FOR SEIFERT RATIONAL HOMOLOGY 3-SPHERES
上 正明
dedicated to Prof. Yukio Matsumoto for his 70th birthday
ザイフェルト有理ホモロジー3球面(以下向き付け可能な底空間を もつもののみ考える)とその上のスピン構造の組 (Y, s) の µ 不変量と 他の不変量( Oszv´ ath-Szab´ o の補正項不変量など)との関係をみるため
に, (Y, s) に対する η 不変量と関連づける試みについて報告する.
1. 不変量の定義と定理
µ 不変量は4次元鉛管多様体の境界となる3次元多様体(グラフ多 様体)に関して定義される.
定義 1. Y を整数値のウェイト付きのグラフ Γ に付随する4次元鉛管 多様体 P (Γ) の境界 Y = ∂P (Γ) として表されるグラフ多様体とする( Γ の取り方は一意ではない).以下 Y は有理ホモロジー3球面とする.
このとき Γ はサイクルを含まず, Γ の各頂点 v
iにはそのウェイト e
iを Euler 数とする D
2上の S
2バンドル E
iが対応し, P (Γ) は頂点どうし が辺で結ばれているとき対応するバンドルを鉛管構成によって貼り合 わせて得られる. H
2(P (Γ), Z) は E
iのゼロ切断を生成元(同じ v
iで表 す)とする自由アーベル群である.ここで Y にスピン構造 s を与えた とき,H
2(P (Γ), Z) の特性元 w = ∑
i
v
iで (1)
iは 0 または 1 .
(2) P Dw (mod 2) ∈ H
2(P (Γ), ∂P (Γ), Z
2) は s を P (Γ) のスピン構 造に拡張するための障害
となるものが一意的に存在する.このとき
µ(Y, s) = σ(P (Γ)) − w · w ∈ Z
とおく( Neumann-Siebenmann ).この定義は P (Γ) の取り方にはよら ず, µ(Y, s) (mod 16) は Rochlin 不変量 µ(Y, s) に一致する.
1
注 1. µ(Y, s) の定義の符号を逆にする場合,また Y が整係数ホモロジー 3球面のときは 8 で割った形で定義する場合もある.
定理 1 (Fukumoto-Furuta, Ue, Saveliev). Y がザイフェルト有理ホモ ロジー3球面で, s が Y の spin 構造のとき, µ(Y, s) は有理ホモロジー コボルディズム不変である.
次に一般の3次元多様体に対する η 不変量の定義を与える.
定義 2. Y を向きづけられた3次元閉多様体, g を Y のリーマン計量 とし, D : Γ(E) → Γ(E) を Y 上のバンドル E に関する自己随伴楕円型 作用素とする.このとき D の固有値は有限重複度の離散的な実数で D の η 関数が
η
D(s, Y, g) = ∑
λ6=0
(sgn λ) | λ |
−s(s ∈ C)
で定義される(和は D の 0 でない固有値全体に対する和).この η
D(s, Y, g) を 0 まで解析接続し 0 での値 η
D(Y, g) = η
D(0, Y, g) を (Y, g) の η 不変量と定める( Atiya-Patodi-Singer) .特に D が Y の符号数作用 素 D
signのときその η 不変量を η
sign(Y, g), D が Y の spin
c構造 s に付随 する Dirac 作用素 D のときは η
D(Y, g) とおく.これらは g に依存する が,文脈から明らかなときは g は省略する.
ここで Y が向きづけられた2次元軌道体 Σ 上のファイバー構造をも つザイフェルト有理ホモロジー3球面がある条件をみたすとき, Y の ある標準的な( Thurston 幾何構造に適合する)計量 g に関する符号数 作用素と Y の spin 構造 s に付随する Dirac 作用素に対し,次の関係が なりたつ.
定理 2. Y が −| deg Y | ≤ χ
orb(Σ) をみたすならば Y のある標準的計量 g に対し次がなりたつ.
( ∗ ) µ(Y, s) = − 4η
D(Y ) − η
sign(Y )
ここで D は s に付随するスピノールバンドル上のある接続に同伴する 形で定める.
注 2. 上の ( ∗ ) は Y が整係数のホモロジー3球面で s が Y の(唯一の)
spin 構造の場合(µ の規約を変えて)Mrowka-Rubermann-Saveliev に
より具体的な計算によって示されていた(上記の結果とは Poincare ホ モロジー3球面の場合以外は重複しない).
