博 士 ( 理 学 ) 野 田 菜 摘 子
学位論文題名
Study of Phase Transition in Rochelle Salt‑Ammonium Rochell SaltMixedCrystalSyStem
byACCalorimetriCMethod
(AC比熱測定によるロッシェル塩
一アンモニウムロッシェル塩混晶系の相転移の研究)
学位論文内容の要旨
口 ッ シ ェ ル 塩(NaKC4406.4H20、 以 下RSと 略 す ) は 最 初 に 発 見 さ れ た 強 誘 電 体 で あ る 。 ま た 非 常 に 特 異 な 相 転 移 を す る 物 質 と し て 知 ら れ て い る 。 すな わ ち 、255Kと297Kに 転 移 点 が あ り 、 温 度 の 低 下 と と も に 常 誘 電 相 か ら 強 誘 電 相 へ 、 そ し て 再 び 常 誘 電 相 へ と 転 移 す る 。 一 方 、RSのK゛ をNHfに 置 き 換 え る こと が で き 、 そ の 物 質 を ア ン モ ニ ウ ム 口 ッ シ ェ ル 塩 (NaNH4c4H06.4H20、ARS) と い う 。ARSは109Kで の み 相 転 移 し 、 低 温 相 で 自 発 分 極 を 持 つ 。 し か し 相 転 移 の バ ラ ヌ ー タ は 分 極 で は な い 。 こ の た めARSはimproperな 強 誘 電 体 と 呼 ば れ る 。 RSの 相 転 移 は 2次 転 移 だ が 、ARSは1次 転 移 で あ る 。 さ ら にARSの 分 極 は6軸 方 向 に 現 わ れ 、RSの ロ 軸 方 向 に 対 し て90° 変 化 す る 。 こ の よ う に で とNHfを 置 換 し た だ け で 、 相 転 移 の 様 子 は 非 常 に 異 な っ て し ま う 。 こ れ は 非 常 に 興 味深 い 変化に思われる。
RSとARSはあ ら ゆ る割 合 で 混晶 (NaKlIエ(NHpエ4H406.4H20、RS1 ―ARSエ) を 作 る こ と が で き る 。 混 晶 系 はxに つ い て4つ の領 域 に 分類 で き る( 領 域I:O≦ −x
≦―O.025、領域II:O.025≦―x≦―O.18、領域m:O.18≦x≦―0.9、領域IV:0.9≦x
≦−1) 。領 域IではRSと同 じ く 常誘 電 相 ― 強誘 電 相 一常 誘 電 相と 転 移する 。領域H に 入 る と 相 転 移 が 起 こ ら な く な る 。 領 域mで は 再 び 強 誘 電 性 相 転 移 が 起 き る 。 し か し 、 転 移 点 は1っ だ け で あ る 。 領 域IVの 混 晶 はARSと 同 じ くimproper な 強 誘 電 体 で あ る 。 こ の よ う に 相 転 移 の 性 質 はxに よ っ て 変 化 す る 。RSとARS で 相 転 移 の 性 質 が 大 き く 異 な る 原 因 を 理 解 す る た め に は 、 混 晶 を 詳 し く 調べ る こ と が 重 要 だ と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 中 間 に あ っ て 最 も 広 いxの 範 囲 を 占 め る領域mに焦点を当て、相転移のズ依存性を調べることにした。
Hodokaら は 領 域III全 体 に 渡 ル マ イ ク 口 波 領 域 で 複 素 誘 電 率 を 測 定 し た 結 果 、 デ バ イ 型 の 緩 和 を 示 し 臨 界 緩 和 が 観 測 さ れ た と 報 告 し た 。 こ の こ と から 、 彼 ら に よ る と 領 域mの 相 転 移 は 秩 序 無 秩 序 型 と 考 え ら れ て い る 。 し か し な が ら 、RSで も 同 様 な 測 定 結 果 が 報 告 さ れ て い る 一 方 で 、 サ ブ ミ リ 波 領 域 の複 素 誘
電 率の 測定か ら変 位型 相転 移の特徴であるソフトモードが観測されたという報 告 も あ る 。 こ の よ う に 誘 電 測 定 だけ で は 相 転 移 の タ イ ブ は 明 白 で は ない 。 相転 移の研 究に は比 熱も また 基本 的で 重要 な量 であ る。しかし、RS―ARS混 晶 系 で はRS以 外の 比熱 測定 の報 告は ほと んど ない 。RSの比熱 異常 はど ちら の 転 移で も非常 に小 さい 。一 方、 我々 が以 前測 定し たARSの比熱は転移点で非常 に 大き く鋭い ビー クを 示し た。この違いは両者の相転移の違いを反映している と 思 わ れ る。 した がっ て比 熱異 常の 琺存 性を 調べ るこ とは相 転移 の変 化を 知 る こと に役立 っと 期待 でき る。また一般に、比熱異常から計算される転移エン ト 口ビ ーは相 転移 のヌ カニ ズムについて重要な情報を含んでいる。本研究の目 的 は、RS―ARS混 晶系 のズ による相転移の変化を知るため、領域IIIの比熱を測 定 し 、 転 移 エ ン 卜 口 ピ ー の 琺 存 性 を 数 値 的 に 求 め る こ と で あ る 。 比 熱 は 高精 度測 定が 可能 なAC法で 測定 した 。AC法は 比熱の 絶対 値が 直接 得 ら れな いとい う短 所が ある が、2種 類の標 準試 料を 用い て絶対値を正確に測定 し た。RSにつ いて 求め た絶 対値 は文 献値 と10%の範 囲内 で一致した。比熱測定 の 結果 、領域III全体 に渡 り転移点で非常に小さな異常が見っかった。異常はr が増加するにっれ次第に大きくなった。
