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交通移動時間が人口の流出に与える影響

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79 〔論 文〕

交通移動時間が人口の流出に与える影響

Effect of Transportation Time on Regional Population Outflow

岩本 朋大

**

Abstract

Developing transportation network has reduced transit time and transportation costs in Japan. According to theories in urban economics, decrease in transportation costs leads to agglomeration of population. In this paper, we estimate how the reductions in transit time by airplane, railway, bus and automobile affect inter-prefectural migrations. We apply average transit time data aggregated at the prefecture level to estimate a gravity model. Decreasing transit time by airplane and railway increases population outflow from prefectures. In case of younger population, we also find that not only airplane and railway but also bus contribute population outflow when transit times are shortened.

key words: Regional Migration(地域間人口移動)、Travel Time(移動時間) 1.はじめに 本稿では、交通インフラの整備が人口の移動にどのような影響を与えるのかを探る。具体的には 交通移動時間と人口移動の間の関係性を見ていく。本稿の目的はその中でも特に交通手段別に人口 移動との関連を見ることで行政の交通インフラ整備はどのモードを行うと人口流出に影響があるの かを明らかにする。そのことは人口流出を防ぎたい地方行政への政策インプリケーションに繋がる と考えられる。 交通インフラの整備は地理的に隔てられた拠点の交流を促し、経済活動を活発にすることを期待 されている。日本における都市や地域を結ぶ交通網は年々改善している。日本では2002 年頃から 国会において交通政策に関する基本理念やその実現に向けた施策、国や自治体等の果たすべき役割 などが注目され検討されてきた。そして基本法制として2013 年 11 月 27 日に成立した「交通政策 基本法」を契機に、政府は交通インフラの整備を推し進めている。国土交通省(2019)では次の取 り組みが紹介されている。国土交通省の近年の重点的な取り組みとしては、首都圏における大都市 圏環状道路等の物流機能の拡張整備や首都圏・地方空港等の容量を拡張するような機能強化整備、 新幹線全国ネットワークの構築等がある。その中で新幹線全国ネットワークの構築は、国内各地間 の移動時間の短縮によって三大都市圏の成長力が全国に波及することを期待されており、鉄道一日 交通圏の拡大を目指して推進されている。新幹線を例として挙げると日本の新幹線の整備状況とし * 本稿は 2019 年度生活経済学会研究大会(東洋大学)で報告した論文を改訂したものである。研究大会では討論者の寺崎友芳 先生(京都産業大学)に有益なコメントを頂いた。またフロアの先生方からも有益なコメントを頂き改定することができた。 さらに2 名のレフェリーの先生方からのご教示により、論文が完成した。ここに記し謝辞を述べたい。

** Iwamoto, Tomohiro、名古屋市立大学大学院経済学研究科博士後期課程、修士(経済学)、Graduate School of Economics, Nagoya City University, 〒 467-8501 名古屋市瑞穂区瑞穂町字山の畑 1 , Email: [email protected]

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ては、約2,800km の区間の新幹線が開業済みで、建設中あるいは未着工区間の中央新幹線は約 400km、中央新幹線以外の整備計画路線は約 1,000km であり、さらに約 3,000km の未着手路線が基 本計画路線として計画されている。現在は北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)、北陸新幹線(金 沢・敦賀間)、九州新幹線(武雄温泉・長崎間)の3 区間の整備、及び北陸新幹線の敦賀・新大阪 間の整備に向けた環境評価の手続きが実施されている。また東京・名古屋・大阪の三大都市圏を結 ぶ鉄道を二重系化するリニア中央新幹線の実現は、品川・名古屋間を2027 年開業予定、名古屋・ 大阪間を2045 年より最大 8 年前倒し完成予定でその計画に取り組まれており、この整備が完了す ると、2018 年 7 月時点と比較して大阪では 7 箇所、東京では 4 箇所、鉄道利用で 4 時間以内に到 達可能な47 都道府県の県庁所在地数が増えると見込まれている。同時に地方創生回廊中央駅構想 と称して、全国をつなぐ新幹線ネットワークのハブとして新大阪駅を機能強化し、乗継利便性の観 点から結節機能強化や容量制約の解消を図るための取り組みを行っている。このように、政府は交 通インフラの整備が日本全体の経済成長と地方の活性化に重要な役割を果たすと期待しており積極 的に政策として取り組んでいるのがわかる。 一方で、現在、日本の総人口は平成27 年の国勢調査で減少に転じ今後も減少していくことがわ かっている。日本創成会議・人口減少問題検討分科会(2014)によると、いくつかの市区町村は近 い未来に消滅する1と言われており人口流出への危機感は高まっている。図1 は 2005 年から 2010 年の間においての人口増加率を示している。人口の増加率が正の地域は9 地域のみであり、その他38 地域は人口が減少している。多くの都道府県で人口減少に直面しており、高齢化と相まって 諸問題が発生している。そのため政府は地方創生を重要な政策に位置づけており、多くの取り組み を行っているが人口の流出には歯止めがかかっていない。表1 は 2005 年から 2010 年の間の人口増 加率について上位5 県と下位 5 県をまとめている。人口増加率の高い都道府県は首都圏が占めてお り、沖縄県、滋賀県と続く。人口増加率ワースト5 県のうち 4 県が東北地方に属している。東北地 方は近年新幹線が延線されるなど、首都圏との交通ネットワークが改善した。本研究で取り扱う状 況に当てはまる地域であると考えられる。交通移動時間の減少が人口の流出にどのような影響があ るのかはこのような地域の地方創成を考えるうえで重要だと考えられる。 人々は大学進学や就職を機に、より高い効用を自身にもたらす地域へと移住する。合理的な人物 ならば移住選択の際に自身が得るはずの便益と移住に必要なコストを比較するはずである。 効用に関与する地域ごとに異なる要素として、賃金、有効求人倍率や消費の多様性などがしばし ば考えられる。人口移動において重力モデルに基づく実証研究や、期待賃金格差やアメニティの差 による実証研究が数多く蓄積されている。それに加え交通インフラの整備によって移住コストの中 に含まれる移動時間の減少は人々の移住を増加させる可能性がある。 地方創生が地方からの人口流出を食い止める重要な政策として取り組まれているが、交通インフ ラの整備と地方創生は両立するだろうか。空間経済学の理論では輸送費の低下は人口集積を誘引す るとするものもある。地方創生を考える上でも本稿の取り扱う交通インフラと人口移動の関連性は 重要だと思われる。交通インフラ整備の政策が地方創生政策に対して相反する効果をもたらす可能 性が高いため、その影響を検証する必要がある。しかしそれらを同時に取り扱った検証は少なく、 政策を考える上でも必要なものであると考えられる。 1 日本創成会議・人口減少問題検討分科会の座長・増田寛也が発表した資料(通称「増田レポート」と呼ばれる) において、2010 年から 2040 年にかけて、全国 1799 のうち 896 の市区町村が 20 ~ 39 歳の若年女性人口が 5 割 以下に減少するという推計結果を示し、地方自治体の消滅可能性の高さを指摘している。

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ここまでは本研究の背景を論じた。本稿では以降、2 節で関連する先行研究を確認し、3 節で データと回帰式について述べ、4 節で分析結果をまとめる。そして 5 節で考察を行う。

2.先行研究

人口移動の研究は多く行われている。初期の代表的な研究としてHarris and Todaro (1970)の理 論がある。これは期待賃金が等しくなる地点で人口分布が定まるとする。期待賃金や効用の格差に より人口が移動するというメカニズムを実証している先行研究は非常に多く存在している。例え ば、朝田(1996)では、三大都市圏と地方圏に分けた場合、所得格差と人口移動には密接な関連が 認められ、時系列上の変動にタイムラグがほぼないことを明らかにした。都市経済の成長率鈍化 図1 都道府県別人口増加率(2005年から2010年) 総務省「人口推計」より作成 表1 都道府県別人口増加率の上位5県及び下位5県(2005年から2010年) 総務省「人口推計」より作成 順位 都道府県 人口増加率(%) 順位 都道府県 人口増加率(%) 1 東京都 4.63 43 山形県 -3.89 2 神奈川県 2.92 44 岩手県 -3.96 3 千葉県 2.64 45 高知県 -4.00 4 沖縄県 2.29 46 青森県 -4.41 5 滋賀県 2.20 47 秋田県 -5.19

