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令和 2 年 若狭研究室冬の研究会 【第 34 回】

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(1)

令和 2 年

若狭研究室冬の研究会

【第 34 回】

2020

1

11

日/

12

静岡県 伊東市 ホテル暖香園

(2)

参加者 若狭研究室

若狭研

O B

O G

若狭 雅信 (教授)

前山 智明 矢後 友暁 (助教)

岩見 法之 西村 晨平 (M2)

高篠 鮎人 若松 郁佳 (

M2

)

熊谷 澪 篠原 優太 (

M1

)

水野 智久 知々田 優介 (M1)

吉田 朋美 細田 敦也 (

M1

)

田代 愛実 (

B4

)

原田 楠子 (B4)

松岡 萌香 (

B4

)

(3)

発表プログラム

1. イオン液体中での磁場効果

西村 晨平

2. 三重項増感反応による三重項ゲルミレンの発生に関する検討

若松 郁佳

3. 磁場印加の方向を変化させたアントラセンのトリプレットフュージョンの 磁場効果測定

篠原 優太

4. ミセル中

DPH

の蛍光寿命の測定

知々田 優介

5.

DPH

のミセル水溶液の調整法の検討

細田 敦也

6. 色素吸着したアントラセンによるトリプレットフュージョンの観測

田代 愛実

7. イオン液体中での低磁場効果の測定

原田 楠子

8. 溶媒粘度によるアップコンバージョンの高磁場効果の変化

松岡 萌香

(4)

2019.1.11~12

夏の研究会

イオン液体中での磁場効果

M2

西村晨平

【序論】

イオン液体(

ILs)

とは常温で液体状態の塩である。初めて合成されたイオン液 体は空気中で不安定であったが、1990 年代初頭には空気や水に安定なイオン液 体が報告され、研究が盛んになった。イオン液体には不揮発性や不燃性、高粘 度といった特徴をもっている。また、ラジカル対に磁場を印加すると、スピン 変換速度が変化して散逸ラジカル収量に影響を及ぼす。この効果を磁場効果と いい、ラジカル対の周辺環境を考察する要因になりえるものである。

当研究室では、土田によってカチオン構造のアルキル鎖の長さによって異な るイオン液体を粘度に磁場効果の大きさをプロットすると粘度の大きさに対し て磁場効果の大きさが比例的に大きくなることが分かった。しかし、この実験 結果で得られた磁場効果は

Benzophenone(BP)

1,4-Diazabicyclo[2.2.2]octane

(DABCO)

による電子移動反応によるものであった。そこで今回は

Hoffmann

論文に記載されていた

BP

との電子移動反応の際にドナーとして

DABCO

の代 わりに成りえる

TriethylAmine(TEA)

を用いた。測定装置には過渡吸収測定装置 を使用して、磁場効果が発現しているか確認を行った。今回は各ドナーが

BP

と、どのような反応が起こっているかを予想していく。

TriethylAmine(TEA)

【実験】

イオン液体

DTMA TFSA

を合成し、ヘキサンと水で洗浄したのちに、ディフュ ージョンポンプによる真空乾燥を行った。TEA は

TMPA、TMOA

には溶解しな かったため今回の実験では溶媒に

DTMA TFSA

を用いた。

BP 10mM,TEA,100mM

を加えて溶液調製し、過渡吸収測定を行った。励起光に

Nd:YAG

レーザーの第三高調波(355nm)を使用し、検出光源には

Xe

フラッシ

ュランプを使用した。また、電磁石により磁場印加を行った。

(5)

【結果と考察】

Figure1

TEA

BP

の過度吸収スペクトルを示した。

Figure1 TEA(100mM)

BP(10mM)

DTMA TFSA

溶液の過度吸収スペクトル

次にスペクトルで最も吸光度の高い

520nm

波長で

0 T

のときと

1.7 T

のときに は吸光度の変化が激しく磁場効果が発生しているものかと考えられたが、同じ 日に取り直すと下図のように吸光度が逆転してしまっていた。

Figure2 TEA(100mM)

BP(10mM)

