九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
フェノール系オリゴマーを基体とする高選択性イオ ノホアの開発と難分離金属イオンの抽出相互分離
大渡, 啓介
https://doi.org/10.11501/3159106
出版情報:Kyushu University, 1999, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第3章
カリックスアレーンカルボ、ン酸誘導体の金属イオン抽出分離能に
及ぼす共存アルカリ金属イオンの影響
3. 1 緒言
2章で述べたように、 カリックスアレーンはクラウンエーテルのような人工イオ ノホアと同様、 酵素模倣体として着目され、 その利用が研究されてきた。 このため、
生体内で極めて重要な働きをするアルカリ金属、 特に、 ナトリウムとカリウムを対 象とする研究が多いo Gutscheらによって、 カリツクスアレーンに関する研究の第一 報が報告されて[3-1]以来、 多くの化学者が新規の人工イオノホアに着目してきた。
中でも、 様々な人工イオノホアについての研究を行っていたIzattらは、 早くからカ リックスアレーンに着目した。 彼らは、 カチオン輸送のためのキャリアーとして、
未修飾のカリツクスアレーンが、 利用できる可能性について報告した[3・2]。 その後、
未 修飾カリックスアレーンの金属イオンに対する親和性や選択性は、 様々な官能基 を導入した各種誘導体についても保持されることが、 多くの論文により報告されて いる[3-3,3・4]。 すなわち、 多くの研究者は、 カリックス[4]アレーンがアルカリ金属 の中で、 特にナトリウムと親和性が高く、 一方、 カリツクス [6]アレーンはナトリウ ムとカリウムの両方に、 親和性が高いことを報告した[3-3]0 カリツクス [4]アレーン とカリックス[6]アレーンを合成する際には、 鋳型金属として、 それぞれナトリウム とカリウムが用いられる。 このため、 報告されるような親和性は道理であるように 思われる。 ところで、 カリックスアレーンは、 環の反転に伴うコンホメーション異 性体が存在する。 特に、 カリックス[4]アレーン誘導体は狭い環構造のため、 ローワー リムにプロピル基以上の長い官能基を導入することにより、 容易にそのコンホメー ションを固定できる。 図1・3に示す4つのコンホメーション異性体は、 異なった金 属イオン選択性を示す。 一般的には、 全ての金属捕捉基が同一方向を向いた"cone"構 造を有する異性体は、 高いナトリウム親和性を示す[3・3,3-5]。 従って、 2章で検討し たカリックス[4]アレーンカルボ、ン酸誘導体ではナトリウム選択性を、 また、 カリツ クス[6]アレーンカjレボ、ン酸誘導体ではナトリウムとカリウム選択性を示すことが、
予想される。
ところで、 学術的な見地から、 金属イオンの抽出実験を行う際には、 金属イオン と水溶液中のアニオン種との安定度の影響について考慮しなければならない。 この ため、 通常、 水溶液中のイオン強度は一定に保つ必要がある。 一般的には、 抽出媒 体を決定し、 それに対応する酸とアルカリ金属塩を用いる。 従来の抽出剤を用いた 抽出であれば、 目的金属イオンとアルカリ金属イオンとの安定度の差は、 極めて大 きい。 このため、 共存するアルカリ金属イオンとの競争反応、 すなわち、 抽出の間 害は無視できる。 しかし、 上述のように、 カリックスアレーンはアルカリ金属イオ ンとの親和性が高い。 この意味で、 目的金属とアルカリ金属とを共存させた場合、
抽出阻害が無視できるかについては疑問である。 特に、 カルボ、キシル基を複数個有 するカリックスアレーン誘導体を、 抽出剤として用いた場合には、 アルカリ金属イ オン共存下における抽出挙動の予想は、 極めて困難である。 アルカリ金属イオンを 共存させることで、 カリックスアレーン誘導体の抽出性能や分離性能に異状が観察 されれば、 既存の抽出剤には見られない、 カリックスアレーンの特異的な挙動とし
-76-
て採り上げることができる。 そこで、 本章では、 2章で用いたカルボン酸系抽出剤 を用いて、 アルカリ金属イオンを添加した系における、 希土類の抽出分離挙動につ いて検討した。 また、 結果として、 カリツクス[4]アレーンカjレボン酸誘導体による、
ナトリウムイオン添加系における、 希土類の抽出挙動は特異的であることが明らか となった。 このため、 その挙動を解明するために、 カリツクス[4]アレーンカルボ、ン 酸誘導体による、 ナトリウムそのものの抽出についても検討した。 さらに、 特異的 な抽出機構をより詳細に検討するために、tOct[4 ]CH2COOHよりも長いアルキル鎖を、
ディスタル位に2本有する、 交差カjレボ、ン酸型のカリツクス[4]アレーン誘導体を合 成した。 この交差カjレボン酸型誘導体による、 銅イオンの抽出を行い、 抽出性能に 及ぼす、 スペーサー長さの影響についても議論した。
本研究で用いた抽出剤の構造を、 図3・1に示す。
、‘,,〆
A m C
β創 ・ぷ
J m
AWA
c k u n
B∞ pc +‘ぺi
h α
r皿、ハし
t
/tk tOct[4]CH2COOH
(cone conformation)
OCH2COOH tOct[6]CH2COOH tOct[1 ]CH2COOH
図3-1 抽出剤の構造
3. 2 実験操作
3. 2. 1 抽出剤の合成
抽出剤、tOct[6]CH2COOH、tOct[4]CH2COOH及びtoct[1]CH2COOHの合成は、 2章で 述べたとおりである。
交差カルボン酸型抽出剤は、 以前に報告された合成法[3-6]を参考にして、合成し た。 図3-2に、 交差カルボン酸型抽出剤の合成スキ)ムを示す。
B r(CH2bCOOEt ...
K2C03, acetone
tOCt[4]H tOct[2]BuEs・H
... KOH
THF, H20 BrCH2COOEt
NaH , THF
、I,fsn
E O
同批wm E・0 u u B O
Jia ハlv
fl‘ρしV
え n
AU∞ -冒‘〆'『fa、、
HCI
tOct[2] 8 u CA-AcCA
(cone coぱórmation)
図3-2 tOct[2]BuCA-AcCAの合成スキーム
-78-
25,27 -Bis( carbox ym eth oxy) -2 6,28-bis( carboxypropoxy) - 5,1 1,1 7,23 -tetra
kis( 1,1,3,3 -tetramethyl b凶yl)calix[4]areneの合成
25,2 7-Dihydroxy- 26,28-bis(ethoxycarbonylpropoxy)- 5,11 ,1 7,2 3-tetrakis(l,1,3, 3-tetra
methylbutyl) calix[4Jarene (tOct[2]BuEs-H)
窒素気流下、 乾燥アセトン750cm3にtoct[4]H15.15g(1 7.4mmol)、 炭酸ナトリウム 36.3 6g(3 43mmol)、 及びブロモ酪酸エチル54.10g(277mmol)を加え、 24時間還流した。
鴻過後、 溶媒を減圧留去した。 目的物をクロロホルムで抽出した後、 この有機層を 1M (= 1 mol dm-3、 以下同様に省略)塩酸と蒸留水で洗浄し、 無水硫酸マグネシウ ムで乾燥した。 液過後、 溶媒を減圧留去した。 得られた残溢をエタノールから再結
品し、 白色針状結晶15.4g(81%)を得たO
m p 175 oC; T LC ( シリカ ゲ ル , クロロホルム) Rf=0.40, IR (KBr) νc=o 1736 cm-1;
lH-NMR (270MHz, CDC13, TMS, 27 oC)δ0.19 (18H,s,C(CH3)3)' 0.75 (18H,s,C(CH3)3)' 1.10 (12H,s,C(CH3)2)' 1. 24 (6H,t,CH2ζ昆), 1.32 (12H,s,C(CH3)2)' 1.57 (4H,s,CCH2C),
1.70 (4H,s,CCH2C), 2.31 (4H,m,CH手旦2CH2)' 2.90 (4H,tζl:hCOO), 3.32 (4H,d,
ArCH2Ar(exo)), 4.03 (4H,t,乙l:hCH2CH2), 4.15 (4H,q,CH2CH3), 4.1 7 (4H,d,
ArCH2Ar(endo)), 6.83 (4H,s,ArH), 7.01 (4H,s,ArH), 7.81 (2H,s,OH).
