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中国における経営管理機構 (2018 年 3 月 ) 日本貿易振興機構 ( ジェトロ ) 北京事務所ビジネス展開支援部 ビジネス展開支援課

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(1)

中国における経営管理機構

(2018

3

月)

日本貿易振興機構(ジェトロ) 北京事務所

ビジネス展開支援部・ビジネス展開支援課

(2)

報告書の利用についての注意・免責事項

本調査レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)北京事務所が森・濱田松本法律事務 所に作成委託し、2018年2月に入手した情報に基づくものであり、その後の法律改正など によって変わる場合があります。掲載した情報・コメントは作成委託先の判断によるもの ですが、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。

また、本レポートはあくまでも参考情報の提供を目的としており、法的助言を構成するも のではなく、法的助言として依拠すべきものではありません。本レポートにてご提供する 情報に基づいて行為をされる場合には、必ず個別の事案に沿った具体的な法的助言を別途 お求めください。

ジェトロおよび森・濱田松本法律事務所は、本レポートの記載内容に関して生じた直接 的、間接的、派生的、特別の、付随的、あるいは懲罰的損害および利益の喪失については、

それが契約、不法行為、無過失責任、あるいはその他の原因に基づき生じたか否かにかか わらず、一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロおよび森・濱田松本法律事務 所が係る損害の可能性を知らされていても同様とします。

本レポートに係る問い合わせ先:

日本貿易振興機構(ジェトロ)

ビジネス展開支援部・ビジネス展開支援課 E-mail : BDA@jetro.go.jp

ジェトロ・北京事務所 E-mail : PCB@jetro.go.jp

(3)

はじめに

日本企業が中国において現地法人を設立する際、把握しておかねばならない経営管理 機構の役割、義務、その業務執行および運営に関する注意点および問題点、併せて定款 作成時の注意点について、日本企業担当者にとって、読みやすくかつ分かり易いマニュ アル的なものを作成することを目的に、調査レポート「中国における経営管理機構」(以 下、「2009年版」)を作成し、2009年4月に発行しました。

レポート作成から約9年経ち、レポートの更新の要望およびレポートに関した質問が 寄せられることから、前回発行時以降の法律・制度の変更点を反映し、寄せられた質問 に応えることを目的に、本レポートを作成しました。

本資料はジェトロ北京事務所が森・濱田松本法律事務所に依頼し取りまとめたもので す。皆様のご参考になれば幸いです。

2018年3月 日本貿易振興機構(ジェトロ)

(4)

目次

Ⅰ 総論 ... 1

1.会社法改正と外国投資法(草案意見募集稿) ...1

2.会社の種類 ...4

3.中国の会社機関 ...6

Ⅱ 外商投資企業と会社機関... 10

1.総論 ... 10

2.中外合弁企業 ... 11

3.中外合作企業 ... 31

4.外資(独資)企業 ... 32

5.外商投資株式会社 ... 56

別紙 1 定款サンプル 1 【中外合弁企業】 ... 66

別紙 2 定款サンプル 2 【外資(独資)企業(単独出資)】 ... 73

(5)

中国における経営管理機構

Ⅰ 総論

1.会社法改正と外国投資法(草案意見募集稿)

 会社法改正

(1) 会社法改正

2013年12月28日、中国の会社法の改正案が全国人民代表大会常務委員会 会議にて可決され、2014年3月1日より施行されました。改正後の会社法で は、資本に関する規制が大幅に緩和されました。主要な改正点は、法定最低資 本金の廃止、資本の実際の払い込みに関する規制の廃止、金銭出資の法定比率 規制の廃止等です。一方、経営管理機構、機関に関していえば、2013 年の会 社法改正によって、特段の変更がありません。

中国の会社法は、1993 年制定された後、数回の改正が行われています。本 レポートにおいて、2005年10月27日に改正、2006年1月1日施行された会 社法を「2006 年改正会社法」、当該改正を「2006 年の改正」、2013 年の改正 後の現行の会社法を「会社法」といいます。

(2) 外商投資企業関連

①外資三法の実施条例・細則の改正

中国の法制度上、会社法は一般法、外商投資企業に関する規定は特別法であり、

特別法が一般法に優先します(会社法217条)。従って、2013年の会社法の改正 を外商投資企業(合弁、合作、独資など)に適用するためには、原則としては、

関連する特別法規定を改正することが必要となります。

このため、国務院は、2014年2月19日に、「一部行政法規の廃止および改正 に関する決定」(国務院令第648号)を公布し、「中外合弁企業法実施条例」「中 外合作経営企業法実施細則」「外資独資企業法実施細則」を改正しました(2014 年3月1日施行)。当該改正は、会社法改正に従い、外資三法(外商投資企業の 基本法である「中外合弁経営企業法」「中外合作経営企業法」「外資独資企業法」)

の実施条例・細則に定める外商投資企業の最低登録資本金を廃止しました 。

(6)

②「外資審査管理業務の改善に関する通知」の公布

国務院の外資三法の実施条例・細則の改正を受けて、商務部は、2014年6 月 17 日に、「外資審査管理業務の改善に関する通知」(商資函〔2014〕314 号)を 公布しました。当該通知において、商務部は、外商投資による会社の最低登録資 本の制限および貨幣出資比率を廃止すると明言しました。ただし、会社の登録資 本および投資総額の比率は、なおも「中外合弁企業の登録資本と投資総額の比率 に関する暫定規定」(工商企字〔1987〕第 38 号)およびその他の現行の有効な 規定に合致しなければならない、とされました。

③外商投資株式会社の最低登録資本金を廃止

さらに、商務部は、2015年10月28日に、「一部規則および規範性文書の改正 に関する決定」(商務部令2015年第2号)を公布し、「外商投資株式会社設立の 若干問題に関する暫定規定」(外経貿部令1995年第1号)および「外国投資家が 投資により投資性会社を設立・運営することに関する規定」(商務部令2004年第 22号)を改正しました。当該改正は、外商投資株式会社(3,000万人民元)の最 低登録資本金を廃止しました。

上記の一連の外商投資企業関連の法令の公布・改正の後、法令上、外商投資企 業についても、国内資本の会社(内資企業)と同様に、原則として、最低登録資 本金の制限がなくなりました。

しかし、外商投資企業の最低登録資本金について、法令上全く制限がないとはい えません。少なくとも、上記(2)の②のとおり、「中外合弁企業の登録資本と投 資総額の比率に関する暫定規定」第2条は、中外合弁企業の登録資本は、生産・

経営の規模、範囲に対応したものでなければならないと規定しています。従って、

例えば、登録資本金1元で外商投資企業を設立しようとする場合、それが明らか に生産・経営の規模、範囲に対応したものではないので、工商登記できない可能 性があると考えます。

 外国投資法(草案意見募集稿)

