感情 心 理 学 研 究
2005年 第12巻 第1号12−23
The Japanese Journal of Research on Emotions 2005, Vol. 12, No. 1, 12-23
資 料
感 情 エ ピソ ー ドの 会 話 場 面 に お け る 表 出 性 ハ ロー 効 果 の 検 討12
大 阪大学 大学院 人間科学研 究科 木 村 昌 紀 同 志 社 大 学 文 学 部 余 語 真 夫 大 阪大 学大学院 人間科学研 究科 大 坊 郁 夫
Expressivity halo effect in the conversation about emotional episodes
Masanori Kimura
Graduate School of Human Science, Osaka University, Yamadaoka, Suita 565-0871
Masao YogoFaculty of Letters, Doshisha University, Kamigyou-ku, Kyoto 602-8580
Ikuo DaiboGraduate School of Human Science, Osaka University, Yamadaoka, Suita 565-0871
"Expressivity halo effect" (Bernieri
, Gillis, Davis, & Grahe, 1996) refers to the phenomenon which observers' rapport judgments are influenced by target expressivity regardless of the social context. This study examined expressivity halo effect in conversations about emotional episodes. In study 1, the validity of the expressivity halo effect on a Japanese sample was tested.
Study 2 suggested that the scores of observers' judgments of rapport between interactants were higher during conversations about positive emotional episodes in which expressions were facilitated, than for conversations about negative emotional episodes in which expressions were inhibited. In study 3, expressivity halo effect was thought to increase the gaps between interactants and observers' judgments. The accuracy of the observers' judgments was poorer for conversations about negative emotional episodes than for conversations about positive emotional episodes.
問 題
学 校 や 職 場 、 家庭 、 地 域 社 会 とさ ま ざ ま な場 面 に お い て 、わ れ わ れ は 無 数 の 人 間 関 係 に囲 ま れ て 日々 の 生 活 を送 っ て い る。 そ の た め 、 周 囲
の 人 間 関 係 を把 握 す る こ とは 、 自 らがそ の 中 で 円 滑 な 対 人 関係 を 形 成 し維 持 して い く上 で必 要 不 可 欠 な も の とな る。 周 囲 の 人 間 関 係 を把 握 す る た めの豊 富 な 情報 源 は 日々の 対人 コ ミュ ニ ケー
1本 論 文 は 、第 一 著 者 の 同 志 社大 学 文 学 部 卒 業 論 文 (平 成13年 度 ) お よび 大 阪 大 学 大 学 院 人 間 科学 研 究 科 修 士 論 文 (平 成15年 度 ) の デ ー タ に新 た な 分析 と解 釈 を加 え た も の で あ る。 な お 、 本 論 文 の 研 究1は 、 日本 感 情 心理 学 会 第10回 大 会 に お い て 、 研 究2は 、 日本 心 理 学 会 第67回 大 会 にお い て , 研 究3は 、 日本 グ ル ー プ ・ダイ ナ ミク ス学 会第50回 大 会 に お い て 報 告 され た 。 2本 研 究 実 施 に際 し、 一 宮 女 子短 期 大 学 尾 上 恵 子 先 生 、 立 命 館 大 学 荒 川 歩 先 生 に ご協 力 い た だ き ま した 。 ここ に 謝 意 を表 し ま
す 。 また 本 論 文 作 成 過 程 に お い て、 愛 知 淑 徳 大 学 小 川 一 美 先 生 、 相 愛 大 学 金 政 祐 司先 生 に は 貴重 な ア ドバ イ ス をい ただ き ま した 。 心 よ り感 謝 申 し上 げ ます 。
木 村 ・余 語 ・大 坊 :感 情 エ ピ ソー ドの会 話 場 面 に お け る表 出性 ハ ロー 効 果 の 検 討
シ ョン で あ ろ う。 つ ま り、 わ れ われ は コ ミュ ニ ケー シ ョ ンを 行 な う会 話 者 と して存 在 す る と同 時 に 、観 察者 と して周 囲 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン を認 知 し、 そ の 情 報 を も と に して 周 囲 の 人 間 関 係 を理 解 す る の で あ る 。 そ れ で は 、 会 話 者 と観 察 者 は 同 じ よ うに対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を認 知 して い るの だ ろ うか 。
社 会 的 認知 の研 究 分 野 で は 、行 為者 と観 察 者 は異 な る 視 点 を も つ こ とか ら、 同 じ事 態 に対 し て異 な る 解 釈 を行 う こ と が知 られ て い る (e.g., Jones&Nisbett,1972) 。Monahan(1995) は 、
会話 相 手 へ の 親 和 動機 の 違 い や 認 知 負 荷 の違 い か ら、 会 話 者 と観 察 者 で は会 話 場 面 の 情 報 処 理 様 式 が異 なる こ と を示 唆 してい る。ま たDuval&
Wicklund(1972) は、会 話 場 面 に お け る会 話 者 と観 察 者 の情 報 処 理 様 式 の違 い を 、 両 者 の 目標 の相 違 か ら説 明 して い る。 会 話 場 面 に お け る 会 話 者 の 目標 は 会話 相 手 との相 互 作 用 を進 め る こ とで あ る が、 観 察 者 の 目標 は 会 話 に関 す る あ ら ゆ る情 報 を収 集 す る こ とで あ る。 この よ うに 、 自分 自身 が会 話 を行 な う場 合 の 認 知 と、観 察 者 と して 会 話 を観 察 す る場 合 の 認 知 との 間 に は ズ レが あ る と考 え られ る。
Bemieri,Gillis,Davis, &Grahe(1996) で は、 欧 米 人大 学 生 を対 象 に して 、 議 論 場 面 (社 会 的 な 問題 に つ い て 話 し合 う) と協 力 場 面 (世 界 旅 行 の 計画 を 立 て る) とい う2つ の 社 会 的 な 文 脈 に お い て 、 話 者 自身 が どの よ うに コ ミ ュ ニ ケー シ ョ ンを 行 い 、 そ の 評価 を行 っ て い るの か につ い て 検 討 す る一 方 で 、 観 察 者 が どの よ うな 手 が か りか ら対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ン を認 知 す る の か に つ い て 検 討 して い る。 そ の結 果 、 観 察 者 が話 者 の 会 話 に対 す る 評 価 を推 測 す る際 に 、 表 出行 動 の 活 発 さ の 印象 で あ る 「表 出 性 」 を手 がか りに して い た一 方 で 、 話 者 自身 の 会 話 に対 す る評 価 は 「表 出性 」 に か か わ らず に 行 わ れ て い た。Bemieri et al.(1996)は 、話 者 の表 出 行 動 が 活 発 で あ れ ば 、 そ の コ ミ ュニ ケー シ ョン が うま く い っ て い る と観 察 者 が 判 断 して しま うこ の 現 象 を 「表 出 性 ハ ロー (expressivity halo)
