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沖縄産業・企業ドメイン-戦略的事業領域-: 沖縄地域学リポジトリ

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Author(s)

吉川, 博也

Citation

沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 22(1): 73-80

Issue Date

2000-03-17

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6805

(2)

沖縄産業・企業ドメイン

沖縄産業・企業ドメイン

ー戦略的事業領域一

吉川博也

(沖縄大学法経学部教授)

(1)産業ドメインの必要`性

一方、日本では阪急鉄道を典型に住宅地開発、 ターミナル・デパート、遊園地開発など路線周辺 住民を市場とした地域総合デベロッパーとして事 業の多角化を図り、生き延びた。 阪急を創設した小林一三はまた阪急百貨店(デ パート)や宝塚少女歌劇を創造した。 この曰米の両例は、企業ドメインの持つ重要性 とその特性がよく示されている。次に私が提案す る(沖縄)地域産業ドメイン(以下、ドメインと 略記)の必要性と内容を述べてみたい。 ①地域産業は時代に応じて事業分野が多角化し たり変化をしていくが、ドメインとはそれらを貫 く一本のヨコ糸ともいうべきものである。焦点が 限定きれなければ、糸の切れたタコのように空を さまようことになってしまう。そしてドメインが 決める最も大切なものは南国、長寿県、癒し、交 易立県など沖縄地域産業が有するアイデンティティー を明らかにすることである。 ②ドメインを限定することによって、その地域 産業にとってどのような地域経営資源(人/物/ 金/情報)がカギとなり、その蓄積が必要かの指 針を与えることができる。それには必ず沖縄の地 理的位置、気候、自然環境、歴史、伝統、技術な ど全国に対して差別化できる内部の経営資源の活 用が重要である。 ③次にこのドメインに基づいて「事業ポートフオ リオ」と「ロジステイック」の両者の決定が可能 となる。 「事業ポートフォリオ」とは具体的にどのよう な事業を組み合わせて手掛けるかという、沖縄地 域産業活動の事業一覧のことである。どのような 事業を、どのような比重で、どのような組み合わ 現実の沖縄の経済・産業界をみると、確かにあ る特定の産業分野、企業が華々しく急成長するが、 それに続く産業分野、企業が輩出してこない。そ の一方で、ほかの産業分野、企業分野が衰退する という具合で、産業全体としてチャンスを生かし きれなく、一定の方向と大きな力にならないとい うのが、ここ数年の沖縄の経済の現象である。 このようなときに個別の産業の現実を踏まえて、 これを沖縄の経済・産業政策全体の中に整合的に 位置付ける作業と、それを支える産業構造理論、 すなわち産業ドメインとその具体のグランド・デ ザインの構築が必要である。これまで沖縄では、 産業のグランド・デザインが欠落していた。 今、企業が事業を展開するに当たって、まず最 初に事業活動の領域の戦略的な決定が重要である ことが認識され始めた。 これを企業ドメイン(事業領域)というが、多 くの企業から構成きれる地域の産業を構想すると きは同様に、いやそれ以上、重要になる。 あれほど繁栄していた日本の映画産業はメディ アの変化に対応せず、映画屋(フイルム)に固守 したことによって衰退した。一方、米国のハリウッ ドはマルチメディア、エンターテインメント産業 への変身によって繁栄している。これとは逆に米 国の鉄道産業はセントラル・パシフイック鉄道を 典型に、輸送手段の変化に対応できずに衰退した。 なお余談になるが世界で最も裕福な大学の一つ であるアメリカのスタンフォード大学は、同鉄道 の社長リーランド・スタンフォードの個人資産を もとに創設されたことは、広く知られている。 73

(3)

「ロジステイック」とは製品の製造のどの部分、

例えば開発、生産、流通のどれを担当するカコの決 定である。これはよく川の流れに例えられ、川上

(部門)とか川下(部門)とかいわれる。沖縄の

ような島しょ地域では、白地域内の市場ならロジ ステイック全体に対応可能であるが、全国市場を 狙おうとすると原料供給などが不可能になる。沖 縄県内でどの部分を分担することが有利か、とい うロジステイック戦略が重要になる。 なお、「事業ポートフォリオ」は、「ロジスティッ ク」の終着点を(製品群と顧客群の網の目で)表 現したものである。 の脱却③開発(機能)型物づくり・サービス

