して い る か 調 査 した結 果 は表9の 通 りで あ る。
表9意 思決 定 の方 式
35社 4社 13社
52社(内29社 が合 弁.買 収) 資 料:1981年 ジ ェ トロ 「在 米 日系 進 出 企 業 の 経 営 の 実
態 」 よ り作 成
ト ッ プ ダ ウ ン方 式 コ ン セ ンサ ス形 成 方 式 両 社 の 併 用
52社(内29社 が合弁.買 収) 資料:1981年 ジェ トロ 「在米 日系進 出企業 の経営 の実
態」よ り作成
対 象:太 平洋北部地域(サ ンフランシスコ),中 西部地 域(シ カ ゴ)
こ の 結 果 か ら,7割 近 く の企 業 が ト ップ ダ ウ ン 型 意 思 決 定 方 式 を 採 用 して い る。 特 に,買 収 企 業 や 新 設 で は あ るが 米 国 人 を 社 長 ま た は ゼ ネ ラ ル ・ マ ネ ジ ャー に 置 き経 営 を 委 ね て い る企 業 で は当 然 の こ と な が ら,ト ッ プ ダ ウ ン型 で あ る。
ま た,両 者 の 併 用 と回 答 し た 企 業 は,い ず れ も 日本 的 な 意 思 決 定 方 式 を そ の ま ま の 形 で 米 国 に持 ち 込 む こ と は 危 険 で あ る と して お り,そ の 中 で ど の 部 分 が 現 地 に適 用 可 能 で あ る か を摸 索 して い る 段 階 に あ る と い え る。
(5)コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ン
各 企 業 が 従 業 員 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの た め に 具 体 的 に ど の よ う な 方 法 を 採 用 して い るか を 調 査 した 結 果 は表10の 通 り で あ る。
こ の調 査 の結 果 で 特 に 注 目 され る の は,従 業 員 参 加 の ミー テ ィ ン グ を か な りの 企 業 が 採 用 して い
る こ と で あ る。
主 な 理 由 と して は,
1)各 企 業 と も生 産 性 を 向 上 さ せ る た め に は, 従 業 員 が 自 己 の 仕 事 や 会 社 経 営 に対 して 理 解
を もっ こ と が必 要 と考 え て い る こ と,
2)日 本 か らの 派 遣 者 が現 地 従 業 員 と も コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンを 図 る た め に,対 話 を 重 視 して い る こ とs
3)時 間 内 の ミー テ ィ ン グで あ れ ば,現 地 従 業 員 に も受 け入 れ や す い こ と,な ど の要 因 が あ
げ られ る。
この 他,ブ リ ジ ス ト ンの よ うに 製 造 した タ イ ヤ の 実 地 テ ス トの 結 果 を フ ィー ドバ ッ ク した り,利 益 も金 額 で な く赤 字 の 線 を 基 準 に して グ ラ フ化 し
た り して,会 社 の 方 針 や 営 業 成 績 な ど を で き るだ け 機 会 を 捉 え て 説 明 す る企 業 も多 い 。
ま た,部 分 的 に せ よQC活 動 を 行 って い る企 業 もか な りみ られ る。 あ る程 度 不 良 品 が 出 る の は 当 た り前 と い う欧 米 諸 国 に あ って,各 企 業 と も 日本 で 製 造 す るの と同 等 の 品 質 を 保 証 す る こ とを 優 先 目標 と して 品 質 管 理 に は 特 に 神 経 を 使 っ て い る。
例 え ば,オ ハ イ オ に 工 場 を 新 設 した ホ ン ダで は, 品 質 の 良 い製 品 を 作 る こ とが 結 局 従 業 員 自身 の た
め に もな る こ と を繰 り返 し教 育 す るな ど,意 識 面 で の 変 革 に 力 を 入 れ て い る。
しか しな が ら,ミ ー テ ィ ン グや 方 針 説 明 以 外 の 組 織 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン,特 に 朝 礼(8や社 内 報 の 発 行 に つ い て は,ま だ 一 部 の 企 業 しか 採 用 す る 段 階 に 至 って い な い。
企業買収 によ る海外進出
⑥ モ チ ベ ー シ ョ ン
