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密教文化 Vol. 1982 No. 138 004谷川 泰教「梵文『仏頂大白傘蓋陀羅尼経』について――ネパール写本報告〔1〕―― PL106-L87」

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全文

(1)

密 教 文 化

梵 文 『仏 頂 大 白傘 蓋 陀 羅 尼 経 』 に つ い て

ネ パ ー ル 写 本 報 告

〔1〕

一 「仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経』 の 正 式 の 梵 文 タ イ トル は、Sarvatathagatosnlsa-Sitatapatra-namaparajita-nlahapratyangira-vidyarajn1〔SUSと 略 〕 で あ る。 こ の 経 の 梵 本 が 記 録 に そ の 名 を あ らわ す の は、 弘 法 大 師 空 海 の 『御 請 来 目 録 』 が お そ ら くは じ め て で あ ろ う。 そ の 中 に 「梵 字 大 仏 頂 真 言 一 巻 」 と あ る の が そ うで あ る。 残 念 な が ら そ の も の は 現 存 し な い が、 幸 い、 シ ッ タ ン 文 字 の転 (1)

写 本 が 慈雲 尊 者 の 『

梵 学 津禦 」 に収 録 され て 残 って い る。 ま た、 近 年、 長 谷 宝

秀 師 に よっ て も 『

大 師 御請 来 梵 字 真 言集 』 (昭和15年) の 中 に収 め られ て い る。

さ らに は、 大 正 新 脩 大 蔵 経 第19巻 に も シ ッ タ ン文 字 の ま ま収 録 され て い る。

(2)

近 年 に な っ て、A.F. R Hoernleは、 Steinが 東 トル キ ス タ ン で 蒐 集 し た 巻 子 本 の 中 に、 コ ー タ ン 語 化 し た サ ン ス ク リ ッ ト語 で 書 か れ た こ の 経 が 存 在 す る こ と を 明 ら か に し、 そ の は じ め の 一 部 分 を ネ パ ー ル 写 本 と対 照 し て 紹 介 し た。 こ (3)

のHoernleの

報 告 に も とづ き、 金 倉 圓 照博 士 は、 Hoernleの

紹 介 し た箇 所 に

該 当す る漢 訳 文 た っ い て 考 察 し、 そ の結 果 を一 覧 表 に して 発 表 した。 これ に よ

っ てわ れ わ れ はHUSと

そ の相 当漢 訳 に つ い て、 一 応 の知 識 を得 た こ とに な

る。 しか し、発 表 され た 部 分 は最 初 の帰 敬 文 にす ぎず、 経 の全 体 像 をつ か む こ

とは で き な い。

(4)

Hoernleは さ ら に、 同 じ くSteinが 蒐 集 し たSUSの 一 葉 に つ い て も 解 読 し、 こ れ を、 渡 辺 海 旭 博 士 の 協 力 を 得 て ロ ー マ ナ イ ズ し た 不 空 音 写 本、 東 トル キ ス タ ン 発 見 の巻 子 本2本、 ネ パ ー ル 写 本1本 と対 照 して 発 表 し た。 こ の 部 分 は シ ュ ロー カ 調 の 偶 頚 か ら成 る 一 段 で あ る。 こ れ に つ い て は 後 に ふ れ る こ と に す る。

(2)

ウ イ グ ル 語 の 断 片 に つ い て も、 古 くRW.K. Muller, S.Malov, 石 浜 純 太 (5)

郎 の各 氏 に よ って研 究 報 告 が な され て い る。 こ れ らは今 回 の発 表 に は参 照 で き

な か っ た。

ま た、 最 近 に な っ て、 中央 ア ジ アの トル フ ァ ンで発 見 され た梵 文 写 本 の 中 に

も、 こ のSUSの

断 簡 の存 在 す る こ とが報 告 され、 そ の全 文 が

E.Waldsch-(6)

midt らた よ っ て解 読 発 表 され た。

以 上 は、 い ず れ も断 片 も し くは 断 片 的研 究 報 告 で あ っ て、SUSの

全 体 に つ

(7)

い て は い ま だ報 告 され て い ない よ うで あ る。

とこ ろで、 わ れ わ れ が 数年 来 ネパ ール よ りマイ ク ロ フィ ル ム に撮 影 して入 手

した写 本 の 中 に、SUSの

写 本 が、 現 在 判 明 し てい る も ので19種 あ る。 そ れ ら

は単 経 と して存 在 す る もの も あれ ば、 ダ ラニ集 に収 録 され て い る もの もあ る。

ちな み に、 東 京 大 学 図 書 館 蔵 の梵 文 写本 の中 に も14本 の存 在 が確 認 され て い る

が、 や は り単経 と して よ りも、 ダ ラニ集 に 収録 され て い る場 合 の方 が多 い よ う

で あ る。 した が って、 わ れ わ れ の場 合 もダ ラニ集 をつ ぶ さに調 査 す れ ば、 そ の

数 は ふ え るか も しれ ない。 た だ、 ダ ラ ニ集 とい っ て も、 収 録 ダ ラ ニ の 種 類、

数、 順 序 は ま ち ま ち で、 編 集 に一 定 の形 式 が あ るわ け で は な い よ うで あ る が、

こ の こ とに つ い て は詳 しい比 較 検 討 が必 要 で あ ろ う。

これ ら19種 の 写本 は、 しか しな が ら、す べ て が 同種 とい うわ けで は ない。 東

大 写 本 目録 を み て も14本 が3グ ル ー プ に分 類 され て い る よ うに、 わ れ わ れ の 場

合 も同 様 に3グ ル ー プ に分 類 で き る。 こ の両 方 の分 類 が内 容 的 に一 致 す るか ど

うか は、 東 大 写本 を実 際 に検 討 して い ない ので 正確 な こ と はい え な い が、 少 く

と もそ の 中 の2群 は 一 致 して い る もの と考 え られ る。 これ ら3群 の 特徴 に つ い

て は後 程 言 及 す る こ と にす るが、 経 の構 成 とい う点 か ら見 て そ れ ぞ れ が 同 じ形

式 に従 って い る とい え る よ うで あ る。

書 写 年 代 の わ か る もの は19本 の うち5本 の み で、 そ れ ぞ れNePal Samvatの

862, 872, 911, 925, 959 と あ り、西 暦1742∼1839に 相 当す る。 書 体 か らす る

と、他 もこれ ら と大 体 同年 代 の写 本 で あ ろ う。 した が って、 年 代 的 に は比 較 的

新 しい写 本 ば か りで あ り、資 料 的 価 値 の面 で多 少 の制 約 は まぬ が れ えな い で あ

ろ う。

以 下、SUSの

ネパ ー ル 写本 に つ い て、 漢 訳 諸本、 トル フ ァ ン出土 断 片、 シ

梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(3)

-105-密

ッタ ン本、 チ ベ ッ ト訳 な ど との対 照 を お こ な い な が ら、 簡 単 な 紹 介 を試 み た

い。 しか し、何 分、 写 本 を扱 うこ とは筆 者 に とっ て初 め て の経 験 で もあ り、 ま

た そ の批 判 的 校 訂 を終 了 して い るわ け で もない。 した が っ て、 以 下 で 使 用 す る

原 文 は あ くまで 現 時 点 で の 読 み で あ り、初 歩 的 な ミス を犯 してい るか も しれ な

い こ と を、 あ らか じめ お断 わ り してお か ね ば な らな い。

考 察 に先 立 ち、 漢 訳4本、

シ ッタ ン本、 チ ベ ッ ト訳、 トル フ ァ ン出 土 断 片 に

つ い て一 言 してお こ う。

(1) 漢 訳

漢 訳 に は次 の4本 が あ る。

1)

大 仏 頂 如 来放 光 悉 恒 多鉢 恒 羅 陀羅 尼 』。不 空 訳。 大 正 蔵No.944A.

