耳 鼻 咽 喉 科 領 域 各 種 感 染 症 に 対 す るCephaloridine(Ceporan)の
臨 床 応 用
高
須
照
男 ・馬
場
駿
吉
名古屋市立大学 医学部耳鼻咽喉科 学教室(主 任:高 須照男教授)
(1967年6月19日
受付)
新 ら しい 抗 生 物 質 の開 発 が 各 種 感 染 症 の治 療 に画 期 的 な 進 歩 を もた ら した こ と は,今 さ らい うまで もな い が,一 方, 耐 性 菌 の出 現 も著 る し く,我 々臨 床 医 の悩 み で あ る。 した が つ て,こ れ ら耐 性 菌 に 高 い抗 菌 力 を もつ 新 抗 生 物 質 の 研 究 開 発 が さ らに 望 まれ る のが 現 状 で あ る。 我 々は 最 近,新 抗 生 物 質CePhaloridineを 耳 鼻 咽 喉科 領 域 各 種 感 染 症 に 臨 床 応 用 し,そ の治 療 成 績 を 検 討 す る と と も に,2,3の 基 礎 的 実 験 を お こな つ た の で,そ の結 果 を 併 わ せ て こ こに 報 告 す る 次 第 で あ る。 組 成 お よ び 性 状Cephaloridine(CERと 略)は,Cephalosporium acremoniumの 培 養 濾 液 か ら抽 出 され たCephalosporin Cを 化 学 的 に 処 理 して つ く られ た 半 合成 抗 生 物 質 で,下 記 の よ うなPenicillinに 酷 似 した 化 学構 造 を もつ。 白 色,吸 湿 性 の 粉 末 で,水 に よ く溶 解 し,そ の 溶液 を 静 注,筋 注,局 所応 用 に 使 用 す る こ とが で き,ま た,グ ラム陽 性 菌 の み な らず,グ ラム 陰 性 菌 に対 して も強 い 抗 菌 力 を もち,そ の 作 用 は Bactericidalで あ る とさ れ て い る。 臨 床 成 績 1. 使 用対 象:当 科 外 来 を訪 れ た 男 子26例,女 子17例,計 43例 の耳 鼻 咽 喉 科 領 域 各 種 感 染 症 患 者 で,そ の 内訳 け は 第1表 に 示 す とお りで あ る。 2. 投 与 方 法:通 常,成 人 に は500m91日1回 筋 注 し,小 児 は年 令 に 応 じて125∼250mgを 同 様1日1回 筋 注 し た 。 また,慢 性 化 膿 性 中 耳 炎,慢 性 副 鼻 腔 炎,急 性 お よび 慢 性鼻 炎 の症 例 に は,1ml中 に 本 剤10mgを 含 有 す る 溶 液 を 調 製 し,こ れ を 耳 浴 また はNebulizerに よる鼻 内 噴 霧 に よつ て局 所 に応 用 した 。 3. 効 果 判定 規 準:臨 床 所 見 の 改 善 状 態 か ら次 の4段 階 に 分 け効 果 を判 定 した。 著 効:急 性 疾 患 で は,5日 以内 に 諸 症 状 が 消 失 し治 癒 した もの 。 慢 性 疾 患 で は,10日 以 内 に主 要 自他 覚 所 見 が著 明 に 改 善 し,起 炎菌 が 陰 性 化 した もの。 有 効:急 性 疾 患 で は,10日 以 内 に 主 要 自他 覚 所 見 が改 善 し,治 癒 した もの 。 慢 性 疾 患 では,著 効 の規 準 に達 し, 起 炎 菌 が 陰性 化 す る の に10日 以上 を要 した も の。 軽 快:主 要 自 ・他 覚 所 見 は や や改 善 した が,治 癒 に は至 らぬ も の。 不 変:自 他覚 的 に 全 く変 化 を み とめ な い か,ま た は 悪 化 の 傾 向 を示 した も の。 4. 治 療成 績: (1) 急 性 化 膿 性 中 耳 炎:第2表 に示 す よ うな4例 で,す べ て 鼓 膜 に 中 等 度 以 上 の発 赤 腫 脹 を み とめ た 症 例 で あ つ た が,い ず れ も5日 以 内 に 諸 症状 は 完 全 に 消 失 治 癒 し,全 例 著 効 とみ とめ られ た 。 (2) 慢 性 化 膿 性 中 耳 炎:本 疾 患 は4例 で,い ず れ も10mg/mlの 濃 度 に 稀 釈 した本 剤 を 耳 浴 に よつ て局 所 応 用 し 第1表 対 象 患 者(男 子26例,女 子17例)
TERUO TAKASU & SHUNKICHI
BABA: Clinical application of cephaloridine (Ceporan) for ear,nose
and
throat infections.
