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現代の絵本にみる「鬼」の研究

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Academic year: 2021

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(1)平成五年度. 兵庫教育大学大学院学位論文. 現代の絵本にみる﹁鬼﹂の研究. 教科・領域教育専攻. 言語系コース︵国語︶.  M九二四一五G.     高見 洋子.

(2) 序章. 目口  次. 第一節 鬼の衣服の形態. 鬼の衣服の意義. :⋮二六. ⋮九. ⋮七. よ. 第二節. 鬼の衣服の素材. 第一章  絵本にみる鬼の衣服. 第三節. 衣服からみた鬼. ・∴二一. ・・二九. 第四節. 一︿自然Vとく人間﹀の関係から一. 第一節 鬼の性格. −四一. 第二章  絵本にみる鬼の心. 第二節  絵本にみるやさしい・鬼.

(3) 第二節. 第一節 やさしさの意味. やさしい鬼の家族. やさしい鬼の住む場所. ⋮五八. ⋮五六. ⋮五一. ⋮⊥ハゴ一. 第三節. 第三章  鬼のやさしさの意味. 終章.

(4) 序章.  人物を評して﹁鬼のような人だ﹂と言ったり、 ﹁鬼に金棒﹂などの﹁鬼﹂の語を用いたことわざは多い。言葉. としての﹁鬼﹂はあるイメージを伴って今日でも生き続けている。そもそも鬼が日本で最初にあらわれたのは﹃日. 本書紀﹄であり、 ﹁鬼魅︵おに︶﹂という語であった。以来今日までの壮大な時の流れの中、鬼はさまざまに伝. えられ、語られつつ脈々と生き続けてきているということができる。民衆の中に、人々の心の中に生き続けてき. たものであるからこそ、人々の思想や願望、また語り伝えてきたその時代の人々の深層心理が鬼に対しても色濃 く反映されているはずである。.  今日その鬼がどのようにとらえられているのかを探ることは我々の今をとらえ直してみることに繋がるのでは. ないだろうか。鬼を語り継いだ歴史から、我々の今に何かをくみとっていく材料となり得ることでもある、大変 意義深いことであるだろうと考える。.  そこで、本研究は現代の絵本にあらわれる鬼を通して、今日の﹁鬼﹂を探る一つの手段としたい。そのなかで、. 人々がさまざまに描き続けてきた鬼の、現代のとらえられ方の様子に的を絞り、現代において鬼が絵本の中にど. のように描かれているのかを問題にしていきたい。そこから現代において人々にとらえられる鬼像を明らかにし ていく一歩を踏み出すことにしたいと考える。.  鬼に関してのこれまでの研究は、 ﹁鬼とは何か。﹂という疑問に対して、民俗学的立場からの研究が多く成さ れてきている。.  例えば、柳田国男は山や河水の妖怪についての論のなかで、神の零落したものという見方を示している︵注①︶. 折口信夫は﹃鬼の話﹄のなかで、鬼は海の彼方からやって来る常世神と同類のものであったというように述べて. いる。                                         ︵注②︶. 一. 1. ︸.

(5)  また、小松和彦は、鬼を﹁妖怪﹂のうち人間に対して直接に危害を加えてくるという点に典型的に示される、 強いマイナス価を帯びた超自然的存在という見方を示している︵注③︶。.  一方で、馬場あき子は、このような鬼の原像追求のなかに民俗学の一分野を見ることは、今日ではすでに常識. となったことであるとしながらも、これに対して、日本の鬼が土俗的束縛を脱し、その哲学を付与されたのは、. 中世において鬼女︿般若﹀が創造されたことをもってはじめてとしてよいと述べ、文学のなかに現れる至論を展 開した。. 仏教系の邪鬼、夜叉、羅刹の出没、地獄卒、牛頭、馬頭鬼の践唇︿仏教系﹀. 山伏系の鬼、天狗が活躍する︿修験道系﹀. 山人系の人びとが道教や仏教をとりいれて修験道を創成したとき、組織的にも巨大な発達をとげてゆく. 日本民俗学上の鬼︵祝福にくる祖霊や地霊︶を最古の原像とする︿神道系﹀.  そのなかで、鬼の系譜を簡単に分類している。 ① ② ③. 身輝系﹀. 怨念・憤怒・雪辱などを契機にその情念をエネルギーとして復讐を遂げるため鬼となることを選ぶ︿変. ④ 放逐者、賎民、盗賊などみずから鬼となった者︿人鬼面﹀ ⑤.  これらの  よ  う  に  分  類  し  、 ︿王朝期の説話にあふれる庶民的エネルギーは﹁鬼﹂どもをささえたポテンシャリティ. iであっ  た  ﹀と述べている︵注④︶。.  その他にも、昔話論のなかで鬼像について述べられたものや、昔話の深層心理について心理学的立場から鬼を とりあげる論もある。金工史という物質的な視点から鬼を解明しようとする論もある。.  さまざまな視点からの鬼像や、鬼とは何か、といったことに関する研究が成されてきている。しかし、現代に. おける鬼をとらえるものは数多く見いだすことができない。絵本を評した作品論や、鬼の変遷を追った論のなか. 一. 2. 一.

(6) で、現代の鬼に関して若干であるが述べられてはいる。 れる。. そのなかには、現代の鬼の人間化を指摘するものがみら. それが、中世の差別語とでも言えそうな現実化を経て、近世そして現代へと、鬼はますます人間臭を強くし ながら、繊細な存在へと変質を続けている。 ︵中略︶. 食欲旺盛で、村人たちがその恐ろしさに震え上がるという形相はしていても、この内側には、繊細な精神が. ゆらめいている。超人的なスケールは既になく、﹁鬼﹂の言葉に代えて、 ﹁人間﹂といわれたところでそう. おかしくはない。                                   ︵注⑤︶.  ﹁超人から凋落したもの﹂とも述べているのだが、現代、鬼は凋落し、人間化してきているといえるのか。こ のことについては、絵本にあらわれる鬼を分析するなかで検討していきたいと考える。  そのため、鬼のとらえられかたを分析していく視点について述べたい。.  鬼をとらえる視点として、 ︿自然﹀の世界と︿人間﹀の世界の大きく分けて二つの領域を設定して考えてみた. い。 ︿人間﹀化ということに対峙するものとして鬼が︿自然﹀の側に存在するものととらえるのか、人間界に存. 在するものととらえるかの見方である。その場合の︿自然﹀とは、人間が支配する世界を除き、人間にとって未. 知なるもの、人間が文化として発達させてきた科学や技術のカをもってもなおわりきれない部分をふくんだ領域 全体を︿自然﹀と考えたい。.  この︿自然﹀に関するとらえかたとして小澤俊夫氏の昔話における論を参考にしたい。.  小澤氏は昔話において霊力をもったものや、魔法をかけられ動物にかえられたものと主人公との関係から、ヨ ーロッパとの比較において日本の昔話の自然観を次のように述べている。. 一. 3. ︸.

(7)  ︵ヨーロッパの昔話は︶.  つまり、人間も動物も、すべて中心にいる神によって統御されている。動物は、魔法という、神に逆らいな. がらも、終局的には神に帰するカによって強制されて存在しているのであるから、やはり神によって統御さ れているといってよい。だから、人間が動物を徹底的に殺すということがないのである。 ところが、日本の昔ばなしでは、人間と動物の関係はまったくちがう。.  つまり、人間は無限定の自然の中へ放りだされている。そして、動物は、その無限定の自然の中で、霊ある. ものとして存在し、どこから人間界へ攻撃をかけてくるかわからない。あるいは、単に気味悪いものとして. 現れるかもしれない。現れる姿もさまざまである。あるときは猿の姿で、あるときは蛇、猫、狼、⋮⋮。.                                             ︵注⑥︶. 自然界 人間界 神. 伯. 刺 、. 、. 、. 、. 、. 、. 、. 、. 、. 人川W. 窃 然 界. ヨーロッパと日本の昔話での自然界と人間界の関係を図のモデルように示している。. 心. 助 レ. 6. 4.

