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新学習指導要領とアクティブ・ラーニング

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(1)

1.はじめに

 文部科学省は学習指導要領をおよそ10年ごとに改定している。現在,次期学習指導要領の策定作 業が進んでおり,小学校・中学校の新学習指導要領は2017年3月に公示された。中学校は2018年 から移行期間となり,2021年から年次進行で完全実施される。高校は中学校より1年遅れのスケ ジュールとなる。今回の学習指導要領改訂で注目されるのは,「アクティブ・ラーニング」の実施 による授業改善が大きなテーマとなっていることである。これを受けて高等学校必修科目の大幅な 再編も検討されているほか,アクティブ・ラーニングを念頭においた理論・実践研究が様々な形で 行われている。本稿の目的は,新学習指導要領におけるアクティブ・ラーニングをめぐる議論と実 践例のうち,特にスーパーグローバルハイスクール(SGH)の取り組みと成果について確認し,今 後の課題を明らかにすることである。

2.新学習指導要領におけるアクティブ・ラーニング

(1)アクティブ・ラーニングとは何か

 新学習指導要領では,知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」が 掲げられた。学校教育法により「知識・技能(何を理解しているか・何ができるか)」「思考力・判 断力・表現力(理解していること・できることをどう使うか)」「主体的に学習に取り組む態度(ど のように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか)」のいわゆる「3つの柱」を育むこととなっ ており(同法30条2項),これらの目標の実現のためにアクティブ・ラーニングが教育の方法とし て有用な手段であると考えられている。

 アクティブ・ラーニングという用語は,新たに公示された学習指導要領中では「主体的・対話的 で深い学び」との表現に置き換えられた。これは,アクティブ・ラーニングという用語が新しく,

多義的に用いられていることから,その意味を明確にする意図があったと考えられる。主体的な学 びとは「学ぶことに興味や関心を持ち,自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら,見通しを 持って粘り強く取組み,自らの学習活動を振り返って次につなげる」こと,対話的な学びとは「子

新学習指導要領とアクティブ・ラーニング

── スーパーグローバルハイスクールの実践を中心に ──

羽 田   真

───────────────

⑴ 文部科学省 新学習指導要領(2017年3月公示)http://www.mext.go.jp/a̲menu/shotou/new-cs/1383986.htm

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供同士の協働,教員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自らの 考えを広げ深める」こと,深い学びとは「各教科等で習得した知識や考え方を活用した,「見方・

考え方」を働かせて,学習対象と深く関わり,問題を発見・解決したり,自己の考えを形成したり,

思いを元に構想・創造したりする」ことと説明されている。

 アクティブ・ラーニングを行うことの狙いは,知識・技能を活用によって定着させ,思考力・判 断力・表現力を経験によって磨き,生活に結び付いた課題によって主体的に学習に取り組む態度

(「学びに向かう力」)の喚起を図ることである。つまり,アクティブ・ラーニングとは育成するべ き資質・能力を身に付けるという目的を達成するための学習方法なのであり,アクティブ・ラーニ ングを行うことや,できるようになること自体が学習の目的ではないことに注意が必要である。

(2)アクティブ・ラーニングが求められる背景

 グローバル化や IT 化は急激に進んでおり,現在の中高生が社会人となる数十年後の未来におい て直面する問題を解決する力がどのようなものかを予測するのは難しい。したがって,知識の記憶 と再生ではなく,問題解決型の思考力が「新しい学力」として求められることに異論はないであろ う。こうして,1996年の中教審答申以降このような「生きる力」の育成が重視されるようになって きた。

 そして,「生きる力」を前面に掲げて導入された,いわゆる「ゆとり教育」は,教育内容の削減・

精選や総合的な学習によって思考力や判断力を育もうとするものであった。この目標はもっともで あったが,国際学習到達度調査において2003年,2006年と連続して順位を下げる「PISA ショック」