効 果 」 と名 づ け た。
しか し 、 こ のBemieri et al.(1996) の 指 摘 す る 「表 出 性 ハ ロ ー 効 果 」 と い う現 象 を 一 般 化 す る た め に は2つ の 問 題 点 が あ る 。1つ は 、 「表 出 性 ハ ロ ー 効 果 」 が 文 化 を 越 え て 成 立 す る の か と い う 問 題 で あ る 。 高 井 (1996) やTakai&Ota
(1994) は 、 低 コ ン テ ク ス トの 文 化 で あ る 西 欧 に 対 し て 、 高 コ ン テ ク ス ト文 化 で あ る 日 本 で は 、 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お い て 、 送 り手 が し ば し ば 沈 黙 や 曖 昧 な 表 現 を 用 い や す く 、 受 け 手 は 文 脈 や 非 言 語 行 動 に 内 在 す る 細 か い 情 報 を 巧 み に読 み 取 る こ と を 指 摘 して い る 。ま た 中村 (1991)
やScherer,Wallbot,Matsumoto, &Kudoh
(1989) に よ る 感 情 表 出 行 動 に 関 す る 比 較 文 化 研 究 で は 、 欧 米 人 に 比 べ て 日本 人 は 表 出 行 動 が 抑 制 さ れ て い る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 つ ま り、 高 コ ン テ ク ス ト文 化 で は 、 会 話 者 の 表 出 性 が 低 く て も コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が うま くい っ て い る 可 能 性 が 高 く 、 そ れ ゆ え 観 察 者 も 表 出 性 の 低 い コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 見 て う ま く い っ て い る と 判 断 す る こ と が 起 こ り う る 。 こ の こ と を 考 慮 す る と 、 高 コ ン テ ク ス ト文 化 で あ る 日本 人 の 場 合 、Bernieri et al. (1996) の い う 「表 出 性 ハ ロ ー 効 果 」 は あ ら わ れ に く い こ と が 考 え られ る 。 こ の こ と か ら 、 高 コ ン テ ク ス ト文 化 で あ る 日 本 に お い て 、 「表 出 性 ハ ロ ー 効 果 」が 認 め られ る の か を 検 討 す る 必 要 が あ る 。
Bemieri et al.(1996) の 研 究 の も う1つ の 問 題 点 と し て 、 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に お け る 、 話 題 の 感 情 価 に つ い て 考 慮 され て い な い こ と が 挙 げ られ る 。 表 出 行 動 は 話 題 の 感 情 価 に よ っ て 異 な る こ と が 指 摘 さ れ て い る (e.g.,Scherer&
Ekman,1984) 。話 題 の 感 情 価 が ポ ジ テ ィ ブ な 場 合 (ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド ;最 近 楽 し か っ た 出 来 事 ) とネ ガ テ ィ ブ な 場 合 (ネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド ;最 近 悲 し か っ た り不 安 だ っ た り
し た 出 来 事 ) と で は 、 話 者 の 表 出 行 動 は 大 き く 異 な る だ ろ う。 話 題 の 感 情 価 に よ っ て 表 出 行 動 が 異 な る の で あ れ ば 、 表 出 行 動 を 手 が か りに し て 行 わ れ る 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 認 知 も 十 分 影 響 を 受 け る 可 能 性 が あ る 。 日本 人 は 公 的 場 面 で ポ ジ テ ィ ブ 感 情 に 比 べ て 、 ネ ガ テ ィ ブ 感 情
感 情心理学研 究 第12巻 第1号
の 表 出 を 抑 制 す る こ と が 知 ら れ て い る
(Matsumoto&Ekman,1989; 中村 ,1991)。
した が って 、も し も 「表 出性 ハ ロー 効 果 」に よ っ て 、 表 出 性 を 手 が か りに して対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 認 知 が な され て い る の で あ れ ば 、 表 出 が抑 制 され て 手 が か りの少 な い ネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ドで は、表 出行 動 が促 進 され るポ ジテ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドに比 べ て 、観 察 者 は そ の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンが うま くい っ て い な い と判 断 して しま う可 能 性 が 大 きい 。 しか しな が ら、話 者 の 認 知 レベ ル で は そ の よ うな判 断 は 行 わ れ な い と 考 え られ る。そ の結 果 、ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー
ドに比 べ て 、ネ ガ テ ィブ感 情 エ ピソー ドで は 、「表 出性 ハ ロー 効 果 」 に よ り、話 者 の 会 話 に対 す る 認 知 と、 観 察 者 の 認 知 との ズ レが 大 き くな る こ とが 予 測 され る 。 つ ま り、 ネ ガ テ ィブ 感 情 エ ピ ソー ドで は 、話 者 の 認 知 と観 察 者 の 認 知 の ズ レ が 大 き く な る こ とか ら、対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ
ンの 認知 が 不 正確 にな る と予 測 され る。
本 研 究 で は 、 ま ず 研 究1で 、 目本 人 大 学 生 を 対 象 に して 、「表 出 性 ハ ロー 効 果 」を高 コ ンテ ク ス ト文 化 に適 用す る こ との妥 当性 を検 討 す る。
次 に 、 研 究2と 研 究3で は 、話 題 の 感 情 価 を考 慮 に加 え て検 討 を 行 う。研 究2で は 、「表 出性 ハ ロー 効 果 」 が感 情 エ ピ ソー ドの 会 話 場 面 に お い て 、 観 察 者 に よる 対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 認 知 に どの よ うな影 響 を与 え る の か を検 討 し、研 究3で は 、 よ り包 括 的 に 、 「表 出 性 ハ ロー 効 果」
が対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン認 知 の精 度 に及 ぼ す 影 響 を検 討 す る。 本 研 究 に よ っ て 、Bemieri et al(1996) の 「表 出性 ハ ロー効 果 」 に 関 す る理 論 は 、 文 化 的 側 面 お よび 感 情 的 側 面 か ら精 緻 化 され 、 よ り一般 化 可 能 性 の高 い もの に な る と考 え られ る。
研 究1
研 究1で は 、高 コ ンテ ク ス ト文 化 で あ る日 本 に お い て も 「表 出性 ハ ロー 効 果 」 が 認 め られ る の か ど うか を調 べ る た め、 以 下 の仮 説 を検 討 し た。 まず 、 「表 出性 ハ ロー 効 果 」 に よっ て 、話 者 の 表 出行 動 の 活 発 さを 手 が か りに して観 察 者 が
会 話 を評 価 す る とい うBernieri et al.(1996)の 知 見 か ら、 以 下 の仮 説 が 導 か れ た 。