DTMA TFSA

溶液の

520nm

のときのディ ケイ

そこで後日、標準サンプル、

DTMA

BP

のみ加えたもの、

DTMA

BP

TEA

を加えたものを三種類それぞれ

500nm,520nm,630nm

の波長で観測したも のをディケイデータとして測定した。すると測定した結果によって誤差が生じ ていると確認できた。

しかし、測定前と測定後の試料の

UV

を比較すると変化が大きいため安易に機 器的誤差だけが原因ではないとも考えられる。

【参考文献】

(1)土田暉

修士論文(2019)

(2)N.Hoffmann and H.Gorner, Phys.Chem 2014,383,451-455

(6)

令和元年度 若狭研究室 冬の研究会

(2020.1.11)

三重項増感反応による三重項ゲルミレンの発生に関する検討

M2

若松 郁佳

【序論】

14

族元素の一つであるゲルマニウムは、最も 一般的な同族元素である炭素と異なる化学的性 質を持つことが知られている。これらの低配位 化合物は非常に不安定で、例えば

2

価炭素化学 種のカルベンは非常に反応活性なことで知られ ている。カルベンには一重項と三重項の

2

つの 電子スピン状態が存在する。それぞれのスピン

状態で反応挙動は異なり、これまで盛んに研究が行われてきた。ゲルマニウム類縁体であ るゲルミレンも同様で、これまで、直接的な光照射による一重項ゲルミレンの発生および 反応性に関しては報告がされている

1)

。一方、光学的手法による三重項ゲルミレン発生の 例は未だない。そこで本研究では、図

1

に示すような三重項増感反応による、

3,4-

ジメチ

-1,1-

ジフェニルゲルマシクロペンテン

(1)

からの三重項ゲルミレン発生を目的として

実験を行った。

これまで、既報にあるような直接光励起について過渡吸収測定を行い、一重項ゲルミレ ンの発生

1)

を再現した。また、増感剤

(Sens)

としてチオキサントン

(TX)

を用いた三重 項増感について過渡吸収測定を行い、目的の三重項ゲルミレンと予想する新たな過渡種 の観測に成功している。今回、この過渡種の同定および直接光励起との比較のため、四塩

化炭素

(CCl4)

を用いた捕捉実験について

GC/MS

測定および標準物質の合成を試みたの

で報告する。

【実験】

GC/MS

測定:捕捉剤として

CCl4

を添加した試料「

1 (1.94 mM) + TX (0.565 mM) + CCl4

(28.1 mM)

のシクロヘキサン溶液」に、キセノンアークランプ

(USHIO, UXL-500D)

を光 源とした定常光照射装置を用いて連続光を照射した後、捕捉生成物の

GC/MS

測定を行っ た。励起光源と試料の間には分光器

(RITSU, MC-10N)

をはさみ、励起光を

374 nm

に設 定した。

1

1.三重項増感反応によるゲルミレンの発生

(7)

❷ 標準物質の合成:合成は既知の方法

2)

を参考に行い、

1H / 13C NMR

により同定した。

【結果と考察】

過渡吸収測定により観測された新たな 過渡種を同定するために、 過渡種を

CCl4

で 捕捉し、捕捉生成物を

GC/MS

測定により 同定した。捕捉生成物を確認した結果、ジ クロロジフェニルゲルマンとクロロジフ ェニルゲルマンという

2

つのゲルミレン

捕捉生成物が得られた。このことから、三重項増感によるゲルミレンの発生を確認でき た。一方、直接光励起による一重項ゲルミレン発生の場合、上記

2

つの生成物に加えて

(

トリクロロメチル

)

クロロジフェニルゲルマンも得られる

2)

。これらの結果を図2にま とめた。直接光励起と三重項増感それぞれの捕捉生成物を比較すると、直接光励起では

(

トリクロロメチル

)

クロロジフェニルゲルマン

(2a)

、ジクロロジフェニルゲルマン

(2b)

、 クロロジフェニルゲルマン

(2c)

3

つ、三重項増感では

2b

2c

2

つが得られた。三 重項増感では直接光励起と異なる捕捉生成物が得られると予想したが、共通する

2b

2c

が得られたため、発生したゲルミレンが一重項か三重項かは完全には区別できなかった。

しかし、一重項と三重項で反応性は異なるため、捕捉生成物の時間変化には違いがあると 考える。そこで、

GC

を用いた定量分析により捕捉生成物の時間変化を比較し、直接光励 起と三重項増感とで違いが見られるかを調べることにした。

定量分析を行うにあたり、測定成分の標準物質が必要となる。

2b

は市販品を購入し、

2a

および

2c

は合成することにした。しかし、

2a

の合成において、途中段階である

(

トリ クロロメチル

)

