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<研究論文・研究報告>インターネットコミュニティを利用した日本語学習者参加型授業の試み : 発表のスキル向上を目的とした授業の構築

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 〈研究論文・研究報告〉

インターネットコミュニティを利用した

日本語学習者参加型授業の試み

一発表のスキル向上を目的とした授業の構築一

大 :塚 要 旨 本研究は、対面教育と並行してITを活用し、いかに短期間で効率よく教 育効果を上げていくことができるかを実践的授業を通して研究したものであ る。 具体的には、「中級日本語聴解・会話」の授業において、補助的にインター ネットコミュニティを活用し、授業の告知、授業での各々の発表を録画した ビデオの確認と自己評価、授業の課題提出、録音ファイルの聴解と発音練習 等を行い、対面授業だけでは不十分な部分をインターネット上で補った。そ れによって、学習者は個々のペースで自分の発表に対する自己評価を客観的 に下すことができ、教授者は課題の添削や欠席した学習者に対する個人的な ケアをスムーズに行うことができた。 このように、時間の効率性を図るとともに教育の質を高めていくためには、 インターネットを効果的に活用した授業の構築及びそれに基づいた教授者と 学習者に対するITリテラシー教育が求められる。 【キーワード】 インターネットコミュニティ、 ル向上、ITリテラシー教育 日本語学習者、参加型授業、発表のスキ 1.はじめに 2004年6月に首相官邸のIT戦略本部より発表されたe−JAPAN重点計画 一2004の中では、学校教育のIT活用について、2006年度以降に向けての布石 として、「教育の情報化を進めるための基盤を有効に活用し、ITのメリット を最:大限に活用して、いかに教育効果を高めて行くかが課題になる」(1)と述 べられている。つまり、e一ラーニング環境を効果的に活用し、教育の質を

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高めていくために、大学においてどのようなIT技術を使った授業をすれば よいか、教育を短期間で効率.よく効果的に行う手法の研究が求められている ことになる。 本稿は、2004年度1学期に高知大学留学生センターで行われた日本語・日 本文化研修留学生及び特別聴講生(2)等を対象とした全学留学生の補講授業 である日本語課外補講「中級日本語聴解・会話」の授業において、補助的に インターネットコミュニティ(3)を活用した授業を行うことによって、いか に日本語学習者のプレゼンテーションカを育成できるかという観点から試み た授業の報告を行う。そして、IT技術を駆使した授業においてどのような 課題と問題点があるかを分析し考察を行いたい。 筆者はこれまで、日本語の聴解・会話の授業を何回か担当してきたが、教 授者と学習者が同じ教室にいて、主に教授者が学習者に向かって講義をする といった単方向型の授業ではなく、教授者と学習者且つ学習者同士がコミュ ニケーションを取り合える双方向型授業をいかに効率よく構築していくこと ができるか、日本語学習者が積極的に授業に参加し発言していくことができ る授業をどのように作り上げていけばよいかが長年の課題であった。それに は、クラス全員に対する指導と並行して学習者個々に対する個別的な指導が 必要になると考えられる。 そこで、インターネットコミュニティというインターネット上に一つの共 通する共同体意識を持った人々が集える場所を「中級日本語聴解・会話」の 授業で設定し、講義における全体指導の補足的なサポートをする場として活 用し学習者に対する個別指導が行えるようにした。つまり、インターネット コミュニティを効果的に活用することによって、学習者が積極的に授業に参 加できる場を作るとともに、個々人が発信していける場を作り、互いに切磋 琢磨して発表のスキルを向上させられるのではないかと考えたわけである。 そこで、実際にインターネットコミュニティを活用した授業計画を作成し、 効果的な授業を行うべくストラテジーを探ることにした。