25,2 7-Bis(ethoxycarbonylmethoxy)- 26,2 8-b is(ethoxycarbonylpropoxy)-5,11,1 7,2 3-tetra
k is(l, 1, 3, 3 -tetramethylb u tyl) cal ix[4 Jarene ( cone conformation )ぐOct[2]BuEs- AcEs)
窒 素 気流下、 乾 燥THF250cm3に、 水素化ナ ト リ ウ ム5.03g(鉱油中,含量 60%,131mmol) 、 tOct[2]BuEs-H7. 89g(7.12mmol) 、 及ぴブロ モ酢酸エチjレ 34. 2g(2 04mmol)を混合し、 16時間還流したo i慮過後、 溶媒を減圧留去した。 目的物 をクロロホルムで抽出 後、 この有機層を1M塩酸と蒸留水で、洗浄し、 無水硫酸マグネ シウムで乾燥した。 '(慮過後、 溶媒を減圧留去し、 黄色粘性液体を得た。 粗油状物を 熱エタノ」ルに溶解した後、 過剰量の過塩素酸ナトリウム(60g)を加え、 室温まで冷 却したo '(慮過後、 溶媒を減圧留去した。 得られた残溢をメタノールで洗浄し、 白色 粉末6.97g(77%)を得た。
m p 15 5 oC; T L C (シリカゲル, クロロホルム:メタノール=5:1 v/v) Rf=0.65, IR (KBr)消 失ピーク νO-H 3365 cm-1,νc=0 1736 cm l;lH-NMR (270MHz, CDC13,TMS, 27℃)6 0.45 (18H,s,C(CH3)3)' 0.55 (18H,s,C(CH3)3)' 1.25 (30H,s+t+s,C(CH3)2,OCH手lli and C(CH3)2)' 1.50 (14H,t+s+s,OCH2ζlL and CCH2C), 2.10 (4H,m,CH五l:hCHz), 2.40 (4H,t,
CHぷlLCOO), 3.40 (4H,d,ArCH2A巾>xo)), 4.00 (4H, t,豆lbCH2CH2)' 4.20 (4H,qζ見CH3),
4.30 (4H,d,ArCH2Ar(endo)), 4.60 (8H,q+s,O豆lLCH3 and OCH2CO),7.0 5 (4H,s,ArH), 7.10 (4 H,s,Ar H).
J・・h
25,2 7-Bis(carboxymethoxy)-26,2 8-bis(carboxypropoxy)-5,11,1 7,2 3-tetrakis(1,1,3,3- tetramethylbutyl)calix[4jarene (cone conformation) (tOct[ 2] B u CA -AcCA)
THF300cm3に、tOct[2]BuEs-AcEs9. 30g(7.3 Ommol)、 水酸化テトラメチルアンモニ ウム水溶液121g(含量12.5%、166mmol)と蒸留水141cm3を混合し、 36時間還流した。
冷却後、 溶液に6M塩酸50cm3とクロロホルムを加え、 2時間撹排した。 分液後、 無水 硫酸マグネシウムで乾燥し、 液過した。 残溢にクロロホルムを加えて、 目的物を抽 出した。 さらに、 この有機層を1M塩酸と蒸留水で洗浄し、 無水硫酸マグネシウムで 乾燥した。 (,慮過後、 溶媒を減圧留去した。 残盗をメタノールで洗浄し、 白色粉末 6.70g(80%)を千尋た。
mp (decomp) 332uC; TLC (シリカゲル, クロロホルム:メタノーjレ=5:1 v/v) Rf=0.57, IR (KBr) ν0・H2957 cm-l, νc=0 1743 cmhlH-NMR(270MHz, CDC13,TMS, 27℃)6 0.55 (18H,s,C(CH3)3)' 0.81 (18H,s,C(CH3)3)' 0.91 (12H,s,C(CH3)z), 1.39 (16H,s+s,C(CH3)z
and CCHよ), 1.75 (4H,s,CCHzC), 2.23 (4H,m,CHzζ旦zCHz), 2.55 (4H,t,CHz巳l:LCO), 3.25 (4H, d,ArCHzAr(exo)), 3.91 (4H,t,O主l:LCHzCHz), 4.45 (4H,d,ArCHzAr(endo)), 4.75 (4H,
s,OCHzCO), 6.62 (4H,s,ArH), 7.12 (4H,s,ArH); Found: C, 74.90; H, 9.40%. Calcd for CnH104012: C, 74.4 5; H, 9.03 %.
3. 2. 2 希土類金属イオンの抽出実験
有機相は、 カリックスアレーン誘導体で5mM、 モノマー誘導体で、20mMになるよ うに、 特級のクロロホルムで各抽出剤を溶解して調製した。 水相は、 異なる3種類 の塩化希土類金属を各々含んだ、 次の3種類の水溶液を調製した。 すなわち、 ①~
③に示すように、 軽希土類については、 ランタン、 プラセオジム、 及ぴネオジムを 各O.lmM含むO.lM硝酸溶液と、 ランタン、 プラセオジム、 及びネオジムを各O.lmM 含む、 O.lMのグリシンと水酸化アルカリ金属塩の混合溶液(pHは約5)を用いた。
(グリシンとアルカリ金属イオンの濃度の総和は、 O.lMである。 グリシンと水酸化 アルカリを含む混合溶液のpHは高いので、 溶液中に希土類の水酸化物塩が生じた場 合には、 ランタン、 プラセオジム、 及びネオジムを各O.lmM含むO.lM硝酸溶液を加 えて、 再溶解した。)pH調整は、 これら2種類の溶液を、 適宜、 混合して行った。
中 希土類についても同様に、 サマリウム、 ユーロピウム、 及びガドリニウムを各 O.lmìvI含む、 O.lM硝酸と、 サマリウム、 ユーロピウム、 及びガドリニウムを各O.lM のグリシンと水酸化アルカリ金属塩の混合溶液を用いた。 また、 両溶液を適宜に混 合して、 pHを調整した。 重希土類も同様に、 ホルミウム、 エルピウム、 及びイット リウムを各O.lmM含むO.lM硝酸硝酸と、 ホルミウム、 エルピウム、 及びイットリウ ムを各O.lmM含む、 O.lMのグリシンと水酸化アルカリ金属塩の混合溶液を用いた。
これらを適宜に混合して、 pHを調整した。
①ランタン、 プラセオジム、 ネオジムを各O.lmM含む2種類の溶液
-80-
O.lM硝酸-O.lMのグリシン溶液と水酸化アルカリ金属塩との混合溶液
②サマリウム、 ユーロピウム、 ガドリニウムを各O.lmM含む2種類の溶液 O.lM硝酸-O.lMグリシン溶液と水酸化アルカリ金属塩との混合溶液
③ホルミウム、 エjレピウム、 イットリウムを各O.lmM含む2種類の溶液 O.lM硝酸一O.lMグリシン溶液と水酸化アルカリ金属塩との混合溶液 (ただし、 グリシンとアルカリ金属イオンの濃度の総和は、 O.lMである。) 等量(1Ocm 3)の水相と有機相を混合し、 300Cで 7時間以上、 振渥恒温槽(Thomas AT-12)中で激しく振渥した。 この時間は、 平衡に達するのに十分であった。相分離 後、 水相のpHはpHメーター(Beckman � 45)により測定した。平衡前後の水相中の希 土類金属イオン濃度は、 ICP原子発光分光光度計(Seiko電子SPS1200VR)により測 定した。抽出された金属濃度は、 平衡前後の水相中の金属イオンの差から算出した。
