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平成 27 年度 卒業論文

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(1)

平成 27 年度 卒業論文

縦磁界効果を用いた超伝導直流電力ケーブルの 繰り返し近似による電磁界解析

木内研究室

(

学籍番号

: 12232051)

田邊 裕也

九州工業大学 情報工学部 電子情報工学科

指導教員 : 木内 勝 准教授 平成

28

年

3

月

2

日

(2)

目次

目次 ... 1

第

1

章 序論 ... 1

1.1

はじめに ...1

1.2

銅酸化物超伝導体 ...2

RE

系超伝導体 ...3

1.2.1 Bi

系超伝導体 ...3

1.2.2

単結晶基板 ...3

1.2.3 PLD

法 ...4

1.2.4 1.3

磁束ピンニング ...4

1.4

人工ピン ...5

1.5

縦磁界効果...5

1.6 Force-free

トルク ...7

1.7

超伝導電力ケーブル ...8

1.8

縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブル ...9

1.9

本研究の目的 ... 13

第

2

章 理論計算 ... 14

2.1

近似計算に使用する試料の諸元 ... 14

SrTi0

3単結晶基板に人工ピンを導入した

Y

系超伝導体試料の諸元 ... 14

2.1.1 RE

系コート線材の試料諸元 ... 15

2.1.2 2.2

繰り返し近似による縦磁界ケーブルにおける輸送電流𝐼tの導出... 17

臨界電流密度𝐽cの角度依存性 ... 17

2.2.1

縦磁界ケーブルにおける輸送電流𝐼tの導出過程

... 20

2.2.2

(3)

第

3

章 結果及び考察 ... 25

3.1

縦磁界ケーブルの内側導体

3—12

層における繰り返し近似計算の結果 ... 27

3.2

縦磁界ケーブルの内側導体,外側導体それぞれ

3—12

層における繰り返し近似 計算の結果 ... 36

第

4

章 まとめ ... 41

謝辞 ... 43

第

5

章 参考文献 ... 44

(4)

図目次

図

1.1: 超伝導材料の臨界面 ...2

図

1.2: RE

系超伝導体の結晶構造 ...3

図

1.3: 超伝導体に流れる電流に対して磁界を平行に印加した縦磁界状態 ...5

図

1.4:

縦磁界下(●),横磁界下(○)におけるNb3

Snテープ状超伝導体に中性子を照

射したときの臨界電流𝐼cの磁界依存性 ...6

図

1.5: Nb-Ti

円柱状超伝導体の縦磁界,横磁界下における臨界電流密度𝐽cの磁界依 存性 ...6

図

1.6:

テープ状薄膜超伝導体(青色)の自己磁界分布(黒矢印は磁束の向き,黒線は 磁束線) ...6

図

1.7:円柱状超伝導体(青色)の自己磁界分布(黒矢印は磁束の向き,黒線は磁束線) ...6

図

1.8: Force-free

トルクとピンニングトルクの釣り合い ...7

図

1.9: 高温超伝導ケーブルの模式図 ...9

図

1.10: 縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブルの構造図 ... 10

図

1.11: 縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブルと従来の超伝導ケーブルとの比

較による輸送電流効率𝜂 ... 12

図

1.12: 内側導体 8

層における𝐼tの角度依存性 ... 12

図

2.1: 単結晶基板試料の縦磁界状態(𝐵 ∥ 𝐼)および横磁界状態(𝐵⊥𝐼)における𝐽

c

- 𝐵

特性 ... 15

図

2.2: RE

系コート線材の縦磁界状態(𝐵 ∥ 𝐼)および横磁界状態(𝐵⊥𝐼)における

𝐽

c

- 𝐵特性 ... 16

図

2.3: 薄膜に磁界を印加したときの模式図 ... 17

図

2.4: RE

系コート線材の磁界角度依存性... 19

図

2.5

: ケーブルにおける線材の巻き角度の模式図

... 20

図

2.6 : 1

層目(左側)と𝑖層目 (右側)における幅(青), 長さ(赤),電流(緑)の向きを 表した模式図 ... 21

(5)

図

2.7: Bi2223

超伝導体における形状効果による 𝐼cの変化 ... 23

図

3.1: 単結晶基板試料の 0—0.5 T

の𝐽c

‐ 𝐵特性を基にした近似式を 1 T

まで延長し

た縦磁界状態(𝐵 ∥ 𝐼)および横磁界状態(𝐵⊥𝐼)における𝐽c

‐ 𝐵特性(丸は𝐽

c

‐ 𝐵特

性の実測値,三角は実測値を基に𝐽cを外挿したもの,実線は近似式を表す) . 26

図

3.2: RE

系コート線材の

0—0.5 T

の𝐽c

‐ 𝐵特性を基にした 0.5—1 T

まで延長した

縦磁界状態(𝐵 ∥ 𝐼)および横磁界状態(𝐵⊥𝐼)における𝐽c

− 𝐵

特性(丸は𝐽c

‐ 𝐵特性

の実測値,三角は実測値を基に𝐽cを外挿したもの,実線は近似式を表す) ... 26 図3.3: 単結晶基板試料を用いた場合の内側導体

3

層におけるさまざまな𝐵extを印加 したときの𝐼tの𝜃max依存性 ... 27 図3.4: 単結晶基板試料を用いた場合の内側導体

6

層におけるさまざまな𝐵extを印加 したときの𝐼tの𝜃max依存性 ... 28 図3.5: 単結晶基板試料を用いた場合の内側導体

9

層におけるさまざまな𝐵extを印加 したときの𝐼tの𝜃max依存性 ... 28

図

3.6:

単結晶基板試料を用いた場合の内側導体

12

層におけるさまざまな𝐵extを印

加したときの𝐼tの𝜃max依存性 ... 29

図

3.7: 単結晶基板試料を用いた場合の縦磁界ケーブルにおける輸送電流効率 𝜂 .. 31

図

3.8: RE

系コート線材を用いた場合の内側導体

3

層にさまざまな𝐵extを印加した

ときの𝐼tの𝜃max依存性 ... 32

図

3.9: RE

系コート線材を用いた場合の内側導体

6

層におけるさまざまな𝐵extを印

加したときの𝐼tの𝜃max依存性 ... 32

図

3.10: RE

系コート線材を用いた場合の内側導体

9

層におけるさまざまな𝐵extを印

加したときの𝐼tの𝜃max依存性 ... 33

図

3.11: RE

系コート線材を用いた場合の内側導体

12

層におけるさまざまな𝐵extを

印加したときの𝐼tの𝜃max依存性 ... 33

図

3.12: RE

系コート線材を用いた場合の縦磁界ケーブルにおける輸送電流効率 𝜂

... 35

図

3.13:

