2016
(40巻1号)
※:平成28年度東海学校保健学会優秀演題賞受賞者
TOKAI JOURNAL OF SCHOOL HEALTH
第41巻1号 2017年9月
目 次
巻頭言 森田一三 学校保健における世代間連鎖戦略 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1 総 説 佐久間重光 機能的近赤外分光法の学校保健領域での応用 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5 研究論文 (原著・報告・資料) 松原紀子,千野直仁,下村淳子,玉川達雄 小学生が付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15 近藤充代,渡邉智之,大澤 功 男子高校生が取り組むピア・サポート・プログラムが学校環境適応感に及ぼす影響 ‥‥ 31 原 郁水,古田真司 学校における1か月間の成功経験・失敗経験が中学生のレジリエンスに及ぼす影響 ‥‥ 43 石田敦子,村松常司,廣 美里,廣 紀江,田中清子,出川久枝 いじめを受けた経験が小学生の心理社会的要因に与える影響について ‥‥‥‥‥‥‥ 53 後藤晃伸※,家田重晴 生活行動の改善をねらいとした高等学校保健学習における指導方法の検討 ─アクティブ・ラーニングの考え方を取り入れて─ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 65 赤田信一,山田浩平,山下智暉 中学校の保健体育教科書(保健分野)における掲載図表の検討 ─面積の割合と内容の分析─ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 81 森 慶恵,古田真司 中学生の健康情報に対する判断力の検討 ─健康情報に関する批判的思考力テストの誤答分析─ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 95 林 典子,下村淳子,戸田須恵子,井澤昌子 保健室来室児童生徒への養護教諭の関わり方に関する研究 ─養護教諭が児童生徒に対して行うタッチの現状─ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 111 後藤多知子,西田麻優香※ A小学校における児童のトイレの使用現状に関する一考察 ─和式の使用に着目して─ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 123 高橋裕子 明治期京都の学校医設置構想─都市衛生の一環としての学校衛生─ ‥‥‥‥‥‥‥‥ 135 投稿規程‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 147 編集後記学校保健における世代間連鎖戦略
森田一三
Generational Linkage Strategy in School Health
Ichizo MORITA ライフコース疫学の成果は,学校保健の現場に応用可能な内容を含む Kuh らがライフコース疫学の枠組みを提示した1)ことで,健康や疾病の罹患に対する考え方や予防 のあり方は大きく広がりをみせた。 Kuh らはライフコース疫学を,胎児期,幼少期,青春期,青年期,および成人期における物理的・ 社会的な曝露による,その後の健康や疾病リスクへの長期的な影響に関する学問1)と定義している。 そしてその目的は,個人または世代のライフコースにわたり疾病リスクの増加に影響をおよぼす,生 物学的,行動的,心理的過程を解明することである1)と述べている。このように記述すると難解に思 えるが,要は,健康や疾病は生涯にわたる様々な要因の積み重ねが現れているのだから,その視点で 健康や疾病に影響する要因を明らかにしようということである。生活習慣病に罹患するのは,最近, 運動をしていないことやここ数年の食生活が乱れていることのみが原因ではなく,生まれてから,も しかすると胎児期からの,その人を取り巻く様々な環境が影響しているというわけである。さらに, その要因が人生の中で強く影響する時期が明らかになれば,効率的な対策を行うことが可能になるこ とを指摘している。そして,将来の疾病や健康に対して要因が強い影響を与える時期は人生の早い時 期に訪れるか,または,早い時期からリスクの蓄積が始まる可能性を示している。ライフコース疫学 は人々の健康について長期にわたる視点で要因を探す研究スタイルといえる。 口腔の健康を例えにするのであれば,成人してからの口腔の健康は幼少期の影響を受ける,という ことである。乳歯のう蝕罹患が多い者は永久歯のう蝕罹患のリスクが高い2)ことが知られている。そ ればかりか,80歳を超えた高齢者の歯の保有状況に子どもの頃の環境が影響することの可能性3, 4)が 指摘されている。 ライフコース疫学の視点から学校保健の研究を考えると,中垣5)が述べたように,幼児,児童生徒, 学生の健康づくりについて,高齢者,成人を対象とした調査研究を行うことは意義のあることであ り,また,学校保健の研究に広がりをもたらすといえる。そして,ライフコース疫学の成果は,学校 保健の現場に応用可能な内容を含む可能性が高い。なぜならば学校保健は生涯にわたる心身の健康を 目指すもの6)だからである。 人々を取り巻く環境が健康にとって重要だということ 学校保健におけるライフコース疫学の成果の応用は,児童生徒自身の健康への影響のみでなく,保 護者の健康への影響,そして児童生徒の将来の子どもへの影響の3つを視野に入れることができると 考える。裏を返せば,学校保健におけるライフコース疫学の枠組みで行う研究はこの3つの視点で評 価を行うことができる。1つ目の児童生徒自身の健康への影響は従来行われている学校保健の評価で ある。そして,保護者の健康への影響,児童生徒の将来の子どもへの影響はこれまでも考慮はされて
きたと思われるが,これからの学校保健においてさらに強調されるべきと考える。Sheiham らは,心 疾患や糖尿病,う蝕や歯周疾患など多くの生活習慣病の要因は共通していることを指摘し,その共通 する要因をもたらしているのはその人を取り巻く環境であると結論付けている7)。この考え方はコモ ン・リスク / ヘルス・ファクター・アプローチと呼ばれている。しかし,成人でさえ,環境を健康に 資する状況へ変えてゆくことは困難である。ましてや学校保健の対象である児童生徒においてはなお のこと自分を取り巻く環境を変えることは難しいだろう。 再び口腔の健康の例で述べるのであれば,う蝕を防ぐための間食指導を幼稚園児や小学校児童に行 っても食事や間食の環境を自身で変えるのは困難である。なぜなら,食事や間食は保護者によっても たらされており,児童自身が変えることは難しい場合が多いからである。その保護者にしても多く は,保護者の都合のよい時間に,保護者が入手しやすい食品を与えることになる。良いとわかってい ても入手が困難であれば,それは選択肢から外れる場合が多い。すなわち,健康に資する環境をもた らすためには,物や情報が提供される社会的環境も変えなくてはならない。 Rose らが提唱したポピュレーションアプローチ8)は,環境を変えることで集団全体の習慣を健康的 なものとすることが,より効果的で,また持続可能な変化をもたらすことを指摘している。疾病のリ スクが高い人だけを健康にとって良い習慣に変化させることは困難である。なぜなら,人々は自分1 人だけ周囲と違う行動をとることは難しい。Rose らが提唱するポピュレーションアプローチ,Sheiham らのコモン・リスク / ヘルス・ファクター・アプローチの2つの方策に共通するものは,人々を取り 巻く環境が健康にとって重要だということである。 三度,口腔の健康を例えにするのであれば,Sheiham はう蝕予防に対する歯みがきの限界を指摘し, 近年のう蝕減少にはフッ化物の応用,ショ糖摂取のコントロールの効果の寄与,社会経済的要因が大 きい9, 10, 11)としている。児童がフッ化物の応用,ショ糖摂取のコントロールの恩恵を受けるためには 児童自身の意識の変化も必要であるが,児童がフッ化物の応用,ショ糖摂取のコントロールが容易に 可能な環境であるということが強く影響する。 ライフコース疫学の成果は学校保健では児童生徒に伝えられるが,環境が健康に影響するとするな らば,その児童生徒自身への効果は限定的と考えざるを得ない。なぜなら,児童生徒自身が自分たち が影響を受ける環境を変える力はわずかだからである。しかし,その児童生徒自身が成人し,保護者 となった時に生活する環境を作っていく中で,保護者が児童生徒であった時に学んだ知識が活かされ ることは期待できる。このように,学校保健の効果は世代を超えて影響する可能性がある。 これは世代間の健康の連鎖と言える。世代間の連鎖と言うと,貧困や虐待など負の連鎖がとりあげ られている。しかし,好ましい連鎖のあり方についての議論も可能であると考える。これは,世代間