仮 説 :話 者 は 自身 の 表 出 性 に 関 わ らず 、 会 話 が うま くい って い る か ど うか につ い て 評価 す る 一 方 で 、観 察者 は 「表出性ハ ロー効果 」に よ っ て 、 話 者 の 表 出 行 動 が活 発 な コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンを よ りうま くい っ て い る と判 断 す る だ ろ う。
次 に 、 も し も こ の仮 説 が支 持 され 、 表 出 性 を 手 が か りに す る 「表 出性 ハ ロー 効 果 」 が 日本 人 で も認 め られ るの で あれ ば 、話 題 の感 情 価 に よ っ て 、 観 察 者 に よ る対 人 コ ミ ュニ ケ ー シ ョン の 認 知 の精 度 に も影 響 が生 じる可能性 が あ る。Bemieri
et al.(1996)は 対 人 コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ン認 知 の 精 度 を 、 話 者 の 会 話 に対 す る評 価 と観 察者 に よ る会 話 に対 す る評 価 の相 関 関 係 で 定 義 して い る。
本研 究 で も 同 様 の 方 法 で話 者 と観 察 者 の会 話 に 対す る評 価 の 関 係 を検 討 す る 。
方 法
実 験 参 加 者 実 験 参 加 者 は 、 会 話 者 、 観 察 者 、
「表 出 性 」 の 評 定 者 で 構 成 さ れ て い た 。 会 話 者 は 、互 い に 未 知 の 大 学 生60組120名 (男 性30組60名 、 女 性30組60名 ) で あ っ た 。 男 性 の 平 均 年 齢 は18.6歳 (SD=0.7) 、女 性 の 平 均 年 齢 は18.9歳 (SD=1.2) で あ っ た 。
観 察 者 は 、男 性36名 (平 均 年 齢21.9歳 ,SD=
1.9)、女 性36名 (平 均 年 齢20.1歳 ,SD=1.1) の 計72名 で あ っ た 。
ま た 、 本 研 究 の 焦 点 で あ る 「表 出 性 」 に 関 す る 評 定 を 行 な う た め に 、 観 察 者 と は 独 立 し た 、 男 性36名 (平 均 年 齢20.8歳 ,SD=1.5) 、女 性36 名 (平 均 年 齢20.1歳 ,SD=0.6) の 計72名 が 参 加 し た 。 実 験 参 加 者 は す べ て 心 理 学 に 関 連 す る 授 業 で 募 集 さ れ た 。
会話 手 続 き
話 題 条 件 会 話 の 話 題 にす る エ ピソー ドの 感 情 価 を操 作 す る た め に、 話 題 条 件 にポ ジテ ィ ブ、
ネ ガ テ ィ ブ、 ニ ュー トラル の3通 りを設 け た 。 具 体 的 に は 、 ポ ジテ ィブ 条 件 で は 話 者 自身 が 喜 び や 幸 福 感 を感 じた エ ピ ソー ドを 、 ネ ガ テ ィ ブ
木 村 ・余 語 ・大 坊 :感 情 エ ピ ソー ドの 会 話 場 面 に お け る 表 出 性 ハ ロー 効 果 の検 討
条 件 で は不 安や 悲 しみ 、苦 痛 を感 じた エ ピ ソー ドを想 起 して 回 答 す る よ う話 者 に 求 め た (詳 し くは 後 述 の 質 問 紙(2)を参 照 )。ニ ュ ー トラル 条 件 は 、 ポ ジテ ィブ 条 件 とネ ガ テ ィ ブ 条 件 の 条 件 操 作 をチ ェ ッ クす る た め に 設 け た。
質 問 紙 本 実 験 で は会 話 参 加 者 に 以 下 の5つ の カ テ ゴ リー の 項 目群 を提 示 して 回答 す る よ う 求 め た 。 具 体 的 に は 以 下 の とお りで あ る。
(1)会 話 相 手 との 関係 性 の 質 問 項 目。 ① 全 く知 らな か っ た 、② 顔 を 見 た こ とは あ っ た 、
③ あ い さつ した こ とが あ っ た 、④ 世 間 話 を した こ とが あ っ た 、⑤ た び た び 話 をす る機 会 が あ っ た 、 ⑥ 頻 繁 に 話 を して い る、 ⑦ 悩 み 事 の 相 談 を した こ とが あ る 、⑧ そ の 他 、 か ら2人 の 関 係 に該 当 す る選 択 肢 を1つ 選 択 す る よ うに 求 め た 。 分 析 の 対 象 とす る標 本 に は 、 両 者 の 回答 が 一 致 し、 か つ ① か ②
に該 当す る ペ ア を選 ん だ 。
(2)過 去 の感 情 エ ピソ ー ドに 関 す る 質 問 項 目。
会 話 参 加 者 に感 情 エ ピ ソー ドを 想 起 して も らい 、簡 単 に記 述 す る よ う求 め た 。 ポ ジ テ ィブ 条 件 で は 、最 近 喜 び や 幸福 感 を感 じ た エ ピ ソー ドを想 起 す る よ う求 め 、 そ の 出 来 事 の 発 生 時 期 、 出 来 事 が発 生 した 場 所 、 そ の 場 面 に 居 た 人 物 、 具 体 的 な 出 来 事 の 内 容 、 そ の 出 来 事 に よ っ て 喚 起 され た 気 持 ち に つ い て記 述 す る よ う求 めた 。 ネ ガ テ ィ ブ 条 件 で は 、 最 近 不 安 で あ った り、 苦 しか っ た り、 悲 しい と感 じた エ ピ ソー ドを想 起 す る よ う求 め られ る点 が ポ ジテ ィ ブ 条 件 と異 な る。 ニ ュ ー トラル 条 件 で は 、特 定 の ポ ジ テ ィブ 感 情 エ ピ ソー ドで もネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ドで も な い話 題 と して 、 これ か ら
1週 間 の予 定 を述 べ る よ う求 め る た め 、 各 自の 予 定 を 自 由記 述 す る よ う指 示 した 。 各 条 件 の 質 問紙 の 記 入 時 間 と して5分 間 を設
け た。
(3)会 話 に 対 す る評 価 に 関 す る 質 問 項 目。
Bernieri et al.(1996)の 主 観 的 ラポ ー ル 感 に 関す る18項 目尺 度 の 質 問文 を 邦 訳 した。
各 項 目に 対 して 「ま った くそ うで な い 」 を 1点 、「ま つ た くそ の とお りで あ る」を8点 とす る尺 度 で 評 価 す る よ う求 め た3。
(4)会 話 中 の 感 情 喚 起 状 態 と、 話 題 の 感 情 価 に 関 す る 質 問 項 目。 ポ ジテ ィ ブ条 件 で は 、 会 話 中 に話 者 自身 が 実 際 に感 じた喜 び (幸 福 感 ) の 強 度 、 な らび に 会 話 の エ ピ ソー ド を 世 間 一般 の 人 が体 験 した 場 合 に感 じ る と 思 わ れ る喜 び (幸 福 感 ) の 強 度 につ い て そ れ ぞ れ8段 階 で 評 定 を 求 め た 。 ネ ガ テ ィブ 条 件 の 質 問 の 内 容 も 同様 に 、 そ れ らの 項 目 に つ い て 、 ネ ガ テ ィ ブ感 情 (悲 しみ や 不 安 、 苦 痛 )の 強 度 につ い て 評 定 を求 め た 。ニ ュー
トラル 条 件 の 場 合 、条 件 操 作 の 確 認 の た め に 、 ポ ジ テ ィ ブ 条 件 で用 い た2項 目 とネ ガ テ ィブ 条 件 で 用 い た2項 目の 両 方 の 質 問 に 回 答 を求 め た 。
(5)会 話 の 盛 り上 が り時 期 に つ い て 問 う質 問 項 目。 後 半 の5分 間 に お い て も っ と も会 話 が うま く進 ん で い た と感 じた の は 前期 ・ 中 期 ・後 期 の い ず れ の 時期 で あ っ た か 、 あ る いは そ の よ うに感 じる特 定 の時 期 は なか っ た か とい う4つ の 選 択 肢 中 か ら選 択 を 求 め た 。 この 質 問 項 目も条 件 操 作 の 確 認 の た め 行 わ れ た 。
装 置 撮 影 装 置 と して 、 デ ジ タル ビデ オ カ メ ラ レコ ー ダー (SONY,DCR−TRV30) を用 い た 。
手 続 き 会 話 参加 者 は複 数 の 心 理 学 関 連 の 講 義 ク ラ ス で 募 集 し、 指 定 した 日時 に 、 同性 の 見 知 らぬ もの 同士 がペ ア に な る よ うに 実 験 室 に招 集 され た 。 会 話 参 加 者 が 実 験 室 に到 着 す る と、
指 示 が あ る まで 待 機 す る よ うに 求 め た 。 会 話 参
