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私立幼稚園における主任教諭のリーダーシップに関する研究

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Academic year: 2021

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原著 論文

私立幼稚園における主任教諭の

リーダーシップに関する研究

上田 敏丈

  秋田 喜代美

**

   田 宏

***

  小田 豊

****

門田 理世

*****

  鈴木 正敏

******

  中坪 史典

*******

野口 隆子

********

  淀川 裕美

*********

森 暢子

********** 日本では,約 1 万の幼稚園があり,その内の 70%が私立幼稚園である。私立幼稚園の多くは,ファ ミリービジネスであり,園長は経営者としての役割も担っているため,保育の質の向上には,実践面 の役割を担う主任教諭の役割は重要である。そこで本研究では,私立幼稚園の主任教諭が自身のリー ダーシップをどのようなものとして捉え,また自身の役割をどのようなものとして認識しているの か,そこでの主任教諭としてのやりがいや 藤はどこにあるのかを明らかにすることを目的とする。 私立幼稚園の主任教諭 8 名に対してインタビューを行い,質的データ分析方法である M-GTA(木下 2003)を用いて分析を行った。その結果,25 の「分析概念」,9 つの[カテゴリー],3 つの〈コア・ カテゴリー〉が生成された。主任は,園長と職員集団との意思疎通を図り,それぞれの意図を伝達す る〈つなげる〉ことと,カリキュラムの調整や職員への指導,心理的支援といった職員集団を〈まと める〉ことをリーダーシップと捉える一方で,この2つのリーダーシップの間で,やりがいと共に 藤の〈板挟み感〉を感じていることが明らかとなった。 キー ワード:私立幼稚園,主任教諭,M-GTA,リーダーシップ

Head Teachers’ Leadership at Japanese Private Kindergartens

* 名古屋市立大学 保育学 ** 東京大学 保育学 *** 兵庫県立大学 保育学 **** 聖徳大学 保育学 ***** 西南学院大学 保育学 ****** 兵庫教育大学 保育学 ******* 広島大学 保育学 ******** 東京家政大学 保育学 ********* 東京大学 保育学 ********** 九州産業大学 保育学

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Harutomo Ueda Kiyomi Akita Hiroshi Ashida Yutaka Oda Riyo Kadota Masatoshi Suzuki Fuminori Nakatsubo Takako Noguchi

Yumi Yodogawa and Nobuko Mori

Among 10,000 Japanese kindergartens, nearly 70% are operated privately. Since many private kindergartens are multigenerational, family-run businesses, management is the primary role of the director. Therefore, the head teacher is likely to be responsible for improving the quality of all practices at each institution. Th e purpose of this study was to examine how head teachers at Japanese private kindergartens interpret their roles as leaders. We interviewed eight head teachers from eight private kindergartens. Th e interview data were analyzed through M-GTA (Kinoshita, 2003). Leadership roles were divided into 25 concepts, nine categories and three core categories. Th e head teachers regarded the following as leaders’ roles: connecting directors and staff members (e.g., transferring information between them), and bringing staff members together by coordinating curricula, giving advice, and providing care and support. At the same time, they experienced the dilemma of feeling of being caught between the two roles.

Keywords: private kindergartens, head teachers, M-GTA, leadership

Ⅰ.問題と目的

1-1.背景 保育・幼児教育領域においては,国際的に保 育の質向上が求められており1) ,保育の質をよ り効果的に高めていくためには,園長や主任の リーダーシップが重要であることが広く知られ るようになってきた2)3) 。 リーダーシップという用語は一般的にも頻繁 に用いられるが,学術的には,経済学や組織論 の中で検討されてきている。例えば,Yukl4) はリーダーシップに関する研究が,リーダー シップの特徴を明らかにする特性アプローチ (Trait approach)から,どの様な行動を起こす の か と い う 行 動 ア プ ロ ー チ(Behavior approach),リーダーシップの影響力に注目し た影響アプローチ(Power-infl uence approach),

文脈を重要視した状況アプローチ(Situational approach),それらを踏まえた統合的アプロー チ(Integrative approach)へと変遷していると いう。このような研究動向を踏まえ,「リー ダーシップとは他者に何が必要か,どうしてそ れを遂行するのかについての理解と合意を得る ために影響を及ぼし,共有した目的を遂行する ために個々人を動かし,努力を結集するプロセ ス」と定義づけている4)。 組織におけるリーダーシップについては,保 育学もこの流れを受けて検討されてきている。 ロッド5)は保育におけるリーダーシップにつ いて実践と理論の整理を行っており,リーダー シップを「有能なリーダーが一連の戦略を実施 していく際に,集団や組織のメンバーがよい結 果や倫理的な結果を達成していくためにメン バーとともに活動を共有する過程である」と定 義づけている。また,日本の保育所所長の役割 について整理した小林ら6)は,「保育観,保育 方針を示す」「人材育成」「職場のコミュニケー ション・人事管理」「保護者対応」など7つの 面でのリーダーシップを挙げている。 保育におけるリーダーシップの実証研究は特 に日本において,近年関心が高まっているが, 先行する研究としては,上田7)8)や秋田ら9), などが挙げられる。 リーダーシップの概念は複数提出されてきた が,秋田ら10)は国内外の研究動向を踏まえ, 知識の伝達を想定する「指導的リーダーシッ