④差別化戦略が前提で、もちろん沖縄も例外では

ありえない。 すなわち今までの工業化社会、その典型が日本 (本土)の利益の源泉は専ら分業化、専業化によ

る「規模の経済'性」で生産面の効率化、生産コス

トの低減であった。しかし市場が成熟するに従っ て、この画一的な大量消費から多様、個性、し好 化し、利益の源泉は物的価値から、市場で価値を 付加する情報や差別化、それも世界的な視点から の政策へと移行してきている。 このような潮流の中で市場規模が百三十万人と 小さく、資源に恵まれない小国・沖縄でも必ずし も不利ではなくなった。自然環境、文化に特性の ある沖縄は差別化がしやすく、その分だけ付加価 値も得やすく、地域資源活用によって多くの可能 性が出現した。またグローバリゼーション進展の 下で、これまで辺境であった沖縄が国境地域・沖 縄としての可能性が出現した。 このような産業構造変化を踏まえて、沖縄の産 業特`性、差別化を発揮する視点から沖縄の資源を 次の三つに区分した。すなわち日本本土とアジア、 中国、台湾の接点、国境に位置するという「地理 的資源」、日本で唯一、亜熱帯という気候、ざん ご礁特`性などの海洋特'性など日本本土との比較優 位の「自然的資源」、日本本土とは異なる歴史と 文化資源、またはそれにはぐくまれた人材という 「特産、ニッチ市場型資源」である。 そして、これらの資源を高付加価値化して送り 出す先、すなわち市場は地場の沖縄と本土とは大 きな差異があり、また市場規模のけたが異なる。

図-1地域産業ドメイン(領域)の決定

(2)理想的な産業ドメインとは

では、理想的な沖縄の産業ドメイン(領域戦略) とは、どのようなものであろうか。 まず「未来に対して方向性と広がり感」を持つ ことで、人々に夢を感じさせ、広がりのある発想 を可能にするもの。次に「自地域の全国に対する 差別化」でポイントをつき、分かりやすい言葉で 表現していること。そして「県民感覚になじむ」 もので、県民がそのドメインを自分たちの仕事と 手触り感覚で結び付けることが可能なものが必要 である。 さて、切り口を示してみよう。 ①市場、あるいは顧客筋による切り口、共通の 市場を軸(だれに何を売るか)にしたドメインの 設定である。例えば南の島や沖縄が好きだという 人々を対象とする沖縄好きニッチ市場が設定可能 である。 ②どのような役割、機能を果たすかの切り口で ある。沖縄は日本本土とアジアを結ぶ位置、機能 (どの仕事を自分でするか)から例えば交易型立 県というドメインの設定が可能である。 ③資源、技術、人材という地域資源(どんな能 力を)からの切り口である。沖縄の持つユニーク な資源、例えば生物(バイオ)資源と健康・長寿 という沖縄ブランドによる資源活用型産業が設定 可能である。 そして図に示すように、この両者(条件と切り 口)から、次のような沖縄の産業ドメインを決定 することが可能である。 これからの先進国型産業は①世界最適調達 74

(4)

沖縄産業・企業ドメイン そのため沖縄の商品、製品、またそのロジスティッ クなどマーチヤンダイジング(商品開発)戦略は、 そのままでは日本市場には通用しない。そこでマー ケティング、生産特性上、次の三つに区分した。 すなわち沖縄近隣のアジア市場、日本本土市場、

ニッチ市場である。ここでニッチ市場とは細分化

された特色(特殊)のある市場ということで、ア ジアも日本も含まれている。 である。 国境的、地理的位置を生かし日本全国、さらに アジアをも視野に入れ、生産工程間の国際化や国 際物流を活用した「沖縄交易型産業」。例えばパ ソコンの部品を台湾から逆輸入し、沖縄で組み立 てをしている株・イミコム。 日本本土にない全国比較優位な自然環境特性を 差別化戦略とし、本土市場で一定のシェアを確保 することにより、市場操作・主導`性を可能とした 「沖縄(主)産地形成産業」。例えば春の彼岸用の 小菊は沖縄産が75%を占め、主産地を形成して いる。 市場(曰本本土、アジア市場を問わず)に占め る率は小さいものの、沖縄特有の文化、歴史、人 的資源を売り物にし、市場で確たるファンの獲得 を戦略とした「沖縄特産・ニッチ市場型産業」。 例えばウッチン、アロエベラ等の健康食品は、沖 縄ブランドをセールスポイントにし、売り上げは 60億円を超えている。 また図-2には含めなかったが、ネットワーク、 情報技術の発展の下、離島県沖縄でも全国比較不 利ではなくなったコンピューター・ソフトやコン テンツ産業を政策的に育成、発展させようとする 「沖縄政策戦略型産業」。例えばコールセンターは 最近、立地が相次ぎ、今年中には三千人の雇用の めどが立っている。 以上の四つがこれからの(県内市場は除いた) 沖縄のリーディング産業のコンセプトになる。そ してこれは技術的、生産サイドからのアプローチ