ここでは ( ∗ ) を Seiberg-Witten モジュライ方程式の有限次元近似(古 田)の手法により幾何学的に示すことを考える. ( ∗ ) が条件なしに,あ るいは直接計算で示せるかどうかは(筆者には)明らかでない.少な くともこの式の幾何的意味を考えることは意味のあることである.
定義 3. Σ を向き付けられた種数 0 の 2 次元軌道体で n 個の特異点を持 ち,それぞれの重複度が α
i(i = 1, . . . , n) であるとする.このとき Σ 上の V 複素直線バンドル (orbifold line bundle) E のザイフェルト不変 量が
{ e, (α
1, γ
1), . . . , (α
n, γ
n) } , 0 ≤ γ
i< α
i(i = 1, . . . , n)
で与えられる.ここで e は E の非特異化 | E | → | Σ | のオイラー数であ り, E の重複度 α
iの特異点上のファイバーの近傍は
π
−1(D
i) ∼ = (D
2× C)/Z
αiと表される.ただし Z
αiの生成元 ζ = exp(2πi/α
i) は D
2× C 上に ζ(w, z) = (ζw, ζ
γiz) ((w, z) ∈ D
2× C)
により作用する.このとき E の(有理)次数が deg E = e +
∑
ni=1
γ
iα
iにより定義される.ここで Y を Σ 上のファイバー構造 π : Y → Σ をも つザイフェルト有理ホモロジー 3 球面とすると, Y はあるザイフェル ト不変量
{ b, (α
1, β
1), . . . , (α
n, β
n) }
0 ≤ β
i< α
i, gcd(α
i, β
i) = 1 (i = 1, . . . , n)
をもつ Σ 上の直線バンドル L
0に付随する S
1バンドル Y = S(L
0) であ り,Y のザイフェルト不変量,次数を L
0のそれとして定義する.特に Y が有理ホモロジー 3 球面ならば deg Y = deg L
06 = 0 である.
注 3. ザイフェルト不変量と次数の定義については文献により符号の違
いがあるが,ここでは後述の Mrowka-Ozsv´ ath-Yu の結果に適合させる
ため,彼らの既約に従う.
Y = S(L
0) の計量としては, Nicolaescu, Mrowka-Ozsv´ ath-Yu にな らって Σ の標準直線バンドル K
Σの定曲率の計量 g
Σおよび π : Y → Σ のファイバー方向の無限小作用の双対 η により
g
Y= η
2+ π
∗g
Σの形の計量をいれる. Nicolaescu においては vol(Σ) = π となる g
σを選 び, η を rη に置き変えた計量 g
rを考えている( r を十分小さくとる).
次に Y 上の spin
c構造 s に対し g
rと両立する Y の 2 通りの接続を考 える.1つは Σ の Levi-Civita 接続 ∇
Σの持ち上げ ∇ = d ⊕ π
∗( ∇
Σ)
( Nicolaescu により断熱的接続と呼ばれている),他方は g
rに関する
Levi-Civita 接続 ∇
LCであり, deg Y 6 = 0 となる有理ホモロジー 3 球面 においては両者は一致しない.ここで Y 上の標準的 spin
c構造 s
canを対 応するスピノールバンドル S
canが K
Σの引き戻し K = π
∗(K
Σ) と自明 な直線バンドル C の直和となる spin
c構造とすると, ∇ , ∇
LCはそれぞ れ S
canの接続に持ち上がる(同じ記号で書く).一方 Y の一般の spin
c構造は Y 上の複素直線バンドル L により s
L= s
can⊗ L と書かれ, L 上 の Hermite 接続 B を与えると ∇ , ∇
LCとのカップリングにより対応す るスピノールバンドル S
L= ( K ⊕ C) ⊗ L 上の 2 種類の接続 ∇
B, ∇
LCB, およびそれらに同伴する Dirac 作用素
D
B, D
LCB: Γ(S
L) → Γ(S
L) が得られる.この両者の差は
D
B= D
LCB+ r deg Y 2
で与えられる. Mrowka-Ozsv´ ath-Yu は Y の Seiberg-Witten モジュライ 空間を決定したが,その際方程式を前者の Dirac 作用素によって定義し ており,これを利用するためには前者を考慮する必要がある.一方他の 不変量との比較には後者を用いるが,両者の η 不変量の差は Nicolaescu により計算されている.
