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会計情報システムと We b2. 0 に関する一考察 Ⅰ Ⅰ

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(1)

研究 ノー ト

会計情報システムと We b2. 0 に関する一考察 Ⅰ Ⅰ

荒 井 義 則

1.

はじめに

前稿 1)においては、会計情報 システムに対す るWeb2.0の影 響 を 「システ ムの革新機 能 」 お よび 「複雑ネ ッ トワー ク」の観点か ら考察 した。

本稿 で は、会 計情報 システ ム とWeb2.0に関 し て複雑適応 系の観点か ら考察す る。

2.Web2. 0

について

Web2.0とは、 テ ィム ・オ ライ リーが提 唱 し た概念でWebの新潮流 を総称 した ものである2)。 テ ィム ・オ ライ リーは 「Web2.0の原則」と し て以下の7項 目をあげてい る。

1.

プ ラッ トフォー ム としての ウェブ 2.集合知 の利用

3.デ ータは次世代 の 『イ ンテル ・イ ンサイ ド』

4.ソフ トウェア ・リリースサイ クル の終鳶 5.軽量なプ ログラ ミングモデル

6.単一デバイスの枠 を超 えた ソフ トウェア 7.リッチなユ ーザ ー体験

また 、論 文 の コラム欄 で 「Web2.0のデ ザイ ンパ ターン」 として以下の8項 目をあげてい る。

1.ロングテ ール

2.デ ータは次世代 の 『イ ンテル ・イ ンサイ ド』

3.ユ ーザ ーによる付加価値創造 4.ネ ッ トワー ク効果 を促す初期設定

5.一部権利保有 6.永久 にベ ータ版

7.コン トロール でな く協力

8.単一デバイスの枠 を超 えた ソフ トウェア Web2.0については、

web2.0が意 味す る もの につ い て は、 い ま だに深刻 な意見の相違 がみ られ る。

とテ ィム ・オ ライ リー 自身 が論 文2)の中で述べ てい るよ うに、人 によ り意味す る内容が異 なっ てい るのが現状 である。

グー グル な どのWeb世界 を主た る活動 の場 と す るWeb2.0的企 業 においては、 オ ライ リーの7 項 目の 「Web2.0の原則 」 と8項 目の 「Web2.0 のデザイ ンパ ターン」 をすべて備 えてい る企業

も存在す るが、7項 目の原則 と8項 目のデザイ ンパ ター ンの一部 を備 えてい る場 合 もWeb2.0 的な企業 と呼ぶ場合 もある。

梅 田はWeb2.0に関連 して 「次 の10年 ‑ の3 大潮流」 として

1.イ ンターネ ッ ト 2.チープ革命 3.オープ ン ソース をあげ、

この3大潮流 は相乗効果 を起 こ し 「次の10 年」 を大 き く変 えてい く。

会計情報システムとWeb2.0に関する一考察

77

(2)

と述 べ てい るが3)、「web2.0」や 「3大潮 流 」 に よる大 きな変化 の一つ は 「企 業 と消費者 の関 係 の変化」であ る。企 業か ら消費者 ‑ の一方通 行 が双方 向の関係 にな り、 さらに生産 な どの企 業活動 に も加 わ る対等 な関係 にな った こ とであ る。企業 と外部 の膨 大な数 の個人 (消費者) が イ ンターネ ッ トを介 して低 コス トでつなが り、

巨大 なネ ッ トワー クを形成 し、 このネ ッ トワー クが全体 として一つの仮想 的な企 業 と して働 く システ ムが誕生 してい る

本稿 では この よ うな仮想 的 な企業 にお け る会 計情報 システ ム を考察 の対象 とす る。

3.