により,「ゆとり教育」は批判を受けることになった。

 しかし,「生きる力」と総称されるような新しい学力観自体は否定されたわけではなかった。そ こで,新学習指導要領においては習得すべき知識量を減らさないこと明確にし,確かな学力の向上 と定着を図るようにしたのである。そして,そのために有効と考えられたのがアクティブ・ラーニ ングであった。

 文部科学省は2017年2月14日付の発表資料において,「一方的に知識を得るだけでなく,『主体 的・対話的で深い学び』いわゆるアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善をさらに充実させ,

子供たちがこれからの時代に求められる資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的に学び続け ることを目指す」ことを学習指導要領改訂の大きなテーマとして,授業で学んだことを実生活に結 び付け,活かす力を養うことを謳っている

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⑵ 中原淳は「高校の存在意義を今一度見直すとき,そこに期待されていることのひとつは,社会で必要になる「経 験」と「知識」をもっと「前倒して」教えることだと思います。高校でそれらを扱っているのなら,さらに大学で は高度なことにチャレンジできます。そうやって,仕事で必要になる能力の高度化に対応していく必要があるので はないか,と思います」と述べ,具体的に「他者とガチで討論する経験,人を巻き込み何かを成し遂げる経験,社 会で意味があると思われる課題解決をやり切る経験。そうした経験ベースの学習から成立する」アクティブ・ラー ニングの必要性を企業の人材開発の視点から指摘している。中原淳編『アクティブ・ラーナーを育てる高校』(学 事出版,2016)pp.12-14

(3)

 これまで,学習指導要領をめぐっては「ゆとり」か「詰め込み」かという議論に注目されがちで あった。これらは何を教えるかという「ティーチング」の内容の問題であったが,アクティブ・ラー ニングは「ラーニング」すなわち生徒の学び方に注目したところがそれまでの教育課程論議との大 きな違いである。

(3)大学入試改革(高大接続)と科目再編

 文部科学省は,学習指導要領においてアクティブ・ラーニングという学び方に踏み込むだけでな く,大学入試のあり方を変えることで「新しい学力」の向上を徹底しようとしている。中央教育審 議会の答申(2014)は「高等学校においては,小・中学校に比べ知識伝達型の授業に留まる傾向が あり,学力の三要素を踏まえた指導が浸透していないこと」が問題であると指摘し,その理由の一 端は「(大学の)一般入試においては,一斉かつ画一的な条件で実施される試験で,あらかじめ設 定された正答に関する知識の再生を一点刻みに問い,その結果の点数で選抜する評価から転換し切 れていないこと」から「大学入学者選抜における学力評価が,学力の三要素に対応したものとなっ ていないことが大きく影響している」とし,高大接続改革も合わせた一体的改革の必要性を説いて いる。こうして,従来型の知識再生型試験とは異なる「新テスト」が,現在の大学入試センター 試験に代わって2020年から始まることになった。

 また,高等学校の新学習指導要領改訂の方向性として,大幅な科目の再編が伴うことが示されて いる。これまでの審議によれば,現代的な諸課題の形成にかかわる近現代の歴史を考察し,課題の 解法を視野にいれた「歴史総合」や,他者との協働により公共的な空間を作る主体としての判断基 準を身に付ける「公共」のような新必修科目や,より専門的な視野から深く探究する選択科目が置 かれるようになる。これらは,新しい学力観に基づいて「何をどのように学ぶか」が明確に整理さ れたものである。いくつかの教科教育系学会でも,これらの動きに対応する形で様々な理論研究・

実践研究が行われている。

3.実践と課題─スーパーグローバルハイスクールを中心に

 このような,学習指導要領改訂を中心とした教育改革が進められる中で,アクティブ・ラーニン グに関する様々な実践が積み重ねられている。

(1)スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定

 文部科学省は2014年からスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を始め,国内外の大学 や企業,国際機関等との連携による教育課程等の開発・実践を支援している。実施要領によると,