単結晶基板試料を用いた場合の縦磁界ケーブルにおける𝜂と 𝜂 の比較 . 38

(6)

表目次

表

1.1:

超伝導体を用いた電力ケーブルの送電方式による長所と短所 ...8

表

2.1:

単結晶基板試料の試料諸元 ... 14

表

2.2: RE

系コート線材の試料諸元 ... 15

表

2.3:

単結晶基板試料の横磁界状態,縦磁界状態における𝐽c

‐ 𝐵特性の近似式の展

開係数 𝐾⊥,𝐾||

... 18

表

2.4: RE

系コート線材の横磁界状態,縦磁界状態における𝐽c

‐ 𝐵特性の近似式の展

開係数𝐾⊥,𝐾||

... 18

表

3.1:

縦磁界ケーブルの寸法 ... 25

表

3.2:

単結晶基板試料を用いた場合の縦磁界ケーブルにおける最大の𝐼tを得たと き𝐵ext及び𝜃max

... 30

表

3.3:

単結晶基板試料を用いた場合の𝐼tと𝐼0の比較 ... 30

表

3.4: RE

系コート線材を用いた場合の縦磁界ケーブルにおける最大の𝐼tを得たと き𝐵ext及び𝜃𝑚𝑎𝑥

... 34

表

3.5: RE

系コート線材を用いた場合の𝐼tと𝐼0の比較 ... 35

表

3.6:

単結晶基板試料を用いた場合の𝐼outと𝐼tの比較 ... 37

表

3.7:

単結晶基板試料を用いた場合の最大の𝐼outを得たときの𝐵outと𝜃max

... 37

表

3.8: RE

系コート線材を用いた場合の𝐼outと𝐼tの比較 ... 39

表

3.9: RE

系コート線材を用いた場合の最大の𝐼outを得たときの𝐵outと𝜃max

... 39

(7)

第 1 章 序論

1.1

はじめに

1908

年にオランダの

K. Onnes

はヘリウムの液化に成功した.

1911

年に液体ヘリ ウムを用いた極低温における水銀の抵抗を調査する過程で

4.2 K

で突然電気抵抗が ゼロになることを発見した.電気抵抗ゼロの性質を持つことから物質は超伝導体と 呼ばれ,様々な機器への応用が期待された.しかし,当初発見された超伝導体の多 くが,わずかな磁界で電気抵抗ゼロの性質を失ってしまい応用は難しかった.超伝 導現象を示さなくなる磁界,温度をそれぞれ臨界磁界

𝐵

c,臨界温度

𝑇

cと呼ぶ.また,

電気抵抗

0

で電流が流せる最大の電流密度を臨界電流密度

𝐽

𝑐と呼ぶ.図

1.1

のよう に,超伝導体はある温度,磁界,電流密度の範囲内でのみその特性を示す.

1933

年に

W. Meissner

と

R. Ochsenfeld

によって,超伝導体は完全反磁性

(

マイスナ ー・オクセンフェルド効果

)

を持つことが証明された.さらに

1957

年には

J. Bardeen

と

L.N. Cooper

および

J.R .Shrieffer

らにより,

BCS

理論が提唱され超伝導発現機構 における基本的な理解が与えられた.

BCS

理論によると

𝑇

cは

30K

を超えないと予想 されていたが,

1986

年に

J.G. Bednorz,K.A. Müller

らによって銅酸化物系超伝導体

La

2

BaCuO

4が発見され

[1], 30 K

を超える温度で超伝導が発現する可能性が示された.

この発表以降,世界各国で高温超伝導の探索が続けられ,翌年には液体窒素の沸点 である77.3 Kを超える𝑇c

= 93 KのYBa

2

Cu

3

O

yが

C.W. Chu

らにより発見された

[2]

.さ らに,

1988

年には,

H. Maeda

らによって

𝑇

c

= 100 K

を超える

Bi

系の超伝導体が発 見されている

[3]

.このような高い

𝑇

cを持つ超伝導体は高温超伝導体と呼ばれる.こ れらの超伝導体は液体ヘリウムに比べて安価な液体窒素や冷凍機などで超伝導状 態となるため,様々な機器への応用の可能性や冷却コストの低減などの点から大き な注目を浴びた.しかし,これらの高温超伝導体は実用化に向けての課題が残って いるために今日も研究が続けられている.

超伝導体は完全反磁性しかもたない第一種超伝導体と完全反磁性と部分的に磁 束の侵入を許す第二種超伝導体に分類される.第一種超伝導体は材料によって違い はあるが,約

100

分の

1T

程度の外部磁界を印加すると超伝導状態が壊れる.一方,

第二種超伝導体は内部に一定の磁束の侵入を許すため,臨界磁界が第一種超伝導体 に比べ第二種超伝導体の場合の方が大きい.そのため,工学的には第二種超伝導体

(8)

図1.1: 超伝導材料の臨界面

1.2

銅酸化物超伝導体

超伝導体の結晶内にCuO2面を持つものを銅酸化物超伝導体と呼ぶ.近年では銅酸 化物超伝導体の中でも

RE-Ba-Cu-O

超伝導体(

REBCO,RE:

希土類),

Bi-Sr-Ca-Cu

超伝 導体が注目を集めている.これらの超伝導体は金属超伝導体のように,どの方向か らでも超伝導電流が流せるというわけではない.図1.2のように,銅酸化物超伝導 体の結晶構造は CuO2面とブロック層(

RE

)が交互に積層した構造となっている.ブ ロック層がCuO2面に電子を供給するため,

CuO

2面にて超伝導電子が流れ,電流が流 れる.したがって,銅酸化物超伝導体は𝑐軸と垂直な方向と平行な方向で超伝導特 性が異なるという構造上からなる強い異方性を持つ[

4

].このような結晶構造のた め,銅酸化物超伝導体はCuO2面を揃えるような結晶配向にしなければ優れた特性を 得られない.また,これらの銅酸化物超伝導体の特徴として工学的に利用されてい るNbTiやNb3

Sn等の金属系超伝導体より高い𝑇

cを持つことが挙げられる.

Nb - Ti

や

Nb

3

Sn等の金属系超伝導体は𝑇

cが低く,冷媒に高価な液体ヘリウムが必要となって

いる.そのため,液体ヘリウムに比べ遥かに安価な液体窒素を冷媒として使用する ことができる銅酸化物超伝導体は,工業的な応用に対する期待が高い.

高温銅酸化物超伝導体の応用のためには長い線状に加工する必要がある.機器に より求められる仕様は異なるものの線材として数百メートルオーダー,かつ磁場中 における高い𝐽cが求められている.