測定 された 比熱 はフ イッ ティングによってバックグランドを慎重に求め、異 常 部分 を正確 に求 めた 。比 熱には臨界的振舞の発散が見られなかった。また誘 電率はCurie−Weiss則に従うという報告もあるので、異常は平均場近似内で記述 で きる と考え られ る。 さら に、 領域IIIの 結晶 は一 軸性 強誘電体でかつ圧電性 を 持つ ので平 均場 近似 は厳 密に成り立っと期待できるが、異常はピークの高温 側 でい くらか すそ を引 いて いた。しかし、その温度幅はサンプルに依存してい た ので 、すそ は物 質固 有の 現象ではなくサンブルに依存した原因で生じたと考 え ら れ る 。混 晶と いう こと を考 慮す ると 、サ ンプ ル内 部で濃 度が 均一 では な く 、そ のため 転移 点が 分布 したことが原因と考えられる。よって比熱異常は、
Landau理論を 適用 し、 さら に転移点にガウス分布を取り入れて表した。フイツ テ ィ ン グ の 結 果 、 測 定 結 果 に 対 し て 非 常 に 良 い フ イ ッ ト が 得 ら れ た 。 比熱 はxが 増加 する にっ れて 転移 点付近 が鋭 くな る傾 向が見られた。Landau 型 自由 工ネル ギー は異 常を 正し く記 述す るた め分 極の6次まで展開する必要が あ った 。この 自由 エネ ルギ ーを用いた解析から、領域IIIでxが増加するにっれ て転移点が三重臨界点に向かうようIな傾向が示された。そして、異常が鋭くな る こと はこの 傾向 によ って 説明できた。また解析から、転移点における比熱の とびがxとともに連続的に増加することがわかった。
この ように 比熱 異常 のx依存 性が 明らか にな った 。次 に、正確に求めた比熱 異 常か ら転移 工ン ト口 ピー を計 算し 、そ のx依 存性 を明 らかにした。転移工ン 卜口ピーはxとともに連続的に増加し、xが約0.88のときはズが約030のときに比 べておよそ10倍も大きくなることがわかった。また、x〜 0.30のときは秩序無秩 序 型相 転移に 対し て期 待さ れる 転移 エン ト口 ヒー の値 尺In2の約8a/0しかない が、ズ〜0.88では約55a/oまで達することがわかった。ここで、変位型相転移の場 合は一般に転移エントロヒーはほばゼ口と期待される。このことから、領域III
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ではxが増加するにっれて相転移のタイブが変位型から秩序無秩序型に向かっ て変化していく傾向があることが明らかになった。
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学位論文審査の要旨
学位論文題名
Study of Phase Transitionln Rochelle Salt‑Ammonlum Rochell Salt Mixed Crystal System by AC Calorimetric Method
(AC
比熱測定によるロッシェル塩
一アンモニウムロッシェル塩混晶系の相転移の研究)
ロッシェル塩(RS)は強誘電体として最初に発見された物質である。室温で結 晶構造が 同型のアンモニウムロッシェル塩(ARS)はその電気的な性質がまっ たく異なるが両物質で作られるロッシェル塩―アンモニウムロッシェル塩混晶 系 は 全 領 域 で 存 在 し 複 雑 な 相 図 を 示 す こ と が 知 ら れ て い る 。 本論文ではこの混晶系のなかで一番広い領域を占めるプロパー強誘電体の領 域III (RSi―xARSエ,0.18< x< 0.90)に注目し強誘電的相転移に伴う異常比熱を 組成濃度xの関数として精密に測定した。強誘電的相転移に伴う異常比熱はロ ッシェル塩では大変値が小さいことがよくしられている。この混晶でも同じよ うに小さな値でありこれを精度良く測定し、しかも混晶組成濃度の関数として 与えることができたことは大変意義の有ることである。さらにその結果から相 転移機構について定性的な議論を与え、複雑な展開を見せるこの混晶系の理解 に役立っ知見を与えるとともに、謎の多いロッシェル塩の相転移機構の解明に 大きく寄与するものとなった。実験遂行にあっては、微弱な異常比熱をいかに 精度良く測定するか、その吟味をしながら困難を克服できたこと、また得られ た測定値から相転移に伴う異常比熱を抽出するためのデータ解析も評価できる ものである。
よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認 める。