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は、所得格差と人口移動の両水準を下げ、所得格差がある程度縮小すると人口移動への影響力が失 われることを示した。ハリス・トダロモデルに立脚する研究では都市間の輸送費と人口移動の関連 は分析できない。交通インフラ整備と絡めた研究は空間経済学で盛んである。しかし理論的な研究 が主で、実証的な研究はまだ数が少ない。Krugman(1991)以降の空間経済学ではモデルの中で輸 送費が重要な役割を果たしている。独占的競争や規模の経済性から輸送費の低下は都市に企業を集 積させることを示している。Pflüger(2004)は Krugman(1991)のモデルを準線形の効用関数に拡 張することで輸送費の低下が産業集積をもたらすことを解析的に導いている。産業集積が起こった 地域では職への期待や財の多様性などから人口も集積すると考えられる。新経済地理学でも輸送費 が重要な要素となっている。そのため本稿では移動にかかる時間を輸送費に代わる変数として人口 移動を分析することを試みる。 鉄道整備と人口移動に関する研究は古くは中川他(1993)が挙げられる。中川他(1993)では 1920 年から 1985 年の国勢調査と鉄道要覧などのデータを用い、鉄道インフラが整備された市町村 と整備されなかった市町村の人口の増加率を比較している。鉄道ではストロー効果が見られない傾 向を確認した。しかしながら単に比較するにとどまっており計量的な分析は行われていない。佐々 木他(2001)や Mabazza et al. (2010)では自己組織化プロセスを組み込んだ都市人口モデルである P. Allen モデルを用い、北海道の自動車道に関する政策と人口移動の分析を行っている。佐々木他 (2001)では夕張―十勝間の北海道横断自動車道整備によって十勝から夕張に人口が流出する効果 を確認した。Mabazza et al. (2010)では、北海道の高速道路を無償化することで札幌都市圏から 3 時間を超える地域の人口減少は加速し、札幌周辺に人口集中することを推察している。同じく高速 道路に関連する先行研究として、小池他(2012) も上げられる。彼らは 1970 年から 2005 年までの 5 年おきのデータを用いパネルデータを構築し、交通道路整備によるアクセシビリティの改善と人 口移動について相関をみている。都市部やその周辺では人口は増加する傾向にあり、中山間部では 人口が減少する傾向を明らかにした。柴田・小坂(2012)は全国 9 地域の産業連関表を用いてシナ リオ分析を行っている。柴田・小坂(2012)では鉄道・航空・道路を分析対象に移動時間を用いて 分析しているが対象にしている路線が鉄道では7 路線、航空では 9 路線、道路では 6 路線と限られ ている。彼らはシナリオ分析を行うことによって高速交通インフラ整備が大都市に人口を集めるこ とを明らかにした。張他(2016)では年齢層別・年代別に分析を行っており都道府県間の距離の影 響は経年的に小さくなっていることを明らかにした。また近年では中年層が遠くに移住する傾向が 高まっていることを明らかにしている。田村(2017)では大学進学時点の人口移動について修正重 力モデルを用いて分析されている。田村(2017)は人口移動の実績データとして、文部科学省の 「出身高校の所在地県別大学入学者数」を用い、距離のデータは都道府県庁間の最短距離を用いて いる。遠い県であっても高速交通の存在が人口移動に与えている影響は分析から外れている。 伊藤(2003)は人口移動の分析においてアメニティの存在を考慮する必要性を示しており、以降 アメニティに着目する研究がなされるようになった。伊藤(2006a)では社会環境アメニティが地 域間人口移動に与える影響を分析している。伊藤(2006b,c)や當麻(2016)では平均気温や降水 量などの自然環境アメニティに着目し地域間人口移動に与える影響を分析した。當麻(2016)は移 住における生活環境の変化が費用となって移住選択に影響する可能性に着目し、都道府県データを 使用し、都市化の程度、平均気温、降水日数といったアメニティが人口移動に及ぼす影響を実証分 析している。その結果、従来発見されていた地域のアメニティの豊富さがその地域での効用を上昇 させる垂直的異質性の性質の他に、移動する地域間でのアメニティの特徴の類似性(アメニティ近

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83 接性)が移住費用を低下させる性質を示し、地域間人口移動の分析におけるアメニティの重要性を 示唆した。そこで本研究でもアメニティの影響は無視できないと判断しアメニティの影響を制御し た上でインフラ整備による移動時間短縮の効果を分析する。 以上のように経済格差のある2 地域を結ぶとどうなるのかは空間経済学の分野で重要な課題であ り多くの分析がなされてきた。しかし移動時間に着目した実証研究の文献は少ない。そして2 地域 を単純に結ぶといっても様々な交通機関が考えられる。高速道を整備することと高速鉄道を敷設す ることの時間短縮効果には差異がある。そのため本稿では航空機・鉄道・バス・自家用車の4 つの 交通手段について、それらの移動時間が人口の流出にどのような影響があるのかを調べるため、重 力モデルを用いた回帰分析を行う。本稿は移動時間に着目し、複数モードによる分析を行っている 点で先行研究との差異があり、意義があると考えられる。 3.推定モデルとデータ 本稿では各都道府県間の移動時間に着目する。具体的には重力モデルで用いられてきた距離の変 数を移動時間に置き換えて分析する。重力モデルとはニュートンの重力方程式を経済学に援用しよ うというものであり、国際経済学の中で最も成功した実証分析とも言われている。2 つの天体間に 働く力を貿易量(M)とし、天体の質量をそれぞれの国の経済規模(GDP)とし、2 国間の距離 (distance)によって貿易量が割り引かれるという形になっている。両辺に対数をとり、線形化して 回帰分析を行うのが一般的である。 ´ = ´ i n ni ni GDP GDP M G distance 貿易だけではなく人間の移動にも多く応用されている。そこでは上記の重力モデルをさらに拡張し た修正重力モデルが用いられるようになっている。基本的な重力モデルの右辺にアメニティの比な どの変数を加えていくものである。 γ  æ ö ´ ç ÷ = ´ ´ç ÷ ´ è ø i n i ni ni n GDP GDP x M G distance x 理論上はどれだけでも任意の変数を加えていくことが可能であるが、説明変数同士の相関や過剰識 別の問題などの制約がある。主として物理的な距離を用いてきた過去の重力モデルに基づく人口研 究では整備が積極的に行われている交通インフラの効果が観測できない。そこで本稿は距離の変数 を移動手段別に各都道府県間の移動時間に分解して用いることで交通インフラの種類別の整備が人 口移動にどのような影響を与える傾向があるのかを確認する。交通インフラ整備の政策が地方創生 政策へ影響を及ぼす可能性を示唆している点に差異がある。 本研究で考える回帰式は次式である。 人口移動に関する変数=(移動時間 , コントロール変数) 今回用いる変数は表2 の通りである。tpfniは人口移動に関する変数として総転出者数を割り当て た被説明変数である。これは都道府県i から都道府県 n への転出人口の総数である。本研究では総 転出者数だけでなく若年転出者数を被説明変数として用いた分析を行う。ypfniは若年転出者数を用

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いた人口移動に関する変数である。これは都道府県i から都道府県 n への転出者数のうち 18 歳か22 歳の者の合計である。tpf.rniypf.rniは頑健性を確認するための分析に用いる被説明変数であ る。tpf.rniは総転出割合を表し、これは都道府県i の総人口に対する都道府県 i から都道府県 n への 転出者の総数の割合である。ypf.rniは若年転出割合を表し、これは都道府県i の 18 歳から 22 歳ま での人口に対する都道府県i から都道府県 n への 18 歳から 22 歳までの転出者数の割合である。移 動時間の変数について今回は4 つのモード(planeni:航空機、railni:鉄道、busni:バス、carni:自

家用車)を取り扱う。それぞれの変数は、各該当手段による都道府県i から都道府県 n へ移動によ る平均所要時間である。popniは人口について都道府県n に対する都道府県 i の比である。wageniは 所定内給与額について都道府県n に対する都道府県 i の比である。aorniは年度平均の有効求人倍率 について都道府県n に対する都道府県 i の比である。w.childniは保育所等利用待機児童数について 都道府県n に対する都道府県 i の比である。studentniは短期大学及び大学の学生数について都道府 県n に対する都道府県 i の比である。capitalniは純社会資本ストックについて都道府県n に対する 都道府県i の比である。prim.indniは第一次産業従事者数2について都道府県n に対する都道府県 i の 比である。rainniは年間降水量について都道府県n に対する都道府県 i の比である。tempniは平均気 温について都道府県n に対する都道府県 i の比である。commuteniは通勤時間について都道府県n に対する都道府県i の比である。popniからcommuteniまでの変数は都道府県i(移動前地域)の数 値を都道府県n (移動後地域)の数値で割っており、移動先地域で測った移動元地域の経済力や需 要を表している。人口の絶対数が増えると外の地域に出る人数は増えると考えられる。また賃金や 有効求人倍率などの労働環境も人々の効用に与える影響が大きいと考えられる。学生数は若年人口 を惹きつける要因として重要である3と考えられる。待機児童数や社会資本ストック、通勤時間は 社会基盤的なアメニティを表し、降水量や平均気温は自然環境的なアメニティを表すために変数と して取り上げた。 それらの変数に合わせるために次のデータを用いる(表3)。移動時間のデータは国土交通省「全 国幹線旅客純流動調査」4の第4 回(2005 年)と第 5 回(2010 年)の「OD 別交通サービス水準(代 表交通機関別都道府県間)」5の所要時間である。このデータでは都道府県を跨いで移動した人の所 要時間の平均値がわかる。しかし「全国幹線旅客純流動調査」において所要時間の調査は第4 回調 査以降にしか行われておらず、データの制約上2005 年と 2010 年のデータのみ用いることが可能で ある。そのため2 時点のクロスセクションデータとして回帰分析を行う6。人口の流出を表す転出者 数には、国勢調査(2010 年、2015 年)の移動人口の男女・年齢等集計(人口の転出入状況)によ 2 第一次産業を採用した理由は第一次、第二次、第三次産業で他の変数との相関を見たときに最も相関をもっ ていなかったためである。 3 文部科学省の文部科学統計要覧によると平成30 年度の大学・短期大学への進学率は 54.7% で依然として増加 傾向にある。 4 このデータのOD マトリックスは首都圏と関西圏の大都市圏内の移動時間のデータが入っていない。そのた め本稿の分析では大都市圏内の移動が分析から除かれており、都市・地方間の分析に集中できている。航空路 線のない都道府県間の移動時間や、バス・自家用車での移動が不可能な沖縄・北海道と他地域とのデータは欠 如している。また各交通機関で実施しているアンケート調査を元に作成されているデータであるが、サンプル サイズなどは公開されていない。2005 年と 2010 年の 2 時点が利用可能であるが、アンケート結果によると必 ずしも平均移動時間は減少しているとは確認できなかった。そのため2 時点の間での政策・利便性の改善が人 口移動に与える因果は分析できず、相関関係の分析に留まっている。 5 船舶での移動時間に関するデータも含まれるがサンプル数が少ないため今回は取り扱わなかった。またバス と自家用車は経路がほとんど重なるため、移動時間の傾向が似通っている。そのためバスと自家用車の移動時 間の相関係数は0.98 ほどである。 6 データサンプルに連続性がなく、期間も非常に短いためパネルデータとして分析することは適当でない。

