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Academic year: 2022

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魚類プロゲスチン膜受容体(mPR)の遺伝子変異系 統の作出と脳における発現解析および透明キンギョ 系統の作出

著者 王 軍

発行年 2017‑06

出版者 静岡大学

URL http://hdl.handle.net/10297/10502

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学 位 論 文 要 約

Summary of Doctoral Thesis

専 攻: バイオサイエンス 氏 名:王 軍 Course:Bioscience Name:Wang Jun

論文題目:魚類プロゲスチン膜受容体 (mPR)の遺伝子変異系統の作出と脳に おける発現解析および透明キンギョ系統の作出

Title of Thesis:

論文要約:

Summary:

一般にステロイドホルモンは核受容体を介して作用するものと考えられてきた。しか し、卵成熟誘起において、ステロイドホルモンは核受容体ではなく細胞膜表面のステロ イド膜受容体を介して、遺伝子発現を必要としないノンゲノミック反応による作用する ことが示されてきた。20 年以上に及ぶ探索の結果、ステロイド膜受容体の候補として membrane progestin receptor (mPR) が報告された。mPR は G タンパク質との共役 など、それまで予想されていた卵成熟誘導ホルモン受容体の性質を説明できるものであ った。さらにモルフォリノアンチセンスノックダウン実験により、卵成熟誘起ホルモン の受容体であることが示された。この分子の発見により他の系でも示唆されていたステ ロイドの急性反応の信憑性が高まった。mPR は卵だけではなく、そのサブタイプを含 めると脳や腎臓を始め、あらゆる組織に発現することが明らかになり、卵巣以外の組織 でも機能していることが示唆された。また、内分泌かく乱物質の標的となることも報告 された。しかし、遺伝子ノックアウト動物を用いた in vivo での機能証明はなされてい ないこと、核受容体が細胞膜にも存在し、ノンゲノミック反応を介在し得るとの報告も あることからステロイド膜受容体の生理機能については依然として世界的な議論にな っている。本研究では小型魚類のメダカを用いて、mPR の遺伝子変異系統の樹立によ り、mPR 分子の生理機能について決定的証拠を示すことを目的とする。これまでノッ クアウトメダカ作製系によりメダカゲノム中に存在する 4 種類の mPR (α, α-2, β, γ) の遺伝子変異メダカ系統、14 系統を樹立した。その結果、それぞれ 1 遺伝子の変異 では特に異常は見られず、mPR 遺伝子間で遺伝子機能に冗長性が見られることが明ら かになった。また、これまでの変異系統は全て点突然変異であり、表現型を示す程の mPR タンパク質の変化を起こすものではなかった可能性もある。そこで、それぞれの 掛け合わせによる 2 重、3 重変異体の系統樹立を進められたが、いずれも変異が見つ

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かれなかった。さらに、4 重変異体の系統を作ることに決めた。現在、F1 の 4 重ヘ テロ個体により F2 のホモ個体を作られている。4 重変異体により表現型が観察され ることを期待している。

一方、mPR は様々な臓器に存在していることが近年の研究により報告されてきた。

ヒトを含み、体の各部位の細胞がステロイドの作用を受け取っている可能性があると考 えられた。私たちは卵巣からmPRα を同定されたキンギョを材料として、キンギョ脳 の中にmPRの局在とその機能の解析を試みた。キンギョの全体の脳から膜画分し、プ ロゲスチンとの結合活性を検討した。その結果、全体の脳膜画分は卵巣からの膜画分と 相当するようなプロゲスチン結合活性があった。競合阻害結合実験では卵巣膜画分と同 様に、全体の脳膜画分は他のステロイド種類と比較することにより相対的な高い親和性 であった。プロゲステロン、プロゲステロン由来ニューロンステロイドとアロプレグナ ノロンには類似的な結合親和性であることが分かった。これらの結果により、プロゲス テロンと密接に関連している膜受容体 mPRα は脳の中に発現していることが示され た。実際に、mPRα 蛋白質の発現は脳膜画分で検出された。脳における mPRα の分 布は免疫組織化学解析により調べた。特異的なシグナルを小脳のプルキンエ細胞と

GnRH2 ニューロン細胞に検出された。これらの結果は mPRα が脳におけるプロゲス

チンの受容体であることを示唆された。

これまでに、減数分裂-卵成熟誘起ホルモン (MIH) の受容体であるメンブレンプ ロゲスチン受容体 (mPR) が同定され、卵成熟の誘導において mPRs の役割を明らか に解明された。mPR を介して内分泌攪乱物質の影響や作用メカニズムの解明も注目さ れてきた。金魚の卵細胞を用いて行った in vitro 解析では、卵成熟を誘導されるジエ チルスチルベストロール (DES) のアゴニスト活性が明らかになった。DES は非ステ ロイド性物質の一種であり、内分泌撹乱物質として知られて、その効果作用も広範に研 究された。世界中に広範でよく使われている農薬の一種であり、強力阻害剤の機能を持 つペンタクロロフェノールは MIH と DES によって卵成熟を誘導することも証明さ