連鎖戦略※1(Generational linkage strategy)と呼ぶことができる。
世代間連鎖戦略は健康にかかわる環境をよりよく変えることのできる力を養う 世代間連鎖戦略とは,人々が学んだ健康に資する環境のあり方を,次世代の健康のための環境づく りに応用されるようにすることと定義できる。このコンセプトはコモン・リスク/ヘルス・ファクタ ー・アプローチとライフコース疫学をつなぐものである。そしてその応用が期待される場面は学校保 健である。健康づくりには人々を取り巻く環境が重要であり,幼少期の環境が生涯の健康を左右する というライフコース疫学の知見を健康づくりに応用するためには,自ら環境をつくることの難しい児 童生徒に代わり,その保護者が行わなくてはならない。そして,その保護者へ等しく情報伝達を行う ことを可能とする機会は学校保健の場である。すべての保護者はかつて皆,児童生徒であり,学校保
健の対象者であったからである。英国の Crick らはシティズンシップ教育12)というあり方を提唱して いる。これは教育において児童生徒が将来,社会をよりよく変えることができる力を養おうとするも のである。世代間連鎖戦略は健康にかかわる環境をよりよく変えることのできる力を養うという点 で,シティズンシップ教育と同じ方向を向いていると考える。 世代間連鎖戦略は,学校保健の効果はいつ測定可能か,という問いに1つの答えを与えてくれる。 学校保健で学んだことが自らの健康づくりに用いられるのはもちろんであるが,その児童生徒が成人 となり,次世代の児童生徒の健康にとってよい環境を築くことができているか,または,次の世代の 健康が改善されているかというとは,学校保健としての重要なアウトカムと考える。その評価を行う 期間は20年から30年になる。すなわち,学校保健の効果はその世代が保護者となった時である。こ の評価を行い,より良い環境づくりに寄与できる学校保健のあり方を明らかにする手段を,世代間連 鎖疫学(Generational linkage epidemiology)と呼ぶことができる。
世代間連鎖疫学による調査研究を行おうとすると,対象となった児童生徒が保護者となるまでの長 期にわたる観察が必要になる。しかし,一般に研究は,追跡調査(前向き研究)に先駆け,後ろ向き 研究のデザインで行われる。この方法を用いれば今すぐにでも世代間連鎖疫学を用いて研究をするこ とが可能である。
(第60回東海学校保健学会会長,日本赤十字豊田看護大学教授)
※1:世代間連鎖戦略(Generational linkage strategy)および世代間連鎖疫学(Generational linkage epidemiology) の用語については,これまで著者が見聞したことが無い。また,web の検索においてもみあたらない。世代間連鎖 戦略および世代間連鎖疫学はサルトジェネシス(健康創造)の視点からのアプローチであり,主として健康になる ための要因を明らかにすることを目指すものであることを付記する。
もし,世代間連鎖戦略(Generational linkage strategy)および世代間連鎖疫学(Generational linkage epidemiology) の用語がすでに同様に意味合いで用いられている,また同様の概念が別の用語で定義されていたのであれば,著者 の知見が不充分であったことによるものである。
文献
1)Kuh D, Ben-Shlomo Y, Lynch J, Hallqvist J and Power C:Life course epidemiology, J. Epidemiol. Community Health, 57(10), 778‒783, 2003
2)McDonald SP, Sheiham A:The distribution of caries on different tooth surfaces at varying levels of caries̶a compilation of data from 18 previous studies, Community Dent Health, 9(1), 39‒48, 1992
3)水野照久,中垣晴男,村上多恵子,他:80歳で20歯以上保有するための生活習慣,日本公衆衛生雑誌,40(3), 189‒195,1993
4)Morita I, Nakagaki H, Kato K, et al.:Salutogenic factors that may enhance lifelong oral health in an elderly Japanese population, Gerodontology, 24(1), 47‒51, 2007
5)中垣晴男:学校保健とライフコース疫学の視点,学校保健研究,51(2),巻頭言,2009
6)文部科学省:生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツの振興の在り 方について(保健体育審議会 答申),1997,Available at: http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_ hoken_index/toushin/1314691.htm. Accessed July 1, 2017
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8)Rose G:予防医学のストラテジー,曽田研二,田中平三(監訳),医学書院,東京,1998
9)Sheiham A(訳 新庄文明):21世紀の口腔保健戦略 健康教育は計画的に行わなければ効果がない,歯界展望, 122(2),368‒372,2013
10)Sheiham A(訳 新庄文明):21世紀の口腔保健戦略 フッ化物の小児齲蝕予防効果に関する最新の科学的根拠, 歯界展望,123(5),1037‒1041,2014
11)Sheiham A,相田潤(訳 新庄文明):21世紀の口腔保健戦略 日本における齲蝕減少の理由,歯界展望, 124(2),370‒374,2014
機能的近赤外分光法の学校保健領域での応用
佐久間重光
愛知学院大学歯学部 冠・橋義歯学講座
Application of Functional Near-infrared Spectroscopy
in School Health Area
Shigemitsu SAKUMA
Department of Fixed Prosthodontics, School of Dentistry, Aichi Gakuin University キーワード(Key Words):
機能的近赤外分光法,前頭葉,タッチ
functional near-infrared spectroscopy, frontal lobe, touch
Ⅰ はじめに
近年,脳機能測定法として機能的磁気共鳴画像法(Functional magnetic resonance imaging: fMRI), ポジトロン断層法(Positron emission tomography: PET),脳磁図(Magneto-encephalography: MEG)な どの脳機能イメージング法が発達し,脳活動の観察が可能になった。しかし,これらの方法はいずれ もアーチファクトを防止するため,撮像時に頭部を固定する必要があり,各種の運動などの動作を伴 う課題の測定を行う場合には不向きである。その点,機能的近赤外分光法(Functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)は,頭部を含めた身体の動きをそれほど拘束せずに測定することが可能である。 fNIRS は,1977年に Jöbsis が近赤外光を用いて動物の心臓や脳におけるヘモグロビン(Hb)の酸化 の程度を非侵襲的に計測することが可能であることを発表して以来1),生体組織における血流・酸素 代謝のモニタ手段の一つとして多くの基礎研究および装置の開発が進められてきた。そののち1990 年代には,fNIRS は非侵襲的に局所脳血流をリアルタイムに測定することが可能であるとの報告がな され2, 3),新しい脳機能イメージング法の一つとして注目されるようになった。 歯科領域では,口腔機能運動の一つである咀嚼運動を行うことにより,一次感覚運動野,補足運動 野,島皮質,小脳および視床に,脳活動に伴う局所的な血流の増加を認めることが報告されてい る4‒6)。また,咀嚼運動は,学習・記憶などの高次脳機能に関与する前頭前野への血流増加をもたら すことから,認知機能との関係についても検討がなされている6)。これらの結果は,口腔機能運動を 利用して脳を活性化することが,運動機能の向上や認知症の予防に繋がる可能性を示唆している。し かし,種々の口腔機能運動時における前頭前野の活動状況については十分解明されていないのが現状 であった。そのため著者は,口腔機能運動を利用して前頭前野の血流を効率良く増加させるための運 動条件を検討している。そんな折,養護教諭が児童・生徒に対して行う「タッチ」の意味づけが出来 ないものかとの相談を受けたことがきっかけとなり,fNIRS の応用を試みることになった。 本稿では,著者がこれまで行ってきた研究の概要と学校保健領域における「タッチ」のエビデンス レベルの向上に fNIRS 測定が応用可能かを述べる。
