Title
西双版納州水タイ族の祭祀活動と植物
Author(s)
益山, 樹生; 劉, 剛
Citation
沖縄大学地域研究所所報(21): 1-13
Issue Date
2000-10-06
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/8781
Rights
沖縄大学地域研究所
西双版納州水 タイ族の祭紀活動 と植物
生
剛
樹
山
益
劉
は じめに J.Frazer(1922)は、
F金枝 篇A(1)の中で、古代 アー リア民族 は樹 木崇拝の念が 強かったこと、とりわけ撲樹Que
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L.聖木 と し、それ に寄生 す る榔 寄生vi
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L.をその堅木の生命の象徴 として崇めた ことを指摘 した上 で、 当時 の撲樹の森の守護職がそれ らの技 を用いて行った職位継承儀式 に見 られる様式が、そ の後の古代ギ リシャか ら近代 に至 るヨーロッパの歴史の中で見 られる様 々な祭紀活動 の原型 となっていることを見事 に論証 した。このよく知 られた大著が示す ように、 日 常の祭紀活動 に植物が何 らかの形で用い られるのはご く普通のことである。そ して、 その植物の用い られ方の比較 を通 して、民族間の祭紀活動の類縁性や分化の方向 を探 ることがある程度可能である。 筆者 らは1992年か ら1996年にかけて数次にわたって云南省西双版納 タイ族 自治州 に 滞在 し、そこで行われる祭紀活動について詳 しく見聞する機会 を得た。同州 には、漢 族の他に十数余の少数民族が生活 している。中で も北部に限定的に生活する花腰 タイ 族 と中 ・北部に広 く生活する水 タイ族か らなるタイ族は最大の人口を擁する民族であ る(2)。同州のタイ族の社会に関 してはこれまで多 くの研究がなされてお り、その祭紀 活動に関する研究 も少な くない。 しか し、祭紀活動 に用い られる植物 に関 しては、他 の少数民族の場合 と同様に、研究例はほとん どない。本論文は、同州の水 タイ族 を対 象に、その点 を明 らかに しようとするものである。 同州の水 タイ族のほとんどは/」、乗仏教 を信仰するo従って、村の祭耐 舌動の多 くは 仏教活動の形 をとって行われている。 しか し、それ とは別に、古 くか らの土着信仰(3) に基づ く祭祀活動 も多い。本論文では、水 タイ族の祭紀活動 を稲作祭耐 舌動、 日常生 活祭紀活動、仏教祭紀活動 に大別 し(4)、それぞれの祭紀活動の うち植物が よ く用 い ら れる例 を取 り上げて、 どの ような植物が どの ように用い られているかを明 らかにする。 そ して、その上で、それ らの植物が用い られる意図について総合的な考察 を試みる。 本論文ではタイ語はローマ字で表記 した。表記 に当たっては、長音 はその母音 を重 ねて表 し (例 えばhaa)
、促音 はそれに続 く子音 または母音 を重 ねて表 した (例 えばno
g
gu
i
)
。ただ し、促音で終わる語の場合は語尾の母音 にt
t
をつけて表 した (例 えばha
ol
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t
)
。 また、高音はその母音の上に 'を付 して表 した。また、発音 の誤 りを 避けるために、必要に応 じて音節の区切 りを_で しめ した。 なお、祭紀活動 に用い られていた植物の うち、現地で採集可能なものはで きるだけ 採集 して乾燥標本に して残 した。それ らはすべて云南民族学院民族博物館 に研究資料-1-として納め られている。
Ⅰ.稲作無死活動 と植物
1
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EEl植 えの時は
、hdunaa (
hou
は頭、naa
は水 田の意味 ) と呼 ばれ る特別の田の角 につ くりものを立ててか ら稲 の苗 を植 え始める。これをhe
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は始 めるの意 咲)とい う.稲 の豊作 を祈願するため とも、稲の魂であるyaakwまnhao(
yaa
は母、kwan
は魂、hao
は稲の意味)を田に招 くため ともい う。つ くりもの には次の ような ものがある。ノ
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直 径10c
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の 項 を参 照 )の ふ ち をh
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白茅、禾本科) の葉でかが り、それにyaami
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豪文 、菊科 )の 茎 を通 して柄 に した もの。ノ
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:直径3
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ほどの大 きなt
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を2m
ほどの高さ の木の枝 につけた もの。用い られる木の種類 は年毎 に決 まっていて(5)、1
2
年で一巡するとい う(量輿、量亮傘 )。ただ し、 その年の木が 身近 にない ときは
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異色慣衛茅、衝茅科)を用いることが多いO また 、 常 に枝 葉 つ きの 竹 (多 くはmai
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小葉龍竹 、禾本科)を用いる村 もある。枝か らは竹 ヒゴの希 を連ねた鎖 と竹 ヒゴを二又状 に編 んで連ねた鎖が垂 らされ、通常、連絵鎖の先端 には鶏卵の殻ノ が、二又状鎖 の先 には竹 ヒゴ製の魚のつ くりものが吊される。鎖はs
oi
と呼 ばれる。ノ
ノ ノ村人は、苗の植 え付 けに先立って
、holnaa
の角に4
本の1
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na
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を挿 してmai
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ノ
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と呼ばれる木綿糸でつな ぎ、そばの畔に
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を立 て る。 そ してノ、mai
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ノ
で囲 んだ ところか ら苗 を植 え始める。ただ し、村 によっては、l
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は立 てず にl
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を挿すだけで済 ませ るところ もある。また、村 によっては
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をhduna
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の畔に 特別に植 え られたya
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(L.)DC.