2t授業の概要

2.1授業の概略 授業の概略は以下の通りである。 授業科目名:中級日本語聴解・会話 授業期間:2004年度1学期(2004年4月∼8月〉

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 週1コマ(90分)×15週間 講義場所:高知大学図書館内教育端末室 受講対象:高知大学日本語・日本文化研修留学生及び特別聴講生等全学 留学生 実際の受講者:韓国人学習者4名、中国人学習者3名計7名 目講磯麟纐趨購灘繊羅灘1灘辮離灘懇鱗搬轟澱簾鍵鱗懲奪総糞離繕繍鐵鷲毒織鱗鱗欝葺一隅鎌義

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鞭、 、 磁聯赴ン、 滋麟。総、 馨 鷺 勘 図1 教育端末室での授業風景 実際にどのように授業を行ったのか、授業の概要を説明していく。今回、 筆者が担当した授業は2004年度1学期、2004年4月19日から8月2日まで開 講された授業で、授業科目名は日本語課外補講「中級日本語聴解・会話」で ある。日本語課外補講というのは、正式な授業カリキュラムの一貫として行 われている授業ではなく、正規の授業を受けるには日本語の実力が不十分な 留学生に対する日本語の課外補講授業の位置づけになる。週に1回90分の授 業が15週間行われ、全体の時間数は30時間に相当する。 講義場所は、高知大学図書館内にある教育端末室で、インターネットに接 続されているパソコンが60台あり、授業で利用することが可能である。また、

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授業で教育端末室を利用していないときは、学生が自由に自習をすることが できるようになっている。 受講対象は、高知大学の日本語・日本文化研修留学生及び特別聴講生等希 望する全留学生が対象である。実際にこの授業を受講した学生は韓国人特別 聴講生4名、中国人学生3名の計7名であった。韓国人学生は短期の交換留 学生で、本国では畳語日文学科の学生である。中国人学生は正規の理学研究 科の大学院生で2人が修士、1人が博士課程で勉強している。学生の日本語 学習歴は1年半から2年程度で、日本語レベルは日本語能力試験2級程度が 3名、3級程度が4名であった。よって、この授業は中級レベルの学習者が 正規の授業を受けられるようになるよう日本語聴解能力及び発表能力を養う ことを目標にレベル設定を行った。 なお、この授業は課外補講授業の扱いのため、成績はつけるが、大学とし ては単位が認定されない。そのため、3名の中国人学生は大学院の授業で発 表があったり、就職活動が忙しかったりすると、欠席する場合が多かった。 最終的に成績がつけられたのは、韓国人学生4名だけであった。 大学の進学精報が満敢!学校検索もおまかせs資料講求もできるes勲し岬L卿 棄六生宏鱒で翻鞭壼格江 偏差値劉含格チ⊥ック付。榮大主蒙庭教師が志墾校合格の技を伝授.鰍.t・monrkaimet 峰最窃の返信 喚衝へ家一3漁を蓑承:総灘工数3遠次へ夢 巖勧返es bl 繋灘 漸 雛㈱ポイントの灘勘:/ 、_._/D・

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図2 インターネットコミュニティの掲示板

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 2.2授業の目標 第1週目に行った本格的な授業が始まる前のレディネス調査では、「今回 の授業で何が学習したいか」を回答してもらった(複数回答可)。その結果、 「スピーチ」が5名、「発音・アクセント・イントネーション」「自己紹介、 電話などの生活に密着した会話」「自分の専門の講義・ゼミにおける聴解・ 発言」が4名ずつ、「会議・発表などで使う会話」が3名で発表(スピーチ) や自己紹介、講義の聴解、授業における発言に興味があることが分かった。 そこで、次の3点を目標として掲げ授業を進めることにした。 1.自分の考え、意見を日本語で発表するプレゼンテーションカの向上を目 指す。 2.インターネットコミュニティを活用し、自分の発表や録音資料を確認し 自己評価することにより、自己プロデュースカを養う。 3.パソコンを利用した資料の見せ方を学習し、自分の言葉で自分の考え、 意見を発表する能力を身につける。