れた。in vitro 卵成熟実験では、卵巣を金魚から取り出すことが必要である。しかし、

金魚の体は自然的に不透明であること、それらの卵巣を外側から可視化できないため、

実験に一番よいタイミングに使える雌金魚を決めることが難しいであった。従って、

我々は透明な金魚を作成することを試みた。

金魚はペット動物として長い歴史の間に様々な変異体を開発された。その中に 1 つ の変異体であるミューズは多数の虹色素胞を失ったように見えるが、不透明で白色な体 がであった。雌のミューズと ENU 処理した雄の和金の交配により F1 を得られ、F1 のファミリーからより透明なキンギョを選び出して、閉鎖交雑により F2 ファミリー を作られた。同じように、F3 世代まで交配を続いた。F3 の閉鎖交雑により完全に透

明な F4 の世代を得られた。生殖器官を魚体の外部から観察できる系統を樹立されが、

目がない且透明な変異体も得られた。

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第 1 章

序論

現在までに魚類の卵成熟に関する研究が進展し、ホルモン制御による誘導経路の概略 が解明されてきた。まず、脳下垂体から黄体形成ホルモン (LH) が分泌され、LH が 卵濾胞細胞に作用し、ステロイド性の卵成熟誘起ホルモン (MIH) を卵濾胞細胞から分 泌される。すなわち、17α,20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one,17,20β-DHP (17,20β-DHP) や 17,20β, 21-trihydroxy-4-pregnen-3-one (20β-S) などの MIH が卵濾胞細胞にお いて合成され、傍分泌される。さらに、MIH が卵細胞に作用し、卵成熟を誘導し、卵 細胞が受精可能な卵へと成熟する。MIH の卵細胞に対する作用は卵細胞膜上に局在す るステロイド膜受容体を介して、新規ステロイドホルモンシグナル伝達である遺伝子発 現を必要としないノンゲノミック反応により卵成熟を誘導する。一般にステロイドホル モンは核受容体を介して作用するものと考えられてきたが、20 年以上に及ぶ探索の結 果、ステロイド膜受容体の候補として membrane progestin receptor (mPR) が報告さ れ、ステロイドホルモンが膜受容体と結合して細胞内のシグナル伝達を引起すと考えら れるようになってきた。mPR は G タンパク質との共役など、それまで予想されてい た卵成熟誘起ホルモン受容体の性質を説明できるものであった。さらにモルフォリノア ンチセンスノックダウン実験により、卵成熟誘起ホルモンの受容体であることが示され た。この分子の発見により他の系でも示唆されていたステロイドの急性反応の信憑性が 高まった。mPR は卵だけではなく、そのサブタイプを含め、脳や腎臓を始め、あらゆ る組織に発現することが明らかになり、卵巣以外の組織でも機能していることが示され た。また、内分泌かく乱物質の標的となることも報告された。しかし、遺伝子ノックア ウト動物を用いた in vivo での機能証明はなされていないこと、核受容体が細胞膜にも 存在し、ノンゲノミック反応を介在し得るとの報告もあることからステロイド膜受容体 の生理機能については依然として世界的な議論になっている。そこで、私は小型魚類の メダカを用いて mPR 遺伝子変異系統を作出し、mPR 分子の機能証明を試みた。

逆遺伝学的に変異体をスクリーニングする方法であるTILLING 法を用いて、14 系 統の mPR 変異メダカ系統が選択された (mPRα: 3 系統; mPRβ: 4 系統; mPRα-2:

3 系統; mPRγ: 4 系統)。しかし、それぞれ 1 遺伝子の変異によっては特に異常は見 られなかった。脊椎動物間で保存されている mPR には冗長性があると判断され、多 重変異体を作出する必要があると考えられた。そこで 2重、3 重変異体を作出したが、

表現型に変化は見られなかった。その結果を受けて、 mPRγ 遺伝子の変異体と他の

mPRs の3重変異体の交配により 4 重変異体のヘテロ接合個体を作出した。現在、こ

の 4 重変異体のヘテロ接合個体同士を用いて交配を行っている。4 重変異メダカに何 らかの変異形質が見られることが期待される。この研究は新規ステロイド膜受容体

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mPRのメダカ変異体系統の樹立により、その表現型解析からこの受容体の生体内での 働きを確認し、これまで作用経路が不明であったステロイドホルモンの生理作用につい て正しい解釈を与えることに繋がると期待される。

