東京. 大村嘉吉 (
1960
) 『斎藤秀三郎伝―その生涯と業績―』吾妻書房, 東京. 岡倉由三郎 (1911
) 『英語教育』博文館, 東京. 斎藤兆史 (2003
) 『日本人に一番合った英語学習法』祥伝社, 東京. 斎藤兆史 (2000
) 『英語達人列伝』中央公論社, 東京. 斎藤兆史 (2007
) 『日本人と英語』研究社, 東京.Saito, Yoshifumi (
2020
) “ Pedagogical Stylistics as a Discipline for Bridging the Gap between Literary Studies and English Language Teaching in Japan, ” Regional Branches Combined Issue, The English Literary Society of Japan,129
-139
. (The English Literary Society of Japan. Kanto Review of English Literature, No. XII, The Kanto Branch of the English Literary Society of Japan,21
-30
. 研究社, 東京. Jones, Bernard (1996
) “ The reception of Lindley Murray ’ s English grammar, ” In I.Tieken-Boon van Ostade (Ed.), Two hundred years of Lindley Murray (pp.
63
-80
). Münster: Nodus Publikationen.鳥飼玖美子 (
2016
) 『本物の英語力』講談社, 東京. 鳥飼玖美子 (2018
a) 『英語教育の危機』筑摩書房, 東京. 鳥飼玖美子 (2018
b) 「日本人と英語 (1
): 慢性的英語教育改革が招いた危機」、https:// www.nippon.com/ja/currents/d00412
/?pnum=1
, (最終アクセス日:2020
年3
月4
日) 細江逸記(1931
) 『動詞時制の研究』泰文堂, 東京. 九州工業大学 ― 口(後藤) 万 里 子遊佐典昭編『言語の獲得・進化・変化
―
心理言語学
,
進化言語学
,
歴史言語学』
開拓社2018
年 xv +346
pp. 本書は、開拓社が全3
巻のシリーズとして同年に出版した『言語研究と言語学の進 展シリーズ』のうちの1
冊である。同シリーズは、言語学に関心を持つ学生および研 究者を対象に、各専門分野の基本的な内容を含みつつ、最新の言語研究の成果を提示 することを目的としている(cf. p. v)。シリーズの第一巻で統語論、音声学・音韻論、 形態論(福田他2018
)、第二巻で意味論・語用論、認知言語学、社会言語学(早瀬他2018
)を扱っており、本書で扱う心理言語学、進化言語学、歴史言語学と合わせ、全 体で言語学研究およびその周辺領域の分野を網羅するよう編成されている。 本書は、第I部『最新の言語獲得研究と文処理研究の進展』(心理言語学)、第II部『最 新の言語進化研究と生物言語学の進展』(進化言語学)、第III部『最新の比較言語研究と歴史言語学の進展』(歴史言語学)の
3
部構成となっている。各部の議論は独立して いるので、興味のある分野だけを読んでも十分読み応えはあるが、一方で、「人間言 語の普遍性」「生物言語学」をキーワードとして本書は構成されており、全体を通して 読むことで、「人間言語とは何か」について領域横断的視座を高めることが期待できる。 本シリーズの目的からも分かる通り、本書は一般的な入門書ではない。特に本書の理 論的基盤となっている生成文法理論に関しては、極小主義理論を含めた最新の理論に まで言及しているため、関連する知見を多少なりとも有することは本書を理解するた めに必要であろう。以下、コメントを加えながら各部を概観する。1 第I部は、17
章からなっており、杉崎鉱司氏(2
-5
章)、小野創氏(6
-11
章)、遊佐典 昭氏(1
章、12
-16
章)の執筆による。心理言語学とは、心と言語の結びつきについて の研究であり、人間が脳の中にどのように言語を取り込み、処理するのかを取り扱う 研究分野である。具体的には子どもの言語獲得の研究が主となるが、言語産出や言語 処理における内容も含まれる(西原2017
)。この部は心理言語学が扱うこれらの内容 を全て網羅しており、第2
章から5
章で子どもの言語獲得について、第6
章から11
章 で文処理について、第12
章から16
章で第二言語獲得についてそれぞれ論じている。 ここでの言語獲得研究は、いずれも生成文法理論を基盤としたものとなっている。 子どもの言語獲得については、まず第2