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2.3授業の経過 授業の目標に基づき、第1週から第15週までの授業をどのように進行する かを考案し、表1のように進めていった。どのようなことを行ったかは「授 業の経過」の欄に、学習者がインターネットコミュニティ等のマルチメディ アを利用して活動したものは「活動・提出物」の欄に書かれている。 授業の基本的な流れとしては、学習者の発表技術の向上ということで、発 表という活動を中心に据え、それに対する質問力や聴解能力の向上を目指し た。また、講義を聞いてノートをとることができるように「ノートテイキン グ」に関する内容を1コマ分入れ授業を行った。 詳細に見ていくと、オリエンテーション後の最初の授業でその場で2つの グループに分けお互いに自己紹介をした後、皆の前で自己紹介を一人ずつし てもらい、それをビデオに収めた。その後、インターネットコミュニティに 各学習者の発表のビデオ資料を載せ、個々の学習者が宿題として自分の発表 を視聴し、発表の感想を「よい点」「改善点」に分けて書いた後、電子掲示 板に投稿してもらった。その後、2度目の「自己紹介」「日本と自国の文化 の違い」「社会問題」と3回の発表を行い、その都度ビデオで撮影し、インター ネットコミュニティにビデオ資料を載せ、感想を提出してもらうという作業 を行った。また、3回の発表を通して、表2「発表評価シート」の12のチェッ ク項目を自分も含めたそれぞれの学習者の発表に対して4段階で評価しても らった。 また、発表の前には学習者が宿題としてインターネットコミュニティに提: 出した発表原稿を教授者がチェックしたものを各々に修正させた。そして、 教授者のところで発音練習とともに原稿を直し、その原稿をパソコンに録音 してインターネ「ットコミュニティ上のE−mailに送信してもらうという作業 を行った。教授者はそれを聞いて、発音の留意点を指導するとともに、各々 の学習者の発表原稿における発音のモデルをインターネットコミュニティ上 に載せ、個々の学習者が自分のペースで自主学習し、発表に備えることがで きるようにした。

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 表1 授業の経過 日程 授業の経過 活動・提出物 第1週 ・オリエンテーション 自己紹介の準備 ・レディネス調査実施 第2週 ・自己紹介、ビデオで撮影(1) インターネットコミュニティ ・インターネットコミュニティの使用法(1) で発表を見て感想を提出 第3週 ・自己紹介、ビデオで撮影(2) インターネットコミュニティ ・インターネットコミュニティの使用法(2) で発表を見て感想を提出 ・よいスピーチの仕方 第4週 ・敬語を活用した自己紹介の仕方 E−maiで録音ファイル送付 ・発表原稿の修正、発音練習、録音(1) 第5週 ・発音の留意点をフィードバック E−ma且で録音ファイル送付 ・発表原稿の修正、発音練習、録音(2) 第6週 ・外国入による臼本語弁論大会のビデオ鑑賞 インターネットコミュニティ ・教師による発表の評価、留意点の確認 で発表を見て感想を提出 ・自己紹介の発表、ビデオで撮影(1) 第7週 ・発表の技術的な面における留意点の確認 インターネットコミュニティ ・自己紹介の発表、ビデオで撮影(2) で発表を見て感想を提出、録 ・よりよいノートのとり方(1) 音ファイル(講義の一部)を聞 いてノートをとる練習 第8週 ・よりよいノートのとり方(2) インターネットコミュニティ ・「日本と自国の文化の違い」発表の仕方 に発表原稿提出 ・自分のテーマ・例・原因を思考 第9週 ・各々のテーマの整合性を確認 E−ma丑で録音ファイル送付 。発表原稿の修正、発音練習、録音 第10週 ・黒板の効果的な使い方 インターネットコミュニティ ・「日本と自国の文化の違い」発表、ビデオで撮影(1) で発表を見て感想を提出 第11週 ・教師による発表の評価、留意点の確認 ・インターネットコミュニティ ・「日本と自国の文化の違い」発表、ビデオで撮影(2) で発表を見て感想を提出 ・「社会問題(因果関係)」の発表の仕方 「社会問題」のテーマを決定 。パソコンを使った資料の見せ方、YANIITAの使い方 第!2週 。個々のテーマの確認と改善点の話し合い(1) インターネットコミュニティ ・フローチャートの完成 にフローチャート及び発表原 ・YANIITAでの発表の仕方、資料の作り方 稿提出 ・発表資料収集及び発表資料作成(1) 第13週 ・個々のテーマの確認と改善点の話し合い(2) 発表資料作成、発表準備 ・発表資料収集及び発表資料作成(2) 第14週 ・「時事問題」発表、ビデオで撮影(1) ・インターネットコミュニティ で発表を見て感想を提出 ・発表資料作成、発表準備 第15週 ・「時事問題」発表、ビデオで撮影(2) インターネットコミュニティ ・授業終了アンケート で発表を見て感想を提出