高等学校の「生徒の社会課題に対する関心と深い教養,コミュニケーション能力,問題解決力等の

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⑶ 中央教育審議会(答申)「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育,大学教育,大学入学 者選抜の一体的改革について」(2014年12月22日)

  http://www.mext.go.jp/b̲menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/̲̲icsFiles/afieldfile/2015/01/14/1354191.pdf

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国際的素養を身に付け,もって,将来,国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図るこ と」を趣旨とし,これに資する教育課程改善のための実証的資料を得るため,研究開発を行うスー パーグローバルハイスクールを指定し,あわせて高大接続についても検討することを事業の目的と している。研究開発は5か年計画で行われ,初年度については1校あたり1600万円を上限とする 予算が付けられた

 指定は公募によって行われ,現在のところ2014年度指定56校,2015年度指定56校,2016年度指定 11校の計123校がスーパーグローバルハイスクールとなっている。これらの学校では,文部科学省 による指導・助言のもと「グローバル・リーダー育成に資する課題研究を中心とした教育課程の研 究開発・実践」「英語等によるグループワーク,ディスカッション,論文作成,プレゼンテーション,

探究型学習等の実施」「企業や海外の高校・大学(ESD を通じたユネスコスクールを含む。)等と 連携した課題研究(例:国際的に関心が高い社会課題,地元企業や大学等と連携したグローカルな 課題)に関する意見交換及び国内外フィールドワーク」「課題研究の英語等による成果発表会等の 開催」を主な取り組みとして進め,「グローバルな社会課題を発見・解決し,様々な国際舞台で活 躍できる人材(国際機関職員,社会起業家,グローバル企業の経営者,政治家,研究者等)の輩出」

を目指すものとなっている。指定3年目には中間評価が行われることとなっており,2015年度ま でに指定された112校の中間評価結果が文部科学省によって公表されている。

 これだけをみると,スーパーグローバルハイスクール事業と学習指導要領改訂やアクティブ・

ラーニングとの関連性は必ずしも明確でないようにも思える。しかし,次項以降に述べるように,

スーパーグローバルハイスクールの取り組みと評価を通じて,とりわけ大学入試(高大接続)改革 とアクティブ・ラーニングの定着・意識づけを図ることを一つのねらいとしていることが推し量れ る。

(2)スーパーグローバルハイスクールの取り組みと評価

 スーパーグローバルハイスクールでは各校が指定前に提出した「構想調書」に基づき,様々な形 式での教育実践・研究が進められている。一例として,2015年に SGH 指定校となった早稲田大学 本庄高等学院では,「国際共生パートナーシップ構築力育成プログラム」を掲げ,少人数でのプロ ジェクト遂行を通じて問題解決力を育成しようとする試みを展開している。具体的には,高校生に よる国際学術シンポジウムの開催・運営のほか,ボランティア活動を通じた社会貢献,地域社会の 問題について考えるプロジェクト型研究活動,英語科と公民科が連携してグローバル・イシューに ついて考察・発表・議論する問題発見・解決型の授業を新たに行うなどしている。

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⑷ 文部科学省初等中等教育局「スーパーグローバルハイスクール実施要項」(2014年1月14日)http://www.mext.

go.jp/a̲menu/kokusai/sgh/1343301.htm

⑸ 2014年度予算額は約8億円であったが,指定校の増加に対し予算の増額がないことから,2年目以降は1校あた りの配分額は少なくなっている。2017年度予算額は約9億円である。

⑹ 文部科学省「平成28年度スーパーグローバルハイスクール概要」(2016年3月31日)http://www.mext.go.jp/a̲

menu/kokusai/sgh/1368807.htm

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 すべての指定校について指定3年目に文部科学省による中間評価が行われ,以下の表のように6 段階の総合評価が個別の講評とともに公表されている。