注 4. Dirac 作用素を定義する際の Clifford 積 c : ∧
∗(Y ) → End(S
L) を Mrowka-Ozsv´ ath-Yu においては c(dvol
Y) = 1, Nicolaescu においては c(dvol
Y) = − 1 となるように定めているため, Dirac 作用素の符号の取 り方が両者で異なる.以下後者の計算に従うため後者に合わせる.
ここで X を ∂X = Y となるコンパクト 4 次元多様体,g
Xを ∂X のカ
ラー近傍 [0, 1] × Y 上 dt
2+ g
rとなる X の計量とし,g
Xに両立する T X
の接続 ∇ b を [0, 1] × Y 上 dt ⊗ ∂/∂t + ∇ となるようにとり,また T X の Levi-Civita 接続を ∇ b
LCとおく.さらに ( L, b B) b |
Y= (L, B) となる X 上 の直線バンドル L b とその上の接続 B, b および s
Lb|
Y= s
Lとなる X 上の spin
c構造を ∇ b と ∇ b
LCがそれぞれ B b とともに s
Lbに付随するスピノー ルバンドル S
Lbの接続を与えるようにとる.これにより ∇ b , ∇ b
LCに対応 する 2 種類の X 上の Dirac 作用素
D
Bb, D
BLCb: Γ(S
+bL
) → Γ(S
−bL
)
が得られ, [0, 1] × Y 上では Nicolaescu の既約に従うとそれぞれ D
Bb= ∂/∂t − D
B, D
BLCb= ∂/∂t − D
LCBと表される.さらに Atiyah-Patodi-Singer の定理がいずれにおいても 成立する (Nicolasecu) ことから
ind D
Bb=
∫
X
( − 1
24 p
∇1b) − 1
2 (η
DB+ h
DB)
となる( p
∇1bは ∇ b に付随する第 1 Pontryagin 類).ここで h
DB= dim ker D
Bである.一方 Y の符号数作用素の η 不変量については X の符号数 σ(X) と ∇ b
LCに付随する第 1Pontryagin 類により
σ(X) =
∫
X
p
∇1bLC3 − η
signである.
ここで s
L, s
Lbが spin 構造のとき, ∇
Bが引き起こす det s
Lの接続が平 坦なものをとる(後述の Y の Seiberg-Witten モジュライ空間の可約成分 に対応する)と η
DBと η
DLCB
, ∫
X p∇1b
3
と ∫
X p∇1bLC
3
の比較計算 (Nicolaescu) の結果を代入することで次の関係が得られる.
4η( D
LCB) + η
σ= − 8 ind D
Bb− σ(X) − 4h( D
B) 前述の定理における η
Dはこの D
LCBに対する η 不変量である.
2. Seiberg-Witten モジュライ空間
この結果を Y に対する Seiberg-Witten モジュライ空間の議論と結び つける.
π : Y → Σ を Seifert 有理ホモロジー 3 球面とし s
Lを以前のように
Y の spin
c構造,S
Lをそれに付随するスピノールバンドルとする.こ
のとき S
Lの接続のなす空間 A (S
L) (ただし「断熱的」接続 ∇
Bの形の 接続を考える)とスピノールの空間 Γ(S
L) の組のゲージ同値類からな る規制空間
B
Y(s
L) = { (A, φ) ∈ A (S
L) × Γ(S
L) } / G
Y( G
Y= Map(Y, S
1)) において計量 g
rに関する Seiberg-Witten 方程式
F
At− σ(φ) = 0 D
A(φ) = 0
の解のゲージ同値類のなすモジュライ空間を M
X(s
L) とおく.ここで F
Atは A から誘導される s
Lの行列直線バンドル det s
L上の接続の曲率,
σ(φ) は φ ⊗ φ
∗のトレース 0 の成分を Clifford 積により ∧
2(Y ) の元と同 一視したもの, D
Aは A に同伴する(断熱的) Dirac 作用素である.な お Seiberg-Witten 方程式解は Chern-Simons-Dirac 汎函数
CSD : A (S
L) × Γ(S
L) → R
の特異点であるが,Y が有理ホモロジー 3 球面ならば CSD は B
Y(s
L) からの写像
CSD : B
Y(s
L) → R
を引き起こし, M
Y(s
L) はその特異点集合となる. M
Y(s
L) の構造に関 して次のことが知られている.
