徳島県内の魚っき保安林に関する生態学的研究
教科・領域教育専攻 自然系(理科)コース 佐 藤 尚 子
I 序 章
日本では、水を育んだり、土砂崩れなどの災 害を防止したり、美しし、景観キ楳餅様などの 場を提供したりする重要な森林を「保安林jに 指定している。保安林は
1 7
に区分されており、その 1つに「魚っき保安林漁っき林:)Jがあ る。魚っき保安林には、 3つの効果が期待され ている。 1つ目は、光の効用で影に魚がよるこ と、 2つ目は、栄養物質・餌料を河川
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海洋の生 物に提供すること、 3つ目は、土砂の流出を防 止して河川!水の汚濁化を防ぐことである。これ らの効果について、河畔林では多くの報告がな されているものの沿岸の森林が海へ及ぽす影 響や沿岸の植生と魚群集との関係についての 実証的研究は未だに不足している。また、わが 国の魚っき保安林においても、魚っき保安林を 構成する樹種やその効果についての科学的証 明はこれまでの研究において示されていない のが現状である。そこで、、本研究では、徳島県 内の魚っき保安林の効果に対する実証的研究 をす寸めることを目的とし、魚っき保安林の構 成樹種を托握した。そして、文献調査により構 成樹種の変化のようすをたどるとともに、魚っ き保安林の構成樹種から魚っき保安林の効果 について検討を行った。E 徳島県内の魚っき保安林の現状
徳島県内の魚っき保安林は、平成18年3月
3 1
日現在で、q
鳥門市1 3 7 h a
、阿南市4 3 5 h a
、指導教員 米 海 義 彦
美 波 町 必
O h a
、牟岐町1 7 3 h a
、海陽町1 2 6 h a
の合計1 2 7 1 h a
が指定されている。皿 調 査 1.調査地
徳島県保安榊己備図より魚っき保安林の
図1調査地と調査地番号 2. 調査方法
それ殺しの調査地で
10mX1
伽 の 方 形 区 を 設定し、後述する(1)~(4)の測定を行い、それら の値から(5)及ひ気。を求めた。また、この調査で は、高さ5m
以上の植物を高木層に、1m
以上5m
宋満の植物を低木層に、1m
対請の植物を 草本層に分類した。(1)走向と傾斜(クリノメーター使用) (2)高木層の植被率
(3)高木層の植物の出現場所のま線と同定、胸 高直径の測定
‑368‑
(必倒て層と草本層の植物の言議
(扮高木層の胸高面積と胸高面積の比率の算出 (⑪マッカーサーの多様度指数
E
およて対日対多様度
J
の算出 W 結果と考察1 .
各調査地に出現した植物高木層で、はウパメガシやヤブツバキ、ヒサカ キが、低木層や草本層ではミミズバイやヤブニ ッケイ、シロダモが多くの調査地で出現した。
2.高木層の植物の出現纏数
出現麗数の多かった植物は、ウバメガシやヤ ブツバキ、ヒサカキで、あった。また、ネズミモ チやミミズバイ、クスノキなど一部の調査地で 豊富に出現した樹木もあった。
3.高木層の植物の胸高直径
ヒノキ植林地 No.14を除くすべての調査地 では、胸高直准15cm未満の樹木が多く存在し た。また、ウパメガシやヤブツバキ、ヒサカキ においては、ほとんどの調査地で幹が叢生にな っていたことから、切株もしくは自然倒木が萌 芽したことが考えられる。
4.高木層の植物の胸高面積の比率
各調査地のうち、胸高面積が 1つの樹種で、
50%以上を占めていたのは、調査地No.1、NO.2、 No.3、No.4、No.9、No.15(ウパメガ坊、No.8(ヤ ブツバキ)、No.11(クスノキ)、 No.12(タブノキ)、
No.14(ヒノキ)、 2つの樹穫で50%以上を占め ていたのは、No.5(ヤブツバキ・シロダモ)、No.6
(ノ¥マヒサカキ・ヤブツバキ・トベラ)、 No.7 (ウバメガシ・ヒサカキ)、 No.10(ウバメガシ・
ヤブニッケイ)、さらに3つの樹種で50%以上 を占めていたのは、 No.13(ヤブツバキ・ヤマモ モ・クスノキ)で、あった。
5 .
徳島県魚っき保安林の植生の変遷すべての調査地において明治時代から現在
までの聞に植生の遷移が見られ、クロマツ群集 からウバメガシヰコヤフ、ツバキ、ヒサカキなどの 群落八移り変わっていた。この遷移の要因には、
不十分な管理や自己再生能力の強い樹種の優 占が考えられる。
6.高木層の植物群落の多様性
総本数が特定の樹種によって偏りのある調 査地においては、他の調査地に比べて{岳、多様 度指数H'を示しているなど、各調査地で種多様 度に差が見られた。樹木の種多様度の違いによ
り、土壌の肥沃度や生物多様性が異なってくる 可能性が考えられる。また、その影響を受けて 魚っき保安林近隣の河川│や樹羊の栄養供給に 影響を与える可能性が考えられる。
V まとめ
徳島県内の魚っき保安林における明治時代 から現在までの植生の変遷の背景には、クロマ ツ林に対する管理不足や自己再生能力の強い 樹種への変化が考えられる。また、「魚っき保 安林jとして制度化されたあとも植生の変化が 起こっていることから、魚っき保安林はその森 林の構成樹種の特性を重視されていないこと が考えられる。しかし、今回の調査地において、
各調査地で樹木の種多様度に差が見られたこ とから、樹木の構成樹種の違いにより森林土壌 射可)11への栄養供給や落葉・落校による海への 直接の栄養供給に何らかの影響を与える可能 性が考えられる。
今後の課題として調査地に隣接する河川の 水質調査や土壌の化学分析などによる肥沃度 の調査を行い、それらを樹木の種多様度と比較 していくことが考えられる。そして、樹木の多 様性と水質や土壌の肥沃土の関係から魚っき 保安林の効果についてさらに検討する必要が
ある。
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