情報システムについて

コン ピュー タを中心 とした システ ムには、 コ ン ピュー タシステ ム、情報処理 システ ム、情報 システム といった名称が付 け られてい るが、浦、

市川 は これ らの システ ムの違 い を次の よ うに述 べてい る4)。

① コン ピュー タシステ ム

コン ピュー タの物理 的機構 (ハー ドウェア) に論理 的 な機 構 (基本 ソフ トウェア) を積 み上 げた もの を コン ピュー タシステ ム とい う

② 情報処理 システ ム

コン ピュー タシステ ムに、 ある業務 を想 定 し てそのための応 用 ソフ トウェアを織 り込 んだ も の を情報処理 システ ム とい う。す なわ ち、デー タの収集 ・記録 ・加 工 ・配賦 に関わ る一連 の仕 組 み の総称 とい うこ とがで きる。 ここで 「一連 の仕組み」とは、ハー ドウェア、基本 ソフ トウェ ア、応用 ソフ トウェア を指 してい る。

③ 情報 システ ム

情報処理 システ ム と、 これ を扱 う人 間 も含 め た組織 体 を念頭 にお き、それ らの全体 を指す と

78 国際経営論集 No.35 2008

き情報 システ ム とい う。

これ らの システ ムは一つ の企業 内の システ ム を念 頭 にお い て い るが 、Web2.0で必 要 とな る システ ムは企業 内の システ ムだ けではな く、企 業 内の システ ム とイ ンターネ ッ トに よ り結合 さ れ た膨 大 な数 の個人 システ ム (一人 の人 間 とパ ソコンの組や一人 の人 間 と携 帯電話 の組 な ど) よ りな る巨大 なネ ッ トワー クであ り、 このネ ッ

トワー クにお いては、イ ンターネ ッ トが本質的 な役割 を果 たす。 イ ンターネ ッ トな しでは この 巨大 なネ ッ トワー クは存在 し得 ない。 この よ う な情報 システ ム を① 〜③ に加 えて

④ イ ンターネ ッ ト型情報 システ ム

と呼ぶ こ とにす る。 イ ンターネ ッ ト型情報 シス テ ムは企業 内の情報 システ ム (企業 内部 の人間 も含む) とイ ンターネ ッ トお よびイ ンターネ ッ トで結 ばれ た企 業外部 の膨 大 な数 の協働す る人 間 を含 む 巨大 なネ ッ トワー クであ り、① 〜③ が 企業の所有す るネ ッ トワー クで あるのに対 し、

イ ンターネ ッ ト型情報 システムにおいては全ネ ッ トワー クに対 して企 業 の所有 とい う概念 は存在 しない。企 業,外部 の協働 す る人間は 自分 が所 有す る情報 システ ムやパ ソコンをネ ッ トワー ク の一部分 と して部分的 に保 有す るに過 ぎない。

協働す る企業外部 の人 間の場 合、パ ソコン一台 と一人の人 間の組 あ るい は携 帯電話一台 と一人 の人間の組 とい う場合 も多 い。 これ らの組 は③ の情報 システ ムの最 も簡 単 なタイ プ と考 え られ るので、イ ンターネ ッ ト型情報 システ ムはイ ン ターネ ッ トで連結 され た膨 大 な数 の情報 システ ムであ る とみ なす こ とがで きる。

4.

会計情報システムについて

現在 では、会計情報 システ ムは業務統合型会 計情報 システ ムの段階 まで発展 してお り、個 々 の業務 システ ムが単独 に存在す るわ けではない の で5卜 6)、 会 計 情 報 シス テ ム と経 営情 報 シ ス

(3)

テム との区別 はつ きに くくなってい る。業務統 合型会計情報 システムにおいては、本来の会計 情報 システムは他 の業務 システム と同様 に部分 システム として存在 してお り、業務統合型経営 情報 システムの一部 として存在す る。

しか しなが ら、会計情報 システムの機能 は7)

1.帳簿管理機能 2.会計報告機能 3.予算編成機能 4.意思決定機能8) 5.環境会計機能

6.原価計算 ・原価管理 ・原価低減機能

であ り、 これ らの機能 は他 のすべての業務 シス テム と関わ りを持つので、会計情報 システムは 機能的に他 のすべての業務 システムを一つにま とめる役割 を持 ってい る。 したがって、業務統 合型経営情報 システムを会計情報 システム とみ なす見方 も可能である。本稿で扱 う企業内の会 計情報 システムは この業務統合型会計情報 シス テム (以下では狭義の会計情報 システム と呼ぶ) であ り、 このシステムが前述 した巨大なネ ッ ト ワー クシステムのハブの役割 を果たす。