第2表
急
性
化
膿
性
中 耳
炎
第3表 慢
性
化
膿
性
中
耳
炎
第4表
耳
癌
第6表
慢
性
副
鼻
腔
炎
た。 これ ら症 例 は,す べ て 初 診 時 中等 量 以 上 の 耳漏 を み とめた 症 例 で あ つ た が,1∼2週 間 の 耳 浴 で 全例 耳 漏 は 全 く 消 失 し,鼓 室 粘 膜 の発 赤 もほ とん ど消褪 し,い ず れ も著 効 と判 定 され た。 第1症 例 か らは 緑 膿 菌,第3症 例 か らは 黄 色 ブ 菌 を 検 出 し得 た が,前 者 は 耐 性 を示 し,後 者 は 本剤 に高 度 感 受 性 株 で あ つ た(第3表)。 (3) 耳 〓:第4表 に 示 す よ うな6例 で,い ず れ も中 等 度 以上 の 限 局 性 発 赤 腫 脹 を み と め た 症例 で あ るが,著 効3 例,有 効2例,軽 快1例 の 成 績 で あ つ た。 この うち,膿 性 分 泌 物 の 細 菌 検 索 を 施 行 し得 た 第3症 例 か らは,本 剤 に 高 度 感 受 性 を 示 す黄 色 ブ菌 を 証 明 した 。 (4) 急 性 鼻 炎 お よび 急 性 上 顎洞 炎 兼 眼窩 蜂 窩 織 炎:急 性 鼻 炎1例 に 対 す るネ ブ ライ ザ ー鼻 内噴 霧 療 法 の成 績 は, 8日 目に鼻 閉,鼻 漏 は ほ とん ど消 失 し,鼻 粘 膜 に 軽 度 の 発 赤 を残 す の み となつ た 。 ま た,眼 球 突 出を 訴 えて 来 院 した 急 性 上 顎 洞 炎 兼 眼窩 蜂 窩 織 炎 の 症 例 に は,本 剤 を1日1回500mg筋 注 投 与 した。 投 与 開 始 後3日 目か ら眼 球 突 出,鼻 漏は 次 第 に 減 少 し,鼻 腔 所 見 も改 善 され,10日 目に は ほ とん ど治癒 状 態 とな つ て 退 院 し,急 性 鼻 炎 の 症 例 同様 有 効 と判 定 され た 。 本 症 例 の 中鼻 道 分 泌 物 か らは 本剤 に 高 度 感 受 性 を もつ黄 色 ブ 菌 を 検 出 した(第5表)。 (5) 慢 性 副 鼻 腔 炎:慢 性 副 鼻 腔 炎 患 者22例 に 対 す る本 剤 の ネ ブ ラ イザ ー鼻 内 噴 霧 また はPROETZ氏 置 換 法 に よる局 所応 用 の 治 療 効 果 は 第6表 の とお りで,著 効4例,有 効6例,軽 快9例,不 変3例 で,他 の 感 染 症 と比 較 し, や や治 効 率 の 低 下 を み るが,本 症 の 複 雑 な 病 因 か らみ て,い た し方 な い結 果 と も考 え られ る。 ま た,概 して 中 鼻道 病 変 の強 度 の も の に 軽 快 ま たは 不 変 例 が 多 い 傾 向 がみ られ た 。 検 出 菌 株 中,ブ 菌 を は じめ とす るグ ラ ム陽 性菌 は ほ とん ど高度 感 受 性 を 示 した が,緑 膿 菌,変 形 菌 の グ ラム陽 性 桿 菌 は 耐 性 を示 した 。 (6) 急 性 扁 桃 炎:本 疾 患 は5例 で,全 例 の 扁桃 に 中 等 度 の 発 赤 を み とめ,第2症 例 に は 多 数 の 栓 子 形 成 を,第3 症 例 には 白 苔 の 付 着 をみ た 。 年 令 に よつ て125∼500mgを1日1回 筋 注 し,5日 以 内に全 治 した 著 効4例,10日 目 に 全 治 した 有 効1例 をみ とめ た 。 検 出菌 とそ の 感受 性 は 第7表 に示 した とお りで,全 菌 株 が 本 剤 に 高 度 感受 性 を示 した。 5. 