Vol.19 No.1(2020) Comprehensive Medicine 1
巻 頭 言
全人的医療を目指した栄養食事指導
大木和子 千代田国際クリニック 管理栄養士 昭和女子大学大学院生活機構学専攻 客員研究員 現在,千代田国際クリニック(永田勝太郎院長)にて,栄養食事指導を一日4名,月4日の枠で 予約実施している.さらに月一回開催される患者大学で,集団指導も担当している.対象者の年 齢は,12歳から80歳代で女性が多い.今年度(2020年度)に入ってから10代の患者が増えている. コロナ禍という未曽有の状況の中,不登校率が高まっていることは当院の患者状況においてもい える.しかし,細かい検査や問診を経ていくと「朝起きられない」「気力が出ない」といった要因と して低血圧・低血糖が多いことに気づく.永田先生が常時提案している生活習慣の歪み解消の一 環として,栄養食事指導がこのコロナ禍においても占める重要度を日々実感している. 栄養処方箋の診断名で多いのは,線維筋痛症,起立性低血圧,心機能低下,反応性低血糖(血糖 値スパイク),夜間低血糖,低コレステロール,低中性脂肪,糖化,酸化などである.データとし ては,血液・生化学検査に加え,ヘッドアップティルト試験による血圧測定,FreeStyleリブレPro を用いた2週間の血糖値測定,暗視野顕微鏡による赤血球像からの糖化診断,フリーラジカル解析装置FREE carpe diemによる酸化・抗酸化度などである.食生活状況については,当院オリジナ
ルの「生活習慣見直しノート」で確認を行う.1冊で50日間記録できる.日ごとの内容は,朝・ 昼・夕・2回の間食・夜食の摂取時刻と食事内容,起床就寝時刻と睡眠自己評価,身体活動の記述, 便通回数と状況,寝起き排尿後の体重と血圧,月経状況,入浴時刻と状況,身体・心への気づき の記述などである. 筆者自身の管理栄養士在職40年の中で,栄養食事指導での主な対象は,メタボリックシンド ローム,糖尿病,高血圧,脂質異常症,慢性腎臓病(CKD)などで,当院での外来は今までとはか け離れている.栄養食事指導は永田先生の指導のもとで,低血圧・低血糖を予防する食事を目指 している.そのためには,朝食抜きやどか食いを改め,朝昼夕の3食に加え午前午後の間食・夜 食の一日6回食を目標エネルギーの範囲で分食していく方法を提案している. とはいえ,低血圧や低血糖で朝,特に具合が悪く長年朝食抜きで過ごしてきた患者が朝食を食 べ始めるのは難しいので,そういう場合は目覚めの一連運動を紹介している.まず寝床で自律訓 練法のだるさの消去動作を実施し,その後ゆっくりと起き上がり,口腔洗浄の後,水を一杯飲み, 日の光を浴びるといったものである.患者のやりやすさなどを相談しながら,できそうなところ から提案している.「昨日はできたが今日は具合が悪くできなかった」というのもこれらの患者の 特徴である.個別の栄養,そして運動指導を行っていく結果,改善例も挙がっている. この時期,コロナ渦に向けて,日本栄養士会中村丁次会長の「新型コロナウイルスの状況下, 今,栄養指導に必要な一般生活者へのアドバイス」(日本栄養士会ホームページにて2020年4月10 日発信 https://www.dietitian.or.jp/important/2020/4.html 2020年11月19日現在閲覧可能)が掲載 された.第一に挙げられたのは,食事療法による免疫システムの強化である.免疫能を維持する には,栄養バランスの取れた食事により,免疫システムの正常な機能を維持する各種の栄養素関
2 Vol.19 No.1(2020) Comprehensive Medicine 連物質が適正に摂取されること,つまり,栄養不良を起こさないようにすることが第一に必要に なると述べている. このように免疫力についての議論が強く注目されているからこそ,積極的に栄養・食事の重要 性を説いていきたい.特に人々の社会的孤立状況を招きやすい現状ゆえ,使命感を持って情報の 発信・共有をしていく所存である.これからも患者理解に努め,少しずつでも患者自身が生活習 慣の改善ができるよう援助していきたい.