(8)  昔話における自然と人間のとらえかたであるが、鬼の︿自然﹀性と︿人間﹀性の範疇を氏の日本の自然観を参. 考にしたうえで、考えていきたいと思う。ここで、はっきりと定義づけてしまうことはできないが、絵本の鬼の. 分析に沿って、確立していくことにしたい。資料とする絵本は、戦後において出版されたものを使用する。しか. し、収集していくうちほぼ一九六〇年代以降になった。これは、現代よく読まれている絵本を使用することにな ると考える。.  第一章では絵本に描かれた鬼の衣服に注目し、衣服を分析していくことにより、鬼の姿、外観からみたとらえ. られかたについて検討したい。第二章では、鬼の内面の描かれ方をみていく。やさしい鬼を中心に鬼のやさしさ. を考察したい。第三章は、やさしい鬼の住む場所、やさしい鬼の家族を分析し、やさしさの意味を明らかにして. いく。そのなかで、先にも述べた︿自然﹀とく人間﹀の視点でのとらえられかたを考察する。.  なお、本稿において引用する書名並びに文章については、そのまま引用することを原則としているが、絵本か. らの引用文は愚婦の関係上一々断らず改行している。引用文中の﹁︵中略︶﹂は引用者による。また、研究対象. とした作品についてはまとめて巻末に掲げる。特に断りのない限り、文中の作品名は巻末の資料に掲げるものと 同じである。注については、各節または各章の終わりにそれぞれ掲げた。. 注①  ﹁妖怪談義﹂ ︵﹃定本柳田国男集 第四巻﹄︶筑麿書房 一九六八・九 二八五頁. 注②  ﹁鬼の話﹂ ︵﹃折口信夫全集 第三巻﹄ 古代研究民俗学篇二︶中央公論社 一九六六・一 三頁.    常世神とは一畳はわたしが仮に命︵なつ︶けた名であるが、1海の彼方の常世の國から、年に一度.    或は数度この國に来る神である。常世神が来る時は、其前提として祓へをする。後に、陰陽道の様. 一. 5. 一.

(9)  式が這入ってから、祓への前提として、神が現れる様にもなった。が、常世神は、海の彼方から来.  るのがほんとうで、此信仰が攣化して、山から来る神、空から来る神、と言う風に、形も攣って行っ.  た。此庭に、高天原から降りる神の観念が形づくられて来たのである。今も民間では、神は山の上. 注⑤. 注④. 注③. 小澤俊夫著﹃昔話とは何か﹄福武書店 一九九Q・七 一五三頁. 岡田純也著﹃子どもの本の魅力﹄KTC中央出版 一九九二・九 二九〇頁. 馬場あき子著﹃鬼の研究﹄筑摩書房 一九八八・一二 一四頁. 小松和彦著﹃偲霊信仰論一妖怪研究への試み﹄ありな書房 一九八四・八 二一六頁.  から来ると考えてみる庭が多い。此等の神は、實は其性質が鬼に近づいて来てみるのである。. 注⑥. 一. 6. 一.

(10) 第一章. 鬼の衣服の意義. 絵本にみる鬼の衣服. 竺即一節.  鬼は絵本の中で一体どのような衣服を着ているのだろうか。鬼について考えていくに当たって何故まず衣服に. 注目するのかを述べてみたい。鬼が、いかにも鬼であると誰にでも分かるところを挙げてみると、角がある、牙. がある、体が大きい、着るものが違うなどと、人間と比べて違っている部分が指摘できる。逆に考えると、その. 違いは意図的に人間と描き分けられている部分であるといえる。角や体の大きさは鬼自体の体そのものの特徴で あるが、では、衣服はどうだろうか。.  角があれば鬼であるとすぐに結び付くほどに、昔から変わることなく角は鬼のシンボル的なイメージである。. そのような角に対し、鬼の着ている衣服はさまざまに描かれている。また、鬼を思い浮かべるとき、着ている衣. 服も人によりさまざまなのではないだろうか。この違いがなぜ起こるのかを考える時に、衣服のもつ重要性が確. 認される。衣服はさまざまに着せられているのである。何らかのイメージや、こだわりをもって衣服はいわば自 由に描かれる。.  それゆえに鬼のとらえられ方を探るには、衣服は適した材料となるのではないかと考える。その衣服がどのよ. うに描かれているのかを分析していくことで、現代の人々が鬼をどのようにとらえているのか、といったことを 読み取っていきたい。この鬼の衣服を、現代の絵本の絵に見ていくことにする。.  絵本は絵に因るところの大きな、視覚的な面にも重きをおくものである。主に子どもを読者とし、誰もが幼い. 一. 7. 一.

(11) ころに見たり読んだりした経験があるのではないだろうか。子どもはもちろん、大人になっても懐かしく思い出. すことのできる、広くたくさんの人に親しまれる性格のものである。個性や独創的であることを尊重するような. 文学作品とは違い、子どものころから多くの人に親しまれてきた絵本の絵に特に注目してみたいと思う。.  絵に描き表すということは、描こうとする事柄に対してのイメージをはっきりと持っていることが必要である。. 文章で表現する場合であれば、それほど詳しく書かず曖昧にしておき、読む側の想像に任せるという書き方が可. 能であるが、絵ではそうはいかない、文章は曖昧であっても、絵には具体的に表される。絵で表現するためには、. 細かい隅々の部分まで、そう描いた何らかの思いや根拠があり、それが反映されているはずである。従って絵か. らその対象についての思い入れを読み取ることができるのではないだろうか。もしも絵を描く人が意識して何か. の根拠をもって描いたのでなく、ある絵が描かれているとしても、現にそう描いたという現象から、無意識のう ちにそう描いたという、心の奥底にあるイメージが浮かび上がるのではないだろうか。.  しかし、本稿では描いた人個人の、その絵に込あた意図を探るのではなく、絵本を描いた人の鬼の絵を通して 日本人のもつ鬼のイメージ、鬼のとらえ方へと近づいていくことを目的としたい。. 一. 8. ﹁.

(12) 第二節 鬼の衣服の形態 一 衣服の分類方法.  絵本の鬼の衣服についてまず形態から検討していくが、人間の衣服をもとに分類を行いたい。絵本の中で鬼は、. 人間の何倍もの身長がある巨大な身体をしていたり、人間の子どもと同じぐらいの小さな鬼が登場したりもする。. 人間と同じ背かっこうの鬼もいる。いろいろな大きさの体つきをした鬼が描かれているが、人間と鬼は、頭の下. に胴体があり手と足がついているという体のつくりは、大体同じであるといえる。同じような身体に服を着るの. であるから、人間でも鬼でもほぼ変わらない衣服を着ることになる。鬼が人間の衣服に準じたものを着ていると. いえる。従って、人間の衣服の分類方法を鬼の場合にも使用することが可能であると考える。.  それでは、人間の衣服の形態の分類がどのように類別され、行われているのかを次に挙げる。.  例えば、橋本貴美子氏によると、被服を類別する基本的型式として四つの型式を設けている︵注①︶。   ①腰布型.     腰のまわりを被う型式のものである。形態は腰部前面のみおおうもの、腰まわりを巻きおおうもの胸部.     から裾までおおうものなどもあり、材料は樹皮、草葉、皮革、布などである。発達の歴史からみれば熱.     眼柄原始型に属するもので、現代ではジャワのサロン、ビルマのロンジi、日本の袴、腰巻き、洋服の     スカートなどがこの型式のものである。   ②掛布型.     長方形または半円形の布を肩に掛けて、胴の部分を被う型式のものである。この型式の代表的なものは.     けさ型といって、一方の肩に掛け、他の肩をはずした形態を特徴とし、熱帯系に属するもので、現代で. 一. 9. 一.