(9)

図1.2: RE系超伝導体の結晶構造[4]

RE

系超伝導体

1.2.1

RE

系超伝導体は

Bi

系超伝導体とは違い機械的な加工では結晶配向しないため,

線材化にあたって

PLD

法(

1.2.4

項で説明)で用いられるような結晶配向の制御が必 要となり,高品質な超伝導薄膜の作製が必須となる.

RE

系超伝導体は,高温高磁 界下での臨界電流密度特性が優れているため,広い範囲での応用が可能なことから 今後の進展が期待されている.

Bi

系超伝導体

1.2.2

Bi

系超伝導体は,

𝑐

軸方向に比べ

𝑎𝑏

面での結晶成長が早く

𝑎𝑏

面に広がった結晶が 容易に得られることが知られている.また,

CuO

2面に沿って劈開しやすく,圧延な どの機械的な加工で

𝑐

軸配向成長する条件が見出されたため容易に配向の整った長 尺線材の作製が可能となった.しかし,ピンニング力が弱いという欠点を持つため 高磁界の下では,

RE

系超伝導体と比較すると

𝐽

cの減衰量が大きいという欠点も持つ.

単結晶基板

1.2.3

銅酸化物超伝導体は,1.2 節で述べたように金属超伝導体と比べると複雑な結晶構造 と強い異方性をもつ.単結晶基板を用いることによって,銅酸化物超伝導体の結晶軸を 揃えやすくする.今回の研究の計算に用いる

Y

系超伝導体は結晶軸に起因する異方性

(10)

PLD

法

1.2.4

PLD(Pulse Laser Deposition)法は,真空チャンバー内に作成するターゲット(薄膜の原

料)を回転台に配置し,回転するターゲットに対してレーザー光を断続的に照射するこ とによって,ターゲットの原子(分子)をプラズマ化させて薄膜基板上に蒸着させ堆積さ せる方法である.

PLD

法を用いることによって,一瞬でプラズマ化させ基盤上に蒸着させられるので,

原料と同じ組成比の薄膜が作成でき,超伝導層を作成する場合は配向基板を用いること でその上に二軸配向した超伝導体が成膜できる.

1.3

磁束ピンニング

1.1

節でも述べたが,超伝導体は磁場の振る舞いによって二種類に分類される.第一 種超伝導体は,臨界磁場𝐻cを超えると超伝導状態が壊れ,常伝導状態に転移する.第二 種超伝導体は,

𝐻

cに達する以前に外部磁場を超伝導体内部に侵入させ,磁場と超伝導が 共存した状態をつくる.完全反磁性が壊れ,超伝導体内部に磁束の侵入を許すときの磁 場の大きさを下部臨界磁場𝐻c1といい,超伝導体内部の磁場と超伝導の共存状態が壊れ たときの磁場の大きさを上部臨界磁場𝐻c2という.

第二種超伝導体における臨界電流密度𝐽cを決定する機構として磁束ピンニングがあ る.超伝導体内に流れる電流密度を𝐽,超伝導体に侵入する磁束密度を𝐵とすると,磁束 線には単位体積あたりに,

𝐹 ⃗⃗⃗⃗

L

= 𝐽 × 𝐵⃗ のLorentz力が働くことになる.この力によって動

く磁束線の速度を𝑣 とすると,電流方向に𝐸⃗ = 𝐵⃗ × 𝑣 の電界が生じる.よって,超伝導体 の電気抵抗がゼロでなくなる.しかし,

𝐽,𝐵がともに𝐽

c

,𝐵

c以下のとき電気抵抗はゼロ なので,この磁束線の動きを止める力が働いていることがわかる.この磁束線を留めて いる単位体積あたりの力をピン力密度𝐹Pと呼び,Lorentz 力がこの力を超えるまでは磁 束線が動かないので,誘導起電力による電気抵抗の発生が起こらない.この作用のこと を磁束ピンニングと呼び,常伝導析出物,結晶粒界面,格子欠陥がピンニングセンター として働くことによって引き起こされる.したがって,超伝導内に流れている電流密度 が𝐽 = 𝐽cの場合

Lorentz

力とピン力密度は釣り合い,以下の関係が成り立つ.

𝐽

c

=

𝐹p

𝐵

(1.1)

この式から,𝐽cを増やすには𝐹pを強くする必要があることがわかる.また,超伝導体内 に常伝導析出物などを人工的に導入することによって,

𝐹

Pを強くすることができる.そ のため,𝑇c,𝐵cは超伝導体の材料の特性によって決定されるが,𝐽cは後天的に決定され るため,さらなる𝐽cの向上のために磁束ピンニングの研究が盛んに行われている.

(11)

1.4

人工ピン

超伝導体内に侵入した磁束線が

Lorentz

力によって動き出すことを止めるために,人 工的に導入したピンのことを人工ピンという.中性子照射や重イオン照射により格子欠 陥を導入するピン,非超伝導物質を超伝導体の原料に混ぜて成膜することにより常伝導 析出物を導入するピン,またピンの形状として,粒状,柱状があり,導入量によって𝐹Pの 大きさ,𝐽cの異方性が変化する.

1.5

縦磁界効果

縦磁界とは,図

1.3

のように電流に対して磁界を平行に印加した状態のことを言う.

一般的に,電流を流すと電流に対して垂直に磁界が発生するが,外部から電流に対して 平行に磁界を印加する場合は,以下のような現象が観測される[5].

① 電流によって,縦方向の常磁性磁化が生じる.これを,常磁性効果という.

② 図

1.4,図 1.5

のように横磁界状態に比べ臨界電流密度が大幅に上昇する.

縦磁界の場合は,

𝐽 × 𝐵⃗ = 0 (1.2)

のように磁束線に対して

Lorentz

力が働かないためである.

③ 縦磁界の増加とともに交流損失が減少する.

④ 磁束の運動と電磁現象とを結びつける(𝐸⃗ = 𝐵⃗ × 𝑣 )式が,磁束線の運動が通常とは異 なるため成り立たない.

図

1.3: 超伝導体に流れる電流に対して磁界を平行に印加した縦磁界状態

これらを主に縦磁界効果と呼ぶ.①にあるように,縦磁界効果により𝐽cは増加する.一

(12)

導体,テープ状薄膜超伝導体における自己磁界の分布を表しており,黒矢印は磁束の向 き,黒線は磁束線,青は超伝導体を表している.図

1.6

よりテープ状の超伝導体は,超 伝導体内部に試料面と垂直な成分の磁界が侵入するのに対して,図

1.7

のように円柱状 の超伝導体は,超伝導体内部に試料面と垂直な成分の磁界が侵入しないことがわかる.