射干、鳶尾科 )の そばに立てる。また、地域 によっては、l
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の代わ りに、1m
ほどの竹竿 の先端を4
つ に割 って、割竹で編 んだ方形の棚 を挟み込 んだ もの を、h6una
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に立 てる。その とき、チマキなどと一緒 に、mooha
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黒 葉駁骨革 、爵床科)、b
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L.芦子 、胡槻科)、maapi
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L.妹轍 、茄科)などの葉 を棚 に供 える
。bai
(芦子)の葉 は、楕櫛 の殻果 を包んで 噛むのに 日常 よ く使われる ものである。ノ
2.dant
an-
na且
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は供物 を捧 げる、t
an
は拝む、naa
は水 田を意味す る。 田の稲 が穂 ば らみ始め る頃に行 われる。稲 の虫避け、病避けを祈願すると同時に、家の安 タイを祈願する。当 日朝、村人は、籾 と精米、紙幣つ きの ロー ソク、川砂 (村 に よっては短 く切 った
baa
(白茅 )の茎 を混ぜ る)の他 に、次の ようなつ くりもの をもって寺廟 に集 まる。ノ
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の ときに用いた もの と同 じ.ノ
ノ
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の ときに用いた もの と同 じ。ただ し、木 はmai
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Mill.壇唐木 、漆樹科)を使 う。hou-
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1m
ほどの竹竿の先端 に割 り竹で作 った小 さな両 を据 えた もの。s
on:
先端部 を細 く割 って円錐形のカゴに編 んだ1m
ほ どの竹竿。供物 を入れる。t
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6
)
:折 った竹 ヒゴ6本、あるいは幅広の竹 ヒゴ多数 を、六角形 の 目が で き るように組 んだつ くりもの。haahyGu:haa
(白茅)で掬 った細縄。普通、右巻 きに掬 う。ノ
式に先立 ち、寺 廟 内 にmai
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(木綿 糸 ) を張 り巡 ら し、その一端 をKwan
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L.三葉蔓荊 、馬稚革科)の枝が入れてある水壷 につ なげる。村人 は籾 、ノ
精米 を紙幣つ きの ローソクなどと一緒 に仏前 に供 え、l
i
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on
を中央 に ま とめて立 て かけて、僧侶 とpio-
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(僧侶か ら還俗 した知識者で、村 の活動 を と りしきる)がノ
′ 念経するのを拝聴す る。念経が終 わるとノ
、poot
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nがKwant
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の枝で壷の水 を村人 とl
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にかけて回 り、式 は終わる。式の後、村人は持 ち帰 ったt
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を家の居 間のノ
入 り口の上や穀倉 な どにつける。その後で田に出向 き′
、hounaa
には、hou-
dyuf
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を挿 し、その他の田にはl
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を1
本ずつ挿 して回る。挿す ときは、砂 を まきなが ら虫避 け、病避 けの唱えごとをす る。
家の居間の入 り口の上の
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にはhaahyこ
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ノ
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を通 し、 それで家 を囲ノ う よ うにす る 。 そ の と きt
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に しば しばKwant
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(三 乗 蔓 荊 ) の 小 枝 やf
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L.海鳥綿、錦莫科の、実か ら得た綿)が添 え られる。 蜂 の 巣やhe
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仙影拳類、仙人掌科 )を添 える家 もある。ノ村によっては
、hounaa
にはl
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だけ、あるい はノ
hou-
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だ け を挿 す と ころもある。 また、he
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の ときに立 てたl
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の基部 にmai
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(異色仮衛 茅)やmai
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(塩膚木 )やmai
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麻撲 、 山毛 樺科)などの枝 を くくりつける村や、l
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のそばに柑橘 類 の実 を先端 に挟 ん だ棒ノ(
