直交異方性および極異方性コイルばね中の表面き裂の応力拡大係数
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(2) 102. 考える場合が多い7).そこで,本研究では,この直交異方. 2.異方性材料の弾性論. 性材料に対しては,材料の応力とひずみの関係を次の式(6). 2.1 極異方性弾性材料の応力とひずみの関係. 及び式(7)で表し,2.1 項の式(5)に示した極異方性材料の. 線形弾性体は,一般に等方性材料と異方性材料に分類さ. 弾性係数マトリックスの径方向(r 方向)及び接線方向(θ. れ,異方性材料はさらに直交異方性材料,横等方性材料,. 方向)の成分が等しくなると仮定して,次の式(6)及び式. 極異方性材料などに分類される6)∼9).単結晶材料も弾性異. (7)で示すような正方晶系の弾性係数マトリックス 6), 9)と同. 方性を有し,9 種類の異方性を示す6)∼9). 線形弾性体では,応力とひずみの関係は,2 階のテンソ ル量である応力 σij とひずみ εij の線形関係として次式のよ. うに表される. . ・・・・・・・・・・(1). ただし,Cijkl は 4 階の弾性係数テンソルで,最右辺はアイ. 様な成分を持つ直交異方性材料を想定した.ただし, 式(7) 中の E と ν は素線面内のヤング率とポアソン比,E’と ν’ は素線軸方向のヤング率とポアソン比を表す.いま,素線 軸に原点を置く円筒座標系 O-rθz で表した r 方向と θ 方向. のヤング率をそれぞれ Er と Eθ,素線軸方向(z 方向)のヤ ング率を Ez とすると,E=Er=Eθ,E’ =Ez であり,ν は r 方向及び θ 方向のポアソン比,ν’は z 方向のポアソン比で ある.. ンシュタインの総和規約を適用した表式である. さて弾性係数テンソル Cijkl の成分は 34=81 個あるが,. 弾性ひずみエネルギーの性質とせん断応力及びせん断ひず. みの対称性から独立な成分の数は 21 個となる6).また,. . ・・(6). せん断応力及びせん断ひずみの対称性から,応力テンソル 及びひずみテンソルの独立な成分は 6 個となるので,応力 及びひずみを,以下で述べるフォークト表記6)によって,. ただし,. ベクトルのように 1 つの添字で表す. フォークト表記では,2 階のテンソルの各成分を表す 2 個の添字をベクトル(1 階のテンソル)の各成分を表す 1 個 の添字に次の関係を使って変換する. 11 → 1,22 → 2,33 → 3,23 → 4,31 → 5,12 → 6 ・・・(2) すなわち,デカルト座標系 O-x1x2x3 上の応力テンソルを フォークト表記で行ベクトルとして表せば, . (3). ・・・(7). . さらに,応力とひずみの関係を,局所的にばね素線軸を z 軸とした円筒座標系 O-rθz で表し,せん断ひずみを工学 ひずみ γθz, γzr, γrθ, で表すと, . (4). 従って,円筒座標系で表した一般の異方性(極異方性) の応力とひずみの関係(構成式)をマトリックス表記する と次式が得られる.. 3.有限要素法(FEM)解析 3. 1 異方性材料製圧縮コイルばねの FEM モデル. . ・(5). FEM 解析には,汎用有限要素法ソフト ANSYS 17 を用 いた.本研究で用いたコイルばねの 3 次元 FEM モデルを Fig. 1 に示す.ばねモデルの諸元は,前報 3),4)までのそれ らと同じ値に設定した.すなわち,コイル半径 R=12 mm,. 2.2 直交異方性弾性材料の応力とひずみの関係. ピッチ p=18 mm,巻き数 n=5,素線径 r=2 mm である.. 引抜加工を施された鋼の弾性係数の異方性については,. コイルばね本体は,半径 R=12 mm の螺旋上に 1 巻き当. 定量的データが少ないのが現状である10)が,その弾性モデ. たり 36 個のキーポイントを配置し,それらの点を中心と して,素線径 r=2 mm を半径とする円断面を螺旋に沿っ. ルとしては,極異方性材料のうち,径方向,周方向および 長軸方向に垂直な 3 つの対称面を有する直交異方性材料を. てスウィープし,素線軸の長さを弧長 πR/18 とする円筒.