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その他、よりよいスピーチの仕方を学ぶために、「外国人による日本語弁 論大会」のビデオを鑑賞しスピーチをするときに、気をつける点を発表させ たり、視聴覚資料の提示方法の一環として「効果的な黒板の使い方」や「パ ソコンを使った資料の見せ方」を学習したりした。 なお、「パソコンを使った資料の見せ方」については、e−JAPAN事業に伴 う研究として独立行政法人国立国語研究所の支援によって開発された 「YANIITA」(4>という学習支援ソフトを使って実践的に行った。 表2 発表評価シート 1.∼12.のそれぞれの評価項目を4段階で評価 1.原稿を読まないで話し言葉で話していたか。 2.最初と最後にあいさつの言葉を話していたか。 3.ポーズを明確にしながら話していたか。 4,聞き手の顔を見ながら話していたか。 5.ききやすい発音・アクセントだったか。 6.話すスピードは適当だったか。 7.重要な言葉の発音は正しかったか。 8.声の大きさは適当だったか。 9.ジ土スチャーや手の位置は適当だったか。 10.発表の内容はまとまっていたか。 11.黒板、YANIITAソフト(視覚資料)を効果的に利用したか。 12.発表時間は適当だったか。 2.4授業におけるYANIITAソフトの活用方法 「日本語聴解・会話」の授業において、教授者がYANIITAを教材作成ツー ルとして、学生が効果的な発表資料作成ツールとしてどのように利用したか について述べていく。 教授者は第4週「敬語を活用した自己紹介の仕方」、第7・8週「よりよ いノートのとり方」、授業の全体を通して学習者が録音資料を提出した後の 発音練習において、YANIITAを活用して授業を進めた。

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高知大学留孚生センター紀要 創刊号 具体的には、第4週には自己紹介でよく使う表現である「普通の言い方」 から「敬語を使った言い方」に変える練習問題を答えさせる際、回答の部分 をカプセルで隠しておいて正解が音声とともに飛び出るように設定し、音声 に合わせて繰り返させた。また、「です・ます体」で作られた自己紹介文を 敬語を使った丁寧な言い方に変えさせる際には、その場でワープロを使って 敬語を打ち出し、自己紹介文全体の敬語表現に注意を促した上で、教授者が 録音した音声資料と一緒に発音練習をさせた。 「よりよいノートのとり方」では、まず教授者が録音した音声資料だけを聞 かせてノートをとらせた後、段落ごとに区切った文字資料とともに音声を改 めて聞かせて回答例を示した。そして、再度音声資料を聞かせて確認させた。 学習者が各発表において発表原稿を録音した資料をチェックした後に行っ た発音練習においては、学習者が留意してほしい単語を挙げて発音させた後、 アクセント記号とモーラを示し再度発音させたり、短文での発音練習におい ては、一度発音させた後、アクセントのヤマを意識させるようにアクセント 記号をつけたものを示し、音声資料と一緒に発音させたりした。 図4 YANIITAを活用した発表風景