本稿で考察す るのは、企業内の業務統合型会 計情報 システムに企業外部の膨大な数の個人シ

的簡単なシステム)がイ ンターネ ッ トで結合 さ れたイ ンターネ ッ ト型情報 システムであ り、 こ の システ ムを 「Web2.0型 会計情報 システ ム」 と呼ぶ ことにす る。個人 システム以外に、巨大 なシステム とイ ンターネ ッ トを介 して結合 され ている場合 も多いが、 この場合 も本来の企業の 外部か らの参加者 とい う意味では個人 システム

と変 りな く、同 じよ うに考 えて よい。

5. Web2. 0

型会計情報 システム と複雑適 応系

(1)複雑適応系

複雑 な系について、その系の複雑 さその もの を問題 にす るのが 「複雑系」であ り、情報処理 の仕組みに着 目してその系を考察す るのが 「複 雑適応系」である。 ここでは 「複雑適応系に ついて考 える。

マ レー ・ゲルマ ンは複雑適応系 について、地 球上の生命 の起源 、生物の進化、生態系の中で の生物の行動、晴乳動物の免疫 システムの働 き、

動物 (人間 も含む)の学習 と思考、人間社会の 進化、金融市場 における投資家 の行動な どの過 程で共通す る特徴があるとして

それぞれの複雑適応系が 自らを取 り巻 く環 境 と、 自分 とその環境 との相互作用に関す る情報 を得て、その情報の 中に規則性 を見 出す こと、そ してそれ らの規則性 を一種の

「スキーマあるいはモデル‑ と圧縮 し、

そのスキーマをもとに現実の世界で行動す ることである。 どの場合で も、 さまざまな スキーマが競い合 ってお り、現実の世界で の行動の結果がフィー ドバ ックされて、 こ れ らのスキーマ間の競合 に影響 を与える9)。

と述べてい る。

また、ジ ョン ・ホラン ドは複雑適応系につい てマ レー ・ゲル マ ン とは別 の定義 を与 えてい

10' 12)。 ジ ョン ・ホラン ドの定義 によると、複

雑適応系 とは多数の 「適応的エージェン ト」か らなるシステムであ り、以下に述べ る4つの属 性 と3つのメカニズムを持つ システムである。

4つの属性 とは、

1.集合的特性 2.非線形性 3.流れ 4.多様性

であ り、3つのメカニズム とは、

1.標識化

会計情 報システムとWeb2.0に関する一考察I1 79

(4)

2.内部モデル 3.積木

である。

「集合的特性」 とは、システムを構成す る多 数の適応的エージェン トが関与 しあ うことによっ て生 じる集 合の特性 である。 また、 「流れ」 と はエー ジェン ト間の情報 の流れ であ り、 「標識 化」 とは集合体の形成 を促進す る一種の標識 で ある。 「多様性」 とは多種多様な適応的エージェ ン トが存在 してい るとい う適応的エージェン ト に関す る多様性 であ る。 「内部モデル」 とはマ

レー ・ゲルマ ンの複雑適応系にお ける 「スキー マ」にあたるもので、 これ によ り複雑適応系は さまざまな変化 にも適応 し、一貫性 を保持 して い る。 「積木」 は さま ざまな行動 を起 こす とき に使用頻度 の高い行動 を構成要素 として保存 し てお き、それ を積木の よ うに組み立てて使用す ることができるよ うに した ものである。

ジ ョン ・ホラン ドの複雑適応系にお ける 「適 応的エー ジェン ト」はマ レー ・ゲルマ ンの複雑 適応系 と同 じであると考えられ るので、マ レー ・ ゲルマンの複雑適応系が多数集合 したものがジョ ン ・ホラン ドの複雑適応系である。