(3) ばね論文集 第 65 号(2020). 103. Fig. 1 A whole view of the present coil spring model and a semi-elliptic surface crack model embedded in the spring model.. Fig. 2 3D FEM model of the lower hook portion.. を作製して,これらの円筒 36n 個をつなぎ合わせて作製し た.コイルばね両端のフック部は,Fig. 2(a)及び(b)に 示すように,①の部分で半径 R/3=4 mm の円弧でコイル の螺旋からコイル中心に向かう部分円筒群を作製し,②の 部分でこの部分群から半径約 9.6 mm の円弧で円筒コイル 径中心軸と一致する中立軸を有する直線状部分円筒と接続 させ,コイルばね両端のフック・モデルを作製した.これ らの部分円筒は,1 辺の平均長さ約 0.5 mm の 4 面体 2 次 要素で分割し,各部分円筒に局所極座標系を設定し,前章 で説明した 2 種類の異方性弾性係数マトリックスの成分を 与えた.境界条件は,Fig. 1(b)に示すように,上部のフッ ク端面を全自由度固定し,下部のフック端面に一軸圧縮荷 重 P=100 N を負荷した.. Fig. 3 A local domain containing a semi-elliptic surface crack embedded in a global domain of a coil spring.. 3. 2 半楕円形表面き裂の FEM モデル. コイルばね長中央の素線表面近傍の体積の 1 部を 1 つの小. 厚みのないき裂を持つ部材の有限要素モデルを製作して. 領域(local domain)として切取り,この小領域と同形同大. ねじりを加えた場合,き裂面同士が接触して,解析ができな. の領域を別途用意し,この小領域中に半楕円形表面き裂を. いか,または計算に支障をきたすことがある .そこで,本 研究では,Fig. 1(a)に示すような,き裂前縁の開き角 ψ が. 作製して,切取った小領域のあった空間にはめ込んで本体. 11). (global domain)と結合させ,き裂入りコイルばねモデル. 17° と鋭角で,幅 t=0.06 mm の非常に薄いスリット(近似き. を作製することにした.ばね素線中に埋め込んだ小領域と. 裂)によりき裂の応力拡大係数及びその修正係数を求める. 半楕円形表面き裂の一例を Fig. 3 に透視図として示す.ま. こととした.この近似の妥当性については前報3)において. た,半楕円形表面き裂とそれを含む小領域の要素分割図の. 比較解析を行い,ψ=17° ,t=0.06 mm のスリットにより. 一例を Fig. 4 に示す.近似き裂前縁近傍はそこでの応力. 良好な近似値が得られるものと判断された.従って,本論. 状態を十分近似できるよう平均寸法 0.012 mm の微細な 4. 文では,以後,「近似き裂」を単に「き裂」と呼ぶことに. 面体 2 次要素で分割した.他方,それ以外の小領域部は平. する.本研究では,応力拡大係数の値に及ぼす種々のパラ. 均寸法 0.12 mm の 4 面体 2 次要素で分割し,小領域以外. メータを調べるために,多種多様な半楕円形の近似表面き. の部分は平均寸法 0.5 mm の 6 面体 2 次要素で分割した.. 裂モデルを作製する必要がある.そこで,き裂モデルを効 率的に作製するため,Fig. 1(b)及び Fig. 3 に示すような,.