3具 体 的 な 項 目内容 は 、 「会 話 を 上 手 く調 整 す る こ と が で き た」、 「会 話 に うん ざ り して い た 」、 「協 力 的 に 会 話 が進 ん だ」、 「会 話 が 調 和 して い た」、 「不 満 足 な 会 話 で あ っ た」、 「会 話 が 調 子 よ く進 んだ 」、 「冷 た い 感 じの す る会 話 で あ っ た 亅、 「会 話 は し に く い もの で あ っ た」、「会 話 の 焦 点 が ぼ や け て い た」、 「会 話 に 夢 中 に な っ た 」、 「相 互 に興 味 を も っ て会 話 が で き た 」、 「会 話 は緊 張 感 を 伴 う もの で あ っ た 」、 「好 意 的 に 会 話 が で き た 」、 「互 い に 積 極 的 に会 話 が 進 ん だ 」、 「互 い に肯 定 的 な態 度 で 会 話 が 進 ん だ」、 「会 話 は退 屈 な も の で あ っ た 」、 「会 話 は価 値 の あ る もの で あ った 」、 「ゆ っ く り と会 話 は進 んで い た 」、 の18項 目だ っ た。
感 情心理学研 究 第12巻 第1号
加 者 が2人 そ ろ った 時 点 で 以 下 の よ うに 教 示 し た 。
「本 日は実験 に参加 していただき、大変あ りがと うござ い ます。これか ら行 う実験 は、お2人 で会話 をしてい ただ き、その会話のパター ンを知 ろ うとい うものです。
実験の所要時間はおよそ30分にな ります。」
次 に 、 質 問項 目(1)(2)を実 施 した。 先 に 記 入 し た感 情 エ ピ ソー ドの 内容 に つ い て、2人 で 話 し 手 と聞 き手 に役 割 分 担 して 会 話 す る よ う求 め た。
役 割 分 担 を 行 な っ た 意 図 は 会 話 が途 切 れ な い よ うにす る た めで あ り、「話 し手 の 提 供 した 話 題 で あれ ば 自 由 に話 して よ い 」 と教 示 した 。 会 話 の 際 は 、 椅 子 に移 動 した 。 椅 子 は 、 カ メ ラ を 向 い てハ の 字 型 に 内側 向 き45度 に配 置 し、 椅 子 間 の 距 離 は100cmと した 。会 話 の 様 子 は5m離 した位 置 か らデ ジ タル ビデ オ カ メ ラ で会 話 参 加 者2人 の全 身 が入 る よ うに 撮 影 した。 会 話 を撮 影 す る 際 に 、 録 画 の操 作 を行 う とす ぐ教 示 者 は退 出 し、
実 験 室 内 に は 会 話 参 加 者2人 の み と した 。 ま ず 、 5分 間 自 己紹 介 を 兼 ね て 自 由 に 話す よ う求 め た 。 この セ ッシ ョ ンは 、 実 験 参 加 者 が カ メ ラ に慣 れ て リラ ック スす る こ とを 目的 と して 行 っ た 。 次 の5分 間 で 、 先 に 記 入 させ た感 情 エ ピ ソー ドに つ い て 話 す よ う求 めた 。
終 了 後 、 座 席 に 戻 っ て 、 自身 らの 会 話 に つ い て 質 問項 目(3)(4)(5)に 回答 す る よ う求 め た 。 最 後 に、 デ ィ ブ リー フ ィ ン グを 行 って 、 会 話 参加 者 にデ ー タ と して の 使 用 許 可 を得 た 。
観 察 者 に よ る会 話 解 読 実 験 手 続 き 観 察 者 に 刺 激 と して 呈 示 した の は感 情 エ ピ ソ ー ドに つ い て の5分 間 の 会 話 記 録 で あ った 。 解 読 実 験 で は さ らに 、観 察 者 の 集 中力 を 考慮 して5分 間 の う ち最 後 の3分 間 を抜 粋 して 呈 示 した 。 こ の操 作 に 関す る 妥 当性 は 、会 話 参 加 者 が 後 半5分 間 の うち 、 中期 か ら後 期 に か け て 会 話 が うま く進 ん で い た と回 答 して い た こ と (会 話 参 加 者 全 体 の 85% ) か ら も保 証 され て い る とい え る。
60組 の 会 話 場 面 に対 す る 観 察 者 の 解 読 実 験 は 、 観 察 者 の 負 担 を軽 減 す るた めに 、 以 下 の 手 続 き
で 実施 され た 。60組 の 会 話 場 面 の うち 、 男 性 ペ ア30組60名 分 の会 話 場 面 は 男 性 の 観 察 者 に評 価
す る よ う求 め 、 女 性 ペ ア30組60名 分 の 会 話 場 面 は 女 性 の観 察 者 に 評価 す る よ う求 め た 。60組 の 会 話 場 面 は5組 を1セ ッ トとす る12セ ッ トに 分 け られ 、 各 刺 激 セ ッ トに対 して6名 の 観 察者 が 評 価 課 題 を遂 行 した 。 言 い換 え る と、1人 の 観 察 者 は 同 性 の ペ ア5組 の会 話 場 面 を評 価 した こ とに な る。 な お 、 各 観 察 者 に対 す る各 組 の 会 話 場 面 の 提 示 順 序 は 入 れ 替 え られ た 。
観 察 者 が 実 験 室 に 到 着 す る と、着 席 す る よ う 求 め 、 音 声 を消 去 して 刺 激 を 呈 示 した 後 、 質 問 紙 に記 入 を求 め た 。 刺 激 呈 示 の た め の 装 置 と し て 、モ ニ ター テ レ ビ (MITSUBISHI,21C−S50)
とビ デ オ デ ッキ (SHARP,VC−BS1000) を用 い た。 各 刺 激 呈 示 後 、 観 察 者 は 質 問 (そ れ ぞれ の 話 者 に つ いて 、「会 話 に対 して ど の程 度 満 足感 を 感 じて い た か 」) に8件 法 で 回答 した 。
評 定 者 に よ る 会 話 の 印 象 評 定 手 続 き 評 定 者 の 印 象 評 定 手 続 き は 、観 察 者 の 解 読 実 験 と同 様 の 手 続 き で実 施 され た 。 評 定 者 に呈 示 した 刺 激 及 び 装 置 も、 観 察 者 に対 して 行 っ た も の と同 様 で あ った 。 各 刺 激 呈 示 後 、 評 定 者 は質 問 紙 に8 件 法 で回答 した。研究1で は、Bernieri et al.(1996)
に な らい 、「表 出 性 」 を 「会 話 中 の行 動 の 全 般 的 な 活 発 さ を示 す 程 度 」 と定義 し、「会 話 中 の 行 動
(e.g.,表 情 や 動 作 、発 言 な ど)が 活発 で あ っ た 」 程 度 を個 々 の 話 者 につ い て 評 定 す る よ う求 めた 。
結 果 と考 察
ま ず 、「表 出性 ハ ロー 効 果 」の 日本 で の 妥 当性 に つ い て 確 認 す る た め 、 仮 説 の検 証 を 行 っ た。
「関 係 性 」 の 操 作確 認 「 会 話 相 手 との 関係 性 の 質 問 項 目」 の結 果 に 基 づ く と、本 実 験 に参 加 した60組120名 の 大 学 生 は 、そ れ ぞれ の 会 話 相 手 に 対 して① 「全 く知 らな か っ た」 も し く は②
「顔 を 見 た こ とは あ っ た 」 と 回答 して い た 。 し た が っ て 、本 実 験 で は60組120名 をす べ て 分 析 の 対 象 に した 。
「表 出 性 」 の 操 作確 認 評 定 者 に よ って 評 定 され た 、 会 話 中 の コ ミ ュニ ケー シ ョン行 動 の全 般 的 な活 発 さ の 印象 で あ る 「表 出性 」 につ い て 、 平 均 値 (M=4.44,SD=1.10) を基 準 に会 話 者
木 村 ・余 語 ・大 坊 :感 情 エ ピ ソー ドの 会 話 場 面 に お け る 表 出性 ハ ロー 効 果 の 検 討
集 団 を 表 出 性 の 高 い 群 (66名 ) と低 い 群 (54名 ) に 分 け た 。 各 群 の 「表 出 性 」 の 平 均 値 を 算 出 し 、 鹸 定 を 行 っ た 。表 出 性 の 高 い 群 (M=5.25, 、SD=
0.63) は 低 い 群 (M=3.44,SD= .61)よ り も 有 意 に 表 出性 が 高 か っ た (t(118)=15.81,p< .001)。
「表 出 性 ハ ロ ー 効 果 」 の 実 験 的 検 証 会 話 者 が 回 答 し た 、 会 話 に 対 す る 評 価 に つ い て の18の 質 問 項 目 の 評 定 値 に 基 づ い て 、 α係 数 を 算 出 し た と こ ろ .92と高 か っ た た め 、18項 目 を 会 話 満 足 度 尺 度 とみ な し 、 平 均 値 を 算 出 し た 。
「表 出 性 」 高 群 (M=6.01,SD=1 .03)、低 群
(M=5.74,SD=1.18) で 会 話 参 加 者 自 身 の 会 話 満 足 度 得 点 に は 有 意 差 が な か っ た (t(118)=