3. 2. 3 アルカリ金属イオンの抽出実験
定性実験において、 有機相はtoct[4]CHzCOOHとtoct[l]CHzCOOHを、 それぞれ5mM と20mMになるように、 重クロロホルムに溶解して調製した。水溶液は、 各アルカリ 金属硝酸塩の初濃度がO.lMになるように、 重水に溶解して調製した。(希土類金属 イオンを含まない。)0.8cm3の有機相と0.5cm3の水相とを混合し、 300Cで16時間激 しく振渥した。相分離後、 有機相の抽出剤のlH-NMRを、toct[4]C HzCOOHの場合は50
℃で、tOct[l]CHzCOOHの場合は200Cで測定した(Jeol GX-270)o
定量実験で は、 水相はナトリウム濃度を O.lMに保つ ように、 O.lM のへペス (HEPES)7K溶液に硝酸ナトリウムを溶かして調製した。 ここで、 pfも緩衝剤のへペスは、
2-門一(2・ヒドロキシエチル)-1-ピベラジニルlエタンスルホン酸である。溶液のpHは、
濃硝酸を直接加えて調整した。有機相は濃度が5mMになるように、 抽出剤をクロロ ホルムに溶解して調製した。両相を5cm3ずつサンプル管瓶に加えて 300Cで振渥し た。相分離後、 水相pHをpHメーターにより測定した。有機相は1.4-ジオキサンで希 釈し、 有機相のナトリウム濃度は、 原子吸光分光光度計(Seiko電子SAS7500)により 直接定量した。また、 ナトリウムが完全に逆抽出されるように、 平衡後の有機相 1cm3と新たな1.2Mの塩酸溶液5cm3を、 テフロンコートサンプル管瓶に加えて混合し た。相分離後、 水相のナトリウム濃度を原子吸光分光光度計により測定した。
また、 抽出剤とナトリウムとの錯形成比についての知見を得るため、lH-NMRによ り、 ピークシフトを起こ した抽出剤の割合を調べた。有機相は1.6mMの各抽出斉Ijを 含む重クロロホルムを用いた。水相は、 O.lMの硝酸ナトリウムとO.lMのへペスを含 む混合水溶液に、 j農硝酸を加えてpH調整を行った。等量(lcm3)の水相と有機相を 混合し、 300Cで24時間、 恒温振還機で振濠した。相分離後の有機相中の抽出剤の積 分よじを、 lH-NMRにより定量した。水相のpHはpHメーターにより測定した。また、
toct[ 4]CHzCOOH及びtOct[l]CHzCOOHによるリチウム、 ナトリウム、 及びカリウムの 3種のアルカリ金属の取り込みについて、 同様に抽出剤のピークシフトにより判断 した。
3. 2. 4 銅イオンの抽出実験
ナトリウム添加、 及ぴ無制日系における銅イオンの抽出は、 以下のように行った。
有機相は、 1.6mMになるように各抽出剤を特級のクロロホルムに溶解して調製し た。 水相は、 2つの系で別々に調製した。 ナトリウム添加系の場合は、 O.lmMの硝 酸銅を含む溶液に、 O.lMになるように硝酸ナトリウムとへ ペスを両方加えて、 溶液 を調製した。 さらに、 この混合水溶液に少量の濃硝酸を加えて、 pHを調整した。 ナ トリウム無添加系の場合は、 O.lmMの硝酸銅を含むO.lMの硝酸水溶液と、 O.lmMの 硝酸銅を含むO.lMのへベス水溶液とを適宜に混合して、 pH調整した。 等量(10cm3) の水相と有機相を混合し、 300Cで24時間、 恒温振渥機中で振渥した。 相分離後の水 相のpH、 及び銅イオン濃度をそれぞ、れ、 pHßータ一、 及ぴ原子吸光分光光度計によ り定量した。
また、 ナトリウム錯化型抽出剤による銅イオンの抽出は、 以下のように行った。
有機相は1.6mMの各抽出斉IJを含むクロロホルム溶液を用いた。 水相はO.lMの硝酸ナ トリウムとO.lMのへベスを含む水溶液を用い、 ナトリウムが十分錯形成する所定の pHに調整した。 等量(1 Ocm 3)の水相と有機相を混合し、 300Cで24時間、 恒温振渥 機で振還した。 相分離後、 全ての抽出剤分子がナトリウムと錯形成した有機相と、
O.lmMの銅イオンを含む新たなへペス水溶液とを、 等量(lOcm3)づっ、 テフロンコー テイングサンプル管瓶に加えて混合した。 300Cで24時間、 恒温振渥機で振渥した。
相分離後、 水相中の銅、 及ぴナトリウムの濃度を原子吸光分光光度計により定量し、
pHをpHメーターにより定量した。
3. 3 結果
3. 3. 1 アルカリ金属添加系における希土類金属イオンの抽出
希土類金属イオンの分配に及ぼすpHの影響について、 典型的例を示す。 図3・3(a) は、tOct[6]CH2COOHによる、 リチウムイオン存在下における結果である。 また、 図 3・3(b)は、tOct[4]CH2COOHによる、 ナトリウムイオン存在下における結果である。
図3-3(a)のプロットは、 全てほぼ3の直線上に乗っている。 これに対し、 図3 - 3 (b) では、 プロットの傾きは、 ほぼlである。 他の抽出系については、 図3-3(a)と同様、
分配比の対数とpHのプロットに対し、 傾き3の直線関係であった。 2章でも述べた ように、 カチオン交換機構に基づく3価の希土類の抽出では、 pH依存性は3になる はずである。 実際、tOct[4]CH2COOHの場合でも、 アルカリ金属イオン無添加の抽出 系においては、 3次のpH依存性が観察された。 つまり、 上述のカチオン交換機構に 従うことを意味する。 この意味で、 図3 - 3 (b)で示した系は、 特異的な抽出系である と考えられるo pH依存性の傾きが金属の電荷と一致しない、 このような抽出挙動が 見られる理由として、 次の可能性が挙げられる。
1 . 希土類が、 水相中のアニオン種を同伴し、 正味の正電荷が部分的に中和され て抽出される。
2. 希土類が、 水相中のグリシンと錯体を形成し、 抽出が阻害される。
-82-
100
10ト
Q 1ト
0.1ト
2
図3-3 (a)
100
10ト
Q 1 �
0.1 1-
0.01 1
図3-3(b)
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2.5
3
3.5 A YpH
アルカリ金属イオン添加系におけるpH依存性の典型例 ( tOct[6]CH2COOHによるリチウム共存系での抽出)
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アルカリ金属イオン添加系におけるpH依存性の典型例 ( tOct[4]CH2COOHによるナトリウム共存系での抽出)
3. 希土類を抽出する際に、 抽出剤がアルカリ金属イオン を共抽出し、 何らかの 影響を受ける。
ここで、 希土類金属イオンは、 硝酸アニオンとはほとんど錯形成しないことが知ら れている[3-7]ので、 1 . の理由は否定できる。また、 両性イオンとして存在するグ リシンは、 本実験条件下では、 金属カチオンと錯形成しないと考えられるので、 2.
