博 士 ( 医 学 ) 表 山 和 樹
学 位 論 文 題 名
Activation ofCOnneCtiVetiSSuegrOWthf . aCtorgene bytheC ― MafandLC ― MaftranSCriptionfaCtorS
( 細胞分化に関する転写因子の役割に関する研究、
特 に Mafの CTGF誘 導 に 関 す る 研 究 )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
転 写因子Mafの遺 伝子 はトリ肉腫ウイルス(ASV42lが持つ癌遺伝子として見いだされ、生 体内 の様々 な組 織の 、主 に発生や分化段階に発現している。ヒト多発生骨髄腫の50s;近く にこ の遺伝 子の 免疫 グロ ビン 遺伝 子と の融 合が 報告 されているが、Mafの本来の機能はさ まざ まな組 織の 発生 、分 化への関与であると考えられる_ MafはbZjp構造を持ち、ホモニ 量体 のみな らず 他の 多く の転写因子ともヘテロニ量体を形成し、様々な標的遺伝子を活性 化す る。c−Mafは軟 骨分 化の最終段階である肥大軟骨細胞に強く発現しているが、肥大軟 骨細胞には結合組織成長因子(Connective Tissue Growth Factor: CTGFlとよばれる軟骨分 化に 極めて 重要 な成 長因 子が発現していることが最近見いだされた。CTGFは骨分化制御、
骨基 質であ るコ ラ― ゲン の誘導、あるいは骨髄形成時の血管新生などを促進するほか、繊 維芽 細胞の 増殖 促進 等の 生理的機能が知られており、創傷治癒や動脈硬化、肝硬変、がん など さまざ まな 線維 症に も関与することが報告されている。CTGFは非常に重要な成長因子 でぁ るが、 その 発現 調節 のメカニズムなどは不明な点が多い。現在までにTGF‑ロを介する CTGF誘導機 序が 詳細 に報 告さ れて いる 。し かし 、TGF‑ロ のみ でCTGFが関 与す る細 胞分化 や疾患の機序については説明できない。
さ て、マ ウス 肥大 軟骨 組織 に発 現し てい るC―Maf及びCTGFのmRNAの発 現をin‑sf tuハ イブリダイゼーション法によって観察したところ、その局在は―致していた。そこで、CーMaf がCTGFの発 現に 関与 して いるかを調べるため、C−Mafノックアウトマウスから樹立した胎 児性 線維芽 細胞 を用 い、RNaseプ ロテク ショ ン法 を用 いてCTGF mRNAの発 現を 野生 マウス の胎 児性線 維芽 細胞 と比 較し た。 その 結果 、CーMafノックアウトマウスのCTGF mRNAは減 少し ていた 。ノ ック アウ トマウス細胞にアデノウイルスを用いてc‑ma′遺伝子を導入した とこ ろ、CTGF mRNA発現 は回復した。また、マウス繊維芽細胞株C3HlOTl/2に同様にC−Maf 遺伝 子を導 入す るとCTGFの発現量はc‑ma′遺伝子導入量に比例して増加した。ウエスタン ブロ ッティ ング 法を 用い 蛋白質を調べた結果でも同様にC―MafによってCTGF発現が著しく 増 加 し た 。 こ の 結 果 、c―MafはCTGF遺 伝 子 を 活 性 化 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 次 に、CTGFの 発現 はTGF‑ロによって活性化されることが知られているが、c−Mafによる CTGF遺伝子 の活 性化 にTGF‑ロが関与するのか、あるいは、TGF‑ロには関与しない独立した 機構 なのか につ いて 検討 した 。マ ウス 繊維 芽細 胞をTGF‑ロで24時間刺激し、RNaseプロテ クシ ョン法 とウ エス タン ブロ ッテ ィン グ法 を用 いてCTGFとc‑ma′のmRNAの発 現、 および
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蛋白質 め発 現を 検討 した 。そ の結 果、TGF‑ロ刺 激に よってCTGF mRNA、および蛋白質の発 現増加が観察されたが、c‑ma′ mRNAおよび蛋白質の発現量は変化が見られなかった。また、
c−Maf遺伝 子を マウ ス繊 維芽 細胞 に導 入し 、TGF‑ロmRNAの発現 を検 討し た結 果、TGF‑ロ mRNAの 発 現 増 加 は 観 察 さ れ なか った 。こ れら の結 果か ら、TGF‑ロ とMafに よるCTGF遺伝 子の活性化の機構は独立した機構であることが示唆された。