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学習者においては「パソコンを使った資料の見せ方」がどのようなものか について、学習支援ソフトであるYANIITAを使って実践的に学習した。 具体的には「自己紹介」「日本と自国の文化の違い」「時事問題」と学習者 は3回の発表を経験したが、「自己紹介」では発表時に氏名の板書のみによ る発表を行っていた。次に「日本と自国の文化の違い」ではジェスチャーを 用いたノンバーバルな要素及び板書による説明が付け加わった。さらに、パ ソ・コンを用いた資料の提示方法を学習するために、YANIITAソフトを活用 しパソコンによる資料収集の仕方や資料の示し方を学習した上で、最終段階 としてYANIITAで作った視覚資料を使用して「時事問題」の発表を行った。 2.5学習者のYAN11TAを活用した発表の特徴 学習者は段階を経て視聴覚資料を使用した効果的な発表のスキ・ルを学習し てきたが、YANIITAソフトを活用した発表には、マルチメディアを使用せ ずに行った2回の発表と比較して次の4点の特徴が見られた。 1.発表原稿を読まずに、図や写真を見ながら発表の1頂序を組み立てていけ る。 2.一つの画面にさまざまな要素を盛り込むことができるため、画面を見な がら発表の流れを作ることができる。 3.カプセルをクリックすることによって、図や写真、音声等が出現するた め、視聴者の興味を誘うことができる。 4.資料収集から始まって資料作成を通じて個別にプレゼンテーションの練 習を繰り返し行うことができる。 これらの特長によって、学習者はより自然な日本語表現で発表をすること ができ、発表の構成や流れもフローチャート等で図式化して示すことによっ て視聴者にとっても分かりやすくなり、聞いてもらえるスピーチのスキルが 効果的に身についたと言える。

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 3,授業アンケート調査 3.1授業アンケート調査の概要 今回の授業では、第1週にレディネス調査、第15週の発表終了後に終了ア ンケートをそれぞれの学習者に実施し、授業に関する評価を「たいへん」「か なり」「ふつう」「あまり」「ぜんぜん」の5段階で記入してもらった。 アンケートの内容は「レディネス調査」ではパソコンの基本操作ができる か、パソコンの主な利用目的は何か、パソコンを利用してどのような日本語 教育がしたいか等で、「終了アンケート調査」では「授業全般について」「パ ソコン・インターネットの利用法」「E−rnail・インターネットコミュニティ による課題について」「課題発表について」「履修事項の今後の利用について」 の5項目に関してである。 なお、回答者は「レディネス調査」が6名、「終了アンケート調査」が韓 国人学習者4名であった。 3.2レディネス調査結果 「レディネス調査」の結果、パソコンの基本操作ができるかについては、「日 本語WEBサイトの閲覧」「日本語サイトの検索」「日本語によるE−mailの送 受信」「日本語での文書入力」等基本的な操作は全員が可能だったが、E− mailに関してはファイルを添付して送信したことがない者が2名いた。また、 日本語版のインターネットコミュニティを利用したことがある者はいなかっ た。 パソコンの主な利用目的は、「E−mailの送受信」が6名、「文書作成」が5 名、「音楽鑑賞」が5名、パソコン通信が4名であった。パソコンを利用し てどのような日本語教育がしたいかに関しては「E−mai1による通信教育」 「ネットを利用した日本事情実習」「日本人との文通」「文書作成」が3生ず つだった。また、したくないものとしては「日本語ホームページの作成」「パ ソコンの日本語での利用法習得」「なし」が3名ずつであり、積極的にパソ コンを利用して学習に取り組みたい、単純なパソコンの利用にとどまらず、 日本語を媒介としてパソコンを上手に活用しながら知識を養いたいという姿 勢が見られた。 3.3授業終了アンケート調査結果 「終了アンケート調査」の結果、「授業全般」に関しては「この授業は有