(13)   はインドのサリーがその代表としてあげられる。両肩に掛ける型式のものには、ジャワのスレンダング、.   世界各国の肩掛けなどがある。マント、ケープの類もこの型に入れられるが、これは両肩に掛ける形態.   をとっており本来の掛布型とは異なり、次の貫頭衣型衣服の変形として考えられる場合もある。 ③貫頭衣型.   布に頭の通る穴をあけて、着装する型式のものである。穴のあけ方としては長方形又は円形の布の中心.   部をあけたもの、中心部に直線の切れ目を入れたものなどがある。これも主として熱帯系から出発し、.   進化したものであるが、現代この型の代表としては、アンデス山地のポンチョがある。現在用いられて.   いる打合わせのある洋服や和服は、貫頭衣の前面を切り開いて、着脱に便利にした型式のものと考えら   れる。. ④体形型.   身体を体形に応じておおう形態のものである。掛布型、貫頭衣型から進化して、上肢をおおうために袖.   が作られ、下肢をおおうためにズボンの型式ができ、胴もその形態を明瞭に表すような形態をとるよう.   になった。体形型はさらに上体と下肢が一体となっている型式のものと、上体と下肢を分離して着装す   る型式のものに分けられる。.   上下連続している一体型式の中にも二種類あり、和服の長着、アイヌの服装などのように、これを体に.   くくって着用する場合とガウン、外套、羽織などのように、締め付けないでゆるやかに着用する場合と.   がある。上下分離の型式はジャケットとズボン、ジャケットとスカートなどで、現代服装の基本型式と     な っている。. 次に、高橋春子氏の場合は着装の型式︵形式︶を大きく、遊離型と体形型に大別したうえで、次のように分類. 一. 10. 一.

(14) している︵注②︶。.   ①遊離型  ︵身体の線をそのままに表現しないで、服装の型によって着装の美しさを表そうとする。︶.    ◇巻きつける型.     主に、長方形・半円形などの布地を身体に巻きつけたもので、古代エジプトにみる原始衣の腰布︵ロイ.     ン・クロス︶をはじめ、古代ギリシアのキトン、ローマのトーガなどが代表的なものであり、現代にお.     けるインド婦人のサリーなどもこの型式に入れられる。その着想には、襲・ドレープによる流れるよう     にリズミカルな線の美しさが表現されて、優雅な服装美を形成している。    ◇肩に掛けおおう型.     肩を支点として、布地を肩から掛けて被う型式である。たとえば、古代ギリシアのクラミスは、長方形.     の毛織りで、戸外着であるが、肩に掛けて結んだりして留めている。また、中世のドイツにみる皇帝の.     盛装にも、ケープ・ストールの形態で使用されている、現代に至っては、マントにこの様式が用いられ     ている。.    ◇頭を通す型.     貫頭衣の型式とは、長方形・楕円形の平面布地の中央にあきを作って頭を通し、肩に支点をおいて着装.     するもので、エジプトのカラシリス東洋の禰福︵りょうとう︶、南アメリカのポンチョなどがある。. ②体形型.  体型にあわせて裁断・縫製したものである。これは、寒帯系衣服がその源流だといわれる。古代から現代.  に至る衣服の発達過程のなかで、育成されてきたこの衣服の形式には、一部式と二部式があり、一部式と.  は現代の婦人・子供服のワンピースドレス、二部式とは男子服の上衣とズボンのような形式のことをさし、. 一. 11. 一.

(15) もちろん一部式・二部式とも男子服および婦人服のどちらにも見られる。. ③包纒型.  これは、遊離型と体形型とが共存するものである。主に、中央アジアから極東の日本にまで分布している.  ものは、前あきであり、地域によっては袖のあるもの、無いものがある。さらに、帯を締めるもの、締め.  ないものもあるが、これは一応東洋服のカフタンといわれて、上体・下車を同時に包纒する形態である。  したがって、わが国の和服と称する被服の着装形式は、この型に属する。.  他にも衣服︵被服︶の分類は行われており、形式だけを簡単に紹介するにとどめておきたいのだが、谷田閲次 氏は、懸衣︵かけぎぬ︶、寛衣︵かんい︶、窄衣︵さくい︶の三つを設定している︵注③︶。.  また、蕾鵠ぎ旨巴氏は、衣服と気候の関係に基準をおいて、南方型、西方型、東方型、北方型の類型を定め. ている。?=ω自鋤9氏は、牢一巳口︿Φ原始型、↓﹁○官。巴熱帯系南方型、﹀目口。寒帯系北方型の類型を設定してい る︵注④︶。.  これらのように衣服の形態についてさまざまな分類がなされており、それぞれに設けた基準で型式が立てられ. ている。衣服の分類として統一されたようなものは見いだすことができなかった。それゆえ、鬼の着ている衣服. の分類に最も適すると思われるものを利用して行いたい。そこで、どの分類を使用するかであるが、後で述べる 小川安朗氏の分類を使用する。.  これまでのものを適さないと判断した理由を述べておく。.  まず、谷田氏の分類、懸衣・戸綿・字母の三つは、古代の世界各国の衣服を主において成されているものであ. 一. 12. 一.

(16) り、衣服の構造的な見方から類型の基準が立てられている。個々の具体的な衣服を問題にする鬼の場合に使用す. るには大まかすぎていて適さないと思われる。また、臣口ω皆臼巴氏の分類は衣服と気候の関係に基準がおかれ. ており、O出ω什﹁警N氏は、原始型を設定したうえで地域性や気候と衣服の関係を基準に定めてあり、どちらとも 鬼の衣服の分類に使用するには適さないであろうと思われる。.  橋本氏は、被う体の部分を基準に、腰の部分を被うものを﹁腰布型﹂、胴の部分を被うものを﹁掛布型﹂とし. て分けており、高橋氏は、身体に巻き付けるか、肩に掛けるかの違いに着目して﹁巻き付け型﹂と﹁肩に掛け被. ﹁. う型﹂を設けている。どちらの分けかたも、着る側の体の部位や着装の状態も含めた基準がおかれている。.  小川安朗氏の行っている分類では、腰などに巻いて垂れ下がらせるか、肩から掛けて垂れ下がらせるかの違い. 13. 一. を区別した型式を立てず、両者を﹁垂布型﹂にまとめている。そして、腰に巻き付けるものとして別に﹁腰紐型﹂. を設定している。こちらのほうが着る側の要素よりもより衣服に忠実な分類であるといえる。小川氏の分類は、. 複数の基準をもちこまずに、衣服の形態から純粋に判断したわかりやすい基準で類型が設定されている。その点 から小川安朗氏の行っている分類の方法を利用したいと思う。.  小川氏の分類した五つの型式だてはそのまま利用し、鬼の衣服を分類したい。総ての衣服がうまく型式の中に. 当てはまるとは限らないので、鬼の衣服に合わせた基準を付け加えて分類を行うことにする。そこでまず小川氏. の型式で、簡単に説明がされている部分を、氏の本文中から抜き出し︵破線囲み︶、その後具体的な鬼の衣服を 分けていく場合のさらに細かな基準や条件などを独自に加えて説明していく︵注⑤︶。.

(17) 1嘔肱姐阻刑土. gなどまでを含む。                                    ⋮. ⋮線状体を環状形ΩH。三鷲に巻く型式、ビッグバンド・ウエストリングなどから、ネックレース・ブレスレッ⋮  ⋮.  細い紐状のものを腰部に巻きつけるだけではなく、幅のある布であっても、いくぶん細く絞って腰部に巻きつ. ける、揮の形をしているものを含む。腰部に巻いた紐状の布の前方や後方に布片などを垂れているものも、揮の. 形とする。ただし、腰の周りを包むように幅の広い布を巻く形は腰紐型に含まない。また、小川氏の分類ではネッ. クレスやブレスレットといった装飾品も含めて基準が定義されているが、ここでは衣服だけを対象として分類し. ていくものとする。以下、すべての型式においても同様に鬼の来ている衣服だけを対象にする。. π且垂士叩刑土. ⋮環状形の腰ひもなどから、布を腰に巻いたロインクロス、自然物・布片などを垂下げた︵<Φ困叶一〇鋤一︶型式の︸. ⋮腰みの・エプロンなどがあり、全身的に布地を巻き垂れる形式のトガ・パラ・サリー、純然たる垂れ下がり⋮  ⋮のヒメーション・ガウン・ローブなどを包含する。.  身体のどの部分を被うかに限らず、布を垂れ下げて着装した形とする。 ﹁環状形の腰ひもなどから⋮⋮﹂と、. 小川氏の定義には、 ﹁腰紐型﹂と重複するところがある。しかしここでは﹁腰紐型﹂と重複するものは除き、紐. 状の布を腰に巻いたものを﹁腰紐型﹂とし、同じく腰に巻いていても幅広く布を巻いたものはすべて﹁垂布型﹂. 一. 14. ﹁.