1.32,n.s. ;Figure1) 。そ の 一 方 で 、観 察 者 が 判 断 し た 会 話 参 加 者 の 会 話 に 対 す る 満 足 度 は 表 出 性 高 群 (M=5.01,SD=0.92) が 低 群 (M=
4.39,SD=1.09) よ り も 有 意 に 高 く 評 定 さ れ て い た (t(118) =3.37,p< .001;Figure2) 。 会 話 参 加 者 自 身 は 表 出 行 動 の 活 発 さ に 関 わ ら ず 会 話 に 対 す る 評 価 を 行 っ て い た 一 方 で 、 観 察 者 は 会 話 参 加 者 の 表 出 行 動 が 活 発 な ほ ど 会 話 に 満 足 し て い る と判 断 して い た の で あ る 。 こ れ ら の
結 果 は 、仮 説 を支 持 して お り、Bemieri et al.(1996)
の 結 果 と一 致 す る こ と か ら、 日本 人 大 学 生 に お い て も 「表 出 性 ハ ロ ー 効 果 」 が 確 認 さ れ た と 考 え られ る 。 高 コ ン テ ク ス ト文 化 (高 井 ,1996;
Takai&Ota,1994) に あ り、表 出 を 抑 制 す る 傾 向 の あ る 日本 (中 村 ,1991;Scherer,Wallbot,
Matsumoto, &Kudoh,1989) に お い て も 、「表 出 性 」に 関 す る 独 自 の 基 準 が 存 在 し 、対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 認 知 す る 際 の 手 が か り と して 用 い られ て い る と い え る で あ ろ う。
次 に 、 「表 出 性 ハ ロ ー 効 果 」 に よ っ て 、 話 題 の 感 情 価 が 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 認 知 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 探 索 的 に 検 討 を 行 っ た 。
話 題 の 感 情 価 に 関 す る 操 作 確 認 会 話 参 加 者 自 身 が 判 断 し た 、1) 会 話 中 の 感 情 喚 起 状 態 と 、 2) 会 話 中 の 話 題 が も つ 感 情 価 の 両 指 標 に つ い て 、ポ ジ テ ィ ブ 条 件 (1)M=5.48,SD=1.50;
2)M=5.30,SD=1.98) で は ニ ュ ー トラ ル 条 件 (1)M=4.65,SD=1.55;2)M=3.73,
SD=1.59) よ り も ポ ジ テ ィ ブ 感 情 が 有 意 に 高 く 評 定 さ れ て い た (1)t(78) =2.42,p< .01;
2)t(78) =3.93,p< .01)。 ま た 、ネ ガ テ ィ ブ 感 情 に つ い て も 、ネ ガ テ ィ ブ 条 件 (1)M=4.85,
SD=1.96;2)M=5.53,SD=1.85)は ニ ュ ー ト ラ ル 条 件 (1)M=2.03,SD=1.75;2)M=
2.23,SD=1.49) よ り も 有 意 に 高 く 評 定 さ れ て い た (1)t(78) =6.82,p< .01;2)t(78) = 8.77,p< .01)。 した が っ て 、本 研 究 に お け る 話 題 の 感 情 価 の 操 作 は 成 功 した と い え る 。
話 題 の 感 情 価 が 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 認 知 に 及 ぼ す 影 響 各 条 件 に お い て 、会 話 参 加 者 と 観 察 者 の 認 知 の 関 連 性 を 検 討 す る た め に 、Bernieri
et al. (1996) に な ら い 、 会 話 参 加 者 自 身 に よ る 会 話 満 足 度 得 点 と 、 観 察 者 が 推 測 し た 話 者 の 会 話 満 足 度 と の 性 別 を 統 制 し た 偏 相 関 係 数 を 算 出 し た と こ ろ 、ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ドで は .38
(p< .01)、 ネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ドで は .01
(n.s.)で あ っ た 。つ ま り、「表 出 性 ハ ロ ー 効 果 」 に よ っ て 、 表 出 の 抑 制 され た ネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ドよ り も 表 出 の 高 い ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ドで 会 話 参 加 者 と 観 察 者 の 認 知 の 相 関 関 係 Figure2観 察 者 の 推 測 し た 会 話 満 足 度
感 情心理 学研究 第12巻 第1号
が 大 き くな る こ とが示 され た 。 こ の 結 果 は 、 ポ ジテ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドよ りもネ ガ テ ィブ 感 情 エ ピ ソー ドの ほ うが対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン認 知 の 精 度 が 低 くな る こ とを 示 唆 して い る と考 え
られ る 。
研 究2
研 究1で は 、 日本 人 大 学 生 に お い て も 「表 出 性 ハ ロー 効 果 」 を確 認 した 。 さ らに 、 ネ ガ テ ィ ブ感 情 エ ピソー ドよ りもポ ジテ ィブ感 情 エ ピ ソー ドで 会 話 参 加 者 と観 察 者 の 認 知 の相 関 関 係 が 大 き くな る こ と も認 め られ た 。これ は 、「表 出性 ハ ロー 効 果 」に よ って 、表 出が 抑 制 され た ネ ガ テ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドで は 、 表 出行 動 が 促 進 され る ポ ジテ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドに比 べ て (e.g.,中 村 , 1991)、観 察 者 は そ の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン が うま
くい っ て い な い と判 断 した一 方 で 、 話 者 の 認 知 レベ ル で は そ の よ うな判 断 は行 わ れ な か っ た た め と考 え られ る。 研 究2で は 、 この 点 につ い て 検 証 す る こ と を 目的 と した。
加 え て研 究2で は、 手 続 き 上 の 工 夫 を い くつ か 行 っ た 。1つ は質 問項 目の対 応 に つ い て で あ る。 研 究1で 、 会 話 参 加 者 に 回 答 を求 め た の は Bernieri et al.(1996)の 主観 的 ラポ ー ル 感 に関 す る質 問 項 目18項 目を和 訳 し文 章 形 式 に した も ので あ つ た 一 方 で 、観 察者 に 回 答 を求 め た の は 話 者 の 会 話 満 足 度1項 目で あ っ た 。 こ の対 応 関 係 を よ り明 確 に捉 え る た め に 、 研 究2で は 、 会 話 参 加 者 が 回 答 した もの と同様 の 質 問項 目 につ い て観 察 者 に 問 うこ と と した 。
も う1つ は 、質 問項 口の 対 象 に つ い て で あ る 。 研 究1で は個 々 の話 者 に つ い て の 会 話 に対 す る 評 価 を観 察 者 に推 測 す る よ うに 求 め た の に 対 し、
研 究2で は会 話 全 体 の 雰 囲 気 に つ い て観 察 者 に 判 断 を求 め る こ とで 、「表 出性 ハ ロー 効 果 」が個 々 の話 者 の 会 話 に対 す る評価 だ けで な く、 会 話 全 体 の 雰 囲 気 に も適 用 で き る こ と を確 認 す る。
最 後 は 、実 験 計 画 に つ い て で あ る。 研 究1で は 、刺 激 呈 示 の 際 に コ ミ ュニ ケ ー シ ョ ンの 時 間 的推 移 を観 察 者 に で き るだ け 不 足 な く把 握 して も ら うた め に 、1つ の 会 話 場 面 につ き3分 間分