(1) 主な内容

中国経済社会の発展に伴い、30年以上前に施行された現行の外資三法は、既 に改革の全面的深化および開放のさらなる拡大という需要に十分に対応できて いないのではないかとの考えから、外資三法を改正し、外国投資を規制する統 一した基本法律を制定することが検討されました。こうした背景を踏まえ、2015

(7)

年1月19日に、商務部により、「中華人民共和国外国投資法(草案意見募集稿)」

(以下「草案」)が公表され、同年2月17日まで意見募集が行われました。

本草案は全170条からなり、総則、外国投資者および外国投資、参入管理、

国家安全審査、情報の報告、投資の促進、投資の保護、苦情申立の調整処理、

監督検査、法律責任および附則の11章に分かれています。

(2) 外商投資企業の経営管理機構に対する影響

中国において、外商投資企業に対し、これまでは会社法と外商投資企業の基 本法である外資三法が適用されてきましたが、外資三法における企業の組織形 態、経営活動等に関する規定と会社法等の関連規定の間には重複があり、齟齬 もある問題が生じています。例えば、外資三法では、外資企業の内部経営管理 機構に関する規定の一部は会社法とは異なるものとなっており、特に、中外合 弁企業の場合は株主会を設置せず、董事会が最高意思決定機関とされ、合弁企 業の定款の修正、企業の中止・解散、増資・減資、合併・分割等の事項につい ては、董事会の全員一致決議を取得しなければならないと規定されるなど、会 社法規定とはかなり大きな差異があります。本草案では、外国投資企業(外国 投資者が全部または一部を投資して、中国国内に設立した企業。外商投資企業 は外国投資企業に含まれると考えられます。)に対するコーポレートガバナンス に関する特別規定を定めておらず、企業の組織形態(合弁、独資、有限責任会 社、株式会社)についても区別されていません。従って、今後、外国投資法が 公布、施行された場合には、中外合弁企業を含む外商投資企業は、内資企業と 同様の、統一的な機関構成となる可能性があります。

なお、外国投資法の施行によって外資三法が廃止されることとなりますが、

本草案では、外国投資法の発効前から法により既存の外国投資企業に対して、

原認可の経営範囲、期間およびその他の条件の下で経営を継続することができ るとされています(草案155条)。なお、外資三法の廃止により、外国投資企業 の組織機構については、内資企業と同様の会社法等の法律に従うこととなりま すが、それに伴い必要となる組織機構の変更について、既存の外国投資企業に3 年間の猶予期間が与えられると規定されています(草案157条)。

(3) 今後の展望

本草案は公布されて意見募集後、既に2018年2月時点で、3年間が過ぎ、中 国の投資政策・環境に変化が生じている部分もあり、特に2016年に外資三法と 関連法令の修正・公布により、草案で定められている外国投資企業に対しての 参入特別管理措置が既に施行されたため、本草案を大幅に調整する可能性もあ ると思われます。今後、草案の正式な立法化を見守る必要があると考えられま す。

(8)

2.会社の種類

(1) 外商投資企業の種類

外国の法人または個人が全部または一部の出資をする中国の会社を外商投資企業 といいます。外商投資企業は、出資形態により、以下の中外合弁企業、中外合作企業、

外資独資企業、外商投資株式会社の 4 種類の会社に分かれます。中外合弁企業、

中外合作企業、外資独資企業は有限責任会社で、外商投資株式会社は株式会社です。

有限責任会社と株式会社の異同については、下記(2)をご参照ください。

<中国における会社の種類>

有限責任会社

内資企業 内資有限責任会社

外商投資企業

中外合弁企業

(中国企業とのジョイントベンチャー)

中外合作企業

(契約で利益配当率を決める)

外資(独資)企業

(100%外国資本)

株式会社

内資企業 内資株式会社

外商投資株式会社(ただし、外国資本が25%

以上入った株式会社をいう。外国資本が 25%未満の株式会社は、登記管理上、内資 企業として分類されている。)

● 外商投資企業の種類は以下のとおりです。

①中外合弁企業 :外国出資者と中国出資者が共同で出資する有限責任会社で、それぞ れが出資比率に応じた利益配当を受ける会社。

②中外合作企業 :外国投資者と中国出資者が共同で出資する有限責任会社で、出資方 式、損益分担方法、利益配当比率等を契約により、比較的柔軟に定 めることができる。一定の要件のもと、外国出資者による投資の早 期回収なども認められている。なお、パートナーシップや法人格が ない形態も可能。

③外資(独資)企業 :外国出資者のみが出資する有限責任会社。出資者1人(1社)である 場合(外資独資会社)と、複数である場合(外資合弁会社)がある。

④外商投資株式会社 :外国投資者と中国出資者が共同で設立する株式会社であって、外資

割合が25%以上のもの。外国資本が25%未満の株式会社は、登記管

外商投資企業

★外商投資企業は、 の会社です。

(9)

(2) 有限責任会社と株式会社

中国の国内で設立された企業には、大きく分けて、以下の2種類の会社があ ります(会社法2条)。

どちらの会社も、株主の責任は有限責任ですが、有限責任会社では株主の会 社に対する持ち分が「出資持ち分」と定義され、株式会社では「株式」と定義 されています。有限責任会社と株式会社の主な異同は以下のとおりです。

有限責任会社 株式会社

株 主 の 責 任 の 範 囲

有限責任 有限責任

株主数 1~50人(1人会社○)

(会社法24条)

2~200人(注1)(1人会社

×

(会社法78条)

株主の持ち分 出資持ち分 株式

持ち分の譲渡 原則制限あり

(ほかの株主の過半数の同意が 必要(会社法71条)など)。

定款に別段の規定がある場合、そ れに従う(会社法71条4項)

原則自由

(会社法137条)

譲渡制限に関する規定あり。

(会社法141条)

最低資本金 会社法上の最低資本金の定めは、

2013 年 12 月「会社法」の改正 によって廃止された。

左に同じ

(注1)発起人の人数制限です。株主数の上限に制限はありません。

● 有限責任会社

● 株式会社

(10)

3.中国の会社機関

(1) 主要な機関

中国の外商投資企業の機関設計は、外商投資企業の種類に応じてそれぞれ異なっ ていますが、外商投資企業の機関については後述Ⅱ以降に記載します。

ここでは、会社法の規定に基づく基本的な機関設計(現時点では主に内資企業に適 用)について説明します。中国の機関設計における主要な機関は以下のとおりです。

会社の種類 設置機関

有限責任会社 株主会/董事会or執行董事/董事長/監事会or監事/総経理 株式会社 株主総会/董事会/董事長/監事会/総経理

(2) 機関の関係

会社法の規定に基づき設置される機関およびその関係を図解すると、以下のよう になります。

株主会 or 株主総会

株主

董事長 選任

任命・解任

監事会/監事 監督

監督

董事長

副董事長 董事会or執行董事

日常経営管理機関 総経理 議決権行使

(11)