総 合 治 療 成 績 以 上 に述 べ た 成 績 を 総括 してみ る と,第8表 の とお りで,著 効,有 効 合 せ て の 治 効 率 は約69.8%で あ り,急 性 感 染 症 に は優 秀 な 治 療 効 果 を み とめ た が,慢 性 副 鼻腔 炎 な ど細 菌 感染 以 外 の因 子 が 治療 効 果 の 壁 とな つ て い る と考 え ら れ る疾 患に は 十 分 な 効 果 を み とめ 得 な か つ た 。 6. 副 作 用 我 々が 本 剤 を 用 い た43例 には,な ん ら副 作 用 の 発 現 を み とめ なか つ た 。 基 礎 的 実 験 1. 血 中濃 度 健 常 成人5例 に 本 剤500mgを 筋 注 投 与 し,投 与 後30分,1時 間,2時 間,3時 間,5時 間,7時 間,12時 間 の血 清 内 濃度 を 大 久 保 氏 帯 培 養 法 に よつ て測 定 し た 。 その 成 績 は 第9表,第1図 に 示 す とお り で,そ の平 均 は 注 射 後1時 問 目に0.8mcg/ml の ピー クに達 し,7時 間 後 には 著 減 し,12時 間 後 に 消失 した 。 2. 抗 菌 力 各 種 検 出菌 種 に お け る本剤 感 受 性 を 平 板 寒 天 稀 釈 法 に よつ て 検 討 した。 な お,培 地 に は Heart-Infusion培 地 を 用 い た。 そ の 成 績 は 第10表 に示 す とお りで,1.0mcg/ml以 下 で 発 育 を 阻止 され る もの と,50mcg/ml以 上 の 耐 性 菌 株 とが は つ き り分 れ る傾 向 が 窺 えた 。 全 実 験 菌株23株 中,MICが1.0mcg/ml以 下 の 感 受性 株 は17株,50mcg/m1以 上 の耐 第8表 各 種 疾 患 に 対 す るCephaloridine(Ceporan)の 治 療 成 績
第9表 CER血 清 内 濃 度 の 消 長(500mg筋 注) 第1図 Cephaloridine血 清 中 濃 度 の 消 長 500mg筋 注,5例 平 均 第10表 各 種 検 出菌 種 に お け るCERの 最 小 発 育 阻 止 濃 度 性 菌 株 は6株 で,耐 性 出現 率 は26.1%で あ つ た が,菌 種 別 にみ る と,一 般 に グ ラ ム陽 性 球 菌,こ とに 黄 色 ブ菌 に対 して は 威 力 が あ り,緑 膿 菌 等 の グ ラ ム陰 性 桿 菌 は お お む ね 耐 性 を示 した 。 考 案 耳 鼻 咽 喉 科 領 域 に お け る感 染 症 の治 療 に抗 生 物質 が 用 い られ るば あ い,全 身 投 与 は もち ろ ん で あ るが,そ の 解 剖学 的 特 殊 性 か ら,局 所 応 用 を 必 要 とす る こ とが 多 い。 した が つ て,使 用 薬 剤 を 局 所 に 作 用 させ た ば あ い,過 敏 な粘 膜 に 強 い 刺 激 を与 え た りす る と,炎 症 症 状 が さ らに増 強 す る こ と もあ り,そ の点 注 意 を 要 す るわ け で あ る。 そ の ほ か全 身 投 与 に さい して は,高 い 血 中 濃 度 が 得 られ,ま た 高 い 抗 菌 力 を 広範 囲 の菌 種 に もち,既 存 の抗 生 物 質 との 交叉 耐 性 が な く,副 作 用 もな い 等 の条 件 が 備 わ つ て い る こ とが 望 まれ る の は 論 を また な い。 Glaxo社 で開 発 され た 新抗 生 物 質Cephaloridineは,こ れ らの きび しい 条件 を ほ とん ど満 た し得 る 薬 剤 と して登 場 した わ け で あ り,諸 家 の基 礎 的 実 験 に よ つ てす で に か な り詳 細 に裏 付 け られ て い る。 我 々 は前 述 の よ うに,本 剤 を 中耳 疾 患,鼻.