の場 面 を 呈 示 した。 この 手 続 き で は 、1つ の会 話 あ た り比 較 的 長 く刺 激 呈 示 で き る反 面 、1人
の観 察 者 が 多 く の刺 激 につ い て評 価 で きな い と い う 問題 が あ っ た しか しな が ら、1人 の 観 察 者 が 多 くの刺 激 を評 定 し、 被 験 者 内 要 因 の 実 験 計 画 にす る こ とで評 定 の 個 人 差 の 統制 が 可 能 と な る 。 そ こで 研 究2で は 、1つ の 会話 場 面 あ た りの 呈 示 時 間 を1分 間 に短 縮 して被 験 者 内 の 要 因 計 画 で 解 読 手 続 き を実 施 し、結 果 の 堅 固 性 を 確 認 す る こ と を 目的 と した。
研 究2の 仮 説 は 以 下 の 通 りで あ る。
仮 説 :話 者 自身 は ポ ジテ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ド とネ ガ テ ィブ 感 情 エ ピ ソー ドとで は 会 話 に 対 す る評 価 に 差 が な い 一 方 で 、 観 察 者 は ポ ジテ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ドよ りもネ ガ テ ィ ブ感 情 エ ピ ソ ー ドの 会 話 を うま くい って い な い と判 断 す る で あ ろ う。
方 法
実 験 参 加 者 学 部 生 男 女 各10名 の 計20名 (平 均 年 齢20.3歳 ,SD=0.9)が観 察 者 と して 参 加 し た。 実 験 参 加 者 は す べ て 心 理 学 の 授 業 にて 募 集 を行 っ た 。
手 続 き 研 究1で 呈 示 した3分 間 の 刺 激 の う ち 中 間 部 の1分 間 を用 い て、 話 題 の 感 情 価 条 件
(ポ ジ テ ィ ブ ・ニ ュー トラル ・ネ ガ テ ィブ ) を 被 験 者 内 要 因 とす る解 読 実 験 を 行 った 。 話 題 条 件 か らそ れ ぞれ 、 研 究1に お け る会 話 満 足 度 得 点 の 上 位2組 ・中位2組 ・下位2組 ず つ 抽 出 し、
刺 激 (音 声 な し) と して用 い 、 全 て の 刺 激 に 対 して 同 一 の観 察 者 が 評 定 す る よ うに した。 刺 激 呈 示 後 、研 究1の 話 者 と同 様 の 、「会 話 を上 手 く 調 節 して い た 」、「協 力 的 に 会 話 が進 ん で い た 」、
「好 意 的 に会 話 して い た 」、 「相 互 に興 味 を も っ て会 話 して い た 」、「会 話 し に くそ うだ っ た 」、「会 話 は 緊 張 感 を伴 うも の で あ っ た 」 の6つ の 質 問 項 目へ の 回答 を 観 察 者 に 求 め た 。
質 問 項 目は 、 研 究1の 会話 手 続 きで 話 者 が 回 答 した 、 会 話 満 足 度18項 目を 因 子 分 析 (主 因 子 法 ・プ ロマ ッ クス 回 転 ) した 結 果 、 抽 出 さ れ た
『会 話 調 整 因子 』、『会話集 中因子』、『ぎこち な
木 村 ・余 語 ・大 坊 :感 情 エ ピ ソー ドの 会話 場 面 に お け る表 出 性 ハ ロー 効 果 の 検 討
い 会 話 因 子 』の3因 子 (因 子 問相 関 は .69−.73)
か ら因 子 負 荷 量 の 高 か っ た 項 目を順 番 に2つ ず つ 選 ん だ6項 目で あ った 。 具 体 的 な項 目の 内容 は 、『会 話 調 整 因 子 』(説 明 率20.00% )か らは 「会 話 を 上 手 く調 節 して い た」「協 力 的 に会 話 が 進 ん でい た」の2項 目、『会話 集 中 因子』(説 明率18.94% ) か らは 「好 意 的 に 会話 して い た 」「相 互 に 興 味 を も って 会 話 して い た 」の2項 目、『ぎ こ ち な い 会 話 因 子 』 (説 明率18.06% ) か ら は 「会 話 し に く
そ うだ っ た」「会 話 は緊 張 感 を伴 うもの で あっ た 」 の2項 目で あ っ た 。 研 究2で 因 子 分 析 を 行 い 、 質 問 項 目を選 出 した の は 、被 験 者 内 の解 読 実 験 の 際 に、 評 定 を 行 う観 察 者 の 負 担 を減 らす た め で あ る。 観 察 者 は6項 目につ い て 会 話 全 体 の 印 象 を8件 法 で評 定 した 。6項 目の α係 数 が .81と
比較 的 高 い値 で あ った こ とか ら、 平 均 値 を 算 出 し、 観 察 者 が推 測 した 「会 話 成 功 度 」 と して 以 下 の 分 析 に用 い た 。 「会 話 満 足 度 」で は な く 「会 話 成 功 度 」 と した の は、 個 々 の 話 者 の会 話 に対
す る評価 につ い て 推 測 を求 め た 研 究1と 異 な り、
研 究2で は会 話 全 体 の 印 象 に つ い て観 察 者 に評 定 を求め た た め で あ る.
結 果 と 考 察
ま ず 、 研 究1で 話 者 自 身 の 回 答 した18項 目 の 中 か ら 、 観 察 者 が 回 答 し た も の と 対 応 す る6項 目 を 選 出 して 平 均 し 、 話 者 そ れ ぞ れ の 「会 話 満 足 度 」 得 点 を 算 出 し た 。 そ の 後 、 ペ ア ご と に2 人 の 会 話 満 足 度 を 平 均 し た も の を も っ て 、 各 話 者 間 の 「会 話 成 功 度 」 と し た 。 ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド (M=6.06,SD=0.36) と ネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ド (M=5.87,SD=1.19) で 、 話 者 間 の 「会 話 成 功 度 」 に 有 意 な 差 は な か っ た
(t(22) = .44,n.s.)。 一 方 、 観 察 者 が 推 測 し た 「会 話 成 功 度 」 は ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド
(M=5.56,SD=0.55) の 方 が ネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド (M=4.92,SD=0.53) よ り も 有 意 に 高 か っ た (t(19)=5.77,p< .001)こ と か ら 研 究2の 仮 説 は 支 持 され た 。 話 者 自 身 の 判 断 に 基 づ く 「会 話 成 功 度 」 に は 話 題 間 で 差 が な い に も 関 わ ら ず 、 観 察 者 は ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー
ドよ り もネ ガテ ィブ 感 情 エ ピ ソー ドの 「会 話 成 功 度 」 を 低 く見積 も っ て い た の で あ る。 これ は 、 研 究1で 示 され た 表 出行 動 が 活 発 な ほ ど コ ミュ ニ ケー シ ョンが うま くい っ てい る と判 断 す る 「表 出 性 ハ ロー 効 果 」 に よ っ て 、 ポ ジテ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドに 比 べ て ネ ガ テ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドで は 表 出 が 抑 制 され て い る こ と (e.g.,中村 ,1991)
か ら、表 現 の 豊 か さ に欠 け 、 そ れ ゆ え会 話 が う ま くい っ て い な い と判 断 され た た め と考 え られ る 。
研 究3
研 究2に お い て 、 ポ ジ テ ィブ感 情 エ ピ ソー ド よ りもネ ガ テ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドで は 、 会 話 が
う ま くい っ て い な い と観 察 者 に判 断 され てい た 一 方 で、話 者 の 認 知 レベ ル で は そ の よ うな判 断 は 行 わ れ て い な か っ た 。
