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「学校選択制の導入が学力試験の正答率と不登校率に与える影響について -東京都49区市のパネルデータを用いた実証分析-」

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学校選択制の導入が学力試験の正答率と不登校率に与える影響について

- 東 京 都 4 9 区 市 の パ ネ ル デ ー タ を 用 い た 実 証 分 析 -

<要旨>

学校選択制とは、市区町村教育委員会が、児童生徒の就学すべき学校についてあらかじ め保護者の意見を聴取し、これを踏まえて就学校を指定する制度である。 本稿では、学校選択制を導入する意義について述べた上で、東京都49 区市のパネルデー タを用い、制度の導入が公立小中学校の学力試験の正答率と不登校率に与える影響につい ての実証分析を行った。 その結果、公立中学校の不登校率については、制度を導入してから3 年目以上になると、 導入しない場合に比べ、不登校率が低くなることが統計的に有意に示された。その他、公 立小中学校の学力試験の正答率および公立小学校の不登校率に与える影響については、統 計的に有意に示されなかった。 2012 年(平成 24 年)2 月 政策研究大学院大学政策研究科まちづくりプログラム MJU11009 佐藤 宏嗣

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目次

1 はじめに

... 1

2 学校選択制の概要

... 3

3 本稿での検証事項と予想される結果

... 3 3-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について ... 3 3-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について ... 4

4 先行研究と本稿の位置づけ

... 5 4-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について ... 5 4-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について ... 6

5 学校選択制の導入の効果に関する実証分析の手法

... 6

6 利用するデータ

... 7 6-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について ... 7 6-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について ... 9

7 学校選択制の導入の効果に関する実証分析の推計結果

... 12 7-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響についての実証分析の推計結果 .. 12 7-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響についての実証分析の推計結果 ... 14

8 学校選択制の導入の効果についての考察

... 16 8-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について ... 16 8-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について ... 17

9 まとめ

... 17 付録:データの出典及び作成方法 ... 19 参考文献 ... 20

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1 はじめに

学校選択制とは、市区町村教育委員会が、児童生徒の就学すべき学校についてあらかじめ保護 者の意見を聴取し、これを踏まえて就学校を指定する制度である1。つまり、公立の小中学校に 進学するとき、原則として、住んでいる自治体の区域の範囲内から希望する学校をその収容能力 の限りにおいて自由に選べる制度である。 民間に質の高い教育機関が十分に存在しなかった時代には、全国すべての地域に政府が一定の 密度で直営の学校を作り、学区を決めてそこへの通学を義務付けることが、国民の人的資本を効 率的に形成する上で一定の意味があったのかもしれない。しかし、現代においては、居住地によ って選択できる公立の学校を一つに規制することの根拠は薄れてきている2 実際に学校選択制を導入している自治体の多くが、その目的として、「特色ある学校づくりの ため」、「選択機会の拡大」などを挙げている。保護者や児童生徒が自身にとってより魅力的に思 える学校を選べるということは、より良好な教育サービスを享受できる可能性が高まることを意 味する。加えて、福井(2010)や戸田(2010)は教育サービスの供給者である学校・教員側へのイン センティブの付与という側面の重要性も指摘する3。つまり、保護者や児童生徒の学校選択の幅 が広がるということは、学校側にとっては、それまでのように一定数の児童生徒の確保が保障さ れなくなることを意味する。すると、学校・教員が児童生徒をより多く集めようとするインセン ティブが生じ、他校とのよい教育サービスづくりの競争の結果として、教育の質の向上が図られ るということである4 先行するアメリカでは、教育バウチャー制度(学校に対する予算を、学級数ではなく、原則と して在籍する児童生徒数に応じて交付する制度5)をはじめ、児童生徒の学校の選択幅を広げ、学 校・教員間での児童生徒の獲得競争を促すような政策が、学力や保護者満足度など、教育の質の 向上に寄与したという多くの実証研究がある6。例えば、Hoxby(2000)は、学校を自由に選択さ せることによって、公立・私立学校ともに学力試験の正答率が向上するなど、義務教育の質の向 上が見られ、さらに教育費用が減尐することを立証した。同じく Hoxby(2006)の研究では、全 米で最も古い教育バウチャー制度であるミルウォーキー市の低所得者向けバウチャー制度につ いて、「比較的競争の激しいバウチャー参加校での生徒の成績の年平均上昇率は、それ以外の公 立校の生徒よりも高かった。競争的な学校ほど高い伸びを示している」と結論付けている7。ま 1 文部科学省 HP「よくわかる用語解説」 2 福井(2010)は、規制することの根拠は「ない」とする。また福井編(2007)においては、学校選択制に対す る典型的な反対論と、それらの論理矛盾について詳しく解説している。なお、福井(2010)は政府が教育に 介入する根拠として、①外部性対策、②価値財としての性質への対応、③情報の非対称対策、④所得格差 の是正ないし分配の公正、を挙げ、これら以外の論拠をもって教育への政府介入を合理化することは極め て困難であり、政府が直接学校を運営する理由もないとする。 3 経済学の 10 大原理の一つとして重要な「インセンティブ」についての詳細は、マンキュー(2005)を参照 4 児童生徒が尐なくなると教員の給与が大きく減ったりするわけではないが、尐なくとも外部からの見か けが良くはないなど、教員側にとってのデメリットはなくはないだろう。 5 教育バウチャー制度とその意義についての詳細は福井編(2007)を参照 6 米国における先行論文ついては内閣府規制改革会議(2009)を参照 7 アメリカの教育バウチャー制度の詳細は福井(2010)や戸田(2010)を参照。福井によると、アメリカは教職 員組合の抵抗が強く、教育バウチャー制度は低所得者層対策の実験が中心となっている。

