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ChemA 講義補足 (5 月 27 日 ) 第 6 回目の講義では 原子の量子性と周期性 について お話ししました 講義で使用したパワーポイント資料は PDF にしたものを 化学 A 講義資料 のとこ ろに張り付けてあります 予習用には ミスプリがありましたし HomeWork は載ってい ません

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Academic year: 2021

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1 ChemA 講義補足 (5 月27日) ・第6回目の講義では、「原子の量子性と周期性」について、お話ししました。 ・講義で使用したパワーポイント資料は、PDF にしたものを、「化学 A 講義資料」のとこ ろに張り付けてあります。予習用には、ミスプリがありましたし、HomeWork は載ってい ませんので、あらためて閲覧するようにしてください。 ・次回は演習になりますので、予習資料は準備しませんが、演習でないときは、講義の予 習用資料を事前に貼り付けます。 ・前回5月20日の演習(1)-(3)の略解と講評は、5月20日分の講義補足に記し ました。 ・水素原子と同じように「原子核の周囲に1個だけ電子がある原子」を「1電子原子(水 素類似原子、水素様原子(hydrogen like atom))とよびます。

・2個の粒子の系ですので、剛体回転子や2個の粒子がばねで結ばれた場合と同様に、相 対運動と重心の運動にわけて、相対運動だけを考えると、換算質量μをもつ1個の粒子の 運動の問題に帰着します。 ボーア模型では、原子核の位置を固定し、電子の運動だけを考えました、そのことは、 換算質量に含まれる原子核の質量M を無限大とみなし、1/M=0 と置いて近似することに相 当します。この近似を用いると、μ=m(電子の質量)となりますので、原子核の位置を固 定したボーアモデルの扱いと同じになります。多くのテキストでは、量子論の方程式であ るシュレーディンガー方程式(波動方程式)を解くときにも、この扱いを採用しています。 違いはごくわずかですので、スペクトルを詳しく調べるとき以外は、どちらで扱っても問 題ありません。 水素原子のスペクトルを詳しく調べると、μ=m(電子の質量)と近似して得られる Rydberg 定数(本によっては R∞と書いています。原子核の質量を無限大とみなしたことを 示しています。)では、実測されるスペクトルとは少しだけずれてしまいます。このことは、 質量数が1の通常の水素原子のスペクトルと、質量数が2の重水素原子のスペクトルが、 ごくわずか離れたスペクトル線として観測される事実とも関係しています。 ちなみに、重水素の存在は、H.C.Urey による分光実験ではじめて明らかにされました。 このように、同位体の種類でスペクトルが変化することは「同位体効果」として知られて いますが、塩化水素分子の回転スペクトルや振動スペクトルへの影響はそれほど小さくは

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2 ありませんが、水素原子のスペクトルへの影響は非常に小さいため、スペクトル観測の精 度がよほどよくないとみつけられません。重水素の発見は、分光学の進歩の成果であると いえます。 ・水素原子の波動方程式を、最初から原子核を固定して解くことを考えると、「2粒子系」 であることが忘れられてしまいますので、3次元の極座標を使う扱いで、剛体回転子の問 題と関連づける発想はでなかったかもしれません。剛体回転子の問題で出てくるルジャン ドリアンΛの固有方程式という、応用数学分野で良く知られていた知識があれば、角度に 依存する部分は、球面調和関数として、ただちに得られます。そうなれば、残りの距離(動 径)r に依存する関数 R(r)(Rydberg 定数と同じ文字で表しますので、混乱しないように注 意する必要があります)を決める方程式を得るのは簡単です。ψ=R・Y を Hψ=Eψに代 入し、r に依存する演算を丁寧にやれば、R(r)を決めるための微分方程式が得られます。そ の際、球面調和関数Y が満たす固有方程式の知識を使うため、Y の形を決める量子数の1 つであるエル l が、導入されます。 ・講義ではR(r)を具体的に求めるところは、R(r)=Ae-arと仮定した場合についてだけ行いま した。それでも、水素原子の基底状態に相当する 1s 軌道の場合が求められるのですから、 このような解き方の威力は、絶大です。多くのテキストは、こうした解き方をまったく紹 介せずに、解いた結果だけを、理由なしに紹介しています。2s 軌道や 2p 軌道に相当する解 は、R(r)の形として、もう少し複雑な形(といっても、r の多項式を掛け算するだけですが) を導入すると、得ることができます。 詳しくは、参考書として挙げた「量子化学(裳華房)」のホームページにある 次のPDF を参照してください。 http://www.shokabo.co.jp/author/3419/comment05.pdf ・講義資料の誤植 授業のあとで指摘してくれた人がいるのですが、「R(r)を求める計算の例」のところで、 下から2行目のR(r)の式の指数のところで分母にあるはずのε0が抜け落ちていました。講 義資料予習版と実際の講義のときの資料は訂正が必要です。講義後に電子教室に貼りつけ た講義資料の方は、訂正してあります。 みなさんの中には、よく予習していて、こうしたミスプリに気づく人がいます。講義資 料には、こうしたミスプリがあるかもしれません。もしみつけたら教えてください。 訂 正いたします。 ・p 軌道関数やd軌道関数の具体的な形(今回の講義資料では「波動関数の角度依存性で表 にして示してあります」は、球面調和関数(剛体回転子のところで表にして示しました)