cーMafにはLc―Mafと呼ばれる、選択的スプライシングによって生ずるアイソタイプが存 在する 。Lc−Mafの 存在 は報 告され てい たが その 塩基 配列は不明であったので、このcDNA ク口 一 ン を 単 離 し てc‑Maf及びLc−Mafの 発現 ベク 夕一 を構 築し、CTGF遺伝 子がMafによ って直接転写活性化されているかどうか、およびc−MafとLc―Mafに活性の差があるかどう かを検 討し た。CTGF染色 体遺伝子をクロ―ン化してプロモー夕一領域やエンハンサーなど の転写 調節 領域 の解 析を レボ一夕一トランスフェクション分析法によって行った。CTGF遺 伝子上流3. 6kpbから下流3.8kbpのさまざまな領域をレポー夕一遺伝子につなぎ、c−Maf またはLc―Mafの発 現ベ クタ ーと同 時に マウ ス繊 維芽 細胞株に導入して転写制御領域の解 析を行 った 。そ の結 果、 転写 開始 点付 近で もっ ともMafによるCTGF遺伝子の転写活性化が 促進され、Lc−Mafの方がc−Mafよりも2―3倍強い活性を示した。
クロ マチ ン免 疫沈 降法 を用 いて 、inゾfvoでCTGFブ ロモー夕―にCーMafが結合している かどうかを検討した。その結果、C−MafはCTGFプ口モー夕―に結合してい丶ることが明らか となった。
以上 の結 果か ら、MafはCTGFを誘 導し 、そ の活 性化 機構はTGF‑ロには関与しない独立し た機 構 で あ る と 考 え ら れ る 。ま た、CTGFプロ モ一 夕一 領域 のMafの反 応す る領 域はCTGF 遺伝子の転写開始点付近と示唆された。
c−Mafノ ック アウ トに おいて軟骨の分化異常が報告されており、特に肥大軟骨細胞の分 化に異 常が 見ら れる 。さ らに、これらの異常はCTGF遺伝子ノックアウトマウスにおける軟 骨分化 の異 常の 一部 とき わめてよく似ている。この事はc−MafがCTGF遺伝子の転写制御を 介して 軟骨 の分 化に 重婁 な働きをしていることを強く示唆しており、我々の研究結果を強 く支持 する もの であ る。 したがって、この研究はまったく新しい軟骨分化制御機構の解明 にっな がる 研究 であ る。 さらに、CTGFは多くの疾患とも関連しているが、我々の研究成果 からCTGFは 癌遺 伝子 産物 であ るMafによ って も調 節さ れることが示唆されたので、上述の ような 繊維 化を 伴う 疾患 をMafによ って 説明 し、 そこ から新しい治療法や予防法を開発で きる可 能性 があ る。 さら にCTGFは血管新生を促進することも報告されていることから、癌 の 血 管 新 生 阻 害 の 有 効 な 治 療 法 の 開 発 に も 応 用 で き る 可 能 性 が あ る 。
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学 位論文審査の要旨
主 査 教 授 畠 山 鎮 次 副 査 教 授 笹 原 正 典 副 査 助 教 授 田 中 一 馬
学位論文題名
Activation of connective tissue growth faCtorgene bytheC ― MafandLC ―MaftranSCriptionf .aCtorS
( 細胞分化に 関する転 写因子の 役割に関する研究、
特 に Mafの CTGF誘 導 に 関 す る 研 究 )
本 学 位 論文 は 、転 写 因 子Mafの.結合 組織増殖 因子(CTGF)誘 導につい て検討し た論文 で ある 。 そ の内 容 はc‑Mafの局 在 は マウ ス 肥大 軟 骨 組織 に おい てCTGFと 一致 し てい る 。 c‑Mafノ ッ クア ウ トマ ウ ス から 樹立した 胎児性線 維芽細胞は 野生マウ スの胎児 性線維芽 細 胞 と 比 較 し てCTGF mRNAの 発 現 が 低下 し てお り 、 アデ ノ ウイ ル ス を用 い てc‑mび 遺 伝子 を 導入 し た とこ ろ 、CTGF mRNA発現 は回復し た。マウ ス繊維芽細 胞株、C3HIOTl/2にc‑Maf 遺 伝 子 を 導 入 す る とCTGFの 発 現 量 は著 明 に増 加 し た。CTGFの 発現 はTGF‑ロ によ っ て活 性 化さ れ る こと が 知ら れ て いる が 、c‑Mafによ るCTGF遺 伝子 の 活性 化 はTGF‑ロに は 関与 し な い 独 立 し た 機 構 で あ る 。Maf発 現 ベク タ ー を構 築 し、CTGF遺 伝 子がMafによ っ て 直 接転写 活性化さ れている かどうか 、およびc‑MafとLcーMafに転写 促進活性 の差があ るかど うかを レポータ ー卜ラン スフェク ション分 析法によっ て検討し たところ 、転写開 始点付近 で も っ と もMafに よ るCTGF遺 伝 子 の 転写 活 性化 が 促 進さ れ 、Lc‑Mafの 方がc‑Mafよ り も 2‑3倍強 い 活 性を 示 した 。 