(3) 機関

会社法に基づく各機関の内容は以下のとおりです。

(i) 株主会/株主総会

株主会(中国語で「股东会」)と株主総会(中国語で「股东大会」)はともに、

会社の全株主で構成される会社の最高意思決定機関で、会社の基本的重要事項 を決定します(会社法 36 条、37 条、98条、99条)。株主会と株主総会の決 議事項は、会社の経営方針、董事・監事の選任・解任、予算・決算案の審議・

承認、会社の合併・分割、解散・清算、会社定款の修正などです。有限責任会 社の場合は株主会といい(会社法 36 条)、株式会社の場合は株主総会(会社 法98条)といいます。

(ii) 董事会/執行董事

董事会は、董事によって構成され、株主会または株主総会に対して責任を負 う、業務執行機関です(会社法44条、46条、108条)。董事会は株主会また は株主総会の決議した事項を実行し、会社の予算・決算案や合併・分割・解散 案などを作成し、内部管理機構の設置や総経理の任命などを行います。

なお、有限責任会社のうち、株主の人数が比較的少ないまたは規模が比較的 小さい会社は、執行董事を1人おいて董事会を設置しないこともできます(会 社法50条)。

(iii) 董事長

董事会設置会社は、董事長を1人設置しなければなりません(会社法44条、

109条)。

董事長は、董事会会議を招集・主宰する会社機関で、董事1人です。有限責 任会社では董事長の選出方法を定款で定めることができますが(会社法44条)、 株式会社では全董事の過半数で選出されます(会社法109条)。

董事長が、会社の法定代表者となることが多いですが、日本の代表取締役は

● 有限責任会社:株主会

● 株式会社 :株主総会 最高意思決定機関

● 株式会社、有限責任会社:董事会

● 小規模の有限責任会社 :執行董事 業務執行機関

(12)

必ず会社の代表権を有するのに対し、中国の法定代表者には、董事長、執行董 事または総経理のいずれかが就任する(会社法13条)こととされています。

(iv) 総経理

総経理は、会社の日常の経営管理機関の責任者で、董事会により任命・解任 され、董事会の決議した事項を実施します(会社法49条、113条)。総経理は、

一般に、会社と労働契約を締結します。

(v) 監事会/監事

監事は、会社の財務検査や、董事および高級管理職の職務執行に対する監督 を行う会社機関です(会社法51 条、53条、117条、118 条)。監事は、監督 機能を果たす必要があるので、会社の董事および高級管理職を兼任することは できません。

株式会社の場合、監事会の設置が必要で、監事会は3人以上の監事で構成さ れます(会社法117 条)。有限責任会社の場合で、株主の人数が比較的少ない または規模が比較的小さい会社の場合は、1~2 人の監事だけをおいて監事会 を設置しないこともできます(会社法51条)。

監事会・監事は、日本の監査役会・監査役と同様の機能を有する機関です。

● 董事長

● 執行董事

● 総経理

● 小さい有限責任会社 :執行董事

● 総経理

● 株式会社、有限責任会社:監事会

● 小規模の有限責任会社:監事

代表権

日常の経営管理

監督

(13)

(vi) その他

(a) 副董事長

董事会設置会社は、副董事長を選任することができます(会社法 44 条 3 項、109 条)。副董事長は、董事長が職務を履行できない場合、または履行 しない場合に、董事長に代わって職務を行う会社機関です(会社法47条)。

(b) 副総経理

総経理の指名に基づき董事会が選任する機関で、総経理を補佐する機関で す(会社法49条、113条)。

● 副董事長:董事長の補佐

● 副総経理:総経理の補佐 補佐

(14)

Ⅱ 外商投資企業と会社機関

1.総論

(1) 会社法と外商投資企業

中国の会社法は、中国の内資企業に適用されるだけでなく、外商投資企業 にも適用されます。しかし、中外合弁企業、中外合作企業、外資(独資)企 業には、それぞれ中外合弁企業法、中外合作企業法、外資独資企業法などの 特別法も適用されます。そこで、会社内の経営管理機構も、会社法のみが適 用される内資企業とは異なる部分があります。

(2) 外商投資企業と会社機関

Ⅰで記載した会社機関は、会社法が適用される中国の内資企業を前提とした もので、外商投資企業にもそのままあてはまるという訳ではありません。外商 投資企業の機関は、それぞれの種類ごとに、適用される特別法に応じて必要な 会社機関やその役割が異なっています。

そこで、以下では、外商投資企業の種類ごとに必要な会社機関とその役割

をまとめています。

●中外合弁企業等の外商投資企業が中国に子会社(外国出資者からすると孫会社)

を設立する場合、当該子会社は、内資企業に該当し、当該子会社には「会社法」

が適用されるという理解で正しいですか?

(答) ご理解のとおり、外商投資企業が、中国国内の会社に(単独で)投資し た場合、当該子会社は、企業性質としては、内資企業として扱われ、会社 法が適用されます(ただし、投資性会社が中国国内の会社に投資する場合、

当該子会社は原則として外商投資企業としての扱いを受けます)。一方、

当該子会社は、許認可、外資規制等との関係では、外国出資者の出資する 企業として扱われることが多く、個別に確認することが必要です。

(15)

2.中外合弁企業

(1) 総論

中外合弁企業とは、外国の会社等の経済組織または個人と中国の会社等の経 済組織が共同で出資する有限責任会社のうち、それぞれが出資比率に応じた利 益配当を受ける会社のことをいいます(中外合弁企業法1条)。

中外合弁企業では、会社経営において、外国側出資者と中国側出資者の意思 を出資持ち分に応じて公平に反映することが重要になります。そこで、その目 的に沿うような機関設計が求められます。

*中外合弁企業には、会社法のほか、主な特別法である中外合弁企業法や中外 合弁企業実施条例が適用されます。

(2) 設置が必要な会社機関

中外合弁企業に設置することが必要な機関は以下のとおりです。

(i) 董事会

中外合弁企業では、各出資者が任命・解任する董事によって構成される 董事会が、最高意思決定機関であり、業務執行機関になります。董事会は、

中外合弁企業の一切の重要事項を決定します(中外合弁企業法6条、中外 合弁企業法実施条例30条)。

(ii) 董事

董事は、各出資者によって任命・解任され、最高意思決定機関である董 事会を構成します(中外合弁企業法6条)。

○ 董事会 ←最高意思決定機関、業務執行機関

○ 董事 ←董事会の構成員

○ 董事長 ←法定代表者

○ 総経理 ←日常的経営管理

△ 監事会/監事 ←董事・高級管理職の監督

× 株主会 ←最高意思決定機関としての株主会は設置できない。

(16)

(iii) 董事長、副董事長

董事長は、中外合弁企業の法定代表者です(中外合弁企業実施条例 34 条)。副董事長は、董事長を補佐する機関です。董事長が職責を果たせな いときは、副董事長またはその他の董事に中外合弁企業を代表する権限を 委任しなければなりません(同34条)。