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85 る5 年前の常住都道府県による現住都道府県の転出人口のデータを用いる。国勢調査には市区町村 レベルでのデータも収録されているが、今回の分析の肝となる移動時間のデータが都道府県レベル の集計データであるため、都道府県レベルでの転出人口を採用した。2010 年の国勢調査では 2005 年から2010 年までの 5 年間に居住地を変更した人数がわかり、2015 年の国勢調査では 2010 年か2015 年までの 5 年間に居住地を変更した人数がわかる。同時にこのデータは各年齢別の転出人 口も収録しており、若年転出者数は18 歳から 22 歳までの各年齢転出人口を足し合わせて算出した 人数を用いた。総転出割合及び人口比を算出するための都道府県別総人口は、2005 年については 平成17 年度国勢調査の第 1 次基本集計から、2010 年については平成 22 年度国勢調査の人口等基 本集計によるデータを採用している。これには同時に各年齢別の人口も収録しており、18 歳から 22 歳までの各年齢人口を足し合わせた値を、若年転出割合を算出するために使用している。賃金 比の算出には、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」による企業規模10 人以上の都道府県別所定 表2 変数リスト 7 表2 変数リスト それらの変数に合わせるために次のデータを用いる(表 3)。移動時間のデータは国土交通省 「全国幹線旅客純流動調査」4の第4 回(2005 年)と第 5 回(2010 年)の「OD 別交通サービ ス水準(代表交通機関別都道府県間)」5の所要時間である。このデータでは都道府県を跨いで ———————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————— 4 このデータの OD マトリックスは首都圏と関西圏の大都市圏内の移動時間のデータが入っていない。その ため本稿の分析では大都市圏内の移動が分析から除かれており、都市・地方間の分析に集中できている。航 空路線のない都道府県間の移動時間や、バス・自家用車での移動が不可能な沖縄・北海道と他地域とのデー タは欠如している。また各交通機関で実施しているアンケート調査を元に作成されているデータであるが、 サンプルサイズなどは公開されていない。2005 年と 2010 年の 2 時点が利用可能であるが、アンケート結果 によると必ずしも平均移動時間は減少しているとは確認できなかった。そのため2 時点の間での政策・利便 性の改善が人口移動に与える因果は分析できず、相関関係の分析に留まっている。 5 船舶での移動時間に関するデータも含まれるがサンプル数が少ないため今回は取り扱わなかった。またバ スと自家用車は経路がほとんど重なるため、移動時間の傾向が似通っている。そのためバスと自家用車の移 動時間の相関係数は0.98 ほどである。 変数 単位 内容 算出方法 tpfni 人 総転出者数 5年前の常住地i から現住地n へ転出した人口総数 ypfni 人 若年転出者数 5年前の常住地i から現住地n へ転出した18歳~22歳 の合計人口 tpf.rni − 総転出割合 i 県からn 県への総転出者数の割合 /5年前の常住地i の総人口 ypf.rni − 若年者転出割合 i 県からn 県への若年転出者数5年前の常住地i の18歳~22歳人口 planeni 分 航空機による移動時間 i 県からn 県への航空移動に要する平均所要時間 railni 分 鉄道による移動時間 i 県からn 県への鉄道移動に要する平均所要時間 busni 分 バスによる移動時間 i 県からn 県へのバス移動に要する平均所要時間 carni 分 自家用車による移動時間 i 県からn 県への自家用車移動に要する平均所要時間 popni − 人口比 i 県の人口/n 県の人口 wageni − 賃金比 i 県の所定内給与額/n 県の所定内給与額 aorni − 有効求人倍率比 i 県の有効求人倍率/n 県の有効求人倍率 w.childni − 待機児童数比 i 県の保育所等利用待機児童数n 県の保育所等利用待機児童数 sutudentni − 学生数比 i 県の短期大学・大学学生数n 県の短期大学・大学学生数 capitalni − 社会資本ストック比 i 県の純社会資本ストックn 県の純社会資本ストック prim.indni − 第一次産業従事者比 i 県の1次産業従事者数/n 県の1次産業従事者数 rainni − 降水量比 i 県の年間降水量/n 県の年間降水量 tempni − 平均気温比 i 県の年平均気温/n 県の年平均気温 commuteni − 通勤時間比 i 県の男性有業者の通勤・通学の平均時間n 県の男性有業者の通勤・通学の平均時間

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内給与額を使用した。有効求人倍率比の算出に用いた都道府県別の年度平均の有効求人倍率には、 厚生労働省「労働市場年俸」に収録されている月間有効求人数の年度合計を月間有効求職者数の年 度合計で除算した値を使用している。待機児童数比の算出には、厚生労働省「保育所等利用待機児 童数調査」による保育所等利用待機児童数に1 を足した値を使用している。学生数比の算出には、 文部科学省「学校基本調査」による都道府県別の短期大学・大学学生数を用いた。社会資本ストッ ク比の算出には、内閣府「社会資本ストック推計データ」による年度の純社会資本ストックを用い た。第一次産業従事者比の算出に用いた第一次産業従事者数は、総務省「国勢調査」による第1次 表3 データの出所 データ名 単位 調査名又は報告書名 担当機関 航空移動に要する平均所要時間 分 全国幹線旅客純流動調査 国土交通省 鉄道移動に要する平均所要時間 分 全国幹線旅客純流動調査 国土交通省 バス移動に要する平均所要時間 分 全国幹線旅客純流動調査 国土交通省 自家用車移動に要する平均所要時間 分 全国幹線旅客純流動調査 国土交通省 総転出人口 人 国勢調査 総務省 各歳年齢転出人口 人 国勢調査 総務省 総人口 人 国勢調査 総務省 各歳年齢人口 人 国勢調査 総務省 所定内給与額 千円 賃金構造基本統計調査 厚生労働省 有効求人倍率 倍 労働市場年報 厚生労働省 保育所等利用待機児童数 人 保育所等利用待機児童数調査 厚生労働省 短期大学・大学学生数 人 学校基本調査 文部科学省 純社会資本ストック 百万円 社会資本ストック推計データ 内閣府 1次産業従事者数 人 国勢調査 総務省 年間降水量 ㎜ 過去の気象データ 気象庁 年平均気温 ℃ 過去の気象データ 気象庁 男性有業者の通勤・通学の平均時間 分 社会生活基本調査 総務省 表4 相関係数(2005年) 表5 相関係数(2010年)

planeni railni busni carni

planeni NA

railni 0.35 NA

busni 0.18 0.65 NA

carni 0.31 0.88 0.96 NA

planeni railni busni carni

planeni NA

railni 0.06 NA

busni 0.10 0.93 NA

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87 産業の就業者数を用いた。降水量比及び平均気温比の算出には、気象庁「過去の気象データ」によ る暦年計の年間降水量及び暦年平均気温を使用7している。通勤時間比の算出には、総務省「社会 生活基本調査(2006 年、2011 年)」による男性有業者が一日の生活時間のうち通勤・通学に割り当 てる平均時間のデータを使用8した。社会生活基本調査は1976 年以降 5 年周期で行われており、 2005 年と 2010 年のデータが取れないため、2006 年と 2011 年のデータで代用している。 表4 および表 5 は移動時間の変数に関する相関を示している。航空機に関する移動時間は他の移 動時間と相関を持たない。鉄道による移動時間はバスおよび自家用車による移動時間との相関がや や強い。バスと自家用車での移動時間はほとんど完全な相関を持っている。 表6 および表 7 は分析に用いた説明変数(コントロール変数)同士の相関を示している。 それぞれの変数の記述統計は表8 と表 9 に示す。若年転出者数のデータに関しては対数を用い加 工する上で移動人口が0 の地域の組み合わせが存在し、問題となるため全体に便宜上 1 を足してい 7 日本の都道府県別平均気温は8.9 度から 23.1 度まで幅広く分布しており、かなりのバラエティが存在する。 8 首都圏では平均して通勤時間が70 分前後であるのに対し、地方では 30 分を切る県もあり大都市圏の不効用 を表す指標と考えられる。 表6 相関係数(2005年) 2005