(18) に含むこととする。. 胸部から下半身にかけて布を巻き垂れる形や、肩に掛けて巻き垂れる形なども含む。片方の肩だけに布を掛け て巻き垂れる袈裟衣の形もここに含まれる。. 皿皿田貝頭刑土. ⋮貫射して着装する方式を原則とする形態、たとえばポンチョ・キトン・禰福などの型式。この型式を前割り⋮. ⋮にしたマント・うちかけなども、この型式に含ませる。                      ⋮.  大きな布の中央に頭を通す穴をあけて着装する形をとるものとする。頭を通し、わきの下で前後の布を縫い合. わせるもの、手の下を縫い合わせて袖のようになっている場合も含むことにする。小川氏は、マントやうちかけ. などの貫頭衣にごく近い形で、前を開いた形のものを含めているが、ここでは、基本的に前で開いているものは この型に含まないことにする。. 脚払剛闘囲刑里. ⋮前割り、菊合わせ、帯しめを原則とする型式、たとえばトルコ風のカフタン、和服・アイヌ服など。.  前の部分で、衣服が開いていて開閉できる形のものである。前に紐があり結んで閉じたり、両側から重ね合わ. せて留めたりし、前で合わせる形で着装するものとする。また、前開きの形ではあるが前で合わせずに開いたま. 一. 15. 一.

(19) ま で 着 装 す るものも含む。. 算V体形型 ⋮体形に準じた型式。現代洋服、原始礎型被服︵注⑥︶などである。⋮. 身体を体形に応じて被う形で、現代洋服の形を基準とする。体形に応じてというのは、衣服が体形に添うよう. に立体的に身体を包んでいるということである。上着とズボンなどの組み合わせのように、上衣・下衣に分かれ ているものや、上衣だけ、下衣だけを来ている場合でもよい。. 二 鬼の衣服の分類.  先の基準に従い、絵本に描かれた鬼の衣服を一∼Vの型式に分類していくことにする。型式ごとに鬼の衣服に. ついて詳しく検討してみたい。図番号で示した絵本の絵の例︵図1∼25︶を掲げておく。なお、図に抜粋した作 品については資料編に記した。. [. 16.

(20) 1腰紐型.  ガ 〆  一・i   ぞ ロ メ し   ゆロご. %笈へ,,〆. ド臨.        純、        彗、,        、\       へ、        ヘロ 縛毒.’蔦λβ鳩睡  論 超  ギノコ嬢”回縁∼       ﹂     ﹂ . 霧馨武 型、㍉L.凝醗鞭鮎祭 藁・瓠. ・ . n三輪慨 燕  、怠輪駝,ヅ〆㌧∼潔.        縛. @凶.  川  、。         . 、、璃癩三極・.    →穐.. ! ’ ㍉.   . 1. 図. @ .   荊聡阜ザるセ. .瀦蜷. ’. 鞭罎 ︸. 織フ気︶.   ﹂ノ謝  .グ・ 一Y、卿/. 弓ζ.丁. 1.. 憾 鼻’i●. 麟’、曝. 髭、. 響. 隅灘 で 纏. ・4撚鰯騨撫焔傅“躍. 雲’1. ’. 磁.継母. トU    、ヤ ﹁レ5ノ, 引.. “. 趨. 灘  ..〆.    @ . 2 図.

(21) 灘欝鱗雛γ. F.∂獣黛. ・ヌ. ミ. ⋮“. ル断書騰,. 3 図. ⋮懸り 纐. 4 図.

(22) 冒且孟坐士叩刑工. ノ. 5 図. 6 図.

(23) 駕. 灘攣慧,. 辱響、. 璽、憲 縄 撃. “殴 ド♂ `. 照し、宮. 蒐 至﹁一  ﹂.  “ ,靴ボ. ー細. 纏!. 7 図. 8 図.

(24)  難・. .の. 琳航蚕. ・.魏夢.  勢. 、・ミ.・㎞. 0 1. 図. 9 図.

(25) 噺. 遡、堰 濤.、. づ・睡. 、. 厘.. ツ. 劇・. 一. 鋭. 、. .﹁. .﹄. 駅、. .癖.ド,・.. ,璽・ ﹁W. .制,.㌃. 無.. 羅.頴 、. ・.. 幽・. クオ 湛.. ・縣.、.  三灘τ ん誼. 姦. 職轍欝 聖・、,層けド. 彫. ,鰍、. 二,W. 議∼、,.  一曜・..  けヒ. ,、 翫鮭r. J・.. 婆 層魑. 渉脇,轡’霊三姦. 塚・轟鍔写^. 藁,.  響.、 日 へ峨”﹂.・嚢が. 一瞬︸. ・鰹纒、灘.     ,蹴. 鄭. 諏.,織 眺璽濯へ. ノ. 鶏. ㍗・ . 巴. ・描耀. 出. 、窟畠. ・磨 ,繊.. ・’㌔㍉、期. ・華“鰻鯵、. 興塚灘願い、. 魏. .㌣...蔓.  . コ   こア. −・雛⋮曲’.  鎚く響. 露欝、・ 々’. も、 ザ西 野,圏,. しべ㍉.  ニギコは ぬ む .  慰 露.﹂ 愚. 画 曜. ,陽. 記. D据..  筋﹂ 些.. 轡・. C嘱自.. ,.娩. 順. .﹀ 盤.泌薄 勢灸犠脳. 轟ェ. さぱげ. 嚇織 ・難耕  一 腿 5          ,b. L3     伸’. 謄. 1 1. 図. 2 1. 図.

(26) ● ●. T. ”.. φ. .蟹瓠織.  . 噛噸、鰯鱗     w . 11 医. 3 ユ. 図. ●.

(27) 難. 醜. ,. ﹁. 遡男@暢 r、・添、.    心・. ミ. 薬. ,k.. 震・媒ひ鋭翌 遊嘱.﹂期・醗蝉. 〆. ’臼≒碑. .孝彙. /・一、. 繍−. 〆ζも  ’. ・,. ら. \ @宇部\. “掌ギ錘、. @             の や げぐ. ,卍.    ゆ. 5獲麟. ハ,. ミ .鉄、㌧翫、. もがぬメエ. .塾. 惣、. 論.. 9     一     ’. 4’ 論. 騒メ. ’、竃﹁,い農. ヒ−謝難・、し  綿’酬㌦. ド   どら      じ          なへ むヤ    へ                        タ.  サ篇’ P 哨嚢傾繍. 琴嫁”望、ド声纏謹三. 語 一. 醗騨. 壽 ・膨藷 鍵 撚,輔 .轟く    躍  、. ﹂♂¥. 7、.. 鰹.冠躍,蒙猫撫. 鍵馬 欄繁欝難,  ’.   .♂●臨. 〆. 臨.. ォ礪層,. t. .  繋タ姻・鋼鱗鱗.,,船   ・“。 串 . 齢離. 願姦 、、、鍛      ...〃.’  鵬  鶴    堺 かき , 、、既 ぞウ. /’/R譲㎜. 灘. ぱ    ゐ ゑ. ノ  霧 霧    ロ し ら  るロ     グ.    .胱卿撫郷賜   ’︸拷φ も      胤談.  ”メ.     穀∼ 影. 、ハづ野.          〆7,・一/考ノ. 、9ヤ遮 ゑ やや. 騰、〆 ︾\、ぎ. 罫\か、、. し.  . 1. 6. 図. 5 1. 図.