(iv) 総経理、副総経理

総経理は、董事会の決議した事項を執行し、中外合弁企業の日常的経営 管理を組織・指導します。副総経理は総経理の任務を補佐する機関です(中 外合弁企業法実施条例35条、36条)。

(iv) 監事会/監事

監事会または監事は、会社の財務検査や、董事および高級管理職の職務 執行に対する監督などを行う会社機関です(会社法53条)。

2006 年の改正後の会社法では、有限責任会社および株式会社に監事会

または監事の設置が義務付けられました(2006年改正会社法54条、118 条)。そして、かかる規定は外商投資企業にも適用されるので、2006年改 正会社法施行後、すなわち2006年1月1日以降に設立された中外合弁企 業には監事会または監事の設置が必要になります。

それでは、2006 年改正会社法施行前に設立された中外合弁企業につい てはどうでしょうか。この点、国家工商行政管理総局が2006年9月に公 布した実施意見の重要事項解説によれば、2006年1月1日より前に設立 された中外合弁企業には、監事または監事会の設置に関する定款の定めを 修正するかを自ら決定できるという記載があります。ただし、新たに定款 を変更する際には、各地方の審査認可機関等から監事会または監事を設置 することを指導されることが実務上、あります。

●中外合弁企業に株主会を設置できますか?

(答)現行法上は、中外合弁企業に株主会を設置することは想定されておらず、

できないと考えられます。

中外合弁企業法実施条例 30 条に、中外合弁企業では董事会が最高意思決 定機関であることが明記されており(中外合弁企業法6 条2 項も同旨)、董 事会の上に、株主会を設置することは想定されておらず、できないものと考 えられます。

(17)

以上をまとめると、中外合弁企業における機関の関係は下図のとおりになります。

<中外合弁企業の機関>

(3) 各機関の内容

(i) 董事会

(a) 概要

中外合弁企業では、各出資者が任命・解任する董事によって構成される董 事会が、最高意思決定機関です(中外合弁企業法6条、中外合弁企業法実施 条例30条)。

(b) 決議事項

董事会は、合弁企業の一切の重要事項を決定します。法律で董事会の決議 事項と定められている事項は、以下のとおりです(中外合弁企業法6条)。 なお、それぞれの重要度に応じて、董事会の決議方法が異なっています。

中国側出資者 外国側出資者

董事長 董事会

監事会 or監事 任命・解任

総経理 副総経理 経営管理機関

任命・解任

監督 監督

★ :必要的設置機関

:2006 年の会社法 改正により設置が 必要になった機関

董事長

副董事長 その他董事

(18)

董事会決議事項

③合併・分割・中途終了・解散・

会社形態の変更

②登録資本金の増加・減少

①定款の変更

⑤経営方針・投資計画の決定

⑥予算案・決算案の審議・承認

⑦利益配当案・欠損補填案の 審議・承認

⑧清算委員会の構成員の選任

⑨総経理、副総経理、総工程師、

総会計士、会計監査人の任命・解任

⑩内部規則、労働賃金計画等の決定

は全会一致決議事項です。

④持ち分譲渡

⑪その他定款で定めた事項

※ ④は実質的には全会一致決議事項として扱われることが多いです。 尾の田

(19)

① 全会一致決議事項

以下の事項は董事会の決議事項の中でも特に重要なので、中外合弁企業 では、法律上、董事会において出席董事の全員一致によって決議しなけれ ばならないとされています(中外合弁企業法実施条例33条)。この規定は 強行規定と解釈されています。

全会一致決議事項

③合併・分割・中途終了・

解散・会社形態の変更

②登録資本金の増加・減少

①定款の変更

●法律上董事会の全会一致決議となっている事項について、定款で

「3分の2以上の董事の賛成によって決議する」など、異なる決議方法 を定めることができますか?

(答) 中外合弁企業法実施条例33条は強行規定なので、できないと考 えられます。

●法律上の全会一致決議事項以外にも、定款で全会一致決議事項を追加す ることはできますか?

(答)できます。

実務上、出資者の立場、各会社の実情にあわせて全会一致決議事 項を追加することも考えられます。

●全会一致決議の意義

⇒マイノリティ出資者に拒否権があることになります。

すなわち、大株主であっても、全会一致決議の対象事項については、

ほかの株主の協力なしに意思決定することはできません。

●「全会一致決議」の「全」董事とは、董事の全員の賛成が必要ですか?

それとも董事会に出席した董事の全員の賛成があればよいですか?

(答)出席董事の全員の賛成があれば決議できます。

(20)

② 普通決議事項

董事会決議事項のうち、全会一致決議事項以外の事項は、各会社が決議 方法を定款で自由に定めることができます(中外合弁企業法実施条例 33 条)。

一般的には、「出席董事の過半数の賛成で決議する」と定められている ことが多いですが、「出席董事の3分の2以上の賛成で決議する」等規定 することも可能です。

普通決議事項

⑤経営方針・投資計画の決定

⑥予算案・決算案の審議・承認

⑦利益配当案・欠損補填案の審議・承認

⑧清算委員会の構成員の選任

⑩内部規則、労働賃金計画等の決定

⑨総経理、副総経理、総工程師、

総会計士、会計監査人の任命・解任

⑪その他定款で定めた事項

おのた定款で

④持ち分譲渡

※ なお、前述のとおり、④は実質的には全会一致決議 事項として扱われることが多いです。

(21)

●定款で董事会の決議要件を定めるには、事前に各決議要件が各出資者に とってどのような影響を生じるかについて、よく検討することが必要で す。

例)A社(支配株主)にとって、議決権を有する董事の「3分の2」また

は「4分の3」のどちらの決議要件を選択するべきでしょうか?

董事の 人数配 分

Aの董

事会 出席 者数

決議要件

コントロールの強弱

3分の2 4分の3

A:8 B: 2 C: 2

1 2 人

全員 出席

ほかの株 主の協力 不要

ほかの株主 の 協力必要

決議要件の割合が3分の2 のときは、合弁企業を自社 のみでコントロールでき る。

4分の3になると、ほかの 当事者との協力が不可欠。

5人 出席

ほかの株 主の協力 必要

ほかの株主 の 協力必要

決議要件の割合が3分の2 でも、4分の3でもほかの 当事者との協力が必要。

●中外合弁企業の定款の董事会決議事項にどのようなことを記載するべきでしょ うか?

(答) 中外合弁企業の定款変更は董事会全会一致決議事項に該当します。そこで、

後に頻繁に変更する可能性がある事項を定款に記載してしまうと、董事会の全 員一致決議が取得できず必要な変更ができなくなるリスクがあります。

また、多数株主の立場からすると、全会一致決議事項は少ない方が有利です。

他方マイノリティ出資者の場合は、なるべく多くの事項を全会一致決議事項と しておいた方が、拒否権発動の機会が増えて有利です。

なお、董事の任命・変更について、各出資者が自分の選任した董事を変更す る権利を有することは原則ですが、董事会の決議事項に入れると、出資者が自 分の選任した董事を解任することが難しくなる場合があり、注意が必要です。

(22)

(c) 招集手続き

董事会の招集は、董事長が行います(中外合弁企業法実施条例32条)。

董事会招集の注意点は以下のとおりです。

董事会招集時の注意点 招集権者 董事長

回数 1回/年以上

開催地 通常、中外合弁企業の法定住所の所在地で開催しなければな らない(中外合弁企業実施条例32条3項)(注)

(注)この規定は、任意規定と解されています。

●董事会の招集通知には何を記載すればいいでしょうか?