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3 に基づいて、求めることができます。Y+Yの定義式に基づいて計算すれば、出てくるは ずです。参考書「量子化学(裳華房)」では、p.63-p.64の本文で p 軌道が、5章末の演 習問題でd軌道が扱われています。 ・s軌道、p軌道、d軌道については、高校の教科書でも、参考や発展として、扱ってい る場合もありますが、それが何を意味するか、きちんと書かれている本は、ほとんどあり ません。今回の講義で、こうした軌道関数の r-依存性、角度依存性が、明確になりました ので、電子の存在確率と関係する軌道関数の意味が、かなりはっきりしてきたと思います。 ・s 軌道は、角度部分が定数ですので、どの方角でも、値が等しくなります。このため、丸 い形をしていることが理解できると思います。p軌道は、x、y、zの各座標軸方向に大 きな値をもち、原点のところでは0になり、原点を含み各軸に垂直な面内では、どこでも 値0となる「節面」をもちます。軌道関数には、符号(+か-)があるため、角度依存の グラフが2色になっているのは、一方の符号が+で他方の符号が-であることを示してい ます。d軌道の場合は、p軌道よりも節面の数が多くなっています。5つのうち四葉型に 見える4つの節面は簡単にわかると思いますが、dz2軌道の節面は少し複雑で、円錐状にな っています。その円錐面の角度は、3z2-r2=0 となる角度ですので、θ=何度になるか、3次 元の極座標の定義式を参照して求めてみると面白いと思います。 ・球面調和関数としては、その絶対値の2乗に、sinθdθdφをかけて、θは0からπまで、 φは0から2πまで、積分した結果が1になるように規格化したものが用いられています。 Y0,0は定数ですが、その定数値が √4π 分 の1 になっている理由は、この規格化の条件 式の積分をやってみればはっきりします。 ・球面調和関数 Yl,mには2つの添え字エルとエムがついています。原子軌道の角度部分を 表す場合、エルは方位量子数、エムは磁気量子数とよばれます。エルとエムの間にコンマ を入れない書き方もありますが、間にコンマを入れることもあります。エルやエムが具体 的な数字のときは、10 と書くと、十とも読めてしますので、1,0 というふうに、数字の間 にコンマを入れて混乱をさけるようにしている本が多いですが、間のコンマを省略してい る本もあるので、注意が必要です。コンマを間に入れておけば、混乱は避けられます。 ・動径分布関数を0から無限大まで積分した結果が1になるのは、確率密度の総和に相当 するので当然のことです。1s 軌道の動径分布関数のグラフは、1こぶの曲線ですが、こぶ の頂点を与える距離はr=a0で、ちょうど、ボーア半径に相当します。つまり、量子論の波 動方程式解いて得られる電子の存在確率分布は、どの距離が最大になるかというと、ちょ うどボーア半径のところであることがわかります。古典論では、ボーアの円軌道にしたが