トリクロロゲルマンの合成に失敗し、条件を変えて再度合成を試みたが得 られなかった。また、

2c

の合成についても原料の入手が困難であるため、

GC

を用いた定 量分析および捕捉生成物の時間変化による比較は困難と判断した。

これまでの結果より、三重項増感では直接光励起で主となる捕捉生成物である

2a

が得 られなかったため、直接光励起とは異なる反応性をもつゲルミレン、すなわち三重項ゲル ミレンが発生していると予想する。

【参考文献】

1) William, J. L.; Cameron, R. H; and Ignacio, V. B. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 16105-16116.

2) Lawrence, A. H.; William, J. L. Can. J. Chem. 2011, 89, 241–255.

2.捕捉生成物の比較

(8)

2020.1.11,12

冬の研究会

磁場印加の方向を変化させたアントラセンのトリプレット フュージョンの磁場効果測定

M1

篠原 優太

序論

トリプレットフュージョン(TF)とは、二つの励起三重項状態の分子(T

1)から一つの励起一

重項状態の分子(S

1)が生成する光化学過程である。TF

の中間体は三重項対(TP)であり、

TP

に は一重項、三重項、五重項の

9

つのスピン状態が存在する。また、TF の逆過程はシングレ ットフィッション(SF)と呼ばれる。

TF

の磁場効果は、

TF

によって発生した蛍光の磁場によ る強度変化から観測される。具体的には低磁場で蛍光強度が増加し、高磁場で蛍光強度が減 少する。過去に

Merrifield

によって

TF

の磁場効果が観測されており[1][2]、

DPA

を使用した 測定において

TP

のレベルクロッシング機構に起因する

Dip(高磁場での蛍光強度の微増)が

観測された[2]。また、当研究室で行われた

DPH

SF

の磁場効果の研究において、高磁場 領域で

Dip

が観測されている[3]。

TF

の機構の詳細は不明であり、 本研究はその機構の解明を目指している。本報告では

DPA

のような

Dip

の観測をアントラセンにおいても試みるため、アントラセンの

TF

による蛍光 強度の磁場を、0~10 T までの磁場領域で磁場を印加する方向を

10

ヶ所変化させて測定を 行った。

実験

試料は溶融成長により作成したアントラセン結晶を用いた。励起光源には

LED(thorlabs,

M660L4,

最大出力

3120 mW 660 nm)を用い、磁場印加には超伝導磁石(SCM)を用いた。磁場

0~10 T

を印加した。アントラセンの蛍光のピークが

400~500 nm

の間に存在するため、

フィルター(thorlabs FESH500,FESH600)を使用して、観測波長を

400~500 nm

に設定した。

TF

はアントラセンに長波長の光を当てて

ST

励起を起こし、T

1

を生成して発生させた。

TF

によって発生した

S1

が基底状態に戻るときに放出する蛍光強度の磁場変化を、結晶に対 して磁場を印加する方向を

10

ヶ所変化させて観測した。

結果と考察

測定結果を

Fig1

Fig2

に示す。Fig1 と

Fig2

の縦軸の

R(B)は各磁場強度での蛍光強度を

ゼロ磁場の時の蛍光強度で割った相対蛍光強度である。ここで示している角度は測定開始

時を

0°として結晶を何°回したかを示している。結果より磁場を印加する方向が変わること

で、蛍光の増加率と減少率は変化しているが、Dip は観測されなかった。

(9)