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た、Greene ら(1998)はクリープランド市の低所得者向け教育バウチャー制度について、「教育バ ウチャーを利用した生徒は、一年後のテストで成績が伸びた。保護者の満足度も高い。」として いる。さらに、Deming(2011)はシャーロット市の事例を研究し、「くじに当選し学校の選択権を 行使できた生徒の方が後に逮捕・投獄される確率が低かった。」などと結論付けている。 一方、日本においては、教育バウチャー制度は実施されていない。また、戸田(2010)が指摘し ているように、児童生徒が選択権を行使する上で重要となる、「学校ごとの統一試験結果、教員 の資格保持状況、卒業率、出席率、留年率、停学率等の情報公開がなされていること」、「児童生 徒・保護者による学校・教員評価が厳格になされていること」、「私立学校等の参入障壁を緩和す ること」などの関連施策の実施状況は十分でない。しかしながら、そのような環境でも、学校選 択制の導入により、何らかの形で教育の質の向上が表れているのではないかと考えたのが本研究 のきっかけである。 本稿では、学校選択制の導入が「学力試験の正答率」と「不登校率」にそれぞれどのような影 響を与えたかについて、東京都の公立小中学校のデータから、全49 区市のパネルデータを作成 して分析した。結論から先に述べると、中学校の不登校率については、制度を導入してから 3 年目以上になると、導入しない場合と比べ、不登校率(%)が低くなることが統計的に有意に実証 された。一方で、小学校の不登校率、小中学校の学力試験の正答率への影響については、統計的 に有意に実証されなかった。これらの結果を踏まえ、学校選択制の導入の是非について考察を行 ったものである。 日本のデータを扱った先行研究は、学校選択制の導入から年月が浅いなどの理由から数が尐な い8が、まず、Yoshida ら(2007)は東京都や、東京都足立区独自の学力試験のデータを用いて、「学 校選択制の導入によって、東京都全体の平均と比較した足立区の学力試験の正答率が改善され た」、「一方で学校間の正答率のばらつきには統計的に有意な変化は見られなかった。」としてい る。これに対し、中村(2009)は東京都の中学 2 年生を対象に実施した学力試験のデータから 49 区市・4 年分のパネルデータを作成し、「生徒一人あたりの教師数」など、学校選択制以外の要 因を制御したうえで、学校選択制の導入による学力試験の正答率への影響をより正確に測定する ことを試みた。結論として、学校選択制の導入は学力試験の正答率を上昇させるが、その推計値 は統計的には有意でなく、学校選択制が地域内平均学力に影響を与えていないとした。 これら、日本のデータを扱う研究の中での本稿の新規性については、まず、学力試験の正答率 の分析においては、学校選択制の導入前後の比較のみならず、導入後からの年数経過と学力試験 の正答率との関係を検証している点が、また、不登校率の分析においては、その指標を用いてい ること自体があげられる。これまで分析されてこなかった不登校率減尐に与える効果について、 中学校において統計的有意に実証されたことや、全ての分析において負の弊害が示されなかった ことについては、学校選択制を導入する意義について論ずる上で、一定の貢献をなすものだと考 える。 8 日本での関連論文が尐ない理由の詳細については佐藤(2010)を参照

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本稿の構成は次のとおりである。まず第2 章で学校選択制の概要について説明する。第 3 章 では、学校選択制の効果に関して本稿で検証する事項を、予想される結果とその理由も含めて具 体的に説明する。第 4 章では、本章で述べた関連する先行研究をあらためて紹介したうえで、 その中での本稿の位置づけについて記す。第5 章では本稿で検証する上での推計モデルを示し、 第6 章ではその推計のために利用するデータについて説明する。第 7 章では推計結果を示した 上で、第8 章でそれについての考察を述べる。第 9 章のまとめにおいては、前章までに考察し た事項をまとめ、実証の課題等も述べた上で、それらを踏まえた政策提言を行う。

2 学校選択制の概要

前章の冒頭で述べたとおり、学校選択制とは、市区町村教育委員会が、児童生徒の就学すべき 学校についてあらかじめ保護者の意見を聴取し、これを踏まえて就学校を指定する制度である。 日本では長らく、市区町村立の小中学校に進学する際には、市区町村教育委員会があらかじめ 設定した通学区域によって就学校が指定され、原則としてその学校に就学しなければならなかっ た。教育改革、規制改革等の流れを受け、平成 9 年の文部省による各都道府県教育委員会教育 長あて「通学区域の弾力的運用について(通知)」において、学校選択の機会の保障や特色ある学 校づくりを目的に、「通学区域制度の運用に当たっては、各市町村教育委員会において、地域の 実情に即し、保護者の意向に十分配慮した多様な工夫を行う」よう通知された。これをきっかけ に、平成 10 年度に三重県紀宝町で初めて学校選択制が導入され、他の自治体の一部も続いた。 平成14 年度の学校教育法施行規則第 32 条第 1 項の改正9により、法的根拠が明確になったこと で、さらに導入が促された10。しかしながら、文部科学省の調査11によると、平成 18 年 5 月 1 日現在、全国の自治体の学校選択制の導入率は小学校が 14.2%、中学校が 13.9%であり、決し て高いとは言えない状況である。なお、内閣府が平成21 年 1 月に実施したアンケート調査12 は、学校選択制に「賛成」または「どちらかといえば賛成」する保護者が55.4%に対し、「反対」 または「どちらかといえば反対」は11.4%であり、賛成意見が大きく上回っている。

3 本稿での検証事項と予想される結果

第 1 章で述べた学校選択制の意義を踏まえた上で、本稿では、学校選択制の導入が「学力試 験の正答率」と「不登校率」にそれぞれどのような影響を与えたかについて検証する。本章では、 それぞれについて予想される結果とその理由を具体的に説明する。 3-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について 学校では多大な時間と労力を学力修得のために費やしており、学力は教育の質を計る上で 9 ①就学校の指定の際、あらかじめ保護者の意見を聴取できること、その際の手続等を公表することを規 定。②就学校の変更の際、その要件及び手続を明確化し公表するものとすることを規定。 10 導入の経緯や広がりについての詳細は佐藤(2010)を参照 11 文部科学省 HP「学校選択制について(入学時)」 12 「学校教育に関する保護者アンケート」

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重要な要素だといえる。学力向上を重視する保護者や児童生徒がいて、それを実現するのに ふさわしいと考える学校を選べるのであれば、学力がより向上する可能性は高まる。 また一方、第 1 章で述べたとおり、教育サービスの供給者である学校・教員側に目を向け ると、学校選択制の導入により、児童生徒をより多く集めようとするインセンティブが生じ、 結果として教育の質の向上が図られるということになり、すなわち、児童生徒の学力向上も 図られるということになる。 以上の理論に従うと、学校選択制の導入後に、学力試験の正答率が上昇しており、また、 その上昇幅は制度が定着していくほど、つまり、導入からの年数が経過するほど増している と考えられる。 3-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について 「不登校」とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児 童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にあり(ただし、「病気」や「経済的な 理由」による者を除く)、30 日以上欠席している状態のことをいう13。本稿では、全児童生徒 の中での不登校の割合を不登校率(%)と呼ぶことにする。 結論から言うと、就学する学校が選択できないということは、不登校率を高める要因とな るだろう。 例えば、不登校の原因となる「いじめを避けるため」など、何らかの理由で地元の学校に は行きたくない生徒が、自然な形で指定校への通学を回避できることも学校選択制の利点と 言える14。東京都教育委員会15によると、平成22 年度に不登校となった直接のきっかけ(複数 回答制)として、「いじめ」や「いじめを除く友人関係をめぐる問題」、「学校の決まり等をめぐ る問題」等、『学校にかかる状況』とされるのは、単純な総和だが、小学校で19.3%、中学校 で22.6%を占めており、決して無視できない。一方で『学校にかかる状況』以外としては、「無 気力」、「不安などの情緒的混乱」、「あそび・非行」などの『本人にかかる状況』が、小学校 で70.1%、中学校で 76.1%を占めており、最も大きな割合を占めている。ただ、「無気力」等 が『本人にかかる状況』に分類されているとはいえ、これらが学校側の要因と無関係ともい えず、学校を事前に選べる環境にあることによって、解決できる可能性もあるだろう。他に、 「家庭環境の急激な変化」、「親子関係をめぐる問題」等の『家庭にかかる状況』が小学校で 22.9%、中学校で 8.7%である。 他の観点から述べると、佐藤(2010)が指摘するように、実際に学校選択制を導入している自 治体の保護者や児童生徒が学校を選ぶ基準として、「子どもの友人関係」が重視されている点 も重要である16。このことからも、友人関係を基準に学校が選べなかったことによって、後に 13 東京都教育委員会「平成 22 年度における児童・生徒の問題行動等の実態について」 14 この利点についての詳細は佐藤(2010)を参照 15 「平成 22 年度における児童・生徒の問題行動等の実態について」 16 東京 23 区において多くの区が学校選択制に関するアンケートを実施しているが、区によってそれほど 結果に違いがなく、「学校を選んだ理由」で「通学距離や交通の便」についで多いのは「子どもの友人関係」