(答)招集通知を送付する場合、少なくとも以下の記載は必要です。

①議題

②開催地

③開催期日

特に外国出資者がマイノリティの場合は、招集通知の記載内容も、定款 で明確に記載することが望ましいといえます。ただし、招集通知に議題等 を記載することを厳格に要求することは機動的な董事会運営を阻害する恐 れもありますので、多数出資の場合等に、招集通知の内容まで具体的に定 款に規定するかどうかは、検討が必要です。

●董事長が董事会を招集しない場合、董事会は開催できないのでしょうか?

(答)できます。

董事長が職務を履行しない場合は、副董事長が招集・主宰します。副董 事長が職務を履行しない場合は、半数以上の董事が共同で推薦する1人の 董事が招集・主宰します(会社法47条)。

●董事会の招集通知は送付しなければならないでしょうか。

(答) 董事会の招集通知の発送は法律上の義務とはされていません。

しかし、非常勤董事や外国側出資者の董事の立場からすると、会社の動 きに気づかないこともあり、招集通知がないと董事会に出席できず、拒否 権等を行使できなくなるおそれがあります。そこで、こうしたことを避け るため、定款で別途招集通知を送付することを定めて、招集通知の送付を 義務化する方が、有効な董事会の運営ができると考えます。

この点、定款上、「董事長が会議招集 1 カ月前までに董事会の招集通知 および議案を書面で各董事に送付する」等規定されることがあります。

(23)

☆董事長が董事会を招集しない場合の董事会の招集方法 <定時会議>

<臨時会議>

董事長が董事会会議を招集・主宰

副董事長が招集・主宰

半数以上の董事が共同推薦する1人の董事が招集・主宰 副董事長が職務を履行

しない場合

3分の1以上の董事が提議

董事長が董事会を招集・主宰 董事長が職務を履行

しない場合

●中外合弁企業ではどのような形式でどのような頻度で董事会を開催してい ますか?董事が一カ所に集まることなく、通信や書面の方式で、董事会を 開催することはできますか?

(答) 会社法48条は、董事会の議事方式と議決手続きは、本法に定めのあ る場合を除き、会社定款の定めによると規定しています。董事会全員 一致決議事項を決議する場合を除き、定款に定めることにより、書面 の持ち回り決議の方式や、テレビ、電話を利用した董事会決議も可能 です(中外合弁企業法実施条例33条)。頻度について、中外合弁企業法 実施条例32条1項によれば、年1回以上の董事会会議の開催が必要と なります。書面等の方式による決議を行う場合でも年 1 回以上の董事 会の会議の開催が必要となります(同32 条1 項)。中外合弁企業にお いて、年に1~2回程度、定例の董事会が開催されているケースが多い、

と認識しています。

(24)

(d) 董事会の手続き

董事長が、董事会を主宰して運営します(中外合弁企業法実施条例32条)。

董事会の手続きに関する規定の内容は、以下のとおりです。

董事会運営の注意点 主宰者 董事長

構成人数 3人以上13人以下(注)

定足数 全董事の3分の2以上(中外合弁企業法実施条例32条2項)

議決権 1人1票

代理出席の可否 ○(同32条2項)

決議方法 全会一致決議事項あり(同33条1項)。それ以外は定款で規定(同 2項)

議事方式 定款で規定(同33条2項)

開催地 通常、法定住所の所在地(同32条3)

(注)会社法44条の董事の人数制限は、外商投資企業にも当てはまると考えられます。

●董事長の議決権に特権を設けることはできますか?

(例:定款で「董事長は一般の董事の2倍の議決権を持つ」と規定する。)

(答) 董事会決議の議決は1 人1 票により行うと規定されています(会社法 48条3項)。このため、董事長と董事の議決権を平等に取り扱うことが基 本的な考え方となります。なお、実務的に、定款において、董事会の議決 について、賛否同数となった場合、董事長の議決により、決定すると定め るケースが見受けられます。こうした規定が一概に無効とはいえません が、無効となるリスクも完全には否定できません。

(25)

●董事が出席できない時、代理人が出席することができますか?

(答)できます。

その場合、代理人になろうとする人に、授権範囲を記載した書面の 委任状を提出することが必要です(中外合弁企業法実施条例32条2 項)。

●董事でない一般の社員を代理人にすることもできますか?

(答)できます。

代理人の要件には法律上の制限はありません。董事以外の社員でも 第三者でも代理人になれます。ただし、董事会の混乱を防ぐため、代 理人の選任は慎重に行うことが必要です。

董事会の有効な運営のために、代理人1人が董事1人を代理するべ きと解されています。

●董事会の議事録を作成する必要がありますか?

(答)必要です。(会社法48条2項)

董事会の議事録には、議案、決議、議事進行の要点を含めなければ ならず、主宰者および出席董事が署名した後、原本を会社で保管しま す。

●董事会を董事2人で構成することはできますか?

(答)できません。

董事会を構成する董事の人数は最低 3人です(中外合弁企業法31 条)。

●董事の辞任等で、董事会の人数が法定人数より少なくなった場合はどう すればいいですか?

(答) 新しい董事が選任され就任するまでは、もとの董事が董事の職務 を履行しなければなりません(会社法45条2項)。

(26)

(ii) 董事

(a) 就任資格

董事は、中外合弁企業においては最高意思決定機関である董事会の一員で あるので、その就任資格には制限があります。

以下に該当する人は、董事に就任することができません(会社法146条)。

(b) 選任方法、任期等

董事は、各出資者が出資持ち分の比率に応じた人数を任命します(中外合 弁企業法6 条、中外合弁企業法実施条例31条1項)。董事の任期は会社法 では 3 年以下(45条 1 項)、中外合弁企業法実施条例では、4 年以下(31 条2項)とされていて、どちらに従うか、必ずしも明確ではなく、管轄の工 商部門により見解が分かれる可能性があります。

欠格事由

破産し清算した会社の董事・総経理・工場長を務め、

当該会社の破産に個人として責任のある者で、破産し 清算が完了した日から 3 年に満たない場合

民事行為無能力者(例:未成年者)

等)

法律違反により営業許可証を取り消された会社の法定代 表者で、個人として責任のある者で、当該会社が営業許 可証を取り消された日から 3 年に満たない場合

個人として負っている比較的大きな債務の期限が到来 したにもかかわらず、弁済を完了していない者

汚職、収賄等により刑罰の判決を受け、執行期間満了後 5 年に満たない者、または犯罪により政治的権利を剥奪 され、執行期間満了後5年に満たない者

制限民事行為能力者(例:精神病患者)

(27)

●董事の任期を1年とすることもできますか?

