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大学体育会系クラブの教育的機能に関する考察―卒業生インタビューを通して― [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)大学体育会系クラブの教育的機能に関する考察-卒業生インタビューを通して- キーワード:大学教育. 課外活動. 体育会系. 学校から職業への移行. 教育的機能. 教育システム専攻 浅田 昌吾. <目次>. 8.2 労働領域で求められる人材の変化と「体育会系」と. 1.問題の所在 1.1 本研究の目的. の関係 9 総括及び今後の課題. 1.2 問題の所在 2.「体育会系クラブ」の概要 2.1 「体育会系クラブ」の位置付け 2.2 「体育会系クラブ」に関する歴史研究 2.3 「体育会系」出身者と労働領域との関係に焦点をあ てた先行研究 3 大学の課外活動と教育的機能 3.1 大学教育に求められる能力形成. <要旨> 1.問題の所在 1.1 本研究の目的 一私立大学の運動部活動(以下、 「体育会系クラブ」と記す) 出身者で現在就職して働いている卒業生に対して実施した インタビュー調査をもとに、 「体育会系クラブ」の活動の教 育的機能について検討することを本研究の目的とする。. 3.1.1 「学士力」答申 3.1.2. 大学設置基準. 1.2 問題の所在. 3.1.3. キャリア教育・職業教育答申. 時代の移ろいを経て「体育会系クラブ」出身者の労働領. 3.2 「体育会系クラブ」以外の課外活動等の実態と先行 研究. 域における評価は変化する様相を見せているが、そもそも 「体育会系」と言われる気質を持った人材を輩出してきた. 3.2.1. インターンシップ. 「体育会系クラブ」の活動が有する教育的機能とはどのよ. 3.2.2. ボランティア活動. うなものなのだろうか。競技の特性により活動の内容は異. 3.2.3. アルバイト経験. なるが、 「体育会系クラブ」に汎用的に横たわる活動の要素. 3.2.4. 小括. は存在しないのだろうか。 「体育会系」については、大卒就. 4 課題の設定及び調査. 職時における有意性を表す「<体育会系>神話」(束原 2008). 4.1 課題の設定. などで語られることが多いが、それを生み出す「体育会系. 4.2 研究方法. クラブ」の活動の要素及びその評価については、俎上に挙. 4.3 研究対象の概要. げて議論されることは尐ない。折しも中教審答申(2008)以. 4.4 調査の内容. 降、大学教育全体の質保証を行っていく取組みが各大学に. 5 調査・検討. 求められている最中である。本研究では、大学の「体育会. 5.1 「体育会系クラブ」の活動の要素と習得される能力. 系クラブ」での活動を経験した後に職を得て働いている卒. の調査・検討. 業生へのインタビューを通して、 「体育会系クラブ」での経. 6 考察. 験が労働領域での経験を数年経た後に振り返ってどのよう. 6.1 考察の手順. に自己評価されるのかを調査することを通して、その教育. 6.2 考察. 的機能に迫っていく試みである。. 6.3 小括 7 学術文化会との比較. 2.「体育会系クラブ」の概要. 7.1 学術文化会の活動の要素との比較. 2.1 「体育会系クラブ」の位置付け. 7.2 小括. 大学の「体育会系クラブ」は、大学教育の中では課外活. 8 「体育会系クラブ」の教育的機能の変容 8.1 「体育会系クラブ」の教育的機能の変容. 動の1つと位置付けられているため、学校関係法令上で直 接規定されている条文は存在しないが、大学設置基準第 36.