(4) 104. Fig. 4 Finite element discretization of an semi-elliptic surface crack including the local domain.. 3.3 応力拡大係数修正係数の計算. Fig. 5 Eccentric angle φ and local Cartesian coordinates O-ζηζ set on the periphery of a semi-elliptical surface crack on the inside surface of a tension coil spring.. Fig. 1(b)にコイルばねの FEM モデル,Fig. 1(a)にば ね巻き線方向と θ だけ傾いた半楕円形表面き裂,及び表面 き裂の拡大図とその主な諸元を示す.また,Fig. 5 にばね. ただし,. はワールの修正係数12),r はば. 素線断面の半楕円表面き裂及びき裂前縁上の局所座標系 (ξ, η, ζ)を示す.. ねの素線径,R はばね巻き半径,s はばね指数(s=R/r), P は負荷圧縮荷重である.. 圧縮コイルばね中の半楕円形表面き裂前縁に沿った応力. 前報4)の等方性弾性材料を素線とする圧縮コイルばね中. 場は混合モード状態になっているため,3 つの独立な応力 拡大係数 KI,KII 及び KIII を次の式(8)によって応力外挿法. の半楕円表面き裂の応力拡大係数のパラメータ解析によっ. によって求めた.. て,コイル内側の素線表面上のき裂の応力拡大係数は,コ イル巻き線方向に対するき裂傾斜角(Fig. 1(a)参照)θ に 大きな影響を受け,モード I 応力拡大係数の修正係数 FI. の値は,き裂面が無き裂状態の素線表面の最大主応力方向 . ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8). とほぼ垂直な方向に配向しているときに最大値をとること が明らかとなった.そこで,本報では,コイル内側の素線 表面上で無き裂状態の最大主応力方向と垂直な方向に配向. ここで,ξ はき裂前縁からの距離,σζζ は ζ 方向の垂直応力, τξη は素線断面の面内せん断応力,τηζ は素線断面における. する半楕円形表面き裂の応力拡大係数のき裂前縁に沿う分. =0° , 45°, 90°, 135°, 180° に対する値を求め,次の式(9)の. 比 a/c は a/c=1=一定とした.. 修正係数で正規化して表した.ただし,き裂前縁と素線表 面の交点は近似的に φ =0° 及び 180° と表した.. 3.4 解析に用いた弾性係数マトリックスの成分. 面外せん断応力である.KI,KII 及び KIII の値は,離心角 φ. 布に及ぼす異方性の影響を調べることとした.なお,表面 き裂の表面半長 c に対する深さ a の比,すなわち,き裂縦横. 2 章で説明した 2 種類の異方性弾性係数マトリックスを 有する素線で作製された圧縮コイルばねの応力・変形特性 の比較を容易にするために,本報では,直交異方性材料の. . ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9). 弾性係数を基にして,以下に述べるように,極異方性及び 直交異方性弾性材料モデルを作製して,FEM 解析を行い, 圧縮コイルばねの応力・変形特性に及ぼす異方性の影響を. ここで,a はき裂深さ,σ1 はき裂中心位置での無き裂コイ ルばねに生じる最大主応力であり,本論文では,モールの 応力円から,次の式(10)のせん断応力 τ と等しいことが. 調べた. (1)ケース 1:極異方性弾性材料 前報5)で,円筒座標系で表した一般の異方性(極異方性). 分かるから,有限要素解を用いず,σ1=τ として修正係数. 弾性材料として,各応力拡大係数の修正係数に及ぼす弾性. の値から応力拡大係数の算出が 簡単な計算で求められる よう配慮した.なお,τ はき裂中心位置での無き裂状態の. 係数マトリックスの各成分の影響を調べ,各応力拡大係数 の修正係数は C45 成分の値に特に強く影響され,それ以外. せん断応力であり,次式で求められる12).. の成分の影響は大きくないことが明らかとなった. ただし,. . (10). 前報では,等方性材料との比較・検討に焦点を当てたため に,弾性係数マトリックスの対角成分と非対角成分の C12 (=C21),C13(=C31),C23(=C32)の値を等方性弾性材料の.
