<リサーチコンペ研究成果><活動報告>郊外住宅再編
へ向けた拠点性の再考
著者
青木 嵩
雑誌名
関西学院大学先端社会研究所紀要
号
16
ページ
103-106
発行年
2019-03-31
URL
http://hdl.handle.net/10236/00027685
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! " リサーチコンペ研究成果 " ◆ 活動報告 ◆
郊外住宅再編へ向けた拠点性の再考
青 木
嵩
*1.はじめに
筆者は、2017 年度関西学院大学先端社会研究所リサーチコンペにおいて研究助成を獲得し、 2018 年 3 月まで当該助成金を用いた研究を行った。その成果は、2018 年度日本建築学会大会[人 口減少期の郊外戸建住宅地における施設機能再編の可能性に関する研究(その 1)および(その 2)]と都市計画学会第 16 回関西支部研究発表会[高齢化・人口減少過程における郊外住宅地居住 者の生活行動特性]に分けて発表済みである。また今年度から来年度にかけて両論文は各学会のジ ャーナルに投稿する予定になっている。そのため、本成果報告書では当該助成金を用いた本研究活 動において得られた知見について、両論文の要約を踏まえて報告するものとする。2.得られた知見
高齢化・人口減少が進む郊外住宅地において必ずしも全ての商業・サービス関連施設が、その数 を減らすわけではない。学習関係や福祉関係など、施設の種類によっては増加しているものも存在 する。また用途地域の規制があるものの、住宅地内においても施設が点在しており、またそれらが 変容している。住宅地内や地域の外縁部に立地する施設もあれば、主要幹線沿いに集中する施設も 存在する。飲食や購買といった居住者全体を対象とする施設が減少し主要幹線沿いに立地する一方 で、学習や福祉医療、生活などの特定の居住者層が利用し得る施設は増加しており相対的に住宅地 内に散っている。 住宅地内の各所における施設立地の傾向を見ると、交通結節点および近隣商業地域として指定さ れていたとしても必ずしもそのような地点に施設集積があるわけではない。一方で主要幹線沿いで は代行サービスや美容院などの生活を支える施設が増加しており、住宅地内には学習や福祉医療、 オフィスが立地する傾向がみられた。商店街では従来購買に関する施設が中心であったが、近年で は飲食や生活支援機能を有する施設が多く立地している。一方で複合型の商業施設では、テナント の変化により購買施設数が減少したが、それ以外に特徴的な変動はなく、開発から一貫して購買を 中心とした商業集積地区となっている。こうした違いからも今後の郊外住宅地の再編を考えるにあ たり、これら商業集積の差別化を想定していく必要があり、居住者の行動実態や希望と照らし合わ せる必要があると思われる。そのような観点を持ったうえで近年増加傾向にある共働き世帯に主に ────────────── *関西学院大学大学院総合政策研究科博士課程後期課程焦点をあてて郊外住宅地居住者の生活行動実態を整理する。 共働き世帯は、総じて高齢者層と比べて食料品の購買や外食における選択肢が多く、居住地外の ロードサイドや都市部、そしてインターネットを活用している。しかしながら外食する際には居住 地内や隣接地域の店舗を高齢者層より利用しており外食頻度も高い。なお共働き子育て世帯が主に ロードサイドを活用する傾向を持つのに対し、共働き夫婦世帯は都市部も利用する傾向が伺えた。 共働き世帯は、近年郊外住宅地居住者の大半を占める高齢者層と異なっており、これからの郊外住 宅地を考える際に高齢者のみに着目した機能に終始してしまっては共働き世帯の方々のニーズを取 りこぼすことにもなりかねない。購買においてもネット利用率が高いことや高齢者以上に外食の頻 度が高いことなどからも地域内の施設機能を考える際に違う視点が必要になると言える。
3.研究の概要