(2) 条第 5 号、同第 42 条及び文科省保健体育審議会答申(1996). 果を評価することが重要であるという機運が高まっていて、. を引用し、大学の「体育会系クラブ」の活動は、大学にお. 教育課程外の1つとして位置付けられている「体育会系ク. ける厚生補導を行う活動の1 つとして位置付けられていて、. ラブ」の活動に対しても、当然ながら教育成果の評価が求. 自律心の涵養、仲間との交流の促進、クラブ運営能力の向. められていると解釈することが可能であることを示した。. 上等の教育効果も期待されている活動であることを示した。 3.2 「体育会系クラブ」以外の課外活動等の実態と先行 2.2 「体育会系クラブ」に関する歴史研究. 研究. 「体育会系クラブ」が創設された明治中期以降の労働領. 「体育会系クラブ」以外の課外活動等として、インター. 域との関係について、竹之下・岸野(1983)、束原(2011)ら. ンシップ、ボランティア活動、アルバイトの3つを取り上. の先行研究から、明治末期の「体育会系クラブ」出身者に. げ、それぞれの教育的機能に関する議論の整理を行った結. 対する世間の眼差しや、大正中期に萌芽がみられるように. 果、課外活動は活動毎に異なる教育的機能を有し、それぞ. なった<体育会系就職>が大正末期にかけて確立され、そ. れの経験は多くの異なる領域に関与していて相互に補完的. の後、マルクス主義、左傾、赤への警戒が社会的に取り沙. な関係となり、異なる教育的特質を持つことを示した。. 汰される中で身体的にも精神的にも問題を抱える<教養系 >がマイナスイメージを一手に引き受け、企業から忌避さ. 4 課題の設定及び調査. れる一方で、<体育会系>は何の変化もなかったため思想. 4.1 課題の設定. 穏健のメルマークと認識され採用上、ますます重要な視点. 先行研究等を踏まえ、 「体育会系クラブ」での様々な活動. として了解されるに至った歴史的経緯を示した。. はキャリア教育・職業教育に関する中教審答申(2011)でい う【基礎的・汎用的能力】 、その中の能力要素でも特に「人. 2.3 「体育会系」出身者と労働領域との関係に焦点をあ てた先行研究. 間関係形成・社会形成能力」と「自己理解・自己管理能力」 を養成する教育的機能を有しているという仮説を設定した。. 束原(2008)は、苅谷ら(1992)の大卒就職に関する研究を 引用し、1980 年代以降、 「OB訪問」という言葉に象徴され るような「先輩後輩関係」が、意図的、組織的に利用され. 4.2 研究方法、4.3 研究対象の概要、 4.4 調査の内 容. てきたことにより、その「先輩後輩関係」の象徴的なもの. 吉本(2004)の「30 歳社会的自立仮説」及び「大学教育の. の1つとして「体育会系クラブ」が挙げられることを指摘す. 遅効性」に立脚し、私立大学Sの「体育会系クラブ」に在. る一方で、梅崎 (2004)や松繁(2005)を引用し、ジョブサー. 学中に所属し、卒業後は職を得て働いている 20 歳台後半の. チにおける体育会系の有意性を指摘しつつ、その理由につ. 9 クラブの卒業生 17 名に対しインタビュー調査を行うこと. いてOBネットワークというより、 「体育会系クラブ」出身. を通して、 「体育会系クラブ」での活動を通して習得された. 者が持っている何らかの能力が評価されていることを示唆. 能力が労働領域との関係においてどのような形で有意に働. している。. いたかということを検討することを試みた。. これらの先行研究から、大卒新卒における「体育会系ク ラブ」の活動の有意性は確認できるものの、その有意性の ありようについては一様に解釈できていないことを示した。. 5 調査・検討 インタビュー調査での会話のやり取りをテキスト化し、. また、大竹・佐々木(2005)の大卒者における「体育会系」. その中の会話の内容から活動の要素を抽出、その類似性や. 出身者の昇進プレミアムが確認されなかったことを検証し. 重なりについて慎重に検討を重ねて、最終的に 16 の活動の. た研究結果を引用し、 「体育会系クラブ」の活動の有意性が. 要素を抽出した。次にその活動の要素の類似性を検討し整. 労働領域全般に及ぶ訳ではないことも示した。. 理、統合していった結果、 「先輩・後輩関係」 、 「学生自治」 、 「多様な人との交流」 、 「競争」 、 「精神的・肉体的に負荷が. 3 大学の課外活動と教育的機能 3.1 大学教育に求められる能力形成. かかる活動」 、 「役職経験」 、 「競技の特性」の7つに分類さ れた。各分類における活動の要素の詳細は【表1】に示す。. 学士力に関する中教審答申(2008)、大学設置基準改正 (2011)、キャリア教育・職業教育に関する中教審答申(2011). 6 考察. の 3 つを引用し、大学教育全体の質保証を図るにあたり、. 第 5 章で抽出した「体育会系クラブ」の活動の要素か. 正課教育のみならず教育課程外の活動も含めた上で教育成. ら養成される可能性がある能力(汎用性を持たない「競技の.