(答) 3年は最長期間なので、任期を1年とすることもできます。

●董事を全員再任させるには、どの様な手続きを行えばよいですか?

(答) 董事の再任について、対象会社の定款の規定に従う必要がありま す。再任に関する規定がなければ、任命に関する規定を参照するこ ととなります(中外合弁企業法実施条例31条2項)。任期に関する 定めがある以上、再任の手続きを行ったことを証する資料(通常の 場合、各出資者が作成する任命書。各出資者の法定代表者が署名し、

各出資者の会社印等を押印したもの)を作成しておく必要がありま す。定款上、董事の任命、再任に別途の手続き(董事会の全員一致 決議など)が必要である場合、当該手続きを履行する必要がありま す。

董事再任後の行政機関に対する届出の要否について、地方によっ て運用が異なる可能性がありますが、北京市商務委員会と工商局に 問い合わせたところ、再任する場合に董事情報の変更がないため、

董事変更届出手続きが不要で、董事再任によって定款が変更された 場合定款変更手続きが必要とのことです。

●定款で定めた任期2年の起点はどの日ですか?

(答) 董事任期の起算点について、法令上は明確には規定されていませ ん。定款の規定等によって任期の起点が決まることになりますが、

定款や合弁契約に特段の規定がなければ、董事の任命の効力が生じ た日が起点となります(定款等の内容によるが、各出資者の作成し た任命書が、合弁会社およびほかの出資者に対して到達した日等)。

(28)

●定款で定めた董事の任期が過ぎているが、再任手続きをしていないこと で、何か問題はありますか?

(答) 当該董事の任期が満了し、再任手続きも行われていないことから、

相手方の出資者から、董事としての権限の有無を争われ、紛争にな るリスクがあります。なお、会社法45条では、董事の任期満了時 にすみやかに改選しない場合は、改選により選ばれた董事が就任す るまでは、もとの董事はなおも法律、行政法規および会社定款の規 定に従い、董事の職務を履行しなければならないと規定していま す。

●外国企業と中国企業が派遣する董事の割合に、制限はありますか?

(答) 制限はあります。

中外合弁企業の董事会は最高意思決定機関なので、各株主が出資 比率に応じて意思を反映できるようにする必要があります。よっ て、基本的には、各株主は出資比率を参考にした人数配分の董事を 派遣することとされています(中外合弁企業法実施条例31条1項)。

注) 董事数と出資比率はともに会社定款の必要的記載事項であり、

定款は審査認可機関の認可を受ける必要があるので、董事の人数 配分によっては認可が下りない場合があります。しかし、人数配 分と出資比率がどの程度一致すればいいかについては、運用が一 定していません。一般に制限類については比率について厳格に判 断される傾向にあるので、出資比率について中国側がマジョリテ ィの場合に、外国側が董事の人数配分でマジョリティの定款は認 可を受けられないと考えますが、奨励類の場合にどの程度までの 人数配分が認可されるかについては、ケースバイケースと考えら れます。

(29)

●1人の董事を罷免したいですが、罷免書は作成しているが本人は罷免に 抵抗しており、董事会の議事録にもサインしていない状況です。対処方 法および行政手続きを教えてください。

(答)①対処方法:

「中外合弁企業法」第6条によれば、合弁企業は、董事会の人数構成 は、各合弁当事者が協議の上で契約および定款において確定するもの とし、かつ各合弁当事者が任命および更迭を行うと規定しており、各 合弁当事者は、自分が選任した董事を解任する権利を有することが原 則です。

ただし、董事の解任について、定款上の規定(例えば、董事の変更 は董事会の全員一致の賛成を取得しなければならない)、または地域 の工商部門と商務部門の実務の運用によって特別な制限を生ずるこ とがあり得るため、当局部門に確認した上、自社の定款に従い、弁護 士に相談するなどした上で、董事の解任を行う必要があると思われま す。

②行政手続き:

外商投資企業が董事を変更する場合、工商部門および商務部門で董 事変更届出手続きを行う必要があり、董事変更によって定款が変わる 場合、定款変更届出手続き(外商投資参入特別管理措置の分野(ネガ ティブリスト)に関わる外商投資企業の場合、定款変更の審査認可申 請手続き)も必要となります。以下は北京を例をとして、関連行政手 続きを紹介します。なお、地域によって行政手続きが変わる可能性が あるため、董事変更届出手続きを行う時、現地の行政機関に確認する 必要があります。

工商部門に対する提出書類は、①外商投資企業届出申請書、②指定

(委託)書、③原董事、監事の免職文書、④定款修正案または修正後 の定款(定款変更にかかわる場合)、⑤営業許可書のコピー等です。

商務委員会への手続きは、変更事項が発生した後 30 日以内に変更 の届出を行わなければならず、提出書類は①外商投資企業営業許可 証、②外商投資企業変更届出申告誓約書、③代表または共同委託代理 人の証明等です。

(30)

(c) 董事の義務

董事は、会社の最高意思決定機関の構成員として、会社に重大な影響を与 える機関です。董事の不適切な行動が、会社に甚大な損害をもたらす可能性 もあります。そこで、一般の従業員とは異なり、以下のような特別な義務や 責任を負っています(会社法147条、148条、149条、150条)。

忠実義務

会社に対する忠実義務および勤勉義務

権限を利用して賄賂またはその他の不法な収入を得 たり、会社の財産を横領したりしてはならない。

会社資産の流用

会社資金を自分の個人名義またはその他の個人名義 で口座を開設し預金すること

定款の規定に反し、株主会、株主総会または董事会の同 意を得ずに、会社の資産を他人に貸し付け、または会社 の財産を他人のために担保として提供すること

定款の規定に反し、または株主会、株主総会または董事 会の同意を得ずに、自社と契約を締結し、または取引を 行うこと

株主会または株主総会の同意を得ずに、職務上の便宜を 利用して自己のため、または他人のために会社の商機を 奪い、在任する会社と同種の業務を自営し、または他人 のために経営すること

他人と会社との取引のコミッションを受け取り自己 のものとすること

会社の機密を無断で開示すること

会社に対する忠実義務に反するその他の行為

禁止事項

賠償責任 法律または定款に違反し、会社に損害を与えた場合、賠 償責任を負う

(31)

上記に加え、董事は株主の質問を受け、監事会または監事に関連状況および資料を 事実に即して提供する義務、および監事会または監事の権限行使を妨害してはならな い義務を負っています(会社法150条)。

(iii) 董事長、副董事長

(a) 選任方法

董事長と副董事長は、各出資者が協議により確定するか、董事会が選任 します。各出資者の公平を図るため、董事長を中国側か外国側のどちらかか ら任命した場合、副董事長は他方が任命します(中外合弁企業法6条)。

(b) 権限

董事長は、中外合弁企業の法定代表者です(中外合弁企業実施条例34条)。

副董事長は、董事長を補佐する機関です。董事長は職責を果たせないときは、

副董事長またはその他の董事に中外合弁企業を代表する権限を委任しなけ ればなりません。

董事長は、対外的には中外合弁企業を代表し、対内的には董事会を招集・

主宰し、董事会決議に基づき業務を執行します。

●董事長を外国側出資者が任命することもできますか?