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プ」から,保育者同士が学びあい,質のよい保 育 を 実 践 し て い く「 教 育 の リ ー ダ ー シ ッ プ (Pedagogical leadership)」が着目されていると 述べている。また,この「教育のリーダーシッ プ」を発揮する上では「分散型・共有型リー ダーシップ」が重要であると述べている。 分散型・共有型リーダーシップとは,「専門 職の垣根を超えてリードし,職員チームのすべ てにリーダーシップを分散する」11) ものであ る。保育にこの概念を適用することに課題も示 されており,野澤ら12)は,ミドルリーダーの リーダーシップにこれを前提とした混合型リー ダーシップ(Hybrid leadership)を紹介してい る。 このように分散型・共有型リーダーシップへ の関心が高まっているが,園組織の中では,そ れをつくりあげていくために重要な役割を担っ ているのがミドルリーダーであり,日本の保育 現 場 で は, い わ ゆ る 主 任 保 育 者 と 考 え ら れ る13)。 保育以外の教育分野におけるミドルリーダー に関する研究では,小学校以上の学校組織を対 象としたものが多い14)15)。小学校以上の学校 組織は,年齢層が 20 代から 60 代までで構成さ れ,教える教科目が明確である。しかし,幼稚 園や保育所では私立が大半を占めており,そこ では若年層が比較的多く,基本的には転勤がな く,遊びを中心とした保育を行っており,園組 織の在り方が小学校とでは異なっている。ま た,保育におけるミドルリーダーの研究として は,主任保育士の選ばれ方の分析16) や,主任 保育者のリーダーシップの経験知の検討17), 保育の質との関連について検討18)したものが あり,保育の現場におけるミドルリーダーの在 り方は,今後の保育の質向上を考えていく上で も重要な課題である。 日本では,私立幼稚園が幼稚園教育運営の多 数を担っており,2018 年では,幼稚園が約 1 万園,そのうち,私立幼稚園は約 6,800 園と なっている19) 。園児数では,およそ 127 万人 の内,約 100 万人の幼児が私立幼稚園に通って おり,園児数の約 8 割は私立幼稚園に通ってい る。統計的資料はないものの,その多くは家族 経営を主としたファミリー・ビジネス(一族経 営)であり,園長は経営者も兼ねている園が多 く見られる。このような状況の中で,私立幼稚 園の園長は,保育経験が無かったり短かったり する場合も多く,園組織の人間関係や保育実践 において主任教諭の役割が極めて大きいこと, 特に一定年数で転勤する公立園とは異なり,多 くの私立園では,主任教諭は同一園での経験年 数が長くなるため,私立幼稚園では特に主任教 諭の役割が重要であると考えられる20) 。そこ で,本研究では,私立幼稚園の主任教諭あるい は同等の立場にある保育者(以下,主任教諭) に焦点をあてる。 1-2.目的 本研究の目的は,私立幼稚園の主任教諭に焦 点をあて,主任が保育を行う幼稚園の職員集団 に対して,自身のリーダーシップをどのような ものとして考え役割を担っているのか,そこで の主任教諭としてのやりがいや 藤はどこにあ るのかを明らかにすることである。それを踏ま え主任教諭のリーダーシップが発揮される職員 集団の在り方を検討する。この目的に迫るため には,職員集団が大きく複雑な大規模法人より も,小規模の法人が適していると考える。これ は大規模な経営を行っている学校法人である場 合,職員集団も大規模になり主任教諭の位置付 けが異なっている可能性があるためである。

Ⅱ.方法

2-1.研究協力者について 本研究では,次の基準で私立幼稚園の主任教 諭に研究協力を求めた。 1)1 法人1園∼ 3 園程度の私立幼稚園であり, 理事長・園長が血縁関係による同族で占められ ていること。また,大規模法人では園長職も経 営者ではなく,雇用関係にある可能性もある。 よって経営者が園長の任にあたっている 1 法人