Dip

が観測されなかった理由として考えられるのは

TP

の交換相互作用が大きく、今回測 定した磁場範囲ではレベルクロッシングが生じるほどゼーマン分裂が大きくならないとい うことが挙げられる。アントラセンは

TP

の可能な構造が、いずれも分子間の距離が近い構 造なので軌道の重なりが大きくなり、交換相互作用も大きくなると考えられる。

また、当研究室の

DPH

SF

の磁場効果の研究より、

Dip

の深さは双極子双極子相互作用 の大きさに比例していると考えられていて[3]、

TP

の双極子双極子相互作用の大きさは磁場 印加の方向によって変化することが分かっている。

SF

TF

の逆過程なので

TF

にもこれが 適用できる。しかし、今回のアントラセンの測定では磁場印加の方向を変えても

Dip

を観測 できなかったため、観測できなかった原因は双極子双極子相互作用の大きさの問題ではな いと考えられる。

これらのことからアントラセンの

TF

磁場効果において

Dip

を観測するためには、

10 T

よ りも大きい磁場をかけて、TP のゼーマン分裂を大きくしてレベルクロッシングを引き起こ すことが必要だと考えられる。

参考文献

[1]R. C. Johnson, R. E. Merrifield, P. Avakian, R. B. Flippen. Phys. Rev. Lett. 19, 285 (1967) [2]R. E. Merrifield, Pure Appl. Chem. 27,481-498 (1971)

[3]石川慶,修士論文(2019) 0.7

0.75 0.8 0.85 0.9 0.95 1 1.05

-0.5 4.5 9.5

R(B) [a.u.]

磁場

[T]

18° 36°

54° 72°

0.7 0.75 0.8 0.85 0.9 0.95 1 1.05

-0.5 4.5 9.5

R(B) [a.u.]

磁場

[T]

90° 108° 126°

144° 162°

Fig.1

アントラセン

TF

磁場効果の測定結果

(0~72°)

Fig.2

アントラセン

TF

磁場効果の測定結果

(90~162°)

(10)

2020.01.11 冬の研究会

ミセル中

DPH

の蛍光寿命測定

M1

知々田 優介

【序論】

DPH

は右図のような構造式で表され、当研究室でシングレッ トフィッションと呼ばれる光反応を起こすことで研究されて います。シングレットフィッション(SF)とは、一重項励起子 が隣接する基底状態の分子にエネルギーを受け渡し

二つの三重項励起子になる反応過程であり、ショックレー

クワイサー限界を超える可能性がある多重項励起子生成過程として注目されています。

また当研究室の先行研究では固体の

DPH

の蛍光は磁場依存性を持ち、磁場効果を発現す ることがわかっています。そこで本研究では、DPH をミセル中に溶かした過渡吸収測定と ミセル中

DPH

の蛍光寿命測定を行いました。

【実験】

DPH 0.12mmol

をトリトン

100(オクチルフェノールエトキシレート)0.015mmol

とイオン交

換水

50ml

に混ぜた。その後溶液の過渡吸収測定を行った。励起光には

Nd:YAG

レーザー の第三高調波(355 nm)を使用し、検出光源には

Xe

フラッシュランプを使用した。資料の劣 化を防ぐためにフロウでの実験を行った。DPH 0.3mmol、トリトン

100 0.15mmol

と水

400ml

を混ぜてフロウで過渡吸収測定を行った。またヘキサン中

DPH

にミセルを溶かしな

がら過渡吸収を行い、Decay グラフの変化を観察した。次にヘキサン中の

DPH

とミセル中 の

DPH

の蛍光寿命をそれぞれ測定し、結晶状態の

DPH

の蛍光寿命の比較を行った。

【結果と考察】

右図が過渡吸収セルにおいての 過渡吸収測定のスペクトルであ る。(横軸:波長,縦軸:吸光度)ど ちらの吸収もμs 程度の寿命が あるが、ヘキサン系での

DPH

の過渡吸収結果と比べると一重 項特性の吸収の寿命が大幅に伸 びている。またヘキサン中

DPH

にミセルを添加して実験 を行ったが、十分量のミセルが ヘキサン中に溶けずに添加後の 変化を見るのは困難であった。

DPH(1,6-Diphenyl-1,3,5hexatriene)

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18

400 450 500 550 600

ミセル内での過渡吸収スペクトル

0.5μ 10μ 20μ 50μ

(11)

2020.01.11 冬の研究会

次にそれぞれの系を⽤い DPH の蛍光減衰を測定し た。右上図が結晶 DPH の 蛍光減衰グラフで右下図が ミセル中に微結晶として存 在していると考えられる DPH の蛍光減衰グラフであ る。