図1 fNIRS の測定原理 血液中のヘモグロビンに酸素が付くと近赤外光の吸収と散乱の 度合いが変化する。fNIRS はこの原理を利用して,酸素化ヘモ グロビン(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)の 濃度変化を非侵襲的に測定する脳機能イメージング法である。 Ⅱ fNIRS の概要 1 fNIRS の利点
fNIRS の fMRI や PET 等と比較した利点として,①一般的な安全性が確認されている近赤外光は, 生体に対しても非侵襲的である。②対象者への拘束性が少なく,他の装置に比べより自然な姿勢・環 境下での測定が可能である。③騒音や閉塞感による被験者への心理的負担が少なく,慎重な対応が求 められる放射線や強磁場も利用していない。④長時間にわたる連続記録が可能である。⑤装置は小 型・可搬性,比較的安価で維持費用も低廉である。⑥空間分解能はそれほど高くない(20∼30mm) ものの時間分解能が比較的高い(0.1秒)。などが挙げられる7, 8)。 2 fNIRS による測定 fNIRS 測定では,近赤外光(波長700∼900nm の光)が生体組織内における各種構成成分(Hb やミ オグロビンなど)に吸収される度合い(吸光度)の異なる性質を利用している。脳領域では,血中 Hb の酸化・還元状態によって吸光度に相違が観られることを利用して,Hb 濃度と光の光路長を基に 酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)量と脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb)量を算出する2)。近赤外光は 発光プローブから放出されたのち,皮膚や頭蓋骨を浸透して頭蓋内に入り,バナナ状のアーチを描き プローブから2∼5cm の深さまで達する間に,脳組織に反射・吸収される。脳で吸収されなかった 光は再び頭皮の表面まで戻ってくるため,受光プローブによって検出することが出来る。近赤外光は このようにして組織下に放出され,それぞれのプローブ間で検知された光の差から Hb 濃度を測定し ている。一般的に oxy-Hb と doxy-Hb の吸光特性は異なるため,2種類以上の波長の近赤外光を用い ることで,濃度変化を測定することが出来る(図1)。基本的には,吸光物質を含む溶液に光を照射 したときの,光の減衰と吸光物質の濃度の関係を示した Beer-Lambert の原理と同一であるが,生体 内では相対的な変化量を測定することになる。fNIRS により測定された oxy-Hb と deoxy-Hb の動態
は,fMRI による脳血流動態とほぼ一致しており9),データの信頼性の高さは多くの研究で実証され
ている10‒12)。これらの理由から,運動・動作に伴う前頭前野の活動状況を把握するためには,fNIRS
図2 fNIRS 測定システム 測定用プローブは,発光部と受光部の距離が3cm,測定範囲により3×5もしくは3×11の 配列のものを使用し,前頭葉領域を対象としてプローブ最下列が脳波測定時に利用されて いる T3-Fpz-T4(国際10-20システム基準点)のラインと一致するように設置する。 3 fNIRS の分解能 fNIRS 測定時のプローブの配置と脳の解剖学的部位との対応関係は,脳波計測のための国際10-20 システム基準点を指標とした電極配置法14)に基づき決定するものが通法である。国際10-20システム 基準点は,鼻根部と後頭結節および左右耳介前点をそれぞれ基準とし,これらの中点となる正中中心 部を求め,鼻根̶後頭結節間の距離および左右耳介前点間の距離を100%として,10%もしくは20% の等間隔で区切ることにより決定された基準点に基づいてプローブを配置する(図2)。この手法は, 長年にわたる脳波計測研究の結果,電極位置と脳の解剖学的部位との正当な対応が確認されてい る15)。そのため,この配置法に従いプローブを設置したのち,バーチャル・レジストレーション法16) を用いて,各チャンネルと脳の解剖学的部位17)の対応関係を同定した。バーチャル・レジストレーシ ョン法は,MRI や3D デジタイザーを用いることなく,各チャンネルに対する脳の解剖学的部位(標 準脳座標系)を統計的な処理に基づき決定する方法で,約1000名の被験者によるレジストレーショ ン結果をベースに確立されたものである。また,この方法の測定精度は約1cm であり,この種の測 定では実用上問題のないレベルの空間分解能を有している。 Ⅲ 歯科領域での応用 認知症の縦断的有病率調査を行っている久山町研究をベースとして新たに推計された認知症の有病 者数は,2025年には約700万人となる。認知症の発症原因については,「脳の萎縮や脳血流量の減少 に起因した脳組織の障害」が指摘されており,運動による脳血流の増加が認知症の予防に役立つ可能 性のあることが研究者の関心を集めている。歯科領域における代表的な運動は咀嚼運動であるが,口 腔機能運動はそれだけではない。そこで,口腔機能運動を利用した脳機能向上のための運動法を確立 するために,健常者を対象としてガム咀嚼運動,噛みしめ運動および開閉口運動を実施した際の前頭 前野の活性状況を fNIRS により検討した。 1 被験者 被験者は,研究への参加に同意の得られた右利きで,顎口腔機能に異常を認めない健常有歯顎者 22名とした。その他の選択条件としては,第3大臼歯以外に歯の欠損を認めない者,口腔機能運動
頭頂側 左側 右側 . -. . -. . -. . -. . -. (mM·mm) (mM·mm) (mM·mm) (min) (min) (min) 運動 運動 運動 運動 図3 ヘモグロビンマップの1例 噛みしめ運動により得られた oxy-Hb および deoxy-Hb 波形を描記したヘモ グロビンマップの1例を示す。図は各 Hb の経時的な推移を示す。縦軸は 測定値(mM・mm),横軸は時間(分)を示す。 を行うことにより顎関節および咀嚼筋に疼痛を自覚しない者,神経学的または精神医学的に障害の既 往がない者とした。 2 被験運動 被験運動として,ガム咀嚼運動のほかに噛みしめ運動および開閉口運動を選択し,各被験者にそれ ぞれの運動を2条件,1分間ずつ行わせた。ガム咀嚼運動は1Hz および2Hz の周期(1Hz:1秒間 に1回の咀嚼,2Hz:1秒間に2回の咀嚼)で無味・無臭のガムベース(medium type, LOTTE Co, Ltd)を咀嚼させた。噛みしめ運動は20%および40% MVC(被験者の最大噛みしめ強さを100% MVC; maximum voluntary contraction とした場合の20%と40%の噛みしめ強さ)で持続的に噛みしめ させた。開閉口運動は0.5Hz および1Hz の周期(0.5Hz:2秒間に1回の開閉口,1Hz:1秒間に1 回の開閉口)で開口域が40mm 以上となるよう開閉口させた。なお,周期の規定にはメトロノームを 使用し,噛みしめ強さの規定には筋電計を使用した。
3 多チャンネル fNIRS 測定システム
脳活動に伴い変化する oxy-Hb および deoxy-Hb の測定には,近赤外光の波長が695 nm および830 nm の多チャンネル fNIRS 測定システム(ETG-4000, Hitachi, Ltd)と,これに付属する22チャンネル のプローブを用いた。測定用のプローブは,発光部と受光部の距離が3cm,3×5の配列のものを使 用し,前頭前野領域を対象としてプローブ最下列が脳波測定時に利用されている T3-Fpz-T4(国際 10-20システム基準点)14)のラインと一致するように設置した(図2)。本検討では,この配置法に従 ってプローブを設置して,バーチャル・レジストレーション法16)を用いて各チャンネルと脳の解剖学 的部位17)の対応関係を同定した。 4 データ分析 図3に噛みしめ運動により得られた oxy-Hb および deoxy-Hb 波形(ヘモグロビンマップ)の1例