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1園∼ 3 園程度までの経営規模の私立幼稚園に 依頼した。 2)園長の保育経験がないかあるいは短く,主 任教諭の保育経験年数が理事長・園長よりも長 いこと。私立幼稚園の園長は21),長期間の保 育経験を経て園長職に就いてはいないため主任 教諭の重要性を強く感じていた。したがって, 本研究では私立幼稚園園長がベテラン保育者で はない園の主任教諭を対象とした。 3)職員集団において,いわゆる「主任」の名 称がつく役職で最も上位の「主任教諭(園に よって主任,保育主任,保育リーダー等の呼称が 用いられている)」を対象とした。これは私立幼 稚園によっては,主任教諭,リーダーなど異な る呼称が用いられており,必ずしも「主任教 諭」という名称が同一の役職を指し示していな いことがあったためである。 4)クラス担任との兼任ではないこと。クラス 担任を持ちつつ,主任教諭を行っている園もあ るが,主任教諭の役割に焦点化するため,本研 究の対象としなかった。 以上の基準から,表1にある私立幼稚園の主 任教諭にインタビュー調査を依頼し,実施し た。研究協力者それぞれのキャリアについて は,表1の通りである。 2-2.調査時期 2016 年 12 月から 2017 年 9 月までである。 2-3.倫理的配慮 研究協力は,該当園における理事長・園長に 依頼をし,許諾を得た上で,日本学術振興会の ガイドライン22) や日本保育学会倫理綱領23)を 参考に,匿名で取り扱われ,個人名や園が推測 できないように配慮すること,語られた内容に ついて理事長・園長にも伝えないこと,インタ ビューをいつでも拒否することができること, を条件に依頼し,協力者からの同意書にサイン をしてもらった。 2-4.インタビュー インタビューは,主任教諭の勤務する園で, 他の職員がいない部屋で実施し,同意を得た 上,IC レコーダで録音した。内容については, 主任教諭としてどのような役割を担っている か,どのようなやりがいや 藤を感じている か,職員集団との関係で配慮することなどの質 問を中心に,半構造化インタビューで実施し た。インタビュー時間は一人あたり約 30 ∼ 100 分である(表1)。また,本調査は,後述す る修正版グラウンデッド・セオリー・アプロー チ24) で分析を行った。調査と分析を同時に進 めたところ,6 人目の分析を終えた段階で研究 協力者の語りから新しい概念が創出されなかっ た。さらに追加して 2 名に追加インタビューを 行ったが,同じ様に新しい概念が創出されな かったため,理論的飽和に至ったと考え,イン タビュー調査を終えた。 2-5.分析手順 本 研 究 は, 修 正 版 グ ラ ウ ン デ ッ ド・ セ オ リー・アプローチ(Modifi ed Grounded Theory Approach, 以 下,M-GTA と す る )を 採 用 し た25)。M-GTA は,語りなど質的データに密 着した分析から独自の説明概念をつくって,そ れらを統合的に構成することで,人間の行動説 明と予測,他者との相互作用の変化を説明する 理論的特性を有している。本研究の目的に即し た分析として,M-GTA を方法として採用する ことは適切と考えた。 分析は,木下26) に基づき以下の分析手順で 行った。まず,分析テーマとして「私立幼稚園 の主任教諭はリーダーシップをどのように認識 し,そこでの役割や 藤をどのように捉えてい 表 1 研究協力者の属性及びインタビュー時間 保育経験年数 主任歴 インタビュー時間 A 26 年 13 年 35 分 B 11 年 5 年 42 分 C 22 年 11 年 46 分 D 29 年 19 年 68 分 E 30 年 25 年 70 分 F 24 年 3 年 97 分 G 29 年 22 年 41 分 H 18 年 3 年 56 分

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るのか」と設定した後,分析焦点者を「私立幼 稚園主任教諭」とした。 その後,逐語で文字化されたインタビュー データを検討しながら,概念生成を行った。そ の際に,分析ワークシートを概念毎に作成し, 概念名,定義,具体例(ヴァリエーション),理 論的メモを記述した。 生成された概念を踏まえながら,それらを包 括的に説明できるカテゴリー,中心的なコア・ カテゴリーを検討し,カテゴリー間の関係を表 す図を作成した(図1)。

Ⅲ.結果と考察

M-GTA による分析の結果,3 つの〈コア・ カテゴリー〉,9 つの[カテゴリー],25 の「分 析概念」が生成された。生成された「分析概 念」は,表2の通りである。また,最終的な概 念図は,図1の通りである。図1では,語りか ら相互に影響があると考えられる〈コア・カテ ゴリー〉と[カテゴリー]には↔を,一方向だ と考えられるものには→で結んだ。コア・カテ ゴリーを〈 〉で,カテゴリーを[ ]で,分 析概念を( )で示している。 分析の結果,主任教諭の役割としては,大き く〈つなげるリーダーシップ〉と〈まとめる リーダーシップ〉となった。また,その2つの 大きな役割を担う中で主任が抱える〈板挟み 感〉が明らかになった。以下,それぞれを詳し く見ていく。 3-1. まとめるリーダーシップ(図1下部) 〈まとめるリーダーシップ〉とは,主任とし て職員集団をまとめ,日々の保育運営や行事な どの進行を管理することである。これは,主任 教諭が[職員の成長期待]をもちつつ,[人間 関係的支援]と[保育運営的支援]を行い[職 員集団の統括]を行うために発揮するもので あった。 1)保育運営的支援について 主任教諭は,クラス担任が行う保育を円滑に 行えるよう支援している([保育運営的支援])。 語り1:A 主任:(カリキュラムが)大きく遅れ たり,(略)「経験していない」ということにな らないように(カリキュラムの調整)。 主任教諭はそれぞれのカリキュラムの進行状 況を把握したら,偏ったりしないように気を配 る。特に私立幼稚園では,学年のクラス間で 行っていることに差が出ないようにしているこ ともあり,クラス間または学年間のカリキュラ ムを上手く調整することが求められる(語り 1)。 語り2:B 主任:自信の無いところや保育でど うしたらいいのか分からないところ等を一緒に 考えていくこと(職員への補助的支援)。 語り3:F 主任:自分はどうしても,(略)押し つけてしまうところもあるかなと思うと,「うー ん,あまり言い過ぎてしまってもいけない」と いうのも,考えるところもありますけど(職員 への介入的指導の 藤)。 また,単にカリキュラムを調整するだけでは なく,保育を行う新任教諭へ,具体的な手助け を行うことも,保育運営を行う上では重要なこ とである(語り2)。ただし,このような主任 教諭が,それぞれのクラス担任の保育に介入す ることは,どこまで伝えるべきなのか配慮に悩 む 姿 も あ っ た( 語 り 3)。 主 任 と し て, カ リ キュラムを調整することは必要であるが,一方 で,一人一人の教諭が自由にできるように,主 任として介入や助言の仕方を上手く見極めるこ とが必要であると考えている。 2)人間関係的支援について 主任教諭として,[保育運営的支援]だけで はなく,職員集団の人間関係に対して支えてい く[人間関係的支援]も求められる。[人間関 係的支援]とは,主任教諭が一人一人の職員に