一方、mPRの新しいサブタイプであるmPRδとmPRεは脳で発現が確認された。こ れらのサブタイプは中枢神経系のニューロステロイドによる抗アポトーシス作用に関 与することを示唆されている。さらに、mPRαとβを介したプロゲステロンの影響はマ ウスの生殖行動であるロードシスに関与することも示された。これらの観察により

mPRs がニューロステロイドの標的であることが示された。従って、脳における mPRs

の局在と機能の解析を試みる必要がある。我々はキンギョの脳における膜受容体のプロ ゲスチンとの結合活性および mPRα 蛋白質の局在を調べた。この研究の結果により

mPRα が脳で発現し、プロゲステロンの受容体として働く可能性が高いことを明らか

にした。

卵成熟に関する実験では、1 回の産卵で多数の卵を得られるキンギョが良く用いられ ている。キンギョの卵巣を体から取り出して in vitro実験の材料に用いることが一般で ある。しかし、キンギョの体は不透明であるため、卵巣を外側から観察できない。その ため良い状態の卵巣を選び出すことが難しかった。そこで、我々は実験をうまく進める ために、新しい実験材料として外から生殖腺を観察できる透明な金魚の作出を試みた。

虹 色 素 胞 を 欠 損 し た 比 較 的 透 明 な 金 魚 の 品 種 で あ る ミ ュ ー ズ と ENU (N-ethyl-N-nitrosourea) により突然変異誘発した和金を掛け合わせることにより透明 な金魚系統を作出した。樹立した系統は高度に透明であるため体内の器官が容易に観察 することができた。この系統は特にキンギョの生体における細胞の増殖や生殖線の発達 過程を捉えるために有用であることが示された。

第 2 章

遺伝子変異メダカを用いたプロゲスチン膜受容体 (mPR) の生理機能の証明

mPR 変異メダカ系統のスクリーニング結果:

スクリーニングによってmPR遺伝子変異メダカ F1 を同定し、テンプレートの番号 を用いて系統の番号を付けられた。プロゲスチン膜受容体の4つのサブタイプのスクリ ーニングが行われ、合計 14 系統の mPR 遺伝子変異系統が選択された (図 2-11)。 mPRαについては 3 系統、0017、4138、4959が得られた。mPRβ 系統では 4 系統、

1622、1437、5392、1950 が得られた。mPRα-2 において 3 系統 0167、1741、3729 が得られた。mPRγ において 4 系統 2540、1232、0416、3698 が得られた。

2.4. 考察

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F2 ヘテロ変異体の中からオスとメスを選び、変異体同士と野生型との交配を行った。

受精卵を収集し、得られた F3 の稚魚を飼育し、成長後に再び遺伝子型の判別を行っ た。ランダムミュータジェネシスした変異体ライブラリーからスクリーニングしている ので、1 回の野生型との交配でバックグラウンドの変異(標的遺伝子の変異以外)は半 分になる。バックグラウンドの変異を除くため、F5 世代まで野生型との交配を行った。

F5 世代でヘテロ同士の交配をし、F6 世代の mPR 変異遺伝子をホモ接合体で持つ メダカの表現型解析を行っていた。それぞれのシングルミュータントの表現型解析をし たが、いずれの変異体も全く異常は見られなかった。1 遺伝子の変異のみでは影響が無 く、mPR 遺伝子間には冗長性が見られることが明らかになった。そこで 2重、3重変 異体の作出を進めた。実際にシングルミュータントを掛け合わせ、2重と3重変異体を 作出した (図 2-54、図 2-55) が、表現型は見られなかった (図 2-56)。三重変異体の ホモ個体の産卵成績がコントロール Cab 系統と比較したが産卵変異率や孵化率など 有意差が得られなかった (図 2-57)。さらに、最後の遺伝子である mPRγ を用いて 4 重変異体の作出も開始した (図 2-58)。現在、4 重ヘテロ接合変異体同士をペアリング に掛けているが、次の世代で何らかの変異形質が見られることが期待される。

この研究結果はステロイドホルモンの第二の作用経路であるノンゲノミック反応経 路の役割を明確にし、これまで作用経路が不明であったステロイドホルモンの薬理作用 について正しい解釈を与えることに繋がると期待される。