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不登校になる可能性はあるといえる。 なお、いじめを避ける場合などのために「指定校変更17」の制度があるが、これも佐藤(2010) が指摘する通り、保護者や児童生徒からの申請と教育委員会の審査が必要であり、心理的・ 時間的なコストがかかる等の現状がある。これの対応策としても、学校選択制の導入により、 入学前に限られるものの、自然な形で学区域外の学校を選べることは、不登校を減尐させる ことに寄与するだろう。 一方で、学校・教員側のインセンティブに着目すると、不登校率の高い学校は選ばれにく くなるため、不登校率を下げようと努力することになる。内閣府の調査18では、保護者が学校 選択の際に参考にしたい情報(3 項目まで選択回答)として「いじめ・暴力・不登校の実態、学 校の対処とその結果」を約50%の保護者が選んでおり、最も関心が高くなっている。ただし、 学校ごとの不登校率は公表されていないため、そのインセンティブはそれほど大きくないか もしれない。 以上を総合すると、学校選択制の導入により、不登校率は下がると予想される。

4 先行研究と本稿の位置づけ

アメリカの研究では、教育バウチャー制度をはじめとした学校選択制に関連する施策が学力向 上などの効果をもたらしたという報告が多くあり、一方の日本のデータを扱った研究は数が尐な いことについては第 1 章で述べたとおりである。本章では、日本のデータを扱った実証研究を あらためて示すとともに、それを踏まえた本稿の新規性について詳しく記す。 4-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について Yoshida ら(2007)は東京都や、東京都足立区独自の学力試験のデータを用いて、「学校選択 制の導入によって、東京都全体の平均と比較した足立区の学力試験の正答率が改善された」、 「一方で学校間の正答率のばらつきには統計的に有意な変化は見られなかった。」としている。 これに対し、中村(2009)は東京都の中学 2 年生を対象に実施した学力試験のデータから 49 区 市・4 年分のパネルデータを作成し、「生徒一人あたりの教師数」など、学校選択制以外の要 因を制御したうえで、制度の導入による学力試験の正答率への影響をより正確に測定するこ とを試みた。結論として、学校選択制の導入は学力試験の正答率を上昇させるが、その推計 値は統計的には有意でなく、学校選択制が地域内平均学力に影響を与えていないとした。 以上を踏まえた上で、本稿では次の視点を新たに加え、実証分析を行う。 ①学校選択制の導入後の年数経過が学力試験の正答率に与える影響の分析 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響は、制度の導入直後の試験に表れる とは限らない。むしろ、一定期間経過後に表れていると考える方が自然ではないか。また、 とのことである。 17 詳しくは文部科学省 HP「よくわかる用語解説」 18「学校教育に関する保護者アンケート」

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制度が定着すればするほど、その効果がより表れている可能性がある。 よって、学校選択制の導入前後の比較のみでなく、導入後の経過年数と学力試験の正答率 との関係を検証することが新たな視点である。先行研究から年月がさらに経過したことによ り、第6 章で述べるように、小学校については延べ 6 年分、中学校については述べ 7 年分 のパネルデータを作成したので、より長期のデータをそろえての分析となる。 ②小学生と中学生双方の分析 小学校と中学校では、通塾率や私立学校進学率などの違いがあるので、双方について分析 すると異なる結果が得られるかもしれない19。よって、本稿では小学校の学力試験の正答率 についても、中学校と同様の手法で分析することにする。 4-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について 筆者の知る限り、学校選択制の導入が不登校率に与える影響について実証的に研究したもの はない。本稿では、不登校率についても、小学校と中学校双方について分析することにする。

5 学校選択制の導入の効果に関する実証分析の手法

本章では、学校選択制の導入が学力試験の正答率と不登校率に与える影響について、第 1 章 で論じた理論を検証するための手法について説明する。 まず、学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響については、次のモデルを推計する。 推計方法はOLS(最小二乗法)にて行う。 (𝐒𝐜𝐨𝐫𝐞)𝐢𝐭 = 𝛂𝟏+ 𝛃𝟏𝐒𝐂𝐃𝐢𝐭+ 𝛃𝟐𝐏𝐘𝐢𝐭+ 𝛃𝟑𝐗𝐢𝐭+ 𝛆𝟏𝐢𝐭 ここで、Score は学力試験の正答率、αは定数項、βはパラメータ、SCD は学校選択制導入後 ダミー、PY は学校選択制導入からの経過年数(導入後**年目)、X はコントロール変数、εは 誤差項、i は区市、t は年を表す。 次に、学校選択制の導入が不登校率に与える影響については、次のモデルを推計する。推計方 法は学力試験の正答率についての分析と同様、OLS にて行う。 (𝐒𝐜𝐡𝐨𝐨𝐥 𝐫𝐞𝐟𝐮𝐬𝐚𝐥)𝐢𝐭= 𝛂𝟐+ 𝛃𝟒𝐏𝐘𝐃𝐢𝐭+ 𝛃𝟓𝐗𝐢𝐭+ 𝛆𝟐𝐢𝐭

ここで、School refusal は不登校率、αは定数項、βはパラメータ、PYD は学校選択制導入 からの経過(**年目)ダミー、X はコントロール変数、εは誤差項、i は区市、t は年を表す。 19 文部科学省「平成 21 年度全国学力・学習状況調査」によると、今回の試験正答率の分析の学年(小 5、 中2)とは異なるデータだが、東京都の公立小学校 6 年生の通塾率は 57.4%に対し、公立中学校 3 年生は 69.1%である。また、私立進学率を直接表すものではないが、関連する数字として、東京都「平成 23 年度 学校基本調査報告」によると、都内の公立小学校の児童数は561,329 人に対し、私立小学校は 26,571 人(全 体の約4.5%)、公立中学校の生徒数は 229,483 人に対し、私立中学校は 79,700 人(全体の約 25.8%)であり、 全体における私立の児童生徒数の割合は中学校が小学校の5 倍以上である。