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用であったか」に対して「たいへん」が2名、「かなり」が2名だった。「パ ソコン・インターーネットの利用法について」は「この授業は簡単であったか」 に対して「ふつう」が2名、「あまり」が2名でパソコンを利用することに 対しては多少抵抗感があったようである。 また、日本語によるパソコンの基本操作は皆できていたが、「次の操作が できるようになったか」という質問に対して、「日本語によるE−mailの送受 信」「インターネットコミュニティの利用」「音声の録音」は「かなり」「ふ つう」が2現ずつ、「YANIITAソフトを使った発表資料の作成」に関しては 「たいへん」が1名、「かなり」が1名、「ふつう」が2名であった。 「E−mail・インターネットコミュニティによる課題について」は、「教師 による添削」の有用性は「たいへん」1名、「かなり」1名、「ふつう」2名、 「教師による音声資料」の有用性は「たいへん」1名、「かなり」2名、「ふ つう」1名、「各自の発表のビデオ資料」の有用性は「たいへん」1名、「か なり」3名で「ビデオ資料」「音声資料」「作文の添削」の順に有用性が高い ことが分かった。 「課題発表について」は2回行った「自己紹介」の発表が「たいへん」1 名、「かなり」3名であり、「日本と自国の文化の違い」は「たいへん」1名、 「かなり」1名、「ふつう」2名、YANIITAソフトを利用した「時事問題」 は「たいへん」2名、「かなり」2名で、マルチメディアを利用して発表す ることによって、効果的な発表ができることが分かった。また、「自己紹介」 の発表は2回行うことによって、学習者が従来行っていたものとよりよいス ピーチの仕方を学習した後に行ったものとを客観的に比較することができた ため、「日本と自国の文化の違い」の発表よりも有用であったという結果が 得られたと考えられる。 「履修事項の今後の利用について」は「日本語によるE−mailの送受信」 と「YANIITAの利用」に関して有意性が見られた。これは、パソコンを日 本語でいかに利用するかに重点が置かれているため、主な利用目的である 「E−mailの送受信」が、また、パソコンを活用した効果的な資料の見せ方を 新たに学習したため、学習支援ソフトの活用が際立ったのだと思われる。 また、授業を通しての感想として、「コンピュータを利用して発表するこ とを習えて本当に嬉しかった」「自己紹介とYANIITAが一番役に立った」「こ の授業を通して発表に自信を持つことができ本当によかった」等の感想が寄 せられ、パソコンを利用した授業が学習者に有用であったことが分かった。

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 表3 授業終了アンケート調査(抜粋) 〈パソコン・インターネットの利用法について> 2−1.この授業は簡単でしたか。 2−2.授業時間数は十分でしたか。 *以下の操作はできるようになりましたか。 2−3,日本語サイトの閲覧 2−4.日本語サイトの検索 2−5.日本語によるE−mailの送受信 2−6.インターネットコミュニティの利用 2−7、パソコン上での自分の音声の録音 2−8.YANIITAによる発表資料の作成 〈E−mail・インターネットコミュニティによる課題について> 3−1.課題は毎回提出しましたか。 3−2.積極的に参加しましたか。 3−3.教師による作文の添削は有用でしたか。 3−4。教師による音声資料(各自の発表原稿を音声で録音した もの)は有用でしたか。 3−5.ビデオ資料(各自の発表を動画で録画したもの)は有用 でしたか。 〈課題発表について> 4−1.課題発表は面白かったですか。 4−2.積極的に参加しましたか。 4−3.発表の時間は十分でしたか。 4−4.発表回数は十分でしたか。 4−5.自己紹介の発表は役に立ちましたか。 4−6.日本と自国の文化の違いの発表は役に立ちましたか。 4−7.YANIITAを使った時事問題の発表は役に立ちましたか。