(表)スーパーグローバルハイスクール 中間評価結果

2014年度 指定

2015年度 指定 優れた取組状況であり,研究開発のねらいの達成が見込まれ,更なる発展が期待

される 4校 4校

これまでの努力を継続することによって,研究開発のねらいの達成が可能と判断

される 16校 19校

これまでの努力を継続することによって,研究開発のねらいの達成がおおむね可

能と判断されるものの,併せて取組改善の努力も求められる 19校 17校 研究開発のねらいを達成するには,助言等を考慮し,一層努力することが必要と

判断される 15校 12校

このままでは研究開発のねらいを達成することは難しいと思われるので,助言等

に留意し,当初計画の変更等の対応が必要と判断される 2校 3校 現在までの進捗状況等に鑑み,今後の努力を待っても研究開発のねらいの達成は

困難であり,スーパーグローバルハイスクールの趣旨及び事業目的に反し,又は 沿わないと思われるので,経費の大幅な減額又は指定の解除が適当と判断される

0校 1校

 このうち,2016年度及び2017年度の中間評価において最も高い評価を受けた8校(国立2校,公 立2校,私立4校)の「構想調書」では,次のように研究開発の概要が説明されていた。

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⑺ 文部科学省「スーパーグローバルハイスクール(平成26年度指定)の中間評価について」(2016年9月30日),

「スーパーグローバルハイスクール(平成27年度指定)の中間評価について」(2017年9月29日)を元に作成。

http://www.mext.go.jp/a̲menu/kokusai/sgh/

⑻ スーパーグローバルハイスクール WEB サイト掲載の指定校「構想調書」より抜粋。http://www.sghc.jp/

(表)スーパーグローバルハイスクール「研究開発の概要」

私 立

複数教科・科目から学ぶアプローチと,問題発見・解決型の活動を重視し,それにより知識 の充実,

発信意欲・技術の向上,交渉・連携しつつ行動する力の強化を図る。テーマを「人間の安全保障」

とする。

公 立

『世界の持続的な発展に向けた創造的提案〜国際社会に向けた出雲からの発信〜』を  テーマに,

「社会」「自然」「ひと」の三つの切り口からアプローチする。質の高い英語教育・教養教育による「自 立」した個人の能力育成と,海外の高校生との意見交換等「協働」的な学習により,「地域・社会 の核となるグローバル・リーダー」を育成する。

私 立

愛知県のビジネス課題を軸に,高大・産学協働の探究活動を行う。PBL の学校設定科目と課外活 動とを融合させたサービスラーニングによりスキルとマインドセットを育成し,グローバルシチズ ンシップを獲得させる。評価・検証には,ルーブリック等を用いたパフォーマンス評価,定期的な アンケートによる統計学的手法を用いる。

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 これらに共通することは,地域的か地球規模かを問わず,グローバル化にともなって進展した「現 実の社会における問題」について具体的にテーマを設定し,探究的な活動によって課題を発見・解 決していく生徒を育成しようとするプログラムを目指しているという点である。また,大学や外部 機関(企業等)との連携により研究開発を進めていこうとするものも多くみられる。

 そして,これらの8校への中間評価講評の内容のうち,①生徒の変容,②テーマ,③学び方,④ 評価法への言及に着目してみると,カリキュラム研究開発としてのスーパーグローバルハイスクー ル事業が次期学習指導要領改訂と関連し,問題解決型の「新しい学力」を伸ばすことと,その方法 としてアクティブ・ラーニング型授業への転換を強く意識していることが伺える。以下,8校の中 間評価コメントより抜粋する。

①生徒の変容

「社会貢献活動に取り組んだ生徒の割合,グローバルリーダーとして国際社会で活躍したいと答 える生徒の割合が大きく向上している」(私立),「生徒の意識調査からも狙いとする「深い理解」

「判断力・有用な情報収集」などの力の伸長が見られる」(国立),「生徒の視野は確実に広がって おり,生徒の成長でも事業の基準を十分に満たした効果をあげている」(公立)

 スーパーグローバルハイスクール指定前後において,生徒がどのように変容したか客観的な数値

私 立

教員集団が成長目標を共有すること,大学と連携して生徒が国内外の他者と出会う場を提供するこ とで生徒が成長する。この2つの軸を組み込んだ平和教育をテーマに課題研究を行い,グローバル 人材に不可欠な3つの力=平和観・対話力・リーダーシップを育成する。これを可能にするため,