第 3 章

キンギョ脳における mPR の発現とステロイドとの親和性 キンギョ脳膜のステロイドとDES結合特性

特異的なプロゲスチン結合はキンギョの脳から調製した原形質膜を用いて測定した

(図 3-1-A、挿入図)。結合飽和曲線解析はプロゲスチンがキンギョ全体の脳から調製し

た膜画分と結合飽和性があり、最大結合能 (Bmax = 0.1 nM) であることを示した (図

3-1-A)。スキャッチャード解析によって高親和性の単一結合部位が細胞膜に存在するこ

とが判明した (Kd = 11.0 nM、図3-1-A)。

ステロイド競合阻害実験は、脳の膜画分に対してプロゲスチン (17,20β-DHP およ び P4) は高度に特異的に結合することを示した (図 3-1-B)。神経ステロイドホルモン である Allopregnanolone (ALLO) は P4 と同じような結合親和性であった (表3-1)。 他のステロイドの結合活性を測定したが、[3H] -17,20β-DHP に比べ、Tes、CorとE2 の活性は弱く、ほとんど認められなかった。卵巣膜受容体とは対照的に DES は脳膜受 容体への [3H] -17,20β-DHP 結合に対する有効な競合阻害物質ではなかった。

キンギョ脳におけるmPRαの分布

(7)

ポリクローナル抗体は抗-メダカ mPRα (残基 306-319) の合成ペプチドにより作製 した。キンギョの全脳から調製された細胞膜に約 40 kDa の免疫陽性バンドがウエスタ ンブロット解析によって検出された (図 3-2)。このバンドのシグナル強度は、合成ペ プチドによる抗体の吸収によって著しく減少した。したがって、この免疫陽性バンドは キンギョの脳における mPRαタンパク質であると結論付けた。全脳から調製した横断 および矢状の切片を抗体で染色し、mPRαタンパク質の分布を調べた。mPRαタンパ ク質の特異的シグナルが脳の 2 つの領域で検出された (図 3-3)。矢状切片では小脳の プルキンエ細胞で特異的シグナルが検出された (図 3-3A)。ペプチド吸収 (コントロー ル) 抗体を使用した場合シグナルは検出されなかった。横断面では、特異的シグナルが GnRH2 ニューロンで検出された(図 3-3B)。予め吸収された抗体を用いると、シグナル は消失した。これらの結果から、mPRαタンパク質がこれらの細胞に特異的に発現して いることが示された。

考察

この研究では、キンギョの脳におけるプロゲスチン膜受容体の親和性とステロイド- 結合特異性を調べた。キンギョの脳全体から調製した膜画分がプロゲスチン 17,20β

-DHP および P4 に対して高い結合親和性を示した、これらの物質はmPRαと結合し

キンギョの卵成熟を誘導する (Tokumoto et al. 2004; Tokumoto et al. 2005; Tokumoto

et al. 2007)。脳と卵巣の膜受容体の結合特性の類似性より、これらの組織でのシグナル

伝達には共通のメカニズムが存在することが示唆された。脳膜画分にmPRαが検出さ れ、プルキンエ細胞およびGnRH2ニューロンに特異的な発現が観察された。

プルキンエ細胞は小脳における主なプロゲステロン産生細胞である (Tsutsui et al.

2011)。プロゲステロンは自己分泌と傍分泌メカニズムを介してプルキンエ細胞の発生

に関与する。プルキンエ細胞においてmPRαの特異的発現が観察されたことは非常に 興味深い。さらに、ALLO と脳膜受容体に相対的に高い結合親和性があることが実証

された。ALLO は松果体から産生される主なニューロステロイドホルモンである

(Haraguchi et al. 2012)。松果体はニューロステロイドを分泌する重要な器官である。

松果体からの ALLOの分泌は発生過程におけるプルキンエ細胞の発達に関与する。さ らなる研究によりプロゲンステロンまたは ALLO が mPRαを介してノンゲノミク反 応によりプルキンエ細胞の樹状突起の成長、スパイン形成とシナプス形成を促進するか どうかを証明することが必要である。脳における ALLO の作用が研究された。ALLO 誘発性神経伝達は、アルツハイマー病のモデルマウスおよび老化した正常なマウスにお ける学習および記憶機能の回復と相関する (Irwin et al. 2014)。マウスで脳の再生実験 においても ALLO はアルツハイマー病の病症を効果的に緩和した。最適化された投薬 計画と治療法により、ALLO の連続投与はニューロン新生とオリゴデンドロイド産生 を促進し、白質生成およびコレステロール恒常性のマーカーを増加させながら神経炎症

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とβ-アミロイド負荷を減少させた。さらに ALLO は、PD, 6-hydroxydopamine