も否定できる。 3. に関しては、 先述のように、 カリツクス[4]アレーン誘導体は、
ナトリウムとの親和性が高いことが知られている。従って、 ナトリウムとの錯形成 のために、 希土類の抽出が、 何らかの影響を受けたと考えることができる。以上の ことから、 3つの理由のうち、 3番目のアルカリ金属イオンとの錯形成により影響 されるという理由が、 最も信光景性があるように思われる。
続いて、 アルカリ金属イオン添加系における、 各カルボ、ン酸系抽出剤による、 3 価の希土類金属イオンの抽出分離性能の評価を行った。希土類に対する抽出選択性 は、 半抽出pH、 pH1/Z�こよって評価した。半抽出pH は、 本実験条件下において、 50%
の抽出が達成されたときのpHで、ある。 3種の各アルカリ金属イオンを添加した系と、
アルカリ金属イオン無添加の系における、 希土類抽出の半抽出pHと希土類のイオン 径(6配位として)の逆数との関係を、 図3-4(a)ー(d)に示す。(図3・4(d)は、 図2-7 より抜粋した。)これらの図においても、 縦軸の半抽出pHは抽出能力を示すように、
小さな値を上部に取った。この意味で、 図のプロットは上部に位置するほど、 その 希土類に対して親和性が高く、 抽出性能が高い。
全てのプロットは、 ある希土類に極大値を持つ、 上に凸の曲線上に乗っている。
アルカリ金属イオン無添加系において、tOct[6]CHzCOOHによるpHν2の極大値はプラ セオジムにあり、 リチウムやナトリウム添加系でも、 同様にプラセオジムにある。
これに対し、 カリウム添加系では、 極大値はイオン径のより小さなサマリウムにシ フ ト し た。ア ルカリ 金 属 イ オ ン 無 添 加 系 に お い て は 、 tOct[6]CHzCOOH と toct[ 4]CHzCOOHは抽出性能に差がある。しかしながら、 両者の希土類に対する選択 序列の傾向は同じである。つまり、toct[4]CHzCOOHのpHlIZの極大値もまた、 プラセ オジムにある。リチウム、 カリウム添加系でも同様に、tOct[4]CH2COOHの抽出極大 値はプラセオジムにある。これに対し、 ナトリウム添加系では、 イオン径のより小 さなガドリニウ ムに著しくシ フトする。特に、 ナトリウム添加系において、
tOct[4]CH2COOHによる抽出選択性のシフトは、 全ての系の中で、 最も顕著であった。
また、 抽出性能は、 pH1/Zイ直の比較により評価できる。ナトリウムイオン添加系に おけるtoct[4 ]CHzCOOH を用いた系では、 他の系と比較して、 抽出性能に関しでも、
劇的に向上することが明らかとなった。アルカリ金属イオンなどの共存イオンは、
目的金属イオンと競争反応を起こすため、 通常、 抽出 を阻害することはあっても、
向上させることはない。この点から、tOct[4]CHzCOOHによる希土類金属イオンの抽 出に関して、 ナトリウムイオンの何らかの関与が示唆される。この系において、 希 土類、の選択性や抽出性能に顕著な変化が起こる理由は、 後述の結果と関連して述べ る。
-84-
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図3-4 アルカリ金属共存、 及び非共存系における希土類抽出の 半抽出pHと希土類金属イオン径の逆数の関係(1)
(a)リチウム共存系、(b)ナトリウム共存系、
(c)カリウム共存系、(d)アルカリ金属非共存系
2
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図3-4 アルカリ金属共存、 及び非共存系における希土類抽出の 半抽出pHと希土類金属イオン径の逆数の関係(2)
(a)リチウム共存系、(b)ナトリウム共存系、
(c)カリウム共存系、(d)アルカリ金属非共存系
-86・
3. 3. 2 アルカリ金属イオンの抽出
3. 3. 1において、toct[4]C HzCOOHによる希土類金属イオンの抽出の際に、 ナ トリウムイオンの関与が示唆された。 そこで、 本項では抽出剤とアルカリ金属イオ ンとの相互作用について検討した。
先ず\定性実験として、 カルボン酸系抽出剤とアルカリ金属イオンとの親和性を 確認するために、lH-NMRによる検討を行った。tOct[4]CHzCOOHの重クロロホルム溶 液と、 3種の各アルカリ金属イオンを含む水相とを接触させた後の、 有機相の
lH-NMRスベクトjレを、 図3-5に示す。 リチウムやカリウム添加系のピークについて は、 抽出剤自身のピークとほぼ同じであり、 明確なピークシフトは観察きれなかっ た。 一方、 ナトリウム糊日系においては、tOct[4]CHzCOOHの全てのピークに関して、
顕著なピークシフトが観察された。 これらのピークシフトは、 ナトリウムとの錯形 成による抽出剤の構造変化に伴った、 ベンゼン環の環電流の影響 によって説明され る[3-8]0 これらの結果から、toct[4]CHzCOOHはナトリウムと錯形成し、 リチウムや カリウムイオンとはほとんど錯形成しないことが示唆された。 従って、 カルボ、ン酸 誘導体に関しでも、 他の誘導体と同様に、 カリックス[4]アレーン誘導体はナトリウ ムイオンと高い親和性を示すことが明らかとなった。
また、tOct[l]CHzCOOHのlH-NMRスベクトルでは、 全ての系においてピークシフト が観察されなかった。 このため、toct[1 ]CHzCOOHとアルカリイオンの錯形成反応は 起こっていないか、 いわゆる通常のイオン交換反応では、 ピークシフトが生じない ことが示唆された。 また、COct[6]CHzCOOHは、 可one"構造に固定されていない柔軟な 構造を有する。 このために、 重クロロホルム中の500Cの測定条件では、 詳細な考察 が可能となるような、 明瞭なスベクトル変化は観察されなかった。 しかし、 観察さ れた複雑なスペクトル変化から判断すると、 ナトリウムやカリウムイオンの添加系 では、 錯形成が起こっているように思われる。
定性実験により、toct[4]CHzCOOHがナトリウムに対して、 高い相互作用を示すこ とが明らかとなったので、 定量的な実験についても検討を行った。 図3・6に、 抽出 されたナトリウムイオンの濃度に及ぼす、 pHの影響を示すO 本実験条件下において、
ナトリウムイオンは、 l付 近という極めて低いpHから抽出されることが分かつた。
カリックス[4]アレーン化合物とナトリウムとの強い相互作用に加え、 イオン交換性 の強いカルボキシル基を導入したために、 このような低いpHで、抽出で、きると考えら れる。 また、 ナトリウムの抽出量は、 pH 2程度においてlOmMに達する。 その後は いったん一定値となり、 pH7付近で、 再び新たな抽出が起こることが明らかとなった。
ここで、 一定値となったlOmMという濃度は、 抽出剤濃度のちょうど2倍にあたるこ とは興味深い。
図3-7に、 ナトリウムイオンの充填率に 及ぼすpHの影響を示す。 oは、 有機相を 直接測定したデータである。この値は、 図3・6から算出した。 また、 Aは、 充填し たナトリウムを、 塩酸水溶液により逆抽出して得られたデータである。 両プロット は良好な一致を示しており、 抽出されたナトリウムの量は、 逆抽出された量と一致
している。 これは、toct[4]CH2COOHによって抽出されたナトリウムが、 1.2Mの塩酸 で完全に逆抽出されることを示すと同時に、 これらの結果に再現性があり、 信頼で きるデータであることを示している。 また、 ナトリウムの充填率は、 一定値を示す 領域において200%となっている。 (これは、 上述のように、 抽出剤の2倍のナトリ ウムが抽出されていることを意味する。)
充填率が、 100%で一定とならずに、 200%に到達してから一定になるという事実 は、 次式のように、 lつの抽出剤分子が 2個のナトリウムイオンを、 同時に抽出す ることを示唆している。
RH4 + 2Na+ごRH2Na2 + 2H+ : Kex (3-1)
ここで、 RH4は抽出剤、toct[ 4]CH2COOHを、 上線は有機相の化学種であることを示す。
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図3・5 アルカリ金属イオン共存系における tOct[4]CH2COOHのlH-NMRスベクトル
(a)抽出剤自身のピーク、(b)リチウム共存系、
(c)ナトリウム共存系、(d)カリウム共存系 [M+]=O.l M, [tOct[4]CH2COOH]=S mM.