2)

『大 仏 頂如 来 密 因修 証 了義 諸 菩 薩 万 行 首榜 厳 経 』。般 刺 蜜 帝 訳。 大 正 蔵No.

945。 こ の第7巻

に漢 字 音 写本 が含 まれ て い て、 次 の よ うな名 称 を出 して い

る。

「大 仏 頂如 来 放 光悉 恒 多鉢 恒 曜菩 薩 万 行 品潅 頂 部録 出。 一 名 中印 度 那 蘭陀 曼

茶 羅 潅 頂金 剛大 道 場 神 呪」(大 正19、133下)。

な お、 この経 は高 麗 版 を底 本 に して い るが、 こ の 陀羅 尼 の 部分 は、 明本、

宋 本、 元 本 と高 麗 版 とで は大 異 が あ るた め に、 巻7の 末 尾 に 明本 を底 本 に宋

本 元 本 とを対 校 した テ キ ス トが 載 付 され て い る。

3)

仏 頂 大 白傘 蓋 陀 羅 尼 経 』。沙 難 巴訳。 大 正蔵No.976。

4)

仏 説 大 白傘 蓋 総 持 陀 羅 尼 経 』。真 智 等 訳。 大 正:蔵No.977。

以 上4本

の うち、1)と2) は漢 字音 写 本 で、3)と4) は音 写 と訳 との 混合 で あ

る。 ま た、1)と2) で は、 「

如 是 我 聞 」 以 下 の説 法 処 な どの記 述 が み られ ず、 直

接 帰 敬 文 か らは じ ま り、最 後 の流 通 分 と もい うべ き経 典 護 持 の功 徳 を述 べ る部

分 が 欠 落 して い るの に対 して、3)と4) はそ の両方 を備 え て い る。不 空 本 の奥 書

に 「大 唐青 龍 寺 内供 奉 沙 門曇 貞修 建 真 言 碑本、 元 禄 十 六年 二 月 六 目以 浄厳 和 上

之 本 再校 了 」 とあ るこ とか らすれ ば、 陀 羅 尼 と して実 際 に受 容 され た の は1)と

2) の ご とき形 式 の も の だ っ た のか も しれ な い。

(2) シ ッ タ ン本

(4)

1 慈 雲 尊 者 編 『梵 学 津 梁 』 は 最 近 Sata-Pitaka Series, Vol.93,2Pts. と し て 写 真 版 で 出 版 さ れ た。 原 本 は 高 貴 寺 本 で あ る。 こ のPt.1に 収 録。 2 長 谷 宝 秀 師 編 『大 師 御 請 来 梵 字 真 言 集 」 収 録 の も の の 原 本 は、 東 寺 御 影 堂 宝 庫 所 蔵 の 古 写 本 で あ る。 3 大 正 蔵19巻 にNo.944 Bと し て 収 載 さ れ て い る も の の 原 本 は、 霊 雲 寺 版 普 通 真 言 蔵 の も の で あ る。 厳 密 に は、 こ の3本 よ り も む し ろ古 写 本 に よ っ て シ ッ タ ン本 の テ キ ス ト を校 訂 し な け れ ぼ な ら な い で あ ろ うが、 今 の と こ ろ は こ の3本 を校 合 し た も の を も っ て そ れ に代 え る。 こ の シ ッ タ ン本 と不 空 本 と を 対 照 し て み る と、 両 者 は 全 く 同 一 の テ キ ス トに よ っ た 可 能 性 が 強 い。 大 正 蔵 経 の 編 者 が こ の 両 者 をNo.944 A,Bと し て 並 載 し た の は そ う い う理 由 に 由 っ て い る の で あ ろ う。 (3)チ ベ ッ ト訳。4本 が 存 在 す る。 1) 北 京No, 202=デ ル ゲ No.590=同No.985.

Aryasarvatathagatosnisasitatapatra-namaparajita-

pratyamgira-maha-vidyarajni.

2) 北 京No.203=デ ル ゲNo.591.

Aryatathdgatosnisasitdtapatrdpardjita-mahapratyangirdparamasiddha-n dma-dhdraAryatathdgatosnisasitdtapatrdpardjita-mahapratyangirdparamasiddha-ni

3) 北 京 No.204=デ ル ゲ No.592=同No.986.

Aryatathagatosnisasitdtapatrdparajitd-ndma-dllarani.

4) 北 京No.205=デ ル ゲNo.593

Aryatathagatosnisasitatapatra-namaparajita-dharani.

これ ら4本 の チベ ッ ト訳 につ い て は、 い まだ全 体 的 な校 合、 考 察 を行 な っ て

い ない ので、 必 要 に応 じて参 照 す るに と どめ る。

(4) トル フ ァ ン出 土 断 片。 最 初 と後 半 部 とを欠 く もの の、 全 体 の%弱 が 発 見

され て い る。

(5) ネ パ ー ル 写本

わ れ わ れ が所 有 す るSUSの 写本19本 を以 下 の3群 に分 類 す る。

梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(5)