定理 3 (Mrowka-Ozsv´ ath-Yu). 一般にザイフェルトファイバー空間 π : Y = S(L
0) → Σ に対し M
Y(s
L) 6 = ∅ となることとある Σ 上の直線バン ドル E
0に対して L ∼ = π
∗E
0となることは同値である.このとき M
Y(s
L) の可約成分 M
redY(s
L) は 1 個のヤコビトーラス T ∼ = H
1( | Σ | , R)/H
1( | Σ | , Z) からなり,既約成分 M
∗Y(s
L) は
0 ≤ deg E < deg K
Σ2 , E ≡ E
0( mod Z[L
0]).
をみたす Σ 上の各直線バンドル E ごとに定義される C
+(E) と C
−(E) の対からなる.ここで C
±(E) は E の非特異化 | E | → | Σ | のオイラー数 を e としたとき | Σ | の e 次対称積 Sym
e( | Σ | ) に同相である.
特に Y が有理ホモロジー 3 球面ならば Y 上の任意の直線バンドルは
Σ 上のバンドルの引き戻しであり,さらに定理 2 の条件をみたすとき
は次のことが示される.
命題 1. π : Y → Σ を定理 2 の条件をみたすザイフェルト有理ホモロ ジー 3 球面で s
Lが spin 構造のとき, M
∗Y(s
L) = ∅ で M
redY(s
L) は 1 点 [A, 0] からなる.さらに A に同伴する(断熱的) Dirac 作用素 D
Aに対 して dim D
A= 0 であり, [A, 0] は CSD の非退化特異点である.
この A が前述の det s
L上の平坦接続を誘導する接続 ∇
Bである.
次にこのような Y と spin 構造 s
Lに対して (Y, s
L) = ∂ ( X, s b
Xb)
となる 4 次元の軌道体 X b とその上の spin 構造 s
Xbをとる.ここで X b の 特異点はすべて孤立特異点とする.このとき特異点の近傍は 3 次元楕 円型多様体 S
i上の錐 c(S
i) であり,これらを X b から除くと ∂X = ∪
iY
i( Y
0= Y , i ≥ 1 に対し Y
i= − S
iとおく)となる 4 次元多様体 X = X b \ ∪
Ic(S
i) とその上の spin 構造 s
Xが得られる.ここで s
Xの Y
0= Y への制限は s
0= s
Lであり, S
iへの制限は s
iとおく.
注 5. このような X b は常に存在する.軌道体にとるのは,ベッチ数を なるべく下げるためである.
今 X に [0, ∞ ) × ∂X を付加した開多様体を X e とおき, X e の計量 g
Xeをエンドの各成分上 Y の計量 g
r, S
iの標準計量 g
iと [0, ∞ ) の標準計量 との直積となるようにとり,X 上の対象を自然に X e に拡張する.
そこで以下簡単のため X e を単に X と表し, s
Xに付随する + スピノー ルバンドル S
X+上の接続のなす空間 A (S
X+) とスピノール Γ(S
X+) の対の ゲージ同値類のなす規制空間
B
X(s
X) = { ( A, b φ) b ∈ A (S
X+) × Γ(S
X+) } / G
X( G
X= Map(X, S
1)) において 4 次元の Seiberg-Witten 方程式
F
Abt− q( ψ) = 0 b D
Ab( ψ) = 0 b
の解の同値類のなす Seiberg-Witten モジュライ空間を M
X(s
X) とお
く.ただし Mrowka-Ozsv´ ath-Yu の結果に適合させるため, X 上の基準
となる接続 A b
0を( S
X+|
Yiと Y
i上のスピノールバンドルの同一視を経
由して) X の各エンド上彼らの定理に現れた 3 次元モジュライ空間の
可約な 1 点を表す接続の引き戻しとなっているように選び, A (S
X+) =
A
0+ Ω
1(X, iR) ⊗ 1
SXとして定める(実際は S
i上は Levi-Civita 接続で
もよい).また D
Aはこのような接続に同伴する Dirac 作用素である.