相比: 1:1 (cm3:cm3) (水相:有機相)
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抽出されたナトリウム濃度に及ぼすpHの影響 (正抽出において直接有機相を測定)
図3-6
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ナトリウムイオン充填率に及ぼすpHの影響
o : ;有機相を直接測定、 ....:逆抽出後、 水相を測定 図3-7
この化学量論関係は、 次の関係を与えるO
Kex = [RH2Na2] [H+]2 / ( [RH4] [Nど]2) (3-2)
1 : 2の化学量論関係(配位子:金属比)をさらに確かめるために、 pHが4から 5の領域において、 ナトリウム濃度を変化させて抽出実験を行った。 図3-8に、 ナ トリウム濃度依存性の結果を示す。(3-2)式から予想されるように、 プロットは傾き
2の直線上に乗っている。 従って、 lつの抽出剤分子が、 2個のナトリウムイオン を同時に抽出していることが明らかとなった。
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tOct[4]CH2COOHによるナトリウムイオン 抽出におけるナトリウム濃度依存性
[tOct[4]CH2COOH]=1 mM, pH=4.58 - 5.19.
図3-8
また、 図3-9(a)と(b)に、toct[4]CH2COOHによるアルカリ金属の単独系と混合系に おける、 充填率に及ぼすpHの影響を示す。 単独系の抽出では、 ナトリウムの抽出の みが低pH領域から起こる。 また、 リチウムやカリウムは、 それぞ、れpH3.5と3.0から 抽出され始める。 これに対し、 混合系の場合には、 少し挙動が異なる。 ナトリウム の抽出は、 単独系と同様に、 低いpHで起こり、 リチウムやセシウムはほとんど抽出 されない。 しかし、 カリウムイオンの挙動は、 極めて興味深い。 すなわち、 カリウ ムは、 抽出率は低いが、 pH1.4付近で、既に抽出が起こる。これは、 単独系では抽出さ れなかったカリウムが、 何らかの作用により抽出が促進されたことを意味する。 ま た、 ナトリウムとカリウムの抽出率の和は、 ほぼ2 00%である。 すなわち、 カリウム イオンが抽出された分、 ナトリウムの抽出は低下する。
カリックス[4]アレ)ン誘導体がナトリウムイオンと強い相互作用を示すことは、
-90-
先に述べたとおりである。 しかし、 カリックス[4]アレーンの錯形成部位の大きさか ら判断して、 2個のナトリウムと強い相互作用を維持することは考えにくい。 すな わち、 l個のナトリウムとは強い相互作用を持ち、 2個目のナトリウムとはl個自 のナトリウムよりは弱い相互作用しか示さないのではないかと考えられる。
この抽出機構を明らかにするために、lH-NMRを用いて、 さらに詳細に検討した。
すなわち、 抽出剤がナトリウムイオンを取り込んで構造変化を起こせば、 それに伴 いピークシフトが観察されるはずで、ある。 図3 -1 0に、 ナトリウムイオン存在下にお ける、 抽出剤芳香族プロトンの、lH-NMRスペクトルのピークシフト変化に及ぼすpH の影響を示すo pHが低い場合には抽出が起こらないので、 芳香族ピークは抽出剤自 身のピークと同じ、 6.9ppmに存在する。 しかし、 pHが高くなるにつれて抽出が起こ るため、 ピークシフトが観察されるo pH1.36では、 6.9ppmと7.1ppmの2カ所にピー クが現れる。lH-NMRの測定条件である500Cでは、lH-NMRの測定(スキャン)時間 よりも、 抽出剤分子の動きが十分遅いため、 抽出剤自身のピークと錯形成したピー クが、 別々に観察される。 さらにpHを高くすると、 完全なピークシフトが起こり、
7.1ppmのみのピークとなる。 しかし、 これ以上pHを高くしても、 それ以上のピーク の移動は観察されなかった。
toct[ 4]CH2COOHは2個のナトリウムイオンと錯形成するにもかかわらず、 ピーク シフトはl段階しか観察されなかった。 この意味で、 抽出剤の構造を変化させるよ うな錯形成は、 l度しか起こらないと考えられる。 先に述べたように、 カリックス [4]アレーンのサイズから判断すると、 2個のナトリウムが強い相互作用を示すよう な錯形成が起こることは考えにくい。 また、 強い相互作用を示すl個のナトリウム イオンと、 他方のナトリウムとの交換速度は極めて遅いと考えられる。
さらに、 ピークシフトを起こしたピークの位置は、 p-t-ブチルカリツクス[4]アレー ンテトラエステル誘導体と、 ナトリウムイオンとの錯形成で観察されたシフト位置 [3-8]と同じである。 Arduiniらは、lH-NMRによる配位子のピークシフトと、 X線によ る構造解析の両方について検討を行った。 その結果、 ナトリウムイオンは、 カリツ クス[4]アレーン誘導体の錯形成部位の中央内側(以下、 環の内側という表現を用い る。)、 つまり4個のフエノキシ酸素と4個のカルボ、ニル酸素によって、 静電相互 作用していることを明らかとした[3-8a]。 本研究についても、 この考察は参考にでき る。 抽出される2個のナトリウムのうち、 少なくともl個のナトリウムは、 4個の フエノキシ酸素と4個のカルボ、キシル酸素によって、 静電相互作用をしていると考 えられる。 ただし、 カルボキシル基のうちのl個は、 プロトンとのイオン交換のた めに用いられ、 残り3個は中性のカルボ、キシル酸素であると恩われる。
そこで、 ピークシフトの変化量を、 ナトリウムの充填率と関連づけるために、 図 3 -11をプロットした。 図3-11は、 抽出剤のピークシフト率とナトリウムの充填率 に及ぼす、 pHの影響を示す。 Oは、 抽出剤のピークシフト率である。 この値は、 芳 香族プロトンの全ピークの積分値と、 シフトしたピークの積分値との比から算出し たo .は、 ナトリウムの充填率である。ナトリウムの充填率は、ナトリウムの逆抽
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図3-9 単独系及ぴ混合系におけるアルカリ金属イオン充填率に 及ぼすpHの影響 (a)単独系、(b)混合系
[tOct[4]CH2COOH]=5 mM, [M+]=O.l M.