(28)    しおごジしご. 包﹂←≧駐. へδ/、くノ⋮     ㌧    鐙. 欝欝,響鷲、澱⋮陰餌壷罐・. 1. 瀞欝瑠.   繁毎. 論議.翠轡.・伊嗣,麟 へ. 華竃照,.   − ‘丁 ・’・8,’. 嚢蕊一論難日申喋. 2 晋 圏 腿. ︹、い卦一,蜘総鶴に籔験郵婁. 晒鱒騰 諾冒恩. 勲灘婁隔灘,玩 襲職欝騨、 つ   \聖   γ﹁・. 臓. 軸・聡. 駕撫護摩葱.鷲、、.           図H刈. 灘麟灘. ?. 藩蟹/    @ @ @ @、. ’. ‘.        く一 難. 駆. 図H。。.

(29) 趨齢 肇肱. n... .、9ほ. ・建       ﹂﹁ 吐.. ︸. し.﹁鰺蝉 、欝毫饗携,回.      グ馬  く心−.       ♂ 6         ヒノザ. @揚鍵窮. コ エ  . 、. d訪vぐ. .諺Yα. 舞.. コ         ぬノ            い ヒ.        よハフ   お.          僻    ︸ ・.﹁・ 鐵   .談回気塁轟  /4ガ .,−・﹄./叉. 、.   . 、. ︷廊 鰻e .雨, , /・纈宏・ 、 6. 胴. 凬V、 ・.. .凱ドベ才責.亀・    5燭r. ・・禦..理ポ.・.辱⋮   ’.・.騒//r ジ. \、.      ,\嫉,、識繍纏避. ボ︸.   @ . 1. 9. 図. 磁∴。. @灘.  。  を  .  .  ’  ま  へ     ば 琵. 讐勲糠回診融灘。 . 維⋮距. 、弓. t伽・.     陛.    餓⋮藻鱗焼︸︸三議5 b購叩.     \鰍.   \へ.. 瓢\. 灘購野.惣\、. ピ’. f.           \. ρ. ﹀. 講気態...   .,や  ・轟一. 聡瀬灘羅、難盤. 痴N. ∵〆 ヤ.               一  .   、   、. 鵡.脈. 媛雛鍵・. 鎌 ,. 説礎難.冨. 鍵膨騨一論難. ﹂・.・. 野 饗     ン陰、﹁憲 脚 護 塾。翻 ⋮獺纒. 欝絶 、欝r髄. .源... . ,‘,ド盤ζ  ,蝉 ■. \. 聾.鳩縄昭 認 、 購 う   藁.

(30) 蒲. ,. ,. ・﹁・b9. ●. ・磐. 肇. 鷲働,幽. ’. ㌧. 馳,. 占. 一糊. 亀. ・︵. ハ〆. 斜 .♂ハ. 、. 霜. へ〆. 簾ξ r点. ♪亀㌘... ・、. 転.  ...り3.〆. 、. ・誌、. 諺霧ク. ス. .♂. . F印騙 べ.託 .. 5 .  φ㌧      . 暫、輸噛. ㍉●.    ‘ ノノ 繕   ・. 越.:出.、﹃,−診. 寓. 彗,. 談. 焔離鍵 弱鞍. ‘,. 、§患.既憩f,裟.. 乙へ.. 嘘.・. 籍.  ,./. ﹂毎1. ・. .・. ・い、. 、獲灘、魏便器. ♪3τ耐 題御﹃蒙よ、、. 講. ノ.η. 、. 、.. ,闘乱. 宰 軒. 晶,.噛.. 4.囎轡   醒  顛. ⑥.    /琢4. 、−屡       呉  一罐撚、   . ∠.. JJ.    姥廼藍   〆直  噸.  ノノ. 蝋 9 銀. \謬. ’. 5.  感吊 P −誓、 ﹁マ  、  h込卜f.  4’. q. .e. 工. 2 図. 2. 2 図.

(31)

(32) 3. 2 図. 4 2. 図.

(33) 輝.. フ  ﹁. ρ. ノ. 紀饗・卿.. 頓     ㌦. 擁.. 恒と¢ ︵信. 奪︶室.. 5. 2 図.

(34) 了1晒肱姐皿刑里.  鬼の衣服では、揮をしめているものが十九例当てはまる。揮とひとくくりに言って・も、形は様々である。腰に. 巻き付けて余った布、もしくは初めから垂らすために長くとってある布であるのかもしれないが、それを前に垂. れ下げているものや、垂れ下げていない形のものもある。特殊なもので、揮と考えてよいか蹄躇された例には、. 図2がある。前方に垂れ下げた布が足元まで届いている。また、多少幅広の布ではあるが、絞って細めになって. おり、腰で固定して垂らすというよりは、腰に巻き付けているといった感じが強い。それゆえに、揮の範囲内と してとらえる。.  図3では、揮の前に垂れた部分が、虎皮の模様である。図4も毛皮らしき布を後ろへ垂らしていて、腰の部分. で紐状のものをその上から結んでいる。垂れている布は腰の周りを巻き包むよりも、主に後ろへ垂れているよう に見える。であるから、腰紐に布を垂らす形として考える。. πh垂+仰刑工.  垂布型に分類されるものとして、スカートのように、腰から下に布を巻く形が四〇例、袈裟衣の形をした、一. 方の肩に掛け布を巻き垂れる形九例、その他に蓑があげられる。まず、スカート状に腰から下に布を巻く形は、. 代表的な例では図6のようなものである。胴の部分で紐で縛って留めているもの︵図7︶と、紐などで縛ってい. ない図6のような例もあり、全部で四〇例と、数多く見られる形である。スカート状のもののなかでも代表的な. 例とは少し変わっているものがある。図8は布をゆったりと幾重かに巻いているようにみえる。小川氏の挙げて. いる、古代ローマのトガの布の流れを想起させる。図9でも腰から布を巻いて垂らしているようであるが、布を. ねじって巻いているようにも見える。スカート状では、腰からひざの辺りまで垂らしている場合がほとんどであ る。.  . 17.

(35)  次に、袈裟衣の形をしたものを着ている場合である。片方の肩で結び目があり下へ垂れており、胴の部分を縛っ. 一. 18. ている︵図10、11、12︶。蓑を巻いて身につけているものもこの型式とする。図13では、上半身と腰のあたりに 蓑 を 巻 い て い るようである。. m坦岳貝謂収刑土.  頭を通す穴をあけて着る貫頭衣の形をした衣服を着た鬼は、三例ある︵図14、15、蛤︶。.  図14は、はっきりとした線で描かれた絵ではなく、少々分かりにくいが、一枚の布に頭を出してすっぽりとか. ぶっている衣服のようである。よって、貫頭衣の形として考える。南米のポンチョであれば、普通は手が隠れて しまうくらいの大きな布地であるが、それとは違い、手の露出部が多い。.  図15は、前に開きがなく、やはり頭を出してすっぽりとかぶったような形である。胴を紐で縛って、体に固定 している貫頭衣の一種としてみる。.  図16でも前開きではなく胴で縛って体に固定している。袖が半袖ぐらいの長さにあるようにも見えるが、前開. きがなくひざの上までつながった布地であることから、貫頭衣らしい要素をもっているとみて、この型式に分類 した。. W⊥剛畠闘囲型.  前が開いている形の衣服をこの型式に分類した。そうすると、和服類、ちゃんちゃんこ、の二つの形態がこの. 型式に当たる。まず、和服類を着ている場合である。和服類は、上下二部に別れている場合と上下が一体になっ. た形態とに分かれてくる。図17、18のようなものが上下二部式とし、どちらも下衣は指貫のようである。.  上下一体の着物の形は八例で、きちんと前を合わせて着るのではなく、ただ羽織っているだけの場合もあり、.