現 地 従 業 員 の 生 産 性,能 率 等 に っ い て ,現 地 日 本 人 管 理 者 は 日本 の 従 業 員 と比 較 して,概 ね 次 の 様 な評 価 を 下 して い る。
1)優 秀 な 人 と そ う で な い 人 と の 格 差 が 大 き い,
2)明 確 な指 示 を した 場 合 や 軌 道 に 乗 った 仕 事 (狭 い範 囲 の職 務)は き ち ん とや るが ,仕 事 の や り方 を 工 夫,改 善 しよ う とす る積 極 性 に乏 し い,
3)日 本 人 従 業 員 の よ う に融 通 性 が な く,チ ー ム プ レイ や 共 同 作 業 は不 得 意 で あ る
,
4)離 職 率 が 高 く,よ り高 い賃 金 を 求 め て 転 職 す る た め,技 能 水 準 が 低 い,
5)知 識 や 技 術 に 自 身 を も って い る高 級 技 術 者 や 管 理 者 の 場 合,日 本 か ら持 ち 込 ん だ 技 術 や 経 営 方 式 の 導 入 に 熱 心 に な ら な い 。 場 合 に
よ っ て は反 発 を示 す こ と が あ る。(9)
こ う した現 地 従 業 員 に 対 す る評 価 を 前 提 して, 各 企 業 に お い て 従 業 員 の 生 産 意 欲 を モ チ ベ ー トす
る た め・ 図12の よ う な 方 策 を 採 用 して い る。
業 務 面 で は,前 述 した よ う に 現 地 従 業 員 は職 務 分 掌au通 り の 仕 事 を し,融 通 性 に 欠 け る点 が 指 摘 さ れ るが,こ の欠 点 を埋 め る た め に 制 度 的 に 「職 務 の 融 通 性 」 を 図 って い る企 業 が 多 い。他 方,「 職
図X2 従 業 員 を モ チ ベ ー トす る 方 策as
一103一 務mテ ー シ ョ ン」 を 現 地 企 業 で 採 用 す る こ と に っ い て は,ま だ 否 定 的 な 回 答 が 多 い 。 その理 由 と して は,現 地 人 は一 般 に単 能 工 と して 優 秀 に な る こ とを 好 み,日 本 の従 業 員 の よ う に多 能 工 に な り た が らな い(多 能 工 は転 職 に不 利)な ど の見 解 が 寄 せ られ て い る。
労 働 条 件 面 で は,「 出 来 る だ け レイ オ フ を 避 け る方 針 で あ る」 と す る企 業 や 各 種 の フ リ ン ジ ・ベ ネ フ ィ ッ ト(年 金,保 険 な どの付 加 価 値)に 加 え て, 日本 よ りず っ と低 い 支 給 率 な が ら,ボ ーナ スを支 給 す る企 業 が か な りあ る。
しか しな が ら,賃 金 制 度 働に っ い て は 「米 国 の 慣 行 に 従 い,同 一 労 働 一 賃 金 」 を 採 用 して い る企 業 が 多 く,「年 功 的 要 素 を 加 味 して い る」企 業 を 大 幅 に上 回 って い る。
次 に,福 利 厚 生 特 に リク リエ ー シ ョ ン に つ い て は,殆 ど の 企 業 が 活 発 に行 って い る。 た だ ,そ の 多 く は 従 業 員 の 誕 生 日 や ク リス マ ス,パ ー テ ィ ー な ど,米 国 の 企 業 で も一 般 化 して い る習 慣 を 実 施 して い る もの で あ り,日 系 企 業 な らで は の レ ク リ エ ー シ ョ ン と して は運 動 会 ,ピ クニ ック,社 内旅 行,ス ポ ー ッ観 賞,野 球 大 会 等 が 目 立 っ た 行 事 で あ る。
教 育 訓 練 の 面 で は,中 堅 職 員 以 上 に 対 して ,セ ミナ ー や 講 演 会 へ の 派 遣 な ど の機 会 を積 極 的 に設
(重複 回答)
\ 地域
方策 北部地域 太 平 洋 南 東 部 地 域 地 中 西 部 域 合 計
業
職 務 の融 通 性 を もた せ る 12 1 5 18務
職 務 ロ ー テ ー シ ョ ン 5 1 5 11労
レ イ オ フ へ の 配 慮 の 表 示 5 3 8 16働
ボ ー ナ ス 制 度 の 導 入 it 1 3 15条 年功賃金の導入
5 0 0 5件
福 利 厚 生 レ ク リエ ー シ ョ ンの 充 実 8 17 5 3p教 社内訓練
8未調査
『 }学 校,社 外 講 習 会 へ 派遣 11 } } }
育
臼本 へ の研 修 派遣 15 『 〜35 17 15 67社
(10) (3) (s) (19)
(注)括 弧 内は買収 資本参加企業数資 料:1981年 ジ ェ トロ 「在 米 日系 進 出企 業 の経 営 の 実 態 」