章で母語獲得が「模倣」や「類推」によるも のではないという点を順次押さえた上で、普遍文法が関与しているという議論を行い、 第3
章、4
章でのそれを裏付ける具体的な研究へとつないでいる。第3
章では、普遍 文法の中でも原理媒介変数理論で重要な役割を果たしている「パラメータ」を使った 代表的な研究の内容が紹介されている。よく知られているように、生成文法は原理媒 介変数理論から極小主義理論へと理論が進展していった。極小主義理論では、UGの 属性が構造構築の操作に限定されており(p.23
)、理論の進展に伴う研究の再検証も 必要となっている。続く第4
章では、この点に着目したいくつかの最新の代表的研究 が紹介されている。いずれも母語獲得が構造依存性と密接に関連していることを裏付 ける研究であり、理論変遷に伴う当該分野における研究の動向が分かるように構成さ れている。また、研究内容を紹介することに合わせて、母語獲得研究で使用されてい る様々な実験法―発話の引き出し法(p.11
)、真偽値判断法(p.14
)、写真選択法(p.26
)、選好注視法(p.28
)―についても解説されており、当該研究の理解を深める 一助となっていると評したい。 文処理研究については、文構造の構築(統語解析)に的を絞って論じている。まず 1 多くの先行研究を含めた最新の研究を紹介するという本書の性質上、本書評においては、 言及された個々の具体的な分析についてのコメントはしない。また、対象本内で出てくる参考 文献については下記の参考文献には載せていない。第
7
章で、筆者が“古典”と称する、統語解析研究に大きな役割を果たした「最小付加 の原則」を用いた分析を紹介することによって、この分野の基本的な分析方法を提示 している。そして、続く第8
章で、最小付加の原則に加えて考慮に入れるべき要因 ―項と付加部あるいは意味的・談話的情報―について、第9
章で、英語とは類型 論的に異なる日本語の文処理の問題、第10
章で文処理に関係してくる線形的な距離 と干渉効果に関する問題を論じている。当該研究が抱えている問題点についても随所 で指摘されており、文処理研究分野の全体像を理解することができる。 第二言語獲得については、第12
章で当該研究に関する基本的な言葉の定義や基 本問題を示し、続く第13
章で生成文法理論に基づいた第二言語獲得(generative approaches to second language acquisition: GenSLA)の研究に焦点を当てて論じてい る。上に述べた通り、理論が変遷した場合それに伴う研究の再解釈が必要となってく るが、ここでも理論の変遷に伴うGenSLAが再検証すべき課題をしっかりと議論し ている。さらには、第14
章で第一要因に関する議論(SLAでの構造依存性の重要性)、 第15
章で第二要因に関する議論(SLAにおける社会性の重要性)がされており、極小 主義理論におけるSLA研究の位置づけを把握することができるようになっている。 第II部は、9
章からなっており、藤田耕司氏(1
-6
章)、田中伸一氏(7
章)、池内正 幸氏(8
章)の執筆による。よく知られているように、本分野は“超”学際的研究分野で あり(池内2010
:177
)、アプローチの仕方も多岐にわたる。この部は、極小主義理論 を理論的基盤とした進化言語研究を紹介したものとなっている。言語進化については 人々の長年にわたる興味の対象であったが、現代の言語進化研究へと大きく進展した のは、Hauser et al. (2002
)と歴史は浅く、現状において定説は存在していない。筆者 も述べているように、「それぞれ異なる論拠に基づいて多様な進化シナリオが提起され、 研究者間で論争が続いている」(p.97
注1
)。ここでの議論も筆者たちの持論であると しているが、本研究分野を牽引する彼らの卓越した「シナリオ」については、進化言 語学に興味のある読者は勿論のこと、生成文法理論研究に携わる読者にも一読するこ とを勧めたい。 第II部は、言語能力の4
つの下位機能(統語運動システム・語彙システム・感覚運 動システム・概念意図システム)に対してそれぞれ進化システムを説明すること、そ して極小主義で主張される「併合のみ」の仮説をそれぞれの下位機能における言語進 化モデルに組み込んで検討することの2点を目的としている。これを踏まえ、第4
章 で統語運動システムについて、前駆体として他の霊長類などに見られる行動併合を 仮定した運動制御起源仮説を提唱している。この仮説は「併合には前駆体がない」と 主張するチョムスキーに対するものとなっている。第5
章では、語彙概念構造を基盤 に、概念併合として概念意図システムの進化が成立することを論じている。第6
章で は、語彙システムについて、分散形態論などの反語彙主義の枠組みを採ることによっ て、レキシコンの進化の解明へと導いている。そして第7
章では、感覚運動システムについて、「反対称性」(p.