-103-密 教 文 化 〔Aグ ル ー プ 〕 (1) 17葉。Dharanlsamgraha 所 収。ComPlete。 (2) 20葉。 た だ し3a-6bは 別 写 本 の 混 入。 (3) 19葉。folioNo.が3で は じ ま り、 奥 書 の 最 後 が 欠 け る も、Complete. (4) 16葉。Complete.Samvat 959. (5) 26葉。Complete. (6) 33葉。Complete.Samvat 862. (7) 19葉。Colnplete. (8) 33葉。Complete.Sarnvat 925. (9) 12葉(ff.25bL36a4)。ComPlete. Dharaplsamgraha 所 収。 (10) 7葉(ff.120b-126b)。 同 上。 (11) 21葉(ff.25-45)。Complete.本 来 は ダ ラ ニ 集 の 一 部 か? (12) 8葉。Incomplete. (13) 26葉。Complete. DharaPIsamgraha 所 収。 (14) 10葉(ff.27b-36b)。 同 上。 〔Bグ ル ー プ 〕 (1)17葉。Complete. Samvat 872。 (2)17葉。Complete. 〔Cグ ル ー プ 〕 (1) 113葉。Complete.NepalaSamvat 911. (2) ff.1-2701ncomplete. (3) 88葉。Complete.Samvat 1020. こ れ ら 串群 の う ち、A群B群 の 差 違 は そ れ ほ ど大 き い も の で は な い が、C群 の み は、 そ の 葉 数 か ら し て 明 らか に 異 な る。 さ ら に は、C群 の 中 で も、(1)と(2) (3)と は 内 容 を 異 に す る。 こ れ をA群B群 と対 照 し て み る と、C(1)はA群 の テ キ ス トを ほ ぼ 全 て 含 み、 そ の 上 に大 幅 な 増 広 が 認 め られ る。 い わ ばA群 を 略 本 と す れ ば、C(1)は そ の 広 本 に あ た る と み な す こ と も で き る。 あ る い は 注 釈 とみ ら れ な い で も な い。C(2)(3)とB群 と に つ い て も ほ ぼ 同 様 の こ と が い え そ うで あ る が、A群 との 間 に も一 部 平 行 関 係 が 認 め られ る。 こ のC群 とAB群 と の 関 係 に つ い て は よ り厳 密 な 検 討 を 加 え る 必 要 が あ ろ う。 参 考 ま で にC(1)とC(3)の 奥 書

(6)

を示 して お く。

C(1): ity aryya-sarvatathagatosnisasitatapatra-namaparajitayam

lona-lokayam mahapratyamgirayam

dharmmopadesasastre

suparisuddha-dharmmakaya-jnanamurttim

anuttaraya

dharmmadesanadhisthita-srIsakyamunina

bhasita paramartha

nama

vinirgatamahapratyamgi-raya mahavidyarajfli

sapadalaksa buddhabhasita

parisamaptah//

こ れ は 東 大 写 本 目録 のNo.445と 一 致 す る。

C(3): ity aryyadvadasasahasrikayam

mahapratyamgirayam

sarvatath-agatosnisasitatapatra-nama-mahapratyamgird-mahavidyarajni

ava-lokitamurddhni

trtiyakalpa

samaptam//

東 大 写 本 に は こ れ と 一致 す る も の は 見 出 さ れ な い。trtlyakapa(第 三 儀 軌?) と あ る か ら に は 当 然、 第 一 第 二 の 存 在 が 予 想 さ れ る が、 そ の よ うな も の は 発 見 さ れ て い な い よ う で あ る。 ち な み に、C(3)のf.laに はtrtlyabhaga、 C(1)のf.1a に は caturthabhaga の 書 き 込 み が 見 られ る。 こ れ ら を 第3巻 第4巻 と す る よ う な 大 部 な も の が あ っ た の か ど うか 検 討 を 要 す る。 も し存 在 し た と す れ ば、C (3)の 奥 書 に み ら れ る よ うな 「一 万 二 千 」 の名 を有 す る儀 軌 の 広 本 と い う こ と に な る の で あ ろ う か。 三 ネ パ ー ル 写 本3群 を、 漢 訳(そ れ ぞ れ、 〔不 〕、〔般 〕、〔沙 〕、〔真 〕と 略)、 シ ッ タ ン本(〔 悉 〕)、 トル フ ァ ン 出 土 本(〔Tu〕)、 チ ベ ッ ト訳(〔T1,2,3,4〕)と 対 照 し て、 そ の 特 徴 を示 す。 (1) 序 分

CAD: evam maya srutam ekasmin samaye bhagavan devesu

trayatrims-esu viharati

sma//sudharmmayam

devasabhayam mahata

bhiksusa-mghena sarddham mahata ca bodhisatvasabhiksusa-mghena

sakrena devanam

indrena sarddham // tatra khalu bhagavan prajflapta

evasane

nisa-dya usnisa-vyavalokitam

nalna samadhim samapadyate

sma //

sam-anantara-samapannasya

bhagavata usnisa-madhyad

imani

mantra-padani nisearanti

sma //

梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(7)

-101-密

BD:

evam mayd srutam...viharati

sma // sudharmmayam

devasabha-ydm mahata bhiksusaznghena

sarddham

pancamdtrai

bhiksusatair

mahata bodhisatvaganena

sdrddhain

tasmin samaye sambahulas ca

devaputrdh

bhagavanta

paryupdsanti

sma // tatra khalu bhagavdn

mうrddhasamdherうrnnakosad〔1本 で はmうrdhna satvadra(du?)

rnnakosadJ

imani mantrapadani

niscaranti

sma //

〔不 〕 〔般 〕:欠 〔沙 〕: 如 是 我 聞。 一時 婆 伽 梵 在 三 十 三 天 善 法 堂 中。 與 諸 比 丘 諸 大 菩 薩 天 主 帝 釈 無 量 衆 倶。 爾 時 婆 伽 梵 敷 座 而 坐 即 入 普 観 烏 麸 尼 沙 三 昧。 時 婆 伽 梵 忽 従 肉 髪 演 出 秘 密 微 妙 法 行。 〔真 〕: 如 是 我 聞。 一 時 出 有 壊 住 三 十 三 天 善 法 妙 好 諸 天 所 居 之 所。 與 大 比 丘 井 大 菩 提 勇 識 及 天 主 帝 釈 衆 等 集。 爾 時 出 有 壊 坐 蓮 華 座 入 於 普 観 頂 髪 三 昧。 速 然 出 有 壊 従 頂 髪 中 出 現 如 是 総 持 密 呪 法 行。 〔悉 〕 〔Tu〕: 欠 〔T〕: T1とT2は 〔A〕 と 一致 し、 T3とT4に は欠。 以 上 の 対 照 か ら ま ず 注 意 す べ き こ と は、漢 訳 の う ち 音 写 本 で あ る 〔不 〕 〔般 〕、 お よ び 〔悉 〕 〔T3〕 〔T4〕 に、 こ の序 分 が 欠 け て い る 点 で あ る。 こ れ ら は、 お そ ら く、'mantrapada'の 内 容 だ け を別 出 し た も の で あ ろ う。 い わ ゆ る 陀 羅 尼 と し て 一 般 に 流 布 した の は、 こ のSUSの 本 体 と も い うべ きmantrapadaの 部 分 で あ っ た と考 え られ る。 〔A〕 と 〔沙 〕 とは ほ ぼ 完 全 な 一 致 を示 し て い る が、 〔真 〕 は'prajiapta evaSane'「 敷 座 」(沙)の と こ ろ を 「蓮 華 座 」 と 訳 し て い る。 蓮 華 座(padmaS-ana)と い う語 はC(2)(3)に 見 ら れ る (parsadganamadhye mahapratyangira

padmasane nisanna / sarvatathagataracanabadvana-samapannah

usnisav-γavalokitam順ma samadhi samapadyati sma/)。 こ の 文 は 説 明 的 で あ る と の 印 象 を 与 え る。 〔真 〕 の 訳 は お そ ら く語 を補 っ た も の で あ ろ う。 こ の 点 を 除 け ば、 〔A〕 〔沙 〕 〔真 〕 は 一 致 し て い る とみ な す こ と が で き る。