それぞれ縦軸は光⼦数の指 数で横軸がナノ秒のタイム スケールである。この結果 からミセル中 DPH の⼀重 項の蛍光寿命は増加してい るように考えられる。

ミセル中での微結晶の⼀重 項寿命が増加しているのは

⾒せる溶液中でシングレッ トフィッションを起こして いる可能性が⾼く、過渡吸 収で使⽤したレーザーパワ ーではなく弱いレーザーパ ワーでなければ測定できな い蛍光減衰の可能性があ る。

【参考文献】

(1) Yoichi Murakami, Hitomi Kikuchi,and Akio Kawai.Kinetics of Photon Upconversion in Ioni Molecules.J.Phys.Chem.B2013,117,2487-2494

(2) C. Carnero Ruiz,* J. A. Molina-Bol ́ıvar, and J. Aguiar Thermodynamic and Structural Studies of Triton X-100 Micelles in Ethylene Glycol-Water Mixed Solvents Received April 9, 2001. In Final Form: July 23, 2001

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5

0 20 40 60 80 100

光子数(指数)

時間(ns)

ミセル中

DPH

の蛍光減衰

0 0.51 1.5 2 2.53 3.5 4 4.5 5

0 5 10 15 20

光子数(指数)

時間(ns)

結晶

DPH

の蛍光減衰

(12)

2020.010.9-10

冬の研究会

DPH

のミセル水溶液の調整法の検討

M1

細田敦也

【序論】

DPH

は当研究室で

SF

を起こす物質として研究さ れている。当研究室の石川ら¹は

DPH

結晶の遅延蛍 光の磁場効果の測定を行っており、ミセルを用いて 近接させることで溶液中での

TF

を観測することが できるのではないかと考えた。しかし、

DPH

TX- 100

ミセル中で微結晶状になっている疑いがあり、

溶液の調整法を変えること、また用いるミセルを変えることで、実験を行った。

【実験】

① 均一溶媒中での過渡吸収測定と蛍光寿命測定

DPH0.05 mM

シクロヘキサン溶液を調整し、過渡吸収測定及び、蛍光寿命測定を行っ

た。過渡吸収測定は励起光に

Nd-YAG

レーザー第三高調波

(355 nm)

を用い、検出光源には

Xe

フラッシュランプを用いた。蛍光寿命測定の励起波長は

377 nm

を用いた。

② エタノール注入法²を参考とした方法を用いた溶液調整法とその結果

溶液は次のように調整した。

TX-100,Brij35,SDS 10mM

水溶液

50 ml

を調整し、そこ

DPH 0.3 mM

ヘキサン溶液を

5 ml

加え攪拌し、減圧蒸留することでヘキサンを取り

除いた。損失した分の水は減圧蒸留後に加水し、溶液を

50 ml

とした。

このように調整した溶液に過渡吸収測定と蛍光量子収率測定を行った。

【結果と考察】

測定したシクロヘキサンの過渡吸収スペクトルを示す。

420 nm

付近にピークを持つ 吸収スペクトルは比較的寿命が長く、また、酸素によってクエンチされることから

DPH

の三重項励起状態の吸収、また、

650 nm

付近にピークを持つ比較的寿命の短い成

DPH(1,6-Diphenyl-1,3,5hexatriene)

(13)

分は

DPH

の一重項励起状態によ る吸収と帰属される。蛍光寿命 測定では一重項励起状態の寿命 と同程度の寿命の蛍光寿命が得 られ、この寿命は脱気なしと脱 気ありの場合で大きく異なるた め、一重項励起状態は酸素によ って消光されることがわかる。

エタノール注入法を参考にし た溶液調整法では従来法

(

ミセル 水溶液を調整し、そこに

DPH

を 加える方法

)

では調整できなかっ

DPH

Brij35

ミセル水溶液と

SDS

ミセル水溶液を調整することができた。これは

ヘキサンに一度溶かすことでミ セルに取り込まれやすくなった ことが原因であると考えられ

る。それぞれの溶液で過渡吸収測定を試みたが、

TX-100

ミセル水溶液では従来法で測 定した溶液の結果と差異は見られず、

Brij35

ミセル水溶液と

SDS

ミセル水溶液では

DPH

が非常に早く劣化した。この劣化の原因は水との反応³によるものではないかと考 えられる。詳細は当日議論する。

【参考文献】

1.