(3)四領域の提案

沖縄の資源特性とその対象市場特性を組み合わ せ、沖縄産業の可能性の領域を示したのが図-2 に、次に三つの産業ドメインを提案した。 この図はまた新・沖縄産業分類をも意味してい る。これまでの(通産)産業分類は-、二、三次 産業というように工業化社会を前提にしたもので、 生産性(物的価値)とそれによる産業構造の高度 化に着目した商品の形態分類である。しかし、市 場が成熟し、かつ情報化社会では新たな産業分類 (基準)を必要とする。それは商品にどのような 新たな価値を創造し、どのような市場で実現する かという「市場・付加価値原理」とも呼ぶもので ある。 まず沖縄の有する資源活用(図中のA)、そし てそれに対応する市場特'性(B)の組み合わせの 中で、これから沖縄で発展可能な具体的な業種 (C)を想定することができる。すなわち沖縄の 潜在性(資源)と可能性(市場)による業種選定

図一z沖縄新産業の領域

B(対象市場)C(沖縄新産業分類)

A(沖縄の経営資源)

一●● ̄ ̄ ̄●●~…●● ̄。●●●●■凸●●● ̄■●●G ̄ ̄● ̄ ̄の ̄□ ̄■苗b-b沖縄交易型産業一

●b●脚●ウ亭。●が59口命一Q5l rC昭。・・・r再r目qDm ・-..12-...0 □・麹

蕊鍵i鑑;l1iil鑑護

」ツIR 0 〆L 許T聿喜、圃

三三Fiii霊璽嚢iYHH!

75

(5)

ドからの「業態論アプローチ」ということができ

る。 説明し、沖縄におけるこの重要性を示してみよう。みやげ 琉球ガラス産業は、ローカノレな士産品のころは 全業務を県内で行っていた。しかし琉球ガラスの

手作りという特色、風情が評価され、次第に全国

的なニッチ市場となり、売り上げは十億を超える

ようになった。この需要増に県内供給体制が対応

できなくなり、県内六企業が組合をつくり、図一

3の②~④を海外(ベトナム)で行っている。現

在、普及品の五割以上がベトナム製である。

久米仙酒造(那覇市)は、これまで泡盛の原料

はタイ米のインディカ米であった。製品の差別化

をジヤポニカ米により図るため、図-3の②~⑤

を内モンゴルのウランホトで行い、新しい銘柄作

りに成功した。また花卉組合「太陽の花」では菊

生産で全国の主産地になったのに並行して、イン

ドネシアで苗の一部を栽培し、供給をしている。

これは最も手数のかかる部分を海外へ移転した のではあるが、同時にリスクを分散し、責任産地 としての業務を果たすのが目的である。 生産業務の海外移転は、動機、結果としては低 コスト化であったかもしれないが、琉球ガラスは

手作りにこだわりを、泡盛のケースでは無農薬、

有機栽培の新しい原料、菊生産では責任産地の義

務を果たす、というように差別化戦略が成功の要

因である。

沖縄は①人口130万人と市場が狭小②県

内に生産機能、工業集積が少ない③人件費等が

高く生産コストが高い④比較的安価な生産機能

を持つ東南アジアに近接している一等の条件を考

慮すると、図-2の産業カテゴリー、またローカ

(4)ロジスティックス戦略の重要`性

図-2(C)の沖縄新産業分類で、具体的な事

業を示したのが「事業ポートフォリオ」の例であ

る。「事業ポートフォリオ」とはどのような製品.