houf
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とい う)を挿す村 もある。 また、地域 によってはl
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などを立 てず に、 た んに竹竿の先端 を2
つ に割 って、そ こにb
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L.紅 睡蓮 、睡蓮科 ) の葉やguohi
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a L.鉄 刀木 、云実科 ) の花枝 な どを挟 ん だ もの をノ
hounaa
に挿す ところ もある。ノ
3.yaakwanhao
yaakwanhao
は稲 の魂 をさす呼称であるが、稲 の刈 り取 りの際 の祭紀活 動 そ の もノ
のの呼称 として も用い られる。村人は、稲 の刈 り取 りに当たって 、 まず/
。hounaa
に 立ててあるl
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の足元(
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だけの ときはその足 元 ) の稲 を一握 り-3-刈 って、その束 を
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に架ける (またはhou-
dyuf
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の中に納 める)。 それか ら刈 り取 りを開始す る。 自分の家のすべての田で刈 り取 りが終わ り、脱穀 した籾 を家 の穀倉 に搬入 し終えた ら、家の先輩の女性がhbunaa
に出向 く。出向 くときは大 きな ウチ ワを携 え、炊いたモチ米や焼 き魚 などを供物 として持 ってい く。供物 には、若いnoggui
ノ
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L働 嘗薫、草葉科 )とni
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甘煮、禾本科)の茎の先のほかに、 しば しば
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a L.青相 、見 料 )の花枝が添 えられる。そ して、それ らをl
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(またはhou-
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の前ノ
に供 え、yaakwanhao
に一緒 に家に帰 って くれる ように唱 え ご とを してか ら、架 け てある稲穂の束 を供物 と一緒 に家 に持 ち帰 る。帰 り道ではウチワで顔 を隠 し、人に出 会 って も話 を しない。家 についた ら、稲穂の束 を穀倉の新米の上 に供え物 と一緒に安 置 した り、穀倉 の中に吊 した りして紀 る。示巳った稲穂の束は、1年 間その ままに して お く家 もあるが、多 くの家はいずれ新米 と一緒 に食べ る。昔 は翌年の種籾 に混ぜて播 種 した とい う。4.haol
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hao
は稲、l
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ttは溢れることを意味する。村のすべ ての家が稲 の収穫 を終 えた 時点で行 われる。当 日、村人はチマキヤその他多 くの供物 と一緒 に新米の籾 と精米をノ
寺廟 に持 ち寄 り、寺廟内の床 にい くつかの籾 と精米の山を作 る。寺廟内にmai
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ノ
(木綿糸)を張 り巡 らし、その一端 を水壷 につ な ぐ。水壷 にはKwant
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三業蔓荊 )ノ
の枝が入れ られている。poo-
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が僧侶 と一緒 に豊作 を感謝 して念経 したあ と、壷ノ
の水 をKwant
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の枝で村 人 にか けて式 は終 わ る。村 によっては供物 にmoohよadam
ノ
(果菜駁 骨草 )の葉 を添 える こ とがあ る。 また、村 に よって は水壷 の 中 にs
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肉果金合歓 、含蓋革科 )の実入 りの英 をkwまnt
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の枝 と一緒 に入れることもある。 Ⅲ.日常生活祭祀活動 と植物ノ
1.s
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(漠称、溌水節) タイ暦では、太陽が黄道上 を移動 して自羊宮 と重 なる 日が一年の始 ま りとされる。 その 日はだいたい新暦の4
月中旬、タイ暦の6
月下旬 に巡って くる。(7)元旦の朝は、村 人が川 か ら持 ち寄 った砂 で寺廟 の庭 に大 きな堆 抄 を作 り、紙 の 幣 をつ け た棲竹ノ
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大節竹美頁、禾本科)や竹(
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真竹 類、禾本科 )を挿す.これをノdd
。とい うO堆沙 には′t
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と呼ばれる/ト幣や造花 と一緒 に、kwant
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(三業蔓荊 )の枝やI
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露兜 樹、露兜樹科 )な どの季節の花 も挿 される。寺廟にはチマキヤその他多 くの供物を持っノ
た村人が早朝 か ら集 ま り、堆抄や供物棚 にそれ らを供 える。寺廟 内 には
mai
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ノ
つなげる。壷 にはKwant
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の枝 を入れる。村人は僧侶 とpoo-
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が念経するのを座っノ
て拝聴す る。一年 の五穀豊穣 、村 内安泰 を祈願 した念経が終 わる と、poo-