ガム咀嚼 噛みしめ 開閉口 図4 運動条件の違いにより活動の差異を認めた脳部位 ガム咀嚼運動を行った場合,2Hz でのガム咀嚼により左側の下前頭回に活動を認めた。噛みしめ 運動を行った場合,40% MVC での噛みしめにより両側の中前頭回および右側の下前頭回に活動 を認めた。開閉口運動を行った場合,1Hz での開閉口により左側の上前頭回に活動を認めた。 を示す。fNIRS 測定により得られるデータのうち,oxy-Hb の変化は毛細血管レベルの脳血流量にほ ぼ比例する。そのため,データ分析は局所脳血流変化の適切な指標となることが動物実験18)において も証明されている oxy-Hb を対象とした。各被験運動の周期あるいは強度(運動条件)の違いによる 前頭前野の活動状況を把握するために,まず各被験運動を行う直前の安静時および運動時のそれぞれ 1分間における oxy-Hb の平均値を求め,運動時の値から安静時の値を減じて oxy-Hb 変化量をチャ ンネルごとに算出した。次いで各被験運動の運動条件ごとに算出した oxy-Hb 変化量を Paired t-test を 用いて p 値を算出し,ボンフェローニ調整により多重比較補正を行った。 5 結果と考察 図4に運動条件の違いにより活動に差異を認めたチャンネルを被検運動ごとに示す。ガム咀嚼運動 では,2Hz ガム咀嚼運動時の oxy-Hb 変化量は,1Hz ガム咀嚼運動時の oxy-Hb 変化量と比較して,下 前頭回において大きな値を示した。噛みしめ運動では,40% MVC 噛みしめ時の oxy-Hb 変化量は, 20% MVC 噛みしめ時の oxy-Hb 変化量と比較して,中前頭回および下前頭回において大きな値を示 した。開閉口運動では,1Hz 開閉口運動時の oxy-Hb 変化量は,0.5Hz 開閉口運動時の oxy-Hb 変化量 と比較して,上前頭回において大きな値を示した。したがって,各被検運動ともに運動周期あるいは 運動強度を増すことにより脳部位が活性化することが明らかになった。 ガム咀嚼運動および噛みしめ運動については共通して下前頭回の活性化が認められたものの,開閉 口運動については上前頭回が活性化を示した。この結果の相違は,信号伝達経路の違いを反映してい るものと考える。本研究では,運動を規定するために聴覚刺激および視覚刺激を用いた。したがっ て,ガム咀嚼および噛みしめ運動は聴覚・視覚情報に基づいてコントロールされることになる。これ らの情報は,側頭葉あるいは頭頂葉を経由したのち前頭前野に送られ行動の決定に貢献する。そして 運動周期や強度が増すことにより高度な情報処理が必要となり,近接する脳部位の活動が増加するこ とになる。この際,ガム咀嚼および噛みしめ運動では信号が側頭葉を経由し,前頭前野に伝達された のち,運動前野から一次運動野,三叉神経運動覚を経由して運動が実行される19)。そしてこれらの脳 部位に近接する中前頭回や下前頭回の脳活動が増加したものと推察する。また,開閉口運動により活 性化を認めた上前頭回は上前頭溝の上方に位置し,この後部には錐体外路系の運動中枢である運動前 野があり,体性感覚情報が頭頂連合野から伝達され統合される領域である。体性感覚情報は自己身体 情報をもとに自己の空間・運動知覚,対象物と自己との相互関係などの情報処理が行われる20)。この ように,実行する運動が異なることにより信号伝達経路に違いが生じ,結果として活性化を認めた脳
部位に相違が認められたのではないかと推察する。 この検討で活性化した脳部位は,いずれも背外側前頭前野(Brodmann area)に相当し,学習,記 憶,ワーキングメモリーを司るだけでなく,目的とする行動を遂行するためのプログラミングあるい は適切な行動の選択など高次の行動制御が必要な場合に活動を示す脳部位である21)。本研究で実施し た運動を遂行するためには,目的とする行動を制御して実行する必要がある。その結果として近接す るそれぞれの脳部位が活動して oxy-Hb が増加したのではないだろうか。今後さらなる検討が必要で はあるものの,運動強度を強める,あるいは速くすることは,前頭前野の活性を高めるためのトリガ ーの一つになることが示唆される結果となった。 Ⅳ 学校保健領域での応用 都市化,少子高齢化,情報化,国際化などによる社会環境や生活環境の急激な変化が,児童・生徒 の心身の健康に大きな影響を与えている。学校生活においても生活習慣の乱れ,いじ め,不登校,児 童虐待などのメンタルヘルスに関する課題,アレルギー疾患,性の問題行動や薬物乱用,感染症な ど,新たな課題が顕在化している。このような現代的な健康課題の解決を図ることが,学校保健に求 められている。このような状況の中で,養護教諭は非常に大きな役割を果たしている。養護教諭が行 うヘルスカウンセリングは,職務の特質や保健室の機能を十分に生かし,児童・生徒の様々な訴えに 対して心や体の両面に対応している。特に痛みや不安を抱えて保健室を訪れる児童生徒に対して,受 容するとともに,正しく状況を観察するためにも「触れること」すなわち「タッチ」することは必要 不可欠とされている。 1 タッチによる中枢神経系の反応 タッチによる体性感覚の入力は,中枢神経系でアセチルコリン,セロトニン,オキシトシン,エンケ ファリンなど,こころの働きや種々の高次脳機能に重要な神経伝達物質に影響を与える22)。例えば,ス トレスホルモンであるコルチゾルは, 視床下部からの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(corticotropin-releasing hormone: CRH)の作用によって下垂体前葉からの副腎皮質刺激ホルモンを介して階層的に調 節されるが , それ以外のストレス反応にも脳内の CRH が関与することが知られている23)。また,線維 筋痛症患者では尿中 CRH 濃度はうつレベルと正の相関を示し,タッチによって低下するとの報告がな されている24)。このようにタッチは,リラックスや疼痛緩和などさまざまな効果が期待できる。 2 養護教諭が行うタッチの分類と使用する場面 養護教諭が行うタッチは種々あり,場面により使い分けていることが保健室での実態を調査した下 村ら25)により報告されている。この報告では,タッチを共感的タッチ(泣いているとき),教育的タ ッチ(教室に行きたがらないとき),道具的タッチ(症状を訴えているとき),処置的タッチ(ベッド に移動するとき)などに分類している。 3 脳活動を指標としたタッチのエビデンスレベルの向上 タッチは使用する場面により使い分けられているようであるが,その際の触れかたの違いによって もタッチには種類があり,手を当てるタッチ,さするタッチ,たたくタッチなどがある。したがっ て,タッチの種類(触れかたの違い)により皮膚からの感覚入力が異なり,伝達される信号および経 路に相違をもたらし,結果として脳での活動様相が異なることが十分に考えられる。そこで,タッチ のエビデンスレベルの向上を目的として,種々のタッチを行った際の前頭葉を中心とした活動状態を fNIRS により測定することにした。 研究への参加に同意の得られた健常ボランティア1名(女性,22歳)を対象として,養護教諭経
:oxy-Hbの増加が認められた範囲 図5 タッチにより得られた2D トポグラフィ画像の1例 「手を当てるタッチ」を行った場合,両側の縁上回および右側の中心前回,下前頭 回眼窩部に活動を認めた。「さするタッチ」を行った場合,両側の中心前回,中心 後回,上側頭回,中側頭回,下前頭回三角部および眼窩部に活動を認めた。 験者が約800g の荷重となるよう背中中央(左右の肩甲骨の中間部分)に右側手掌でタッチした。タ ッチは「手を当てるタッチ」と「さするタッチ」を選択し,それぞれ30秒間のタッチを行った際の 前頭葉における活動を測定した。脳活動の測定には多チャンネル fNIRS 測定システム(ETG-4000, Hitachi, Ltd)と,これに付属する52チャンネルのプローブを用いた。測定用のプローブは,発光部 と受光部の距離が3cm,3×11の配列のものを使用した。図5にタッチにより得られた測定例(2D ト ポグラフィ画像)を示す。「手を当てるタッチ」を行った場合では,両側の縁上回および右側の中心 前回,下前頭回眼窩部において oxy-Hb の増加に伴う活動が認められた。また,「さするタッチ」を 行った場合では,両側の中心前回,中心後回,上・中側頭回および下前頭回眼窩部において oxy-Hb の増加に伴う活動が認められた。 今後さらなる研究が必要ではあるものの,今回の測定により活動が認められた脳部位の機能とタッ チの関係について述べる。