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4 って一定の半径の円周上に拘束されて電子がまわりますが、量子論では、最大確率はボー ア半径の距離になるものの、その距離にしか電子が存在しないのではなく、より近くにも より遠くにも出没する確率があります。 ・多電子原子(電子数が2以上の原子)では、シュレーディンガー方程式に電子間の相互 作用が入ってくるので、解くことがたいへん面倒になります。もちろん、最先端の理論化 学・計算化学の分野では、非常に高度に発展した方法で、コンピューターを使って、高い 精度で多電子原子のシュレーディンガー方程式を解くことができていますが、その詳細を、 大学の学部レベルで学ぶことは、世界的にもほとんど行われていません。通常、化学系の 大学院レベルで学習します。 ・講義では、多電子原子のシュレーディンガー方程式の解が、どのようなものになるかを、 粒子間のクーロン力(静電気力)の本質に基づいて推論する方法を紹介しました。つまり、 高度な計算理論や計算技法を駆使しなくても、解のおおよその特徴を推論するたいへん賢 い方法があるのです。 電子が2個以上になったことで、1電子原子と根本的に違ってくるのは、電子間の斥力 (反発力)です。電子どうしの相対的な位置関係で、斥力が働く方向がかわりますが、一 番外側の電子に着目すると、他の電子は、原子核がある方向に存在するため、他の電子に よって及ばされる斥力は、原子核からの引力が働く方向とは逆の、外側向きになります。 原子核からの引力と逆向きの力が働けば、原子核からの引力が弱められることになります。 これが、他の電子による静電遮蔽効果をもたらします。 講義では、n個の電子が内側にあるとして、静電遮蔽効果によって、原子核の電荷がZ-n に減少すると考えましたが、このn の大きさは、遮蔽定数(screening constant)とよばれ s で表されるのが普通です。そして、s の大きさは、かならずしも整数でなくてもよく、全体 の電子数より小さな数になります。講義では、一番外側の電子に着目して、それに対する 静電遮蔽の効果を考えましたが、それ以外の電子に対しても、静電遮蔽の効果を考えるこ とは可能です。 電磁気学を学ぶと、電荷の分布が単位電荷に及ぼす効果は、電荷分布の中心からその単 位電荷までの半径の球の内側にある電荷だけを考えればよく、より外側に存在する電荷が 及ぼす効果は考えなくてよいという定理(ガウスの定理)というのがあります。このため、 原子中の任意の電子に及ぼす遮蔽効果は、その電子よりも、原子核に近いところに存在す る電子だけからもたらされ、外側に存在する電子は、遮蔽効果には、まったく寄与しない と考えてよいことになります。 こうした、静電遮蔽効果の特徴をよく知っていると、原子中の一番外側の電子には、大 きな静電遮蔽効果が働き、内側に存在する電子への遮蔽効果は、原子核に近い電子ほど、 小さくなることがわかります。結局、静電遮蔽効果で、原子核の正電荷の大きさが、原子

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5 番号より小さくなり、それを有効核電荷とみなすと、原子中の個々の電子は、有効核電荷 の周囲にある電子の運動として理解されますので、結局、原子中の電子は、すべて1電子 原子(水素類似原子)の場合と非常によく似た軌道関数にしたがって運動すると考えてよ いことになるのです。これが、多電子原子でも、1s、2s、2p、3s、3p、3dと いった原子軌道に電子が「収容」されていると考えてよいことの根拠を与えます。 ・多電子原子の原子軌道のエネルギーの順番にしたがって、エネルギーの低い方から順番 に電子を配置して、原子の電子配置を組み立てることができます。このとき、1種類の軌 道には、電子は上向きスピンと下向きスピンの電子を1個ずつ、合計2個までしか収容で きません。これを、パウリの原理といいます。また、同じエネルギー準位の軌道(たとえ ば、p 軌道に3種類、d軌道には5種類のものがある)に電子を配置するときには、フント の規則が適用されます。以上を考慮して、原子の一番安定な電子配置(基底状態の電子配 置)を組み立てる規則を、原子の電子配置の「構成原理」もしくは「組立規則」とよびま す。 ・原子の電子配置の「構成原理」を用いると、高校のテキストの巻末などに出ている電子 配置を簡単に組み立てることができます。「構成原理」に従わない例外は、非常に少ないで すが、少しだけあります。たとえば、構成原理で(4s)2(3d)4になると推定される原子番号24 の Cr では、(4s)1(3d)5の電子配置が一番安定であることが実験で確認されています。これ はどうしてでしょうか。実は、4s とか 3d とかは副殻(副電子殻の意味)とよばれ、副殻は、 半分もしくは全体が電子で満たされると安定になることが知られています。(4s)2(3d)4では、 4s は(4s)2となっていて満員ですので安定ですが、 (3d)4の方は満員になっていませんし半 分にも1電子不足しています。そこで、(4s)2の電子を1個3d の方に移すと、両方の副殻と も半数だけ電子が入った状態になって安定します。 これとよく似たことは、(4s)2(3d)9となることが構成原理で推定される原子番号29 の Cu の場合にも起こります。Cu では 4s の電子1個が 3d に移されることで、(4s)1(3d)10となり、 4s は半数になりますが、3d が満員になって、電子を移す前よりも安定します。こうした例 外が、いくつかありますが、上で述べた構成原理によって、ほとんどの原子の基底状態の 電子配置を、簡単に組み立てることができます。 ・イオン化エネルギーや電子親和力が、原子番号の変化に対して、周期性を示すことは、 高校のテキストにも示されていますので、知っていると思います。この周期性が、なぜ発 生するかは、今回の講義で出てきた静電遮蔽効果によって合理的に説明することができま すが、そのためには、外側の電子に対し、他の電子がどの程度の遮蔽効果を与えるのかを、 詳しく議論する必要があります。