市場分野を沖縄県の活動対象とするか、複数の製 品や市場をどのような組み合わせとするかという

問題で、シナジー(相乗)効果が期待される。

なおポートフォリオとは、いくつかのものの組 み合わせ、まとまったグループのことである。個々 の製品・市場分野を単独に評価するのではなく、

例えば産業のライフサイクル上、現在成熟産業で

「金のなる木」と、これから成長する「金の必要

な木」を組み合わせるというポートフォリオ的観

点からの決定が重要である。図-2で例を示した し、経営戦略でもよく取り上げられているので、 ここでは省略する。

次に「ロジステイック」の問題である。ある製

品(サービスを含む)が顧客のもとに届くまでに

は、図-3に示すように研究開発、商品計画に始 まり、(アフター)サービスに至るまでいろいろ な業務が必要である。これはよく川に例えられる が、これをロジスティックと呼び、ある事業の中

で①どの業務を自分(沖縄県)が担当し、②他

地域(海外も含む)に任せる業務に対して、どの

ような関与をするかという決定を「ロジスティッ ク戦略」と名付けた。 39P・Hg躯・ユリ?TO・・・:○・・:..?.◇8.品。●2:卍:??.□■L●●洩oPFQC10P,:?'.。。FR・P・G3.・・:。。「。:●弓・P。.,0.2..22$.?;●.?〃0も'黙。.?T:。P、α:錨::。Z:。Z゛98:、-73肴『尻:~..=,`・品ら:Uf;d鎚津汀。・6Vも其oZ5jUE弓;、尊●◇聖路“・●民CO.:…●90.0P・OOナーサローム゛。・・486?。...『999.ムリ.‐`1..↑。.?F1 ̄..B~BLO19.8912。。、9.88.8949;79・汀6:苫59▲?

図--3□ジステツク(業務活動分野)の流れii

⑪蕊議②讓鐸鑿③蕊|蕊④鱗!⑤1蕊蕊職鐵蕊⑰蕊議鑿⑬

L、了 ■=認:F錘.:・9VF1蕊麹:;;宅 76

(6)

沖縄産業・企業ドメイン からである。この新品種は在来種と比較すると格 段と収量が良く「群星」は40%アップ、さらに 「汐風」は85%アップした。 さて沖縄の場合、県内市場が狭小であるので生 産量が増加し、県内供給量が増えると需要が過剰 となり、価格が下がる。これまでゴーヤーの場合 も3千トン以上になると、価格が低迷していた。 このような結果、農家は性々に継続してその作物 を作らなくなり、別の価格のよい作物に移るとい う繰り返しが続き、沖縄では産地形成が難しい。 しかしゴーヤーの場合は少し異なっていた。県 外に積極的にPRをし、前年比100%増に近 い県外出荷を果たし、県内の供給量を一定に抑え ることができた(ニガウリの価格弾力性はマイナ ス0.6で、入荷量が10%増加しても、価格は 6%しか低下していない)。さらに97年からは 5月8曰を「ゴーヤーの日」として東京、沖縄で 消費者拡大を展開している。 また、県・経済連等の関係機関で93年にゴー ヤー調整会議が設置きれ、毎年の地域ごとの作付 け計画の調整、計画出荷がなされた。これも生産 を計画的に漸次増加したので、価格の暴落を防ぐ 機能があった。 この結果、農家にとって「群星」を栽培すると 10アール当たり170万円、「汐風」は同23 0万円となり、それぞれ日収1万8千円と2万4 千円になる。 このような反収、日収があれば農家も意欲をわ かせて、継続してゴーヤーに取り組み、また栽培 農家も増加し、その結果、全国主産地形成が可能 であるし、また責任産地としての義務も果たすこ とができる。 当事者(JA沖縄経済連、県)も個々の対策と その効果は意識しているが、成功をした全体は理 解していないのではなかろうか。ロール・モデル としてPRする必要がある。 この沖縄での主産地形成の方法は、何も農産品 だけではなく水産、工業製品にもほぼ共通して活 用できる。消費者、流通業者が必要な品物を「定 時・定量・定質・定規格」に供給できるように沖 縄の生産者を組織化し、かつ生産・製造意欲が持 続できる所得を確保することである。 なお、ここに取り上げた全国的品目とニッチ品 目とに分けて(図-2を参照)、その戦略を構築 する必要がある。全国主産地形成のためには沖縄 ルから全国市場等への発展段階とマッチングした ロジステイック戦略が欠かせない。 これはまた経営学で最近、注目されている「ア ウトソーシング」「コア・コンピユタンス」理論 とも深く関係している。