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4,授業の考察と今後の課題 今回の授業では、インターネットコミュニティやYANIITAソフトを活用 して学習者の発表のスキル向上を図った点で学習者に自分の発表に対する気 付きを促したと言える。学習者はYANIITAソフトを活用した発表を最後の 発表である「時事問題」で行い、「自己紹介」「日本と自国の文化の違い」「時 事問題」という3度にわたる発表を経て、視覚資料を活用した発表に移行し ていく過程でどのような発表が聞いてもらえるのかが理解できたようであ る。つまり、授業の目標として設定した「パソコンを利用した資料の見せ方」 をYANIITAソフトで資料を作成する段階で考え、「自分のことばで自分の考 え、意見を発表する能力」を作成した資料を活用して実践的に行うことを身 につけたと言える。 また、インターネットコミュニティを利用して授業の告知、授業での各々 の発表を録画したビデオの確認と自己評価、授業の課題提出、録音ファイル の聴解と発音練習等を行い、対面授業だけでは不十分な部分をインターネッ ト上で補うことができ、授業がスムーズに進行したと思われる。 学習者はインターネットコミュニティを利用することによって個々のペー スで自分の発表に対する自己評価を客観的に下すことができ、内省が促せた。 特に、自分の発表した録画資料を自己反省の材料として客観的に視聴するこ とによって、自分自身で自分のよい点、改善点を見つけ出すことができ、対 面授業において教授者が改善するべき点を指摘する以上に効果があったと言 える。(5) また、インターネットコミュニティに載せた教授者による音声資料である 発音モデルを聞き、各々の発音矯正に役立てることができたようである。し かし、パソコン上で学習者各自の音声や教授者のモデル音声を聞く際、音声 の波形を表すプロソディーグラフなどを利用して、話し言葉のアクセント、 イントネーション、リズム、ポーズ等を視覚的に認識することができれば、 日本語ネイティブの発音とどこが違うのかを具体的に理解できたのではない かと思われる。今後はそのようなソフトを活用して、発音指導に生かしてい きたいと考えている。 一方、教授者にとっては、課題である発表原稿等を添削する場合ある程度 時間がかかるが、インターネットコミュニティ上で課題を提出してもらうこ とによって、翌週の授業時には教授者が課題の修正箇所をフィードバックす ることができ、時間の短縮になった。また、授業内容をインターネットコミュ

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 ニティ上の電子掲示板で公開することによって、欠席した学習者に対して授 業で何を学習したのか、宿題は何なのか等をインターネット上で知らせるこ とができるというメリットがあった。このように、課題の添削や欠席した学 習者に対する個人的なケアもインターネットコミュニティ上でスムーズに行 うことができた点は有用であったと言える。 問題点としては、設備上すべての学習者が家庭でインターネットにアクセ スできるわけではなく、大学の施設である図書館内の教育端末室の利用も限 られていたため、宿題の提出が遅れたり、連絡が行き届かなかったりする場 合もあった。 また、今回授業を受けた学習者の中で、中国人学習者3名は皆理学研究科 の学生であったが、韓国人学習者4名は専門が日本語学であった。そのため、 ファイルを添付したE−mailの送受信や音声の録音、インターネットコミュ ニティやYANIITAソフトの使用方法等理系の学習者が容易に理解できる内 容であっても、文系の学習者に対しては繰り返し指導する必要があった。少 人数で授業を行うことができたため、助手と2人で手分けして指導をし、授 業内でITリテラシー教育をその都度行うことができたが、早期のITリテラ シー教育の必要性を感じた。文系の学習者も日本語教育と並行して基本的な ITリテラシー教育を徐々に行っていくことが重要だと考えられる。さらに、 日本語教育とともにITリテラシー教育が学習できるようなカリキュラムを 編成することによって、今回行ったような授業がよりスムーズに進行するの ではないかと思われる。それとともに、今回の授業では情報処理が専門の助 手と協力して授業を行ったが、教授者に対するITリテラシー教育の必要性 も痛感した。 その他、今回は7名という少人数で授業を行ったため、授業内で発表の撮 影や音声指導、録音資料作成等がスムーズに行えたが、学習者が多い場合、 学習者同士で撮影したり、宿題としてインターネットコミュニティに資料を 載せたりしてインターネットコミュニティを活性化する等の代案が考えられ る。 今後の課題としては、IT技術のメリットを授業でいかに最大限に活用で きるのか、対面教育と並行してITを活用し、いかに短期間で効率よく教育 効果を上げていくことができるかを実践的授業を通して研究していきたいと 考えている。