研 究1で の 探 索 的検 討 の 結 果 、 ネ ガ テ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドよ りも ポ ジテ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ド の 方 が話 者 の 会 話 に 対 す る評 価 と観 察 者 の会 話 に 対 す る評 価 の 相 関 関 係 が強 い こ とが 示 され た こ と と合 わ せ て 考 え る と、これ は 「表 出 性 ハ ロー 効 果 」 に よ っ て 、 ポ ジ テ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドよ り もネ ガ テ ィブ 感 情 エ ピ ソー ドに お い て 、 話 者 の 会 話 に対 す る評 価 と観 察 者 の会 話 に 対 す る評 価 の ズ レが 大 き くな る た め で あ る と考 え られ る。
そ こで 研 究3で は、 話 者 の 会 話 に対 す る 評 価 と 観 察 者 の会 話 に 対 す る評 価 の差 分 の 絶 対 値 を用 い て 、 認 知 の ズ レに つ い て 検 討 を行 うこ とを 目 的 と した。
ま た 、 研 究2で は 、話 者 本 人 の 会 話 満 足 度 の 平 均 値 を 「会話 成 功 度 」 と して 用 い た こ とで 、 会 話 全 体 の雰 囲 気 につ い て 観 察 者 に評 定 を求 め た 場 合 で も 「表 出 性 ハ ロー 効 果 」 が 生 起 す る こ と を確 認 す る こ とが で き た 。 ただ し、 こ の 指 標 は 話 者 間 の 会話 満 足 度 に 落 差 が あ っ た 場 合 や 、 観 察 者 に よ って 話 者 間 の 会 話 満 足 度 に 落 差 が あ る と推 測 され た 場 合 に 、 観 察 者 が 回答 す べ き選 択 肢 が な か った 可 能 性 が あ る。 そ こ で 研 究3で は 、 研 究1と 同様 に 個 々 の 話 者 につ い て 、 会 話 に 対 す る評 価 を観 察 者 に推 測 す る よ うに 求 め た 。
感 情心理学研 究 第12巻 第1号
さ らに 研 究2で は 、 被 験者 内 の 要 因配 置 で 解 読 実 験 を行 うた め に 、 観 察者 の負 担 を 考慮 して 刺 激 数 を制 限 して い た。 しか し、 刺 激 数 を制 限 した こ とで 、刺 激 特 性 に 偏 りが あ っ た 可 能 性 が あ る。 そ こで 、 研 究3で は 、観 察 者 に対 して す べ て の 会 話 場 面 を呈 示 した。
研 究3の 仮説 は 以 下 の 通 りで あ る。
仮 説 :「表 出性 ハ ロー 効 果 」に よ っ て 、話 者 の 会 話 に対 す る評 価 と観 察 者 の 会 話 に対 す る評 価 の ズ レは ポ ジテ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドの 会 話 場 面 よ りもネ ガ テ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドの 会 話 場 面 の 方 が大 き く な るで あ ろ う。
方 法
実 験 参 加 者 学 部 生 男 性10名 (平 均 年 齢22.1 歳 ,SD=1.4)、学 部 生 女 性12名 (平 均 年 齢21.6 歳 ,SD=1.9)の 計22名 が 観 察 者 と して 参 加 した 。
ま た 、 「表 出性 」 につ い て評 定 す る 、観 察 者 と 独 立 した 印 象 評 定 者 と して、大 学 生 男 性5名 (平 均 年 齢21.4歳 ,SD=0.9) 、女 性7名 (平 均 年 齢 20.7歳SD=0.8) の計12名 が 参 加 した 。実 験 参 加 者 は す べ て心 理 学 の ゼ ミ及 び 授 業 にて 募 集 を 行 っ た 。
手 続 き 観 察 者 に は、 被 験 者 内 要 因 で 解 読 実 験 を行 っ た 。女 性 の 観 察 者 に は ニ ュ ー トラル 条 件 を 除 い た20組40名 の 女 性 同 士 の 会 話 場 面 を 、 男 性 の 観 察 者 に は ニ ュー トラル 条 件 を除 い た20 組40名 の 男 性 同 士 の 会 話 場 面 を 呈 示 した 。 研 究 1、2と 同様 に 映 像 の み の刺 激 呈 示 後 、 質 問項 目4へ の 回 答 を求 め た。観 察者 は3項 目につ い て 会 話 参加 者 自身 の 会 話 に対 す る評 価 を推 測 した 。 具 体 的 な 項 目の 内 容 は、「会話 を上 手 く調 節 す る
こ とが で き た」、 「好 意 的 に会 話 で き た」、 「会 話 が しに くい もの で あ っ た 」、で あ り8件 法 で評 定 を 求 めた 。3項 目の α係 数 は .74と比 較 的 高 い値 で あ った た め 、 この3項 目の平 均 値 を算 出 し、
観 察 者 が 推 測 した 話 者 の1会 話 満 足 度 」 と して
以 下 の 分析 に 用 い た 。
ま た 、「表 出 性 」につ い て 印 象 評 定 を実 施 した 。 観 察 者 と同 様 に 、 女性 の 評 定 者 に は ニ ュ ー トラ ル 条 件 を 除 い た20組40名 の 女 性 同 士 の 会 話 場 面 を、 男 性 の 評 定 者 に は ニ ュー トラル 条 件 を 除 い た20組40名 の 男 性 同 士 の 会 話 場 面 を 呈 示 し、 以 下 の 質 問 項 目へ の 回答 を 求 めた 。 よ り多 面 的 に
「表 出性 」 につ い て と らえ るた め に 、 評 定 者 は 、 会 話 参 加 者 の表 出性 に つ い て 、「会 話 中の 発 言や 行 動 が 活発 で あ っ た 」、 「会 話 中 の感 情 状 態 や 気 分 、考 え て い る こ とが 表 情 や し ぐ さに あ らわれ て い た 」、 の2項 目に8件 法 で 回 答 した 。
結 果 と 考 察
話 題 の 感 情 価 と 表 出 性 印 象 評 定 者 が 回 答 し た 「表 出 性 」 に 関 す る 印 象 の2項 目の 合 計 値 を
「表 出 性 」得 点 と した 。ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド (M=10.45,SD=2.03) で は ネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド (M=8.93,SD=1.13) よ り も 「表 出 性 」 が 有 意 に 高 く 評 定 さ れ て い た (t(11) = 2.52,p< .05)。 こ の 結 果 は 、 中 村 (1991) や 、 Nakamura,Buck, &Kenny(1990) と 一 致 し て い る 。
話 題 の 感 情 価 が 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 認 知 に 及 ぼ す 影 響 観 察 者 が 回 答 し た の と 同 じ 「好 意 的 に 会 話 で き た か ど うか 」、 「会 話 を 上 手 く調 節 す る こ と が で き た ど うか 」、「会 話 が し に く い も の で あ っ た か ど うか 」 の3項 目 の 平 均 値 に よ る 会 話 に 対 す る 評 価 に つ い て 、 会 話 参 加 者 自 身 の 判 断 (研 究1に て 実 施 ) で は 、 ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド (M=6.00,SD=1.23) とネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド (M=6.04,SD=1.37) に 有 意 差 は 認 め られ な か っ た (t(78)=0.14,n.s. ; Figure3参 照 )。一 方 、観 察 者 で は 、ネ ガ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド (M=5.01,SD=0.90) よ りポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソ ー ド (M=5.40,SD=0.71)
を 有 意 に 高 く評 定 して い た (t(78)=2.18,p< .05;
4質 問項 目は 、研 究1の 因 子 分析 の結 果 、 抽 出 され た3因 子 か らも っ とも 因 子 負 荷 量:の 高 か っ た項 目を1つ ず つ 選 ん だ 計3項 目で あ っ た 。研 究3で 用 い たこ の3項 目は 研 究2で 用 い た も の に 含 ま れ る もの で あ っ た が 、 さ らに 項 目を 絞 っ た の は 、 刺 激 数 の増 加 に 対 して 実験 参 加 者 の 負担 を 減 らす た めで あ っ た。