(3) 特性」は除く)とキャリア教育・職業教育に関する中教審答 申(2011)でいう【基礎的・汎用的能力】の能力要素との比 較・検討を行った(検討結果の詳細は【表2】を参照)。. 【表5】 <キャリア教育・職業教育答申で定義された 基礎的・汎用的能力> 能力. 他者の個性を理解する力 人 間 関 係 形 成 ・. 習得された能力 組織の中で置かれた立場を 意識 する習慣. 活動の要素. 雑用 周囲に対する気配り. コミュニケーションスキル. 実用的な挨拶. チームワーク. 宴席での作法. リーダーシップ. 聞き方や話し方等のコミ ュニ ケーション能力. 情報の理解・選択・処理. 話し合いの際の協調性、受容力. 本質の理解. 聞き方や話し方等のコミ ュニ ケーション能力. 原因の追究. 規律性. 課題発見. 社交性. 計画立案. 多様な立場の人の受容. ・話し合いの際の協調性、受容力. 実行力. 競争の中でのメンタルコ ント ロールする力. ・聞き方や話し方等のコミュニケーション能力. 評価・改善. 自己肯定感の向上. 自己の役割の理解. 組織のまとまりを重要視す る感 覚(協調性). 前向きに考える力. 自己肯定感の向上. 自己の動機付け. ストレス耐性. 集団生活(合宿). 忍耐力. 自己肯定感の向上. 活動の継続. ストレスマネジメント. 指導力. 注意・指導の実践. 主体的行動. 交渉力. 学ぶこと・働く こと の意 義や 役割の理解. 調整力. 指 導 者 と 学 生 との 間 に 立 っ た コ ミュ ニケーション. 活動の要素. 社 会 形 成 能 力. 習得された能力. 雑用. <体育会系クラブの活動の要素 及び習得された能力>. 具体的な要素. 他者に働きかける力. 【表1】活動の要素及び習得された能力一覧表 カテゴリー. 【表2】. ・組織の中で置かれた立場を意識する習慣 ・周囲に対する気配り. 先輩(OB・OGも 含む)との交流. 活動の自主運営. 先輩・後輩 先 輩 (O B ・ O G. ・実用的な挨拶. も 含 む )と の 交 流. ・宴席での作法. 課 題 対 応 能 力. 関係 ・聞き方や話し方等のコミュニケーション能力 活動の自主運営 学生自治 規律の維持. ・規律性. 多様な人との. ・社交性. 交流. ・多様な立場の人の受容. 部内での競争. ・競争の中でのメンタルコントロールする力 ・自己肯定感の向上. 競争 部外との競争. 多様な人との交流. 自 己 理 解 ・ 自 己 管 理 能 力. 多様な人との交流. ・ 組 織 の ま と ま り を 重 要 視 す る 感 覚 (協 調 性 ) ・自己肯定感の向上. 精神的・肉体的に負 荷がかかる活動. 活動の継続. ・ストレス耐性. 集 団 生 活 (合 宿 ). ・自己肯定感の向上 能 力. 役 職 の 種 類. 主 将. 活 動 の 要 素. 習 得 さ れ た 能 力. 注 意 ・ 指 導 の 実 践. ・ 指 導 力. 指 導 者 と 学 生 と の 間 に 立 っ た コ. ・ 交 渉 力. ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン. ・ 調 整 力. 学 内 外 に お け る 総 務 的 役 割. ・ 実 践 的 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力. 主 務 ・ 庶 務 遂 行 能 力 学 連 幹 事. 公 式 戦 の 企 画 ・ 運 営. 規律の維持. キ ャ リ ア プ ラ ン ニ ン グ. 部内での競争. 部外との競争. 将来設計. 