-92・
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図3-10 ナトリウムイオン存在下におけるtOct[4]CH2COOHの 芳香族プロトンのlH-NMRスベクトルのピーク
シフト変化に及ぼすpHの影響 [M+]=O.lM, [tOct[4]CH2COOH]=5 mM,
相比: 1:1 (cm3:cm3) (水相:有機相)
出から得られた。 ピ」クシフトした抽出剤の割合は、 ナトリウムの充填率と同様に、
pHがl付近から増加し、 一定値に近づく。 しかし、 この一定値は、 充填率の一定値 とは一致せず、 その半分の 100%である。 つまり、 抽出される2個のナトリウムイオ ンはそれぞれ、 抽出される様式が異なっていると考えられる。 すなわち、 l個のナ トリウムはピークシフトを起こすので、 錯形成によって構造変化を起こすように、
4個のフエノキシ酸素と4個のカルボ、キシル酸素によって取り固まれ、 静電相互作 用する。 一方、 2個目のナトリウムはピークシフトを起こさないので、 抽出剤が構 造変化しないように、 カリツクスアレーンの環構造の外側で抽出されると考えられ る。 つまり、 残りの3つのカルボキシル基のうちのl個と、 単にイオン交換してい ると考えられる。
また、 ここで、 全てのプロットについて着目するo pHがlから2の、 プロットの 立ち上がり部分の領域に関しでも、 ピークシフト率の値は全て、 ナトリウムの充填 率の値の半分になっている。 これは、 l個自のナトリウムが環の内側に充填される と同時に、 2個自のナトリウムが環の外側に充填されることを、 意味している。 も し、 次のように仮定すると、 実験結果に矛盾が生じる。 すなわち、 i番目のナトリ ウムが全て、 環の内側に充填された後、 引き続いて、 2番目のナトリウムが、 環の 外側に充填される場合である。 この場合、 シフト率と充填率の両プロットは、 100%
まで一致し、 その後、 充填率は200%で一定、 シフト率はそのまま100%で一定とな るはずである。 この意味で、 全てのpH領域で、 シフト率が充填率の半分になってい る事実は、 I 1個目と2個目のナトリウムの抽出が、 段階的に進行するのではなく、
ほぼ同時に起こる。」という、 極めて重要な証拠である。 ナトリウム充填率の立ち 上がり領域(0'"'-'200%)のプロットは、 2段階ではなく、 l段階で(変曲点なしに) 200%にまで達しているので 、 この説明をより正当化していると考えられるo
Montavonらは、 p-t-ブチルカリックス[4]アレーンテトラカルボ、ン酸による2個のナト リウムの抽出モデルを示唆した[3-9]。 しかし、 本研究では、 抽出剤とナトリウムの 1 : 2錯体の生成モデ ルを、 実験的に証明で き たと思われ る 。 図3・12に 、 tOct[4]CHzCOOHによるナトリウムの抽出のモデル図を示す。 図3-5に示した、 希土類 とナトリウムとの『共抽出の概念Jに従えば、 この挙動は、 [ナトリウムの自己共
抽出jであると考えることができる。
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図3-11 抽出剤のピークシフト率とナトリウムの 充填率に及ぼすpHの影響
0:抽出剤のピークシフト率、
・:ナトリウムの充填率
では、 何故、 共抽出が起こるのであろうか?上述のように、toct[4]CHzCOOHはナ トリウムとの親和性が高いため、 l個目のナトリウムは環の内側に取り込まれる。
この際、 1個目のナトリウムの取り込みは、 2個自のナトリウムの抽出を促進する ことが予想される。 これには、 次の2つの理由が考えられる。
①錯形成の際に、 カルボニル酸素からナトリウムカチオンへの、 電子の流れ込み が起こり、 2番目のカルボ、キシル基の酸解離が 促進される。
②toct[ 4]CHzCOOHは、 分子内水素結合により安定化している。 しかし、 l個目の ナトリウムとの錯形成により、 水素結合は開裂する。 結果として、 2個目のナ トリウムの抽出は促進される。
-94-
pKa2の低下
図3-12 tOct[4]CH2COOHによるナトリウムイオンの抽出モデル (ナトリウムイオンの自己共抽出)
このように、 『ナトリウムの自己共抽出jが起こっていると考えれば、 これまで の様々な抽出挙動は首尾よく説明できる。 すなわち、 2個目のナトリウムイオンの 錯形成は、lH-NMRによる抽出剤のピークシフトが観察されなかったため、 抽出剤の 環の外側で起こっていると考えられる。 これは、tOct[4]CH2COOHのカルボ、キシル基 のうちのlつが、 ナトリウムイオンと、 単にイオン交換して抽出されることを意味 する。 この意味で、 2個目のナトリウムの取り込みは、 一般的なカルボン酸系抽出 剤によるナトリウムの抽出と同様である。 一般のカルボン酸系抽出剤は、 ナトリウ ムイオンを含め、 アルカリ金属イオンとの安定度が低い。 このため、 通常は、 その 抽出剤のpka付近で、しか抽出は起こらない。 しかし、 本結果において、 2個目のナト リウムの抽出は、 l個目のナトリウムが取り込まれてから即座に起こる。 これは、
ナトリウムを含まない遊離の抽出剤が、 l個のナトリウムイオンと錯形成すること によって、 著しく高い抽出性能を新たに発現することを意味している。多価の金属 イオンとカルボン酸系抽出剤との安定度は、 アルカリ金属との安定度よりもかなり 大きい。 従って、 安定度の低い2個目のナトリウムイオンと、 安定度の高い金属イ オンとが交換しでも、 矛盾はない。 以上の考察から、 ナトリウムイオンを共存して、
希土類金属を抽出した際に、 l個のナトリウムイオンと希土類金属イオンが共抽出 されると考えられる。 また、 l個のナトリウムイオンの取り込みによって、 抽出性 能は著しく向上する。 このため、 希土類に対する抽出は向上したと考えられる。 こ の意味で、 『ナトリウムの自己共抽出Jの結果は、 3. 3. 1のような、 ナトリウ ムと希土類金属の共抽出をも強く支持している。 ナトリウムイオンと希土類金属イ オンとの共抽出の概念図を、 図3-13に示す。
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柔軟
大きな(軽)希土類 イオンに対する選択性
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"事前組織化" 及び
小さな(重)希土類 イオンに対する選択性
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図3-13 ナトリウム共存系における希土類の抽出モデル
また、 アルカリ金属イオン混合系における抽出についても、 『ナトリウムとの共 抽出jの理論をもとにすれば、 次のように考えることができる。 すなわち、 l個目 のナトリウムの取り込みによって2個自のイオンの抽出が促進される。 この結果、
単独系で低いpH領域では抽出されなかうたカリウムが、 わずかではあるが共抽出さ れるようになった。 つまり、 2個目のイオンとして共抽出されるのは、 4つのアル カリ金属イオンのうち、 最も脱水和されやすいセシウムではなく、 ナトリウムと少 量のカリウムである。 これは、 共抽出される2個自のイオンが、toct[4]CH2COOHの 環の外側で抽出されるにもかかわらず、 ある程度イオン認識されていることを意味 する。
-96・