副 鼻 腔 疾患 に局 所 応 用 した が,水 溶 性 の 本 剤 は 容 易 に 望み の濃 度 の 溶 液 を調 製 す る こ とが 可能 で,し か も粘 膜 に 刺 戟 性 をみ とめず,な ん の支 障 もな く使 用 で き た。 また,全 身 投 与 に さい して も,我 々 の 経 験 で は,な ん ら副 作 用 をみ と めず,1日1回 の筋 注 で もか な りの効 果 を 上 げ 得 た が,500mg筋 注 後7時 間 目に は血 中 濃 度 が著 し く低 下す る実 験 成 績 か らみ る と,投 与 回 数 を1日2∼3回 に す る必要 が あ る と も考 え られ る。 試 験 管 内 抗 菌力 につ い て み る と,ブ ドウ球 菌 に 対 して は,我 々 の 実験 成 績 か らみ て も,か な り強 力 な抗 菌 作 用 を もつ こ とが察 知 され たが, グ ラム陰 性 桿 菌 の うち,耳 鼻 咽 喉 科 領 域 で比 較 的検 出 率 の 高 い 緑 膿菌 に は抗 菌 力 が 乏 しい点,い さ さか 残 念 に思 う。 しか し,STEWART1),MURDOCH2),清 水3),金 沢4)ら の報 告 の よ うに,グ ラ ム陰 性 桿 菌 で も緑 膿 菌,変 形 菌 を 除 き, 大 腸 菌,肺 炎 桿 菌,イ ン フル エ ンザ菌 等 に は か な り強 力 な抗 菌 作 用 を もち,ま た,丸 井5)の 報 告 に よれ ば,嫌 気 性 菌 群 に 対 して も非 常 に有 効 で あ る点,今 後 活 用 さ るべ き有 力 な抗 生 物 質 と して 高 く評 価 さ るべ き で あ る と考 える。 我 々 の 治効 率69.8%と か ら総 合 治 療 成 績 か らみ て も,こ の 点 肯 か れ る次第 であ つ た。 我 々 の臨 床 経 験 で は 副 作用 は全 くみ とめ な かつ た が,MURDOCHは2例 に 発 疹 を 生 じ,そ の うち1例 は,Amino-benzyl penicillinに も過 敏 性 であ つ た と述 べ て い るの で,こ の 点今 後 も一 応 注 意 を払 う必 要 が あ る と思 わ れ る。 む す び 1. 新 抗 生 物 質CePhaloridine(Ceporan)を 耳鼻 咽 喉 科 領 域 数 種 感 染 症 に 応 用 し,総 合 治 療 成 績 で69.8%の 治 効 率 を あげ た 。 2. 筋 注 投 与 例 に も,局 所 応 用 例 に もな ん ら副 作 用 を み とめ な かつ た 。 3. 500mg筋 注5例 の血 清 内 濃 度 平 均 値 は,1時 間 後 に ピ ー ク8.0mcg/mlに 達 し,12時 間 後 に 消失 した 。
4. ブ ドウ球 菌 をは じめ とす る グ ラ ム陽 性 球菌 に は 優 秀 な 試験 管 内 抗 菌 力 を 示 した が,グ ラ ム陰 性 桿 菌 の うち,緑 膿 菌,変 形 菌 に 対 しては抗 菌 力 を み とめ 得 な か つ た 。 以上 の 成 績 か らみ て,今 後 活 用 さ るべ き有 用 な 抗 生 物 質 で あ る と信 ず る次 第 で あ る。 本論 文 の 要 旨 は,日 本 耳 鼻 咽 喉 科 学 会 東海 地 方会 第209回 例 会 お よび 鳥 居 薬 品 主 催 第2回 セ ポ ラ ン研 究 会 に お い て 発 表 した 。 参 考 文 献
1) STEWART, G. T. & R. J. HOLT: Laboratory and clinical results with cephaloridine. Lancet 1964-2 (7373): 1305•`1309, Dec. 19, 1964.