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6 利用するデータ

前章の推計モデルを分析するために、東京都の公立小中学校のデータから、全49 区市のパネ ルデータを作成して分析する。 東京都で学校選択制を導入する区市では、その形態として、当該区市内のすべての学校につい て選択を認める「自由選択制」、当該区市内をブロックに分け、そのブロック内の学校について のみ選択を認める「ブロック選択制」、従来の通学区域は残したままで、隣接する区域内の学校 についてのみ選択を認める「隣接区域選択制」、従来の通学区域は残したままで、特定の学校に ついて、通学区域に関係なく当該区市内のどこからでも選択を認める「特認校制」のいずれかを 採用している20。この中で、特認校制については、選択できる学校数がごく尐数に限られている ため、本稿では学校選択制のうちに含めないこととする。それ以外の形態については、自由選択 制が最も選択の自由度が高く、ブロック選択制や隣接区域選択制はそれに次ぐ形となる。自由選 択制と比べて選択の自由度を下げる主な理由は通学路の安全確保のためであり、複数の学校から 就学校を希望できるという点では自由選択制と同じなので、これら 3 つの形態については、学 校選択制を導入しているものとし、同等に扱う21。ただし、国分寺市の小中学校については、ご く一部の限られた地域で「隣接区域選択制」を実施していることから、また、立川市の中学校に ついては、希望する部活動が通学区域の学校にない場合のみ「隣接区域選択制」を実施している ことから、それらについては本稿では学校選択制を導入していないとみなすことにする。 東京都の学校選択制の導入状況(特認校制と国分寺市の小中学校、立川市の中学校については 前述の理由により除く。以下、同じ)については、小学校は平成 12 年度の品川区を皮切りに広ま っていき、平成22 年度現在の導入区市数は 20 区市(全 49 区市中の 40.8%)、中学校については 平成13 年度の品川区、豊島区、日野市を皮切りに広まっていき、平成 22 年度現在の導入区市 数は27 区市(全 49 区市中の 55.1%)である22。それぞれの導入率は全国平均(平成 18 年度現在、 小・中学校とも15%未満)より高く、おおむね 50%程度から大きく離れていないことは、制度の 導入による効果を検証するのに適当であるといえるだろう。 具体的なデータは、次節のとおりである。 6-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について 以下に述べる被説明変数と各説明変数について、小学校については、平成 16 年度から 20 年度及び22 年度の述べ 6 カ年分、中学校については、平成 15 年度から 20 年度及び 22 年度 の述べ 7 カ年分のパネルデータを作成した。なお、データの出典及び作成手法については付 録に掲載した。 20 詳細は東京都HP。 21 自由選択制を採用していても、江東区の小学校のように、「原則として徒歩30 分圏内」としている区 市もある。 22 49 区市中の導入区市数の経年推移については、小学校については、平成 12 年度から平成 22 年度まで それぞれ1,3,6,11,18,19,19,20,20,20,20 区市、中学校については、平成 13 年度から平成 22 年度までそれ ぞれ3,8,17,24,26,26,27,27,27,27 区市である。

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(1)被説明変数 被説明変数として用いるのは、東京都が実施する学力試験である、「児童・生徒の学力向 上を図るための調査」の49 区市のそれぞれの平均「正答率」である。 公立小学校は平成16 年度から 5 年生を対象に、公立中学校は平成 15 年度から 2 年生を 対象に悉皆調査を開始しているので、それらの学年について分析する。なお、平成21 年度 については、悉皆調査を行っていないので、分析対象から除外する。 (2)説明変数 ①学校選択制の導入の効果を見るために着目する変数 本稿の主題である、学校選択制の導入の効果として着目する変数としては、学校選択制 導入前後の学力試験の正答率の違いを見るため、学校選択制を導入していない年度に「0」、 導入している年度に「1」をとるダミー変数である「学校選択制導入後ダミー」、そして、 年数経過による効果をみるため、学校選択制を導入していない年度に「0」、学校選択制 導入X 年目を「X」をとる変数である「学校選択制導入後経過年数」を用いる。 予想される係数の符号としては、第3 章で述べた理論により、「学校選択制導入後ダミ ー」、「学校選択制導入後経過年数」ともに正である。 ②コントロール変数 学力試験の正答率に影響を与えるものとして、学校内の要因、経済的な要因、家庭的な 要因のデータをコントロール変数として用いる。具体的には、学校内の要因として、「児 童生徒一人あたりの教師数」、経済的な要因として、「納税義務者一人あたり課税対象所 得」、家庭的な要因として、区市の世帯数を人口で除した「一世帯あたりの人口」及び、 区市内の離婚数を人口で除した「離婚率」を用いる。 なお、経済的な要因や家庭的な要因として用いた変数の課題としては、それらは該当 区市の全体のデータであり、児童生徒自身以外の家庭のデータも含まれているため、対 象児童生徒の属性を直接表すものとは言えない点がある。よって、本稿では、これらコ ントロール変数の組み合わせとして、「学校内の要因のみ」、「学校内の要因、経済的な要 因」、「学校内の要因、経済的な要因、家庭的な要因」の 3 パターンを用いる場合につい てそれぞれ検証することにする。 また、区市ごとの児童生徒がもともと保有する能力等をコントロールするために「区 市ダミー」を用い、さらに、年度ごとに学力試験問題の出題形式や難易度が異なるので、 それをコントロールするために「年度ダミー」を用いる。 「区市ダミー」と「年度ダミー」を除くコントロール変数の予想される係数の符号と しては、「児童生徒一人あたりの教師数」、「納税義務者一人あたり課税対象所得」、「一世 帯あたりの人口」はそれぞれ正、「離婚率」は負である。

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以上の変数の基本統計量は表1(小学校)、表 2(中学校)のとおりである。 表 1 基本統計量(小学校) 表 2 基本統計量(中学校) 6-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について 以下に述べる被説明変数と各説明変数について、小学校については、平成 11 年度から 22 年度までの12 カ年分、中学校については、平成 12 年度から 22 年度までの 11 カ年分のパネ ルデータを作成した。 (1)被説明変数 被説明変数として用いるのは、不登校の人数を全学年の児童生徒数で除した「不登校率」 である。 小中学校ともに、最も早く学校選択制を導入した区市の導入年度の 1 年前からのデータ を取り扱う。小学校については、品川区が平成12 年度に都内で最も早く導入したので平成 11 年度から平成 22 年度まで、中学校については、品川区、豊島区、日野市が平成 13 年度 に都内で最も早く導入したので、平成12 年度から平成 22 年度までのデータを取り扱う。 (2)説明変数 ①学校選択制の導入の効果を見るために着目する変数 本稿の主題である、学校選択制の導入の効果として着目する変数としては、まず小学校 の分析については、学校選択制を導入していない年度に「0」、学校選択制を導入してか ら1 年目の年度に「1」をとるダミー変数(それ以外の年度は「0」)、同様に 2 年目、3 年 目、4 年目、5 年目についても、該当年目に「1」をとるダミー変数(それ以外の年度は「0」)、 観測数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 正答率(%) 294 71.184 7.408 51.900 83.225 学校選択制導入後ダミー 294 0.395 0.490 0.000 1.000 学校選択制導入後経過年数 294 1.854 2.727 0.000 11.000 児童一人あたりの教師数 294 0.0505 0.0056 0.0431 0.0999 納税義務者一人あたりの課税対象所得 294 4349 1244 3080 11267 一世帯あたりの人口 294 2.093 0.230 1.656 2.651 離婚率(%) 294 0.212 0.036 0.133 0.310 観測数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 正答率(%) 343 67.099 9.677 43.400 81.780 学校選択制導入後ダミー 343 0.507 0.501 0.000 1.000 学校選択制導入後経過年数 343 2.224 2.744 0.000 10.000 生徒一人あたりの教師数 343 0.0732 0.0138 0.0513 0.1797 納税義務者一人あたりの課税対象所得 343 4348 1199 3080 11267 一世帯あたりの人口 343 2.102 0.231 1.656 2.679 離婚率(%) 343 0.215 0.037 0.133 0.343