(5)沖縄産地形成の方法

沖縄は全国的な主産地形成が極めて下手で、そ れは沖縄は組織化になじみにくいからかもしれな い。沖縄で主産地形成が可能な産業は、図-2で 示したように本土との比較優位な気候、環境、資 源などに基づく「沖縄産地形成型産業」である。 しかし全国市場に対して沖縄が7~8割を供給す ることによって、かつ価格形成力を発揮できるの はマンゴー、ウッチンなどニッチ市場的なものを 除くと、春もの(彼岸)用の小ギグ(市場占有率 87%)ぐらいなものではなかろうか。 ゴーヤーは全国的には、まだマイナーな作物、 商品ではあるが、主産地形成努力によって全国的 に知られるようになってきた。この例を分析する ことによって、沖縄における主産地形成方法と戦 略を明らかにしてみたい。 1991年ごろまで年により変動はあるものの、 ゴーヤーの栽培面積は200ヘクタール前後、収 穫量は3500トン前後であった(以下、図-4 参照)。 それが93年より栽培面積、収穫量とも急増し ている。これはF1新品種である「群星」が9 3年から、「汐風」が95年から導入、普及した

図-4ゴーヤーの栽培面積と収穫量

べ駅栽培面積 O霞収穫量 400 (ha) 8000(トン)

~Iili:Yilj

300

200 6000

4000

158167/

蝋・屡一鍵顧み

3530 27202810 100 2000 1990年。・・・95・97年 77

(7)

ニッチ品目の場合は組織化ではなく、個人の創意 工夫をいかに引き出し、発揮できるかがポイント になる。 また両者に共通するものとして、ぜひ「沖縄ブ ランド品質認証機関」を設置し、「沖縄ブランド」

確立のための品質等の検査、等級付け、評価、そ

してブランドを担保するためのアフターサービス、 クレーム措置を確立する必要がある。 あろう。しかしこれらも経営資源という視点から みると、絶対的な固定性ではない。

例えば沖縄の亜熱帯気候という資源を、花卉産

業(図-2「沖縄産地形成産業」)から評価すれ

ば、これは温室によって代替可能で、加熱用のエ

ネルギー価格によって相対化する。また沖縄の国

境という地理的位置も、「沖縄交易型産業」(図一

2)という視点(経済的位置)からみると相対化

する。

また企業やヒトは限定性と移動等を同時に持っ

ている。一般的な企業や未熟練労働力は、企業誘

致等によって比較的移動可能な資源である。しか

し地場(産業)企業やその地域の文化を担ってい るような人材は固定的資源である。 一般的に固定資源と考えられているものも、コ

ストを負担すれば相対化でき、このような意味で

は「絶対的な固定性」とはいえない。これに対し

てブランド性とか知名度、すなわち沖縄の持つ

「長寿、健康、エコロジー」「特異な文化、伝統」

というイメージ、また組織文化、気質という「目

に見えない資源」である情報的資源は、固定性の

極めて強いものが多い。これらは単にカネを出せ

ば、他地域から移動できるというものではない。

またその蓄積にも時間がかかり、他の資源とは特

性が異なっている。

もう一つの分類軸は「汎用'性一地域限定性」で

ある。資源の中で、最も汎用'性が高いのは資金で ある。カネがあれば市場で売っているものなら、

(6)沖縄の経営資源

地域(産業)が活用できる経営資源は地理的位 置、自然環境、文化、企業、行政、人材、資金、

社会資本、産業・工業集積などいろいろある。こ

うした経営資源の中で沖縄が持っている経営資源

で差別的な優位性、すなわち他の地域でまねので きない優位性の源泉になるものは何であろうか明 らかにしてみよう。これが沖縄新産業のポイント になる。 そこで経営資源を分類することによって、優位

性の特性と構造を考えることにしよう。さて企業

の経営ではヒト、モノ、カネというような形態的 な分類がよく使われるが、ここでは「固定性一移

動性」「汎用性一地域限定性」という二軸による

分類を試み、図-5に示してみた。

まず「固定性一移動性」軸、すなわち他地域か

らの調達の容易さの程度による分類である。地域 が有する経営資源の中で、最も固定性があるのは

図-5

汎用性

沖縄の経営資源の分類

地域限定性 移動性 ■■■■  ̄ ヨZ 】貝’ 畏囚‘・】::ミ 加出。付 固定性 U】陵I丞一トナー【】 78

(8)