「手を当てるタッチ」,「さするタッチ」に両側性に活動が認められた縁上 回および中心後回は,ともに体性感覚野(Brodmann area)であり,皮膚・筋肉・腱・関節からの感 覚を処理する。この部位の活動は,背中をタッチされた際の感覚の入力が反映されたもので,他の種 類のタッチを行った場合でも同様に活動が認められる脳部位であると考えられる。また,下前頭回眼 窩部についても「手を当てるタッチ」,「さするタッチ」ともに活動が認められた。この脳部位は背外 側前頭前野(Brodmann area)であり,学習・記憶・行動のモニタリング・運動のプログラミング・ ワーキングメモリー等を司ることが知られている21)。また,感覚情報の統合や期待に関連していると の報告もある。サルを用いた実験において,下前頭回眼窩部のニューロンは感覚刺激と報酬の連合学 習により,感覚刺激に速やかに応答するようになることが報告されている26)。さらに,「さするタッ チ」については,側頭回についても活動が認められた。この脳部位は,音の感覚や音声言語処理,コ ミュニケーション,距離の認知,顔の認知などに関わるとされている。したがって,タッチの種類に よって感覚刺激の強さあるいは気持ちよさ等が異なり,活動する部位あるいは範囲に反映する可能性 が十分考えられる。 Ⅴ まとめ 「タッチ」は心身に関わる脳部位の活動を亢進させるようである。今後は,各種タッチを行った際
の活動様相について分析をさらに進め,痛みや不安などを抱える児童・生徒に対して「タッチ」を行 う意義についてエビデンスの構築を目指したい。
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小学生が付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力
松原紀子
*1,千野直仁
*2,下村淳子
*3,玉川達雄
*3*1愛知学院大学大学院心身科学研究科健康科学専攻
*2愛知学院大学心身科学部心理学科
*3愛知学院大学心身科学部健康科学科
Physical Fitness that Children of Elementary School Want to Acquire
and that Their Parents Want Them to Do So
Noriko MATSUBARA*1,Naohito CHINO*2,Junko SHIMOMURA*3,Tatsuo TAMAGAWA*3
*1 Program of Health Science, Graduate School of Psychological & Physical Science, Aichi Gakuin University *2 Depatment of Psychology Faculty of Psychological & Physical Science, Aichi Gakuin University
*3 Depatment of Health Science Faculty of Psychological & Physical Science, Aichi Gakuin University
Abstract Objective:
To clarify physical fi tness that children want to build and that their parents want for them and determining
factors.
Methods:
We conducted a questionnaire survey of 374 parents and their 5th/6th-grade school children in 2014. After
excluding children or parents providing erroneous information, 353 acceptable pair of children and parents remained. Data were analyzed with the McNemar test and logistic regression analysis.
Results:
The children responded about equally that they wanted to build physical fi tness for protection (FP) and
physical fi tness for stamina (FS). The response rate of parents wanting them to build FP was about 3 times that for building FS, and the difference was signifi cant.
Among children wanting to “win at sports”, “have self-confi dence”, the ratios of children desiring FP versus FS were approximately 30–50% and higher. However, among children wanting to “try to study hard”, who “did not want to become sick”, or who wanted to “maintain their body when they got a job”, they desired FP more than FS by approximately 2–6 times. Among children whose parents wanted them to “win at sports”, hoped “their children are safe from illness”, or thought “they have FP”, they desired FP more than FS by approximately 1.4–2.4 times.
The parents whose children had “an allergic disease” wanted FP about 2 times more than FS. Parents who “hope their children are safe from illness” wanted FP about 3 times more than FS. Of the parents who “hope their children will win in sports”, few (<30%) wanted FP. Among parents whose children children feel jittery (under stress), about 70% wanted FP.
Few (50%) parents whose children “wanted to become able to move well”, or stated “the relations with the family were good now” desired FP approximately 50%.
The parents who chose children “wanted to try study hard” expected approximately 3.7 times FP.
Conclusion:
Children wanting to do their best at sports wanted FS, whereas those wanting to do their best to study wanted FP. Children who wanted to “maintain their body when they got a job”, desired FP. Many parents also wanted their children to acquire FP. Education to make children understand importance of FP will be necessary in consideration of a change of the social structure, the health condition of children in future without paying attention to only one side of the physical performance.