複雑適応 系は情報の処理 に着 目した概念なの で、情報 を扱 う会計情報 システムの解析に適用 す るにはふ さわ しい概念である。

(2)コンピュー タと複雑適応系

マ レー ・ゲルマ ンは コンピュー タ と複雑適応系 について次のよ うに述べている

コンピュー タは複雑適応系 として機能す る ことができる。‑‑ ドウェアをそ う働 くよ うに設計す るか、ふつ うのハー ドウェアを もつ コンピュー タを学習す る、適応す る、

あるいは進化す るよ うにプ ログラムす るの である。 これ までの設計、あるいはプ ログ ラムの多 くは何 らかの生 きている複雑適応 系の働 きを簡易化 して、それ をまね ること

80 国際経営論集 No.35 2008

で作 られてい る

1 3 ) 0

そ して

コンピュー タ複雑適応 系 としてよく知 られ てい るものの1つがニ ュー ラルネ ッ トワー クで、 ソフ トウェア と‑‑ ドウェアの どち らで も実行できる

1 4 ) 。

と例 を挙げて説明 している。

一方、会計情報 システムに関 して、南洋 は

道具であるコンピュー タの性能は随分 よく はなったが、現在お よび近い将来の段階で はまだ まだ未発 達 の もので あ る とい うこ

と15)

と述べ、 さらに

経営の意思決定 といった社会的、経済的、

人間的要素等 も大 き く含んだ複雑な意思決 定 とい うことになる と、まだまだ到底人間 にはかなわない (自動制御 のよ うに限 られ た、 しか も物理的な面 においては現在で も 自ら情報 を検 出 し、判断、意思決定を行 う 上 、制御 行 動 さえ して しま う場合 が あ る が)16)

と解説 してい る。

この 2つの主張でもわかるとお り、コンピュー タ単独で も複雑適応系にな りうるが、 ここで扱 う会計情報 システムの よ うに高度 な意思決定を 伴 う場合 は、 コンピュー タ単独 では複雑適応系 となるの難 しく、人間の介在が必要 となる。本 稿のシステム (インターネ ッ ト型情報 システム) では人間 も含んでい るので、人間 とコンピュー タを組 に して、その組 を複雑適応系 と考 える。

企業内の情報 システムはコンピュー タな どの情 報機器 も多数 あ り、人間 も多数含 まれ るが、 こ れ らを一体 と考 えれ ばジ ョン・ホ ラン ドの複雑 適応系 として扱 える。 また、外部の人間の場合

(5)

は一台のパ ソコンと一人の人間あるいは一台の 携帯電話 と一人の人間 とい う場合が大半である が、一台のパ ソコン (あるいは一台の携帯電話)

と一人の人間を組 に して一体 として扱 うことに す る と、 これ らはマ レー ・ゲルマ ンの複雑適応 系 として扱 える。 した が って、本稿 で考 える web2.0型 会計情報 システ ム (イ ンターネ ッ ト 型情報 システム) は 2種類 の複雑適応系を含む

ことになる。

(3) Web2.0型会計情 報 システ ム とマ レー ・ゲ ルマ ンの複雑適応 系

ここでは、Web2.0型 会計情報 システ ムがマ レー ・ゲルマ ンの複雑適応 系 とみ なせ るこ とを 示す。

まず、非線形性 についてであるが、情報量 と コス トについて考 える。 このシステムが獲得す る情報量は膨大な量になるが、情報量が2倍 に なって もコス トが2倍 になる とは限 らない17)。 す なわち、情報量 とコス トの間には線形性 が成 り立たない。情報 とコス トは ともに重要な要素 で あ るか ら、Web2.0型 会計情報 システ ムは非 線形性 を持つ といって もよい。

次 に、 スキーマ につ いて考 える Web2.0の 重要な要素 として 「集合知」 とい うものがある。

これ は一部の専門家 (た とえば社 内の専門家) の判 断 よ りも、外部 も含 めた膨 大 な数 の人 間 (その中には社 内の専 門家だけでな く外部 の社 内にはいない よ うな専門家 も含 まれ る)の判断 のほ うが正 しい とい う考 え方である。われ われ が扱 うWeb2.0型会計情 報 システ ムは この集 合 知 によって判断が下せ るよ うなシステム としな ければな らず、判断は この集合知が行 うことに なる。 この よ うな機能 が備 わっていないシステ ムは、Web2.0型会計情報 システ ム と呼ぶ こ と はできない。