(6-OHDA) ラットモデルにおけるパーキンソン病の認知機能障害を減弱させた

(Nezhadi et al. 2016)。まとめると、これらの観察は、ALLOが神経変性疾患における 認知減退を軽減することを示唆している。

mPRsは、ALLOの神経治療作用の潜在的なトランスデューサーであり、神経変性疾 患、特にアルツハイマー病とパーキンソン病の治療の潜在的な薬物標的である。この研 究では、脳プロゲスチン膜受容体が ALLO に対する比較的に高い結合活性を示した。

mPRs が脳においてALLOの作用を媒介するかどうかを明らかにするためのさらなる

研究が必要である。

GnRH2ニューロンの組織分布は、トランスジェニック技術を用いてメダカおよびゼ

ブラフィッシュにおいて詳細に調べられていた (Kanda et al. 2010; Xia et al. 2014)。

GnRH2 ニューロンは中脳の被蓋領域に分布していた。GnRH2 ニューロンは、運動の

制御や食物の摂取などに関与することが示唆されている。したがって、プロゲスチンは

GnRH2 ニューロン上のmPRα受容体を介してGnRH2 ニューロンの活動を制御して

いると予想される。

DES は同じ種の卵巣膜画分と比べ脳膜画分へは低い結合活性を示した。DES は

mPRα および mPRβ に対して高い特異的結合活性を示し、キンギョで卵細胞の成熟

を誘導することが示されている (Tokumoto et al. 2012; Tokumoto et al. 2007)。今回の 結果は、卵巣と脳の mPR タンパク質が構造的に異なる可能性を示している。キンギ ョmPRαに対する DES の非競合結合はスキャッチャードプロット解析によって示さ れた (Tokumoto et al. 2007)。mPR タンパク質がホモあるいはヘテロ二量体複合体を 形成する可能性が示されている (Pang et al. 2013; Thomas et al. 2007)。本研究の結果 は DES 結合部位は脳の中では他の mPRs との二量体形成によりブロックされている 可能性があることを示している。

本研究ではプルキンエ細胞と GnRH2 ニューロンに mPRαが特異的に発現してい ることを示した。脳における mPRs の中心的役割を解明するためにはさらなる研究が 必要である。また、膜受容体の組織特異的な差異が存在するため、mPRsの作用が様々 な組織において異なる可能性も示唆することができた。

第 4 章

透明キンギョ系統の作出

和金の雄魚を放精するためにヒト絨毛性ゴナドトロピン (250 IU) を注射した。次の 日に、雄魚の飼育水に ENU を添加し in vivo で 0.1 mM の ENU を室温、15 時間 の処理をした。ENU 処理は1 週間の間隔で 3 回行った。その後に、雌のミューズと ペアリングをさせた。自然産卵により卵が回収された。F1 の稚魚は閉鎖コロニーとし て育成した。コロニーから成長したキンギョの内、より透明なキンギョを選んで 2 回

(9)

以上の交雑を行った (F1~F3 世代)。産まれたおよそ半分のキンギョはミューズの表現 型を示しため、ミューズの表現型が劣性遺伝ではないことが分かった。しかし、その表 現型は高いモザイク性を示し、キンギョの体の一部分に銀色の鱗が残るものが多く見ら れた。我々は銀色の鱗の無いキンギョを選び出して次の世代を得るためのペアリングに 使用した。2 世代に渡る選別の後、F3 世代にほぼ透明なキンギョが得られた (図 4-2)。

これらのキンギョの交配により、全ての稚魚の体全体が透明である F4 世代のキン ギョ個体群を作出することに成功にした (図 4-3A と 4-3B )。これらのキンギョは数 ヵ月までに高度に透明であり、体内の器官を観察することができた (図 4-3B)。成長に 伴い体がわずかに白くなるが、12 ヶ月令まではほぼ透明であり、生殖器官を体の外部 から観察することができる (図 4-3C)。さらに F4 世代には目がない透明な変異体が複 数匹得られた (図 4-4)ことから ENU が変異を誘発したことが確認できた。ENU 処 理によりどのようにして透明度を向上させたのか、その原因については未解明である。

ゲノム中の変異遺伝子の同定は未だに簡単なことでは無いが、将来の研究により透明化 原因が解明されることを期待する。

結論

本研究では高度に透明なキンギョ系統を樹立した。この系統は繁殖性があり、実験モ デルとして使用可能であると考える。この透明なキンギョを用いれば生体試料中で組織 と器官の発生を研究できる可能性がある。この透明なキンギョは化学物質の器官の発生 への影響評価のための理想的な材料となると考える。

参照

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