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学位 論文審査の要旨 主査

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 井 村 悦 夫

学 位 論 文 題 名

移植テンサイの合理的栽培管理法に関する土壌肥料学的研究 学位論文内容の要旨

  紙 筒移植 栽培は1961年 から普及が開始され、1980年以降10090に近い普及によルテンサイの糖生 産 量は大き く向上 した。一 方、移 植栽培の 普及に 伴い収量と品質における地域・圃場間格差の存 在 が明らか となり 、その原 因を解 明し対策 を提示 するために、移植テンサイの諸特性を明らかに し 、これを 生かし た肥培技 術の構 築を計る 必要が 生じた。

  解決すべき課題として、(1)生育期間の更なる延長効果、(2)作業性を優先した栽植様式による 生 育後期の 茎葉の 競合問題 、(3)窒素とりン酸の過剰施肥による糖生産量の低下と生産費の増加、

並 びに環境 汚染問 題、(4)ジャガ イモそう か病や そう根病 などの土 壌病害 を回避するための畑土 壌 のpH管理 などが挙 げられる 。

  そ こで本 研究憾、 紙筒移植 テンサ イの諸特 性を明 らかにしてその長所を生かした合理的栽培管 理 法を解明 し、環 境を保全 しつつ 生産性の 向上を 図るための方策を提示することを目的として実 施 した。

  得 られた 結果の概 要は以下 の通り である。

1.紙筒移 植の特 性を生か した苗 育成法と 本畑栽培 法

  1)3月 中旬ま での早期 紙簡内 播種と早 期の圃場 移植に よってテンサイの生育期間を更に延長す るこ とにより 、糖含 有率が低 下する ことなく 糖集積 量が増加 した。

  2)早期移 植の効 果を高め るためには苗への耐霜性の付与が重要であり、そのためには40日以上 の 苗 齢 と 、 移 植 直 前7ー 10日 間 の 外 気 を 利 用 し た 低 温 育 苗 処 理 が 有 効 で あ っ た 。   3)移植テ ンサイ は欠株が 発生し た場合で も補償 能カが高 かった。 しかし 、移植テ ンサイの速 い 茎 葉の 成 長 は8月 以 降に 地 上 部の 競 合 を もたら し、同化 産物の 根部への 分配を 低下させ た。

こ の 対策 と し て、 現 行 の栽 植 様 式よ り 株 間 を広 げ 畦 幅を 狭 く する 栽 植様 式が有 効であっ た。

  4)8月 以降に 地上部の 競合が 激しくな った場合 の対策 として、成長抑制剤の葉面散布によって 糖含 有率と糖 集積量 を向上さ せる方 法を確立 した。

2.窒素 肥培管 理法

  1)無窒素 栽培を 行った結 果、地域により窒素地カに差があることと地域により施肥窒素の利用 率 が 異 な る こ と を 明 ら か に し 、 地 域 別 、 窒 素 地 力 別 の 適 正 施 肥 量 診 断 表 を 作 成 し た 。   2)製糖原 料とし て望まし い17%以上の糖 含有率 を達成す るために は、8月下旬 の窒素含有率が 地 上 部 で25. Ogkg・'DM以 下 、 根 部 で7.5gkgー  ̄DM以 下 で あ る こ と が 必 要 で あ っ た 。   3)糖集積 量が最 大となる 窒素施肥量は、糖含有率が窒素施肥量が少ない程高くなるために、根     ―237―

(2)

重が最大となる窒素施肥量に比ベ18kgha‑'から33kgha−1少なかった。

  4)施肥窒 素量と 収穫期に おける 菜根中の アミノ態 窒素含 有率には 高い正 の相関が 存在し た。

さら に収穫期 におけ る菜根中 のアミ ノ態窒素 含有率と 糖集積 量の関係から、アミノ態窒素含有率 が1. Ocmolkg‑1FM以下では窒素不足、1.Ocmolkg‑Iから2. 5cmolkg−Iの範囲は適正、2.ocmolkg‑'以上 では 窒素過剰 である ことを明 らかに して、こ れをもと に次年 度の栽培のための適正な窒素施肥診 断が可能であることを示した。