実践的なコミュニケーショ ン能 力 学 内 外 に お け る総 務的役割 庶務遂行能力. 選択. 実践的な庶務遂行能力. 多様性の理解. 公式戦の企画 ・運営. 行動と改善. また、今回の調査で「学術文化会」が、団体名に即した活. ・ 実 践 的 な 庶 務 遂 行 能 力. 動を行いつつも、半ば娯楽的な要素も活動の中に尐なから 競技の特性. 習得された能力. 完 全 分 業 制 に 近 い 競 技 性 (ラ グ ビ ー ). 組織の中で与えられた役割に応じて仕事をやる意識. 1 対 1 の 勝 負 に 身 を 置 く 経 験 (剣 道 ). 営業や折衝の場で物怖じせずに対峙できる能力. 失敗してもその試合の中で再チャレン. 失 敗 に よ る 落 ち 込 み か ら 直 ぐ に 切 り 替 え る 習 慣 (メ ン タ. ジ で き る 競 技 性 (硬 式 野 球 ). ルコントロール). ず含まれていることから「学術文化会」の活動を教育的機 能という視点で見るとき、このような雰囲気をどのように 取り扱うのかという点は、今後研究を進めていく上で1つ の課題となることを論じた。. その結果、 【基礎的・汎用的能力】 、特にコミュニケーショ ンスキルに代表される「人間関係形成・社会形成能力」と. 8 「体育会系クラブ」の教育的機能の変容. 複数の活動の要素が作用し得られた自己肯定感によっても. 30 歳代後半の「体育系クラブ」出身者で、現在指導者と. たらされた前向きに考える力や自己の動機づけに代表され. して関わりを持っている 3 人へのインタビュー調査を通じ. る「自己理解・自己管理能力」を養成する教育的機能を有. て、 「体育会系クラブ」の教育的機能の変容についての検討. している可能性を論じた。. を行った。その結果として、第 5 章で抽出した汎用的な6 つの活動の要素(「先輩・後輩関係」 、 「学生自治」 、 「多様な. 7 学術文化会との比較. 人との交流」 、 「競争」 、 「精神的・肉体的に負荷がかかる活. 「体育会系クラブ」と並んで大学の自主的活動を構成す. 動」 、 「役職経験」)については、昔も今も変わらず存在して. る「学術文化会」について 20 歳代後半の 2 名に対してイン. いるが、年々、先輩に対する畏怖が低下してきていること. タビュー調査を行い、 「体育会系クラブ」と同様に活動の要. に伴う部内の活動時の緊張感の低下、すなわち「先輩・後. 素の抽出と要請される可能性がある能力の検討を行った。. 輩関係」の運用が軟化し「精神的・肉体的に負荷がかかる. その結果として、サンプル数が尐ない点は留意する必要性. 活動」のレベルが低下している可能性を示した。この示唆. はあるものの、 「競争」と「精神的・肉体的に負荷がかかる. は、 「体育会系クラブ」出身者が持っているとされる気質の. 活動」の2つの活動の要素が「学術文化会」に見られない. 軟化をもたらすものであり、これは「体育会系クラブ」出. 傾向にあること、また、 「学分会」が有する活動の要素とし. 身者が、Brown.P(1995)がいう「官僚制的パーソナリティ」. て「議論」と「イベントの実施」の2つが挙げられること、. に合致する人材を社会に輩出する養成機関から脱却する方. そして「体育会系クラブ」との比較において「自己理解・. 向に作用するものである。近年、労働領域が求める人材が、. 自己管理能力」の養成機能が相対的に低いという可能性を. 同僚との「人格化」された関係と協調性を図ることやその. 論じた。. 中で自分の価値を証明していくことが求められる「カリス マ的パーソナリティ」へと変化していることを考えれば、.