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6 ・電気陰性度というのは、原子の個性を表す概念です。陰性が強いと、電子を引き付けや すく(失いにくく)なります。従って、陰性が強い原子は、イオン化エネルギーが大きく 電子親和力も大きくなります。このことを考慮して、マリケンはイオン化エネルギーと電 子親和力の平均値で電気陰性度を定義しました。これに対し、ポーリングは、異なる原子 AB の結合エネルギーと同種原子の AA もしくは BB の結合エネルギーを用いて、A と B の 電気陰性度の差の大きさを定義しました。異種の原子で、電気的陰性の度合いが違うほど イオン結合の性格を帯びて結合が強くなることを利用したのです。ポーリングの電気陰性 度の定義式を見ると、このことが理解できるでしょう。定性的には、マリケンでもポーリ ングでも、どちらも電気陰性度の大小の傾向はよく似ていますので、どちらを用いても同 様の議論ができます。マリケンもポーリングもともに、ノーベル化学賞の受賞者です。 ・原子の電子配置で、不対電子があると、電子がもつスピンの性質で、原子が磁気を帯び、 小さな磁石の性質(常磁性)をもちます。電子が電子対になると上向きと下向きのスピン が打ち消し合って、磁気を失います(反磁性)。常磁性は、分子や金属などの固体でも発生 し、磁性材料として利用されています。不対電子によるスピンの向きが、巨視的空間の広 い領域で揃っている物質は、強磁性とよばれます。永久磁石は、強磁性の物質でできてい ます。これに対して、強磁性ではないけれど、磁石にくっつく性質は常磁性、磁石を近づ けてもくっつかない物質は反磁性です。 ・電子スピンに上向きと下向きの2種類が存在することは、ナトリウムランプから放出さ れるスペクトル線が近接した2重線であるという実験事実などに基づいて明らかにされま した。また、電子スピンに↑と↓の2 種類があることは、電子が素粒子として Fermi 粒子 とよばれるものであることが反映されています。電子スピンを考慮して、原子の波動関数 を組み立てるとき、数学で習う行列式をつかうと自然にパウリの原理を考慮することがで きるのですが、これは理論化学を深く学ぶ領域につながりますので、詳しいことは、参考 書にゆずります。 ・スズランの写真は私の自宅で撮ったものです。スズランは、私が育った街、札幌市の市 花となっています。 ・次回6月3日の演習で、今回の講義とも関連して、いろいろ大切なことを学ぶことにな ります。(1)(2)(3)の3枚配布されますが、そのうち(1)だけは、かならず、時間 内に提出してください。残りの(2)(3)は、HomeWork として、6月10日に教室で提 出してもかまいません。演習は全部で2回ですので、6月3日の2回目でおしまいになり ます。 ・今回のHomeWork は、次回6月3日に教室で提出してください。

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