木 村 ・余 語 ・大 坊 :感 情 エ ピ ソー ドの 会 話 場 面 に お け る表 出性 ハ ロー 効 果 の 検 討
Figure4参 照 )。こ の結 果 は 研 究2と 同様 の もの で あ っ た 。
さ らに 、 研 究3で は 、会 話 参加 者 と観 察 者 の 会 話 評 価 に対 す る 認 知 のズ レ を示 す 指 標 と して 、 会 話 参 加 者 自 身 の 会 話 に対 す る評 価 の平 均 値 か
ら、観 察 者 が 推 測 した 話 者 の 会 話 に対 す る 評 価 の 平 均 値 の 差 分 の 絶 対 値 を用 い た 。 こ の 指 標 の 値 が大 き くな る ほ ど、 会 話 参 加 者 と観 察 者 の 認 知 にズ レが あ る こ とを 示 し、逆 に 値 が小 さ くな る ほ ど観 察 者 に よ る対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 認 知 が 正確 で あ る こ と を示 して い る。 こ の 認 知 の ズ レに つ い て 、t検定 を 行 っ た結 果 、ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ド (M=1.05,SD=0.64) よ り もネ ガ テ ィブ 感 情 エ ピ ソー ド (M=1,39,SD=
0.88)の方 が 有 意 に大 きい もの で あ っ た (t(78)= 1.99,p<.05;Figure5参 照 )。つ ま り、ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ドの 会 話 場 面 よ りもネ ガ テ ィブ 感 情 エ ピ ソー ドの 会話 場 面 の方 が 、 観 察 者 に よ る対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン は 不 正 確 に推 測 され て い た の で あ る。 この 結 果 は本 研 究 の仮 説 を支 持 す る も の で あ っ た 。
総 合 考 察
本 研 究 結 果 か ら、 日本 人 大 学 生 を対 象 に した 場 合 に お い て も 「表 出 性 ハ ロー 効果 」 が確 認 さ れ た 。 話 者 の 表 出行 動 が 活 発 な ほ ど、 コ ミュ ニ ケ ー シ ョンが うま くい って い る と観 察 者 が判 断 す る 「表 出 性 ハ ロー 効 果 」 に よっ て 、 「表 出 性 」 の 高 い ポ ジ テ ィ ブ感 情 エ ピ ソー ドで は 、 会 話 参 加 者 自身 の 会 話 に対 す る 評 価 と観 察 者 の 会 話 に 対 す る評 価 の ズ レが 小 さ くな る 一方 で 、「表 出性 」 が低 い ネ ガ テ ィブ感 情 エ ピ ソー ドで は、「表 出性 」 を 手 が か りに で き な い た め に 、観 察 者 が 、 話 者
自身 の 会 話 に 対 す る評 価 を低 く見積 も り、 話 者 自身 の 会 話 に 対 す る評 価 と観 察 者 の 認 知 の ズ レ が 大 き くな る。 こ の こ とか ら、ネ ガ テ ィブ 感 情 エ ピ ソー ドで は ポ ジ テ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ドよ り
も観 察 者 に よ る対 人 コ ミ ュニ ケ ー シ ョンの 認 知 が 不 正 確 に行 わ れ る こ とが 示 唆 され た 。 た だ し、
本 研 究 結 果 を一 般 化 し、 展 開 して い くた め に 、 今 後 検 討 され るべ き い くつ か の課 題 が 考 え られ
る。
まず 本 研 究 で は 、視 覚 的 情 報 を手 が か りに し た 対 人 コ ミ ュニ ケ ー シ ョン の認 知 に 焦 点 を 当 て て 研 究 を行 っ た が 、音 声 情 報 も重 要 な 情 報 源 で あ る と考 え られ る た め 、 今 後 は考 慮 に 加 え て検 討 して い か ね ば な らな い 。
また 本 研 究 で は 、観 察 者 は話 題 の 感 情 価 に つ い て 知 らな い ま ま に話 者 の 会 話 に対 す る評 価 を 推 測 していた。しか しなが ら、Nakamura,Buck, & Kenny(1990) が 指 摘 す る よ うに 、 わ れ わ れ は 通 常 、 他 者 の 内 的 状 態 を推 測 す る 際 に 表 出 行 動 Figure3 話 者 自身 の 会 話 満 足 度
Figure4 観 察 者 の 推 測 した 会 話 満 足 度
Figure5 話 者 自身 と観 察 者 の認 知 の ズ レ
感 情心理学研 究 第12巻 第1号
と文 脈 情 報 を 合 わ せ て 手 が か りに用 い て い る。
あ らか じめ観 察 者 に文 脈 情 報 で あ る話 題 の感 情 価 を知 らせ て お い た 場 合 で も、「表 出 性 ハ ロー 効 果 」 が み られ るの か に つ い て検 討 し て い か ね ば な ら な い 。
最 後 に 、 対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン認 知 の 精 度 の 向上 に 向 け て 述 べ る 。本 研 究 結 果 か ら、「表 出 性 ハ ロー 効 果 」に よ っ て 、「表 出性 」を 手 が か り
に して対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン の認 知 を 行 え ば 、 ネ ガテ ィ ブ 感 情 エ ピ ソー ドの 会 話 で は相 対 的 に 不 正 確 な 認 知 を行 っ て しま う可 能 性 が示 唆 され た。 そ こで 、 話 題 の感 情価 に 左 右 され ず に対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンで 表 出 され る手 が か りにつ い て検 討 し、 そ の 手 が か りに注 目す る こ と で精 度 の 向 上 を追 求 して い くこ とが 今 後 の 課 題 と し て 挙 げ られ る。
対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン認 知 の結 果 を観 察 者 に フ ィー ドバ ックす る こ とで 、 そ の精 度 は 向上 す る とい う報 告 もあ る (Gillis,Bemieri, & Wooten,1995) 。さ らに、Bernieri,&Gillis(1995)
で は 、 外 向性 や 神 経 症 傾 向 の よ うな パ ー ソナ リ テ ィ と対 人 コ ミ ュニ ケ ー シ ョン認 知 の 精 度 との 関 連 を調 べ た が 、 有 意 な関 連 は 認 め られ な か っ た 。 これ らの 先 行 研 究 か ら、対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン の 認知 を訓 練 に よ っ て 向 上す る よ うな 、 一 種 の 社 会 的 ス キル と して位 置 づ け られ よ う。
一 般 的 に 、社 会的スキル は対人 関係 を円滑に進 め るた め の適 応 能 力 と して 定 義 され る。 わ が 国 の 先 駆 的 な研 究 と して は、 堀 毛 (1987,1994)
や 菊 池 (1988)が 挙 げ られ る が 、近 年 社 会 的 な 適 応 を促 す た めの トレー ニ ング ・プ ロ グ ラ ム の 開発 、 実 践 研 究 が 活 発 に行 われ て い る (相 川 , 2000; 津 村 ,1994; 大 坊 ,2003)。今 後 は 、対 人 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン認 知 が社 会 的 ス キル の1つ で あ る とい う可 能 性 を検 討 しな が ら、 向 上 を 目 指 す た め の プ ロ グ ラ ム 開発 や 、 そ の 基 礎 とな る 知 見 の探 求 が 求 め られ る。
引 用 文 献
相 川 充2000人 づ き あ い の技 術一 社 会 的 ス キ ル の 心 理 学 一 サ イ エ ン ス 社
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