そのため,電流が強まると自己磁界も強まり,電流に平行な磁界と干渉を起こし磁界と 電流が平行に流れる関係が崩れてしまうので,Lorentz力が働かない状態とはならず縦 磁界効果による𝐽cの増加は観測されなくなる.

図

1.6:

テープ状薄膜超伝導体(青色)の自己

磁界分布(黒矢印は磁束の向き,黒線は磁束 線)

図

1.7:円柱状超伝導体(青色)の自己磁界

分布(黒矢印は磁束の向き,黒線は磁束 線)

図

1.5: Nb-Ti

円柱状超伝導体の縦磁

界,横磁界下における臨界電 流密度𝐽cの磁界依存性[7]

図

1.4:

縦磁界下(●),横磁界下(○)における

Nb

3

Snテープ状超伝導体に中性子を

照射したときの臨界電流𝐼cの磁界依 存性[6]

(13)

1.6 Force-free

トルク

1.4

節の②で述べたように磁束線に対して,Lorentz力が働かないため,縦磁界状態で は横磁界状態に比べ臨界電流密度が大幅に上昇する.その状態を

Force-free

状態と呼ぶ.

しかし,横磁界下と同様に𝐽cは存在する.さらに,超伝導体内の磁束線の動きはピンニ ングセンターと相互作用すると考えられる.この振る舞いを記述するモデルとして,

Force-free

トルクが提案されている[9].

Force-free

状態においては,図

1.8

のような磁束線に対して回転せん断歪(Force-Free

歪)が生じている.図

1.8

の矢印の向きに,Force-Free歪に対する復元力が存在すると考 えられ,その復元力を

Force-free

トルクと呼ぶ.超伝導体表面において,Force-Free歪 より磁束線は電流の向きに対して平行ではない.超伝導体内部に侵入するにつれて

Force-free

トルクが大きくなり

Force-free

トルクは緩和され,磁束は電流に対して平行に

なる.Force-free トルクと歪んだ状態を保とうとするピンニングトルクのつり合いによ って臨界状態が決定される.したがって,横磁界状態より縦磁界状態の臨界電流密度が より大きくなる. Force-free トルクをピンニングトルクで支えきれなくなると,磁束 線は不可逆な運動状態となる.超伝導コート線材のようなテープ状超伝導体の場合,縦 磁界状態における磁束線の運動は,Force-free トルクによる𝑎𝑏平面内での回転運動と,

𝑐軸方向への併進運動が合わさったものになると想定されている[5].

図

1.8: Force-free

トルクとピンニングトルクの釣り合い[5]

超伝導体 表面側

中心側 磁束線

Force-Free

トルク ピンニングトルク

(14)

1.7

超伝導電力ケーブル

超伝導体を用いた電力ケーブルには送電方式として,直流送電と交流送電がある.直 流送電と交流送電における長所と短所を表

1.1

にまとめると以下のようになる.

直流電流 交流電流

長所

電力損失なしで送電できる

太陽光発電の電気をそのまま流 せる

既存の送電網と入れ替えが容易

火力などの主要な発電方法の電 気をそのまま流せる

短所

火力などの主要な発電方法の電 気を流す際は整流する必要があ る

交流損失(ヒステリシス損失な ど)が発生する

直流の場合と比べ冷却負荷が大 きくなる

上記のように,直流送電の場合は電力損失が発生しないため,送電損失分の二酸化炭 素排出を抑えることができる.また,既存の銅ケーブルに比べ電流密度が

1000

倍以上 大きいため,ケーブルの小型化および大電流送電が期待できる.

しかし,直流交流関係なしに送電ケーブルを超伝導化するにあたって,超伝導ケーブ ルを液体窒素または液体ヘリウムによって極低温状態におくことが必須となってくる.

下の図

1.9

は,超伝導ケーブルの模式図である.管に超伝導線を入れて液体窒素で満た すことによって超伝導線を冷却し,真空特性を持った断熱層を用いて外部の熱による液 体窒素の急激な温度上昇を防いでいる[9].これらによって,超伝導ケーブルの極低温 状態を実現している.

表1.1: 超伝導体を用いた電力ケーブルの送電方式による長所と短所

(15)

図

1.9: 高温超伝導ケーブルの模式図[9

]

1.8

縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブル

1.4

節で述べた通り,縦磁界効果を用いることによって線材の特性を改善することなく

𝐽

cを増加させることができる.また,1.5 節に記したが直流では送電ロスなしで送電で きる.したがって,縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブルの開発が期待される[10].

縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブルの構造として図

1.10

に示す.縦磁界を超伝 導ケーブルの内側導体に印加するには,超伝導線材を一方向にツイストする必要がある.

ツイストされた線材より内側の層においてはツイストされた線材の自己磁界が,ケーブ ルの軸に対して平行の方向に近い角度で印加される.また,内側導体に印加される縦磁 界を増やすために,外側導体に帰りの電流を流すことによってさらに縦磁界を大きくし ている.それらによって,ツイストされた線材より内側においての縦磁界成分が大きく なり縦磁界効果による𝐽cの増加が見込まれる.

(16)

図

1.10: 縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブルの構造図[10

]

内側導体に印加された縦磁界を𝐵extとする.内側導体には

0.1—0.2 mm

程度の

RE

系 コート線材が線材の間隔がないように数層から

10

層程度巻き付けられる.しかし,コ ート線材全体の厚さに比べ,フォーマーの半径の方が十分大きいので,平板近似が可能 となる.線材が巻き付けられるフォーマーの半径を𝑎,コート線材の厚さを𝑡,層数を𝑛と すると,コート線材全体の厚さは𝑑 = 𝑛𝑡(𝑑 ≪ 𝑎)で表すことができる.また,

1

枚の線材 の超伝導体層の厚みを𝑠とすると,工学的臨界電流密度𝐽eは

𝐽

e

= ( 𝑠

𝑡 ) 𝐽

c

(1.3)

で与えられ,超伝導層を一様に流れているものとする.

超伝導層を𝑦‐ 𝑧平面に平行な平板とし,𝑥 = 𝑎において最も内側の表面,𝑥 = 𝑎 + 𝑑が 最も外側の表面とした.このとき,

𝑧軸をケーブルの軸方向とすると, 𝑥 = 𝑎において磁

界成分は𝑧軸成分しかなく,𝑥 = 𝑎 + 𝑑における磁界の𝑧軸成分は𝐵extとなる.𝑥軸におけ る磁界の大きさを𝐵(𝑥),磁界の𝑧軸からの角度を𝜃(𝑥)とする.よって,

𝜃(𝑎) = 0となる.