t
s
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が ノKwant
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の枝で壷の水 を村人に振 りかけて回る。その後、村の内外で人々は互 い に水 をかけ合って、新年を祝 う。2.1
i
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村の祖霊であ るノ
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(またはdyur
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に村 の安 タイを祈願す る もので 、ノl
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とも1
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ともいう(
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は供物 を捧げて拝 む、pliとdyuf
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は霊ban
は村 を意味する)。タイ暦8
月前後および1
月前後、村 はずれの林の 中に作 られ た、茅葺 きや板葺 きの小 さな両の前で行われる。その両 をhou-
dyuf
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aaban
とい う。 タイ族の村の数カ所 には丸太で作 った村門があるが、挙行 の前 日、その横 にt
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ノ
(
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の項 を参照)を挿 して人の出入 りを禁ずる。そ して、当 日未明に村の老 人が′
hou-
dyuf
r
aaban
の前 に集 ま り、チマキヤ酒 な どを供 え、鶏 を殺 してその血 をpi
i
ban
に捧げた後に皆で直会 を行い、村の安 タイを祈願する。その とき、r
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主(捕 )、ノ
ノ
糸 で連 ね た
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梼 榔 、 綜 欄 科 、 の穀 果 )、 I
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金鳳花 、雲実科 )の花 枝、I
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黄花爽竹桃、爽竹桃科 )の花枝、I
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。k.黄 白妻花、萎科)の葉、moohAadam
(黒葉駁骨草)の葉 な ど が供物 に添えられることがある。′
ノ
3.gons
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muukon
gon
は三角、 saiは砂、muukdn
は一万を意味する。 タイ暦10-
11月頃、寺廟の庭 に 大 きな堆抄を作 り、各種の供 え物 を して悪霊 を追い払い、全村の安 タイを祈る。 当日朝、寺廟の庭 に人の膝丈 ぐらいの高 さの大 きな堆抄がい くつか作 られる。堆抄 にはddn
(紙の幣 をつけた接竹や竹)が挿 されノ
、mai
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(木綿糸)でつ なげ られ る。d.
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と一緒 にI
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L.失権 、錦薬科 )の花枝 も好 んで挿 される。寺廟 に来た村人は、大 きな堆抄の周 りに小 さな堆抄を家族の数だけ作 ノ り、ローソク、チマキなどを供 え、t
i
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を挿す。また、寺廟 に至る参道に割竹で編ん だ方形の板(
de
ttとい う)を敷 き、そこに家の安 タイを祈願 してチマキなどの食物 と 季節の花 を供え、悪霊払いのために天秤 カゴのつ くりもの、髪の毛、焼いた木、炭、 炭の付いた白飯 などを供 える。天秤 カゴのカゴが革 (多 くの場合、禾本科のDi
gi
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馬唐頬かPas
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pp.
雀稗頬)で作 られているものをhaayaa
、木の小枝 で 作 られて ものをhaahuu
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とい う。村人が堆抄やde
ttの飾 りを付 けを終えた ところで、 僧侶が庭 に座って念経 し、村人はそれを合掌 しなが ら拝聴す る。4.
danhbun
家の新築の さいに行われる一連の祭紀活動 を
danht
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un(
dann
は供物 を捧げること、ノ
houn
は家を意味す る)とい う。その一つに、棟上げの時に、女柱(8)に白布 を巻 きつ け、その中に数種 の植物の葉 を包み込む祭紀活動が あ る。 白布 をyenbai
s
去
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nは 布、bai
は上、S
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Oは柱 を意味す る)とい う。その 中に包み込 まれる植物 には次の よ うな ものがある。ノ
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粉芭蕉 )nよ。。i
(甘煮 )ノ
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二叉破布木、柴草科 )t
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n・版紺 竹 、禾本科)f
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(棉)ノ
この うち、nZ
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uiとnO-ooiは比較的広 く使われるが、 そのほかの ものは村 によっ て使われた り使われなかった りする。ノ. ノ