教員の意識を変え組織を改編する。

国 立

本構想は,本校の規定するグローバル・リーダーである「自立した学習者」の育成を目標とし,以 下三つの研究開発を行う。Ⅰ)必修「総合人間科」の仮説検証型探究カリキュラムへの再構築。Ⅱ)

理解・思考型学習「協同的探究学習」による学習方法の開発。Ⅲ)国内外グローバル拠点を活用し た論理的表現力を高める教育方法の開発。以上を名古屋大学と一体化して実施し,高大接続の「名 古屋大学モデル」発信を目指す。

公 立

リベラルアーツ教育を基軸に,国内外の学術機関や企業等と連携した鳥羽の学びネットワークを活 用して,グローバル・イシューに挑む新しい価値創造を目指す課題研究「ソーシャル・イノベーショ ン」により,価値創造力・協働力・突破力・寛容力・教養力を  備えたグローバル・リーダーを育 成する教育システムを研究開発する。

私 立

Active  Learning  の土台の上に,国連が提起している地球的課題について探究し,世界の平和に貢 献するグローバルリーダーとしての使命感・共感力・問題解決への創造力を育む教育活動を高大連 携して開発する。

国 立

〇グローバル人材の育成に資する課題研究を中心としたカリキュラムの開発・実践 〇大学や企 業,海外の協定校等と連携したカリキュラムの開発・実践 〇地域の課題と世界の課題との繋がり を理解し,生徒自らが設定した課題に失敗を恐れずチャレンジする精神の育成を図るカリキュラム の開発・実践 〇本取組を広く公開し,グローバルな視点で社会課題を解決することにより地域社 会の発展を支える人材育成の拠点校としての役割遂行 〇全教職員が主体的に取り組む組織作り

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をもとに分析することが求められている。加えて,これらの学校では社会貢献や国際社会への参加 意識,課題発見・問題解決に向けての意欲といった,探究する力の変容をねらいとしている点が共 通している。

②テーマ

「平和や戦争,安全保障など将来の日本人には避けて通れないテーマに正対し,それに様々な工 夫をしながら段階を追って生徒に考えさせている点が高く評価できる」(私立),「平和,核,途 上国開発など,難しいテーマを多様なアプローチで,重層的に考えさせ体験させる教育方法につ いては,高く評価できる」(私立)

 各校が取り組むグローバルな社会課題には,グローバル化に対応する地域社会の問題や,産業(ビ ジネス分野でのリーダー育成)に注目したものも多い。一方で,8校の中間評価講評でテーマにつ いて言及があるものは,安全保障,開発といった地球規模の課題について正面から取り組んでいる とするものである。スーパーグローバルハイスクールの成果普及を考えたとき,これらのような国 際社会の問題についてどう学んでいくかは地域・学校の類型を問わず重要であり,普遍性の高い テーマが評価されたものという見方ができる。

③学び方

「事業の取組に沿った生徒の育成,教員組織の構成は特筆すべきものがある。その一つの要因と して,アクティブ・ラーニングへの指導法への転換がこの事業の効果を高め,着実に成果が上がっ ており,更なる発展が期待される」(私立),「学校全体で「協働的探究学習」を取り入れた授業 改善に取り組み,結果を活用しながら研究開発内容の改善を図りつつ進めている点が非常に優れ ている」(国立),「探究のプロセスにのっとった外国語の習得及び活用は極めて高く評価できる」

(公立),「大学と連携しアクティブ・ラーニングを軸とした活動の実施やアクティブ・ラーニン グへの指導法転換が取組を支えている点も極めて高く評価できる」(公立),「探究のプロセスに のっとって事業が展開されており,教科で習得した学びを課題解決に役立てている点が極めて高 く評価できる」(私立),「事業の取組に沿った生徒の育成,教員組織の構成が効果的に働いてい る要因として,成果と課題を常に明らかにし次への取組を明確にしていること,PDCA サイク ルを基準とした指導の工夫・改善,アクティブ・ラーニングへの指導法転換が挙げられ,極めて 高く評価できる」(国立)