沖縄産業・企業ドメイン 何でも買える。 カネよりは汎用性は低いが、一般的な企業、未 熟練労働力などはどのような地域でも等しく同様 に使える。しかし地場(産業)企業や地域特有の 能力や熟練を要する労働力は、汎用'性が低く地域 限定'性が強い。 地域限定性が強いのは、地域内外に蓄積された 知識としての情報的資源である。地域に蓄積きれ ているノウハウ、技術、組織文化や気質、また当 該地域に対する他地域、全国の知名度、イメージ、 ブランドなどである。この情報的資源の多くは地 域限定的で、他地域が自由に使えるものではない。 この両分類で明らかになったのは、他地域から は持って来られないもので、かつ当該地域でしか 役に立たないという「目に見えない情報」が地域 資源の中で、最も差別的な優位性を持っているこ とである。この情報資源は固定性が高く、かつ地 域限定性が強いという図-5の右下方向になる。 すなわち、次のような性質を兼ね備えているので、 他地域との優位性の源泉になる。①カネを出して も買えない(白地域で作るしかない)②作るのに 時間がかかる③複数の製品や産業・企業分野で 同時多重利用(「ただ乗り」ができ、みんなで利 用できる)が可能である。 そして沖縄には、ここで明らかになった全国イ メージ、ブランド、例えば「エメラルドグリーン と白砂に縁取られたアイランド」「長寿、健康の 沖縄」という差別化資源に恵まれている。これを いかに確保、育成し活用するかが沖縄の産業、企 業発展のポイントである。 一方、沖縄県の開業率は1986年-91年の 平均で7.2%(4800件)、廃業率は6.4% (4300件)で、全国の開業率4.0%、廃業率 3.8%と比べ倍近く、両者とも全国一である。 沖縄は新規開業に対して需要、供給とも全国_高 いが、また企業淘汰も激しい地域といってよい。 そしてその業種、特性からするとごく「普通の企 業」なのである。 この「普通の企業」をコミュニティビジネス (以下CB)、マイクロビジネス(以下MB)と いう視点から産業、社会を位置付け直すことによっ て、沖縄の多くの課題が解決できる。CBとは MBとはどのような概念か。 CBとは地域が抱えている問題を住民・市民 が自分たちで持っている技術、ノウハウや生活の 知恵といった資源を用いて、ビジネスという型で 問題解決をしようというのが原点である。すなわ ちCBは自らの地域を豊かにするための住民主 体の地域事業である。 MBは必ずしも先端性技術を持ってはいない が、事業分野としてのニッチ性、雇用創出の即効 性、事業拡大とともに自己実現(社会'性・使命感) 達成感の重視などを特徴にもつ自営業である。 この両者、既存企業を地域軸と利益・使命軸と で整理したのが図-6である。 ではC&Mビジネスがどのような沖縄の問題、 課題を解決することが可能か、具体例を挙げてみ よう。 等身大ビジネスチャンスの拡大▽雇用問題の解 決▽自己実現、生きがい、働きがいづくり▽ワー キングスタイルとライフスタイルの融合、一致 (新しいワークスタイルの創造▽セルフエンプロ イメント、起業と雇用の一体化政策▽地域力増大 によるコミュニティの拡大再生産。 そしてこのようなコミュニティビジネスを担う 人材は、沖縄に豊富に眠っている。経験豊富なシ ニア、就職先のない若者、そして結婚や出産によ りキャリアを中断した主婦一等々である。現在は こうした人々を活用、吸収するシステムが存在せ ず、せっかくのキャリアが活用できない。そのた めにはコミュニティ・カレッジなど新しいシステ ムが必要である。 さてこのCB&MBに欠けるものがある。そ れはマネジメント能力と資金調達力である。これ を支援するためのNPOや起業プラットフォー

(補論)コミュニティ・ビジネス、マイ

クロ・ビジネス ーベンチャー・ビジネスを超えて- ここに述べた産業ドメインとは少し異なった視 点から(1)~(6)の補足として、今、話題になってい るコミュニティ・ビジネス、マイクロ・ビジネス を取り上げ、沖縄との関連を述べてみたい。 今、沖縄の経済、産業活生化の担い手としてベ ンチャービジネス、とくに情報通信(コンテンツ 制作、システム開発)、ハイテクに対する期待が 大きい。しかし沖縄の現状をみるとハイテク・研 究開発型、ハイリスク・ハイリターン型ベンチャー ビジネス誕生の可能性がそう高いとは思えない。 79

(9)

図一Sc&Mビジネスの位置付け

地域指向

(コミューティ指向)

使命指向(社会性)

利益指向(市場性)

広域指向

(グローバル指向) 80

参照

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