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以上をそれぞれ「学校選択制導入X 年目ダミー」(X=1~5)とし、そして、6 年目以上に 「1」を取る「学校選択制導入 6 年目以上ダミー」変数(それ以外の年度は「0」)を用いる。 このような変数を用いる理由は、例えば学校選択制の導入 1 年目であれば、入学当時 に制度が利用可能であったのが1 年生のみ、2 年目であれば 1 年生と 2 年生のみであり、 6 年以上が経つことによりはじめて全児童が入学時に制度が利用可能だったことになり、 さらに年数が経過することにより制度がより定着していくことを意味するので、特に「学 校選択制導入 6 年目以上ダミー」に着目するためである。また、不登校率は学年が上が るほど高くなっていることも、その変数に特に着目する理由としてあげられる23 よって、予想される係数の符号としては、第 3 章で述べた理論も踏まえると、これら ダミー変数については全て負であり、特に着目すべき、「学校選択制導入6 年目以上ダミ ー」の係数の絶対値は大きいと考えられる。 中学校についても、小学校と同様の考え方で、学校選択制を導入していない年度に「0」、 学校選択制を導入してから1 年目の年度に「1」をとるダミー変数(それ以外の年度は「0」)、 2 年目の年度に「1」をとるダミー変数(それ以外の年度は「0」)、以上をそれぞれ「学校 選択制導入X 年目ダミー」(X=1,2)とし、そして、3 年目以上に「1」を取る「学校選択 制導入3 年目以上ダミー」変数(それ以外の年度は「0」)を用いる。小学校と同様、不登 校率は学年が上がるほど高くなっている。よって、これらダミー変数は全て負であり、特 に、「学校選択制導入3 年目以上ダミー」の係数の絶対値は大きいと考えられる。 ②コントロール変数 不登校率に影響を与えるものとして、学力試験の正答率への影響の分析と同様、「児童 生徒一人あたりの教師数」、「納税義務者一人あたり課税対象所得」、「一世帯あたりの人 口」及び、「離婚率」を用いる。また、「学校内の要因のみ」、「学校内の要因、経済的な 要因」、「学校内の要因、経済的な要因、家庭的な要因」の 3 パターンを用いる場合につ いてそれぞれ検証することや、「区市ダミー」、「年度ダミー」を用いることも同様である。 学力試験の正答率を高める要因は、不登校率を下げる要因であると考えられる。よっ て、「区市ダミー」と「年度ダミー」を除くコントロール変数の予想される係数の符号と しては、学力試験の正答率の場合と逆であり、「児童生徒一人あたりの教師数」、「納税義 務者一人あたり課税対象所得」、「一世帯あたりの人口」はそれぞれ負、「離婚率」は正で ある。 23 東京都教育委員会「平成 22 年度における児童・生徒の問題行動等の実態について」によると、平成 22 年度の東京都の公立小中学校の学年ごとの不登校率(%)は、小 1 から小 6 まではそれぞれ 0.08, 0.16, 0.25, 0.38, 0.51, 0.67 で、中 1 から中 3 まではそれぞれ 2.04, 3.16, 4.03 である。

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以上の変数の基本統計量は表3(小学校)、表 4(中学校)のとおりである。 表 3 基本統計量(小学校) 表 4 基本統計量(中学校) 観測数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 不登校率 588 0.367 0.131 0.039 1.191 学校選択制導入1年目ダミー 588 0.034 0.181 0.000 1.000 学校選択制導入2年目ダミー 588 0.034 0.181 0.000 1.000 学校選択制導入3年目ダミー 588 0.034 0.181 0.000 1.000 学校選択制導入4年目ダミー 588 0.034 0.181 0.000 1.000 学校選択制導入5年目ダミー 588 0.032 0.177 0.000 1.000 学校選択制導入6年目以上ダミー 588 0.099 0.298 0.000 1.000 児童一人あたりの教師数 588 0.0496 0.0056 0.0410 0.0999 納税義務者一人あたりの課税対象所得 588 4369 1095 3080 11267 一世帯あたりの人口 588 2.133 0.241 1.656 2.834 離婚率(%) 588 0.218 0.037 0.133 0.343 観測数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 不登校率 539 3.129 0.766 0.637 6.316 学校選択制導入1年目ダミー 539 0.050 0.218 0.000 1.000 学校選択制導入2年目ダミー 539 0.050 0.218 0.000 1.000 学校選択制導入3年目以上ダミー 539 0.293 0.456 0.000 1.000 生徒一人あたりの教師数 539 0.0726 0.0136 0.0513 0.1852 納税義務者一人あたりの課税対象所得 539 4366 1124 3080 11267 一世帯あたりの人口 539 2.123 0.238 1.656 2.793 離婚率(%) 539 0.218 0.038 0.133 0.343

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7 学校選択制の導入の効果に関する実証分析の推計結果

本章では、学校選択制の導入が学力試験の正答率と不登校率に与える影響について、それぞ れモデルの推計結果を示し、解釈を行う。 7-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響についての実証分析の推計結果 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について、モデルの推計結果を示す。 7-1-1. 小学校について 表 5 学力試験の正答率に与える影響についてのモデルの推計(OLS)結果(小学校) (注)***,**,*はそれぞれ 1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す。 本稿の主題である、「学校選択制導入後ダミー」と、「学校選択制導入後経過年数」の 2 変 数の係数については、3 パターンすべてにおいて、「学校選択制導入後ダミー」は予想どおり 正の値をとったが、「学校選択制導入後経過年数」に関しては予想に反して負の値をとってい る。しかしながら、双方とも統計的に有意でなく、また、係数の絶対値についても、試験の 正答率(%)ということを考慮に入れると極めて低い。さらに、これら 2 変数については相関が 高いので F 検定を実施したが、双方の係数ともゼロであるという帰無仮説は統計的有意に棄 却されなかった。よって、尐なくとも本稿で分析した期間内においては、学校選択制の導入 が学力試験の正答率に与えた影響があるとは言えない24 その他の変数については、「一世帯あたりの人口」は予想通り、正の符号をとっている。 「児童一人あたりの教師数」に関しては、3 パターン全てにおいて統計的には有意でないが、 予想に反して負の値をとっているものがある。これは、安藤(2010)も指摘する通り、尐人数学 級等によって児童一人あたりの教師数を増やすことにより、教員の目が行き届きやすくなる プラス要因がある半面、同学級内での競争による切磋琢磨が損なわれるなどというマイナス 要因があるからと推測できる。また、「納税義務者一人あたり課税所得」も、統計的には有意 24 これらの理由については、次章で詳しく考察する。 小学校試験正答率(%) 標準誤差 標準誤差 標準誤差 学校選択制導入後ダミー 0.2072 0.9465 0.3983 1.0224 0.3544 1.0199 学校選択制導入後経過年数 -0.1054 0.0888 -0.0545 0.0955 -0.0626 0.0949 教師数/生徒数 -6.5973 26.6915 18.6444 28.2093 18.7396 28.1842 納税者一人当たり課税所得 -0.00067 0.00044 -0.00036 0.00047 一世帯当たり人口 46.1073*** 7.3857 離婚数/人口 12.7744* 7.3414 定数項 1.3463 13.6367 72.7514 *** 2.1535 77.3321 *** 1.5838 決定係数  0.97 0.97 観測数 294 0.97 年度ダミー有(掲載省略) 区市ダミー有(掲載省略) 係数 係数 係数