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表 2 M-GTA による分析概念の一覧 コア・カテゴリー カテゴリー 分析概念 定義 A B C D E F G H つなげるリーダー シップ 運営連帯感 保育観の対話による 共有 園長の保育観などを話し合いによって共有する ○ ○ ○ ○ ○ ○ 主任職務の連帯感 主任としての役割を相談したり,教えられたりす ることで運営している連帯感を感じる ○ ○ ○ ○ 最終責任者 としての園 長認識 最終責任者としての 園長認識 園全体の責任者として園長をみている ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 相互伝達 園長意図の伝達 園長の考えをそれぞれの職員に伝え共通理解する 役割のこと ○ ○ ○ ○ ○ 職員希望の伝達 職員からの希望を園長に伝達する ○ ○ ○ ○ ○ 板挟み感 主任として の 藤 園長―職員板挟み感 園長と職員間の何らかの認識のずれをどうするか に悩む ○ ○ ○ ○ 主任としての孤独感 主任としての役割を教えられたり相談することが ない ○ ○ 実務的困難さ 職員の時間管理など労働管理的な部分での課題や 難しさ ○ ○ ○ 主任役割の掌握 藤 園長,副園長等との役割の棲み分けが難しい ○ ○ 保育からの遠距離感 クラス担任を持たないことで,子どもとかかわる ことが少なくなり,主任としての役割に孤独感を 持つこと ○ ○ ○ ○ 幼児とのかかわり減 少による寂しさ 担任を持ち,幼児とかかわっていたいが,主任と なることでそれが少なく感じられることへの寂し さ ○ ○ ○ ○ 主任として のやりがい 職員連帯達成感 個別や全体の職員と連携し,一体感を感じられる ことにやりがいを感じる ○ ○ ○ ○ 保護者からの認めら れ感 保護者から園や保育者を認められることにやりが いを感じる ○ ○ まとめるリーダー シップ 職員集団の 統括 職員への柔軟な対応 主任としての役割や職務が多様であり,柔軟に対 応する ○ ○ ○ ○ 職員の見本 職員の見本になりひっぱっていく ○ ○ ○ ○ ○ 職員の成長 期待 自立的成長の願い 職員が自分で考えできるように育って欲しいとい う願い ○ ○ ○ 他視点からのアドバ イス 保育観や方法について他の視点や考え方もあるこ とを伝える ○ ○ ○ ○ ○ 人間関係的 支援 職員への目配り 職員一人一人に目を向けて様子や調子を読み取る ○ ○ ○ ○ ○ 職員への後方支援 職員の仕事に対して背中を押したり,バックアッ プをしたりと後方から支援する ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 職員への心理的支援 職員の思いに共感し,心理的な面で支援する ○ ○ ○ ○ ○ ○ 職員人間関係の調整 職員間の人間関係を円滑にする役割のこと ○ ○ ○ ○ ○ 保育運営的 支援 カリキュラムの調整 園の教育方針のもと,各クラスのカリキュラムが 共有化されるように調整を行う ○ ○ ○ ○ ○ 職員への介入的指導 の 藤 職員に一方的にならないように配慮しつつ,どこ まで指導するのかを悩む ○ ○ ○ ○ ○ ○ 職員への補助的支援 それぞれの職員の手が届かないところを手助けす る ○ ○ ○ 職員への介入的指導 職員に対して厳しく指導していく ○ ○ ○ 職員全体の業務調整 職員全体の仕事の把握,分配,管理を行う ○ ○ ○ ○ ○