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家族 に重病 人が 出た ときや家 に不幸 が起 こった ときに行 う。行 うに当たって、ノmai
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小 葉 龍 竹 、 禾 本 科 )、mai
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中華 大 節 竹 、 禾 本 科 )、 mai
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班茅 、禾本科 ) な どの長 い竿 を何 本か束ね 、先端 にノ
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(粉芭蕉)、あるいはそれに加 えて
nO-
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(甘煮 )の若い茎の先 をつけた ものを用意す る。束ねる竹竿 は9本のことが多 く、それに皮をむいた数本の白地の棒 を加えること もある。家 によっては竹竿の各節に三角形の穴 を穿 ち、精米、籾、水 、砂 を納める。ノ
ノ この竹竿の束 をmai
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とい う。用意で きた ら、僧侶 に家に来て もらって、家 ノの祖霊
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に加護 を祈願 して もらう。僧侶 はmai
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か らmai
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(木綿糸)を延ば し、その糸で病人 を囲ってか ら、祈願の念経 を行 う。僧侶 に念経 し
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て もらったあ と、家族 は村内の大 きなguosi
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ノ 下 にmai
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iiを持 って い って立 て か け て お く。 この た め この祭祀 活 動 を ノt
anguos
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i
とも呼ぶ。 Ⅲ.仏教祭祀活動 と植物1.haowas
s
a
(漠称、関門節 ) タ イ暦9月上15日か ら3ケ月間、僧侶は寺廟 にとどまって修行を積み、村人は結婚式や家の新築 な どの祝い事 を慎 んで静か な生活 を送 る。この斎居の期間 をwassa(漠称 、 安居 または雨安居 )といい、haowassaと次 出のouwassaはそれぞれ安居入 り、安 居
ノ ノ
明けを意味す る。村人はこの 日に向けて、maikam-ノfasノiliiとgouna-munsAiと呼 ばれ るつ くりものを用意 し、寺廟 に供 える。maikam-fasiliiは、皮 をむいた白地の相棒
9
ノ ノ
本 を1mほ どに切 って束 ね た ものでノ 、yaamin (家文 )やyaamonhan(Eupatn'um
odwatum L 飛机革 、菊科 )やzaaluo-wanwai′(Tilhonia divers2foliaA,Gray腫 柄
菊、菊科 )な どの茎が使われる。gouna-munsaiは10cmてい どに切 った竹筒 を
ノ
9本1組 に し、それ を
4
組 一緒 に束 ね た もので 、 束 には若 いnoggui(粉 芭蕉 ) とnd-ooi(甘煮 )の茎の先 を挟み、束の各組の竹筒 には水 、砂 、精米 、籾 を入 れ る。上15日の 朝、村人はチマキヤその他多 くの供物 を持 って寺廟 に集 ま り、僧侶 とp60-tsanが念 経するのを拝聴 し、拝仏す る。老人はその後毎週
1
回、交代 で寺廟 に泊 まって念経 を 行 う。これをノ dokushiとい う。dokushinはwassaの期 間 中続 け られ るが 、 その際 にノchendinshan(MirTlayaPaniculata(L)Jack九 里 香 、 芸 香 料 ) の花 枝 やIuoliiluu
(Grinumasiaticum L.var.sinicum Baker文殊蘭、石蒜科 )やbムu(紅 睡蓮 ) の花 などを好んで仏前 に供 える。
2.ouwassa(漠称 、開門節 )
タイ暦12月上15日にwassa(haowassaの項 を参照 ) は終 わ る。 この 日をouwassa ノ ノ
とい う。当 日、村人はノ maikam-fasiliiやgouna-munsAiを持 って寺廟 に集 ま り、僧侶 とpoo-tsanが念経す るのを拝聴 し、拝仏す る。 この 日に寺 廟 の庭 に大 きな堆 抄 を作 るところが多い。椎抄はひとつで′ 、gonsよimuukonの ときと同 じようにdoよやtil占nや 造花で飾 られ、lu0-mailian (宋棲 )の花枝 も好 んで挿 される.村 に よって は、一振 りぐらいの太 さの木 を切 って皮 をはいだ白地の長い棒 を、寺廟のそばの菩提樹 にたて かける.棒の上部 には若いノ ノ ndggui(粉芭蕉 )の茎の先 をつ け る。 この棒 をmaikam-ノ fasiliilonと呼ぶ 。 また、村 に よっては、 この 日に柴焼 きをす る。穂 の 出 たmaiou (斑茅 )の長い幹 を切 って束ねた ものをあ らか じめ用意 し、寺廟 の庭 や近 くの広場 に 円錐状 に寄せ集めて櫓 を組 む。その回 りにチマキヤバ ナナな どの食べ物 を供 え、寺廟 ノ での式が終わった ところで燃やす。この柴焼 きのことをhao-suumalonとい う。 3.dantan なにか祈願 したいことが生 じた とき、寺廟 に詣でて、紙幣やチマキな どの食べ物 を 入れた供物 カゴを供 え、僧侶 に念経 して もらう。 これ をdantanとい う。danは供物 を捧 げる、tanは拝 むことを意味す る。その とき、供物 カゴの中に、 い くつ かの草 木 の葉 を添 えることがある。例 えば、次の ような ものが用 い られる。 ノ
Iuupon(ノPetr10SPenLmum lanceofolium Roxb.窄葉半楓荷 、梧桐科 ) fuublott(EkzeagnusgonyanthesBenth角花胡規子 、胡頼子科 )
-7-yokk
占a(
ノ
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竹葉轍 、芸香料 )gas
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L.老親畑簡花、紫威科)mat
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昌
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phusma
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naLam.