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でないが、予想に反して負の値をとっている。これは、中村(2009)も指摘する通り、高所得者 の子どもほど私立校に進学している可能性を示唆する。さらに、「離婚率」について予想に反 して正の値をとっているのは、離婚前より離婚後の方が安定した家庭環境になっているから なのかもしれない。ちなみに、推定式から「区市ダミー」を除くことによってマクロデータ として分析すると、「離婚率」の係数は小中学校ともに有意に負の値をとっている。このこと からも、離婚しやすい環境は学力試験の正答率を低下させる要因となるが、離婚前よりは離 婚後の方が正答率を上昇させる傾向にあるという推測ができる。 7-1-2. 中学校について 表 6 学力試験の正答率に与える影響についてのモデルの推計(OLS)結果(中学校) (注)***,**,*はそれぞれ 1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す。 本稿の主題である、「学校選択制導入後ダミー」と、「学校選択制導入後経過年数」の係数 については、小学校の分析と同じく、3 パターンすべてにおいて、「学校選択制導入後ダミー」 は予想どおり正の値をとり、学校選択制導入後経過年数に関しては予想に反して負の値をと っている。しかし、双方とも統計的に有意でなく、また、係数の絶対値が極めて低いことや、 F 検定の実施結果も小学校の分析と傾向が同じであった。よって、尐なくとも本稿で分析した 期間内においては、学校選択制の導入が学力試験の正答率に与えた影響があるとは言えない25 その他の変数については、「納税義務者一人あたり課税所得」、「一世帯あたりの人口」は予 想通り、正の符号をとっている。「生徒一人あたりの教師数」に関しては、すべてのパターン で統計的に有意でないが、予想に反して負の値をとっているものがある。これは前述の小学 校の分析で述べたことと同様の理由が推測される。また、「離婚率」について正の値をとって いることの理由の推測も、小学校と同様である。 25 これらの理由についても、次章で詳しく考察する。 中学校試験正答率(%) 標準誤差 標準誤差 標準誤差 学校選択制導入後ダミー 0.2698 0.4297 0.2507 0.4312 0.2383 0.4299 学校選択制導入後経過年数 -0.1022 0.0656 -0.0993 0.0659 -0.0919 0.0639 教師数/生徒数 -0.5749 9.1016 3.1187 9.0099 3.0652 8.9969 納税者一人当たり課税所得 0.00008 0.00032 0.00015 0.00032 一世帯当たり人口 12.1905** 5.2783 離婚数/人口 2.2764 5.7094 定数項 51.7619*** 9.9803 69.9514*** 1.3747 72.2373 *** 0.8016 決定係数 係数 係数 係数 0.99 0.99 0.99 年度ダミー有(掲載省略) 区市ダミー有(掲載省略) 観測数 343

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7-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響についての実証分析の推計結果 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について、モデルの推計結果を示す。 7-2-1. 小学校について 表 7 不登校率に与える影響についてのモデルの推計(OLS)結果(小学校) (注)***,**,*はそれぞれ 1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す。 本稿の主題で特に注目する、「学校選択制導入6 年目以上ダミー」の係数を見ると、予想に 反して正の値をとっているものがあるが、統計的に有意でない。また、「学校選択制導入X 年 目ダミー」の係数については、概ね負の値を示すが、「学校選択制導入5 年目ダミー」につい ては、正の値をとっている。しかし、これも統計的に有意でない26 その他の変数の係数については、「児童一人あたりの教師数」、「納税義務者一人あたり課税 所得」、「一世帯あたりの人口」の係数は予想通り負であり、「離婚率」も予想どおり正である。 26 これらの理由については、次章で詳しく考察する。 小学校不登校率(%) 標準誤差 標準誤差 標準誤差 学校選択制導入1年目 -0.0410 0.0263 -0.0416 0.0262 -0.043 0.026 学校選択制導入2年目 -0.0293 0.0268 -0.0301 0.0267 -0.032 0.027 学校選択制導入3年目 -0.0458* 0.0273 -0.0468* 0.0272 -0.051* 0.027 学校選択制導入4年目 -0.0188 0.0278 -0.0199 0.0276 -0.025 0.027 学校選択制導入5年目 0.0246 0.0287 0.0231 0.0285 0.018 0.028 学校選択制導入6年目以上 0.0040 0.0232 0.0023 0.0230 -0.002 0.023 教師数/生徒数 -1.4648 1.2974 -1.5817 1.2818 -1.402 1.277 納税者一人当たり課税所得 -0.00002 0.00002 -0.00002 0.00002 一世帯当たり人口 -0.0908 0.1703 離婚数/人口 0.0569 0.3170 定数項 0.7915 0.4848 0.6649 *** 0.1645 0.469 *** 0.076 決定係数 係数 係数 係数 0.48 0.48 0.48 年度ダミー有(掲載省略) 区市ダミー有(掲載省略) 観測数 588