2) MURDOCH, J. M.; C. F. SPEIRS, A. M. GEDDES & E. T. WALLACE: Clinical trial of cephaloridine (Cepo-rin), a new broad-spectrum antibiotic derived from cephalosporin C. Brit. Med. J. 1964-2 (5419) 1238•`1240, Nov. 14, 1964.
3) 清 水 喜 八 郎, 畠 山 正 己, 陣 立 恒 夫, 島 田 馨, 奥 村 有 史: Cephaloridineの 基 礎 的, 臨 床 的 研 究 。J.
Antibio-tics, Ser. B 19(2): 131∼134, Apr. 1966.
4) 金 沢 裕, 倉 又 利 夫, 丸 山 勇, 河 路 清, 田 沢 和 内: 合 成Cephalosporin C製 剤(Cephaloridine,
Cephalo-thin)の 基 礎 的(in vitro抗 菌 力, 併 用 効 果, 体 液 中 濃 度, 不 活 化 酵 素)検 討 な ら び に 臨 床 経 験 。J.
Antibio-tics, Ser. B 19(2): 122∼130, Apr. 1966.
5) 丸 井 利 軌: Cephaloridineの 嫌 気 性 菌 に 対 す る 拡 菌 作 用 。 医 薬 の 門 7(1): 7∼10, Jan. 1967.
Hedamycin
H.SCHMITZ,K.E-CROOK,Jr.&J.A.BUSH:Heda-mycin,a new antitumor antitumor antibiotic.I. Production,isolation and characterization.Antimicr. Agents & Chemoth.1966:606∼612,1967.
W.T.BRADNER,B.HEINEMANN & A.GOUREVI-TCH:Hedamycin,a new antitumor antibiotic.II. Biological properties.ditto 613∼618,1967.
Streptomyces griseomber C-1150(ATCC 15,422)株
の 培 養 液 か ら,溶 原 性 大 腸 菌 の 誘 発,枯 草 菌 阻 止,HeLa 細 胞 に 対 す る 毒 性 に よ つ てHedamycin(NSC-70,929 D)を 分 離 し た 。 培 養 濾 液 か ら ク ロ ロ フ オ ル ム で 抽 出 し, ア ル ミ ナ ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー お よ び 向 流 分 配 で 精 製 し, 再 結 晶 し てm.p.243∼245℃ の 橙 黄 色 針 状 結 晶 と し て 得 られ る 。 脂 肪 属 炭 化 水 素 お よ び 水 を 除 く多 く の 溶 剤 に 溶 け,う す い 酸 水 溶 液 は 黄 色 を 呈 し,塩 基 性 で は 紫 色 に 変 り分 解 す る 。 結 晶 は,光 お よ び 空 気 を 避 け て 保 存 す る と安 定 で あ る が,溶 液 は 徐 々 に 分 解 す る 。 紫 外 部 吸 収 は,ク ロ ロ フ オ ル ム,メ タ ノ ー ル,0.01N HCl中 で245 mμ に 極 大,260∼265mμ に 肩,430mμ に 幅 の 広 い 弱 い 吸 収 帯 を み と め,0.01N NaOH中 で は254mμ お よ び 324mμ に 移 る 。 濃HCl中 で 変 色 な く,濃H2SO4で 紫 外 線 下 に 濃 い 黄 色 蛍 光 を 呈 す る 溶 液 と な る 。 赤 外 部 ス ベ ク トラ ム は カ ル ポ ニ ル 基 の 存 在 を 示 す 。C41H52O11N2 (748.7)の 式 が 与 え ら れ た 。 多 く の グ ラ ム 陽 性 お よ び 物cobacreriumを0.003∼0.25mcg/ml,グ ラ ム 陰 性 菌 を1.6∼6.25mcg/mlで 阻 止 す る ほ か,酵 母 のKloeckera brevisを0.8,Sacc.cerevisiaeを3.2,C.albicansを 25,原 虫 のTetrahymena