popni wageni aorni w.childni sutudentni capitalni prim.indni rainni tempni commuteni

popni NA wageni 0.63 NA aorni 0.29 0.61 NA w.childni 0.37 0.17 -0.02 NA sutudentni 0.85 0.57 0.28 0.34 NA capitalni 0.87 0.54 0.27 0.29 0.70 NA prim.indni 0.20 -0.18 -0.14 0.03 0.00 0.38 NA rainni -0.22 -0.37 -0.18 -0.06 -0.15 -0.21 -0.16 NA tempni 0.00 0.16 0.09 0.06 0.06 -0.13 -0.34 0.00 NA commuteni 0.66 0.79 0.28 0.26 0.51 0.47 -0.10 -0.32 0.20 NA 表7 相関係数(2010年) 2010

popni wageni aorni w.childni sutudentni capitalni prim.indni rainni tempni commuteni

popni NA wageni 0.66 NA aorni -0.10 0.31 NA w.childni 0.51 0.27 -0.10 NA sutudentni 0.85 0.57 0.00 0.56 NA capitalni 0.85 0.56 -0.07 0.41 0.69 NA prim.indni 0.18 -0.16 -0.32 0.03 -0.01 0.39 NA rainni -0.15 -0.21 -0.11 -0.03 -0.10 -0.17 -0.19 NA tempni 0.03 0.16 0.12 0.06 0.07 -0.11 -0.32 0.34 NA commuteni 0.68 0.78 -0.14 0.32 0.52 0.48 -0.12 -0.17 0.16 NA

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る9ため最小値が1 である。 本稿で取り扱う2005 年と 2010 年の間にも空港が 2 か所に新設され 2 か所は延伸、または拡張さ れた。自動車専用道は9 路線整備された10。 次の節で詳しく分析を行っていくが、最初に総移動人口の傾向を確認する。図2 は 2010 年及び 2015 年における全移動人口のうち各年齢の移動人口が占める割合を表している。 ここでの移動人口は総務省「住民基本台帳人口移動報告」による当該年次に他都道府県への転出 を行った日本国籍の移動者を指す。どちらの年次においても24 歳以降、全体の移動者に占める各 9 公益財団法人明るい選挙推進協会(2015)において高校卒業後、親元を離れて進学した短期大学生、大学生、 大学院生などの26.4% しか住民票を移していない状況が報告された。そのため少なくとも 1 人は住民票を移さ ず居住地を変更していると考えても差し支えないだろう。多くの重力モデルにおいても対数化の計算上の都合 から1 を足すことは広く行われている。 10 静岡空港、茨城空港が新設、成田空港が延伸、羽田空港が再拡張された。また旭川紋別自動車道、道東自動 車道、道央自動車道、日本海沿岸東北自動車道、北関東自動車道、首都圏中央連絡自動車道、東海北陸自動車 道、近畿自動車道名古屋神戸線、春日和田山道路の9 路線の自動車専用道が整備された。本稿で移動時間のデー タとして用いた2005 年と 2010 年の間では LCC は導入されていないが、移動人口のデータ期間である 2010 年 から2015 年の間にはピーチアビエーション、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパンの新規参入が あり、航空機での移動に関する利便性が上昇した可能性がある。 表8 記述統計(2005) 2005 観測数 最小値 第1四分位点 中央値 平均値 第3四分位点 最大値 tpfni 2162 19 238 743 2874 2351 208403 ypfni 2162 1 28 91 428 357 10055 tpf.rni 2162 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.02 ypf.rni 2162 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.12 planeni 1419 94.00 200.00 253.00 252.70 297.50 455.00 railni 2034 37.00 251.00 363.50 396.80 506.00 1342.50 busni 422 35.00 165.00 306.00 350.40 520.50 850.00 carni 1950 32.00 290.00 480.00 524.50 698.00 1475.00 popni 2209 0.05 0.53 1.00 1.72 1.90 20.72 wageni 2209 0.60 0.91 1.00 1.01 1.10 1.66 aorni 2209 0.21 0.71 1.00 1.14 1.41 4.77 w.childni 2209 0.00 0.14 1.00 61.80 7.34 5222.00 sutudentni 2209 0.01 0.43 1.00 2.97 2.35 88.95 capitalni 2209 0.10 0.63 1.00 1.36 1.60 9.79 prim.indni 2209 0.10 0.59 1.00 1.32 1.68 10.03 rainni 2209 0.25 0.72 1.00 1.12 1.38 4.04 tempni 2209 0.39 0.89 1.00 1.03 1.13 2.60 commuteni 2209 0.39 0.83 1.00 1.05 1.20 2.57

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89 表9 記述統計(2010) 2010 観測数 最小値 第1四分位点 中央値 平均値 第3四分位点 tpfni 2162 19 238 743 2874 2351 ypfni 2161 1 26 86 374 334 tpf.rni 2162 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 ypf.rni 2162 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 planeni 1968 96.00 224.00 269.00 269.20 308.00 railni 2040 36.00 247.00 353.00 388.30 492.20 busni 1831 117.00 512.00 726.00 881.70 1044.50 carni 2040 30.00 330.00 564.00 632.70 851.00 popni 2209 0.04 0.52 1.00 1.76 1.92 wageni 2209 0.61 0.90 1.00 1.01 1.11 aorni 2209 0.37 0.81 1.00 1.05 1.24 w.childni 2209 0.00 0.07 1.00 127.19 14.47 sutudentni 2209 0.01 0.42 1.00 3.07 2.38 capitalni 2209 0.10 0.63 1.00 1.35 1.58 prim.indni 2209 0.09 0.59 1.00 1.35 1.71 rainni 2209 0.32 0.78 1.00 1.08 1.29 tempni 2209 0.42 0.90 1.00 1.02 1.11 commuteni 2209 0.44 0.83 1.00 1.05 1.20 総務省「住民基本台帳人口移動報告」より作成 図2 総移動人口に占める各年齢移動人口の割合 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 15 歳 16 歳 17 歳 18 歳 19 歳 20 歳 21 歳 22 歳 23 歳 24 歳 25 歳 26 歳 27 歳 28 歳 29 歳 30 歳 31 歳 32 歳 33 歳 34 歳 35 歳 36 歳 37 歳 38 歳 39 歳 40 歳 41 歳 42 歳 43 歳 44 歳 45 歳 46 歳 47 歳 48 歳 49 歳 50 歳 51 歳 52 歳 53 歳 54 歳 55 歳 56 歳 57 歳 58 歳 59 歳 60 歳 61 歳 62 歳 63 歳 64 歳 65 歳 2015(総数) 2010(総数)

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年齢の割合は緩やかに減少する一定の傾向が観測される。一方で18 歳から 23 歳の間の各年齢が占 める割合は前後の傾向から大きく外れている。現代の多くの日本人にとって18 歳と 22 歳はライフ スタイルの変化に直面する区切りの年齢である。18 歳という年齢は多くの学生が高等学校を卒業 し、進学あるいは就職によって住居を変更する可能性が高まる年齢であると考えられる。同様に、 短期大学に進学した学生の多くが卒業を迎える20 歳と、大学に進学した学生の多くが卒業を迎え る22 歳も、前後の年齢よりも住居を移動する人口の割合が高くなる年齢であると考えられる。日 本の人口移動においてこれらの年齢層は、他の年齢層と人口移動の理由が異なる可能性があるた め、若年者に限った分析を行うことにも意義がある。 4.分析結果 回帰分析(OLS)を行い地域間移動に要する平均時間が人口移動にどのような影響があるのかを 分析11する。まずは全年齢における人口移動について回帰を行う。その後に若年者の人口移動に限 り、回帰を行う。交通手段によって人口移動にどのような影響があるのか、それは若年者の人口移 動に関しては特にどのような影響があるのかを見ていく。 本稿での回帰分析は過去の伝統的な重力モデルに従い両辺に自然対数を用いて推計を行ってい る。まずは交通手段別の人口流出に与える影響をみてみる。被説明変数は総流出人数で、説明変数 は自地域i の経済規模と相手地域 n の経済規模、またそれぞれの移動手段 k での i 地域から n 地域 への所要時間である。なお被説明変数のpf は説明変数の年より 1 期先にずらしたデータを用いて おり、同時性の問題に対処している。なお複数の交通手段を同時に回帰する場合に自家用車を含め ていない理由はバスでの移動時間と自家用車での移動時間の相関がほとんど1 に近く同時に分析す ることは適切ではないためである。なお自家用車の移動時間ではなくバスでの移動時間を採用した 理由は鉄道での移動時間との相関が自家用車での移動時間よりも小さかったためである。 4.1 交通手段別の人口流出(全年齢)についての回帰分析 2005 年の移動時間を用いた総移動数での回帰分析結果は表 10 である。1-1 から 1-8 の結果が交 通移動手段別に回帰を行った結果である。全ての結果において切片、それぞれの交通手段の平均移 動時間に関する変数は有意になっている。また交通移動時間に関する変数は全てにおいて負であっ た。1-9 と 1-10 は複数の交通手段の選択肢を同時に回帰12した場合の結果である。1-9 と 1-10 の回 帰式の違いはバスの移動時間を考慮するかどうかである。鉄道での移動時間とバスでの移動時間は 相関係数が0.65 であり、多重共線性の可能性もあることから 2 種類の回帰を行った。その結果、 航空機と鉄道での移動時間の変数は負であったが、バスでの移動時間は正で推定された。その他の コントロール変数はほとんど有意とならず、1-4 における推定で唯一、賃金が負で有意となったの みであった。 1-10 から読み取れることとして、複数の交通手段の選択肢がある中で航空機による移動時間が 1% 改善すると人口流出が 2.9% 増加し、鉄道による移動時間が 1% 改善すると人口流出が 1.57% 11 本稿の分析はR を用いて行った。 12 本稿で用いている「全国幹線旅客純流動調査」では移動に要した時間を主たる交通機関で計上される。複数 の幹線交通機関を利用した場合には、そのうち1 つを代表交通機関として定義し、その代表交通機関を利用し た移動として計上されている。そのためこの統計データでは複数の交通手段を使った場合の分析は不可能であ る。

