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「奈良の都の暮らしぶり ― 平城京の生活誌 ―」の 開催にあたって

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Academic year: 2021

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「奈良の都の暮らしぶり平城京の生活誌 ―」の 開催にあたって

東京講演会は、奈良文化財研究所(以下、奈文研)の調査・研究活動の成果を、東日本のみなさまに発信し ようと、2010年から始めた年に1度の講演会です。今回で12回目になりました。この間、毎回切り口をかえて、

文化財研究の魅力や最新の研究成果をお伝えしてきました。

なかでも近年は、2016年に「飛鳥むかしむかし」、2018年に「藤原から平城へ平城遷都の謎を解く」、

2019年に「奈良の都、平城宮の謎を探る」と題して、飛鳥から藤原京、そして平城京へ至る都城文化の発展過 程を通観しました。そこでは飛鳥の宮都や寺院の研究成果をはじめ、藤原京が短命に終わった理由、平城遷都 と平城宮造営に関わる謎などについて多角的な検討を加えました。特に「令和」の御代替わりにつながる平城 宮の大嘗宮遺構や、藤原宮と平城宮の幢幡遺構に関する発表は、改めてわが国の歴史の重厚さを認識させるも のとなりました。

今年はそれに引き続いて、平城京における人びとの暮らしに焦点をあて、「奈良の都の暮らしぶり平城京の 生活誌」と題した講演会を企画しました。「あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり」と 歌われた平城京の繁栄が、本当に咲く花のように華やかなものであったのか。講演会では、平城京の人口と宅 地事情、役人の勤務と出世、娯楽と遊戯、食生活、借金事情、疫病対策など、さまざまな角度から平城京の生 活の実態解明に迫りたいと思います。

現在、新型コロナウイルス感染症の猛威が世界を覆い、日本もまた深刻で困難な状況に直面しています。こ うした疫病との戦いは、1300年前の平城京の住民たちも経験したところです。天平7年(735)から9年にかけ ての天然痘の大流行時には、全国で100万人を超える人びとが死亡したと推計されています。このような未曾 有の大惨事に、平城京の住民はどのように立ち向かったのか。医療や医学の未発達な時代にあって、疫神の退 散、感染防止を願う「まじない」や神仏への祈祷は、現代にも通じる個々人の心からの願いのように感じます。

私たちもコロナ禍を経験したことにより、古代史をこれまでとは違った側面から見直す契機になるのかもしれ ません。

平城京は奈良時代の政治、文化、経済の中心地として栄えましたが、その陰で人口集中による都市公害、疫 病の発生、物価の上昇や借金苦など、現代にも通じる社会問題が発生しました。この講演会を通じて、私たち の生活の原点が平城京の時代にあることを感じていただけましたら幸いです。

令和2年10月10日 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 所長 

松村 恵司

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