〔B〕 は 下 線 部 が 異 な っ て い る。 ま ず、'……prajnapta evasane……samap-adyate Sma'の 部 分 が な い。 そ の か わ り にtasmin以 下 の 下 線 部 が み られ る。 C(2)(3)の 両 本 が 〔B〕 と同 文 を 有 し て い る こ と か らす れ ば、 脱 文 で は な か ろ

(8)

う。 さ ら に は、 〔A〕usnlsamadhyad の と こ ろ に も相 異 が 認 め られ る。 こ の 部 分 に は 写 本 そ れ ぞ れ に 混 乱 が あ る。

B(1): murdhnd satva drarnndkosdd (1b5)

B(2): murddhd samdher urnnakosdd (1b4-5)

C(2): buddhasatva//

durddakosdd (3b2-3)

C(3): buddhasatva

urnakosdd (3a3-4)

今 の と こ ろ い ず れ が 正 し い 読 み か 判 断 し が た い が、 こ れ ら が 一 つ の 写 本 の 系 統 を な し て い る こ と は 確 か で あ ろ う。

(2) 帰 敬 分

こ の 部 分 に つ い て は 金 倉 圓 照 博 士 が、Stein蒐 集 本 のHoernleの 報 告 (Hod-gson Collection No.77の 写 本 中 の 相 当 箇 所 の ロ ー マ ナ イ ズ 文 を含 む)に も と

(8)

つ い て、 漢 訳、 シ ッ タ ン本 との対 照 を行 な って い る。 そ の結 果 は、 不 空 訳 本 と

シ ッタ ン本 に、 い くつ か の脱 文 と語 句 の前 後 が見 られ る以 外 は、Stein 蒐 集 巻

子 本 と漢 訳3本

(〔

般 〕 〔

沙 〕 〔

真 〕) とは一 致 す るこ と を示 して い る。 しか し、

わ れ わ れ の写 本 を見 る と、Hoernle が途 中 で打 ち切 った そ の直 後 の文 章 で、 漢

訳 と の相違 が 見 られ る。 そ れ を以 下 に対 照 して示 す。

CAD: namo bhagavate

amoghasiddhaye

tathdgatdydrhate

samyaksam-buddhaya//

〔B〕:

〔悉 〕:

〔沙 〕 〔

真 〕:

CAD: n. bh. supuspit asdrendrardjaya

t. a. s.//

CB:

n. bh. supuspit asdrendrardjdya

t. a. s.

〔悉 〕: n.bh.sampusPitasalendrarajaya t. a. s./

〔沙〕: 南護婆伽梵娑 羅樹華普遍 開敷王仏。

真〕: 敬 礼娑羅主王華実 圓満仏。

以下前後 の語句 を省略 し仏名 のみ をあげる。

CAD: padmottararajaya,

vipasvinc, sikhinc, visvabhuvc,

krakucchanda-ya, kanakamunayc,

kasyapaya, sakyamunayc,

ratnacandraya,

梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(9)

-99-密

ratnaketurajdya,

samantabhadrdya,

vairocanaya,

vikasitakamalotpal-agandhaketurajdya.

CB(1)J:

ratnaketurajdya,

samantabhadraya,

vairocanaya,

vikasitanaya-nonyalah (sic) gandhaketurdjdya,

sdkyamunyaya (sic).

CB(2)J:

ratnaketurajdya,

vipasvine,

vikasitanilotpalagandhaketurdj ,ya,

sdkyamunaye.

〔悉 〕: sakyamunaye,ratnakusumaketurajaya

〔沙〕: 南護婆伽梵釈迦牟尼仏。南護-宝 憧王仏。南護-普 賢王仏。南護-毘

盧遮那仏。南護-広 目優鉢羅華香憧王仏。

真〕: 敬礼釈迦牟尼仏。敬礼宝上王仏。敬礼最妙普賢仏。敬礼衆 明主仏。敬

礼 目円満烏巴辣香上 王仏。

〔Tu〕:……〔 欠 〕……krakucchazldaya, kanakaznunaye, kasyapaya,

sakya Cmu J (nay) (eJ, ratnacandrdya,

ratnaketurdjdya,

samantabhad-rdya, vairocandya,

vikasitakdmalotpalagandhaketurdjdya,

チ ベ ッ ト訳 で は 〔T1〕 が 〔A〕 と一 致 す る の に対 し て、(2)(3)(4)は 漢 訳 と 一 致 す る。 こ の 対 照 に よ る と、 〔A〕 は 明 ら か に 増 広 の 跡 が 認 め ら れ る。 そ し て 〔A〕 は 〔Tu〕 と も一 致 す る。sakyamunayeが 過 去 六 仏 を 連 想 さ せ、 挿 入 さ れ た の で あ ろ う か。B(1)の 挙 げ る 仏 名 は 漢 訳 〔沙 〕 〔真 〕 と一 致 す る が、 順 序 が 入 れ 替 わ っ て い る。B(2)は さ ら に、 B(1)の う ち samantabhadra と vairocana が 落 ち、 過 去 仏 の う ち の vipasvin が 入 っ て き て い る。

〔Tu〕 は 上 掲 文 に つ づ い て、 namah sarvabuddhabodhisatvanam dasadis-PratiPannanam sa (myaksambu)ddhanam と い う 一句 を 有 す る が、 こ れ に 一

致 す る の は、 わ れ わ れ の 写 本 中 た だ2本A(6)(8)の み で あ る。 し た が っ て、A群 の 中 に も さ ら に い くつ か の 系 統 の 存 在 す る こ と が 予 想 さ れ る。

〔B〕 が 〔A〕 お よ び 漢 訳、 〔悉 〕、 チ ベ ッ ト訳 な ど と大 き く異 な る点 は、 帰 敬 文 の 最 初 の と こ ろ に あ らわ れ る。

〔A〕: om namo bhagavate usnisaya suddhe vlraje vimale svaha / om namo bhagavate apratihatosnisaya//

(10)

namo buddhaya// namo dharmmaya// namah samghaya// namah

saptandm...

と続 く が、 こ れ か ら は 漢 訳 とT(2)(3)(4)も 一 致 す る。 と こ ろ が 〔B〕 で は こ の 箇 所 に 全 く別 の 帰 敬 文 が あ ら わ れ る。

CB:

(niscaranti

sma//) om namo bhagavate

aparimitagunapratibadna-vyuhdtitakalpdyutatathdgatdydrhate

samyaksambuddhaya//...n.

bh. sarvvadharmmatdvikurvitasritejordjaya

t/ a. s.// ity etesdm

dev-anam buddhdnam bhagavatdm pramukham

krtvd

varttayet//

namo

buddhdya...