(5) ばね論文集 第 65 号(2020). 105. Table 1 Correction factors for the three modes of stress intensity factors FI, FII and FIII for semi-elliptic surface cracks on the inside surface of a compression coil spring having a cylindrical anisotropy as functions of the component of the and crack eccentric angle φ. stiffness tensor C45 in Eq.(11). それらと等しくし,それ以外の非対角項成分の値を変化さ せて各応力拡大係数修正係数に及ぼす影響を調べた. 本報では,①直交異方性弾性材料の場合と比較をするた め,および②前報で特に大きかった C45 成分の影響を見る ために,次の式(11)で表される応力−ひずみ関係式を採 用した.. 式で表されるものとした.本研究では,両式中の成分の値 を Ez=E’ =200 GPa=一定 , ν=ν’ =0.3=一定に設定して,. Er=Eθ=E の値を 120, 150, 180, 200 GPa の 4 段階に変化さ. せて,各応力拡大係数の修正係数に及ぼす影響を調べた.. 4.解析結果とその考察 4.1 極異方性弾性係数マトリックスの成分 C45 を変化さ せた場合の影響. . ・・・・(11). Table 1(a)∼(c)に,式(11)に示した極異方性弾性係 数マトリックスの成分(弾性定数)C45 の値を 0, 30, 50, 55, 58, 59 GPa の 6 段階に変化させたときに得られる,極異方 性弾性圧縮コイルばねスパン中央(n=3)におけるコイル. ただし,本研究では,鉄鋼材料を想定して,式(6)及び式(7) 中の弾性係数マトリックスの成分の値を Er=Eθ=E=200 GPa, Ez=E’ =200 GPa=一定,ν=ν’ =0.3=一定に設定して,C45 の値を 0 ∼ 59 GPa の 6 段階に変化させて,各応力拡大係. 数の修正係数に及ぼす影響を調べた.また,C45 の値の設 定には,FI,FII および FIII に対する影響が顕著となること. 内側の半楕円形表面き裂前縁に沿う 3 種類のモードの応力 拡大係数の修正係数 FI,FII および FIII の値を離心角 φ の 関数として表に示す.また,Fig. 6(a)∼(c)に,その表面 き裂の 3 種類のモードの応力拡大係数の修正係数と離心角 φ の関係を,C45 成分の値をパラメータとして,φ に関す る 4 次曲線として表した線図を示す.. を考慮して,C45=55 ∼ 59 MPa の範囲で C45 の値を小刻み. Table 2 には,最小二乗法によってフィッティングして. に変化させて,C45=0, 30, 50, 55, 58, 59 GPa に設定した.. 求めた 4 次曲線を表す 4 次式の係数の値とこれら 4 次式に. (2)ケース 2:直交異方性弾性材料. よるフィッティングの良否を判断するパラメータとして相. ばね素線の材料は素線に沿った円筒座標系を持つ正方晶7). 関係数13)の絶対値 |ρ| を示す.表に示したほぼすべての場. を想定し,弾性係数マトリックス成分は式(6)及び式(7). 合に対して,|ρ| > 0.96 となったことから,極異方性弾性.
(6) 106. Table 2 Coefficients of the quartic functions of crack eccentric angle φ for fitting the relationships between correction factors FI, FII, FIII and the angle φ for semi-elliptic surface cracks on the inside surface of a cylindrically anisotropic 4 =I, II and III)and |ρ| is the absolute value of the compression coil spring; i.e., Fi = a0 + aiφ + a2φ2+ ・・・+a4φ(i correlation coefficient indicating the goodness of the curve fittings. The expression 7.09−1 in the table below, for example, means 7.09×10−1.. Fig. 6 Variations of the correction factors FI, FII and FIII with the eccentric angle of semi-elliptical surface cracks on the inside surface of a cylindrically anisotropic compression coil spring.. Table 3 Correction factors for the three modes of stress intensity factors FI, FII and FIII for semi-elliptic surface cracks on the inside surface of a compression coil spring having an orthotropic anisotropy as functions of Young’ s modulus in the radial and the tangential directions in Eq.(6) and crack eccentric angle φ..