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目を配り,心理的ケアや相談,共感等を行い, 職員間の人間関係を円滑にすることである。 語り4:C 主任:日々,記録を書いているので, 見せてもらいながら,嬉しかったことには共感 したり,悩みもいっぱい書いてくるので,そこ にはできるだけ声を掛けたりするようにはして います(職員への心理的支援)。 語り5:E 主任:主任として先生を一人一人観 ていかないといけない(職員への目配り)。 主任教諭として,それぞれのクラス担任教諭 の記録をチェックするのだが,そこで書いてあ ることを口頭で伝え共感を示すことで,クラス 担任の心理的ケアを行っている(語り4)。ま た,職員が丁寧に保育できるように,一人一人 に目を配ることも重要であると考えている(語 り5)。 語り6:A主任:自分が後ろに回って,みんな のことを観てあげたり,ちょっと背中を押した りすることも必要(職員への後方支援)。 このような主任教諭の心情としては,クラス 担任という前線で頑張っている一人一人の職員 を後ろから支えているイメージを持っていると 考えられる(語り6)。 3)職員集団の統括・職員の成長期待について 語り7:D主任:先輩になるのですけど,その 人から色々と伝えていただいた方が,その人の 指導力もつくというのも思っています(自立的 成長の願い)。 語り8:A主任:他の先生達の「見本になる」 じゃないですけど,見本になりつつも,引っ 張っていく力も勿論必要(職員の見本)。 [人間関係的支援]と[保育運営的支援]を 行う背後に職員が育って欲しいという[職員の 成長期待]を持っている(語り7)。職員が育 つことを期待しつつ,保育運営面での調整と, 職員の人間関係への心理的ケアを行いつつ, [職員集団の統括]を行うことが主任教諭とし て重要な〈まとめるリーダーシップ〉といえよ う。このような保育実務を行う上で必要な[職 員集団の統括]をする中で,語り8のように, 自分が見本になりつつ行うこともあれば,主任 としての役割を柔軟に捉え,臨機応変に対応し (職員への柔軟な対応),それぞれの教諭が育っ ていくような期待(自立的成長の願い)を持ち, 様々な視点から保育の見方を伝えていくこと (他視点からのアドバイス)を行っている。 つまり,主任教諭のリーダーシップとして, 職員集団を物理的,心理的両側面から支援を し,職員集団をまとめることが求められてい る。 3-2.つなげるリーダーシップ(図1上部) 一方,〈つなげるリーダーシップ〉とは,主 任教諭が園長の保育観や期待する保育方法を職 員に伝え,逆に職員からの希望を園長につたえ ること[相互伝達],園長と話し合うことで保 育観を共有すること[運営連帯感],園長が園 の最終責任者であるという認識があること[最 終責任者としての園長認識]という3つのカテ ゴリーで構成された。 [相互伝達]とは,園長と職員集団との希望 や考えを伝えるパイプとしての役割である。こ の役割は,理事長・園長と職員集団との双方向 的な伝達であり,両者を支えるための主任教諭 の重要な役割である。 語り9:A 主任:園長先生,理事長先生の考え を,先ず,学年主任に伝えて,その学年主任が 他のクラスの先生達に伝えて,共通理解をする (園長意図の伝達)。

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語り 10:D 主任:下には下の,ストレスや不満 があるのですけど,それを上手に。やはりダイ レクトには上に伝えられないので。そんな役割 なのかなと思っています(職員希望の伝達)。 A主任は理事長・園長と話をしながら,その 育てたい方向性や園の在り方,あるいは行事を 変えていくときの考えなどを共有し,それを職 員集団に伝えていった(語り9)。私立幼稚園 の園長は必ずしも保育経験が長いわけではない ため,具体的な保育の方法や内容について指示 するのではなく,経営者としての側面も持ちつ つ,園の全体を包括的にとらえている。例え ば,B幼稚園では,園長が「みんなで同じ方向 を向いていこう」(B主任の語りより)と,職員 組織の在り方について述べている。これをB主 任は,具体的な指示として,クラス担任に伝え ていくという階層的な伝達構造がある。 一方で,これは逆方向にも機能しており, 個々の教諭の考えや不満を主任教諭が吸い上 げ,それを上手に理事長・園長に伝えていく役 割が求められる(語り 10)。 [運営連帯感]とは,主任教諭が理事長・園 長と話し合うことで,保育観を共有し,運営方 針を確認することで連帯感を持つことである。 語り 11:E 主任:理事長先生の話を聴かせても らって,(略)学園そのものをどういう風にして いきたい,理事長先生がどういう考えを持って いらっしゃるかというのを聞くことは大事だろ うと思う(保育観の対話による共有)。 語り 12:B 主任:(園長は)「絶対」みたいな。 ( 略 ) 最 終 的 に 園 長 先 生 の「GO」 が 出 な い と (最終責任者としての園長認識)。 語り 13:F 主任:急に今,主任が何かの拍子で いなくなったとしても,他の3人がやはり把握 していることが多いので,お互いにそういう共 有の部分は強い。それぞれの役目はあるのです けど,考え方としては比較的,分かっている (主任職務の連帯感)。 私立幼稚園における主任教諭は,理事長・園 長が園の経営方針や保育方針を決定していくも のであると考えている(語り 12)。その中で, 理事長・園長がどのように考え,今後,園をど ういう方向に持って行きたいと考えているのか を知ることは,保育運営の実務面を担っている 主任教諭にとって重要な要素である。したがっ て,理事長・園長の考えを聞き,その保育観を 共有することは重要な要素である(語り 11)。 私立幼稚園の主任が,園の保育をどの様に考 え,職員集団をまとめていくかは,理事長・園 長と理念を共有できているかが重要な要素であ る。主任が園長と理念を共有・共感出来ている とき,自園の「○○幼稚園らしさ」という保育 に向かっていきたいと考えているだろう。この ような理念の共有の例として,語り 13 のF主 任の園では,主任教諭の他に,主任教諭を退職 した前主任がアドバイザーとして,主任教諭の 補助を行っている。この園では,園長,前主 任,主任教諭の 3 名が保育観を共有し,お互い に役割を理解しあいながら,職員集団をまとめ ているため,主任教諭も,保育運営を担ってい るという連帯感を強く感じていた。このよう に,職員集団と理事長・園長とのかすがいとな る〈つなげるリーダーシップ〉は,日本の私立 幼稚園の主任教諭特有のものとして考えられ る。 3-3.板挟み感:やりがいと 藤(図1中部) このような2つの私立幼稚園の主任教諭とし ての役割を果たしつつ,主任教諭は,理事長・ 園長の経営者側と,職員集団との板挟みの中間 管理職的立ち位置に立たざるを得ない。コア・ カテゴリー〈板挟み感〉は,[主任としてのや りがい]と,[主任としての 藤]という2つ のカテゴリーで構成されている。

