神奈 川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第15号 2011年3月 91
■ 修士論文要旨
女性の社会進出 と少子化問題
‑アメリカ ・日本 ・中国における比較研究‑
How WomenWorkingAffectstheBirthrate
‑A ComparativeStudyoftheUnitesStates,Japan,andChina‑
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程
胡 愛 輝
HU Aihui
■キーワー ド
女性 の社会進出、少子化、社会環境
この論文 は、女性労働 に関す る環境 や現状 およ び男女平等 に対す る社会の意識 について、 アメ リ カ、 日本、中国を比較 す ることによって、女性 の 社会進 出を取 り巻 く諸問題 の要因や影響 を明 らか に し、女性労働 の未来 を展望す ることを目的 とし ている。
女性の社会進出 と少子化の進行 に関わ る問題 は、
社会の安定や経済 の発展 に とって重要 であること か ら、本論では とくに女性の社会進出 と少子化問 題 に着 目 して議論す るC よ く、女性 の社会進出 と 少子化 の進行 との間 には相関関係が あるのではな いか とい う議論がなされ るが、本論文では両者 の 関係性 を分析 す る上で、 この関係性 に影響 す るい くつかの社会環境 的要因を抽出 して議論す る。 こ れ ら影響要素 を適切 に処理 すれば、女性 の社会進 出の促進 と少子化問題 の解決 は、良好 な循環 に入 る可能性が大 きい と思われ るか らである。
そ こで、本論では、女性 の社会進 出が進 んでい るアメ リカ、先進 国であ りなが ら伝統的意識 の強 い 日本、 そ して、 この2カ国を追 う新興 国 として
経済発展 に伴 う社会変化 の著 しい中国の3カ国の 状況 を比較 し、女性 の社会進 出 と少子化 の関係性 に影響す る要因を明 らかにする。女性 の さ らなる 社会進出を進 め、少子化 問題 を解決す るには何が 重 要かを提示す る。
具体的な論述 内容 としては、第 1章では問題提 起、および本論文 の目的 を述べ、第
2
章で は米 ・日 ・中における女性 の社会進 出の状況 を比較 し、
各国における女性 の社会進 出の歩み、女性労働 の 必要性 お よび現状 を論ず る。第3章で は米 ・日 ・ 中3カ国 における少子化 の状況 を見てい く中で、
女性 の社会進 出 と少子化 問題 との関係性 を確認す る。第
4
章で は、両者 の関係性 に影響 す る社会環 境要因の うち、主 として、男女平等意識 の問題 お よび女性 の社会進出支援政策 と子育ての支援策 を 中心 に、米 ・日 .中3カ国の状況 を比較 す る。 そ して第5
章で は、以上の内容 を踏 まえて、女性 の 社会進 出の促進 と少子化 問題 の解決 に資す る提言を行 いたいQ
米 ・日 ・中3カ国の比較研究の結果か ら判明 し
92 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第15号 2011年3月
た女性 の社会進 出に とって重要 な社会環境的要素 とは、男女平等意識 の普及、企業 による女性の有 用性 の認識、国や地方 自治体 による仕事 と子育て の両立支援策 の導入、国による男女平等 を保 障す る強制 力のある法律 の実施 と企業 による法の遵守 の重要性である。 これ らを踏 まえ、米 ・日 ・中各 国の文化的 ・伝統的な認識 を明確 に した上で、 そ れぞれの国情 と社会的発展段階に見合 った対策 を 提言す る。
アメ リカでは、女性の社会進 出が当た り前にな ると同時 に、男性 の意識 の面で も女性労働者や女 性管理職 を認 める環境が整 ってきた。その うえで、
企業が従業員の仕事 と家庭 のバ ランスを保つ よう な制度 を導入す ることで、出生率 も回復 して きた ことが分 かった。女性 の社会進 出の支援 プロセス においては、雇用機会均等法 と積極的差別是正措 置 (EEOIAA,EqualEmploymentOpportunity andAfnrmativeAction)な どの制度施行 におけ
る強制力の効果が大 きい ことも明 らかになったO 日本で はアメ リカの 自由思想 を受 け継 いではい るが、男女 とも伝統的な意識 に束縛 され る部分が 多 く、女性の社会進出が行 き詰 っている。法制度 的には平等を提唱 しているが、強制力が足 りない。
この ような環境下で、仕事 と家庭 のバ ランスを取 り、少子化 を止 めるのが難 しい ことが分かった。
アメ リカの事例 を参考 に、明確 な数値 目標 を定 め て強制力 をもたせ るな ど、実効 を伴 う政策が期待 され る。
中国では、1949年建 国以来、社会主義 の下 で男 女平等意識が普及 したが、1978年改革開放 による 経済 自由化 以降、アメ リカや 日本 と同 じよ うに市 場原理下で女性 の社会進出を推進 しなければな ら ない状況 にある。 その上、 日本 と同様 に男女役割 分業 な どの伝統的な意識が根強 く存在 している。
このよ うな環境下で、企業 に強制力のある制度が ない と、形 だけの女性保護 を標傍 して も女性 の社 会進出は うま くい くはずがない。 また、現在 中国 では 「一人 っ子政策」が転換期 を迎 え、女性 の社 会進出や男女平等、仕事 と家庭 のバ ランスな どの 問題 が山積 してい るa これ らの問題解決のための 政策 に実効性 をもたせない限 り、近 い将来予測 さ れ る少子化 の深刻化 を未然 に防 ぐことはできない だろ うO
今の世界では、経済 の変化や少子高齢社会が進 展す る中で、男女共 同参画社会 の推進が社会 を活 性化 し、現在 の社会が直面す るさまざまな課題 の 解決や経済成長 にも繋が るので、 この点 において、
女性 の社会進 出 と少子化問題 につ いてはこれか ら も注 目していきたい。