ク ロマ チ ン免 疫 沈 降法 の 結 果か ら、CTGFプロ モーター にc‑Maf がin vivoで 結 合 して い るこ と を 示し た 。こ れ ら の結 果 から、c‑MafがCTGF遺伝子 の転写 制御を 介して軟 骨の分化 に重要な 働きをし ていること を明らか にし、新 しい軟骨 分化制御 機 構の 一 部 を解 明 した 。 ま た、繊 維化を伴 う多くの疾 患がMafによ って説明 できる可 能性 を示唆 し、そこ から新し い治療法 や予防法 を開発でき る可能性 も考えら れるとい う内容で あった 。
質疑に 関しては 、副査の 笠原正典 教授からLc‑Mafが筋肉細胞 で強く発 現してい る意義に ついて の問いに 、不明で あるが筋 肉細胞の 構成に何ら かの影響 を及ばし ている可 能性があ ると回 答した。 また、ヒ トでも発 現してい るかどうか について の問いに は、Lc‑Mafにつ い ての論 文が少な ぃので不 明である が、おそ らく発現し ているで あろうと 回答した 。また、
CTGFプ ロ モ ー タ ー に はMaf結 合 配 列 、MAREは 存 在 し て い な い が 、 結 合配 列 がな い の に 結合し ているの はなぜか という問 いには、 他の転写因 子とへテ ロダイマ ーを形成 して結合 し てい る 可 能性 が ある と 回 答し た 。ま た 、Lc‑MafはCTGF以外にも ターゲッ トがある かと いうと いう問い には、軟 骨細胞に おいてコ ラーゲンを 誘導して いるとい う報告が あると回 答 し た 。 副 査 の 田 中 一 馬 教 授 からCTGFプ ロモ ー タ ーに はMAREに類 似 し た配 列 はあ る の
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かと いう 問い には 、類似 した 配列 はあり、レポータートランスフェクション分析の実験結 果と 一致 して いる と回答 した 。ま た、Mafはど のよう に転 写活 性化制御を行っているのか とい う問 いに は、 リン酸 化に よっ てMafは 活性 化する 可能 性が あると回答した。JunやFos など が結 合し てい る可能 性あ るの かという問いには、ヘテロダイマーを形成することは可 能で ある が、Jun、Fos、ATFを用 いた レポ ータ ートラ ンス フェ クション分析の実験を行っ た 結 果、 これ らはCTGF誘導 に関 与し てい ないと 示唆 され たと 回答 した 。主 査の 畠山 鎮次 教授 から、In situハイブリダイゼーション法による実験でもっと質の高い実験をするとす れぱ どの よう なも のが考 えら れる かという問いには、多重染色や特異抗体による免疫染色 が考 えら れる と回 答した 。ま た、 ノー ザン ブロ ット では なく 、RNaseプロテクションアッ セ イ 法 を 用い た の は な ぜ か と い う 問 に対 して は、MafはGCリ ッチ であ ルノ ーザ ンブ ロツ ト 法 では 検出 が難 しく 、ま たLc‑Mafと明 確に区 別す るの に適 した 方法 だか らで ある と回 答し た。 また 、ト ランス フェ クシ ョン 分析 法に おい てGST‑P遺 伝子のプロモーターを用い た理 由は なに かと の問い に対 して は、プロモーターを持たない領域のエンハンサー活性を 調べ るた めと 回答 した。 また 、c‑Mafノッ クア ウトマ ウス は発 生するか、どのような表現 型が 存在 する かの 問いに は、 発生 するが出生しなぃか出生してもすぐに死亡し、目、特に 水晶 体が 形成 され ず、骨 が短 くな ると回答した。いずれの質問に対しても申請者は最新の 学術論文や実験結果を引用して適切に回答した。
この論文はBiochemical and Biophysical Research Communicationsで高く評価され、今後 の発 展が 期待 され る。審 査員 一同 は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研 鑚や 取得 単位 など も併せ 申請 者が 博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するも のと判定した。
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