 「探究のプロセス」,「アクティブ・ラーニング」がキーワードとして挙げられる。探究のプロセ スとは,「課題の設定」・「情報の収集」・「整理・分析」・「まとめ・表現」からなる学習方法であり,

このような探究活動を通じて実社会の課題に関する事実的知識を獲得し,学ぶことの意義や価値を 理解するとともに,課題設定のスキル,情報収集のスキル,思考のスキル,表現のスキルを育成し

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ようとするものである。たとえば,社会状況をふまえて課題を設定し,仮説を立て,検証方法を 計画する。そして,目的に応じて収集した情報を多角的に分析し,事実や関係の構造的把握をもと に,多様な視点から自身の考えを形成する。それを手際よく論理的に表現し,学習の反省を生活に 生かすというような流れになる。知識・技能を「活用する」という点において,アクティブ・ラー ニングと共通する概念である。

 これらの評価コメントから次のようなことが読み取れる。すなわち,スーパーグローバルハイス クールの研究開発事業で掲げる「グローバル・リーダーの育成」のためには,問題発見・解決力を 伸ばす探究のプロセスやアクティブ・ラーニングの手法が求められるということである。

④評価法

「PDCA サイクルを強く意識し,パフォーマンス評価(ルーブリックによる評価),生徒の資質 能力の変容に関する評価(質問紙による評価)など,多様な検証方策が効果的に用いられている」

(私立),「PDCA サイクルが実質的に機能しており,特に成果の検証については,独自のルーブ リックや生徒自身の相対的成長実感を問うアンケート,授業評価などの多様な方法が用いられて おり,SGH 校のモデルとなり得る取組である」(公立)

 スーパーグローバルハイスクールが目的に掲げるのはグローバルな社会課題を発見・解決し,国 際舞台で活躍できる人材の育成である。そうすると,目標がどれだけ達成されたかという評価軸を 考案する必要がある。ここでは PDCA サイクルというキーワードがみられるが,「Plan(計画)

→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)」のうち特に「Check」が適切に行われること が求められている。定着した知識量を定量的に測ることを目的とした従来型の試験ではなく,探究 活動の各段階において必要なスキルを評価するためのルーブリック等が必要になるからである。こ こでの評価とフィードバックが適切に行われることが,生徒の変容に結びつくという見方が背景に あるものと考えられる。

(3)スーパーグローバルハイスクールの成果と課題

 これまでみてきたように,スーパーグローバルハイスクール事業の背景には,次期学習指導要領 改訂において着目される「学習法」,すなわちアクティブ・ラーニングへの転換のための意識づけ があることを読み取ることができる。それは,社会構造や雇用環境が大きく変わり,国際社会にお いても解決が待たれる地球規模の問題が山積するなか,これからの時代を生きる上で必要な資質・

能力を育成していくことが必要であり,教育の在り方を見直すための牽引役の一部を「スーパーグ ローバルハイスクール」に担わせたものとみられる。

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⑼ 文部科学省編『今,求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(高等学校編)』(2013年7月)http://

www.mext.go.jp/a̲menu/shotou/sougou/1338359.htm

(9)

 国際バカロレアや OECD のキー・コンピテンシーにみられる,複雑に変化し続ける社会に対応 し持続可能な国際社会の実現に貢献する教育観は学習指導要領改訂にあたっても留意されている。

ここで求められる資質・能力を育む方法として必要と考えられているのがアクティブ・ラーニング であり,その具体的方法について開発・検証しようとしているのがスーパーグローバルハイスクー ルだということである。

 日本においては,他にもアクティブ・ラーニングにおける多様な研究が行われている。たとえば,

日本私学教育研究所が行っている研究事業でもアクティブ・ラーニングをはじめとする先端的な学 習方法を特定研究テーマとして設定し,多くの実践家がアクティブ・ラーニングの手法を用いた授 業開発に取り組んでいる

