実 践 紹 介
39 1.授業の目標
学生アンケート調査によると,この科目を選択した主な理由は以下の通りである。
・日常生活でよく用いられる外来語を理解したい。 ・和製外来語に興味がある。
・外来語は苦手だ。使いこなせるようになりたい。 ・外来語の由来を知りたい。
・意味を正確に理解して覚えたい。 ・外来語は面白いから,もっと学びたい。
・レストランで,外来語のメニューが分からないと,注文できなくて困る。
これらを受けて,次の三つを授業の目標としている。
① 日常生活でよく用いる外来語が理解できるようになり,使える外来語の数が増える。
② 外来語の意味・由来・用法が分かるようになる。
③ 外来語への苦手意識がなくなり,楽しく覚えられるようになる。
2.授業の概要
まず,以下の学習項目につき,外来語の基礎を学び,復習テストで理解度を確認する。
表 1 学習項目
①外来語とは何か ②カタカナで書かれる言葉 ③カタカナの書き方 ④外来語の発音とリズ ム ⑤外来語導入の歴史 ⑥外来語の由来 ⑦和製外来語
つぎに,分野別に外来語を学ぶ。宿題として,ある分野で使われている外来語を三つ,
学生自身が探し,その意味・原語の綴りを調べて提出する。それを講師が添削し,三語の うち,一語を選んで学生に板書させ,発表させる。全員の発表後,講師作成の,その分野 でよく使う外来語のリストを配付し,その意味・用法・原語の綴りを学ぶ。学習内容は,
次回,小テストを行って定着させる。以下の
10
分野で,このような手順で学習を進める。表 2 学習内容(10 分野)
①食べ物・飲み物 ②服装・おしゃれ ③スポーツ ④音楽・美術・映画・ダンス ⑤政治・
経済・社会 ⑥病気・健康 ⑦広告 ⑧テレビ番組 ⑨新聞・雑誌・マンガ ⑩日常会話 早稲田日本語教育実践研究 第 7 号
広く,楽しく外来語を学ぶ
仙波 純子
科目名:外来語を学ぶ
レベル:初級 1・2 /中級 3・4 ・5 /上級 6・7・8 履修者数:35 名
早稲田日本語教育実践研究 第 7 号/ 2019 / 39―40
40
また,第
11
回に,学生は「私が出会った印象的な外来語」という題で,400字程度の 作文を提出する。添削・返却後,学生は,これをもとに一人ひとりスピーチをする。3.分野別外来語学習の実例
「食べ物・飲み物」についての外来語の学習を例として紹介する。35名が各自
3
語提出 するので,全部で100
以上の言葉が集まる。この中から特殊なものを除き,基本的な語を 中心に,重複しないように35
語を選び,学生たちに発表させている。料理用語はフラン ス語に由来するものが多いので,全体の三割ほどがフランス語由来,英語由来が三割,イ タリア語由来・中国語由来がそれぞれ一割,残り二割がその他という傾向がみられる。学生の半数以上が中国人だが,彼らはフランス語・ドイツ語などに由来する外来語はほ とんど知らない。したがって,この分野の語彙にフランス語由来のものが多いことに非 常に驚く。だが,その驚きは拒否反応ではなく,むしろ興味へと変わり,新しいことを発 見した喜びにつながってゆくようだ。たとえば「カフェオレ
café au lait
」がフランス語由 来で「ミルク入りコーヒー」であることを学生が発表した後,関連情報を補うようにして いる。「オレau lait
」は「ミルク入りの」という意味であり,喫茶店のメニューなどで見 かける「抹茶オレ」は「ミルク入り抹茶」である。このような説明により,それまで「オ レ」という意味不明のカタカナでしかなかったものに意味が付与され,覚えやすくなるの ではないだろうか。こうした情報を付け加えることで,学生たちの外来語への興味は深ま り,知識も広がる。外来語は面白い,楽しいと思って学ぶうちに,自然に理解できる外来 語の数も増える。学生が提出する外来語は食品名・料理名が多いので,講師が作成・配付するプリントで は,広く「食」に関する外来語を補うようにしている。代表的なものを以下に挙げてみる。
表 3 講師が提示した「食」に関する外来語の例
ファミリーレストラン,ファストフード,バイキング,メニュー,セルフサービス,テイクア ウト,トレー,インスタント,レトルト,レシピ,グルメ,ベジタリアン,サラダバー,シュ ガーレス,ソフトドリンク,ダイエット,ソムリエ,パティシエ
4.学生の反応
最後に,学生授業アンケートから,学生たちの授業に対する主な意見を引用しておく。
・外来語をとても詳しく説明してくれた。 ・テストのおかげで,外来語を覚えた。
・様々な知識を得られ,とても面白かった。 ・英語やフランス語も学べた。
・学生の発表の内容を先生が補ってくれたのがよかった。
・たくさんの外来語を勉強した。初耳のこともあった。
(せんば じゅんこ,早稲田大学日本語教育研究センター)