こ の 文 章 はC(2)(3)中 に も 見 出 さ れ、 〔B〕 とC(2)(3)と の 密 接 な 関 係 を うか が わ せ る。 こ の 帰 敬 分 の と こ ろ に 限 っ て み て も、 〔A〕 〔B〕 〔沙 〕 〔真 〕 〔悉 〕 〔Tu〕 〔T〕 す べ て に 共 通 す る部 分 と、 〔A〕 〔Tu〕 〔T(1)〕 に 共 通 す る 増 広 部 分、 さ ら に こ の 中 で 〔A(6)(8)〕 と 〔Tu〕 に 共 通 す る 増 広 部 分、 そ し て 〔B〕 独 自 の 増 広 部 分 の あ る こ と が 知 られ る で あ ろ う。 (3) 以 上 の 帰 敬 分 に 引 き 続 き、 よ うや くこ の 経 の タ イ トル で も あ る 主 尊 の 名 が 出 さ れ る。

CA:

ebhyo namaskrtva

imam bhagavatim

sarvvatathdgatosnisasitatap-atrdm ndmapardjitdm

mahdpratyamgiram

prayaksdmi//

CB1J: ebhyo namaskrtva

iyam bhagavata

tathdgatosnisa-sitdtapatra

namdpardjitd

mahdpratyamgira

sarvvakalikalahavigrahavivddapra-samani

CB2D: ebhyo namaskrtva

iyam bhagavati

tathagatostiisasitatapatra-nd-maparajitdin

mahdpratyamgiram

sarva

prasamanim

〔沙〕: 如是敬礼諸 仏等 巳、

婆伽婆帝仏頂大 白傘 蓋無有能敵般難二合当鶏羅母。

真〕: 彼等庭敬礼 巳、

出有壊母一切如来頂髪 中出 白傘蓋仏鯨無能敵大廻遮母。

〔悉 〕: ebhyo nama〔h〕skrtva Imam bhagavataS tathagatosnlsam

sitatap-atram namaparajitam pratyungiram sarvadevanamaskrtam

sarvade-vebhyah pujitam sarvadevesca paripalitatll

〔Tu〕: ebhyo l-maskrtva imam bhagavatam

Sa(r)va〔t〕(athaga)t〔o〕sn.1-梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(11)

-97-密

sasitatapatrannamaparajitam

mahapratyarigiraln

pravaksyami

sarv-akale

〔T〕: (1)に の みrab-tu brjod Par byaoと あ っ て、 他 の3本 に は 欠。

問 題 と な る の は、f.Sg. Acc.のimamが 〔B〕 で はf. Sg. Nomのiyamと (9) な っ て い る こ と で あ る。 こ の こ と は、 実 はpravaksami(A)、 pravaksyami (Tu) と い う動 詞 の 有 無 と 関 連 が あ る よ う に 思 わ れ る。 〔沙 〕 〔真 〕 〔悉 〕 に 動 詞 が 見 あ た ら な い よ うに (も ち ろ ん こ の 前 後 に も な い)、 動 詞 の な い 系 統 の 写 本 が 存 在 し た で あ ろ う。 そ し て、 動 詞 の な い 不 自 然 を 克 服 す る た め に、imam をiyamに 代 え、 そ れ に連 動 し て 他 の f.Sg..Acc.もNom.に 代 え る こ と が な され た。 そ れ が 〔B(1)〕 で あ る。 と こ ろ が 〔B(2)〕 はiyamと し な が ら も、 他 をAcc.と す る 矛 盾 を お か し て い る。 之 れ は あ く ま で も推 測 に す ぎ な い が、 こ の よ うな 混 乱 は 動 詞 の 欠 如 に 起 因 し て い る よ うで あ る。 〔A〕 〔Tu〕 〔T(1)〕 に あ る よ う に、praVaksyami とい う動 詞 が な い と、 こ こ の 文 意 は 理 解 し が た い も の と な る。 こ の あ と に、 同 じ くf.S9. Acc.の 修 飾 句 が 長 く続 く が、 出 入 が 多 い。 一例 と して 最 後 の 箇 所 を示 す。

CAD: ghora-dusta-duhsvapndndm

ca vinasanim

visasastragnyudakotsa-(10)

ranim sarvvadurgatibhayottaranim

// yavad astav

akdlamaranapar-itrdnakari

//

CB:

ghoradusta-duhsvapnanivaranim

// bhava-(B2:

sarva)

visasastrag-ni-udakottaranim

//

沙〕: 亦諸悪夢皆使珍滅。又能救除毒薬器械水火等難。

真〕: 亦能催 壊最極悪一切憎嫌悪夢。亦能救 度毒薬器械水火等難。

〔悉 〕: guram dusvapnanam ca nasanim visa-sastra-agili-udaka-utranizn

〔Tu〕: ghoradustaduhsvapnanaln ca vinasanim/ sarvavisasastragnyu

〔dak〕ottaranim/sa〔rva〕du〔r〕(ga)tibhayotaranim yavad=二astav=

akalamaran.aparitrayan.akarim/〔a〕trayanakarim

〔T〕: (1)は 〔A〕 に 一 致 し、 他 は 漢 訳 と 一 致。

以 上 の 対 照 よ り、 〔A〕 〔Tu〕 は 接 近 し、 〔B〕、 漢 訳、 〔悉 〕 と く らべ て 増 広 が 目立 つ こ と が わ か る。

(12)

以 上 対 照 し た 文 章 に つ づ い て、 〔沙 〕 と 〔真 〕 に は 偶 頚 の 部 分 が 見 られ る。 こ こ は チ ベ ッ ト訳 で も偶 頚 に 訳 さ れ て い る と こ ろ で あ る。Hoernleも こ こ は

(11)

'610ka verseS, more or less corrupt'で あ る こ と を 認 め、 前 述 し た よ う に、

Stein 蒐 集 の 一 葉 (Hoernle Ms No.150Vii/5)、 不 空 本、 Eastern Turkestani

Roll Ch. 0041, Eastern Turkestani Gigantic Roll, Nepalese Ms. (RAS, No. 77)

と を 対 照 表 に ま と め て い る。 し か し、 そ の 中 に 完 全 なSloka verSesを 保 存 し て い る も の は 一 つ も な い。

わ れ わ れ の 写 本 中、 ほ ぼ 完 全 な sloka verses を 保 存 し て い る も の は わ ず か

(12)