(36) 図19、20がその代表例である。. 特殊な例もある。図21はいわゆる着物の形ではないが、前開きで胴で縛らない形をしている。とにかく、前開き の衣服である点に注目し、前開型に含めた。これら和服の類が挙げられる。.  次にちゃんちゃんこがある。前開きを合わせずに開けたままで着装している。羽織るようにゆったりと着てお. り、体にぴったりと合わせて着装していないので、体形型と区別し、前開型に含む︵図22︶。. V体形型.  体形型は体形に応じて被う形の衣服で、二本の手にそって袖がつけられていたり、二本の足を別々に被覆する. ズボンの形であったり、立体的な構造である。鬼の衣服でも、パンツ、上着やズボンといった、現代と同じもの. がある。パンツと呼ぶ場合の定義として、足の太腿から下が露出していて、布が垂れておらず腰から下半身にか. けてある程度体形にそって包んでいる形のもの、というようにする。パンツが鬼の衣服に最も多く、四三例が数. えられる。パンツの中でも代表的なものが図23や図24である。図24はパンツというよりも半ズボンに近い形であ. るが、上着は着ておらず、下半身だけにつけており、直接身体にはいたものであろうと思われ、半ズボンでなく パンツとして考えたほうがよいと判断する。.  図25はお父さんの鬼もお母さんの鬼も子どもの鬼も、全く現代の洋服と同じものを着ているとみてよい。これ らのような衣服を体形型として含む。. 19.

(37) 三 衣服の形態の考察.     一事例数. 19. 409i. 附. 計. 個々の分類をまとめると、次のく表−一Vのように一∼Vの型式にそれぞれの形態を分けることができた。す. 形  態. 一  i. べての型式に、鬼の衣服が分散することになった。.   腰に巻き礁れる  袈裟衣⋮ 斐  コ愚. 蹄. ハ表一.V 鬼の衣服の分類.. 型式. 1腰 紐 型. u垂布型     ﹁     ︸. 50. 一. 20. ﹁.

(38) V体 形 型. わからない. 訂. パンツ現代洋服. 344. 531. 74. 01. 541.  ここで、歴史的な観点からみてみることにする。本来の小川氏の分類では、1∼Vの型式に歴史的な観点を含. めてはいないが、鬼の着ている衣服の形態からみて、独自に歴史的な位置について検討してみる。.  日本列島において人々に着られていた衣服として、記述に残されている最も古い形態であるといわれている衣 服が、n垂布型の袈裟衣と、皿貫頭型の貫頭衣である。以下その記述の一部をあげる。. 21. 一.

(39)    ⋮其風俗不淫、男子皆露紛、以蟻溝招頭。糖衣横幅、但結束三連、略無縫。   婦人被髪屈紛、作衣如輩被、穿其中央、貫頭衣之。⋮⋮.               かい       ゆふ                  おうふく.   其の風俗淫ならず。男子は皆色を撮し、木綿を以て頭に招ぐ。其の衣は横幅にして、但だ結束して相連ね、.   ほ                                                 たんび                                        き.   略ぼ縫うこと無し。婦人は被髪し紛を屈す。衣を作るは血塗のごとく、其の中央を穿ち、頭を貫きて之を衣   る。.                                  ︵﹃三国志﹄巻三十﹁魏志倭人伝﹂︶.  三世紀前半、 ﹃三国志﹄巻三十魏書三十東夷伝に記された日本列島の人々の服飾に関する記述である。ここで. は、男子は横幅︵横に長い布︶をそのまま身体に巻く、袈裟二のようなものを着ており、女子は貫頭衣を着てい たと推定される。.  1腰紐型の衣服は、衣服として着られた最も古い形のものである。裸体から被覆装身へ移る最も初原的な着装 でもある︵注⑦︶。.  このように、1腰紐型、∬垂布型、皿貫頭型の型式に分類される衣服の形態は、原始から古代の衣服が現れて. おり、少なくとも日本では最も古いとされる衣服が含まれてくることになる。古代の人類が簡素ではあるが衣服. を着ていたころのイメージが想像される。衣服に伴って古いイメージも、鬼の身体を包んでいるようにも思われ る。.  そこで、1からVの型式について分類した形態を中心にして考えてみたい。歴史的観点からもわかるように、. 一. 22. 一.

(40) 1腰紐型から皿貫頭型では、一枚の生地を巻いたり、結んだり、穴をあけて身体を通したり、というように衣服. の素材に加工が加えられていない、簡素な型式であるといえる。それに対し、W前開型とV体形型の型式は、あ. る程度体型に合わせて素材を加工し、手が加えられた衣服の型式である。この点において、皿貫頭型までとW前. 開型との間には、違いがあるのではないかと考える。1から皿の型式はW、Vの型式に比べ、加工の程度が少な. く、もとのままの自然の状態に近い形態になり、W、Vの型式には、加工され縫製されているという意味では自. 然から離れて人間の文化に近づいている形態が含まれてくるとみてよい。このことにより、1腰紐型から皿貫頭. 型に含まれる型式を加工の程度が少ないという意味で、仮に、古い形態の衣服とし、W前開型とV体形型の形態 は、新しい形態の衣服とみることとする。.  このようにして二つに分けて考えてみると、1から皿の古い型式群は全部合わせて七二例、WとVの比較的新. しい型式群は六三例と、古い形態の衣服が過半数をしめていることになる。このことから、鬼は比較的古く、自. 然に近いものと考えられているようであるということができる。しかし、新しい衣服とみなすWとVの型式も六. 三例あり、古い型式と余り変わらないということもでき、特に古いものと考えられていないのかもしれない。.  ところが、ここで注意すべきことがある。それは、六三例あるWとVの新しい型式のうち、パンツが四三例あ. るということである。つまり、新しい衣服の大部分をパンツがしめている訳であるが、この鬼のパンツが本当に. 新しい服装と言えるかどうか検討してみる必要があるように思う。そこで、下半身を被う衣服である揮、腰に巻 き垂れるもの、パンツの三つを取りあげ、検討を加えたい。.  二つに分けた先程の区分では、揮と腰に巻き垂れるものは、古い衣服の方になり、パンツは新しい衣服の部類. に入る。揮と腰に巻き垂れる形の古いほうの衣服の二つは両方でたして五九例となり、それに対して新しい衣服. であるほうのパンツは四三例であるので、やはり古いほうの衣服が一六例多い。しかし、パンツは新しい衣服で. あるとはいっても、現代身につけるような下着としてではなく、鬼はそれ自体を衣服として身につけている。こ. 一. 23. 一.

(41) れは新しい衣服の着方であるとはいえない。揮と比較して、パンツという形態はより新しいとはいえるが、パン ツをはいているからといって新しい服を身につけているとはいえないのである。.  このことから、鬼がパンツをはいているということでは、より現代の人間に近いものを身につけているといえ. るのだが、その着方、身につけるつけ方では、現代の我々の着方とは違っている。鬼のパンツは人間の文化の動. きに伴い、揮からパンツへの変化をそのまま受け継ぎ、パンツが揮の代わりに描かれたのではないかと思われる。. そのため、パンツという新しい形態の衣服を身につけ、人間的であるのだが、その里方は人間と違い、揮の代わ. りにパンツが置き換えられただけであるという、一見アンバランスなようにも感じられる状態になっているので. はないかと考える。鬼を人間に近くとらえているという意味の人間性と、自然のものととらえる見方とが入り交 じっている状態が鬼のパンツにあらわれていると推測できるのである。. 注②. 谷田閲次・石山彰著﹃服飾美学・服飾意匠学﹄光生館 一九六九・六 二九頁. ﹃最新被服科学シリーズー 被服学概論﹄相川書房 一九七六・三 九一頁. 橋本貴美子・稲垣和子共著﹃被服学概論﹄建畠社 一九八一・六 七一頁. 注③. 樋口ゆき子編著﹃衣生活学﹄朝倉書店 一九九一・五 八頁. 注①. 注④. 小川安朗著﹃体系 被服学﹄光生館 一九七一・二 二一二〇頁. ﹁被服の礎型﹂の説明をそのままあげる︵二三三頁︶。.  小川氏の分類の引用はすべて同書によるものとする。. 注⑤. 注⑥.  人体をおおい包む基本的な被服の型式、それは環境条件に対応し、生活行動に適応するために、. 人. 一. 24. ︸.