Force-free

状態では,

Lorentz

力がゼロとなるため,磁束密度𝐵は𝑥の値によらず一定でな

ければならない.したがって,超伝導層における磁束分布は

𝐵 = (𝐵

x

, 𝐵

𝑦

, 𝐵

𝑧

) = (0, 𝐵 sin 𝜃(𝑥) , 𝐵 cos 𝜃(𝑥) (1.4)

と表すことができ,

𝜃(x) = 𝜇

0

𝐽

e

𝐵 (𝑥 − 𝑅) (1.5)

を満たすとき,

𝐽 = (0, 𝐽

e

sin 𝜃(𝑥) , 𝐽

e

cos 𝜃(𝑥)) (1.6)

の電流分布となる.そのとき,最も外側表面における磁界の角度𝜃maxは,

(17)

𝜃

max

= 𝜇

0

𝐽

c

𝑑

𝐵 (1.7)

と表すことができる.ここで,𝑥 = 𝑅 + 𝑑 における電流の自己磁界 𝐵

self

は,

tan 𝜃

max

= 𝐵

self

𝐵

ext

(1.8)

を満たさなければならない.(1.8)式の条件は,(1.6)式の電流分布を用いて得られる𝐵self と矛盾がないように求める必要がある.

ここで,具体的な縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブルの特性を示すために,超伝 導層の厚み𝑠 を1.0 μm ,線材の厚み 𝑡 を100 μm のコート線材を想定した.

その縦磁界下および横磁界下での𝐽c

をそれぞれ,

𝐽

c∥

= (5.0 + 6.0𝐵) × 10

10

A m ⁄

2

(1.9) 𝐽

c⊥

= (5.0 − 4.0𝐵) × 10

10

A m ⁄

2

(1.10)

であると仮定した.そして𝜃max

=60°,フォーマーの半径を𝑎 = 30 mm とした場合に,

層数𝑛 を

4—10

まで変えたときのケーブル効率を求めた結果を図

1.11

に示す.ケーブ ルの輸送効率𝜂は,縦磁界効果を用いた高温超伝導直流電力ケーブルの電流容量 𝐼t

と従

来型のケーブルの電流容量 𝐼0

を用い次式で定義している[10].

𝜂 = 𝐼

t

𝐼

0

(1.11)

図

1.11

により縦磁界効果を用いたケーブルの特性の方が優れていることが分かる.こ れは超伝導層数が増え,

𝐼

t

が大きくなるにつれて縦磁界が大きくなることによって 𝐽

c

が

増えるからである.

(18)

図

1.11: 縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブルと従来の超伝導ケーブルとの比較に

よる輸送電流効率𝜂[10]

また, 𝐼t

は 𝜃

max

に大きく依存する.例として,内側導体 8

層において 𝜃max

と𝐵

extを 変化させたときの 𝐼t

の変化を図 1.12

に示す[11].

図

1.12: 内側導体 8

層における𝐼tの角度依存性[11]

(19)

1.9

本研究の目的

RE

系超伝導体は,高温,高磁界中の臨界電流密度

𝐽

cが高いことから応用研究が盛ん に行われ実際にコート線材化され市販されている.

縦磁界効果における𝐽cの大幅な増加は,Nb-Ti 等の金属超伝導体では報告されるもの の,RE系超伝導体では図

1.4,図 1.5

のような𝐽cの大幅な増加は確認されなかった.し かし,超伝導体の成膜技術の進歩により,RE 系超伝導体でも縦磁界効果による𝐽cの大 幅な増加が報告されてきている.

今回は縦磁界効果による𝐽cの大幅な増加が確認されたSrTiO3単結晶基板に人工ピンを 導入した

Y

系超伝導体試料と市販の

RE

系コート線材の縦磁界状態,横磁界状態におけ

る𝐽c

‐ 𝐵特性の近似式を用いて縦磁界ケーブルにおける電磁界を計算する.それらによっ

て,

3―12

層の内側導体だけの縦磁界ケーブルに外部磁界を印加した場合の輸送電流𝐼t

を求める.そのうえ,電力ケーブルの軸に対して線材を平行に巻き付けたと仮定した縦 磁界効果による𝐽cの増加がない超伝導電力ケーブル場合の輸送電流𝐼0も求める.また,

外部磁界を印加せず外側導体により縦磁界を印加する場合の,内側導体の輸送電流𝐼out を求める.そこで,本研究ではこれらを比較することによって縦磁界ケーブルの有効性 について調査し,考察する.

(20)

第 2 章 理論計算

2.1

近似計算に使用する試料の諸元

SrTiO

3単結晶基板に人工ピンを導入した

Y

系超伝導体試料の諸元

2.1.1

単結晶基板は脆いため,今回の研究で計算されるような超伝導電力ケーブルに用いる ことはできない.しかし,今回の計算に用いる九州工業大学 工学部 マテリアル工学科 材料開発部 松本 要 研究室から頂いたSrTiO3単結晶基板に人工ピンを導入した

Y

系超 伝導体試料は

RE

系超伝導体にないほどの縦磁界印加中における𝐽cの大幅な増加が確認 された[12].縦磁界効果の影響が大きい試料を用いた場合の縦磁界ケーブルの性能評価 と試料によって縦磁界効果による𝐽cの増加に差があるのかを考察するためには,単結晶 基板試料の𝐽c

‐ 𝐵特性が必要なため,単結晶基板試料の結果を用いた.

単結晶基板試料の試料諸元を表

2.1

に示す.

𝐽

c

の磁界依存性を評価するために, 𝑉 - 𝐼

特性を測定し,そこから得られた 𝐽c

を評価した.また,電界基準 𝐸

c

= 1.0 × 10

−4

V m ⁄ を

用いた.電流に対して平行に磁界を印加した縦磁界の場合と,電流に対して垂直に磁界 を印加した横磁界の場合について磁界の大きさを

0—0.5 T

の範囲で,

𝐽

c

- 𝐵 特性をそれ

ぞれ測定した.実際に測定した図を図

2.1

に示す.

表

2.1

の試料諸元にある

4area%Y

2

O

3というのは,1.2.4項で述べた

PLD

法のターゲッ トに占めるY2

O

3の割合である.

表2.1

:

単結晶基板試料の試料諸元

試料 超伝導層の厚さ [nm]

𝐽

c

[A/m

2

]

YBCO+4area%Y

2

O

3

170 4.9 × 10

10

(21)

図

2.1: 単結晶基板試料の縦磁界状態(𝐵 ∥ 𝐼)および横磁界状態(𝐵⊥𝐼)における𝐽

c

- 𝐵特性

RE

系コート線材の試料諸元

2.1.2

現在,今回の計算に用いる

SuperPower

社の市販

RE

コート線材も含めて,市販され ている

RE

類系コート線材は,縦磁界効果によって𝐽c

が縦磁界の増加とともに増加する

特性とはなっていない.RE 系コート線材の試料諸元を表

2.2

に示す.𝐽c

の磁界依存性

を評価するために,直流四端子法を用い 𝑉 - 𝐼 特性を測定し,そこから得られた 𝐽c

を評

価した.また,電界基準 𝐸c

= 1.0 × 10

−4

V m ⁄ を用いた.電流に対して平行に磁界を印

加した縦磁界の場合と,電流に対して垂直に磁界を印加した横磁界の場合について磁界 の大きさを

0—0.5 T

の範囲で,磁界に対する𝐽c

- 𝐵 特性をそれぞれ測定した.実際に測

定した結果を図

2.2

に示す.