ところで、共抽出挙動は明らかとなってきたが、抽出される2個の金属イオン間 で、立体的な反発は起こ らないのであろうか? tOct[4]CH2COOHはフエノキシ酸素と カルボキシル基聞の距離が短く、 共抽出には不利に作用すると考えられる。 そこで、
同じカリックス[4]アレーンカルボン酸誘導体で、隣接したカルボ、キシル基のスペー サ一部分の長さが異なった、tOct[2]BuCA-AcCAについても同様に検討した。
まず、 アルカリ金属イオンの抽出について調べた。
tOct[4]CH2COOHの場合と同様に、定性実験としてlH-NMRによる検討を行った。 図 3・14は、tOct[2]BuCA- AcCAの重クロロホルム溶液と、各アルカリ金属イオンを含む
水相と を接触させた後の 、 重 ク ロ ロ ホ ル ム相のlH-NMR スペクト ルを示す。
tOct[2]BuCA-AcCAについても、toct[4]CH2COOHと同様の挙動が観察された。 すなわ ち、リチウムやカリウムを含む系のピークは、抽出剤自身のピークとほぼ同じ位置 に現れた。 つまり、明白なピークシフトは観察されなかった。 一方、ナトリウム添 加系においては、tOct[2]BuCA-AcCAの全てのピークに関して、ピークシフトが観察 された。 このピークシフトも、ナトリウムとの錯形成 による構造変化によって説明 される[3-8]。 これらの結果から、tOct[2]BuCA-AcCAもナトリウムイオンと錯形成し、
リチウムやカリウムイオンとはほとんど錯形成しないことが明らかとなった。 すな わち、tOct[2]BuCA-AcCAについても、カリックス[4]アレーンとしての、高いナトリ ウムイオン選択性を保持していることが分かつた。 また、抽出剤自身のスペクトル では、tOct[2]BuCA-AcCAはほとんど2組のピ)クを示した。 これは、スペーサー長 がディスタル位で同一で、交互に異なる、C2対称分子で、あるためと考えられる。 こ れに関連して、図3 -15を示す。
図3-15は、ナトリウムとの錯形成に伴う、tOct[2]BuCA-AcCAの構造模式図である。
上の2つは、抽出剤分子を真横から見た図である。 一番上の図は酢酸基に、真ん中 の図は酪酸基に着目しているo tOct[2]BuCA-AcCAがC2対称分子であることは、 この 図からより明らかである。 4つのカルボ、キシル基は全て、カリックス[4]アレーン誘 導体の環のローワーリム側に位置する。 このうち、スベーサー長が長い酪酸基では、
向かい合ったカルボキシル基が、互いに水素結合を形成 できるほど十分近づいてい る。 このため、ベンゼ、ン環やp-位のオクチル基は、互いに離れた位置にある。 これ に対して、スベ ーサー長が短い酢酸基では、互いのカルボキシル基の長さが十分で ないため、水素結合を形成できない。 このため、ベンゼン環やpイ立のオクチル基は、
酪酸基を有するフェノール単位のオクチル基ほど、離れた位置にはない。 従って、
分子全体では、酪酸基部分がより環の内側に倒れ込み、酢酸基部分が環に対してよ り垂直で、あると考えられる。 結果として、図3-14に示されるように、オリジナルの スペクトルではtOct[2]BuCA-AcCAは、ほとんど2組のピークとなる。 例えば、芳香 族プロトンについては、酢酸基を有するフェノ」ル単位のプロトンのピークの方 (6.62ppm)が、酪酸基(7.12ppm)よりも、高磁場側に現れる。
しかし、ナトリウムと錯形成すると、2組あったピークは互いに近づく。 これは、
酢酸基と酪酸基とが、より似た環境になったことを意味する。 芳香族プロトンのピー
fは、 酢酸基と酪酸基のついたもので、 それぞれ低磁場(7∞ppm)と高磁場(7.07ppm) ぷ、 シフトしている。 特に、酢酸基側のシフトは著しい。 これは、 酢酸基が互いに 環の内側に倒れ込み、 一方、 酪酸基は互いに僅かに離れることを意味する。酢酸基 ふと 酪酸 基の構成単位のうち 、 酢 酸基を有す る構成単位のピークシフトは 、lOct[ 4]CHzCOOHのピークシフトと似た挙動を示す。 これは2組のピ」クのうち、
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図3-14 アルカリ金属イオン共存系における tOct[21BuCA�AcCAのlH-NMRスペクトル (a)抽出剤自身のピーク、(b)リチウム共存系、
(c)ナトリウム共存系、(d)カリウム共存系 [M+]=O.l M, [tOct[2]BuCA�AcCA]=5 mM.
相比: 1:1 (cm3:cm3) (水相:有機相)•
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ベンゼン環及びt-オクチル基は、 酢酸基を有するものの方がより近づ いており、 ナトリウムと錯形成することにより、 より離れる。
向かい合った酪酸基
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ベンゼ、ン環及びt-オクチル基は、 酪酸基を有するものの方がより 離れており、 ナトリウムと錯形成することにより、 より近づく。
分子全体としては酢酸基が分子に対してより垂直に、 酪酸基がより 水平に広がった楕円をしている。 ナトリウムと錯形成することによ り両者はより構造的に近づき、 分子に対しでほぼ同様の傾きを取り 円になる。
くコ
+ Na+ )IIIÞO--図3-15 tOct[2]BuCA-AcCAのナトリウムとの錯形成に伴う構造模式図
どちらが酢酸基を 有する構成単位であるかの指標となる。 また、 分子全体の構造変 化は、 図3・15の一番下の図が参照できる。 これは、 分子をローワーリムの方から見 た模式図である。 錯形成前は、 酪酸と酢酸を含む構成単位は対称でないため、 楕円 形である。 しかし、 ナトリウムと錯形成すると、 両者の環境が近づくために対称形 に形を変え、 ほぼ円形となる。 また、 金属捕捉基である酪酸基と酢酸基に着目する。
配位子として、 両者のpKaは、 酢酸が4.56、 酪酸が4.6 3である[3・10]0 つまり、 pK匁は 酢酸の方が僅かに低い。 このため、 環の内側に取 り込まれるナトリウムと プロ
ド
ンの交換をするのは、 酢酸基の方であると考えられる。
次に、 両抽出剤のナトリウムイオンとの親和性の程度を比較するために、lH-NMR による検討を行った。 各抽出剤の、 ピークシフト変化 に及ぼすpHの影響を、 図3-16 に示す。 この結果、 ナトリウムの取り込みは、 それぞれtOct[2]BuCA-AcCAで、pHが3.0、
toct[ 4 ]CHzCOOHで、pHがl.7の時に、 100%に達することが明らかとなった。 両抽出剤 を比 較 す る と、 酢酸型抽 出斉Ijのtoct[4 ]CHzCOOH の方 が、 交差カ ルボ、ン酸型の tOct[2]BuCA-AcCAよりも、 低いpHで、抽出する。 これは、 toct[4]CHzCOOHの方が、
tOct[2]BuCA-AcCAよりも抽出能力が高いことを意味する。 この能力の差異は、 カル ボキシjレ基の酸解離定数、 フエノキシ酸素の静電的相互作用の大きさ、 及ぴ両抽出 剤の立体配座の違いなどに起因すると考えられる。
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3
4
図3-16 ナトリウムと錯形成した抽出剤の割合に及ぼすpHの影響 [t由出剤]=l.6mM, [Na+]=O.lM,
相比: 3 (cm3):3 (cm3) (水相:有機相)•
-100・