(42) 注⑦. 間の体形に準拠し、生活衛生に順応する型式でなければならない。 服型式となる。. 小川安朗著﹃服装原論﹄光生館 一九六六・五 一一八頁. この意味で、礎型は、体形型の被. 一. 25. 一.

(43) 竺力一二紘即. 由廼のワ衣服のワ主糸材.  鬼をみて古いイメージを形成する理由には、形態のほか、虎皮の衣服であったり、また虎皮を思わせるような. 模様であったりするためということがあるのではないだろうか。実際に、絵本の中で衣服の材料に虎皮を意識し. て虎皮そのものらしく描かれているものや、虎皮をデザインしたような模様が使われているものなどは、数多く 見られる。.  獣皮を衣服材料として使用することは、主に狩猟生活を営んでいた時代から当然行われていたであろう。縄文. 時代初期の頃には既に衣服材料とされていたことが、縄文人の歯の研究などからも明らかにされている︵注︶。. 獣皮は日本では最初の衣服材料であっただろう。ここで、なぜ鬼の衣服の場合の獣皮が虎皮になっているのかと. いう疑問は残るが、なぜなのかは明らかでない。一説によると、陰陽道の思想より、丑寅の方角を鬼門とするた. め、鬼には、頭に牛の角が生え、虎の皮の揮をしているという説もあるが真偽の程は分からないようである。と にかく、鬼の衣服に最も初期の、古い衣服材料が使われていることは間違いない。.  では、虎皮の衣服を着ている鬼と、そうではない、それ以外の素材を着ているものという観点を含めて考えて. みたい。個々の形態が虎皮であるか、それ以外であるかを先の分類︿表一一﹀につけ加えたのが当盤︿表−二﹀ である。.  虎皮を素材とするものはパンツが一番多く、三四例あり、腰に巻き垂れる形態は二〇例ある。袈裟衣は六例で ある。揮は全部で一九例のうち五例だけが虎皮でできている。. 一. 26. 一.

(44) ︿表一二﹀. 型式. 1腰紐型 H垂布型. 皿貫頭型. W前開型. V体形型. わからない. 計. 揮. 形  態. 貫頭衣. 和服類上下二部式   上下一体︵着物︶ちゃんちゃんこ. パンツ現代洋服. 虎皮. 5. 2060. 1. 000. 340. 66. 虎皮以外. 19. 合計.  殖35ーー. 10. 47. 16. 3. 50. 14. 2013. 2. 592. 94. 69. 一. 一. 27.

(45) ︵注︶. 青木英夫著﹃服装史﹄ 三頁. ⋮⋮なお当時の衣服に用いられたものには、獣皮があったであろう。縄文時代初期の人骨の歯がひ. どく損耗していることがあげられているところがら、毛皮そのまま使用しただけではなく、なめす ことも行われていたと考えられている。. 響. 28. 一.

(46) 竺果㎜ 閏 節. 衣服からみた鬼      ︿白H然> しこ. ︿人間﹀の関係から.  鬼の衣服の形態の観点から、1腰紐型、H魚鋤型、皿貫頭型に含まれる衣服の形態は古いイメージにつながる. 形態であった。一般にこれらの衣服の材料素材として、より古い衣服材料である皮、すなわち鬼の場合の虎皮が 結び付けられるのが普通であるだろうと考えられる。.  ところがここで問題になるのが、 ︿表−二﹀の結果から、むしろ逆になっているということである。1腰紐型、. H垂布型、皿貫頭型などの虎皮の占める割合よりも、W前開型、V体形型において虎皮が占めている割合の方が. 多いことがわかる。顕著な例を用いると、1腰紐型の揮とV体形型のパンツで、虎皮の揮が26パーセントで割合. にして約四分の一であるのに対し、虎皮のパンツは72パーセント、約四分の三が虎皮でできている。新しい形態. にはより古い材料が組み合わせられているといえる。古い形態には古い材料が組み合わせられにくい。  これはどうしてなのであろうか。.  この問題の答えとして、つぎの二つのことが考えられるのではないだろうか。まず一つは、鬼を古く自然に近. いものとしてとらえている意識が働いているためである。揮や貫頭衣、袈裟衣などの衣服がその形だけでも、す. ぐ容易に古いイメージや、加工されていない自然にとけこんだ生活を想起させる、自然に近いようなイメージに. 結び付けられる。しかしパンツは、形態そのものでは古いイメ∼ジから遠ざかってしまうので、その材料を虎皮. にすることで、より自然に近いところへ引き戻そうとする意識がそこに現れているのではないだろうか。.  第二点は、鬼を全く自然のままでなく、人間の文化をもったものとする考えがあるためではないか。古い形態. に古い材料をそのまま合わせて、よりその古さを強調するものが少ないことからそのように考える。完全に人間. から離れた、言わば自然の存在であるとははっきりといえない意識があるため、虎皮の揮のほうが、虎皮のパン. 一. 29. ﹁.

(47) ツより少なくなっているのではないかと推測することができるのである。.  以上のように、鬼の着ている衣服からみた鬼のイメージを考察した結果、鬼は人間の住む世界とは全く異なっ. た、自然の世界にあるものとする見方がある。また、人間の世界の文化をもったものとしてもとらえられている. とみることができる。それゆえにこの両方のイメージを併せもつ存在、すなわち自然の領域と人間の領域との境 界線の辺りにある存在だととらえているといえるのではないかと考える。.  しかしそうとはいうものの、新しい形態でも虎皮ではなく、新しい材料が組み合わされているものや、古い形. 態に虎皮が組み合わせられているものもある。例えば、虎皮模様の揮は五例あり、垂布型でも虎皮のものは二六. 例ある。これらは古い形態に古い素材の皮が組み合わせられ、古いイメージが強調されることになる。新しい形. 態でも現代洋服は新しい形に新しい素材である、このように、古い形態に古い素材、新しい形態に新しい素材が. 結び付き、よりその古さ、新しさが強調されているととれるものがあるが、次の二点で解釈できるのではないか と思う。.  一点めは、鬼のイメージ全体として、古いものだとして自然に近くみるとらえかたと、新しく、人間に近い存. 在とみるとらえかたのどちらもが存在すると考えてよいと思われる。その中間のどちらもが混ざりあった存在だ ととらえられる描かれ方がいちばん多く絵本の絵からは読み取れたということになる。.  二点めは、それぞれの作品により、そのように描かれる必然性がある場合があり、このことは個々の作品の中. での別の問題としてみなければならない。したがってこの点については、作品中の鬼の性格、特にやさしい鬼を 取り上げるなかでさらに検討していきたい。. 一. 30. 鴨.