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主任教諭としてのやりがいは,職員と一体感 を持って保育にあたることで感じられる(職員 連帯達成感)(語り 14)や保護者から感謝される など(保護者からの認められ感)である(語り 15)。 語り 14:B 主任:「どうしたらいいですかね?」 と相談に来てくれる先生がいて,(略)何か嬉し いです。(略)クラスをまとめるという意味での コツみたいなものが伝えていけると,「ああ, やって良かった」と思います(職員連帯達成 感)。 語り 15:C 主任:(保護者から)感謝の言葉をも らうと,「ああ,やはりして良かったね」という 風には思いますね。(保護者からの認められ感)。 主任教諭として,〈まとめるリーダーシップ〉 が職員集団や保護者に認められることで,やり がいを感じられる。 だが,一方で,主任としての 藤も存在す る。 語り 16:B 主任:まだ私もやはり担任をしたい ばっかりだったので,中々,前向きになれない ところ(幼児とのかかわり減少による寂しさ)。 語り 17:D主任:最初は,ちょっと何か,先生 達の輪の中から 1 人だけ出てしまったみたいな… (保育からの遠距離感)。 語り 18:E 主任:(主任になったことで)自分だ け他の先生に置いていかれた感が(ある)(主任 としての孤独感)。 主任教諭となることは,幼児とのかかわりを 中心とする保育から離れることであり,そのこ とから寂しさ,距離感,孤独感を感じている (語り 16,17,18)。 本研究における主任教諭 8 名の内,3 名は園 内に主任1人のため(B,E,G),相談をすること ができなかったり,引き継ぎが無かったり,孤 独感が強くなるケースでもあった。一方,そう ではない園の主任教諭(A,C,D,F,H)は,主任教 諭としての役割を複数名で担っているか,理事 長・園長との[運営連帯感]があるため,[主 任としての孤独感]が,比較的解消されてい た。しかし,それでも板挟み感は生じている。 語り 19:A 主任:現場の先生の話を聞くと「あ あ,それ,分かるね」となる。でも,園長の話 も聞くと,「分かりますけど,ちょっと何か違い すぎる」ということはありました(園長―職員 板挟み感)。 前項で主任教諭の〈つなげるリーダーシッ プ〉に[相互伝達][運営連帯感]があること を述べたが,理事長・園長と職員集団との仲介 的役割を担うなかで,園長から聞く話と職員か ら聞く話とにズレが生じ,中間管理職としての 板挟みにあい,相互の認識の調整に難しさを感 じると思われる(語り 19)。 語り 20:G 主任:(行事の)負担が全部年上の先 生ばっかりになってしまって。そのときに一気 に辞められたときが大変にはなってきてるので, (略)いろんな先生に経験してもらう。 B 主任:帰るのは,6 時,7 時ぐらいに(なるよ う時間管理をしている)。(実務的困難さ) また,園長との[運営連帯感]があり,理念 を共有できていても,それを実際の業務として 管理するのは,主任教諭である。そこでは,職 員の負担が偏ったり,帰る時間が遅くならない ように配慮することが求められる(語り 20)。 以上のように,主任としてのやりがいと 藤 があった。園長と職員を〈つなげる〉ことと,

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実務段階での時間管理などの〈まとめる〉リー ダーシップの狭間にある〈板挟み感〉は,多く の幼稚園関係者が経験的に感じていることであ ろうが,園長がベテラン教諭ではない私立幼稚 園の主任特有の特徴として明示できたと言え る。