石川慶

,

修士論文

(2019)

2. T.Miura,K.Maeda,Y.Oka,T.Ikoma,J.Phys.Chem(2018) 3. D.Yogev,A.Todorov,J.Fendler,J.Phys.Chem(1991)

-0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15

600 650 700 750

吸光度

波長(nm)

20 25 30 40 60 (ns)

-500 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

100 150 200 250

Counts

Time(ns)

脱気 脱気fitting 脱気なし 脱気なしfitting -0.01

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07

400 450 500

吸光度

波長(nm)

0.5 1

2 5

10 (μs)

DPH

のシクロヘキサン溶液の過渡吸収スペクトル 左

400-500 nm、右600-750 nm

蛍光寿命測定結果 脱気、脱気なし

(14)

2020

1

11

日(土) 色素吸着したアントラセンによるトリプレットフュージョンの観測

田代愛実(B4) 背景・目的

トリプレットフュージョンとは隣接する二つの三重項励起子(T

1)から一つの一重項励起

子(S

1)を生成する過程のことで,このS1

から基底一重項状態(S

0)に下がる過程で生じる蛍光

のことを遅延蛍光という.トリプレットフュージョンは低エネルギーの励起状態分子から 高エネルギーの励起状態分子が生成され蛍光の発光効率が上がるため,有機

EL

への応用が 期待されている.1969 年に

Nickel

らによって色素吸着したアントラセンからの遅延蛍光が 観測されている.

1

本研究では色素増感遅延蛍光の観測を目的とする.前回までアントラセン の大きい結晶が得られず,再結晶でも大きい結晶が得られる

9,10-ジフェニルアントラセン (DPA)を代用して色素増感遅延蛍光の観測を試みていたが,今回は結晶成長させたアントラ

センを用いた.色素を結晶につけ,色素からアントラセンへのエネルギー伝達過程があるた め,結晶成長後再結晶させ,表面積が大きく薄いアントラセンの結晶を用いて観測を行った.

反応

Scheme (R:ローダミンb, A:アントラセン)

実験

使用した試料はアントラセン,ローダミン

b

である.

アントラセン ローダミン

b

アントラセンは再結晶,共蒸留の後

Bridgman

法により純度の高い結晶を得た.純度の検討 方法として蛍光量子収率と

S-T

励起による遅延蛍光の蛍光強度測定を行った.遅延蛍光は励 起光強度の二乗と蛍光強度が比例関係であることが知られている.

2

蛍光強度測定では励起光光源

660nm

の赤色光

LED

を用い,検出器側には集光レンズ二枚 と

shortpass_filter500nm,600nm

を置き

450~500nm

の光を観測した.

次に,結晶成長させた結晶をジクロロエタン,キシレンを用いて再結晶をし,薄い結晶を

得た.アントラセンの結晶の表面処理後, NaHSO

3

含有ローダミン

b

溶液をマイクロピペッ

(15)

ターで結晶の表面上に滴下した.この溶液の入った容器をアルミホイルで巻き光が入るの を防ぎ,約

2

日間放置したのち結晶を立てかける形で設置し

LED

を用いて蛍光測定を行っ た.励起光光源として

565nm

の緑色光の

LED

を用い,レーザー前にバンドパスフィルター

(FESH900,FB500-40)を設置し,LED

に交じっている青色光をカットした.検出側に集光レン ズを二枚置き光が弱いので分光器は通さず光ファイバーの前に

shortpass_filter500nm

を置い た.

結果・考察

Bridgman

法により結晶成長させたアントラセ

ンを大まかに三つに分け蛍光量子収率の測定を 行ったところ下部で最も値が大きかった.

アントラセンの下部の結晶の蛍光強度測定の 結果を示す.Fig.1 では励起光強度の二乗と蛍光強 度は比例関係であるため遅延蛍光を観測できた といえるだろう.従って,S-T 励起による遅延蛍光 を観測できるほどの純度が高い結晶が得られた といえる.

色素に浸した結晶の写真を

fig.2

で示す.結晶に色素を浸 す時間を

10

分が最適とされていたが,2 日間放置したとこ ろ色素が薄く張り付いている部分と濃く張り付いている部 分があった.この結晶に緑色

LED

を照射したところ遅延蛍 光は観測できなかった.この原因として,色素の層が厚すぎ てエネルギー伝達できなかったことや励起光源の光の濃度 が薄いことが考えられる.