166
)や「必異原理」(p.176
)「強弱交替の原則」(p.178
)など の音韻現象を挙げながら、第三要因としての感覚運動システムの進化の役割を論じて いる。いずれも「併合のみの言語進化」(p.161
)のシナリオに沿った議論である。第8
章では、ヒトの言語がいつ出現したのか、という問いに対する議論へと移る。併合の 出現が人間言語の起源であるという従来の仮定を前提としながらも、さらに「言語を 可能にした遺伝的資質の創発」(p.190
)を言語の起源となりうることを示唆し、「出ア フリカ」以前のアフリカ内での、ホモ・サピエンスの人種の分岐あるいは拡散までを 視野に入れて、考古学、古人類学、遺伝学、古地質学、古気候学観点から、その起源 が15
万年前から20
万年前であるという結論を導いている(p.200
)。2 ここでの議論は、進化言語学のシナリオの一つであるとは言え、筆者たちの広く深 い見識により、進化の起源を併合に帰すことの妥当性、そしてそれを裏付ける論証の 仕方には強い説得力がある。また、持論だけでなく、それに関連する、あるいは反対 する多くの研究について言及されているため、読者は、言語進化学に対する興味のア ンテナをさらに広げることができる。加えて、多くの人が持つであろうこの“新しい” 学問に対する素朴な(しかしこの研究を進めていくにあたって根幹となる)疑問につ いても筆者たちの考えが示されている。例えば、「言語の起源の問題に対して理論言 語学は何をするのか」という疑問について、筆者は「進化言語学において、理論言語 学者が貢献する余地があるとすれば、それはまずもって、明確な言語モデルと言語進 化モデルを構築し作業仮説として他分野に提示して、その実証的な検証と改訂をゆだ ねるといった基礎的な研究であろう」(p.97
)と当該分野の役割を的確に示している。 あるいは「直接検証できない何万年も前の言語の起源について、現代の言語を使って 論証できるのか」という疑問についても、第三要因が前駆体から普遍文法への「生物 進化」だけでなく、普遍文法から個別文法への「文化進化」にも等しく働いているとい う第7
章の議論によって答えを示している。3 第III部は、12
章からなっており、谷明信氏(2
-5
章)、尾崎久男氏(2
-5
章)、米倉綽 氏(6
-11
章)の執筆による。この部では英語の歴史の中の語彙拡大に注目し、その原 因としての借用語と複合語形成に焦点を当てて論じている。序章に続き第2章から5 章はフランス語からの借用語について、第6
章から11
章は複合形容詞についての事例 研究となっている。 前半の借用語について、筆者たちはまず「借用」という語の定義の曖昧性につい て言及した上で、Haugen (1950
)の3
通りの分類を採用し、特に翻訳借用(loan 2 時期のシナリオについても様々である。ホモ・サピエンスが出現してかなり後の7万5 千年前から6万年前を起源とする研究もある(cf. 池内2009: 232)。 3 進化言語学において、「文化進化」とは、「個別言語が歴史的な経緯の中で変化・複雑化・ 多様化するプロセス」(p.96)のことを指す。translation)―ここでは「なぞり」という表現をとる―の観点から議論を展開して いる。4 第
2
章、3
章では具体的事例としてdepend on、approach toをそれぞれ取り上げ、動詞に後続する前置詞が、ともに借用先のフランス語で使われている ‘de (=of)’を厳 密になぞっていないという事実について問題提起をし、その要因について論じている。 また、第
4
章では、have a talk のような文法的特徴を担う軽動詞(have)と実質的な語 彙的意味を担う動詞派生名詞(talk)からなる合成述語のフランス語からのなぞりについて、Caxton訳Paris and Vienneを言語資料として中フランス語原典と比較している。
後半は複合形容詞(e.g. heart-breaking)について論じている。語彙拡大の一要因であ る複合語形成のうちで、特に複合形容詞を取り上げた理由として、筆者は「複合名詞 に関する研究は多く見られるが、複合形容詞についての考察は多いとは言えない」「初 期の英語における複合形容詞に関しては(略)筆者の知る限りほとんどないようであ る」(ともにp.