Ⅳ.総合考察

4-1.主任教諭のリーダーシップの特徴 シラージら27) は,保育リーダーシップとし て,「協働する」「方向付ける」「力づける」「教 育する」という4つのリーダーシップを報告し ている。本研究で明らかになった「まとめる リーダーシップ」を構成する概念と比較する と,「人間関係的支援」と「協働する」,「保育 運営的支援」と「方向付ける」,「職員の成長期 待」と「力づける」は,類似していると考えら れる。一方で,「教育する」リーダーシップに ついては,本研究では十分な語りが表出されて いなかったが,これはインタビューの内容や協 力者など,複数の要因が考えられ,今後の検討 課題である。 また,私立幼稚園の主任教諭に特有のものと して,〈つなげるリーダーシップ〉と同時に 〈板挟み感〉も明らかとなった。本研究での私 立幼稚園の主任教諭は,園長がベテラン教諭で はない園であるため,保育の運営面については 園長の代理として中心的役割を果たしている。 しかし,園の理念や保育の方向性を示すのは園 長であるため,それを共有しつつ,実務を管理 するリーダーシップと,そこでの板挟み感は私 立幼稚園の主任教諭特有のものであろう。 本研究の射程となった私立幼稚園の主任教諭 のリーダーシップの特徴として 4 点あげられ る。 ①日々の保育運営に際しての中心となるこ と。上田ら28) にもあるように,園長の保育経 験が無いかあるいは短い場合,日々の保育運営 や行事の実務については主任教諭を中心に行わ れる。日々の保育運営を適切に担うことが役割 として求められる。クラス担任が円滑に保育で きるよう人間関係・保育運営的支援を行うこ と,職員集団の統括を担う主任教諭として,そ れらが円滑に進むよう保育運営に対しての支援 や同時に,職員間人間関係の潤滑油としての役 割を担うことが求められる。 ②園の理念を共有し,職員に伝達すること。 日々の保育運営を適切に行うよう職員集団をま とめていくためには,園がどのような方向性に 向かうのかを把握しておかなければならない。 ③①②の中で,主任教諭は職員集団の個々の 育ちを期待しながら関わり,集団としての職員 の育ちを促すこと。主任教諭は,単に保育運営 の調整だけではなく,その中で職員集団一人一 人の成長や集団としてのまとまり,育ちを願い 関わっている。この中で,どこまで関わるか, どのように指導するかは個々の園によって課題 は様々であるが,職員集団の育ちが主任教諭の やりがいの一部となっている。 ④③と同時に,実務を担う No.2 としての心 理的・実務的 藤があること。園の理念を共有 することで,これらの 藤は軽減されるが,主 任が実務の中心である以上,運営面や経営面で の配慮を行うことが求められ,そこに大小はあ るが〈板挟み感〉がある。 冒頭でまとめたように,近年,保育現場にお いても分散型・共有型リーダーシップが求めら れているが,本研究で明らかにした「つなが る」「まとめる」リーダーシップを発揮する私 立幼稚園の主任は重要な位置づけであり,分 散・共有型へと移行していくためには,主任教 諭が感じる〈板挟み感〉の軽減が必要であろ う。 4-2.主任教諭のリーダーシップ発揮への示唆 ファミリー・ビジネスであり,園長が保育経 験の少ない私立幼稚園が本研究の射程である。 そこで本研究で得られた知見を踏まえて,主任 教諭のリーダーシップ発揮への示唆として以下 の3点をあげる。 第一に,主任教諭は理事長や園長と園のヴィ

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ジョンを共有し,さらに園全体の方向を職員集 団と共有することである。ミドルリーダーは園 内において複雑な立場・役割であるが29) ,本 研究ではミドルであるがゆえの〈板挟み感〉を 明らかにした。同時に,主任教諭と園長との運 営連帯感が,主任教諭の板挟み感を軽減してい ることが明らかになった。つまり主任教諭が単 なる上意下達だけを行う中間管理職ではなく, 理事長・園長と運営方針を共有することが,主 任教諭の感じる孤独感を減じ,同時に職員集団 をまとめ,育てている実感に繋がることで,や りがいを高めていくと考えられる。 第二に,主任教諭が職員一人一人の育ちを意 識し,集団として自発的に行動できるように配 慮することである。主任教諭として,保育運営 の調整だけではなく,そのための職員の人間関 係に配慮し,一人一人の職員の専門性を高める ように指導していくことで,集団全体として保 育運営を担うことができるだろう。 第三に,主任教諭をサポートする役割を職員 集団に分散することである。主任教諭が混成型 リーダーシップを発揮することの重要性が述べ られているが29),そのためには,主任の役割 を補助する複数名の体制や系列園での主任同士 の連携ができるような組織体制の園において有 効に機能するのではないだろうか。このような 組織体制の取り方は,組織体制としてリーダー シップを分散させており,1 つの有効な方法で あるといえよう。 職員集団の在り方は,幼稚園ごとによって 様々であると考えられるが,これらの3点が主 任教諭のリーダーシップの観点から,今後の園 の職員組織への示唆として考えられる。

Ⅴ.本研究の限界と今後の課題

一方,本研究で射程にいれた主任教諭は限定 的であるため,以下のような限界がある。 第一に,本研究では理事長・園長が熟達教諭 ではない園を取り上げた。したがって,現場経 験の長い園長がいる幼稚園の場合,主任教諭の 役割もまた異なってくるかもしれない。 また第二に,本研究での園はすべて学校法人 である。私立幼稚園のうち約 90% を占めると はいえ,宗教法人や個人立など,異なる種の法 人の場合は異なる課題があると考えられる。 第三に,私立幼稚園の主任としての板挟み感 をどのように軽減し,やりがいを感じられるの か。クラス担任を経験し,主任,園長となる公 立幼稚園や保育園においての主任役割は,この ような点で,本研究の知見とは共通点と相違点 の両面があることが想定されるだろう。 第四に,本研究では理事長と園長とをファミ リービジネスの経営者として同一に扱っている が,ここにも世代による経営や運営方針の違い があることも想定される。 今後,現場経験の長い園長が運営する幼稚園 など,リーダーシップの機能が異なることが予 測される園において主任教諭の役割を検討する ことも課題である。 引用文献 ⑴秋田喜代美・箕輪潤子・高櫻綾子(2007)保 育の質研究の展望と課題.東京大学大学院教 育学研究科紀要,47,289-305. ⑵秋田喜代美・淀川裕美・佐川早季子・鈴木正 敏(2016)保育におけるリーダーシップ研究 の展望.東京大学大学院教育学研究科紀要, 56,263-306. ⑶ジリアン・ロッド(2009)保育におけるリー ダーシップ(民秋言,監訳).あいり出版 9-31.(Rodd, J.(2006)