(4) この変容は必ずしも悪い方向ではないようとも思える。. 解釈するならば、本研究を通して、教育的機能が確認され. しかし、その一方で「体育会系クラブ」出身者が持って. たことを根拠に学生の学修ポートフォリオを構成する自発. いる「官僚制的」な気質を高く評価して採用を行っている. 的活動の1つとして「体育会系クラブ」の活動を位置付け. 企業も依然としてあるのも事実であり、そのような企業に. ることが可能となるであろうし、労働領域が求める能力の. とってはこの変容は望ましいものではないであろう。また、. 養成機関として位置付けることもできることも論じた。. このような変容が続くのであれば、これらの企業が求める 「体育会系」出身者の能力レベルが基準を満たさなくなる. <参考文献>. ことも想定され、大卒新卒における<体育会系就職>の有. ・梅崎修(2004),「成績・クラブ活動と就職―新規大卒市. 意性がさらに低下する可能性もありうることを論じた。. 場におけるOBネットワークの利用」,松繁寿和 [編著]『大学教育効果の実証分析―ある国立大学. 9 総括及び今後の課題 本研究を通して、 「体育会系クラブ」が設立された明治 から受け継がれる犠牲、忍耐、服従、規律などの徳目に代. 卒業生たちのその後』所収,日本評論社,pp.29-48 ・大阪商工会議所(2002),「企業が求める人材像と採用活 動の実態に関する調査結果」. 表される集団的な特性と心身ともに自己鍛錬を促す競争と. ・苅谷剛彦,沖津由紀,吉原恵子,近藤尚,中村高康(1992),. いう2つの特性が、年々厳格さを失いつつも依然存在して. 「先輩後輩関係に“埋め込まれた”大卒就職」 『東. いて、その中に身を置くことで無意識のうちに先に挙げた. 京大学教育学部紀要』第 32 巻, pp.89-118. 諸能力の習得が図られている可能性を示した。しかし、本. ・中央教育審議会(2008),「学士課程教育の構築に向けて. 研究は量的な面において文系私立大学 1 校のみの卒業生 が対象だったことによるデータの偏りや、質的な面で卒 業生の業種、職種、競技種目を考慮していないこと等か. (答申)」 ・中央教育審議会(2011),「今後の学校におけるキャリア 教育・職業教育の在り方について」(答申)」. ら、得られた結果は限定的であると言わざるを得ない。. ・束原文郎(2008),「<体育会系神話>に関する予備的考. 質量共に調査を拡大し、繰り返し検討される中でより精. 察―<体育会系>と<仕事>に関する実証研究に. 緻な 示 唆 が 得 ら れ る で あ ろ う 。. 向けて-」 『札幌大学総合論叢』第 26 号,pp.21-34. 昨今の体育会系離れが進む状況において、第 8 章で論じ. ・束原文郎(2011),「<体育会系>就職の起源―企業が求. た「先輩・後輩関係」の運用の軟化に伴う「精神的・肉体. めた有用な身体: 『実業之日本』の記述を手掛かり. 的に負荷がかかる活動」のレベルの低下はさらに進む可能. と し て ― 」『 ス ポ ー ツ 産 業 学 研 究 』 第 21. 性は否定できない。このような状況下において「体育会系. 号,pp.149-168. クラブ」が教育的機能を有する課外活動でありえるかとい. ・ブラウン,P(1995),稲永由紀[訳],「第 20 章 文化資本. う点については、今後も注視が必要であることを指摘した。. と社会的排除―教育・雇用・労働市場における最. さらに「体育会系クラブ」の活動の就職における有意性の. 近の傾向に関するいくつかの考察―」, ハルゼ. 低下については、企業社会が「官僚制的」組織から「柔軟. ー.A.H/ローダー.P/ブラウン.P/ウェルス.A.S. なでフラットな」組織へと変化したことに伴う求められる. [編],住田正樹・秋永雄一・吉本圭一[編訳], 『教. 人材像の変化という外的要因で語られることが多いが、本. 育社会学 第三のソリューション』九州大学出版. 研究での示唆は、 「体育会系クラブ」自体の教育的機能の低. 会,pp.597-622. 下という内的要因も原因の 1 つとして挙げられる可能性を 論じた。. ・松繁寿和(2005),「体育会系の能力」 『日本労働経済雑 誌』第 537 号,pp.49-51. また、大学教育の中で教育的機能を持った課外活動の1. ・吉本圭一(2004),「高等教育と人材育成―「30 歳社会. つとして「体育会系クラブ」の活動をどう位置付けるかと. 的成人」と「大学教育の遅効性」―」 『高等教育研. いう点については、 「体育会系クラブ」の参加はあくまでも. 究紀要』 第 19 号, pp.245-261. 本人の意思であり、教育を行う側の強制力が働かないこと から、難しい問題であると言わざるを得ないものの、ボラ ンティア活動やインターンシップ、あるいはアルバイト経 験等は同様に啓発的経験として捉えられ、それぞれの経験 は多くの異なる領域に関与していて相互に補完的な関係と なり、異なる教育的特質を持つ(河崎 2010)ことを拡大的に.

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