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観血的検査法から非観血的検査法へ一

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日本小児循環器学会雑誌 13巻3号 451〜452頁(1997年)

<Editorial Comment>

  技術革新に伴う医学・医療の進歩

観血的検査法から非観血的検査法へ一

京都府立医科大学小児疾患研究施設内科部門 尾内善四郎  小児期心疾患の殆んど,なかんずく重篤な心疾患は理学所見を中心として胸写や心電図など非観血的検査法 で検出され,且つその多くは日常的な検査にて検出されてきた.川崎病冠動脈後遺症のように,日頃無症状で あり理学所見でも,また通常の検査においても全く異常を示さずに活動的生活を送っているにもかかわらず,

突然死や心筋梗塞のような重篤な転帰をとる疾患は少ない.

 したがって川崎病冠動脈病変の診断には,これまで多くの努力が払われてきた.最初に登場したのは冠動脈 造影法(CAG)であった.しかし当初行われていた大腿動脈の露出切開によるカテーテル挿入は,小児科医に

とって技術的に困難であったため,普及には限界があった.これも間もなく器具の改良により,血管穿刺経皮 的カテーテル挿入法(セルジンガー法)が一般化したことにより,CAG施行可能な施設が徐々に増加していっ た.しかしながら矢張り,CAGは侵襲的で且つ観血的検査法であるので必ずしも一般的でなく,また施行には 多くの制約があることから,多くの患者は後遺症の有無の確認が出来ないままに放置されていた.

 そこに登場したのが断層心エコー法(2DE)であった.その時期は日本経済の発展が著しく,医療経済も加 速度的に拡大していた時期でもあったので,装置の普及も目覚ましかった.近年では川崎病患者の殆んど100%

が2DEにより非侵襲的,非観血的に冠動脈瘤の診断を受けるようになり,川崎病冠動脈病変の診断には2DEで 十分であり,あたかもCAGにとって代ったかにみえた.

 しかし冠動脈瘤の予後が明らかになるに従い,狭窄性病変の検出が重要になってきた.その点で2DEは瘤検 出の際に発揮するほどの威力がなく,むしろ殆んど無力といってよいことから,CAGの価値が再びクローズ・

アップされてきた.冠動脈の予後に関して,瘤が退縮した部位の動脈壁性状を知ることが狭窄性病変への発展 を予測する上で重要である.血管内腔の形態を描出するCAGから冠動脈壁の性状まで明らかにするには限界 がある.そこに血管内エコー(IVUS)が登場した訳である.

 もともとIVUSは成人において粥腫の検査法として開発され,これまでIVUSと, CAGや血管壁病理像の 関連について検討が行われてきた1).即ち,血管内膜の線維性または細胞線維性肥厚,粥腫内壊死巣や石灰化に ついて比較検討され,またCAG正常像が必ずしも粥腫の存在を否定することにならないことも明らかにされ た2).これらの成果を川崎病血管病変に適応することにより,臨床的には把握困難であった冠動脈血管壁性状の 検索が可能となったことは,川崎病遠隔期の病態把握,診断,治療に寄与するところが大きい.

 ただし,粥腫から得られた知見を川崎病血管病変に当てはめる際,飽くまでも借りものであることを心に留 めておく必要がある.言うまでもないが,粥腫と川崎病動脈瘤や,その続発病変は組織像が全く異っているか らである.今後IVUS所見における川崎病冠動脈病変の特性を明らかにすると同時に,組織像との対比も行わ れなければならない.このように現時点では多くの問題があるにもかかわらず,IVUSの出現により我々は直 接的に血管壁の異常を検出する手段を手に入れることになった.しかしIVUSはCAG以上に技術の習得を必 要とする侵襲的検査法であり,患者の苦痛やリスクのみならず,反復施行の制限からも,侵襲1生の少ない非観 血的検査法の開発が求められる訳である.そこに高速CT(EBT)が出現した.

 石灰化の検出が粥腫の診断につながることから,微小な石灰化まで検出可能であり,X線透視やCAGに比 較し高い効率を有し,且つ非観血的検査である高速CTが注目され, IVUSとの比較検討がなされてきた3).血 管壁の石灰化に関しては,川崎病においても巨大冠動脈瘤の遠隔期における石灰化が従来から指摘されてきた が,CAGや単純胸部X線よりも高率に,また微小なものまで検出できることが鈴木らの論文により明らかに

なった.

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452−(50) 口小循誌 13(3),1997  鈴木らの論文でもっとも注目するところは,冠動脈内膜肥厚と高速CTのBulge in late phase(BIL)の関 係である.両者の関係が直接的なものとは考え難iく,また高速CTには技術的問題や, CT像と血管組織像と の対比など,解決すべき多くの課題が存在している.しかし一方では,それらの解明が川崎病冠動脈病変の病 態や予後の解明に貢献することも期待されるところである.いずれにしても,川崎病後遺血管病変が非観血的 に検出できることは臨床医学上,極めて価値が高い.

 最近では,徐々に高速CTの設置施設が増えてきたが,この装置が高額機器のため,現状では限られた施設 においてのみ利用可能である.ところで,米国では高速CTの利用はCAGなど観血的検査の費用に比べ,医 療費の節約になるとも言われている4).わが国では高度技術に対する保険点数が低いこと,急速に変化している ものの侵襲的,観血的検査による医療事故に対するガードが比較的低いことから,高速CT装置の購入費との 間でcost benefltに関する比較検討するような情況にはない.技術改新の恩恵を国民全体が速やかに享受でき

るような医療体制が望まれる.

      文  献

1)Nishimura RA, Edwards WD、 Warnes CA, Reeder GS, Holmes DR, Tajik AJ, Yock PG:Intravascular   Ultrasound in−1aging:In vitro validation and pathologic correlation. JACC 1990;16:145  154

2)Tobis JM, Mallery J, Mahon D, Lekman K, Zalesky P, Gri ffith J,Gessert J, Moriuchi M, McRae M, Dwyer M−L,

 Greep N, Ilenry WL:Intrascular ultrasound imaging of human coronary arteries in vivo. Analysis of tissue  characterizations with comparison to in vitro histolegical specimens. Circulation l991;83:913−926

3)Agatston AS、 Janowitz WR, Kaplan G, Gasso J、 Hildner F, Viamonte M Jr:Ultrafast computed tomography−

 detected coronary calcium reflects the angiographic extent of coronary arterial atherosclerosis. Am J Cardiol   1994;74:1272−1274

4)Budo ff MJ, Georgiou D, Brody A, Agatston AS, Kemedy J, Wolfkiel C, Stanford W, Shields P, Lewis RJ,

 Janowitz WR, Rich S, Brundage BH:Ultrafast compited tomography as a diagnotic modality in the  detection of coronary artery disease. Multicenter Study Circulation 1996;93:898−904

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