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91 増加する傾向が確認された。バスによる移動時間が1% 改善すると人口流出が 0.76% 減少する傾向 があった。全年齢での平均でみると、その他の要因は人口流出への影響は確認できなかった。 2010 年の移動時間を用いた総移動数での回帰分析結果は表 11 である。2-1 から 2-8 の結果が交 通移動手段別に回帰を行った結果であり、2-9 と 2-10 は複数の交通手段の選択肢が考えられる中、 それらを同時に回帰した場合の結果である。2-10 を除く全ての結果において切片、それぞれの交 通手段の平均移動時間に関する変数は有意になっており、また交通移動時間に関する変数も2-10 を除く全てにおいて負であった。2-10 のみバスによる移動時間の変数が正で推定された。なお 2010 年のデータにおいてコントロール変数はほとんど有意とならず、有意となったのは 2-2、2-9、 (注)有意水準は***:0.01、**:0.05、*:0.1である。    係数の下の括弧内の数値は標準誤差を表し、F値の括弧内の数値はp値を表す。 表10 全年齢における総移動人口での回帰分析(2005年)main2005 1-1 1-2 1-3 1-4 1-5 1-6 1-7 1-8 1-9 1-10 切片 23.66*** 23.64*** 17.31*** 17.30*** 10.96*** 11.06*** 15.36*** 15.38*** 26.66*** 27.37*** (0.66) (0.66) (0.30) (0.31) (0.36) (0.37) (0.28) (0.28) (0.72) (1.80) planeni -3.17*** -3.17*** -2.68*** -2.90*** (0.12) (0.12) (0.13) (0.25) railni -1.82*** -1.82*** -0.94*** -1.57*** (0.05) (0.05) (0.09) (0.22) busni -0.47*** -0.47*** 0.76*** (0.06) (0.06) (0.18) carni -1.43*** -1.43*** (0.05) (0.05) popni 0.04 0.05 0.06 0.05 0.07 0.13 (0.21) (0.19) (0.30) (0.21) (0.21) (0.34) wageni -0.59 -0.84* -0.25 -0.74 -0.72 -0.24 (0.57) (0.51) (1.00) (0.53) (0.58) (1.08) aorni 0.03 0.01 -0.12 -0.02 0.01 -0.07 (0.07) (0.07) (0.12) (0.07) (0.07) (0.13) w.childni 0.01 0.01 0.00 0.01 0.01 0.01 (0.02) (0.01) (0.03) (0.02) (0.02) (0.03) sutudentni 0.01 -0.03 -0.04 -0.03 -0.00 -0.02 (0.08) (0.07) (0.10) (0.07) (0.08) (0.11) capitalni -0.04 0.03 0.04 0.04 -0.03 -0.12 (0.14) (0.13) (0.27) (0.15) (0.14) (0.32) prim.indni -0.02 -0.07 -0.07 -0.07 -0.04 -0.06 (0.08) (0.07) (0.10) (0.07) (0.08) (0.10) rainni -0.04 -0.06 -0.05 -0.05 -0.05 -0.06 (0.09) (0.07) (0.11) (0.08) (0.09) (0.12) tempni -0.14 -0.08 0.03 -0.06 -0.09 -0.02 (0.14) (0.14) (0.43) (0.15) (0.14) (0.44) commuteni -0.14 -0.07 -0.23 -0.08 -0.16 -0.32 (0.26) (0.22) (0.39) (0.23) (0.26) (0.42) 観測数 1419 1419 2034 2034 422 422 1950 1950 1327 210 決定係数 0.33 0.34 0.38 0.38 0.12 0.13 0.34 0.34 0.39 0.49 自由度修正 済み決定係数 0.33 0.33 0.38 0.38 0.12 0.11 0.34 0.34 0.38 0.45 14.24 (0.00) 57.16 (0.00) (0.00)5.79 995.76(0.00) (0.00)91.69 (0.00)69.90 F 値 706.40(0.00) (0.00)65.25 1249.22(0.00) 115.05(0.00) 航空機 鉄道 バス 自家用車 複数の交通手段

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2-10 の回帰式における有効求人倍率だけであった。 2-10 の回帰式を見ると 2005 年の分析時と同様に航空機、鉄道による移動時間の改善は人口流出 を増加させる傾向があり、バスによる移動時間の改善は人口流出を減少させる傾向が確認できた。 具体的には航空機による移動時間が1% 改善すると、1.93% 人口流出が増加し、鉄道による移動時 間が1% 改善すると 2.54% 人口流出が増加する傾向が観察された。バスでの移動時間が 1% 改善す ると人口流出は0.84% 減少する傾向も確認された。2005 年の分析では人口流出に与える影響は航 空機の方が強く推定されていたが、2010 年の分析では人口流出に与える影響は鉄道のほうが強く 推定された。有効求人倍率比の1% の改善は 0.33% 人口流出を減少させる傾向も確認された。 (注)有意水準は***:0.01、**:0.05、*:0.1である。    係数の下の括弧内の数値は標準誤差を表し、F値の括弧内の数値はp値を表す。 表11 全年齢における総移動人口での回帰分析(2010年)main2010 2-1 2-2 2-3 2-4 2-5 2-6 2-7 2-8 2-9 2-10 切片 17.42*** 17.83*** 17.04*** 17.27*** 12.85*** 12.90*** 13.67*** 13.94*** 27.11*** 27.12*** (0.69) (0.72) (0.30) (0.33) (0.37) (0.39) (0.28) (0.32) (0.68) (0.71) planeni -1.97*** -1.98*** -1.85*** -1.93*** (0.12) (0.12) (0.11) (0.11) railni -1.79*** -1.79*** -1.71*** -2.54*** (0.05) (0.05) (0.06) (0.14) busni -0.98*** -0.98*** 0.84*** (0.06) (0.06) (0.12) carni -1.14*** -1.13*** (0.04) (0.04) popni -0.06 -0.01 0.01 -0.02 0.00 -0.02 (0.19) (0.16) (0.20) (0.18) (0.16) (0.17) wageni 0.56 -0.10 -0.32 -0.03 -0.03 0.04 (0.64) (0.56) (0.67) (0.62) (0.55) (0.59) aorni -0.37** -0.24 -0.07 -0.27 -0.28* -0.33** (0.16) (0.15) (0.17) (0.17) (0.15) (0.16) w.childni -0.01 0.00 -0.00 -0.00 -0.00 -0.00 (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) sutudentni -0.04 -0.05 -0.03 -0.05 -0.05 -0.03 (0.08) (0.06) (0.08) (0.07) (0.06) (0.07) capitalni 0.12 0.12 0.07 0.13 0.11 0.10 (0.15) (0.13) (0.15) (0.14) (0.13) (0.13) prim.indni -0.05 -0.07 -0.04 -0.07 -0.08 -0.09 (0.07) (0.07) (0.08) (0.07) (0.07) (0.07) rainni -0.08 -0.06 -0.05 -0.06 -0.08 -0.12 (0.09) (0.08) (0.10) (0.09) (0.08) (0.09) tempni 0.06 0.12 -0.01 0.15 0.12 0.11 (0.18) (0.18) (0.19) (0.20) (0.17) (0.18) commuteni -0.23 -0.13 0.01 -0.14 -0.17 -0.16 (0.28) (0.24) (0.29) (0.27) (0.24) (0.26) 観測数 1968 1968 2040 2040 1831 1831 2040 2040 1876 1706 決定係数 0.11 0.12 0.37 0.38 0.15 0.15 0.25 0.25 0.41 0.40 自由度修正 済み決定係数 0.11 0.11 0.37 0.37 0.15 0.14 0.24 0.24 0.41 0.39 85.12 (0.00) 315.66 (0.00) 28.86(0.00) 661.78(0.00) (0.00)60.67 108.17(0.00) F 値 250.63(0.00) (0.00)23.48 1222.00(0.00) 111.65(0.00) 航空機 鉄道 バス 自家用車 複数の交通手段