(7) ばね論文集 第 65 号(2020). 107. Table 4 Coefficients of the quartic functions of crack eccentric angle φ for fitting the relationships between correction factors FI, FII, FIII and the angle φ for semi-elliptic surface cracks on the inside surface of a cylindrically anisotropic 4 =I, II and III)and |ρ| is the absolute value of compression coil spring; i.e., Fi = a0 + a1φ + a2φ2+ ・・・+ a4φ(i the correlation coefficient indicating the goodness of the curve fittings. The expression 8.67−1 in the table below, for example, means 8.67×10−1.. Fig. 7 Variations of the correction factors FI, FII and FIII with the eccentric angle of semi-elliptical surface cracks on the inside surface of an orthotropic compression coil spring. 圧縮コイルばね中の表面き裂の各モードの応力拡大係数の 修正係数は,離心角 φ の 4 次式で表されるものと判断さ れる. Table 1(a)及び Fig. 6(a)から,モード I 応力拡大係数 の修正係数 FI の値は,C45=0 GPa のとき,φ の値によら. パン中央(n=3)におけるコイル内側の半楕円形表面き裂 前縁に沿う 3 種類のモードの応力拡大係数の修正係数 FI,. FII および FIII の値を離心角 φ の関数として表に示す.また,. Fig. 7(a)∼(c)に,その表面き裂の各モードの応力拡大 係数の修正係数と離心角 φ の関係を φ に関する 4 次曲線. ず FI=0.7 ∼ 0.9 程度の値をとったが,C45 の値が増加する にしたがって FI の値は,素線表面近傍(φ=180° )を除い. として表した線図を示す.. てき裂前縁全域にわたって減少した.これに対して,φ=. ティングの良否を判断するパラメータ |ρ| の値を示す.表. 180° では,C45 成分の値に関わらず,FI ≒ 0.7 となった.. に示したすべての場合に対して,|ρ| > 0.96 となったこと. 他 方,Table 1(b) (c)及 , び Fig. 6(b),(c)か ら,C45=0 ∼ 50 GPa に対しては,FII 及び FIII の値は,離心角 φ の値. から,直交異方性弾性圧縮コイルばね中の表面き裂の各 モードの応力拡大係数の修正係数は,離心角 φ の 4 次式. 全般,すなわち,き裂前縁全域にわたってほぼ FII ≒ 0, FIII ≒ 0 となった.しかし,C45=55 ∼ 58 GPa に対して,φ=30°. における FII の値は,C45 の値とともに急増し,C45=58 GPa のとき最大値 FII ≒ 1.03 をとった.これに対して,φ=30°. また, Table 4 には, 4 次曲線を表す 4 次式の係数とフィッ. で表されるものと判断される. Fig. 7(a)∼(c)より,3 種類のモードの応力拡大係数の 修正係数のき裂前縁に沿う分布(Fi -φ 曲線;i=I, II, III)は,. Fig. 6(a)∼(c)に示した極異方性圧縮コイルばね中の表面. における FII の値は,C45 の値とともに減少し,C45=58 GPa のとき最小値 FII ≒−0.86 をとった.また,FIII の値は,C45. き裂とは異なる分布を示した.すなわち,直交異方性圧縮. =55 ∼ 58 GPa に対して,φ=60° に対してのみ特異な挙動. モード I が他のモードに比べて卓越して大きくなった.ま. を 示 し,C45 の 値 と と も に 減 少 し,C45=58 GPa の と き FII ≒−1.04 をとった.. た,モード I 及び III の場合,φ=90° (き裂最深点)に関し. コイルばね中の表面き裂の応力拡大係数の修正係数は,. てほぼ左右対称な分布となっているのに対して,モード II. 4.2 直交異方性弾性係数マトリックスの成分 Er=Eθr= E を変化させた場合の影響. の場合には,φ=90°に関してほぼ反対称な分布となった. モードⅠ応力拡大係数の修正係数 FI の値は,φ=30°,. Table 3(a)∼(c)に,式(6)及び式(7)中の成分の値を Ez=E’ =200 GPa=一定 , ν=ν’ =0.3=一定に設定して,Er. 150°で極大値,き裂最深点(φ=90° )と素線表面近傍(φ= 0°, 180° )で極小値をとり,極大値は E の値が増加すると. =Eθ=E の値を 120,150,180,200 GPa の 4 段階に変化. させたときに得られる,直交異方性弾性圧縮コイルばねス. 僅 か に 減 少 し た. す な わ ち,E=120 GPa で FImax ≒ 0.93 に対して,E=200 GPa では約 5 %減少して FImax ≒ 0.88.