3.リン酸肥培管理法

  1)育苗土壌に対するりン酸施肥量を標準の1. 5kgPzOsha−1から9.OkgP20sha ̄に増肥したりン酸増 肥育 苗は、特 に火山 性土壌を 育苗土 に使った 場合の紙 簡苗の 生育量を高め、収穫期の糖集積量を 増加させた。

  2)リン酸 を増肥 した育苗 により 、本畑で無リン酸栽培をしてもりン酸施肥をした場合と変わら ない 生育と糖 集積量 を達成す ること が可能で あった。 一方、 直播栽培では標準量の本畑リン酸施 肥が必要であり、初期生育重点型リン酸施肥の意義が明らかとなった。

′3)リン 酸増肥 育苗によ る糖集積 量の確 保は、トルオーグ法による土壌の有効態リン酸(P20s)含 有率が50mgkg‑l乾土程度の低リン酸土壌でも可能であった。

4‑ナトリウムの施肥効果と土壌診断基準値

  1)ナ卜リ ウムは 硝酸吸収 を促進 して茎葉の成長を速めることを明らかにし、糖含有率を低下さ せることなく糖集積量を増加させることを示した。

  2)ナトリ ウムの 施肥効果 が期待 できる土壌の交換性ナトリウム(Na20)含有率は50mgkg‑l乾土以 下 で あ る こ と を 明 ら か に し 、 こ れ を 土 壌 診 断 基 準 に 入 れ る べ き で あ る と 提 案 し た 。 5‑ pH管理法

  1)バレイ ショ栽 培におい てジャ ガイモそうか病の回避のため、畑土壌pHを5.5以下に維持する 必要 があり、 バレイ ショを含 む輪作 様式でテ ンサイを 栽培す る場合には、アルミニウムの溶出に よル テンサイ の生育 が抑制さ れる。 株間の土 壌pHの低 下による 根重と糖集積量の低下は土壌の種 類に より異な り、褐 色火山性 土と褐 色低地土 では比較 的小さ く、湿性黒色火山性土では大きかっ た。

  2)アンモ ニア系 および尿 素系肥 料の作条施肥に伴う紙筒苗周辺の株間土壌pHの低下を抑制する ため 、反応性 の高い 粒状生石 灰を肥 料と同時 に作条混 和施肥 する方法を開発・利用した結果、移 植後 に紙簡苗 に悪影 響を及ぼ すこと がなく、 土壌pH5.5以下の 土壌で糖 集積量 が増加し た。この 方 法 は 紙 筒 移 植 テ ン サ イ の 特 徴 を 生 か し たpH管 理 技 術 と し て 有 効 で あ っ た 。  ・

  以上の 結果から、移植テンサイの特徴を生かした糖集積量を高める合理的栽培管理法としては、

(1)早期播 種、(2)耐霜性 を付与し た苗の育成、(3)苗を早期に移植することによる生育期間の更 をる延 長、(4)低pH土壌 における 粒状生 石灰の肥 料との 作条混和 施肥、(5)菜根中のアミノ態窒素 含有率 を判断基 準とし た適正窒 素施肥 、(6)初 期生育の 確保に 重点をおいたりン酸施肥、(7)ナト リ ウ ム 施 肥 に よ る 茎葉 成 長 促 進、 な ら びに(8)8月 以 降に 茎 葉 間競 合 が 生じ た 場 合 のCMHの葉 面散布 による茎 葉成長 制御、が 有効で あり、窒 素とりン 酸の過 剰施肥の適正化により、生産費の 低 下 と 環 境 の 富 栄 養 化 を 抑 制 す る こ と が 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。