表2.2: RE系コート線材の試料諸元

試料 超伝導層の厚さ [μm]

𝐽

c

[A/m

2

]

SuperPower-REBCO 1.00 2.7 × 10

10

(22)

-

図

2.2: RE

系コート線材の縦磁界状態(𝐵 ∥ 𝐼)および横磁界状態(𝐵⊥𝐼)における𝐽c

- 𝐵特

性

図

2.2

より,縦磁界下では𝐽cは磁界の増加とともに徐々に減少しているが,横磁界下

での 𝐽c

と比較すると,減少の幅が小さいことが分かる.しかし,図 1.6

のテープ状薄膜

の超伝導体の場合と比較すると,図

2.2

のような超伝導線材では低磁界において 𝐽c

が増

加する特性ではない.その理由として,線材内に存在する結晶界面の弱結合によるため であると考えられている.通常のコート線材では基板から0.5 μm ほどのところから𝑎 軸 粒子や𝑐 軸傾角粒子が成長し始めるが,こうした粒子と正常な超伝導母相の間は結晶粒 界の弱結合部分と呼ばれており,そこでは電流は局所的に磁束と平行ではなくなる.し たがって,式(1.2)から外れてしまうことになる.それによって,巨視的に縦磁界効果が 現れなくなる.そのため,𝐽c

の増加が限られ図 1.10

のように超伝導線材を強くツイス トしても,角度が大きくなることで巻きつける超伝導線材の数が減少し結果として輸送 電流の割合が減少して得にならなくなってしまう.

(23)

2.2

繰り返し近似計算による縦磁界ケーブルにおける輸送電流

𝑰

𝐭の 導出

臨界電流密度

𝐽

cの角度依存性

2.2.1

2.1.2

項でも述べたように,市販の

RE

系コート線材は,縦磁界効果によって𝐽c

が縦磁

界の増加とともに増加する特性とはなっていない.しかし,図

2.2

で示されるように縦 磁界下の 𝐽c

は横磁界下の 𝐽

c

よりも高いため,縦磁界効果を用いない通常のケーブルよ

りも高性能なケーブルをデザインすることができる.例えば,超伝導線材のツイストす る角度を式(1.7)よりも緩めれば 𝐽c

の増加は少し抑えられるが,巻きつける超伝導線材の

層の数が増えると輸送電流への効率は向上する.そのときの電流容量が最大となる条件 を割り出せばよい.このとき 𝐽c

が最大となるときの角度を必要がある.そのためには

線材の角度依存性が必要となる.線材の角度依存性とは,超伝導線材の面内で電流に対 して磁界を平行に印加した縦磁界(𝜑 = 0°)から,電流に対して磁界を垂直に印加した横 磁界(𝜑 = 90°)まで変化させたときの 𝐽c

の角度依存性のことである.図 2.3

に薄膜に磁界 を印加したときの模式図を示す.薄膜に印加される磁界は外部磁界𝐵extと自己磁界𝐵self の重ね合わせである.

図

2.3: 薄膜に磁界を印加したときの模式図

図

2.2

の縦磁界下の 𝐽c

を

𝐽

||

(𝐵) = 𝐽

c

(𝐵, 𝜑 = 0) (2.1)

とし,横磁界下の 𝐽c

を

(24)

𝐽

||

(𝐵) = ∑ 𝐾

||

𝐵

𝑗

5 𝑗=0

(2.3)

𝐽

⊥

(𝐵) = ∑ 𝐾

⊥

𝐵

𝑗

5 𝑗=0

(2.4)

と表す.

𝐾

||

と𝐾

⊥

は近似式における展開係数を表す.単結晶基板試料のときの展開係数を表 2.3,

RE

系コート線材のときの展開係数を表

2.4

に示す.

表

2.3:

単結晶基板試料の横磁界状態,縦磁界状態における𝐽c

‐ 𝐵特性の近似式の展開係

数 𝐾⊥,𝐾||

展開係数

𝑗

0 1 2 3 4 5

𝐾

||

[× 10

10

A/𝑇

𝑗

] 4.75 7.04 5.99× 10

1

-5.02× 10

2

1.19× 10

3

-9.32× 10

2

𝐾

⊥

[× 10

10

A/𝑇

𝑗

] 4.86 -2.35× 10

1

1.12× 10

2

-3.26× 10

2

4.94× 10

2

-2.96× 10

2

図

2.2

の

RE

系コート線材のときの𝐾||

と𝐾

⊥を表

2.4

に示す.

表

2.4: RE

系コート線材の横磁界状態,縦磁界状態における𝐽c

‐ 𝐵特性の近似式の展開係

数 𝐾⊥

,𝐾

||

展開係数

𝑗

0 1 2 3 4 5

𝐾

||

[× 10

10

A/𝑇

𝑗

] 2.72 7.57 -3.41 5.44 1.18 2.29

𝐾

⊥

[× 10

10

A/𝑇

𝑗

] 2.69 -1.32 3.87 -7.35 7.15 -3.96

図

2.4

に

RE

系コート線材の線材の 𝐽c

の角度依存性を示す.

(25)

図

2.4: RE

系コート線材の磁界角度依存性

𝐽

c

の角度依存性を,

𝐽

c

(𝜑) = 1

2 (𝐽

||

+ 𝐽

⊥

) + 1

2 (𝐽

||

− 𝐽

⊥

) cos 2𝜑 (2.5)

のように近似することができる.

縦磁界ケーブルの形状は,内側導体の最内層の中心からの距離を𝑅0

,内側から 𝑖 番目

の超伝導層の中心からの距離を 𝑅𝑖

,超伝導層の厚さを𝑑,巻き角度を 𝜃

𝑖

とし,それぞ

れ ,

𝑅

𝑖

= 𝑅

0

+ 𝑖𝑑 (2.6)

𝜃

𝑖

= 𝜃

max

× 𝑖 − 1

𝑛 − 1 (2.7)

とする.また角度 𝜃𝑖

の様子を図 2.6

に示す.内側導体の最も外側の層に流す電流の角度

を𝜃max

とするとき,外側導体の最も外側の層に流す電流の角度は−𝜃

maxとなる.