緬乗、鼠李科 )これ らの革木の葉 は
hao-
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uumal
dn
の時の供物 に も添えられた りする.Ⅳ.
考 察1
.祭紀活動用植物の類型化 人々が祭紀活動 に植物 を用いる場合、意識する しないにかかわらず、代々継承 され た何 らかの意図 (モチーフ)がそこに込め られている。ここでは、水 タイ族の祭紀活 動 に用い られる植物 を通 して、その ような意図の類型化 を試みてみたい。ノ
donhou
nの際、村人は女柱 に白布 を巻 き、その 中に数種 の植物 の葉 を納め る。 そ の うち、例 えば崖妾蕨 は、葉が枯れて も長い間朽 ちず に残 るので、それにあやかって 家族が長寿であるように願 って納めるのだ とも、葉の基部の広い翼が重 な り合 って妊 婦の腹 の ように見 えるので、それにあやかって子宝 に恵 まれることを願って納めるの だともい う。 また、二又破布木は葉が重 なるように出るので、それにあやかって金銭 が貯 まることを願 って納めるのだとい う。ほかの植物 について も、それを納める理由 は今 では人によって まちまちだが、なん らかの特性 に象徴 される力にあやかるために その葉 を白布の中に納める点では共通 している。同 じような意図で祭紀活動 に用いらノ
ノ
れる ものに
、dant
an-
naa
の際の塩膚木や白茅 などがある。塩膚木は、田に挿すl
i
aoI
on
の材 として用い られる。それはこの木 に虫避けの力があるので、その木の力 を借 りて 田に虫や病が生 じないことを願 って用いるのだとい う。自茅は茎 を短 く切って砂
と-ノ
緒 に田に撒 く。 また、縄 に掬 ってhaahyuu
を作 り、 それで家の居 間の入 り口の上 にt
aal
i
ao
を吊 し、さらに家全体 を囲むノ。ganban
と呼ばれる祭把活動の際にも、村 のす べての門をhaahyuu
でつなぎ、村全体 を囲む(4)。これ らは、白茅 に悪霊避けの力があ ると信 じ、その力 を借 りて、田や家や村 を悪霊か ら守 るために行われるものである。ノ
ノ
he
t
t
naa
やs
anhanbi
i
mai
の時に溌水 に用いる三業葦荊 も同 じ例 であ る。す なわち、 三薬草荊 には悪霊避 けの力があるとされ、水 を介 してその恩恵に与ろうとするもので ある。以上の諸例 は、植物の特性 に直接 関係す るか間接的に関係す るかの違いはあっ て も、基本的には植物 になん らかの特別の力、すなわち神霊力 を感 じ、その力に与る ために祭紀活動 に用いる もの とみなす ことがで きる。 この ような植物 を、 ここでは 「霊有植物」 と呼ぶ ことにす る (/
植物以外の場合は 「霊有体」 と呼ぶ)0 同 じ1
i
aol
on
に用 いる植物で も、異色仮衛茅は塩膚木 と用 い る意 図が異 なる。異色ノ
ノ 仮衛茅 は、yaakwanhao
の伝説に基づいて 、稲 の魂 であ るyaakwanhao
を田に招 く′
ための植物である。 この他 に、堆抄に立 て る幣付 の接竹類 や竹類、s
uuz
al
t
at
tiの時ノ
ノ にmai
kam-
f
as
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l
i
i
の材 として用 いる竹類 なども神霊 を招 くための植物 と言 える。この ように、何 らかの神霊 の降臨を期待 して祭紀活動 に用いる植物 をここでは 「招霊植物」と呼ぶことにする (植物以外の場合 は 「招霊体」 と呼ぶ)0
祭紀活動に用いる植物の中には、これ らの 「霊有植物」 (あ るいは 「霊有
休」)
や 「招霊植物」(あるいは 「招霊体」)
に力 を高め させ ようと して用 いる もの もあ る。ノ
dant
an-
naa
の時には、家の居間の入 り口の上 に新 しいt
aal
i
ao
を付け加 えるのが普通 だが、その時に しば しば三業葦荊や綿が添え られる。これは 「霊有体」であるノ
t
aal
i
ao
の悪霊避けの力をより高めるための添え もの と言える
。he
t
t
nまa
の時にl
i
a。l
。n
を射千 のそばに立てる地域がある。この場合 、射千はl
i
aol
on
とい う 「招霊体」 を花 で飾 るノ
ノ ことによって 「招霊体」の力 をよ り高め させ てい る と言 える。 また、s
uuz
ai
t
at
t
i
のノ ノ
時、通常、粉芭蕉や甘煮の茎の先 を
mai
kam-
f
as
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に付 ける。 さらに、ouwas
s
a
やノ
gons
よi
muukon
の時、大 きな堆抄にdo
占と一緒 に宋種の花枝 も好んで挿 される。 これノ
ノらの植物は、「霊有植物」や 「招霊体」 であ る
mai
kam-
f
as
i
l
i
i
や堆抄やdon
の力 を高 めるための添えもの と言える。この ように、「霊有植物 (体)」や 「招霊 植物 (体 )」 の力を高めようとして用いる植物 を、ここでは、「常助植物」 と呼ぶ こ とにす る (植 物以外の場合は 「酎助体」 と呼ぶ)0以上の祭紀活動用植物の他に、単 に神霊 を崇拝 して供 える植物 もあ る。例 えば、
l
i
nban
の時に、hou-
dyur
r
aaban
の中に綿 などと一緒に金鳳花や草花爽竹桃 や黄 白妾 花の花枝などが供えられる。 またwas
s
a
の期間中に行 われ るdokus
hi
n