(8) 108. となった.E=200 GPa の場合,材料は等方性と見なせる ので,方向による弾性係数の差が大きくなった場合でも修 正係数 FI ないしは応力拡大係数 KI の値は等方性材料のそ れらの値と大きくは変わらないことが明らかとなった.こ の結果は,極異方性の場合,C45 の値が減少すると FI ない. しは KI の値が大きく増加したこととは大きく異なる傾向 である.. モード II 応力拡大係数の修正係数 FII の値は,φ=0°の 素 線 表 面 近 傍 で FII≒−0.078(E=200 GPa)∼−0.16(E= 120 GPa),φ=180°の素線表面近傍で FII≒0.035(E=200 GPa)∼ 0.15(E=120 GPa)となり,他の φ に対しては,FII≒. 0 となった. モード II Ⅰ応力拡大係数の修正係数 FIII の値は,φ=0° 及び 180°の素線表面近傍で最大値をとり,この最大値は E の値が大きいほど小さかったが,高々 FIII≒0.16 だった.. また,き裂最深点で FII の値は最小値をとり,E の値にほ とんど関わらず,FIII≒0 となった.. 5.結 言 本研究では,極異方性及び直交方性を有する素線からな る圧縮コイルばねのスパン中央コイル内側表面に半楕円形 表面き裂を作製して,3 次元有限要素法による応力解析を 実施し,き裂縁に沿う 3 種類のモードの応力拡大係数に対 する修正係数 F(i=I, II,III)の分布を求め,各修正係数 i に対する異方性弾性定数の影響を比較・検討した結果,以 下の結論を得た. 1)極異方性及び直交異方性圧縮コイルばねのコイル内側 素線表面上の半楕円形表面き裂の 3 種類の応力拡大係 数の修正係数のき裂前縁に沿う分布は,離心角 φ の 4 次式で表わされることが示された. 2)極異方性弾性体としては,直交異方性と同じ弾性係数の 成分のほかに C45 成分を加えたモデルを採用し,この C45 の値を 0 ∼ 59 GPa の 6 段階に変化させたところ,モー ド I 応力拡大係数の修正係数 FI の値は,C45=0 GPa の. とき FI=0.7 ∼ 0.9 となったが,C45 の値が増加するにし. たがって FI の値は,素線表面近傍(φ=180° )を除いて き裂前縁全域にわたって減少した.φ=180°では,C45 の値に関わらず,FI ≒ 0.7 となった.他のモードの修正 係 数 FII 及 び FIII の 値 は,C45≦50 GPa に 対 し て,|FII|, |FIII| < 0.2 となったが,C45 > 55 GPa に対しては,部分 的に |FII|, |FIII| >1 となることが分かった. 3)直交異方性圧縮コイルばね中の表面き裂の応力拡大係 数の修正係数は,モード I が他のモードに比べて卓越し て大きくなったが,高々 0.9 程度の値にとどまった.ま た,直交異方性によって,素線径方向及び周方向のヤ ング率と軸方向のヤング率の値の差が大きくなった場 合でも修正係数 FI ないしは応力拡大係数 KI の値は等方 性材料のそれらの値と大きくは変わらないことが明ら かとなった.. 参考文献 1) ばねの耐久性に関する調査・研究委員会,ばね論文集, No. 37, (1992) ,89. 2) 日本材料学会, ” フラクトグラフィ” , (2000) , P. 298, 丸善. 3) 中曽根祐司,村主和憲,ばね論文集,No. 62, (2017) , 37. 4) 中曽根祐司,村主和憲,ばね論文集,No. 64, (2019) , 79. 5) 中曽根祐司,村主和憲,日本ばね学会 2017 年度秋季ば ね及び復元力応用講演会講演論文集 (2017) ,21. (ばね論 文集に掲載予定. ) 6) 中曽根祐司編著,”異方性材料の弾性論, ” (2014) ,P. 75,コロナ社. 7) Lekhnitskii, S. G., “Theory of Elasticity of an Anisotropic Body,” (1977) , P. 308, Mir Publishers. 8) Ting, T. C. T.,“Anisotropic Elasticity: Theory and Applications,” (1996) , P. 7, Oxford UP. 9) Rand, O. and Rovenski, V.,“Analytical Methods in Anisotropic Elasticity: with Symbolic Computational Tools,” (2005) , P. 58, Birkhaeser. 10) 例えば,技術資料 「金属材料の弾性係数」 出版分科会編, 技術資料 金属材料の弾性係数, (1980) ,P. 14,日本機 械学会. 11) 石田誠, ” き裂の弾性解析と応力拡大係数” , (1976) ,P. 210, 培風館. 12) 日本ばね学会編, ” ばね” ,第 4 版, (2008) ,P. 181, 丸善. 13) Lancaster, P. and Šalkauskas, K.,“Curve and Surface Fitting: An Introduction,” (1986) , P. 53, Academic Press..
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