257
)と述べており、複合形容詞研究の意義を示している。その上で、 第7
章以下で現代英語、古英語、中英語、初期近代英語のそれぞれの複合形容詞の形 態的・統語的・意味的特徴について時代別に論じ、特に複合形容詞の使用が増えたと される初期近代英語期については多くの紙数を割いて事例を挙げており、読者は複合 形容詞の歴史的変遷を系統立てて掴むことができる仕掛けとなっている。 「歴史言語学」というタイトルで論じられる多くの書籍が言語変化の概観をその要因 も含め説明するものとなっているのに対し、この部においては、具体的事例に絞って 論じられているため、前者を期待する読者の意図には合致しないであろう。これにつ いては、本シリーズの「最新の言語研究の成果を提示する」という目的に則っている ためと考えられるが、一方で、歴史言語学の研究手法には、ここで示された文献学的 研究に加え、生成文法理論のみならず、認知文法理論(金杉他2013
)など、言語変 化を理論的に説明する研究もある。そういった観点からの歴史言語学研究の全体像に 多少とも触れてあると、当該研究分野以外を専門とする読者にとってはさらに有益な ものとなったであろう。 最後に、本書の構成全体に関して私見を述べて拙評を閉じたい。上述したように、 本書の構成の柱は「生物言語学」であり、その観点から生成文法理論に基づいた議論、 特に極小主義理論で注目されている第一・第二・第三要因に対する言及が多くなって いる。このキーワードに基づいて分野横断的に読むことによって、人間言語の本質を 考えるという本書の目的に近づくこともできるのではないか。読み方の一つとして提 案をしたい。その意味では、第III部も連続的に、この観点を取り入れた議論を入れ ることが望ましかったのではないかと考える。また、歴史言語学について、本書の中 4 なぞりとは、「複数の要素からなる言語項目を分析して, そのすべての要素を受容言語の 項目で交替させること」(p. 210)であり、卑近な例でいえば、日本語の「蜜月」は英語の「ハネムー ン」のなぞりとなる。での位置づけを「文化進化」とするならば、それらの考え方についての言及が、該当 する第III部でなされていなかったのは残念な点であると指摘したい。第II部(p.
96
および7
.4
章)の中で文化進化について説明がされているので、読者はこちらを参考 にするという手もあるが、歴史言語学の専門家の間で、文化進化がどのようにとらえ られているのかについて、最新の研究を踏まえて言及されていれば、より本書の構成 のコンセプトが明確になったであろう。5 参考文献 福田稔, 中村浩一郎, 古川武史, 都田青子, 近藤眞理子, 西原哲雄, 長野明子(2018
) 『言語の構造と分析―統語論, 音声学・音韻論, 形態論』開拓社, 東京. 早瀬尚子, 吉村あき子, 谷口一美, 小松原哲太, 井上逸平, 多々良直弘(2018
)『言語 の認知とコミュニケーション―意味論・語用論, 認知言語学, 社会言語学』開拓社, 東京. 池内正幸(2009
)「可能性」池内正幸(編)『言語と進化・変化』231
-237
, 朝倉書店, 東京. 池内正幸(2010
)『ひとのことばの起源と進化』開拓社, 東京. 金杉高雄, 岡智之, 米倉よう子 (2013
)『認知歴史言語学』くろしお出版, 東京. 西原哲雄(2017
)「心理言語学とは何か」西原哲雄(編)『心理言語学』1
-11
, 朝倉書店, 東京. 名古屋工業大学 ―吉 田 江 依 子Leah Bauke and Andreas Blümel (eds.),
Labels and Roots
Mouton: de Gruyter, 2017. vii + 292 pp. Reviewed by OMUNE Jun, Kansai Gaidai University
1. Introduction
This book handles the topics of minimalist syntax and consists of four parts, each containing two or three papers/chapters by independent authors. The title of each part is not shown on the table of contents, but the editors list them in the introduction of the book (p. 7). This review summarizes the four parts, focusing in particular on the
5 気が付いた誤植について付記しておく。 p. 69下から2行目 存在するする → 存在