 加えて,日本は世界で最も多くのユネスコスクール指定校をもち,ユネスコスクールを中心とし た ESD(持続可能な開発のための教育)の実践も広く行われている。多様な文化共存や国際協力,

問題発見解決力やコミュニケーション力の育成を目指す ESD の理念は「生きる力」に通じるもの であり,身近な問題について考え行動するという学びは,新学習指導要領が求める内容に重なる。 また,ESD は広範囲かつ多様な要素が複雑にからんだ問題を多面的に考察するために,特定の教 科によらず,学校の教育活動全体を通じてホールスクールでアプローチすることが重要であるとさ れている。スーパーグローバルハイスクールの中間評価においても,学校全体での取り組みや教育 活動の変容について検証されている様子がうかがえ,ESD の視点も意識されているものと思われる。

 ところで,スーパーグローバルハイスクールは2014年から指定を開始したが,2016年度指定校が 期限を迎える2020年度をもって事業が一区切りとなることが予想される。それ(2021年)は大学入 試改革のタイミングでもあり,次の課題はこれらの新たな学習方法を入試改革と連動させて有効に 機能させることであろうと考えられる。

 これまで,学習する「内容」を示すものであった学習指導要領は,「学び方」や「育成を目指す 資質・能力」に踏み込み,どのように学び,何ができるようになるのかが問われるようになる。す ると,大学入試においても,学習内容の理解にとどまらず,答えが一つに定まらない問題に解を見 出していく思考力や判断力,表現力を求めるのが必然となってこそ有効に機能する。また,ペーパー テストによって測定することが難しい資質を評価するための入試改革もあわせて行われていくもの

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⑽ 日本私学教育研究所における2016年度の委託研究30件のうち,14件が「アクティブ・ラーニング」を題目に含む ものであった。また,「グループワーク」「プロジェクト型」など能動的学習についての研究であることを示す題目 も他に6件あった。日本私学教育研究所「研究事業  平成28年度研究員一覧」http://www.shigaku.or.jp/study/

researcher.html

⑾ 文部科学省は ESD を推進(文部科学省国司統括官・初等中等教育局長「持続可能な開発のための教育(ESD)

の推進について(依頼)」(2014年12月8日))するとともに,2009年公示の現行高等学校学習指導要領においても 持続可能な社会の構築という観点を盛り込んでいる。例えば,公民「政治・経済」では「政治や経済などに関する 基本的な理解を踏まえ,持続可能な社会の形成が求められる現代社会の諸課題を探究する活動を通して,望ましい 解決の在り方について考察を深めさせる」と記述され,これに基づいて ESD の考え方に沿った教育を行っていく ものとしている。

(10)

と考えられる。例えば東京大学は2016年から推薦入試を始めているが,「日本の中等教育における 先進的取組を積極的に評価し,高等学校等の生徒の潜在的多様性を掘り起こすという観点から,日 本の高等学校等との連携を重視」することを基本方針として掲げており,高等学校における学び 方の改革を意識したものとなっている。出願要件として,「留学経験・社会貢献活動」(法学部),「国 際的・全国的コンクール,コンテストでの受賞」(教育学部),「社会問題解決に取り組んだ社会貢 献活動・国際的活動」(工学部),「科学オリンピックなどでの入賞」(経済学部,理学部など)といっ た能動的な探究活動の経験が具体的に例示され,これらのような学びのプロセスを大学入試で評価 しようとするための試みであるといえる。スーパーグローバルハイスクールが事業として成功する ためにも,このような大学入試改革が一体となることが不可欠である。