では判断の基準 となるスキーマは何か。スキー マは複雑適応系が周囲の環境 と相互作用 して得 られた情報か ら規則性 を見出 し、その規則性 を さらに圧縮 して得 られ た ものである。 これ に相

当す るもの (の一部)はテ ィム ・オ ライ リーが 提 唱 した7つ の 「Web2.0の原 則 と8つ の

「web2.0のデザイ ンパ ターン」で ある。 これ ら の原則 とデザイ ンパ ターンはグー グルやアマ ゾ ンな ど発 展 中のWeb2.0的企 業 の行動 か ら得 ら れた情報 を集約 し原則やデザイ ンパ ターンまで 高め られた ものであるか ら、ま さしくスキーマ となってい る。ただ し、グー グルやアマ ゾンな どのWebを活動 の中心に してい る企業の会計情 報 システムは7つの 「Web2.0の原則」 と8つの

「web2.0のデザイ ンパ ターン」すべてをスキー マ とす るとも可能である場合が多いが、一般的 なWeb2.0型会計情報 システムはすべてをスキー マ とす ることはできない場合が多 く、その一部 分 をスキーマ とす る場合 もある。

以上の考察 に よ り、Web2.0型 会計情報 シス テムはマ レー ・ゲルマ ンの複雑適応 系 となって いることが示 された。

(4) Web2.0型会計情報 システ ム とジ ョン ・ホ ラン ドの複雑適応 系

ここではWeb2.0型会計情報 システ ムが ジ ョ ン ・ホラン ドの複雑適応系であることを示す。

適応的エー ジェン トとしては人間 とコンピュー タ (あるいは携帯電話)の組み合わせ を考えれ ば よい。 この組 み合 わせ はマ レー ・ゲルマ ンの 複雑適応系に当たるので、適応的エー ジェン ト

としては最適 である。

1.集合的特性

web2.0型会計情報 システ ムは多数 の適応 的 ェ‑ ジェン トが協働 して 目的を達成す るシステ ムであるか ら、その 目的が集合的特性 と考 え ら れ る。すなわち、集合的特性 は存在す る。

2.非線形性

情報量 とコス トの間には非線形性 が成 り立つ ことはすでにに示 した。

会計情報システムとWeb2.0に関する一考察Ⅱ 81

(6)

3.流れ

企業 に よる情報 の開示 と情報 の全エー ジェン トに よ る共 有 はWeb2.0型 会 計 情 報 シ ステ ム の 重要 な成 立要 因で あ るか ら、エー ジェン ト間の 情報 の流れ は確 実 に存在す る

4.多様性

膨 大 な数 の企業外部 の人間が 自発 的 に参加す るので、エー ジェン トの多様性 は確 実 に存在す る。

5.標識化

新 商 品 の 開発 な どの 具体 的 な 目的 が あ って Web2.0型 会計情 報 システ ムが構 成 され るので 、

この 目的が標識 とな る。

6.内部モデル

内部 モデル はマ レー ・ゲル マ ンの複 雑適応 系 のスキーマ に当た るので、既 に議論 した。

7.積木

Web上での情報 の収集 ・伝 達 ・共有 な どの具 体的な技術 で有効性 が あ り、使 用頻度 の高い も のを定式化 して保 存す るこ とは確 実 に行 われ る ので、 これ が積 木 に当た る。