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(3)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

但野 島本 波多野 山口

学 位 論 文 題 名

利秋 義也 隆介 淳一

移植テンサイの合理的栽培管理法に関する土壌肥料学的研究

    本 論 文 は こ 図 52、 表 45、 引 用 文 献 86を 含 み 、8章 か ら な る 総 頁 数157の 和 文 論 文 で あ る 。 別 に 参 考 論 文23編 が 添 え ら れ て い る 。

  紙 筒 移 植 栽 培 の 普 及 に よ ル テ ン サ イ の 糖 生 産 量 は 著 し く 向 上 し た 。 一 方 、 移植 栽 培 の普 及 に 伴 い 収 量 と 品 質 に お け る 地 域 ・ 圃 場 間 格 差 が 明 ら か と な り 、 そ の 原因 を 解 明し て 対 策 を 提 示 す る 必 要 が 生 じ た 。 解 決 す べ き 課 題 と し て 、(1)生 育 期 間 の 更 な る 延 長効 果 、(2)作 業 性 優 先 の 栽 植 様 式 の 見 直 し 、(3)窒 素 と り ン 酸 の過 剰 施 肥に よ る 糖 生産 量 の 低下 と 生 産費 の 増 加 な ら び に 環 境 汚 染 問 題 、(4)ジ ャ ガ イ モ そ うか 病 回 避の た め の 畑土 壌 低pH化 に よる テ ン サ イ の 生 育 障 害 な ど が あ る 。 本 論 文 は 、 上 記 の 課 題 に 対 す る 対 策 法 を明 ら か にし て 、 紙 筒 移 植 テ ン サ イ の 長 所 を 生 か し た 合 理 的 栽 培 管 理 法 を 提 示 す る こ と を 目的 と し て実 施 さ れ た 研 究 の 結 果 を と り ま と め た も の で あ る 。 得 ら れ た 結 果 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。

1. 紙 筒 移 植 の 長 所 を 生 か し た 苗 育 成 法 と 本 畑 栽 培 法

1) 早 期 紙 筒 内 播 種 と 早 期 圃 場 移 植 に よる 生 育 期間 の 更 な る延 長 に より 、 テ ンサ イ の 根重 は 増 加 レ 、 根 の 糖 含 有 率 は 維 持 さ れ 、 糖 集 積 量 は 増 加 し た 。

2) 早 期 移 植 の 効 果 を 高 め る た め に は 苗へ の 耐 霜性 の 付 与 が必 須 で ある が 、40日 以 上の 苗 齢 と 、 移 植 直 前 7‑10日 間 の 低 温 育 苗 処 理 に よ り 耐 霜 性 が 付 与 さ れ た 。 3) 移 植 テ ン サ イ の 速 い 茎 葉 成 長 は8月 以 降 に 地 上 部 の 競 合 を も た ら し 、 同化 産 物 の根 部 へ の 分 配 を 低 下 さ せ た 。 こ の 対 策 と し て 株 間 を 広 げ 、 畦 幅 を 狭 め る 栽植 法 が 有効 で あ った 。 4) 生 育 後 期 に 地 上 部 競 合 が 激 し い 場 合、 成 長 抑制 剤 の 葉 面散 布 に より 糖 含 有率 と 糖 集積 量 を 向 上 さ せ る 方 法 を 確 立 し た 。

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1)多 数 の 農 家 圃 場 で 無 窒 素 栽 培 を 実 施 し て 、 地域 に よ って 窒 素 地カ と 施 肥 窒素 の 利 用効 率 に 差 が あ る こ と を 明 ら か に し 、 地 域 別 、 窒 素 地 力別 の 適 正窒 素 施 肥量 診 断 表 を作 成 し た。

(4)