(答)できます。

●副董事長を2人選任してもよいですか?

(答)問題ありません。

副董事長は人数制限がないので、中国側出資者と外国側出資者が 1人ずつ任命することもできます。

●中国の現地法人において、董事長が中国に常駐する必要がありますか?

(答)董事長が中国に常駐することを義務付ける法令は見当たりません。

(32)

(iv) 総経理、副総経理

(a) 選任方法

中外合弁企業では、総経理1 人と副総経理を1人(以上)を設置する必 要があります。

中外合弁企業では、総経理および副総経理はともに董事会が任命・解任 します(中外合弁企業法実施条例36条、37条)。

(b) 権限

総経理は、董事会の各種決議を執行し、中外合弁企業の日常的経営管理を 組織・指導し、董事会から与えられた権限の範囲内で中外合弁企業を代表し、

対内的に従業員を任免し、その他董事会から委任された職権を行使します。

副総経理は総経理の任務を補佐する機関です。総経理は、重要問題を解決す る場合は、副総経理と協議しなければなりません(中外合弁企業法実施条例

35条、36条、37条)。

●外国人も総経理に就任できますか?

(答)できます。

●総経理がサインした契約書は有効でしょうか?

(答) 中外合弁企業では董事長が法定代表者なので、会社の契約書は董事長 が董事会の決議に基づいてサインする必要があります。しかし、総経理 も董事会から与えられた権限の範囲内で代表権を有しますので、当該契 約書の締結権が董事会から総経理に授権されていれば、総経理がサイン した契約書も有効です。

(33)

(iv) 監事会/監事

(a) 要否

中外合弁企業法には、監事会や監事についての規定はなく、従前の中外合 弁企業には監事会または監事は設置されないことがほとんどでした。しかし、

2006年改正会社法においては、有限責任会社において監事会または監事の いずれかを設置することが義務付けられました(2006年改正会社法52条)。 中外合弁企業も有限責任会社ですので、2006年1月1日以降に設立された 中外合弁企業には、監事会または監事の設置が必要になります。2006 年1 月 1 日より前に設立された中外合弁企業は、原則として監事を設ける必要 はありませんが(前記重要事項解説)、新たに定款を変更する際などには監 事を設置する必要がでてきますし、また定款変更がない場合でも、地方によ っては工商局などから監事を設けるように指導されることもあります。

●A会社の中外合弁企業であるB会社で総経理に就任していますが、A会社 がさらに中国企業と合弁で C 会社を設立することになりました。C 会社で も総経理に就任してもよいですか?C 会社の董事や董事長に就任すること はどうですか?

(答) 会社の総経理・副総経理はほかの経済組織の総経理・副総経理を兼任 することはできない旨の規定があります(中外合弁企業法実施条例 37 条4 項)。他方、株主会(合弁企業の場合、董事会)および兼任先のし かるべき機関の同意を得れば、C会社の董事や董事長への就任は可能と 解されます。ただし、別途、就業許可証の問題を検討する必要があり、

上海市など、特別の規定がある場合を除き、就業許可証には、一つの会 社しか記載できず、厳密には複数の会社の総経理等を兼任することは認 められていないともいえます。なお、非常勤、かつ無給の董事や、董事 長であれば、就業に該当せず、兼任できる可能性もありますが、実態を 踏まえ、慎重に判断する必要があります。

(34)

(b) 選任、任期

中国の有限責任会社では、株主会が監事を選任しますが(会社法37条)、

株主会の設置されない中外合弁企業では、董事と同様に各出資者が任命・解 任することになります。

また、中国の有限責任会社では、原則として監事会を設け、株主の人数が 比較的少ないまたは規模が比較的小さい有限責任会社では監事を設けるだ けで監事会を設けないことができるとされています(会社法51条)。中外合 弁企業は、株主の人数が比較的少ない等の理由により、監事会を設けず監事 のみを設置するケースが多いようです

監事の任期は3年です(会社法52条)。

(c) 権限

監事会または監事は、会社の財務検査や、董事および高級管理職の職務執 行に対する監督を行う会社機関です(会社法53条、118条)。監事会または 監事の権限の詳細については、後述の55ページを参照してください。

●中外合弁企業と監事の関係

中国の内資有限責任会社では、監事会/監事は、株主会によって任 命・解任され、株主会に対して責任を負い、董事や高級管理職の職務 執行を監督する機関として位置付けられています。

しかし、中外合弁企業ではその肝心の株主会が存在しないことから、

監事会/監事の位置付けが問題になります。

この点、有限責任会社の監事の機能の根幹は、董事会や総経理が株 主の利益に反した行動をしないように監督するという点にあります。

中外合弁企業の各出資者が株主ですので、各出資者が、自分の利益に 反した行動を董事会や総経理がとらないよう監事を選任して監督さ せ、監事は自らを任命した各出資者に対して責任を負うと考えること ができます。

現状でも、2006年1月1日後に設立した中外合弁企業では、各出資 者が1人ずつ監事を任命するのが一般的となっています。

(35)

3.中外合作企業

(1) 総論

中外合作企業とは、外国投資者と中国企業が共同で設立する有限責任会社で、

出資方式、損益分担方法と利益配当比率が比較的フレキシブルで、外国企業に よる利益配当の早期回収なども認められている会社のことをいいます(中外合 作企業法 1 条、中外合作企業法実施細則43 条)。なお、パートナーシップや 法人格がない合作企業もあります。

中外合作企業においても、中外合弁企業と同様に、会社経営において、外国 側出資者と中国側出資者の意思を出資持ち分に応じて、公平に反映することが 重要になります。そこで、その目的に沿うような機関設計が求められます。

*中外合作企業には、会社法のほか、主な特別法である中外合作企業法や中外 合作企業実施細則が適用されます。

(2) 設置することが必要な会社機関

法人格がある中外合作企業の会社機関の構成および内容は、中外合弁企業 とほぼ同じです(中外合作企業実施細則24条、26条、31条、32条等)。

○ 董事会(または共同管理機関)

←最高意思決定機関、業務執行機関

○ 董事 ←董事会の構成員

○ 董事長(または主任)

←法定代表者

○ 総経理 ←日常的経営管理

△ 監事会/監事 ←董事・高級管理職の監督

× 株主会 ←最高意思決定機関としての株主会は設置できない。

(36)