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93 4.2 若年人口での回帰分析 人口移動は人生の中で頻繁に起こり得るものではなく、ライフイベントに伴い引き起こされる。 その中でも最も大きいと思われる進学や就職の時期を迎える18 歳から 22 歳に絞り分析を行う。図 2 で進学や就業のタイミングで人口移動数が上昇していることを確認した。そのため被説明変数を 18 歳から 22 歳の人口に変え分析する。 2005 年の移動時間を用いた若年人口移動数での回帰分析結果は表 12 である。3-1 から 3-8 の結 果が交通移動手段別に回帰を行った結果であり、3-9 と 3-10 は複数の交通手段の選択肢を同時に回 帰した場合の結果である。3-1 から 3-8 までの交通移動手段別に回帰を行った結果では移動時間の (注)有意水準は***:0.01、**:0.05、*:0.1である。    係数の下の括弧内の数値は標準誤差を表し、F値の括弧内の数値はp値を表す。 表12 若年移動人口での回帰分析結果(2005年)main2005y 3-1 3-2 3-3 3-4 3-5 3-6 3-7 3-8 3-9 3-10 切片 20.09*** 19.89*** 16.16*** 16.08*** 11.39*** 11.34*** 15.33*** 15.23*** 22.91*** 22.11*** (0.75) (0.66) (0.34) (0.30) (0.44) (0.31) (0.29) (0.26) (0.72) (1.76) planeni -2.92*** -2.92*** -2.41*** -2.19*** (0.14) (0.11) (0.13) (0.24) railni -1.98*** -1.98*** -0.96*** -0.64*** (0.06) (0.05) (0.09) (0.22) busni -0.93*** -0.93*** -0.28 (0.08) (0.05) (0.17) carni -1.77*** -1.78*** (0.05) (0.04) popni 0.49** 0.56*** 0.65*** 0.66*** 0.72*** 1.04*** (0.21) (0.18) (0.25) (0.19) (0.21) (0.33) wageni -3.07*** -3.35*** -2.49*** -3.33*** -2.94*** -2.35** (0.57) (0.50) (0.83) (0.48) (0.59) (1.05) aorni 0.15** 0.11* 0.05 0.12* 0.13* 0.15 (0.07) (0.07) (0.10) (0.06) (0.08) (0.12) w.childni -0.01 -0.01 0.00 -0.01 -0.00 -0.00 (0.02) (0.01) (0.02) (0.01) (0.02) (0.03) sutudentni -0.32*** -0.40*** -0.45*** -0.43*** -0.41*** -0.48*** (0.08) (0.07) (0.08) (0.07) (0.08) (0.11) capitalni -0.08 -0.04 -0.14 -0.14 -0.14 -0.55* (0.14) (0.13) (0.22) (0.14) (0.14) (0.32) prim.indni -0.01 -0.07 0.00 -0.08 -0.09 -0.06 (0.08) (0.07) (0.08) (0.07) (0.08) (0.10) rainni -0.25*** -0.23*** -0.13 -0.23*** -0.27*** -0.19* (0.09) (0.07) (0.09) (0.07) (0.09) (0.12) tempni 0.82*** 0.90*** 1.28*** 1.02*** 0.83*** 1.43*** (0.14) (0.14) (0.36) (0.14) (0.15) (0.43) commuteni -0.67*** -0.62** -0.89*** -0.64*** -0.70*** -1.02** (0.26) (0.22) (0.32) (0.21) (0.26) (0.41) 観測数 1419 1419 2034 2034 422 422 1950 1950 1326 210 決定係数 0.25 0.42 0.37 0.50 0.25 0.66 0.42 0.56 0.44 0.68 自由度修正 済み決定係数 0.25 0.42 0.37 0.50 0.25 0.66 0.42 0.56 0.44 0.66 32.01 (0.00) 142.63 (0.00) 74.51(0.00) 1425.14(0.00) 226.03(0.00) (0.00)86.66 F 値 461.32(0.00) (0.00)93.87 1192.67(0.00) 189.03(0.00) 航空機 鉄道 バス 自家用車 複数の交通手段

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変数に関して係数は全て負で有意に推定された。複数の交通手段の選択肢を同時に考慮し回帰した 場合、バスの移動時間に関しては有意とならなかった。なおコントロール変数は人口比、賃金比、 有効求人倍率比、学生比が有意となった。アメニティを示すと考えられる変数のうち社会資本比は 3-10 のみで有意であったが、降水量比、平均気温比、通勤時間比は強く有意となった。 3-10 は複数の交通手段の選択肢がある中で、それらの選択肢を同時に回帰したものである。こ れによると、航空機による移動時間と鉄道による移動時間の減少は若年に限った場合でも人口流出 を増加させる方向で有意となっている。航空機による移動時間が1% 減少すると人口流出は 2.19% 増加し、鉄道による移動時間が1% 減少すると人口流出は 0.64% 増加する。バスによる移動時間は (注)有意水準は***:0.01、**:0.05、*:0.1である。    係数の下の括弧内の数値は標準誤差を表し、F値の括弧内の数値はp値を表す。 表13 若年移動人口での回帰分析結果(2010年)main2010y 4-1 4-2 4-3 4-4 4-5 4-6 4-7 4-8 4-9 4-10 切片 13.70*** 13.63*** 16.07*** 15.96*** 12.53*** 12.26*** 13.60*** 13.50*** 23.83*** 23.93*** (0.78) (0.76) (0.33) (0.34) (0.39) (0.39) (0.29) (0.31) (0.700) (0.74) planeni -1.69*** -1.67*** -1.52*** -1.54*** (0.14) (0.13) (0.11) (0.12) railni -1.98*** -1.99*** -1.89*** -1.64*** (0.06) (0.05) (0.06) (0.15) busni -1.25*** -1.27*** -0.23* (0.06) (0.06) (0.13) carni -1.46*** -1.46*** (0.05) (0.04) popni 0.59*** 0.62*** 0.69*** 0.62*** 0.67*** 0.66*** (0.21) (0.17) (0.20) (0.17) (0.17) (0.18) wageni -1.49** -2.07*** -2.71*** -2.07*** -2.13*** -2.23*** (0.68) (0.56) (0.66) (0.59) (0.57) (0.62) aorni -0.03 0.11 0.40** 0.11 0.09 0.08 (0.17) (0.16) (0.17) (0.16) (0.16) (0.17) w.childni 0.00 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 (0.02) (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) sutudentni -0.40*** -0.42*** -0.39*** -0.42*** -0.42*** -0.39*** (0.08) (0.07) (0.08) (0.07) (0.07) (0.07) capitalni -0.13 -0.13 -0.21 -0.12 -0.14 -0.16 (0.16) (0.13) (0.15) (0.13) (0.13) (0.14) prim.indni -0.03 -0.03 -0.00 -0.03 -0.05 -0.06 (0.08) (0.07) (0.07) (0.07) (0.07) (0.07) rainni -0.12 -0.10 -0.08 -0.09 -0.12 -0.15 (0.10) (0.08) (0.10) (0.09) (0.08) (0.09) tempni 0.67*** 0.74*** 0.59*** 0.76*** 0.74*** 0.74*** (0.19) (0.18) (0.18) (0.19) (0.18) (0.19) commuteni -0.86*** -0.75*** -0.57** -0.74*** -0.80*** -0.80*** (0.30) (0.25) (0.29) (0.26) (0.25) (0.27) 観測数 1967 1967 2039 2039 1830 1830 2039 2039 1875 1705 決定係数 0.07 0.18 0.38 0.48 0.20 0.31 0.33 0.43 0.48 0.44 自由度修正 済み決定係数 0.07 0.17 0.38 0.48 0.20 0.31 0.33 0.43 0.48 0.44 103.41 (0.00) 458.46 (0.00) 74.46(0.00) 1019.67(0.00) 141.14(0.00) 142.50(0.00) F 値 144.90(0.00) (0.00)38.49 1243.49(0.00) 169.31(0.00) 航空機 鉄道 バス 自家用車 複数の交通手段