キーワード(Key Words):
防衛体力,行動体力,子ども,保護者
fi tness for protection, fi tness for stamina, children, parents
Ⅰ.緒言 現代の子どもたちが抱えている健康問題の一つに体力低下がある。 体力とは,身体的な生活力あるいは,生存力とされ1),身体的要素と精神的要素から構成されてい る。さらに,両者とも行動体力と防衛体力があり,行動体力は,外界に働きかけようとする能力であ るのに対し,防衛体力は,外界からのストレスに対して,防衛して自分の健康を維持しようとする力 である。言い換えれば,運動能力が行動体力で,防衛体力は抵抗力や免疫力などの健康維持能力であ る2)。 子どもの体力については,これまでにも数多くの課題が報告されている。そのうち,行動体力で は,運動をする子どもとしない子どもの二極化が見られることや,それによって体力レベルにも差が 生じていること,また,子どもの体力が昭和60年をピークに低下していることなどがある3)。一方, 防衛体力では,児童生徒の年齢が増すに従って身体の「だるさ」や「疲れやすさ」の訴えの増加,ア レルギー疾患の増加,および,メンタルヘルスの不安定さなどの健康課題の指摘がある4)。近年,ア レルギー疾患は年齢,国を問わず増加の傾向にある5)。その上,アレルギー症状の悪化が母親のスト レスの増加に繋がっているとの報告がある6)。また,メンタルヘルスの不調が原因で休職率の増加7) などの健康課題が多様化しているとの報告もされている。 このような状況において,課題解決への取り組みが行われている。取り組みでは,学校体育・スポ ーツの振興を掲げ,各学校や教育委員会と連携し学校体育の充実を図り,子どもに運動やスポーツへ の意識を高め,子どもが運動やスポーツに積極的に取り組むように進めてきた。また,保護者等と連 携し,積極的,継続的な子どもの運動習慣を付けることを促していた。これらの取り組みはある程度 の効果を得ることができ,長年続いていた体力の低下傾向に歯止めがかかったとされている8)。しか し,これらの施策の多くは昭和39年(1964年)以降実施している「体力・運動能力調査」の結果に 基づくものであることから,行動体力の向上に特化しているとの指摘がある9)。 運動やスポーツへの積極的な取り組みを促すための保護者と子どもの意識について,Kimiecikら10) は,親の運動やスポーツに対する価値観や期待感が子どもの活動を後押しし,子どもの活動の動機づ けを左右するモデリング効果を持つと述べている。また,Jambor11)は,保護者の積極的なスポーツへ の関わり意識が子どものスポーツへの向上心に繋がると報告している。さらに,梅崎ら12)は,子ども と保護者がスポーツに対する認識を同じくすることで,子どもが安心して楽しくスポーツに取り組む ことができ,子どものスポーツへのモチベーションを高めることに繋がるとしている。つまり,積極
的,継続的に運動やスポーツを行っていくためには,子どもと保護者の意識が共に高まり,さらにそ の目的が一致していることが重要であると考える。 現在,行動体力,防衛体力共に課題がある。従って,子どもの体力向上のためには,行動体力と防 衛体力の両面からのアプローチが必要である。しかし,行動体力に比べて,防衛体力は先行研究も少 なく十分に取り組まれているとはいえない13)。また,子どもや保護者のイメージする「体力」が, 「行動体力」のみである可能性もある。こうした現状において,子どもの体力の向上に取り組む時, 子どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力が行動体力なのか防衛体力なのか。ま た,どのような理由で体力向上を望んでいるかを明らかにすることで,子どもと保護者のニーズに即 したアプローチが可能になり,子どもの体力向上を推進する上での一助となることが期待できる。 そこで,本研究では,子どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力が,行動体力で あるか防衛体力であるかを見極め,さらにその体力を望む規定要因を明らかにすることとした。 Ⅱ.方法 1.質問紙調査 1)対象及び時期 2014年9月にA県A市の小学校2校の5,6年生の子どもとその保護者を1組とした調査を行っ た。対象者は,A校は269組(5年135,6年134),B校は105組(5年52,6年53)で計374組の親子 であった。質問紙調査において,不備があった者を除いた結果,分析対象は,353組(5年174,6年 179)の子ども及び保護者となった。有効回収率は,94.4%であった。 2)調査項目 子ども対象の質問紙は資料1,保護者対象の質問紙は資料2に示すとおりである。子ども対象の調 査内容の運動に関する選択肢(1.運動についてお聞きします)と生活に関する選択肢(2.生活と健 康状態についてお聞きします 1)∼4))は,新体力テストの児童調査票14)を基に作成した。健康状態 に関する選択肢(防衛体力に関する質問)(2.生活と健康状態についてお聞きします 5)∼13))は, 猪飼の体力とその測定2)及び阿久津の防衛体力論15)を基に子どもが理解できる文言に置き換えて作成 した。 防衛体力 に関する質問項目は,①疲れにくい体,②暑さ・寒さに負けない体,③乗り物に 乗っても酔わない体,④ストレスに負けない体,⑤病気(かぜ・花粉症・腹痛・ジンマシンなど)に かからない体,の5項目とした。また, 行動体力 に関する質問項目は⑥筋肉力がある体,⑦瞬間 的に強い力を出せる体,⑧長い時間全身的な運動が続けられる体,⑨柔らかく動かすことができる 体,⑩バランスよく体を動かすことができる体,の5項目とした。保護者対象の調査内容は子ども用 の選択肢をもとに保護者向けの表現に変えた。 なお,調査項目及び子どもが付けたい体力,保護者が子どもに付けさせたい体力等の表現の内容的 妥当性を図るために,子ども25名,及び保護者4名に対して予備調査を行い,答えにくい文言,質 問内容の整合性を確認してもらい,文言を修正した。 2.学校欠席日数 学校欠席日数の多少と子どもが付けたい体力,保護者が子どもに付けさせたい体力の関連をみるた めに前年度1年間の欠席日数と欠席理由を確認した。事前に保護者に研究の趣旨を文書で説明し同意 が得られた児童の欠席状況を分析した。分析対象者は質問紙調査と同数の353名であった。欠席理由 の事故および忌引は欠席から除いた。また,学校において予防すべき感染症の欠席日数(出席停止期 間)は,各感染症で日数が異なることから1事例を1日と修正した。