に2本、A(8)とC(1)の み で あ る。 先 ず そ れ を 示 す。

aparajitam

mahaghordm mahabaldm tathapi ca //

mahatejdm mahacandam mahasvetam mahadiptdm

mahdjvdla mahamalam mahapandaravasinim

//

aryyatara

bhrkuti ca jaya ca vijayd tathd //(2)

sarvvamdravihantri

ca vajramdleti visruta //

padmabad vajracihnd ca mall caivdparajita//(3)

vajratundi

visala ca Santa vaidevapujita

//

saumyarupa

mahasveta jvala pandaravdsini

// (4)

aryyatara

mahdbala apard vajrasrmkhald

//

vajrakaumdrikd

caiva tathaiva

ca kulamdhari // (5)

vajrahasta

mah avidya tathd kdmeanamalika //

kusumbharatnakd

caiva vairocanakulaprabad

// (6)

tathagatakulosnisa

visruta jrmbhamdlika

//

vajrakanakaprabad

ca locand vajratundi

ca // (7)

sveta ca kamalaksi ca tathd sribuddhalocana

//

tathd vajradhara

cand.rd tatha vajradharapi

ca // (g)

vajramald mahamudrd devi ca kanakaprabad

//

sulocand ca sveta ca tathaiva

kamaleksani //

vinita sdlltacittdtmaguilajiidnasasiprabad

// (9)

梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(13)

-95-密

ity ctd rnudrd sagandh sarvaznatrganascaiva

raksam kurvantu

mama

sarvasatvdndn

ca // //

こ の 読 み は 他 に 比 し て 韻 律 調 整 の 意 図 が 明 ら か に 看 取 さ れ、 事 実、slokave-rses と し て の 体 裁 を ほ ぼ 保 っ て い る とい っ て よ い。 し か し こ れ で は 他 の 写 本 や、 漢 訳、 チ ベ ッ ト訳 と比 し て、 偶 娘 の 数 が1な い し4偶 多 い こ と に な っ て し ま う。 し た が っ て、 こ の 読 み が オ リ ジ ナ ル で あ っ た か ど うか、 疑 問 符 を 付 さ ざ る を え な い。 そ こ で、 他 の 写 本 の 読 み を 以 下 に 示 す。 〔A〕 の 中 で も2系 統 に 分 か れ、 そ の 一 方 を な す 〔A(8)〕 は む し ろ 〔Tu〕 と の 方 に よ り多 く の 一 致 を 示 し て い る。 ゆ え に そ れ は 〔Tu〕 の も と に 示 す こ と に す る。

CAD: aparajitam mahaghoram mahabalam mahatejam

CTuJ:

aparajitam mahaghoram mahabalam mahacandam

CB:

aparajita mahaghora mahabala mahacanda

〔悉 〕: aparajitam gura mahacandnam

〔沙〕: 無敵大勢力 暴悪 大力母

真〕: 無有能敵大緊母 大綴朴母大力母

mahacandam

mahasvetam

mahadiptdm

mahdmalam

mahatejam

mahasvetam

mahadiptdm

mahajvaldm

mahateja

mahasvetah

mahadiptdm

mahatejam

mahasvetam

熾 盛 威 光 母 白蓋 大 力 母。(1)

大 熾 然 母 大威 力

大 白蓋 母 大 力 母。(1)

rnahajvalarn mahapandaravdsinim

mahamalam rnahapandaravasinirn

//

jvald pandaravasini

//

jvala malhdbalasrayapandaravasinim

焔婁 白衣母

(14)

熾燃掛縷 白衣母

aryyatara

bhrkuti caiva jays ca vijaya tatha //

aryatara

bhrkuti caiva jays

aryyatara

bhrkuti caiva jaya

(13)

aryatara

bhrkutim

cevajam

多羅 楚歴相

称婁勝金剛

聖救 度母具 噴鍛 勝 勢金剛称念珠

sarvvamaravihantrl

ca vajramaleti

visruta

//

vajramaleni visruta

vajramaleti

visruta //

vajramaleti

visrrutam

padmabha vajracihna

ca mala caivaparajita

//

padlnahka(以 下 同 上)

padmanka (")

(14)

padmakam

vajrajihvacah

1nd1o cevapai ajitah

蓮 相 金 剛 相。(2)具量 無 能 敵

蓮 華 昭 明 金 剛 名。(2)無有 能 敵 具 念 珠

(15)

vajratundi

visala ca Santa vaidehapujita

//

vajratundi

visali ca Santa vaidevapujita

vajratundi

visalaksi Santa vaidehapujita

//

vajradandi visala ca Santa vaidehapujitah,

金 剛縞擢母

諸善天恭敬

金剛瘤等催 壊母

柔善 仏等供養 母

saumyarupa

mahasveta jvala pandalavasini

//

saumyarupa

mahasveta a ryapancaravasinim

〃 〃mnahatejajvala 梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(15)

-93-密 教 文 化 saumirupamahasveta

善 相 大威 光。(3)

柔 相威 力具 大 母。(3)

aryyatara

znahabala apara vajrasrmkhala

caiva //

aryatara mahabala apara vajrasankala

caiva

caivaparajita

// vajrasrmkhala

caiva

aryatara mahabalah apara vajrasankala

cevah

救度大力母

金 剛錠諸等

聖救 度母 大力母

不没金剛鉄錠母

vajrakaumari

kulandhari

ca vajrahasta

vajravidya kancan.amalika //

vajrakaumarii kulandhari

vajrahasta

ca vajravidya

/.

vajrakaumali kulandhari

// vajrahasta

mahavidya

vajrakaumarihi

vajrahasta ca mahavidya tatha kamcanalnalikah

金 剛 童 持 種

持 杵 種 金 婁。(4)

金 剛 少 童 持 種 母

金 剛 手種 金念 珠。(4)

kusumbharatnd

caiva vairocanakulaprabad

//

〃vairocanakulaprabha

kusumbha ratna caiva vairocanakulosnisa

visruta //

kusumbharatana

ceva virocanakudarthosnisd

赫 色宝珠母

光明金剛髪

大赤色及宝珠母

種明金剛称頂髪

tathagatakulosnisa

visruta vijrmbhamani(:

li)ka //

〃 〃 vijrambhamanika

欠 vijrmbhamana ca

欠 vijrimbhaznana ca

窮塞母持杵

種 相窮塞金剛母

(16)

vajrakan.akaprabad

locand vajratundi

ca sveta ca kamalaksi

sribuddha-locana

vajrakanakaprabha locana vajratundi ca sveta ca

〃 〃 〃 〃kamalaksi sasiprabha

sribucldhalocana//

vajrakanakaprabhalocaliahvajlatundicasvef;acakamalaksasasiprabha

眼如 金 光 母。(5) 金 剛 炬 白母 (蓮華 日月 母)

如 金 色 光 具 眼母。(5) 金 剛燭 及 白色 母 (蓮 華 眼 及 月 光 母。)

tathd vajraprabad

candrd tathd vajradhardpi

ca //

v.ajrasuryyaprabha

camdra tatha vajradharani

ca //

vajramdla rnali dmdyd devi ca kanakaprabad

//

sulocana susveta ca devinam kamaleksana //

kamaleksana

蓮華

蓮華 眼

vinita santacitta

ca atmaounajrnanasasiplrabha

//

梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(17)