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95 人口流出に関して有意ではなくなっている。しかし、有意ではないにしても負の方向で推定されて いる。コントロール変数を詳しくみる。相対的に人口が1% 増加すると人口流出は 1.04% 増加す る。自地域の賃金が相対的に1% 改善すると人口流出は 2.35% 減少する。自地域の学生数比の 1% の改善は人口流出を0.48% 減少させる。社会資本比の 1% の改善は人口流出を 0.55% 減少させる。 降水量比が1% 多くなると人口流出は 0.19 減少し、平均気温比が 1% 高くなると人口流出は 1.43% 増加する。通勤時間比が1% 増加すると人口流出は 1.02% 減少するような傾向を確認することがで きた。 (注)有意水準は***:0.01、**:0.05、*:0.1である。    係数の下の括弧内の数値は標準誤差を表し、F値の括弧内の数値はp値を表す。 表14 総人口に占める総移動人口割合での回帰分析(2005年)tpfr2005 5-1 5-2 5-3 5-4 5-5 5-6 5-7 5-8 5-9 5-10 切片 4.52*** 4.53*** 1.36*** 1.38*** -2.08*** -2.03*** 0.50** 0.52*** 6.97*** 7.16*** (0.58) (0.47) (0.26) (0.22) (0.40) (0.25) (0.23) (0.19) (0.50) (1.31) planeni -2.32*** -2.33*** -1.90*** -2.02*** (0.11) (0.09) (0.09) (0.18) railni -1.57*** -1.57*** -0.79*** -0.64*** (0.05) (0.04) (0.07) (0.16) busni -0.80*** -0.80*** -0.01 (0.07) (0.04) (0.13) carni -1.37*** -1.37*** (0.04) (0.03) popni -0.45*** -0.43*** -0.46** -0.45*** -0.42*** -0.37 (0.15) (0.13) (0.20) (0.14) (0.15) (0.24) wageni -0.59 -0.76** -0.46 -0.73** -0.72* -0.35 (0.41) (0.37) (0.68) (0.36) (0.41) (0.78) aorni 0.02 -0.02 -0.06 -0.03 0.00 -0.05 (0.05) (0.05) (0.08) (0.05) (0.05) (0.09) w.childni 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 (0.01) (0.01) (0.02) (0.01) (0.01) (0.02) sutudentni -0.00 -0.04 -0.04 -0.03 -0.01 -0.03 (0.06) (0.05) (0.07) (0.05) (0.06) (0.08) capitalni -0.03 0.02 0.05 0.04 -0.03 -0.10 (0.10) (0.09) (0.18) (0.11) (0.10) (0.24) prim.indni -0.03 -0.07 -0.08 -0.07 -0.05 -0.07 (0.06) (0.05) (0.07) (0.05) (0.05) (0.07) rainni -0.05 -0.06 -0.05 -0.05 -0.05 -0.06 (0.06) (0.05) (0.07) (0.05) (0.06) (0.09) tempni -0.13 -0.07 0.04 -0.06 -0.08 0.02 (0.10) (0.10) (0.30) (0.10) (0.10) (0.32) commuteni -0.14 -0.10 -0.18 -0.08 -0.16 -0.28 (0.19) (0.16) (0.26) (0.16) (0.18) (0.31) 観測数 1419 1419 2034 2034 422 422 1950 1950 1327 210 決定係数 0.26 0.51 0.38 0.57 0.24 0.72 0.41 0.60 0.57 0.81 自由度修正 済み決定係数 0.26 0.51 0.38 0.57 0.23 0.71 0.41 0.60 0.57 0.79 F 値 489.78(0.00) 135.46(0.00) 1219.07(0.00) 245.37(0.00) 129.74(0.00) (0.00)95.69 1327.36(0.00) 261.82(0.00) 144.86(0.00) (0.00)62.94 航空機 鉄道 バス 自家用車 複数の交通手段

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2010 年の移動時間を用いた若年人口移動数での回帰分析結果は表 13 である。4-1 から 4-8 の結 果が交通移動手段別に回帰を行った結果であり、4-9 と 4-10 は複数の交通手段の選択肢を同時に回 帰した場合の結果である。この分析では全ての回帰式において交通移動時間に関する係数は全て負 で有意に推定された。人口比、賃金比、学生比、平均気温比、通勤時間比が全ての分析において有 意、有効求人倍率比のみ4-6 の分析で有意となった。 4-10 は複数の交通手段の選択肢を同時に考慮した回帰結果を示している。これによると航空機 による移動時間が1% 減少すると人口流出は 1.54% 増加し、鉄道による移動時間が 1% 減少すると 人口流出は1.64% 増加する。ここではバスによる移動時間も 1% 減少すると人口流出は 0.23% 増加 (注)有意水準は***:0.01、**:0.05、*:0.1である。    係数の下の括弧内の数値は標準誤差を表し、F値の括弧内の数値はp値を表す。 表15 総人口に占める総移動人口割合での回帰分析(2010年)tpfr2010 6-1 6-2 6-3 6-4 6-5 6-6 6-7 6-8 6-9 6-10 切片 -0.84 -0.63 1.18*** 1.42*** -1.82*** -1.81*** -0.76*** -0.52** 7.08*** 7.30*** (0.59) (0.54) (0.26) (0.24) (0.30) (0.27) (0.22) (0.22) (0.48) (0.50) planeni -1.30*** -1.28*** -1.16*** -1.17*** (0.11) (0.09) (0.07) (0.08) railni -1.56*** -1.55*** -1.43*** -1.36*** (0.04) (0.04) (0.04) (0.10) busni -0.95*** -0.95*** -0.08 (0.05) (0.04) (0.09) carni -1.14*** -1.14*** (0.04) (0.03) popni -0.54*** -0.51*** -0.47*** -0.51*** -0.50*** -0.52*** (0.15) (0.12) (0.14) (0.12) (0.11) (0.12) wageni 0.34 -0.08 -0.51 -0.09 -0.07 -0.06 (0.48) (0.39) (0.47) (0.42) (0.39) (0.42) aorni -0.29** -0.25** 0.02 -0.25** -0.26** -0.27** (0.12) (0.11) (0.12) (0.11) (0.11) (0.12) w.childni -0.01 0.00 -0.00 -0.00 -0.00 -0.00 (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) sutudentni -0.04 -0.05 -0.04 -0.05 -0.05 -0.04 (0.06) (0.05) (0.06) (0.05) (0.05) (0.05) capitalni 0.11 0.12 0.06 0.12 0.11 0.11 (0.11) (0.09) (0.11) (0.10) (0.09) (0.09) prim.indni -0.05 -0.07 -0.04 -0.07 -0.08* -0.08 (0.06) (0.05) (0.05) (0.05) (0.05) (0.05) rainni -0.07 -0.06 -0.03 -0.06 -0.07 -0.08 (0.07) (0.06) (0.07) (0.06) (0.06) (0.06) tempni 0.04 0.13 -0.02 0.14 0.12 0.12 (0.14) (0.13) (0.13) (0.13) (0.12) (0.13) commuteni -0.17 -0.14 0.04 -0.13 -0.15 -0.15 (0.21) (0.17) (0.21) (0.18) (0.17) (0.18) 観測数 1968 1968 2040 2040 1831 1831 2040 2040 1876 1706 決定係数 0.07 0.29 0.38 0.58 0.19 0.42 0.34 0.54 0.59 0.57 自由度修正 済み決定係数 0.07 0.29 0.38 0.58 0.19 0.41 0.34 0.53 0.58 0.57 171.36 (0.00) 439.34 (0.00) 117.41(0.00) 1039.65(0.00) 212.53(0.00) 220.05(0.00) F 値 147.34(0.00) (0.00)73.03 1271.77(0.00) 256.76(0.00) 航空機 鉄道 バス 自家用車 複数の交通手段

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97 する傾向が確認された。人口比が1% 増加すると人口流出は 0.66% 増加する。自地域の賃金が相対 的に1% 改善すると人口流出は 2.23% 減少する。自地域の学生数比の 1% の改善は人口流出を 0.39% 減少させる。平均気温比が 1% 高くなると人口流出は 0.74% 増加する。通勤時間比が 1% 増 加すると人口流出は0.80% 減少するような傾向を確認することができた。 (注)有意水準は***:0.01、**:0.05、*:0.1である。    係数の下の括弧内の数値は標準誤差を表し、F値の括弧内の数値はp値を表す。 表16 若年人口に占める若年移動人口割合での回帰分析(2005年)ypfr2005 7-1 7-2 7-3 7-4 7-5 7-6 7-7 7-8 7-9 7-10 切片 3.14*** 2.97*** 2.86*** 2.80*** 1.41** 1.30*** 3.31*** 3.21*** 5.08*** 3.95*** (0.84) (0.53) (0.38) (0.25) (0.67) (0.27) (0.31) (0.19) (0.57) (1.52) planeni -1.94*** -1.94*** -1.54*** -1.19*** (0.15) (0.10) (0.10) (0.21) railni -1.68*** -1.68*** -0.70*** 0.58*** (0.06) (0.04) (0.08) (0.19) busni -1.28*** -1.29*** -1.26*** (0.12) (0.05) (0.15) carni -1.69*** -1.69*** (0.05) (0.03) popni 0.05 0.14 0.15 0.19 0.11 0.40 (0.17) (0.15) (0.22) (0.14) (0.17) (0.28) wageni -2.96*** -3.23*** -2.63*** -3.30*** -3.53*** -2.74*** (0.46) (0.42) (0.74) (0.35) (0.46) (0.91) aorni 0.15** 0.08 0.14 0.12** 0.13** 0.13 (0.06) (0.06) (0.09) (0.05) (0.06) (0.11) w.childni -0.01 -0.01 0.01 -0.01 -0.00 0.02 (0.01) (0.01) (0.02) (0.01) (0.01) (0.03) sutudentni -0.44*** -0.51*** -0.56*** -0.53*** -0.47*** -0.58*** (0.07) (0.06) (0.07) (0.05) (0.07) (0.09) capitalni -0.01 0.02 -0.02 -0.04 0.04 -0.27 (0.12) (0.11) (0.20) (0.10) (0.11) (0.27) prim.indni -0.02 -0.09 -0.02 -0.09* -0.09 -0.05 (0.06) (0.06) (0.07) (0.05) (0.06) (0.08) rainni -0.25*** -0.23*** -0.11 -0.22*** -0.26*** -0.15 (0.07) (0.06) (0.08) (0.05) (0.07) (0.10) tempni 0.82*** 0.94*** 1.32*** 1.03*** 1.05*** 1.72*** (0.11) (0.11) (0.32) (0.10) (0.12) (0.37) commuteni -0.70*** -0.69*** -0.84*** -0.67*** -0.72*** -1.08*** (0.21) (0.18) (0.28) (0.15) (0.20) (0.36) 観測数 1419 1419 2034 2034 422 422 1950 1950 1327 210 決定係数 0.10 0.65 0.25 0.68 0.22 0.88 0.36 0.78 0.69 0.91 自由度修正 済み決定係数 0.10 0.65 0.25 0.67 0.22 0.88 0.36 0.78 0.68 0.91 157.93 (0.00) 239.88 (0.00) F 値 160.33(0.00) 242.02(0.00) 675.52(0.00) 383.51(0.00) 117.59(0.00) 281.50(0.00) 1091.93(0.00) 632.82(0.00) 航空機 鉄道 バス 自家用車 複数の交通手段