の時 に、寺廟 内の仏前に九里香や文殊蘭の花が好んで供 えられる。これ らはその季節 に目立つ花で あって、特 に 「霊有植物」や 「招霊植物」や 「酎助植物」 に相当するとは思えない。ノ
ノ また、haowas
s
a
やouwas
s
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の時に、家文や飛机革や腫柄菊の茎でmai
kam-
f
as
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l
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を 作 って寺廟 に献上するが、少な くとも飛机草や腫柄菊に関 しては、皮 をむけば容易 に 白地の棒が得 られるとう単純な理由で用い られるようである。このように、神霊 を崇 拝 して供 える植物 を、ここでは 「供養植物」 と呼ぶことにする。 西双版納水 タイ族の祭紀活動 に用い られる植物は、以上の ように 「霊有植物」、「招 霊植物」、「封助植物」、「供養植物」の4
群 に類別で きる。西双版納水 タイ族 の祭紀活 動は多様であ り、それに用い られる植物 も多様 なので、この類型化は他の民族の祭紀 活動用植物 にも当てはまるもの と思われる。 植物の中には複数の祭紀活動に用い られる もの も少な くない。その場合、祭紀活動 によって果たす役割が異なるもの もある。例 えば、粉芭蕉や甘燕の若葉つ きの茎頂 は、ノ
yaakwanhao
の際は 「招霊植物」 として田 と家 を往復 し、danhdu
nの際 は 「霊 有植ノ
ノ
物」 として
ye
nbai
s
ao
の中に納め られ、haowas
s
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やouwas
s
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の際、およびs
uuz
ai
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at
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ノ
/
ノの際は、「酎助植物」 としてそれぞれ
gouna-
muns
a
iやmai
kam-
r
as
i
l
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に付 け られ る。 また、白茅は、dant
an-
nよa
の際は 「霊有植物」 として家を囲むhaahyd
uの材料 に用 い られた り、刻んで砂 と一緒に田に撒かれた りする一方、he
t
t
nよa
の際は 「酎助植物」として田に挿す
t
aal
i
ao
の縁 をかがるのに使われる。ー9-2.祭紀活動 と植物の特性 上述の ように、ある植物が 「霊有植物」 として祭紀活動 に用い られる場合 は、その 植物の特性 に象徴 される力にあやかろうとする気持 ちが込め られている。 しか し、 「霊有植物」以外の祭紀活動植物の場合で も、植物特性 と祭紀活動が 「霊有植物」 ほ ど直接的に結 びつかないにせ よ、一般の植物 とは異なった特性があっては じめて、祭 紀活動 に用 い られるようになった点では同 じである。それ らの植物の中には、異色仮 衛茅の ように、ある伝説 と結 びついて用い られている例 もある。 しか し、その場合で も、その植物 に人の注意 を引 きつける何 らかの特性がなければ、伝説に取 り入れられ なかっただろ う。 では、祭紀活動 に用い られるきっかけ となる特性 にはどの ようなものがあるだろう か。水 タイ族の祭紀活動用植物 に関 しては、第- に挙げ られるのが植物の有用性、な かで も薬草 としての有用性である。郭、段編 『西双版納節用植物名録』 (9)を参照する と、本稿で取 り上げた祭紀活動用植物約
4
0
種の うち、名録 に載っていない ものはわず かに1
5
種 (異色候衛茅、小葉龍竹、海鳥綿、紅睡蓮、鉄刀木、肉果金合歓、金鳳花、 黄白妻花 、二又破布木、中平樹 、版納甜竹、中華大節竹、斑茅、腫柄菊、窄葉半楓荷) である。 しか も、この うち約半数は、近縁種が薬用植物 として同名録 に記載 されてい るので、これ らの うちのい くつかは実際は水 タイ族の人々に薬草 として利用 されてい る可能性がある。祭紀活動 と植物の薬用性が直接結びついていると思われる好例を1
つだけ示 してお く。同名録 によれば、塩膚木はいろいろな病気 に効能があるが、稲田 皮炎に も効能がある。 また、葉 につ く五倍子は殺虫効果がある。村人によれば、葉自ノ
体 にも殺虫効果があるとい う。この ような特性がda。t
amn;a
の時にl
i
a。1
。
。と して水 田に挿 されるようになった所以 と思われる。 薬用性の他 に、食材 としての有用性 も無視で きない。例 えば上に記 した版納甜竹や、 粉芭蕉、甘燕 などが祭紀活動 によく用い られるのは、それ らが水 タイ族の人々にとっ て重要 な植物であることが大い関係 しているだろう。 植物の形態的特性 も、祭紀活動に用い られる きっかけとして重要な要素である。例ノ
えばhe
t
t
nよa
の時に異色仮衛茅 を1
i
aol
。n
として水 田に挿すが、村人によれば異色候衛 茅 は小 さな実 を房状 にびっ しりと付けるので、稲がそのように実 ることを願 って挿す のだとい う。 また、すでに指摘 したように、崖妻蕨は、葉の基部の翼が重 な り合って 妊婦の腹の ように見 えるので、その ように子宝 に恵 まれることを願 って女柱の白布の 中に納めるのだとい う。 これ らは植物の形態的特性が祭紀活動 と結びついた好例であ る。 水 タイ族の祭紀活動用植物の中には、上記の他に、植物の生態的特性 (例えば崖妻 蕨の非落葉性 など)、生理的特性 (例 えば九里香の芳香性 など)、特性的特性 (例えば 斑茅の良燃性 など)によって祭紀活動 に用い られるようになったと思われる例 も散見 される。3.