また、蛇足ではあるが、tOct[2]BuCA-AcCAの低錯形成能は、前駆体のエステル誘 導体の合成でも示唆された。tOct[4]CH2COOHの前駆体で、ある、toct[4]C H2COOEtの合 成の際には、より塩基性の弱い炭酸塩を用いても、十分エステル化できた。これに 対し、tOct[2]BuCA-AcCAの前駆体、tOct[2]B uEs-AcEsの合成においては、炭酸塩を用 いると、酪酸エステjレ化は2置換までしか進行しなかった。さらに、酢酸基2個を 導入するためには、弱塩基では進行しなかったため、より強い水素化物を用いなけ ればならなかった。この事実は、ナトリウムイオンとの錯形成の弱さを、反映して いると考えられる。
3. 3. 3 ナトリウム添加系における銅イオンの抽出
スベーサ一部分の異なるカリックス[4]アレーンカルボ、ン酸誘導体は、どちらもナ トリウムイオンに対して親和性を示すことが分かった。また、tOct[4]CH2COOHは、
ナトリウム共存下で、他の金属イオンとの共抽出挙動を示すことも明らかとなった。
しかし、tOct[2]BuCA-AcCAについては、ナトリウム共存下で共抽出挙動を示すのか、
明らかとされていない。また、共抽出挙動を示しでも、前述のように、共抽出挙動 に及ぼすスペーサー長の影響を明らかにするためには、両抽出剤の比較をする必要 がある。そこで、2つの抽出剤を用いて、ナトリウムイオン非共存下、及び共存下 における、銅イオンの抽出について検討した。先ず、ナトリウムイオン非共存下で の結果である。両抽出剤 による、銅イオンの分配比に及ぼすpHの影響を、図 3-17(a)に示す。両プロットとも、傾きが2の直線上に乗っている。これは、2価の
銅イオンが、2個のプロトンとの陽イオン交換により、抽出されたことを示してい る。また、両プロットは、ほぼ同一線上にある。このため、両抽出剤の銅イオンに 対する抽出能力は、ほとんど同程度である。 この意味で、両抽出剤とも、銅イオン とプロトンを交換する2つのイオン交換基は、酢酸 基であると考えられる。(酢酸 基のpKaが酪酸基よりも低いのは、上述のとおりである。tOct[2]BuCA-AcCAのうち、
銅イオンの残りの配座を満たすのは、酪酸基である。)
次に、ナトリウムイオン共存下での結果について考察する。両抽出剤による、銅 イオンの分配比に及ぼすpHの影響を、図3-17(b)に示す。ナトリウム共存下でも、
両プロットは、傾き2の直線上に乗ってい る。図3-16から、両抽出剤とも、銅イオ ンを抽出するpH領域(toct[4]CH2COOHで、は2.0以上、tOct[2]BuCA-AcCAで、は3.0以上 ) において、ナトリウムイオンと完全に錯形成しているeOct[4]CH2COOHではl.7、
tOct[2]BuCA-AcCAで、は3.0)ことは明らかである。また、ナトリウムイオン共存系で は、両抽出剤によ る銅イオンの抽出領 域は、ナトリウム非共存の場合よりも著しく 低くなることカサかったO その抽出領域のpH差は、それぞ、れl.5 (tOct[ 2]B uCA -AcCA)、
及び0.5 COct[4]CH2COOH )である。
通常の抽出では、ナトリウムなどの共存アルカリ金属イオンは、競争反応のため に目的金属の抽出を阻害する。しかし、本抽出剤は、これに反して抽出の向上が観 察された。この意味で、ナトリウムイオンの存在は、銅イオンの抽出を高めるため
100
10
Q 1
0.1
0.01
2
100
10
Q 1
0.1
0.01 1
(a)
• tOct[2] BuCA-AcCA
slope 2
3 4
pH
5
。 toct[ 4 ]CH2COOH
向、
6
• tOct[2]BuCんAcCA
slope 2
2 3
pH
4
。 tOct[4]CH2COOH
5
図3・17 ナトリウム非共存、 及び共存下における銅イオン抽出のpH依存性 (a)ナトリウム非共存系、(b)ナトリウム共存系 ([Na+]=O.l mM)
-102-
に、 何らかの作用をしていることは明らかである。 既に、tOct[4]CH2COOHについて は、ナトリウムイオンと他金属イオンとの共抽出が示された。 これまでの経緯から、
tOct[2]BuCA-AcCAがtOct[4]CH2COOHと類似の抽出挙動を示す可能性は高いO すなわ ち、tOct[2]BuCA- AcCAはカリツクス[4]アレーン誘導体であり、ナトリウムとの親和 性は高い。 また、 l個のナトリウムが環の内側に取り込まれれば、 共抽出挙動を示 す条件も備えている。 従って、 ナトリウムイオン存在下では、tOct[2]BuCA- AcCAに ついても、ナトリウムイオンと他金属イオンとを共抽出していることが示唆された。
さらに、 ナトリウム添加系では、tOct[2]BuCA-AcCAによる銅の抽出のpH領域は、
toct[ 4]CH2COOHの領域よりも低かった。 この結果は、 図3 -16におけるナトリウムイ オンの抽出順序とは、 逆転している。 この特異的な挙動については、 3. 4で説明
する。
これまでに、 両抽出剤による、 ナトリウムイオンと他の金属イオンとの共抽出挙 動について示してきた。 しかし、これは全ての現象を十分に説明できるが、直接的 な証拠ではな い。 そこで、 共抽出に関する直接的な証拠を得るために、 次の実験を 行った。
先ず、 図3-18に、 例としてナトリウム錯化型 tOct[4]CH2COOHによる、金属イオン の抽出機構モデjレを示す。 抽出剤をクロロホjレムに溶解した有機相と、ナトリウム イオンを含む水相とを接触して、 抽出剤とナトリウムイオン2個を錯形成する。 こ のナトリウム錯化型tOct[4]CH2COOHを、 新たに抽出剤として用いる。 つまり、 ナト リウム錯化型tOct[4]CH2COOHを含む有機相と、ナトリウムを含まず新たに調製した 金属イオンの水溶液とを接触する。 ここで、抽出された金属イオンと溶出したナト リウムイオンの濃度を測定することにより、抽出機構は明らかとな るはずである。
すなわち、 図3-18に示すように、tOct[4]CH2COOHについては、次の3つの抽出機構 が考えられる。
①金属イオンは、2個のナトリウムイオンとは無関係に、そのまま共抽出される。
この時、[M]別刷ed宇[Na]released三千o mM である。
②金属イオンは、2番目のナトリウムイオンとイオン交換する。
この時、[M]側聞ed三千[トJa] re leased である。
③金属イオンは、2個のナトリウムイオンとイオン交換する。
この時、[M]日tracted尋問a]releasedx 2 である。
ここで、[M]extrac凶と[Na L.eleasedはそれぞ、れ、抽出された金属濃度、溶出したナトリウム 濃度である。 ただし、 目的金属イオンと抽出剤との錯体形成比が、 1 : 1の場合で ある。
まず、 これらの抽出機構を分類する。 ①と②の機構は、 ナトリウムイオンと他の 金属イオンとの" 共抽出" 機構である。 また、 ①の機構は、2個のナトリウムと金 属イオンが交換する" イオン交換" 機構である。 ①の機構、 すなわち" 第lの共抽 出" 機構で抽出が起これば、toct[4]CH2COOHと錯形成したナトリウムイオンは、抽 出された金属イオンの濃度に依存せず、水木目に溶出しないはずである。②の機構、
/ヘ\、
ナトリウムと錯形成
/一\、
金属イオンの抽出
+
第lの共抽出 第2の共抽出
ナトリウムイオンとの 共抽出
tOct[4]CH2COOH
ナトリウム錯化型 toct[ 4]CH 2COOH
+
ナトリウムイオンとの イオン交換
図3-18 ナトリウム錯化型toct[4]CH2COOHによる 金属イオンの抽出機構モデル
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