3.分析方法 子ども対象の質問紙で,第1番目∼第3番目の付けたい体力,保護者対象の質問紙も第1番目∼第 3番目の子どもに付けさせたい体力を尋ねた。しかし,第2番目,第3番目の子どもが付けたい体力 の回答は,第1番目に依存する回答であった。従って,子どもが付けたい体力は,第1番目に選択し た回答のみを分析対象とした。同様に保護者が子どもに付けさせたい体力も,第1番目に選択した回 答のみを分析対象とした。また,本研究は,子どもとその子どもを育てている保護者を対とした研究 である。従って,子どもが付けたい体力の規定要因の検討に保護者から得られたデータ,保護者が子 どもに付けさせたい体力の規定要因の検討に子どもから得られたデータを投入して検討を行った。 1)子どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力の関連についての検討 353組の子どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けたいさせたい体力に関連があるかどうかを みるために McNemar 検定を行った。 2)子どもが付けたい体力の規定要因の検討 子どもが付けたい体力が,防衛体力であるか行動体力であるかの規定要因を検討するため,子ども が選んだ付けたい体力を基準変数とした。一方 , 規定要因の検討は,運動に関する質問内容(付表1 の変数名番号5∼8,以下,付表1の変数名番号を示す),保護者から得られた子どもの健康状態に 関する質問内容(3,9,10,48),子どもが付けたい体力を選んだ理由(11∼21),保護者が子どもに 付けさせたい体力を選んだ理由(22∼32),学校欠席日数(33),生活に関する質問内容(4,34∼ 36),自己の健康状態に関する質問内容(37∼45),子ども自身の体力への自信(46),保護者からみ た子どもの体力(47)の合計46変数を候補変数とした。これらの候補変数について多重共線性の検 討を行い,最終的には候補変数の中から35変数を選びロジスティック回帰分析の説明変数とした(付 表1の変数名に*を付した)。その際,「学校欠席日数」も説明変数から除かれた。有効サンプル数は 294組となった。まず,モデルの適合度をみるために尤度比検定を行い,説明力のあることを確認し た上で,ロジスティック回帰分析を行った。 なお,子どもが付けたい体力は,基準変数の値を,質問紙項目(資料1,2)「3.体力についてお 聞きします」の2)①∼⑤の防衛体力と⑥∼⑩の行動体力に2分した。 3)保護者が子どもに付けさせたい体力の規定要因の検討 保護者が子どもに付けさせたい体力が,防衛体力であるか行動体力であるかの規定要因を検討する ために,保護者が選んだ付けさせたい体力を基準変数とした。保護者と子どもを一対とした分析を行 うために,子どもが付けたい体力の分析と同一の46 変数を候補変数とし,これらについて多重共線 性の検討を行った。その結果,子どもの説明変数と同一の35変数が説明変数となった。まず,モデ ルの適合度をみるために尤度比検定を行い,説明力のあることを確認した上で,ロジスティック回帰 分析を行った。
上記2),3)の分析には,SAS の type3分析(SAS Institute Inc.1999)を用いた。上記データに対す るロジスティック回帰分析の実行に際して,付表1を参照して行った。参照カテゴリーは,すべての 説明変数において,最後の選択肢である(参照カテゴリーには,数字に○を付し,太字とした)。 4)ロジスティック回帰分析の説明変数間の多重共線性の検討方法
子どもが付けたい体力の規定要因,および保護者が子どもに付けさせたい体力の規定要因の分析の 説明変数については,46変数のうち定性的変数についてはすべてダミー変数化したうえで,SAS の 重回帰分析により多重共線性の指標のうちの最大条件指標(maximum condition index)及び各説明変 数の VIF (variance infl ation factor)を求め,VIF の値の大きい変数を順に少しずつ除いて最大条件指
標の変化をみた。その結果,最大条件指標が,46変数での68.06から35変数での33.35と「ほどほど の従属性」にまで減少したので,この35変数を最終的な説明変数とした16)17)。 なお,データの解析には,統計ソフト SAS (Version 9.4) を使用し,統計上の有意水準は5%未満 とした。 4.倫理的配慮 本研究を行うに際して,対象の学校長に対し調査の意義と対象者の人権的配慮に関して十分に説明 を行った上で同意を得た。その上で学校教職員の理解と協力,さらに,保護者の理解と同意を得て調 査を実施した。質問紙調査の実施にあたっては,個人情報の保護が確保され,また,提出を拒否でき ること,拒否しても何の不利益を受けることはないことを明記した。子ども用質問紙と保護者用質問 紙を同封して配布し,家庭で記入することとした。家庭での記入に際しては,保護者と子どもは, 個々に記入し,保護者から子どもへの助言等は,行わないように依頼した。回収は,子どもと保護者 の調査表を同一封筒に入れ,封をしたうえで各教室に用意された回収箱に提出することとした。な お,解析に用いたデータは,入手した時点で,個人を識別することができる情報が全て取り除かれ, 新たな番号を付して連結不可能にして匿名化した。 なお,本研究は,平成26年8月1日付けで,愛知学院大学心身科学部の倫理審査委員会の審査・ 承認を得た(承認番号1411)。 Ⅲ.結果 1.子どもが付けたい体力 353組の子ども及び保護者のデータから欠損値を除いた結果,分析対象は342組となった(表1)。 子どもが付けたい体力を防衛体力と行動体力に分けて集計した。防衛体力では,「疲れにくい体」が 67名(19.7%)で最も多く,次いで,「病気にかからない体」が62名(18.1%)であった。行動体力 では,「長い時間全身的な運動が続けられる体」が65名(19.1%)で最も多く,次いで,「筋肉力があ る体」が35名(10.2%)であった。防衛体力と行動体力別では,防衛体力175名(51.1%),行動体力 167名(48.9%)であり,ほぼ同数であった。 表1 子どもが付けたい体力(なりたい体),保護者が子どもに付けさせたい体力 N=342 子ども 人数(%) 保護者 人数(%) 防衛体力 疲れにくい体 67( 19.7) 73( 21.3) 病気にかからない体 62( 18.1) 116( 33.9) 暑さ・寒さに負けない体 19( 5.4) 20( 5.8) 乗り物に乗っても酔わない体 16( 4.7) 5( 1.5) ストレスに負けない体 11( 3.2) 63( 18.5) 小計 175( 51.1) 260( 76.0) 行動体力 長い時間全身的な運動が続けられる体 65( 19.1) 31( 9.1) 筋肉力がある体 35( 10.2) 5( 1.5) 瞬間的に強い力を出せる体 27( 7.9) 4( 1.2) バランスよく体を動かすことができる体 21( 6.1) 35( 10.2) 柔らかく動かすことができる体 19( 5.6) 7( 2.0) 小計 167( 48.9) 82( 24.0) 合計 342(100.0) 342(100.0)
2.保護者が子どもに付けさせたい体力 保護者が子どもに付けさせたい体力を防衛体力と行動体力に分けて集計した。防衛体力では,「病 気にかからない体」が116名(33.9%)で最も多く,次いで,「疲れにくい体」が73名(21.3%)であ った。行動体力では,「バランスよく体を動かすことができる体」が35名(10.2%)で最も多く,次 いで,「長い時間全身的な運動が続けられる体」が31名(9.1%)であった。防衛体力と行動体力別で は,防衛体力260名(76.0%),行動体力82名(24.0%)であり,行動体力に対して防衛体力を約3倍 望んでいた。なお,回答者は,母親325名(95.0%),父親16名(4.7%),祖母1名(0.3%)であった。 3.子どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力の関連 342組の子どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力を防衛体力と行動体力に2分 した。表2は,2分した子どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力の関連を示した ものである . これについて,McNemar の有意変化の検定を行った。この結果の解釈を行うために, 分割表の有意変化の部分に対応する(1,2)セル(子どもが防衛体力を望み保護者が行動体力を望む ケース)及び(2,1)(子どもが行動体力を望み保護者が防衛体力を望むケース)の期待値を求める と,77.5であった . これらのことから,子どもが行動体力を望む場合は,保護者が防衛体力を望んで いる場合が多く,子どもが防衛体力を望む場合は,保護者は,行動体力を望むことが少なかった。