このとき M
X(s
X) の元 (A, φ) は X のエンドの各成分 [0, ∞ ) × Y
i上テ ンポラルゲージ( A の dt 成分が 0 )で表すと Chern-Simons-Dirac 汎函 数 CSD : B
Yi(s
i) → R に関する勾配流 (A(t), φ(t)) となるが,前述の 命題の条件(楕円型多様体に対しては常に成り立つ)のもとではこの 勾配流は CSD の特異点(この場合非退化で可約な1点 [A
∞, 0] )に指 数関数的に近づく.すなわちある C, δ > 0 が存在して
|| A(t) − A
∞, φ(t) ||
L2k(Y)< Ce
δ(t−T0)(t > T
0)
が十分大きな T
0に対して成り立つ.ここでの δ は A
∞に同伴する Y
iの Dirac 作用素と Y
iの ASD 作用素の和の 0 でない固有値の絶対値の最小 値より小さくとる.これにより M
X(s
X) は B
X(s
X) をウェイト付きノ ルム L
2k,δで完備化した空間の中で定義され,境界写像
∂
∞: M
X(s
X) → ∪M
Yi(s
i) が定まる(各 M
Yi(s
i) はここでは 1 点).
実際は各 Y
iに対して 3 次元 Seiberg-Witten 方程式解の空間を X に拡 張するゲージ変換からなる群で割った商空間を M f
Yi(s
i) とおくと M f
Yi(s
i) は M
Yi(s
i) 上の H
1(Y
i, Z)/(Im : H
1(X, Z) → H
1(Y
i, Z)) の位数を次数 とする被覆となり, ∂
∞はこれを経由する.しかし CSD の単調性から M f
Yi(s
i) の元どうしを結ぶような勾配流は存在しないので,各エンドに おいて複数の勾配流をつなぐ特異軌道 (broken trajectory) は発生しな い.これより
命題 2. Y が定理の条件をみたすならば M
X(s
X) はコンパクトである.
この X に先の式を適用すると dim ker D (Y
i) = 0 を考慮して次の等式 が得られる.
( ∗∗ ) η
sign(Y ) + 4η
DLC(Y ) = − σ(X) − 8 ind D
X+ ∑
i
(η
sign(S
i) + 4η
DLC(S
i))
ただし η
DLC(Y ), η
DLC(S
i) は前述の Levi-Civita 接続に対して定義され た Y , S
i上のそれぞれの spin 構造に関する Dirac 作用素であり, D
Xは
(断熱的な) X の接続に対して定義された X 上の Dirac 作用素である.
一方楕円型多様体である S
iに対しては次の関係が独立に示される.
命題 3.
η
sign(S
i) + 4η
DLC(S
i) = − µ(S
i, s
i) さらに (Y, s
0) に対しては次のことが成り立つ.
命題 4. (Y, s
0) = ∂ ( X b
i, b s
i) をみたすコンパクト spin4 次元軌道体 X b
iで 特異点が孤立点のみからなるものとその spin 構造 b s
i(i = 1, 2) で次の 性質をみたすものが存在する.
(1) σ( X b
i) + ∑
j
µ(S
ji, s
ij) = µ(M, s), ここで S
jiは X
iの孤立特異点 のリンク,s
ijは b s
iの S
jiへの制限である.
(2) b
1( X b
i) = 0 (i = 1, 2), b
+2( X b
1) ≤ 1, b
−2( X b
2) ≤ 1.
このことから X b
iからすべての特異点の近傍を除いて得られるコンパ クト多様体を X
iとおけば,これに上の結果を適用して次の等式が得ら れる.以下 X
iにシリンダー型エンドを付け加えた開多様体も同じ X
iで表す.
η
sign(Y ) + 4η
DLC(Y ) = − µ(Y, s
0) − 8 ind D
Xi(i = 1, 2)
ここで D
Xiは s
i(の X
iへの制限)に関する(断熱的) Dirac 作用素で ある.
結局 補題 1.
ind D
Xi= 0 (i = 0, 1)
を示せば定理の主張が得られる.この補題の証明は Seiberg-Witten 方程式の有限次元近似の手法(古田)によって行われる.今
M
Xi(s
i) の元は自明バンドル det s
i上の平坦接続を引き起こす接続 A
0を基準に [A
0+ a ⊗ 1
S+, φ] (a ∈ L
2k,δ( ∧
1(X
i, iR)) の形に書け,ゲー ジ固定条件 d
∗δa = 0 を付け加えた Seiberg-Witten 方程式は4次元閉多 様体における (Furuta ) のと同様に次のように表される.