4.外資(独資)企業

(1) 総論

外資(独資)企業とは、外国投資者の出資のみで設立される有限責任会社のこ とをいいます(外資独資企業法 2 条)。外資(独資)企業においては、株主は外 国出資者のみなので、中国側出資者との公平など特別の事情を考慮する必要はな く、会社機関についての特別な規定がありませんでした。そこで、従前、実務上 は中外合弁企業と同様の機関設計をして、董事会および総経理を設置している外 資(独資)企業がほとんどでした。

しかし、2006年の改正会社法の施行にともない、2006年1月1日以後に設立 された外資(独資)企業にも、外資(独資)企業としての性質に反しない限りで 2006 年の改正後の会社法(2013 年以後は、2013 年改正後の会社法)が適用さ れ、改正後の会社法に合わせた機関設定を行うことが必要になります。

外資(独資)企業には、外国会社1社が出資して設立するタイプと、外国会社 が2社以上で出資して設立するタイプとがあり、それぞれの特徴に合わせて機関 設計にも相違がありますので、両社に分けてまとめております。

*外資(独資)企業には、会社法のほか、主な特別法である外資独資企業法およ び外資独資企業法実施細則が適用されます。

(2) 必要な会社機関

以下では、2006年1月1日以後に設立された外資(独資)企業の機関設計に ついてまとめています。

(i) 外国会社1社が出資して設立するタイプ(単独出資)

外国会社の単独出資の場合、株主が 1 人なので、中国の内資有限責任会社 の1人会社に類似した機関設計となります。2006年1月1日以後、設立され た単独出資の外資(独資)企業の必要な機関は以下のとおりです。

○ 株主 ←意思決定機関

○ 董事会/執行董事 ←業務執行機関

○ 董事 ←董事会の構成員

○ 董事長 ←董事会の招集・主宰

○ 総経理 ←日常的経営管理

○ 監事/監事会 ←董事・高級管理職の監督

× 株主会 ←1人会社には株主会は設置しない。

(37)

(ii) 各機関の権限

単独出資の場合、2006年の改正会社法施行以後も、1人会社であるので 株主会を設置することができません(会社法 61 条)。そこで、現状では、

大きく分けると以下の2タイプの機関設計が行われておいます。

(a) 株主=最高意思決定機関タイプ

2006年1月1日以後設立された単独出資の外資(独資)企業は、改 正後の会社法を適用し、内資有限責任会社の1人会社と同様の機関設計 を行う必要があります(外商投資会社の審査認可および登記管理におけ る法律適用の若干問題に関する実施意見3条2項)。

このタイプの場合、株主会の代わりである1人株主自身が最高意思決 定機関であり、すべての重要事項を決定します。董事会は株主の決定を 執行する機関となります。株主の権限の詳細については、後述 39~46 ページの外資(独資)企業(共同出資)の株主会とほぼ同様となり、董 事会およびその他の機関権限の詳細については、後述の外資(独資)企 業(共同出資)の機関の対応機関とほぼ同様となります。(後述47~55 ページ参照。)

(b) 董事会=最高意思決定機関タイプ、その他

2006年1月1日より前に設立された単独出資の外資(独資)企業の 場合、多くは中外合弁企業と同様の機関設計(董事会を最高意思決定機 関とする)が行われていましたが、特に機関設計について規定がなかっ たので、中外合弁企業とは異なる機関設計の会社もありました。2006 年1月1日以前に設立された外商投資企業(外資(独資)企業を含む)

の場合、投資する会社が(意思決定機関に関する規定を含む)定款を修 正すべきかについて、会社登記機関がこれを強制的に要求することはせ ず、会社が自ら決定する旨の規定があります(「外商投資会社の審査認 可および登記管理における法律適用の若干問題に関する実施意見」の実 施についての通知2条1項1号)。

●外資(独資)企業(単独出資)に株主会を設置できますか?

(答)できません。

外資(独資)企業(単独出資)は、株主が 1 人なので 1 人会社と同様の規 定が適用されることとなり、株主会を設置できません(会社法61条)。

(38)

以上をまとめると、外資(独資)企業(単独出資)における機関の関係は下図のとお りとなります。

<外資(独資)企業(単独出資)の機関>

外国出資者

(株主)

任命・解任

監事会 or 監事 監督

監督 董事長

董事会

総経理 副総経理 経営管理機関

任命・解任 董事長

副董事長 その他董事

★ :必要的設置機関

:2006 年の会社法 改正により設置が 必要になった機関

(ただし、副董事 長および副総経理 は、設置しないこ ともできる)。

(39)

(ii) 外国会社が2社以上で出資して設立するタイプ(共同出資)

中国の内資有限責任会社と類似した機関設計となります。必要な機関は以下 のとおりです。

(i) 株主会

株主会はともに、会社の全株主で構成される会社の最高意思決定機関で、

会社の基本的重要事項を決定します(会社法36条、37条)。株主会の決 議事項は、会社の経営方針、董事・監事の選任・解任、予算・決算案の審 議・承認などです。

(ii) 董事会/執行董事

董事会は、董事によって構成され、株主会または株主総会に対して責任 を負う、業務執行機関です(会社法44条、46 条)。董事会は株主会の決 議を実行し、会社の予算・決算案や合併・分割・解散案などを立案し、内 部管理機構の設置や総経理の任命などを行います。

なお、有限責任会社のうち、株主の人数が比較的少ないまたは規模が比 較的小さい会社は、執行董事を1人おいて董事会を設置しないこともでき ます(会社法50条)。

(iii) 董事長

董事会設置会社は、董事長を 1 人設置しなければいけません(会社法 44条)。董事長は董事会を招集・主宰します。

○ 株主会 ←最高意思決定機関

○ 董事会/執行董事 ←業務執行機関

○ 董事 ←董事会の構成員

○ 董事長 ←董事会の招集・主宰

○ 総経理 ←日常的経営管理

○ 監事/監事会 ←董事・総経理の監督

(40)

(iv) 総経理

総経理は、会社の日常の経営管理機関の責任者で、董事会により任命・

解任され、総経理は、董事会の決議事項を実施します(会社法49条)。

(v) 監事会/監事

監事は、会社の財務検査や、董事および高級管理職の職務執行に対する 監督を行う会社機関です(会社法53条)。監事は、監督機能を果たす必要 があるので、会社の董事および高級管理職を兼任することはできません

(会社法51条4項)。

有限責任会社の場合で、株主の人数が比較的少ないまたは規模が比較的 小さい会社の場合は、1~2人の監事だけをおいて監事会を設置しないこと もできます(会社法51条1項)。

(vi) その他

(a) 副董事長

董事会設置会社は、副董事長を選任することができます(会社法44 条 3 項)。副董事長は、董事長が職務を履行できない場合、または履 行しない場合に、代わりに董事長の職務を行う会社機関です(会社法 47条)。

(b) 副総経理

総経理の指名に基づき董事会が選任する機関で、総経理を補佐する 機関です(会社法49条)。

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