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注 (1)首相官邸高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部) http:/fwww.kantei.go.jp/jp/singi/it2 (2)大学間で学生交流協定を結んでいる短期の交換留学生も含まれる。 (3)今回の授業では、MSNのものを利用した。無料でメールアドレス を取得し、インターネットコミュニティの会員になれば、インター ネットコミュニティ上の掲示板に自由に発言し、資料を載せること ができるという機能を持つものである。コミュニティはイン八一ネッ ト上で誰でもアクセスできるオープンのものと、限られたメンバー だけがアクセスできるクローズのものがあるが、ここでは個々の学 習者に宿題として課題である発表原稿や録音資料を提出してもらっ たり、授業で学習者が発表したスピーチの録画資料等を載せたりす るためクローズにした。しかし、コミュニティ上に載せられた資料 は会員である「中級日本語聴解・会話」を受講している学習者間で は自由に視聴することができる。 (4)YANIITAとはe−Japan対応事業として独立行政法人国立国語研究所 の支援を受けて東京学芸大学留学生センター任都栗新草により開発 されたマルチメディア教材作成ツールのことである。 (5)教授者は対面授業時に学習者の発表に対するフィードバックを行っ たが、学習者は自分自身が考えるよい点、’改善点を確認するととも に再度インターネット上で録画資料を確認でき、発表のスキル向上 に役立ったと言える。 参考文献 池田伸子(2003)『CALL導入と開発と実践一日本語教育でのコンビュー タの活用』くろしお出版 大塚 薫(2004)「インターネットコミュニティを利用した日本語学習者 参加型授業の試み一発表のスキル向上を目的とした授業の構築 一」『韓国日本語学会第10回学術発表会論文集』pp.85−89. 大塚 薫・李 曝沫(2003)「韓国の遠隔大学における日本語教育事情の 調査研究」『韓国放送通信大学校論文集第36輯』pp.63−79. 独立行政法人国立国語研究所(2003)『コンピュータと新日本語教育2003』 凡人社

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高知大学留学生センター紀要 創刊号 鄭 起永(2003)『マルチメディアと日本語教育一その理論的背景と教材 評価一』凡人社 任都栗新(2003)『未来の教室の、元気な子どもたち デジタル教材の使 い方・活かし方3年後の授業はこう変わる!』PHP研究所 村上和弘(2002)「PCリテラシーと日本語・日本事情教育一インターネッ トを利用した実践例一」『総合的日本語教育を求めて』国書刊 行会 pp.610−633. 柳澤好昭(2004)「日本語学習者はどのようにリソースを用いているのか? 一電子化素材と電子媒体一」『平成16年度国立国語研究所公開 研究発表会 これからの日本語学習支援を考える一学びを支え るモノ・ヒト・コトー一』独立行政法人国立国語研究所 pp.19−30. 参考教材 学習技術研究会(2002)『大学生からのスタディ・スキ)レズ 知へのステッ プ』くろしお出版 国際交流基金関西国際センター編(2004)「初級からの日本語スピーチ 国・文化・社会についてまとまった話をするために』凡人社 産能短期大学日本語教育研究室編(1988)『講義を聞く技術』産業能率大 学出版部 産能短期大学日本語教育研究室編(1990)『大学生のための日本語』産業 能率大学出版部 東海大学留学生教育センター口頭発表教材研究会(1995)『日本語口頭発 表と討論の技術一コミュニケーション・スピーチ・ディベート のために一』東海大学出版会 おおっか かおる (高知大学留学生センター講師)

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