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7-2-2. 中学校について 表 8 不登校率に与える影響についてのモデルの推計(OLS)結果(中学校) (注)***,**,*はそれぞれ 1%,5%,10%の水準で統計的に有意であることを示す。 本稿の主題で特に注目する、「学校選択制導入3 年目以上ダミー」の係数を見ると、3 パタ ーンすべてにおいて、統計的に有意に負となっている。数値を見ると、これもすべてにおい て、中学校に学校選択制を導入してから3 年目以上の場合は、導入していない場合と比べて 不登校率(%)が約 0.2 ポイント低いことを意味している。区市ごとのデータ等の理由で大まか な計算となるが、不登校率の基本統計量は約3.1%なので、そのうちの 0.2 ポイントという数 字は、不登校率の約6.4%を占める。分析対象の中学校の 11 年間の述べ生徒数は 2,442,240 人であり、1 年あたりに換算すると 222,021 人である。そのうちの 0.2%ということは、東京 都49 区市全体で学校選択制を導入すると、導入しない場合に比べ、不登校の生徒数を約 444 人(約 77,907 人⇒77,463 人)、減らす計算になる。 また、「学校選択制導入X 年目ダミー」の係数については、統計的に有意ではないが、予想 通りすべて負の値を示している27 その他の変数の係数の符号については、小学校の推計結果と同じく、すべて予想通りであ る。 27 これらの理由についても、次章でさらに詳しく考察する。 中学生不登校率(%) 標準誤差 標準誤差 標準誤差 学校選択制導入1年目 -0.0332 0.1118 -0.0320 0.1122 -0.0335 0.1119 学校選択制導入2年目 -0.0316 0.1166 -0.0290 0.1170 -0.0318 0.1164 学校選択制導入3年目以上 -0.1943** 0.0948 -0.1928** 0.0952 -0.1998 ** 0.0915 教師数/生徒数 -7.2443*** 2.5371 -7.6535*** 2.5424 -7.6574 *** 2.5398 納税者一人当たり課税所得 -0.00002 0.00009 -0.00002 0.00008 一世帯当たり人口 -1.9555** 0.8473 離婚数/人口 0.3196 1.5888 定数項 8.3807*** 2.3907 3.4629*** 0.3604 3.4418 *** 0.2236 決定係数 観測数 539 0.67 0.67 0.67 係数 係数 係数 年度ダミー有(掲載省略) 区市ダミー有(掲載省略)

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8 学校選択制の導入の効果についての考察

本章では、学校選択制の導入が学力試験の正答率と不登校率に与える影響について、それぞれ 前章での推計結果の考察を記す。 8-1. 学校選択制の導入が学力試験の正答率に与える影響について 前章で述べたとおり、小中学校ともに、学校選択制の導入が学力試験の正答率に統計的有 意には影響しなかった。この理由については、以下のことが推測される。 まず、保護者・児童生徒側が、子どもの学力向上という面で、学校をあまり評価していな いことや、学校を選択する基準として「学力向上」という点が重視されていないことがあげ られる。その裏付けとして、内閣府の調査(2007)28においては、子どもの学力の向上という面 で、「学校の方が優れている」と答えた保護者が4.3%なのに対し、「塾・予備校の方が優れて いる」は70.1%と、大きく上回っている結果や、佐藤(2010)も指摘する通り、東京都の多くの 区で実施しているアンケートでは、学校を選択する基準として、「学力」をあげる保護者の割 合が尐ない現状がある。本稿の分析対象である東京都においては、公立中学3 年生の通塾率(平 成21 年度)は 69.1%と高く29、学力向上を学校以外に負っている部分が大きいと推測される地 域であることも効果が有意に出なかった要因として考えられる。 次に、学力の向上に寄与したことが実証された海外と比較すると、教育の質を向上させよ うとするインセンティブを高めるために、教員・学校間の競争を促す度合いが小さいことが 可能性として考えられる。具体的には、福井(2007)や戸田(2010)が指摘するように、私立学校 との競争環境(教育バウチャー制度の導入や民間教育機関の新規参入を容易にすることなど) の創出が不十分であること、匿名性が担保された上での厳格な学校・教員評価の実施が不十 分であること、学校ごとの試験結果の公開がなされていないことなどがあげられる。学校選 択制をより有益なものにするためには、これらの施策実施の検討が必要であろう。 3 つ目に、制度上の事情がある。いわゆる人気校は入学制限人数を超えると抽選となる。学 力が高くて評判のいい学校の競争倍率が高いのであれば、学力向上の実現を目指してその学 校に入学したくても、それがかないにくいことになる。一方、後述する不登校率を減らすと いう観点から見ると、例えば「仲の悪い同級生と同じ学校に行きたくない」という目的で制 度を利用する場合、その同級生の進学校を除く複数の学校から選択できるので、希望がかな う可能性が高くなるという違いがあると考えられる。 4 つ目に、データの制約がある。後述する、効果が有意に表われた中学校の不登校率は 11 年間のパネルデータでの分析に対し、学力試験の正答率は中学校で7 年間、小学校で 6 年間 であり、さらなる長期データをそろえて分析すると結果が異なる可能性がある。 28 「学校制度に関する保護者アンケート」 29 文部科学省「平成21 年度全国学力・学習状況調査」。本稿の分析対象は公立中学 2 年生の学力試験の 正答率だが、この通塾率の調査は中学3 年生を対象に行っているので、中学 2 年生のそれについては不明 である。

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8-2. 学校選択制の導入が不登校率に与える影響について 前章で述べたとおり、学校選択制の導入が不登校率に与える影響について、まず中学校を対 象にした分析では、学校選択制の導入から 3 年目以上になると、導入しない場合に比べて不 登校率が低くなることが統計的に有意に実証された。つまり、学校選択制の導入の効果として、 中学校の不登校率を減尐させたことが実証された。ただ、導入から1 年目と 2 年目に関して は、係数の符号が負になったものの、統計的には有意でなかった。3 年目以上の場合のみ有意 に効果が表われた理由としては、まず、学校選択制の導入 1 年目であれば、入学当時に制度 が利用可能であったのが1 年生のみであり、2 年目であれば 1 年生と 2 年生のみであるのに対 し、3 年目以上になれば全生徒が入学時に制度利用が可能な環境にあり、さらに年数が経過す ることにより制度がより定着していくことを意味するからである。また、第 6 章で述べたと おり、不登校率は学年が上がるほど高くなっており、中学 3 年生が不登校生徒の大きな割合 を占めることもあるだろう。 一方で、小学校の分析においては、学校選択制の導入が不登校率に有意に影響を及ぼしてい なかった。この理由については、まず、小学校と中学校の入学時をそれぞれ比較すると、前者 の方が幼く、同級生も尐ないがゆえに人間関係の形成具合が浅いので、学校選択制が利用でき なかったことが理由でいじめなどに合う可能性が小さいことが考えられる30。次に、第6 章の 基本統計量で示した通り、そもそも小学生の不登校率が中学生に比べてはるかに低く、統計的 分析によって実証しにくいことがあげられる31

9 まとめ

本稿では東京都の49 区市のパネルデータを用い、公立小中学校における学校選択制の導入が 学力試験の正答率と不登校率に与える影響について分析した。その結果、中学校の不登校率につ いては、制度を導入してから3 年目以上になると、導入しない場合と比べ、不登校率(%)が約 0.2 ポイント低くなることが統計的に有意に実証された。学校選択制の導入で、保護者や生徒にとっ てより魅力的な学校を選択できる環境を作ったことにより、不登校率が下がったことが示された といえるだろう。今後の研究においては、中学生の不登校率減尐に効果を与えた詳細なメカニズ ムについての解明が課題としてあげられる。 一方で、小学校の不登校率、小中学校の学力試験の正答率への影響については、統計的に有意 に実証されなかった。また、実証された中学校の不登校率に与える影響の分析についても、デー タの制約から区市ごとの比較をしており、個人や学校ごとのデータ(親の収入、勉強時間、家族 と過ごす時間等。学校ごとの場合は平均値。)を用いた分析とはなっていない。さらに、区市ご 30 東京都教育委員会「平成22 年度における児童・生徒の問題行動等の実態について」によると、平成 22 年度の公立小学校1 年生のいじめの認知件数は 100 件で 1 校あたり 0.076 件に対し、公立中学校 1 年生の いじめの認知件数は665 件、1 校あたり 1.047 件である。 31 分析に用いた小学校の12 年間の述べ児童数は 6,487,129 人。不登校率の基本統計量は約 0.37%。よっ て不登校児童数は1 年あたり 49 区市で約 2,000 人⇒1 年 1 区市あたり 41 人。1 区市あたり平均約 27 校な ので、1 校あたりの不登校数は約 1.5 人となる。同様の計算方法によると、中学校は 1 校あたり約 11.5 人 となる。