以 上 の考 察 よ り、Web2.0型 会 計 情 報 シ ステ ムが ジ ョン ・ホ ラン ドの複雑適応 系で あ るこ と が示 され た。

6. Web2. 0

型会計情報 システム と弱結合 複雑適応系

(1) 弱結合複雑適応 系

企 業 を ジ ョン ・ホ ラン ドの複雑 適応 系 とみ な した場合 、エー ジェン トを人 間あ るいは人間 と コン ピュー タの組 と した とき、人 間は企業 の構 成員 で あ り、階層化 され た企業 とい う組織 の一 員で あるか ら、人 間の間にはかな り強 い関係 が 存在す る。 この複雑適応 系 を強結合複雑適応 系

82 国際経営論集 No.35 2008

と呼 べ ば 、web2.0型 会 計 情 報 システ ム は弱結 合 とい うべ き複 雑 適 応 系 で あ る。Web2.0型 会 計情報 システ ムを構成す る個 人の間にはつ よい むす びつ きはな く、 また‑ ブ とな る狭義 の会計 情報 システ ムの所有者 であ る企業‑ の帰属意識 も存在 しな い。 ま た 、個 人 がWeb2.0型 会 計情 報 システ ムか ら離脱す るの も容易 である。

(2) 弱結合 と集合知 に よる判 断

意思決定 は会計情報 システ ムの重要 な機 能 で あ るが 、Web2.0型 会 計 情 報 シ ステ ム にお け る 集合知 に よる意 思決 定 にお いては、多種 多様 な 膨 大な数 の個人 (システ ム) の弱結合 が本質的 な役割 を果 たす。個 人 の間 には階層 関係 は存在 しないのでイ ンターネ ッ トを通 じて 自由に発言 がで き、また多種 多様性 か ら発 言 され る意見 も 多種多様 とな り、一企 業 内での検討 よ りもは る かに多 くの種類 の意 見や アイデ アが出現 して く る。 この段 階では、イ ンターネ ッ ト上 のブ レー ンス トー ミングが行 われ る と思 えば よい。

多種 多様 な意 見や アイデ アの 中には、他 の意 見や アイデ ア よ り比較 的優 れ てい るものが存在 し、徐 々に多数 の支持 を獲得す るものがでは じ め、その 中で さらに よ りす ぐれ てい る と多数 の 個 人か ら支持 を受 けた ものが残 る とい う過程 を 繰 り返 し、最終的 な結論 が導 かれ る。

この決 定過 程 に参加す る個 人 は議論 され てい る問題 につ いて何 らかの関心や知識 を持 ってお り、個人 の 中には (企業外部 の)専門家 も存在 してい る可能性 が高 く、 これ らの こ とに よ り結 論 の正 当性 が (100%で は ない に しろ)保 障 さ れ うる。狭義 の会計情報 システ ム (企業) は 自 由な討論 がで きるよ うな環境 を作 るこ とが第一 の役 目とな る。

ここで考察 した よ うに、集合知 に よる判断で は、多種 多様 な個人 の緩や かな結合 (弱括合)、

す な わ ちWeb2.0型 会 計 情 報 システ ムの存在 が 本 質的 に重要 であ る。

(7)

7. 終わ りに

本稿 では、膨 大 な数 の個 人 がイ ンターネ ッ ト を介 して結 合 す るWeb2.0型 会 計 情 報 シ ス テ ム を複雑適応 系 の観 点 か ら考察 し、弱結合複雑適 応 系 とい う概 念 で この システ ム を定式化 して、

さ らに集 合知 に よる意 思決 定 に も弱結合 が重要 で あ る こ とを示 した。 今 後 は、適応 度や カオ ス の縁 とい うよ うな観 点 か らWeb2.0型 会 計 情 報 システ ム を考察 してい きたい。

1)荒井義則 (2007)「会計情報システム とWeb2.0 に関す る一考察」『神奈川 大学経営学部 国際 経営論集』、第33号、1頁。

2)ティム・オライ リーの原論文 「WhatlsWeb2.0」

は以下のサイ トを参照。

http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/

news/2005/09/30/what‑is‑web‑20.html 日本語訳は以下のサイ トまたは雑誌 を参照。

http://japan.cnet.com/column/web20/story/0, 2000054679,20090039,00.html

http://japan.cnet.com/column/web20/stoIY/0, 2000054679,20090424,00.html

『IntemetMagagine』2006年1月号、51頁。

3)梅 田望夫 (2006)『web進化論』筑摩書房。

4)