(26)

図

2.5: ケーブルにおける線材の巻き角度の模式図

図

2.5

より,第

1

層目に巻きつける超伝導線材に関してツイストする角度を 𝜃1

= 0

°

と

している.ケーブルを曲げることができなくなる,熱収縮の影響がツイストしている場 合に比べて大きいことから現実的ではない.しかしながら,𝜃1

= 0

°

としている場合,

第

1

層目に加わる磁界は縦磁界のみで,縦磁界効果による輸送効率𝜂の改善は顕著に表 れると予想されるため,今回は 𝜃1

= 0

°

を用いた.

縦磁界ケーブルにおける輸送電流𝐼tの導出過程

2.2.2

超伝導体はその超伝導体に加わっている磁界の大きさによって𝐽cの値が変化するた め,縦磁界効果を用いた超伝導ケーブルの𝐼tを導出する際はそのケーブルに加わる磁束 密度を導き出す必要がある.

よって,ここでは,図

2.4

にあるような螺旋状に巻かれた導線についての磁束密度を 考える[13].半径𝑅 の円筒上に,円筒軸に対する角度 𝜃𝑖

(0°≦𝜃

𝑖≦90°)で層数 𝑁 回(円 筒に巻きつかられた薄膜の数)らせんに巻かれた導線に電流 𝐼 が流れるとする.図

2.6

は 図

2.5

の

1

層目と𝑖層目における線材の一部分を表しており,

1

層目におけるテープ線材 の幅を𝑤,長さを2𝜋𝑅とすると,𝜃1

= 0より

𝑁 = 2𝜋𝑅

𝑤 (2.8)

が成り立ち,ここで,テープ線材一枚に流れる電流量を𝐼1とすると,

(27)

𝐼

1

= 𝐼 𝑁 = 𝑤𝐼

2𝜋𝑅 (2.9)

と表すことができる.テープ線材を角度 𝜃𝑖でツイストした場合の層数,テープ線材一枚 に流れる電流量をそれぞれ𝑁′,

𝐼

iとすると,

𝑁

′

= 2𝜋𝑅

𝑤

′

= 2𝜋𝑅

𝑤 cos 𝜃

𝑖

(2.10)

𝐼

i

= 𝐼

𝑁

′

= 𝑤𝐼

2𝜋𝑅 cos 𝜃

𝑖

(2.11)

となる.

図

2.5

にあるように超伝導線材が螺旋状に巻かれているため,超伝導線材がソレノイ ドコイルのような磁界の振る舞いをすると考えることができる.

以下の式(2.12)はソレノイドコイル内部における磁束密度を表しており,磁束密度は ソレノイドコイル内部において一様に分布する.

𝐵 = 𝜇

0

𝑛𝐼 (2.12)

単位長さあたりの巻き数

𝑛 =

1

𝑤とする.式(2.12)と図

2.5

より,

𝑖層目における線材が

内側に一様な磁束密度𝐵𝑖は,

𝐵

𝑖

= 𝜇

0

1

𝑤 𝐼

1′

sin 𝜃

𝑖

図

2.6 : 1

層目(左側)と𝑖層目 (右側)における幅(青), 長さ(赤),電流(緑)の向きを表

した模式図

(28)

= 𝜇

0

𝐼 2𝜋𝑅 tan 𝜃

𝑖 と表すことができる.

上記より同様に超伝導電力ケーブルにおいて,𝑖 番目の超伝導層に加わる縦磁界は

𝐵

𝑖∥

= ∑ 𝜇

0

𝐼

𝑘

2𝜋𝑅

𝑘

tan 𝜃

𝑘

𝑛 𝑘=𝑖+1

+ 𝐵

ext

(2.14)

となる.

また,

𝑖 番目の超伝導層に加わる横磁界は, 𝜃の角度で電流 𝐼 を流した場合でも 𝜃 = 0

°方

向に流れる電流量は全体で 𝐼 となることから,アンペールの法則より

𝐵

𝑖⊥

= ∑ 𝜇

0

𝐼

𝑘

2𝜋𝑅

𝑘

𝑖−1 𝑘=1

(2.15)

と表すことができる.

また,𝑖 番目の超伝導層に加わる磁界の大きさと磁界の大きさと電流のなす角は

𝐵

𝑖

= (𝐵

𝑖∥2

+ 𝐵

𝑖⊥2

)

1 2⁄

(2.16) 𝜑

𝑖

= 𝜃

𝑖

− tan

−1

𝐵

𝑖⊥

𝐵

𝑖∥

(2.17)

となる.この

2

式より, 𝑖 番目の層における臨界電流密度 𝐽𝑖

,臨界電流 𝐼

𝑖

が求めること

ができる.

𝐼

𝑖

= 2𝜋𝐽

𝑖

𝑅

𝑖

𝑑 cos 𝜃

𝑖

(2.18)

ただしここでは,各層での超伝導線材内部の磁束分布の様子を考慮しない.実際には,

図

1.6,図 1.7

にあるようにテープ状薄膜超伝導体と円柱状超伝導体では磁束分布が異

なることが影響し,図

2.8

のようにテープ状薄膜超伝導体の𝐼c

‐ 𝐵特性の結果をテープ状

薄膜超伝導体の円柱に巻き付けた本数倍させた結果とテープ状薄膜超伝導体の円柱に 巻き付けた𝐼c

‐ 𝐵特性とでは特性が異なる.その理由として,銅酸化物超伝導体の結晶構

造に起因して,

𝐽

c

が磁界の角度依存性を持っており,一般的に線材の面に垂直方向( 𝑐 軸

方向)の磁界中の 𝐽c

は,面に平行方向( 𝑎𝑏 面方向)の磁界中の 𝐽

c

よりも小さいためである.

これを形状効果という.図

2.7

に示すような形状効果[14 を計算上で考慮することが難 しいため,本研究では,内部の磁束分布を考慮せずに計算を行う.