-91-密

vinita

santacittas

ca atmagunajnasasiprabha

日月 母

及月光母

ity etd mahamudrdganah samdtrganas ca sarvvaraksdm kurvvantu ma-(17)

ma sarvvasatvdnam

ca//(te ca sarvve buddhabodhisatvamaharddhikdh

mama istartha

sampadayamtu

sarvvdrthasiddham

ca dadantu//)

ity ete mudraganah

samatrgands

ca // sarve mama raksam kurvaantu

satvdndni ca /

ity ete mudramamtragand

mama sarvvasatvdnan

ca raksam kurvvantu

svdha //

us>i ty ete mudrdganah sarve raksam kurvvatu mama sya

諸手 印衆願擁護我願擁護 我。

手印聚彼等一切力故。願令擁護於 我擁護於 我。

以 上 の 対 照 か ら次 の こ と が い え る で あ ろ う。 初 め に あ げ た ほ ぼ 完 全 なsloka versesと し て のA(8)と 〔A〕 と の 問 で は、 現 わ れ る単 語 は 全 く と い っ て よ い ほ ど 一 致 し て い る。 〔A〕 に み られ る 韻 律 の 混 乱 は、A(8)に み られ るca, tathaな ど の 接 続 詞(相 当 句)を 補 え ば、 大 半 は 解 決 さ れ る で あ ろ う。 しか し、 さ ら に

〔A〕: A-(8)を 〔Tu〕 〔B〕 〔悉 〕 〔沙 〕 〔真 〕 と 対 比 す る と、 〔A〕: A(8)に は 増 広 が 認 め られ る。 こ れ ら を さ ら に 詳 し くみ る と、 〔Tu〕 は 他 よ り も 〔A〕: A-(8)

へ の 接 近 を 示 し て い る。 こ の こ と は、 他 の 箇 所 で もA(6)(8)が 〔Tu〕 へ の 接 近 を 示 し て い た こ と も 合 わ せ 考 え る と、 ネ パ ー ル 写 本 と 〔Tu〕 と に 共 通 す る祖 型 的 な テ キ ス トの存 在 を 示 唆 す る で あ ろ う。 H-1eは 前 述 の 謙 に お い て、HornlcMs.No.150vii/ 5、 東 トノレキ ス タ ン語 の 巻 子 本2本、 不 空 本 は 実 質 的 に 一 致 す る の に対 し て、 ネ パ ー ル 写 本 に は か な り の 相 異 と増 広 が み ら れ る こ と を確 認 し て い る。 し か し、Hoernleが 見 た ネ パ ー ル 写 本 (RAS, No.77) と い う の は、 あ ま り よ い 写 本 と は い え な い よ う

(18)

で あ り、 し か も わ れ わ れ の 写 本 中 で も増 広 の 最 も大 き い も の に 接 近 し て い る。 ネ パ ー ル 写 本 に 幾 種 か の 系 統 が あ る こ とは 既 に の べ た と お りで あ る。 わ れ わ れ は そ れ ら を 比 較 検 討 す る こ と に よ っ て、 増 広 の 過 程 を あ る 程 度 ま で 明 ら か に で き る で あ ろ う。 上 掲 対 照 表 に よ っ て 問 題 と な る の が も う一 点 あ る。A(8)の テ キ ス トで み る と、 は じ め の3行 は す べ てf.Sg.Acc.で あ る の に 対 し て、4行 目 のaryyatara以 下 はf.Sg.Nom.に か わ っ て い る。 〔A〕 〔Tu〕 も し か り。 〔B〕 は は じ め か ら f.Sg.Nom. (た だ し 〔B(2)〕 はAcc.を 示 す。)〔 悉 〕 は 両 形 の 混 在。 漢 訳 とチ ベ ッ ト訳 で は 不 明。

も し、 こ こ で 文 法 的 に 切 れ る とす れ ば、 は じ め3行 は、 そ の 前 のsarvva-tathagatosnlsasitatapatram namaparajitam mahapratyamgiram の 一 連 の 形

容 句 と な り、aryyatara以 下 は、 Taraの 形 容 句 ま た は 異 名 の 列 挙 と い う こ と に な る で あ ろ う。 とす れ ば、 こ の は じ め の3行 は 本 来 は610ka verSesで は な か っ た も し れ ず、 文 章 は 一 応 こ こ で 切 れ る こ と に な る。 〔Tu〕 は 明 ら か に、 mahapandaravasillim XX aryatara……と、 こ こ で 切 れ て い る こ と を 示 し て い る。 こ う解 釈 す る こ と に よ っ て、 〔A〕 〔Tu〕 〔B〕 〔悉 〕 に み られ る 韻 律 の 不 自然 が 解 決 さ れ る で あ れ う。 そ し て、4シ ラ ブ ル か ら な る 語 が 列 挙 され て い た た め に、 後 に 続 く きloka versesと 混 同 さ れ て、 漢 訳 や チ ベ ッ ト訳 で 偶 頒 と し て 訳 さ れ た と い う こ と に な る。 少 く と も、 は じ め3行 で 文 が 切 れ る とす れ ば、 こ れ だ け をsloka verseに す る 必 然 性 は 認 め られ な い。 し か し、 一 方 に A(8)の よ う な 忌loka verSesを 伝 え る 写 本 も現 に 存 在 す る。 こ の 問 題 に つ い て は、 も っ と 多 く の、 も っ と古 い 写 本 を検 討 す る と と も に、 思 想 面 か ら の 考 察 を (19) 必 要 とす る で あ ろ う。 漢 訳 と 〔T(3)(4)〕は、 と も に4句1偶 と計 算 し て、5偶 半 を 有 す る。 祖 型 復 原 の た め に は、 こ れ が 基 準 と な る で あ ろ う。 〔T(1)〕 は 〔A〕 に 大 体 に お い て 一 致 し、8偶 半 をi数え る。 〔T(2)〕 は 第5偶 以 下 が 欠 け て い る。

〔悉 〕 は 時 々 〔B〕 〔Tu〕 と の 一 致 を示 し て い る。 ま た 時 に Sloka metre を 保 存 し て い る 時 も あ る。 総 体 的 に は 漢 訳 に 近 い と い え そ うで あ る。 〔Tu〕 は 時 に 〔A〕 に 接 近 し、 時 に 〔B〕 〔悉 〕 に 接 近 す る。 大 体 中 間 的 な 位 置 に あ る と い え そ う で あ る。 梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

(19)