 また,様々な実践から成果を吸い上げ,より広く還元し,教師の全体的な力量を向上させていく ことが次の課題として考えられる。スーパーグローバルハイスクールの場合,成果普及・還元につ いても評価の対象となっているが,それは新学習指導要領の実施とあわせ,日本の高等学校全体で 学び方が転換していくことが必要だからである。そのとき,それらを実践しようとする教師の力が いっそう問われることになる。アクティブ・ラーニングが学習の中心的手法として理想的な方針で あっても,実践者の理解がなければ有効に働かない。従来型の知識伝達型の授業と比べれば,「新 しい学力」を伸ばすアクティブ・ラーニングを行うために高度な工夫が必要となるだろう。また,

生徒へのフィードバックを行い,学びのサイクルを確立するためには,記憶した知識を問うだけで なく,正しく評価を行う能力も教師に求められることになる。東京大学の推薦入試がそうであるよ うに,面接や集団討論などにおけるパフォーマンスを評価するためのルーブリックをいかに作って いくかがまず問われるだろう

4.おわりに

 これまでみてきたように,アクティブ・ラーニングを掲げた次期学習指導要領が成功するために は,優れた実践例の蓄積と大学入試を含む高大接続改革の徹底が必要である。

 しかし教育改革の歴史を振り返ると,海外の新教育に学んだ大正新教育にみられるような先駆的 な実践は,結果的に限られた範囲での普及にとどまり,全国的な展開を見せるに至らなかった。

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⑿ 東京大学「平成30年度推薦入試学生募集要項」http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400065221.pdf

⒀ 石川一郎は「ルーブリックには無限の観点がある」ことが問題であることを指摘し,個人で考えたのちにグルー プディスカッションや協働作業を行うというワークショップ型の「思考力テスト」によるパフォーマンス評価を考 案し,「おそらくこのテストの方法は,グローバル教育の主流になることは間違いありません。実は IB(国際バカ ロレア)の評価方法や PISA,21世紀型スキルをカリキュラムに導入している世界の学校なども同じような構造に なっています」と述べている。『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書,2016年)pp.218-219

⒁ 及川平治による修身科の実践で,級友が病気になるという現実的な問題に直面し,それに対処するための様々な 活動を教科横断的に展開するものを例に挙げ,「総合的学習の時間」を地でいく優れた実践であり,大正新教育と して先端的であった試みが現在の標準となっているという連続性が指摘されている。今井康雄『教育思想史』(有 斐閣,2009年)p.286

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国家主義の台頭の影響を除けば,それらの実践が一般的な学校や教師にとって差し迫った必要にか られていなかったり,実用型の技能を求める家庭のニーズと乖離したものであったりしたからかも しれない。あるいは,学校という制度が本質的に「教わり」という客体的・受動的な活動を前提と するものとして存在し,主体的・能動的であるべき「学び」が自発的に促進されるような工夫を怠っ てきたからかもしれない。そう考えてみると,アクティブ・ラーニングにおいて最も重要なことは,

生徒たちへの「学び」の動機づけなのではないかと思われるのである。齋藤孝は,「新しい学力」

観の中で「意欲」が中心におかれているとし,「クラスで発表するのは緊張するし,自分の意見は 大したことがないと遠慮してしまう。だが,半強制的に発表させると,学生は発表に慣れてくる。

そして発表への感想を聞くことが次第に快感になり,より発表したいと思うようになる。要は場慣 れの問題なのである」と述べ,「対話的な学び」を活性化するための技術と方法を指摘する。全 国的な普及をみなかった大正新教育の限界に学ぶならば,一般の教師がこれらを理解し,積極的に 進めていけるよう促すことが重要である。

【参考文献】脚注に示したもののほか,

教育課程研究会編『「アクティブ・ラーニング」を考える』(東洋館出版社,2016年)

 なお,本稿は2017年10月21日韓国・高麗大学校にて開催された韓国日本教育学会2017年度年次学術大会

(第119回学術発表会)において口頭で発表した内容をもとに加筆・修正したものである。また,早稲田大 学特定課題研究助成(課題番号2017-B353,2017-K373)による研究成果の一部である。

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⒂ 齋藤孝『新しい学力』(岩波新書,2016年)pp.25-28

参照

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