2 )製糖原料として望まレい170/0 以上の糖含有率を達成するためには、8 月下旬の窒素含有率 が 地 上 部 で 2.5% 以 下、 根部 で0.75% 以 下で ある こと が必 要で ある こと を明 らか にレた 。 3 )糖集積量が最大となる窒素施肥量は根重が最大となる窒素施肥量よりha 当たり18kg から 33kg 少ないことを示した。

4 )施肥窒素量と収穫期の菜根中のアミノ態窒素含有率には高い正の相関が存在した。アミ ノ 態窒 素含 有率と 糖集 積量 の関 係か ら、 アミ ノ態窒素含有率が10mmolkg" 新鮮重以下では 窒 素不 足、 10 から 25mmolkg" の 範囲 で適 正、25mmolkg‑l 以上では窒素過剰であることを明 ら か に レ 、 こ れ を も と に し て 適 正 な 窒 素 施 肥 診 断 が 可 能 で あ る こ と を 提 案 し た 。

3. リン酸肥培管理法

1 )育苗土壌に対するりン酸施肥量を標準のl.5kgP205ba" から9.OkgP20 蚣l に増肥したりン酸 増 肥 育 苗 ; ま 苗 の 生 育 量 を 高 め 、 収 穫 期 の 糖 集 積 量 を 増 加 さ せ た 。 2 )リン酸増肥育苗により、本畑で無リン酸栽培をレても生育と糖集積量の低下は起こらな かった。一方、直播栽培では本畑リン酸施肥が必須であった。

3 )これらの結果から、紙筒移植テンサイでは育苗土壌に対するりン酸施肥量の増肥による 初期生育重点型のりン酸施肥法で充分であり、リン酸増肥育苗法を採用することにより本 畑でのりン酸施肥量を大幅に滅少できることを明らかにした。

4. ナトリウムの施肥効果と土壌診断基準値

1 )ナトリウムは硝酸吸収を促進して茎葉の成長を速め、糖含有率を低下させることなく糖 集積量を増加させることを明らかにした。

2 )ナトリウムの施肥効果が期待できる土壌診断基準値として、土壌の交換性ナトリウム含 有率5.OmgNa20/lOOg 乾土以下を提案した。

5.pH 管理法

1 )ジ ャガイモそうか病の回避のためには、畑土壌pH を5.5 以下に維持することが必要であ る が 、 テ ン サ イ の 生 育 は こ の pH で は ア ル ミ ニ ウ ム の 溶 出 に よ り 抑 制 さ れ た 。 乃こ の問題に対する対策技術を開発するために株間土壌のみに反応性の高い粒状生石灰を 肥料とともに作条混和施与する方法を検討し、この方法の採用によって土壌の平均pH が5 .5 以下の土壌でも根重と糖集積量が増加することを明らかにした。

以上の結果、移植テンサイの特徴を生かして糖集積量を高める合理的栽培管理法としては、

(1) 早期播種、(2) 苗への耐霜性の付与、(3) 苗の早期移植、く4 )低pH 土壌における粒状生石灰 と 肥料 の作 条混 和施 与、 の菜 根中の アミ ノ態窒素含有率を判断基準とした適正窒素施肥、

@ 初期 生育 の確 保に 重点 をお いたり ン酸 施肥、のナトリウム施肥による茎葉成長促進、な

ら びに (8) 生 育後期に茎葉間競合が激しい場合の成長抑制剤の葉面散布、が有効であり、窒

素 とり ン酸 の過 剰施 肥の 適正 化によ り、 生産費の低下と環境の富栄養化の抑制が可能であ

ることを明らかにした。

(5)

   以上のように、本研究は、移植テンサイ栽培法の長所を生かした省資源栽培法によルテ

ンサイの生産性をさらに向上させることが可能であることを明らかにするとともに、環境

を汚染せずにテンサイの生産性を向上させる方策を提示したものであり、学術上、応用上

高く評価される。よって審査員一同は、井村悦夫は博士(農学)の学位を受けるのに十分な

資格を有するものと認めた。

参照

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