pyriformisを0.8,Ochro-monas malhamensisを1.6,Crithidia fasciculataを
12.5mcg/mlで 阻 止 す る 。 溶 原 性 大 腸 菌W 1709(λ)株 の バ ク テ リ オ フ ァ ー ジ産 生 を 最 低0.0125mcg/mlで 誘 発 し,HeLa細 胞 組 織 培 養 に 強 い 毒 性(ID50 0.00013mcg/ ml)を 示 す 。 大 腸 菌B株 を 用 い た 実 験 で,核 酸 合 成 阻 害 が み と め ら れ た 。 マ ウ ス の 腹 腔 内 注 射LD50は0.3mg/ kgで あ つ た 。 ラ ッ トのWalker 256筋 肉 内 腫 瘍,ハ ム ス タ ー の 十 二 指 腸 の 腺 癌 の 発 育 を 阻 止 し,最 適1日 量 は 50mcg/kgで あ つ た 。Sarcoma 180に 対 す る 作 用 は 弱 く,他 の3種 の 実 験 腫 瘍 に は 効 果 を み と め な か つ た 。 Hedamycinは,Pluramycin A,Rubiflavin,Iyomycin B1に 似 て い る が,物 理 化 学 的 お よ び 生 物 学 的 性 質 に よ つ て 区 別 さ れ る 。(八 木 沢 抄) 5-Azacytidine L.J.HANKA,J.S.EVANS,D.J.MASON&A.
DIETZ:Microbiological production of 5-azacytidine.
I.Production and biological activity.Antimicr.
Agents & Chemoth.1966:619∼624,1967.
M.E.BERGEY & R.R.HERR:Microbiological
pro-duction of 5-azacytidine.II.Isolation and chemical
structure.ditto 625∼630,1967.
Streptoverticillium ladakanus var.ladakanusの 培
養 濾 液 か ら 活 性 炭 吸 着,ア セ ト ン 水 溶 出 に よ つ て 抽 出, パ ー テ ィ シ ョ ン ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 精 製 さ れ,U-18, 496の 名 が 与 え ら れ た 。 白 色 結 晶 で,水 に 約40mg/ml, メ タ ノ ー ル,ア セ ト ン,ク ロ ロ フ オ ル ム 等 に 約1mg/ml 溶 け,酸 性 お よ び 塩 基 性 で 速 や か に 分 解 され る 。 紫 外 部 吸 収 極 大 を241mμ(水),249mμ(0.01NHCI),253mμ (0.01NKOH)に も ち,[α]25D+39°(c1,H2O),C8H12-N4O5,m.p.228∼230℃ で,構 造 研 究 の 結 果,5-Azacy-tidineで あ る こ と が 確 め ら れ た 。 完 全 な 合 成 培 地 で 大 腸 菌 を0.01,Salm.gallinarumを0.08,S.schottmue-lleriを0.01,Pr.vulgarisを0.005mcg/mlで 阻 止 す る が,ブ イ ヨ ン で は50∼>200mcg/mlを 要 し,大 腸 菌 を 試 験 菌 と す る 生 物 学 的 検 定 で2mcg/mlを 検 出 す る 。 5-Azacytidine 0.5mcg/mlの 大 腸 菌 に 対 す る 阻 止 作 用 は,ピ リ ミ ジ ン 類 に よ つ て 失 わ れ,Cytidine,Uridine の 作 用 が 最 も 強 く,100μMに ょ つ て95%お よ び92% の 発 育 を み と め る。 マ ウ ス の 大 腸 菌 実 験 的 感 染 に 対 す る 効 果 を み と め ず,KB細 胞(液 体 培 養)の 発 育 を 阻 止 し (ID500.2mcg/ml),マ ウ ス のT-4リ ンパ 腫 お よ びL-1210白 血 病 に 対 し て1日1.25∼5m9/kg7日 間,腹 腔 内 注 射 で 有 意 な 延 命 効 果 を み と め た 。(八 木 沢 抄)