子 どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力には,有意な相違がみられた(p<0.001)。 表2 防衛体力と行動体力の2分類からみた子どもが付けたい体力と 保護者が子どもに付けさせたい体力の関連 人数(期待値) 保 護 者 P 値 項 目 防衛体力 行動体力 計 子 ど も 防衛体力 140 35(77.5) 175 行動体力 120(77.5) 47 167 p<0.001 *** 計 260 82 342 注) 353組の子どもが付けたい体力と保護者が子どもに付けさせたい体力の関連をみるために McNemar 検定を行った欠損値を除いた結果,分析対象は342組となった (df=1 ***p<0.001) 4.子どもが付けたい体力を選択した規定要因 子どもが付けたい体力を基準変数,35変数を説明変数とする場合のモデルの全体的適合度をみる ために尤度比検定を行った。その結果,0.1%水準で有意であった(χ2 (35)=82.0316, p=0.0001)。この 結果から,子どもが付けたい体力の違いと規定要因モデルは,説明力があった。 表3に子どもが付けたい体力を基準変数とする場合の35説明変数の結果を掲載した。以下は,有 意な説明変数(p<0.05)について結果を述べる。 子どもが付けたい体力として行動体力に対して防衛体力を選んだ理由として,「スポーツをやった 時に勝ちたい」を選択した子どもの,選択しなかった子どもに対するオッズ比は0.300であり,付け たい体力として防衛体力を選択した子どもは少なかった。(以下,行動体力に対する防衛体力を望む オッズ比を示す) また,「自分に自信を持ちたい」を選択した子どもの,選択しなった子どもに対す るオッズ比は0.548であり,防衛体力を選択した子どもが少なかった。 一方,「勉強を頑張りたい」を選択した子どものオッズ比は5.633であり,防衛体力を選択した子ど もが多かった。また,「病気になりたくない」を選択した子どもは3.145,「将来,職業についた時に 頑張れる体になりたい」を選択した子どもは1.919であり,防衛体力を多く選択していた。また,保
表3 子どもが付けたい体力 行動体力に対して防衛体力を選択する規定因(ロジスティック回帰分析) N=294 説明変数 最尤推定値 Waldχ2 オッズ比 95%CI y 切片 1.7580 2.8270 3.(保)アレルギー疾患の有無 0.0263 0.0324 0.949 0.587 ‒ 1.534 5.(子)学校での運動クラブへの加入の有無 0.0880 0.2858 1.192 0.694 ‒ 2.049 6.(子)学校外の運動クラブへの加入の有無 0.1942 1.4592 1.475 0.869 ‒ 2.503 11.(子)スポーツをやった時に勝ちたい 0.6012 15.2716*** 0.300 0.181 ‒ 0.498 12.(子)友達をいっぱいほしい 0.1510 0.2642 1.353 0.514 ‒ 3.557 13.(子)自分に自信を持ちたい 0.3006 4.0146* 0.548 0.335 ‒ 0.898 14.(子)元気に動けるようになりたい 0.0697 0.2255 0.870 0.537 ‒ 1.410 15.(子)学校を休みたくない 0.0758 0.1588 1.164 0.622 ‒ 2.176 16.(子)勉強を頑張りたい 0.8643 11.7246*** 5.633 2.455 ‒ 12.924 17.(子)病気になりたくない 0.5729 13.0660*** 3.145 1.867 ‒ 5.298 18.(子)長生きしたい 0.0249 0.0220 0.951 0.547 ‒ 1.654 19.(子)家族で仲良くしたい 0.4942 3.3194 0.372 0.152 ‒ 0.908 20.(子)将来,職業に就いた時に頑張れる体になりたい 0.3260 4.5140* 1.919 1.159 ‒ 3.180 21.(子)将来,スポーツ選手になりたい 0.2478 1.5691 0.609 0.318 ‒ 1.168 22.(保)スポーツをやった時に勝ってほしい 0.4441 4.4129* 2.431 1.213 ‒ 4.873 23.(保)友達をいっぱいつくってほしい 0.0576 0.0686 0.891 0.433 ‒ 1.837 25.(保)元気に動けるようになってほしい 0.0681 0.2047 0.873 0.532 ‒ 1.432 28.(保)病気にならないようにしてほしい 0.3363 4.1394* 1.959 1.137 ‒ 3.375 29.(保)長生きしてほしい 0.3192 2.4752 0.528 0.271 ‒ 1.029 30.(保)家族で仲良くしたい 0.1931 0.3766 0.680 0.241 ‒ 1.914 31.(保)将来,職業についた時に頑張れるようにしてほしい 0.0003 0.0000 0.999 0.617 ‒ 1.617 32.(保)将来,スポーツ選手になってほしい 0.5103 0.8134 0.360 0.056 ‒ 2.318 34.(子)就寝時刻は決まっているか 0.0435 0.1052 0.957 0.768 ‒ 1.194 35.(子)自立起床の様子 0.0787 0.5706 0.924 0.779 ‒ 1.097 36.(子)朝食の摂取状況 0.0779 0.0703 1.081 0.667 ‒ 1.753 37.(子)暑さに強いか 0.1821 1.2179 1.200 0.915 ‒ 1.574 38.(子)寒さに強いか 0.0225 0.0230 0.978 0.766 ‒ 1.248 39.(子)車に酔いやすいか 0.9924 0.0006 0.998 0.843 ‒ 1.180 40.(子)今,体の調子は良いか 0.1056 0.3105 0.900 0.659 ‒ 1.229 41.(子)普段,疲れやすいと感じるか 0.0510 0.1246 0.950 0.749 ‒ 1.205 43.(子)今,友達との関係は良いか 0.0998 0.2544 1.105 0.798 ‒ 1.530 44.(子)今,家族との関係は良いか 0.0331 0.0163 1.034 0.675 ‒ 1.584 45.(子)自分は幸福と感じることがあるか 0.0545 0.1156 1.056 0.811 ‒ 1.375 47.(保)子どもさんは,体力があるか 0.3402 3.9882* 1.405 1.062 ‒ 1.860 48.(保)イライラの状況(ストレス状況) 0.1000 0.6182 1.105 0.897 ‒ 1.362 注) ・*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001(Wald Chi-Square Test)
・表中の左端の番号は,付表1の変数名番号 ・基準変数:1.防衛体力,2.行動体力 ・(子)子どもからの回答 (保)保護者からの回答 護者が「スポーツをやった時に勝ってほしい」を選択した子どもは2.431,保護者が「病気にならな いようにしてほしい」を選択した子どもは1.959であり,防衛体力を多く選択していた。さらに,保 護者が「子どもさんは,体力がある」を選択した子どものオッズ比は1.405であり,防衛体力を多く 選択していた。 5.保護者が子どもに付けさせたい体力を選択した規定要因 保護者が子どもに付けさせたい体力を基準変数,35変数を説明変数とする場合のモデルのそれぞ