. Allen & Unwin PTY LTD) ⑷Y u k l , G . , ( 2 0 1 3 ) , 8th ed, England:Pearson Education Limited. 28-30 ⑸ 前掲⑶ ⑹小林育子・民秋言(2009)園長の責務と専門 性の研究.萌文書林.117-129. ⑺上田淑子(2013)園内研修と園長のリーダー シップ:園内研修を行った保育士のインタ

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ヴュー調査から.甲南女子大学研究紀要人間 科学編,50,7-13. ⑻上田淑子(2014)保育所・幼稚園の園長が保 育の質向上のために重要視しているリーダー シップ役割:予備的アンケート調査から.甲 南女子大学研究紀要人間科学編,51,29-37. ⑼ 前掲⑵ ⑽ 前掲⑵ ⑾ イ ラ ム・ シ ラ ー ジ, エ レ ー ヌ・ ハ レ ッ ト (2017)育み支え合う保育リーダーシップ. (秋田喜代美,監訳).明石書店.34.(Siraj, L.

& Hallet, E(2013)

. SAGE Publising) ⑿野澤祥子・淀川裕美・佐川早季子・天野美和 子・宮田まり子・秋田喜代美(2018)保育に おけるミドルリーダーの役割に関する研究と 展望.東京大学大学院教育学研究科紀要, 58,387-416. ⒀同上 ⒁吉村春美・中原淳(2017)学校改善を目指し たミドルリーダーの行動プロセスに関する実 証 的 研 究. 日 本 教 育 工 学 論 文 誌,40(4), 277-289. ⒂飛岡美穂(2017)ミドルリーダー教師に必要 な協働による問題解決能力育成の方策.三重 大学教育学部紀要 自然科学・人文科学・者 会科学・教育科学・教育実践,68,399-406. ⒃櫻井裕介(2016)H 保育所における主任保育 士選定プロセスの TEM 分析.道都大学紀要 社会福祉学部,41,43-48. ⒄野澤祥子・井庭崇・天野美和子・若林陽子・ 宮田まり子・秋田喜代美(2017)保育者の実 践知を可視化・共有化する方法としての「パ ターン・ランゲージ」の可能性.東京大学大 学院教育学研究科紀要,57,419-449. ⒅野澤祥子(2019)保育の質の確保・向上のた めに―園の取り組みを支えるリーダーシッ プ.発達 158,14-19. ⒆文部科学省(2018)文部科学統計要覧(平成 30 年版). ⒇上田敏丈・秋田喜代美・ 田宏・小田豊・門 田理世・鈴木正敏・中坪史典・野口隆子・箕 輪 潤 子・ 椋 田 善 之・ 淀 川 裕 美・ 森 暢 子 (2019)事業継承における私立幼稚園園長の リーダーシップに関する研究.国際幼児教育 研究,26,51-64. 同上 日本学術振興会(2015)科学の健全な発達の た め に ― 誠 実 な 科 学 者 の 心 得 ―.https:// www.jsps.go.jp/j-kousei/data/rinri.pdf( 情 報取得 2018/07/18) 一般社団法人日本保育学会倫理綱領ガイド ブック編集委員会(2010)保育学研究倫理ガ イドブック.フレーベル館. 木 下 康 仁(2003) グ ラ ウ ン デ ッ ド・ セ オ リー・アプローチの実践―質的研究への誘 い.弘文堂.87-249. 同上.25-27 同上.131-139 前掲⑾ 前掲⒇ 前掲⒅ 謝辞 本研究のためにご協力頂きました,私立幼稚 園の主任の先生方にこの場をお借りして改めて 御礼申し上げます。また,快くインタビュー調 査の実施をご快諾頂きました,園の先生に御礼 申し上げます。 附記 本研究は,日本乳幼児教育学会第 27 回大会 にて発表したものを加筆,修正したものであ る。また,JSPS 科研費 16H02063「保育者の学 習過程を支える園内研修とリーダーシップの検 討(研究代表者:秋田喜代美)」の研究の一環と して行われたものである。なお,規程の関係で 本執筆者には記されていないが,箕輪潤子(武 蔵野大学),椋田善之(関西国際大学)も,共同 研究者であり,本研究に大きく寄与した。

図 1 私立幼稚園の主任リーダーシップの概念図(M‑GTA)
表 2 M‑GTA による分析概念の一覧 コア・カテゴリー カテゴリー 分析概念 定義 A B C D E F G H つなげるリーダー シップ 運営連帯感 保育観の対話による共有 園長の保育観などを話し合いによって共有する ○ ○ ○ ○ ○ ○主任職務の連帯感主任としての役割を相談したり,教えられたりすることで運営している連帯感を感じる○ ○ ○ ○最終責任者としての園 長認識 最終責任者としての園長認識 園全体の責任者として園長をみている ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 相互伝達 園長意図の伝達 園長の考

参照

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