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との比較でも、本稿では容易に入手可能なデータを用いて研究しているが、例えば、区市ごとの 児童生徒の平均学習時間や学校のIT 環境整備状況、家族と過ごす平均時間など、さらなるデー タが得られれば、より精密な結果が導き出せるだろう。 しかしながら、仮にそれらの方法により学校選択制の導入のプラスの効果が実証されなかった 場合でも、逆にマイナスの弊害が示されていないということが重要である。つまり、福井(2007) や安藤(2010)も指摘する通り、学校間の競争を禁止したり、保護者や児童生徒の選択の自由を制 限したりすることは、尐なくとも理論的・実証的に規制の必要性が明確に示されない限りにおい ては、控えるべきである32。ましてや、本稿での実証分析において、中学校の不登校率減尐とい う形で効果が実証されたことは、なおさら上記の考え方を後押しすることになっただろう。

謝辞

本稿の作成にあたり、西脇雅人助教授(主査)、福井秀夫教授(副査)、安藤至大客員准教授(副査) をはじめ、多くの関係教員の方々から懇切丁寧なご指導をいただきました。また、まちづくりプ ログラム及び知財プログラムの同期生には、日々の議論の中で有益なご意見をいただきました。 さらに、貴重な研究機会を与えてくださった派遣元の上司や前期修了生からは、頻繁に温かい励 ましとアドバイスをいただいておりました。皆様に心から感謝いたします。 なお、本稿の内容は筆者の所属機関の見解とは一切関係ないことを申し添えます。 32 福井編(2007)において、学校選択制に対する典型的な反対論と、それらの論理矛盾について詳しく解説 している。

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付録:データの出典及び作成方法

データ 出典及び作成方法 学力試験の 正答率 東京都教育委員会実施の「児童・生徒の学力向上を図るための調査」を 利用。年度によって、出題形式が異なる。平成 15 年度(小学生は平成 16 年度)から 17 年度については、各科目の正答率の和を科目数で除したもの を用いた。平成 18 年度については、それに加え、「問題解決能力等」に 関する調査の正答率を加え、「科目数+1」で除したものを用いた。平成 19 年度、平成 20 年度については、「問題解決能力等」に関する調査の正 答率を用いた。平成21 年度については悉皆調査未実施のため、対象から 除いた。平成 22 年度については、「読み解く力」に関する調査の正答率 を用いた。これら、年度による出題形式や難易度の違いを制御するため、 説明変数に「年度ダミー」を用いた。 不登校率(%) 東京都教育委員会「平成**年度公立学校統計調査報告書」から、不登 校の児童生徒数を全児童生徒数で除した。年度により、不登校率に影響し うる社会環境等が異なるため、それを制御するために説明変数に「年度ダ ミー」を用いた。 学校選択制の 導入状況 橋野晶寛(2006)「集計データによる公立学校選択制の動向分析」東京大 学大学院教育学研究科教育行政学研究室紀要第25 号、 また、東京都HP「東京都公立学校数、学校選択制の実施状況及びコミ ュニティ・スクールの設置状況について」 (http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/03/20l3oh00.htm), 及び、各区市HP より調査した。 児童生徒一人 あたりの教師数 東京都教育委員会「平成**年度公立学校統計調査報告書」から、教員 数(校長、副校長、養護教諭を除く)を児童生徒数で除した 納 税 義 務 者 一 人 あ た り 課 税 対 象 所得 総務省統計局「統計でみる市区町村のすがた」、および、総務省HP「平 市町村税課税状況等の調」 (http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/ czaisei_seido/ichiran09_10.html)より調査した。 一 世 帯 あ た り の 人口 東京都総務局「住民基本台帳による東京都の世帯と人口」から世帯数、 人口が得られ、人口を世帯数で除した。 離婚率 東京都総務局「東京都統計年鑑」より離婚数、東京都総務局「住民基本 台帳による東京都の世帯と人口」から人口が得られ、離婚数を人口で除し た。

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参考文献

安藤至大(2010)「学習者のインセンティブと教育政策の経済分析」戸田忠雄編『教育の失敗』日 本評論社,87-112 N.グレゴリー・マンキュー著 足立英之ほか訳(2005)『マンキュー経済学Ⅰミクロ編(第 2 版)』 東洋経済新報社 佐藤孝弘(2010)「学校選択制の現状分析」安田洋祐編『学校選択制のデザイン』NTT 出版, 15-33 東京都HP(www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/03/20l3oh00.htm) 「東京都公立学校数、学校選択制の実施状況及びコミュニティスクールの設置状況について」 東京都教育委員会「平成22 年度における児童・生徒の問題行動等の実態について」 東京都総務局「平成23 年度学校基本調査報告」 戸田忠雄編(2010)『教育の失敗』日本評論社 内閣府(2009)「学校教育に関する保護者アンケート」 内閣府規制改革会議(2009)『「学習者本位の教育の実現に向けた調査」米国調査結果報告』 中村亮介(2009)「学校選択制が学力に与える影響の実証分析-東京都学力パネルデータを用いて-」 エコノミア,第 60 巻第 2 号,57-74 福井秀夫(2010)「学校の枠組みとなる法制度はどのように機能しているか」戸田忠雄編『教育の 失敗』日本評論社,1-42 福井秀夫編(2007)『教育バウチャー -学校はどう選ばれるか-』明治図書 文部科学省「平成21 年度 全国学力・学習状況調査 調査結果」 文部科学省HP(www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-sentaku/06041014/002.htm) 「よくわかる用語解説」 文部科学省HP(www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-sentaku/08062504/001.htm) 「学校選択制について(入学時)」

Atsushi Yoshida, Katsuo Kogure, and Koichi Ushijima.(2007) “School Choice and Student Sorting: Evidence from Adachi City in Japan.” Department of Social Systems and Management Discussion Paper Series, 2007, No.1170

Caroline M. Hoxby (2000) “Does Competition Among Public Schools Benefit Students and Taxpayers?”,American Economic Review, Vol.90(5), 1209-1238.

Caroline M. Hoxby (2006) “School Choice: The Three Essential Elements and Several Policy Options”, Education Forum, August 2006

David Deming(2011) “Better Schools, Less Crime?”, The Quarterly Journal of Economics, 126 (4),2063-2115.

Greene, Howell & Peterson (1998) “Lessons from the Cleveland scholarship program”, Program on Education Policy and Governance, Harvard University

参照

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