祭紀活動用 植物 の重要度祭紀活動 に用 い られ る植物 の うち、複 数 の祭紀 活動 に またが って用 い られ る もの 、 あるいは広 い地域 にわた って用 い られ る もの は、水 タイ族 の祭紀 活動 の 中で比較 的重 要 な位置 を占めて代 々継承 されて きた もの と考 え られ る。上述 の粉芭 蕉や甘蕪 や 白茅 はその よ うな植物 の一例 と言 える。以下 に、それ ら も含 めて ま とめてお く。
白茅
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nよa、dant
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nAa
な どに使 われ る。ノ
家
文 ;he
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naa、haowas
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な どに使 われ る。ノ
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竹類 ;
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muukan、s
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な どに使 われ る。ノ
累乗駁骨
革 ;he
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な どに使 われ る。ノ
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三乗葦荊 ;
dant
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naa、haol
unbat
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、s
anhanbi
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な どに使 われ る。海鳥綿 (綿毛) ;
dant
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naa、l
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nban
な どに使 われ る。ノ
麻撲 ;
dant
an-
naa、danhoun
ノ
な どに使 われ るノ
。ga
ノ
nban
に も使 われ る(4)a粉芭蕉 ;
yaakwanhao、danhoun、s
uuz
ai
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、haowas
s
a、ouwas
s
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な どに使 われ る。ノ
ノ
ノ
甘簾 ;
yaakwanhao、danhoun、s
uuz
ai
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at
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i
、haowas
s
a、ouwas
s
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な どに使 わ れ る。ノ
ノ
瑳竹類
;s
anhanbi
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mai
ノ
、gons
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muukd
n、ouwas
s
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な どに使 われ る。 宋種 ;gons
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muukon、ouwas
s
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な どに使 われ る.異色候衛茅 ;離 脱県 を除 く広 い地域 で
、he
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nよa
に使 われ る。 塩膚 木 ;主力腺 県 を除 く広 い地域 で、dabt
ab-
naa
に使 われ る。これ らの植 物 は、水 タイ族 の祭紀活動 と他 の民族 、特 に タイ系 諸民族 のそれ との比 較 を進 め る際 に重 要 な手が か りを与 えて くれ る可 能性 が あ る。 この点 に関 して は稿 を 改めて論 議 したい。 謝 辞 本研 究で得 られた祭紀活動用植物 の標 本 の同定 に当た って は、云南省昆 明植物研 究 所 の武素功教授 に多大 な ご協 力 を頂 いた。 ここに厚 く感謝 の意 を表 します 。 Il
l-注 (1)