(48) 第二章 由児のワ酔仕格. 絵本にみる鬼の心. 竺果 一縮即.  鬼が物語のなかでどのような気持ちをもって行動するのかといったような鬼の内面や、物語のなかでどのよう. なものとして役割づけられて登場しているかという意味も含め、広い意味での鬼の﹁性格﹂をみていぎだいと思. う。鬼の性格は、直接には鬼の話す言葉、台詞や会話、または心内語などのなかにあらわれている。しかし、そ. れだけではなく、作中の他の人物による受け取られ方などにより鬼の心情がわかるような場合もある。そのよう. なものもあわせて考えていきたい。具体的にそれぞれの絵本からみていくことにする。人間に危害を加える鬼、. 人間に幸福をもたらす鬼、人間の子どものようなかわいらしい鬼、冒険する鬼、やさしさをもつ鬼、孤独な鬼に つ い て 作 品 からみていぎだい。. ︿人間に危害を加える鬼﹀. 昔話、民話絵本として数多く出版されている、 ﹃ももたろう﹄﹃いっすんぼうし﹄などの作品には、悪者であ. り、人間に危害を加える鬼がでてくる。そのために人々からは恐れられている。衣食をかすめ取る困り者として. の鬼にとどまらず、人間をさらって行ってしまい、死にもつながる鬼には恐ろしさが強くある。しかし、退治し てくれる英雄の登場により、鬼たちは征伐されてしまうことになる。.  ﹃ももたろう﹄ ︵岩崎京子文・宇野文雄絵 フレーベル館 一九八四・二︶には、とびがももたろうに鬼退治. 31. 一.

(49) を依頼する場面で、鬼による危害が語られている。  あるひのこと、ももたろうが あそんでいると、とびが とんできて いいました。. ﹁ももから うまれた ももたろうさんやい。にしの うみの おにたちあ たべるもんぱ かすめる、き るもんは ぶんどるで みなこまつとる。ひんがら ひんがら。﹂ ﹁ひどい おにたちだなあ。﹂. ︵一二頁︶. ﹁おまけに こないだ となりむらの ちょうじゃの むすめを さらっていった。のう、ももたろうさん やい、おにを たいじに いってけろ。 ひんごろ ひんごろ。﹂  鬼は食べ物、着る物を略奪し、娘をさらっていく。.  ﹃鬼のうで﹄ ︵赤羽末吉文・絵 借成社 一九七六︶は﹃御伽草子﹄﹃太平記﹄などの古典に現れた鬼の話が. 絵本になっている作品である。 ﹃鬼のうで﹄は、都の娘たちを次々とさらっていく強くて怖い鬼、また怪奇な雰 囲気を漂わせる鬼が描かれている。.  ﹃ソメコとオニ﹄ ︵斎藤隆介作・滝平二郎絵 岩崎書店 一九八七・七︶も人間をさらっていく鬼が描かれる. オレは. が、結末は滑稽である。この膏雨はソメコという女の子をさらい、父親に身代金を要求するつもりが、あまりの. ソメコのやんちゃぶりに手を焼いたオニは次のような手紙をソメコの父に書くはめになってしまった。. ソメコのお父ウよ。ソメコは おれの 岩屋にいるから はやくつれに きてくれ、たすけてくれ、. ソメコの相手を させられて、夜もねられないので アタマが おかしくなりそうだ。⋮⋮ ⋮たすけてくれ。はやくソメコを つれにきてくれ。. 一. 32. 一.

(50) オニより。. ソメコを つれてかえってくれたら、 金の俵を一びょう、馬につんでやる。 ソメコの お父ウへ. ︿人間に幸福をもたらす鬼﹀. ︵二六∼︸二〇頁︶.  ﹃おにはうちふくはそと﹄ ︵西本鶏介文・村上豊絵 ひさかたチャイルド 一九八三・一二︶には、 ﹁おには. うち、ふくはそと。﹂と言い間違えてまめまきをした貧乏な夫婦の家へ、あかおにとあおおにの二ひきの鬼がやっ. て来る。この鬼たちは食べる米もない夫婦のために、自分たちのしめていた虎の皮のふんどしをやり、米と取り. 替えて来させた。その米をもとに一生懸命はたらいた貧しい夫婦は、やがて村一番の金持ちになった。.  鬼たちは貧しかった夫婦にただ幸運をもたらしたというよりは、大事なふんどしをお米に替えさせてやる気の いいやさしさをもった鬼たちでもある。.  また﹃だいくとおにろく﹄ ︵松居直再話・赤羽末吉画 福音館書店 一九六二・六︶のおにろくは、人々が橋. が架けられず困っている川に橋を架ける。そのかわりにだいくの目玉を要求するのだが、名前を言い当てられる. ことによって消え去る。結果的には、だいくは目玉を差し出すことを逃れることができ、また鬼が橋を架けてく れたことで、人々は恩恵を受けたのである。. ﹃おむすびたべたい!﹄ ︵黒河松代作・赤坂三好絵 佼成出版社 一九九二・一一︶では、鬼たちはおむすびが. 食べたいために日照り続きで困っている村へ山から田の水を引く作業を行う。そのおかげで村では無事田植えが できた。. ﹁一. 33. 脚.

(51)  村では、鬼たちの ひいてくれた 水のおかげで、ぶじに たうえが できました。.  鬼たちは やくそくどおり、山のように できた おむすびを、おなかいっぱい たべさせて もらいま した。. ﹁たんぼの いそがしいときには、よんでくれ。おむすびを たべさせてくれれば、いつでも てつだいに くるからな﹂. 村びとと、すっかり なかよしになった 鬼たちは、そういって、山へ かえって いきました。.                                             ︵一一=頁︶. ︿人間の子どものようなかわいらしい鬼﹀.  ﹃おにまるのヘリコプター﹄ ﹃おにまるとももこうみへ﹄ ︵岸田衿子文・堀内誠一絵 文化出版局 一九八七︶ や、 ﹃おにのこあかたろうのほん﹄シリーズ︵北山葉子作・絵 借成田︶をあげてみたい。.  これらの作品は子どもの鬼を主人公にしているけれども、人間の子どもを主人公に入れ替えたとしても、おか. しくはないような設定で鬼が描かれている。例えば、 ﹃おにのこあかたろうのほん﹄シリーズの主人公である子. どもの鬼、あかたろうに関しては、ただ角が生えていることだけが鬼と分かる唯一の点であって、そのほかの部. 分は容姿も中身も人間とかわりない描かれ方をしている。あかたろうの家族にしても同じである。.  また、行動も普通の子どもと同じであり、鬼というキャラクターがとりたてて描かれてはいないように思われ る。.  ﹃あかたろうの一・2・3・の3・4・5﹄ 二九七七・二︶では、あかたろうが帰って来て、家の中を探し. てもお母さんがいないので、おばあちゃんのところに電話をし、八百屋さんのところ、さかなやさん、きのみや. さん、とお母さんの行ったお店を順々に電話していき、夕飯のおかずをあててみせるというストーリーになって. ︻. 34. ﹁.

(52) いる。最後は、あかたろうとお父さん、お母さんの一家団樂の夕食風景が描かれている。.  お店やさんも全員鬼という鬼の社会での出来事になっているが、何ら人間社会とかわらない、そのままありそ. うなお話になっている。無邪気なあかたろうの、幸せな家庭の物語である。鬼らしくないといえるのかどうか分 からないが、現代的な生活の中に鬼が置かれている。. ︿冒険する鬼﹀.  ﹃九ひきの小おに﹄ ︵谷真介文・赤坂三好絵 ポプラ社 一九七〇︶は、子どもの鬼たちの冒険物語である。. けれども、その小おにたちが旅のあと、最後にはそれぞれの性格と同じ人間の子どもの心のなかに住みつくとい. うことになる。読者に向かって﹁おこりんぼ小おにとなきむし小おに﹂は﹁いったいだれのところへい亡のでしょ. う﹂と呼びかける。また、この九ひきの小おにたちの誕生の仕方は変わっていて、たまごから生まれるとされて いる。.    小おにたちの たまごは、山おくの 赤い 木のはの うらに、九つ かたまって、虫の たまごみたい   に ぶらさがっています。.   そして、いちばん さいこの 冬の夜、小おにたちは 小さな つので、たまごの からを やぶり、.   ぴょん ぴょん ぴょん⋮⋮   と、げんきに そとへ とびだしてくるのです。.                                               ︵三頁︶.  一風変わった、たまごからうまれる鬼たちであるが、生まれおちて旅に出て、いろいろな経験をつむ間にそれ. 一. 35. 一.

参照

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