今後の課題

今回は色素吸着に

2

日間要したが,それよりも時間を短くし吸着に要する最適時間を検討 していきたい.LED では光が広がりやすいため

LED-試料間に集光レンズを置くか,LED

よ り集光性の高い

He-Ne

レーザーを励起光源として蛍光測定を行いたい.1973 年にはアント ラセン以外にも色素吸着させた有機結晶で遅延蛍光の観測がされている.DPA でも薄い結晶 ができたら遅延蛍光の観測を行いたい.

参考文献

1. B.Nickel, H.Staerk, A.Weller, Chem.Phys.Lett.4,27(1969) 2.井早安正編,”励起三重項状態”,株式会社南江堂(1975)P177

y = -3.9705x - 5.6323 R² = 0.9945

-200 -180 -160 -140 -120 -100 -80 -60 -40 -20 0

0 10 20 30 40 50

蛍光強度(mV)

励起光強度の二乗(mW)2

Fig.1

蛍光強度と励起光強度の二乗の関係

Fig.2 色素吸着した結晶(左:10分 右:2日)

(16)

冬の研究会

2020.1.11

イオン液体中での低磁場効果の測定

B4

原田 楠子

【序論】

イオン液体とは常温で液体の塩である. 20 世紀初頭に関心 がもたれ始め, 1992 年に

Wilkes

等の成果

1)

によりそれまで のイオン液体の大きな欠点とされていた水や空気の不安定 さが解消され, 安定な常温融解塩として一気に脚光を浴び るようになった. イオン液体には, 不燃性, 高粘度, 高い 熱安定性, 難揮発性, 高デザイン性などの特異的な性質が ある

2).

ラジカル対に磁場を印加すると,スピン変換速度に変化 が見られ,ラジカル収量が変化する.この効果は磁場効果と 呼ばれる.

当研究室では, 高磁場によるイオン液体中の磁場効果、

また粘度変化による高磁場領域での磁場効果の測定がされ ており、イオン液体の種類に関わらず、同程度の粘度であ れば同程度の磁場効果が見られている。このように先行研究 では高磁場において磁場効果は大きく粘度に依存することが

わかっている。本研究はイオン液体中の負の磁場効果として知られている低磁場効果の測 定、粘度変化による低磁場領域での磁場効果の測定を目的としている。

【実験】

イオン液体

N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホ

ニル)アミド(TMPA TFSA)を合成し, ヘキサンと水で洗浄し, ディフュージョンポンプに よる真空乾燥を行った. N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメ タンスルホニル)アミド(TMPA TFSA)に

BP 10 mM, DABCO 100 mM

TMPA TFSA

溶液を 調製し過渡吸収測定を行った.

【結果・考察】

Figure. 2

BP 10 mM, DABCO 100 mM, TMPA

溶液に-50 G から

50 G

の低磁場範囲での磁場 効果を示した. また, 波長

670 nm

で測定した. 690 nm は

BP, DABCO

の光誘起電子移動反 応により生じるベンゾフェノンアニオンラジカル

BP・―

の吸収である. 縦軸に示す

MFE

MFE =𝐴𝑏𝑠(𝐵 𝑇)−𝐴𝑏𝑠(0 𝑇) 𝐴𝑏𝑠(0 𝑇)

Figure.1

使用したイオン

液体, 溶質

(17)

の式で求めた. Figure.

2

より

15 G~20 G

付近 に最も低く磁場効果が 見られ, 低磁場効果と 考えられる負の磁場効 果が観測された.

次にイオン液体の粘

度変化による低磁場効 果 を み た

.Figure.3

BP 10 mM DABCO 100 mM 0.3μs

で-50~50 G の 範囲で測定したときの結 果を粘度の違いで示した ものである.またこのグ ラフより粘度が高いほ ど低磁場効果が大きく 出ていることがわかり, 磁場効果の粘度依存性 を み る こ と が で き る

.

これは粘度が高くなる につれてラジカル対の 散逸を抑制し、 再結合を 促進しているためであ ると考えられる.

【参考文献】

1.J.S.Wilkes,M.J.Zawarottko,J.chem.Soc.,Chem.Commum.,1992,965.