-89-密 教 文 化

以 上、SUSの

は じめ の 一 部 に つ い て、 ネ パ ー ル 写本 の 特 色 の一 端 を紹 介 し

た。 これ は漢 訳本 で い えば 砥 弱 の量 にす ぎ ない。 しか し、 こ れ だ け で み て も、

ネ パ ー ル 写本、 漢 訳、 シ ッ タ ン本、 トル フ ァ ン出土 断 簡、 チ ベ ッ ト訳 の問 に は

複雑 な 増 広 の 過程 の存 在 す るこ とが知 られ る。 われ われ のネ パ ー ル写 本 だ け に

限 って み て も、一 応 大 き く 〔A〕 〔B〕 〔C〕 の3群

に分 類 して はみ た もの の、

〔A〕 の 中 に も 〔Tu〕 に接 近 す る もの の あ るな ど、や は りい くつ か の系 統 が あ

るよ うで あ る。 〔c〕 は特 別 の存 在 で、 や は りこれ も2種 に分 かれ る。 は た し

てSUSの

広 本 な る もの が存 在 した の か ど うか別 の検 討 課 題 とな る。

SUSの

残 りの部 分 は、 語 句 の多 少 の出 入 は み られ る もの の、 大 体 にお いて

ネ パ ー ル 写本 と漢 訳 は一 致 して い る。 ただ、 不 空 本 とシ ッタ ン本 は、 最 初 の序

分 と最 後 の流 通 分、 す な わ ち、 経 典 の書 写 と受 持 の功 徳 を のべ る下 りの散 文 体

の部 分 が欠 け て い る。 これ は前 述 した よ うに、 陀 羅 尼 本 と して は む し ろ この方

が受 容 され た こ とを示 唆 す るで あ ろ う。

さいわ い な こ とに、 こ のSUSは

存 在 の確 認 され て い る写 本 の数 も多 く、 ま

たそ の地 域 性 も豊 か で あ り、研 究資 料 と して は恵 まれ て い る方 で あ る。 将 来 梵

本 校 訂 を試 み て み た い と思 う。

注 (1)最 近 イ ン ドでSata-PitakaSeriesNo.93と し て 写 真 版 で 出 版 さ れ た:Sanskrit

Manuscripts from Japan (Facsimile Edition). Part 1. reproduced by Lokesh

Chan-dra. New Delhi 1972.

(2) The "Unknown Lanuages"

of Eastern Turkestan.

II'.

JRAS. 1912. pp.

447-477.と くにp.462以 下。

(3)「 陀羅 尼 一 滴 」(『文 化』第2巻 第1号、 昭 和10年。 の ち に 「イ ン ド哲 学 仏 教 学 研究 〔1〕 仏 教学 篇 』(昭 和48年) に 再 録)。

(4) A. F. Rodolf Hoernle, Manuscript Remains of Buddhist Literature.

(1916

Oxfo-rd. Reprint 1970) pp. 52-570

(5) 山 田龍 城 著 『梵 語 仏 典 の 諸 文 献 』参 照。

(6) Lore Sander and Ernst Waldschmidt, Sanskrithandschri f ten aus den Tur

fanfund-en. Teil IV. S. 274-79.

(Verzeichnis der Orientalischen Handschriften

in

(20)

Bra-hmi, TYp b'と さ れ る (Lore Sander, Ptograpische zu den Sanskrithandschriften der Berlinerz

der BerlinerTurfansammlung g(Wiesbaden 1968), s.182)。

(7) 写 本 目 録 に は 報 告 が あ る。 くわ し くは、Seiren I12atsuna,lni,A Catalogue of the SanskritManusrnipts in the Tokyo University Library, TokYo 1965, p.209f.;山 田 龍 城、 前 掲 書 を 見 よ。

(8) 注(3)参 照。

(9) ksya>ksaに つ い て は、 R Edgerton, Buddhist Haybrid Sanskrit Grammar and

Dictionary"J. Vol.1: Gra'mar,§§2.23; 31.29を 見 よ。

(10) A(9)、(13)、 働 で は'yavaddustakalamarana'と あ る。 お そ ら く こ れ が 正 し い 読 み で あ ろ

う。yavad astav akalamarana一 で は 意 味 を な さ な い。 た だ し、 T(1)、 dus ma Yin par

hehi ba brgyad kYi bar duと あ り、 〔A〕 と 一 致 す る。

(11) Manuscript Remains, PV 53.

(12) C(1)に は 一 部 欠。 この テ キ ス トは 両 写 本 を校 合 した もの で、 異 文 は 省 略 す る。 (13)不 空訳 で は 「制 嬉 染 」(大 正19、100下、8行 目)。

(14) 不 空 訳 「鉢 納 磨 二合加魅 二合」(同9行 目)。

(15) Hoernleは こ の 句 を'worshipped by foreigners (or people of videha)'と 訳 し、 そ の 脚 注 で は vaidesa-(or vaideha-) pujita は 奇 妙 な 感 じ を う け る と す る (Manuscript Remains, p.55)、 Wa)dschmidtはvaidehapujita が 良 い と す る (前 掲 書、SV 276.fn.22)。 チ ベ ッ ト訳 は4本 と も にlha rna's kYis'tsad pa(vaidevapujita)。 も し、 vaideha-pujita が 正 し け れ ば、 こ の 経 の 成 立 地 と し てvidehaが 有 力 と な る で あ ろ う。 (16) 不 空 訳 「倶 螂 引曝 菟 二合 悪 賦 二合娑 引」(同、17行)。 (17) 以 下 の 文 はA(1)(3)の2本 の み に 見 られ る。 な おHoernleが 参 照 した ネ パ ー ル 写 本、 RAS No.77に も見 られ る。 (18) 不 空 訳 「腰 慶 写 」(同、 終8行)。 以 上 の 〔悉 〕 と 不 空 訳 と の 対 比4例 の み に よ っ て も、 両 者 が 全 く同 じ テ キ ス トに よ っ て い る こ と を 予 想 さ せ る。 (19) た と え ば、UsnIsasitatapatraと 臓raと の 関 係 に つ い て な ど。 〔昭 和54-56年 度 文 部 省 科 学 研究 費 一 般 研 究(B)(代 表高 木 言申元 教 授)の 研 究 成 果 〕 〔追 補 〕 コ ー タ ン本 につ い て は、H. W. Baileyに よ る解 読 と、 田久 保 周 誉 博 士 に よ る解 読 及 び 和 訳 の あ る こ とを、 うか つ に も初 校 後 に知 った。H. W. Bailey,Khotaanse Texts V (Cambridge 1963), pp.359-367(S.2529); Pp.368-376 (Ch. c.001); 田 久 保 周 誉 「激 燵 出土 干 聞 語秘 密 経 典 集 の 研 究 」,本 文pp.121-132,和 訳pp.201-208. 田久 保 博 士 の テキ ス トは、Baileyの 第2本 (Ch.c.001)と 一 致す る。 本 稿 に これ らの す ぐれ た 成 果 を 利 用 で き なか った こ とは大 きな不 備 では あ るが、 ネパ ー ル写 本 の 紹 介 と い う 目的 は 果 た し う るも の と考 え て、 あ え て掲 載 す る こ とに した。 諒 と され た い。 梵 文 ﹃ 仏 頂 大 白 傘 蓋 陀 羅 尼 経 ﹄ に つ い て

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