D+Q : L
2k,δ(Γ(S
+) ⊕∧
1(X
i, iR)) → L
2k−1,δ(Γ(S
−) ⊕ ( ∧
0⊕∧
2+)(X
i, iR))
ここで D は Dirac と ASD 作用素の和からなる線形作用素であり, Q
は残りの非線形項である.なお ASD 作用素 ASD : L
2k,δ( ∧
1(X
i)) →
L
2k−1,δ( ∧
0⊕∧
2+)(X
i, iR) の指数(Atiyah-Patodi-Singer 型の指数に等し
い)は
命題 5 (Nikolaescue).
ind ASD = − 1
2 (χ(X
i) + σ(X
i) + ∑
j
(b
0(Y
j) + b
1(Y
j)))
で与えられるが, b
1(X
i) = 0, b
1(Y
j) = 0 であることから ind ASD =
− 1 + b
+2(X
i) となる.
さらに s
iが spin 構造であることから, D + Q は P in(2) 作用で不変で あり,S
±は H 構造をもち Dirac 作用素はこれを保つことから ind D
Xiは偶数である(2k とおく).そこで M
Xi(s
i) がコンパクトであること から,閉多様体の場合と同様に Q + D を有限次元近似 (Furuta) するこ とで次のような P in(2) 同変な写像
f : H
k+m⊕ R e
n→ H
m⊕ R e
b+2(Xi)+1+nが得られる.ここで m, n はある自然数, H は P in(2) の標準的作用を もつ4元数体,e R は P in(2) が自然な射影 P in(2) → P in(2)/S
1∼ = {± 1 } を経由して作用する R であり閉多様体の場合と同様な議論により不等式
2k ≤ b
+2(X
i)
が得られる(k ≤ 0 なら自明である).さらに X
iの代わりに − X
iを用 いると
η
sign( − Y
i) = − η
sign(Y
i), η
D( − Y
i) = − η
D(Y
i)
であることおよび h
D( − Y
i) = h
D(Y
i) = 0, ind D
−Xi= − ind D
Xi, b
+2( − X
0) = b
−2(X
0) であることから同様に
− b
−2(X
i) ≤ 2k
がなりたつ(これらの結果はモジュライ空間が空集合であってもなり たつ).
一方 X
iの構成から b
1(X
i) = 0, b
+2(X
1) ≤ 1, b
−2(X
2) ≤ 1, および前 述の等式から ind( D
X1) = ind( D
X2) であるから先の2つの不等式から
ind( D
Xi) = 0
でなければならず,補題が示される.
3. 補遺
µ(Y, s) と他の不変量,特に Ozsv´ ath-Szabo の補正項不変量 d(Y, s) と の比較を考える背景に次の結果がある.
定義 4 (Ozsv´ ath-Sz´ abo). M を一般の有理ホモロジー3球面, t を M の spin
c構造とするとき,補正項不変量 d(M, t) は (M, t) の Heegaard Floer ホモロジー間の自然な写像 HF
∞(M, t) → HF
+(M, t) の像に含 まれる元の絶対次数の最小値として定義される.
定理 4 (Rustamov). 上記の (M, t) に対し,次の等式がなりたつ.
1
2 d(M, t) − χ(HF
red(M, t)) = sw(M, t) + 1
8 (η
sign(M ) + 4η
DLC(M, t)) ここで χ(HF
red(M, t)) は簡約 Floer ホモロジー HF
red(M, t) の Z
2次数 に関するオイラー数, sw(M, t) は (M, t) の3次元 Seiberg-Witten 不変 量, η
sign(M ), η
DLC(M, t) はそれぞれ M および (M, t) に関する符号数
作用素, Dirac 作用素の η 不変量である.
右辺の各項は M の計量の取り方に依存するが,和は位相不変量にな る. M が特別な場合,たとえば負定値な鉛管多様体 P (Γ) の境界にな る場合, Γ が「悪い頂点」(頂点のウェイトの絶対値より頂点から出る 辺の数が大きい点)をもたなければ HF
red(Y, t) = 0(Ozsv´ ath-Szab´ o) で あり,さらに t が spin 構造であれば直接 d(M, t) = µ(M, t) が成り立つ
(主定理の条件をみたす多くの Seifert 有理ホモロジー3球面はこれに あてはまる).しかし一般には Seifert ホモロジー球面であっても両者 は一致せず, ( Mrowka-Rubermann-Saveliev の結果によれば)その差は HF
red(M, t) または sw(M, t) に現れることになるが,詳細は不明であ る.またこれらの不変量は Manolescu の β 不変量とも一致しないが他 の不変量( Furuta-Lee の不変量など)も含めてそれらとの関係も少な くとも筆者には現時点ではよくわからない.
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