浦昭二、市川照久[共編

]

(1998)情報処理 シ ステム (第2版)。

5)現在で も単独で存在す る会計情報 システ ムは 使用 されてい る。 田宮は参考文献6で会計情 報 システムの発展 を 「自己完結型会計情報 シ ステム」、「自動仕訳受入型会計情報システム」、

「業務統合型会計情報 システム」の3段階に分 けているが、最初の2段階は会計情報 システ ムは単独で存在 してお り、現在使用 されてい る会計 ソフ トは 「自己完結型会計情報 システ ム」に属す る と考 え られ るので、会計情報 シ ステ ムの単独使用 は存在す る。 なお、 「業務 統合型会計情報 システ ム」の次の段階 として

「戦略的会計情報 システ ム」 を考 える場合 も あるが、 このシステ ム も業務統合型情報 シス テムであることに変わ りはない。

6) 田宮治雄 (1994)『会計情報 システ ムの機 能 と構造』 中央経済社。

7)荒井義則 (1999)「会計情報 システ ム と複雑 系 に関す る一考察」『神奈川大学経営学部 国 際経営論集』、第18号、25頁。

荒井義則 (2000)「会計情報 システ ム と複雑 適応 系 に関す る一考察」『神 奈川大学経営学 部国際経営論集』、第19号、75頁。

荒井義則 (2000a)「複雑適応 系 と しての会 計情報 システ ム」『神奈川 大学経営学部 国際 経営論集』、第20号、113頁。

荒井義則 (2001)「会計情報 システ ムのサブ システ ム と複雑適応 系」『神奈川 大学経営学 部国際経営論集』、第21号、145頁。

荒井義則 (2001)「会計情報 システ ムのサブ システ ム とジ ョン ・ホラン ドの複雑適応系」

『神奈川大学経営学部国際経営論集』、第22号、

219頁。

荒井義則 (2002)「会計情報 システ ム と多主 体複雑 系 に関す る一考察」『神奈川 大学経 営 学部国際経営論集』、第24号、 1頁。

荒井義 (2003)「会計情報 システ ム と境 界 があいまいな複雑適応 系」『神奈川大学経営 学部国際経営論集』、第25号、475頁。

荒井義則 (2005)「会計情報 システ ム と場 の 理論 に関す る一考察」『神奈川 大学経営学部 国際経営論集』、第29号、119頁。

8)本稿 では、会計情報 システムに人間 も含 めて 考 えてい るので、 「予算編成支援機 能」 では な く 「予算編成機能 (③)」であ り、 「意思決 定支援機能」ではな く 「意思決定機能 (④)」 である。

9)Murray Cell‑Mann[著]、野本 陽代[訳](1994)

『クオーク とジャガー』草思社、41頁。

10) John H.Holland[著]、 嘉数 倍 昇[監訳](1992)

『遺伝アル ゴ リズムの理論』 森北出版。

ll)JohnH.Holland(1992)jll'dden Order,Addison‑

Wesley.

12)井庭崇、福原義久(1998)『複雑系入門』、

NT T

出版。

13)MurrayGel卜Mann、前掲書 370頁。

14)同上書。

15)南洋宣郎 (1995)『これ か らの コン ピュー タ ネ ッ トワー ク会計』、税務研究会出版局、8頁。

16)同上書。

17)本稿 で対象 としてい るイ ンターネ ッ ト型会計 情報 システムは膨大な数 の個 人 システムを含 んでい るが,イ ンターネ ッ ト全体 とい うわけ ではない。 このシステムの外部 にもイ ンター ネ ッ トは存在 し、そ こか ら多量の情報 を得 る ことになる また,本稿 ではシステム内に人 間 も含む と考 えてい るので、イ ンターネ ッ ト 以外か らの情報や人間の感性 か ら発せ られ る 情報 も多量に取 り入れている。

会計情報システムとWeb2.0に関する一考察Ⅲ 83

参照

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