2. イオン液体研究会監修(西川恵子, 大内幸雄, 伊藤敏幸, 大野弘幸, 渡邊正義 著),

“イオン液体の科学・新世代液体への挑戦・”, p1-3, 丸善出版(2012).

3. H.Tsuchida, T.Takeda, Y.Ishii, T.Yago, and M.Wakasa ,J. Phys. Chem. B 123, 2019, 8425-8432

4. http://scm2019.tomo.nsc.ru/images/SCM2019Book.pdf p37

Figure.2 BP(10 mM), DABCO(100 mM), TMPA

溶液

690 nm

に おける磁場効果

Figure.3 BP(10 mM), DABCO(100 mM), TMPA溶液の粘度変化

(18)

溶媒粘度によるアップコンバージョンの高磁場効果の変化

2020/01/06 B4

松岡 萌香

[背景・目的]

アップコンバージョンとは,照射した光を短波長の光へと変換できる技術である.近年,この技 術が注目されており,将来的に太陽光発電の高効率化や光触媒への応用が期待されている.

本実験では

, 9,10

-ジフェニルアントラセン(

DPA

)を励起一重項状態にするため,増感剤である白 金オクタエチルポルフィリン(

PtOEP

)を使用しており,この 2 つの試料を有機溶媒に溶かし実験 を行っている.今回はジクロロメタンに

DPA

PtOEP

を加えたものを用いて,アップコンバー ジョンが起きているか,磁場効果が起こるか,そして装置の磁場効果が起きているかについて測 定した.

[実験・結果・考察]

三重項融合がサンプルで起きているの かについて励起光の二乗と蛍光強度が 比例関係であるかによって確認した.

その結果が Fig1 のグラフとなる.この グラフから,三重項融合は起きている と言えるだろう.

前回サンプルの磁場効果を測定したと ころ,サンプルの劣化や装置の磁場効 果によりサンプルの磁場効果が精確に測定できなかった.このため,サンプルの劣化が磁場効果 に影響しているか実験を行った.積算回数を減らすことで,励起光をサンプルに当てる時間を変

y = 930037x - 0.0054 R² = 0.9925

-0.02 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18

0.E+00 2.E-08 4.E-08 6.E-08 8.E-08 1.E-07 1.E-07 1.E-07 2.E-07 2.E-07

Fluorescence Intensity

LED Power (mW2)

Fig1

(19)

えて測定を行った結果が以下の

3

つのグラフである.

このグラフからサンプルの劣化は磁場効果 測定での影響には少ないと考えられる.次

に,

LED565nm

での散乱光を用いて装置の磁

場効果の原因について調べた

.

その結果が以下のグラフ(Fig2)のようにな

った.

Fig2-1

では光ファイバーの先をセルホ

ルダーへ固定したもので,

Fig2-2

はさらに分

光器を固定した.しかし,装置に何かしらの 磁場効果が起こっていると考えられる.

また,LED 散乱光の異なる波長

607nm

で磁 場効果を調べたところ(Fig2-3),異なった結 果が出てきたため分光器に磁場効果の影響 があるのではないかと考えた.

[今後の予定]

引き続き,装置の磁場効果について調べていく.また,SCM での磁場効果測定を他の有機溶媒も用 いて調べていきたい.

0.92 0.93 0.94 0.95 0.96 0.97 0.98 0.99 1 1.01

0 0.5 1 1.5

R(B)

Magnetic Field (T)

積算回数10回

up down

0.9 0.92 0.94 0.96 0.98 1 1.02

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6

R(B)

Magnetic Field (T)

積算回数5回

up down

0.91 0.92 0.93 0.94 0.95 0.96 0.97 0.98 0.99 1 1.01

0 0.5 1 1.5

R(B)

Mangnetic Field (T)

積算回数3回

up down

0.8 0.85 0.9 0.95 1 1.05

0 0.5 1 1.5

R(B)

Magnetic Field (T)

Fig2-2

up down

0.995 1 1.005 1.01 1.015 1.02 1.025 1.03 1.035 1.04 1.045

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6

R(B)

Magnetic Field (T)

Fig2-1

up down

0.986 0.988 0.99 0.992 0.994 0.996 0.998 1 1.002 1.004

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8

Fig2-3

参照

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