(29)

式(2.18)の 𝐼𝑖

は 𝐵

𝑖

,𝜑 と一緒に式(2.5)によって決定される.また 𝐽

𝑖

は𝑖 番目の層の臨

界電流 𝐼c𝑖

のことなので,式(2.5)は

𝐽

c

(𝜑

𝑖

) = 1

2 (𝐽

||

(𝐵

𝑖

) + 𝐽

⊥

(𝐵

𝑖

)) + 1

2 (𝐽

||

(𝐵

𝑖

) − 𝐽

⊥

(𝐵

𝑖

)) cos 2𝜑 (2.19)

とおける.𝑁 + 1 個の方程式群は,

𝐽

c𝑖

= 𝑓( 𝐽

c0

, … , 𝐽

c𝑁

) (2.20)

によって繰り返し計算を用い数値的に計算することができる.初期条件として,各層で の電流密度は

𝐽

c0{0}

= 𝐽

c1{0}

= ⋯ = 𝐽

c𝑁{0}

= 𝐽

cM

(𝐵 = 0) (2.21)

で示すように全ての同じ値をもつ.次の繰り返しで,新しい臨界電流密度の値は一つ前

図

2.7: Bi2223

超伝導体における形状効果による 𝐼cの変化 [14]

(30)

𝐽

c𝑖{1}

= 𝑓(𝐽

c0{0}

, … , 𝐽

c𝑁{0}

) (2.22)

に示す.この方法を用いることによって,𝑘 番目の繰り返しでは

𝐽

c𝑖{𝑘}

= 𝑓(𝐽

c0{𝑘−1}

, … , 𝐽

c𝑁{𝑘−1}

) (2.23)

によって臨界電流密度が得られる.このようにして,全ての層における超伝導線材の臨 界電流密度は,繰り返し計算によって数値的に求めることができる.繰り返し計算の終 了条件は回数が

100

回以下または,臨界電流密度の誤差は10−6

A m ⁄

2以下となる[15].

ケーブルの電流容量は

により求まる.

𝐼

t

= ∑ 𝐼

𝑖

𝑛 𝑖=1

(2.24)

(31)

第 3 章 結果及び考察

縦磁界ケーブルの寸法を表

3.1

に示す.市販のコート線材の厚さが

100 μm,超伝導層

の厚さが

1 μm

なので縦磁界ケーブルに用いる線材の厚さを

100 μm,超伝導層の厚さが 1 μm

とした.市販のコート線材の𝐽c‐ 𝐵特性より,縦磁界ケーブルを試作することになった 場合,測定機器の関係から一定の電流値以下の輸送電流になるようにフォーマーの半径を 考慮しなければならない.しかし,今回は縦磁界ケーブルにおける輸送電流を仮想的に導 出し,縦磁界ケーブルの有効性について調査することが目的であるので,フォーマーの半 径は試作した単層の縦磁界ケーブルのフォーマーの半径を基にした.

表

3.1:

縦磁界ケーブルの寸法

フォーマーの半径[mm] 線材の厚さ[μm] 超伝導層の厚さ[μm]

5.00 100 1.00

2.2

節で述べたように,縦磁界ケーブルの輸送電流などを導出するにあたって,試料

の

0—0.5 T

における縦磁界状態,横磁界状態の𝐽c

‐ 𝐵特性の近似式を用いた.しかし,

多層化させて計算するにつれて,

𝐼

tのピークが

0—0.5 T

の範囲より大きくなった.その

ため,

0—0.5 T

の𝐽c

‐ 𝐵特性の傾向から 0.5—1 T

までの𝐽cの変化を予想し,それに基づい

て

0—1 T

の𝐽c

‐ 𝐵特性を仮定した.図 3.1

及び図

3.2

に𝐽c

-𝐵特性を示す. 0—0.5 T

の点

は実測値であり,0.5—1 Tの点はそれを基に外挿したもの,実線はこれらより導出した 近似式のプロットである.図

3.1,図 3.2

から

0—0.5 T

の𝐽c

‐ 𝐵特性の傾向が 0.5—1 T

の 範囲でも取れているため,繰り返し近似計算に用いることとする.

(32)

図

3.1:

単結晶基板試料の0—0.5 Tの𝐽c‐ 𝐵特性を基にした近似式を1 Tまで延長した縦磁界 状態(𝐵 ∥ 𝐼)および横磁界状態(𝐵⊥𝐼)における𝐽c ‐ 𝐵特性(丸は𝐽c‐ 𝐵特性の実測値,三角 は実測値を基に𝐽cを外挿したもの,実線は近似式を表す)

図

3.2: RE

系コート線材の0—0.5 Tの𝐽c‐ 𝐵特性を基にした0.5—1 Tまで延長した縦磁界状態

(𝐵 ∥ 𝐼)および横磁界状態(𝐵⊥𝐼)における𝐽c− 𝐵特性(丸は𝐽c‐ 𝐵特性の実測値,三角は実 測値を基に𝐽cを外挿したもの,実線は近似式を表す)

(33)

3.1

縦磁界ケーブルの内側導体

3—12

層における繰り返し近似計算 の結果

縦磁界ケーブルの内側導体に外部磁界𝐵extを印加したときの最大の輸送電流𝐼t,電力 ケーブルの軸に対して平行に線材を巻き付けたと仮定した縦磁界効果による𝐽cの増加 がない超伝導電力ケーブル場合の輸送電流𝐼0とする.このとき,輸送電流効率を𝜂 = 𝐼t

/𝐼

0 とした. 𝐵extが

0 T

のとき最大となる輸送電流を𝐼t0とする.このとき,𝐵extが

0 T

のと きの輸送電流効率𝜂0

=𝐼

t

/𝐼

t0とした.

図

3.3,図 3.4,図 3.5,図 3.6

はそれぞれ単結晶基板試料を用いたときの縦磁界ケー

ブルにおける内側導体

3, 6, 9, 12

層におけるさまざまな𝐵extを印加したときの𝐼tの𝜃max依 存性を示す.

図3.3: 単結晶基板試料を用いた場合の内側導体3層におけるさまざまな𝐵extを印加したと

きの𝐼tの𝜃max依存性

(34)

図3.4: 単結晶基板試料を用いた場合の内側導体6層におけるさまざまな𝐵extを印加したと きの𝐼tの𝜃max依存性

図3.5: 単結晶基板試料を用いた場合の内側導体9層におけるさまざまな𝐵extを印加したと

きの𝐼tの𝜃max依存性

図

図 1.1: 超伝導材料の臨界面
図 1.2: RE 系超伝導体の結晶構造[4]  RE 系超伝導体 1.2.1 RE 系超伝導体は Bi 系超伝導体とは違い機械的な加工では結晶配向しないため, 線材化にあたって PLD 法( 1.2.4 項で説明)で用いられるような結晶配向の制御が必 要となり,高品質な超伝導薄膜の作製が必須となる. RE 系超伝導体は,高温高磁 界下での臨界電流密度特性が優れているため,広い範囲での応用が可能なことから 今後の進展が期待されている.   Bi 系超伝導体 1.2.2 Bi 系超伝導体は ,
図 1.9: 高温超伝導ケーブルの模式図[9 ] 1.8  縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブル  1.4 節で述べた通り,縦磁界効果を用いることによって線材の特性を改善することなく
図 1.10: 縦磁界効果を用いた直流超伝導ケーブルの構造図[10 ] 内側導体に印加された縦磁界を
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