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4.2 頑健性チェックのための予備的分析 以上の分析の頑健性を確かめるため、被説明変数を総人口に占める移動人口の割合に変えて、同 じように回帰分析を行う。表14 は 2005 年の移動時間を用いた総移動数の人口の割合での回帰分析 結果である。移動時間の変数に関して符号や有意性は変化していないことがわかる。 表15 は 2010 年の移動時間を用いた総移動数の人口の割合での回帰分析結果である。またこちら も移動時間の変数に関して符号や有意性は変化していない。 被説明変数を人口に占める移動者の割合に変えたとしても、全年齢での人口移動に関してその他 の変数は有意とならなかった。 (注)有意水準は***:0.01、**:0.05、*:0.1である。    係数の下の括弧内の数値は標準誤差を表し、F値の括弧内の数値はp値を表す。 表17 若年人口に占める若年移動人口割合での回帰分析(2010年)ypfr2010 8-1 8-2 8-3 8-4 8-5 8-6 8-7 8-8 8-9 8-10 切片 -2.13*** -2.47*** 2.99*** 2.86*** 0.10** 0.63** 2.18*** 2.01*** 5.84*** 6.17*** (0.81) (0.62) (0.36) (0.28) (0.40) (0.29) (0.29) (0.22) (0.57) (0.58) planeni -0.88*** -0.85*** -0.70*** -0.64*** (0.15) (0.11) (0.09) (0.09) railni -1.69*** -1.69*** -1.55*** -0.25** (0.06) (0.04) (0.05) (0.11) busni -1.22*** -1.26*** -1.28*** (0.06) (0.04) (0.10) carni -1.45*** -1.45*** (0.05) (0.03) popni 0.22 0.23* 0.32** 0.24* 0.28** 0.28** (0.17) (0.14) (0.15) (0.12) (0.14) (0.14) wageni -1.82*** -2.27*** -3.04*** -2.35*** -2.39*** -2.59*** (0.56) (0.46) (0.50) (0.42) (0.47) (0.48) aorni 0.11 0.14 0.55*** 0.18 0.15 0.19 (0.14) (0.13) (0.13) (0.12) (0.13) (0.13) w.childni 0.00 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01 (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) (0.01) sutudentni -0.51*** -0.52*** -0.49*** -0.53*** -0.53*** -0.50*** (0.07) (0.05) (0.06) (0.05) (0.06) (0.06) capitalni -0.13 -0.09 -0.20* -0.10 -0.12 -0.12 (0.13) (0.11) (0.11) (0.10) (0.11) (0.11) prim.indni -0.03 -0.06 -0.01 -0.05 -0.08 -0.08 (0.06) (0.06) (0.06) (0.05) (0.06) (0.06) rainni -0.12 -0.11* -0.06 -0.10 -0.12* -0.13* (0.08) (0.07) (0.07) (0.06) (0.07) (0.07) tempni 0.63*** 0.77*** 0.54*** 0.77*** 0.76*** 0.77*** (0.16) (0.15) (0.14) (0.13) (0.14) (0.15) commuteni -0.88*** -0.85*** -0.60*** -0.81*** -0.87*** -0.86*** (0.25) (0.20) (0.22) (0.18) (0.20) (0.21) 観測数 1968 1968 2040 2040 1831 1831 2040 2040 1876 1706 決定係数 0.02 0.45 0.27 0.66 0.19 0.62 0.32 0.716 0.655 0.676 自由度修正 済み決定係数 0.02 0.45 0.27 0.66 0.19 0.62 0.32 0.715 0.652 0.673 271.42 (0.00) 415.05 (0.00) 270.27(0.00) 961.62(0.00) 465.06(0.00) 294.33(0.00) F 値 (0.00)37.34 148.10(0.00) 745.31(0.00) 362.52(0.00) 航空機 鉄道 バス 自家用車 複数の交通手段

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99 表16 は 2005 年の移動時間を用いた若年移動数の若年人口の割合での回帰分析結果である。また こちらも移動時間の変数に関して符号や有意性は変化していないことがわかる。バスでの移動時間 の係数は負の方向で有意となった。他の移動時間に関する変数は同様に負で有意であることがわか る。賃金比と学生比は負の方向で同じく有意である。社会資本比と降水量比に関しての有意は失わ れたがおおよそ係数の大きさは同じである。 表17 は 2010 年の移動時間を用いた若年移動数の若年人口の割合での回帰分析結果である。また こちらも移動時間の変数に関して符号や有意性は変化していないことがわかる。バスでの移動時間 の係数は負で有意性が強まっており、他の移動時間の係数も同様に負で有意である。コントロール 変数の係数も大きくは変わらず、有意水準もほとんど同じである。降水量比だけ負で有意となっ た。 5.まとめ 単にインフラ整備と言っても輸送モードの違いによって人口の移動には異なる影響があることが 示唆された。分析全体を通じて全ての年齢階級の人口移動、若年層の人口移動に関して航空機・鉄 道の移動時間の改善は人口流出を増加させる傾向があった。航空機・鉄道の移動時間の改善により 人々は移動コストが減少したと感じていると考えられる。全ての年齢階級での分析の場合、バスで の移動時間の減少は平均して、人口流出を止める傾向が確認されたが、若年層の人口移動に限定す るとバスでの移動時間の減少も人口流出を増やす傾向が確認された。都道府県をまたぐような長距 離移動においてバスを用いることは体力の面でも余裕のある若年層には流出させる影響があるので はないかと考えられる。また若年層は費用にも敏感に反応すると考えられるためバスでの移動時間 の減少により、バス移動の利便性が向上すると相対的に他の交通手段より安価なバスによる人口流 出が起きる可能性も示唆される。若年層の人口移動では賃金が影響を与えるが、それ以外の年齢層 の場合は賃金の影響はない可能性が示唆された。当然の結果ではあるが、その地域の学生数は、大 学・短大の定員と捉えることができ、若年層に対する需要が大きいと考えられる。そのため学生数 が増えると若年人口の流出は減少する可能性も示唆された。平均気温のように環境に関して若年者 は反応するが、それ以外の年齢層は反応しない傾向も示せた。通勤時間の増加が人口流出を減少さ せる傾向があった。これは不効用の増加にも関わらず、その地にとどまる傾向があるような結果だ が、通勤時間の大きい地域は総じて都会であるためだと解釈できる。 重力モデルの実証では手法の議論が盛んになっており、イェンセンの不等式などの問題が指摘さ れている。Silva and Tenreyro(2006)が提案している PPML などの手法を用いるべきではあるが、 距離の変数を複数に分解すると統計ソフトの制約上扱えなかった。データの制約上、期間が2 期間 しかなく、追跡したサンプルではないなど因果関係の実証に耐え得るデータではない。そのため相 関関係だけでの検証となっている。しかしながら交通インフラによる移動時間と人口流出に頑健に 関連性があることは示せた。さらに交通モード別の移動時間の改善と人口流出との間の相関性を確 かめた。多くの地方行政は交通インフラの整備を地域復興の一助として取り組んでいるが、本稿で 明らかにした人口移動との関連性によれば、それらの政策は人口流出を加速してしまい、期待する 結果にならない恐れもある。そのため地方創生を考える場合、交通インフラの改善による人口流出 の影響が強いことを考慮し、その影響を打ち消す経済政策を同時に検討する必要性がある可能性を 示唆した。

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