3.1 研究の背景 我が国では戦後の高度経済成長期に都心への過度な人口流入の受け皿として郊外住宅地が整備さ れる。しかしながらそれら地域は主に住宅用地として新しく開発され、居住者が短期間で流入し た。そして現在では居住者の高齢化や人口減少が社会問題となっている。さらに高度経済成長期以 降に起きた周辺地域の商業開発などに伴い、それら住宅地内における住宅以外の施設が衰退してし まう。そのため今後更なる高齢化や人口減少が起きた際に現在の郊外住宅地の地域内施設では対応 しきれないことが予想され、地域内の施設や機能の再編の検討が必要とされる。またこうした郊外 住宅地には少なからず新しい居住者層の流入があり、ライフスタイルも開発当初に比べて変容して きている。こうした点から高齢者への対応のみに終始していると、他の居住者層の生活行動特性と 地域構造との間に乖離が生まれることが懸念される。 3.2 研究手法 そのため、本研究では主に 1)地域内施設の変容調査と 2)居住者の生活行動実態調査を行った。 さらに具体性を持たせるため、本研究では隣接しあう兵庫県三木市緑が丘町地区および志染町青山 地区1)を対象とした。1)地域内施設の変容調査は、ゼンリン住宅地図を用いて現状の施設立地と その集約/分散傾向を把握することを目的とし、加えて時代の移り変わりに合わせて施設がどのよ うに変化してきたのかを確認した。2)居住者の生活行動実態調査は、[緑が丘・志染町青山地区の まちづくりに関するアンケート]の結果を用いた。本アンケートは、研究対象地の各自治会と調整 を行い、協力を得られたところから優先して配布した。なお従来のアンケート調査では世帯主の動 向しか確認できないため、本調査ではより居住者の生活行動実態を把握するべく同居人にも任意で 回答してもらうよう別紙を用意した。 ────────────── 1)両地区は、三木市南部に位置しており、お互いに隣接し神戸市西区との境界線に接地する形で開発され た。また開発主体が同じ郊外戸建住宅団地ではあるが、それぞれの開発時期は異なる。緑が丘町地区は、 高度経済成長期過程の 1970 年代初期より開発および分譲が始まる。一方で志染町青山地区は、比較的新 しい住宅地であり、バブル期の 1980 年代中盤から後半にかけて開発・分譲が行われた。神戸市の郊外住 宅地としての様相が強く、大阪圏から見た場合は超郊外の一つと言える。 関西学院大学 先端社会研究所紀要 第 16 号3.3 知見を踏まえた提案 居住者の生活実態と地域内へのニーズから、郊外住宅地の再編には①居住地域内の移動や購買に 選択肢を与える生活補助サービス、②交流を目的とした活気のあるサードプレイス、③自身の時間 を作れる家庭内とは異なる落ち着いた空間といった要素が必要であると考えられる。また移り変わ る地域のニーズに合わせて地域構造を組み換え、そうした施設やサービスを維持していくためにも それらを支える仕組みや組織が必要であり、上記要素に加えて築き上げる必要がある。
4.今後の課題
本調査のアンケートでは、主に施設の利用実態を中心としており、コミュニティ活動や生活の場 面による使い分けなどは把握しきれていない。また本来であれば緑が丘町地区と志染町青山地区の 相互利用も検討するべきであったが、志染町青山での調査が時間と先方との兼ね合いから実施でき なかった。その為郊外住宅地の再編を考えるにあたり、①コミュニティ活動も含めた居住者の活動 実態と②隣接する地域間での相互利用の実態は次回以降の研究で明らかにしていく。 参考文献 −和文− 饗庭伸(2015)『都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画』花伝社 鰺坂学(2015)“「都心回帰」による大都市都心の地域社会構造の変動−大阪市および東京都のアッパー・ミド ル層に注目して−”日本都市社会学会年報 33 号,pp.21-38 新雅史(2013)「郊外の危機とコンビニの可能性」三浦展・藤村龍至(編)『現在知 Vol.1 郊外 その危機と再 生』NHK 出版,pp.103-120 老川慶喜(2016)『日本鉄道史 大正・昭和前線期−日露戦争後から敗戦まで』中央公論新社 小田光雄(1997)『〈郊外〉の誕生と死』青弓社 角野幸博(2000)『郊外の 20 世紀 テーマを追い求めた住宅地』学芸出版 角野幸博(2012)「概説 郊外住宅地の成立と変容」『住宅生産振興財団まちなみ塾 2012 講義録』pp.5-28 角野幸博・岡絵理子・水野優子・伊丹康二・井ノ口弘昭(2015)『駅から始まるコンパクトシティ形成促進方 策に関する研究(1)調査報告書』都市住宅学会関西支部 角野幸博・岡絵理子・水野優子・伊丹康二・井ノ口弘昭(2016)『駅から始まるコンパクトシティ形成促進方 策に関する研究(2)調査報告書』都市住宅学会関西支部 門脇耕三(2013)「論点としての「郊外」地図」三浦展・藤村龍至(編)『現在知 Vol.1 郊外 その危機と再生』 NHK 出版,pp.57-76 川口太郎(2007)“人口減少時代における郊外住宅地の持続可能性”駿台史学 第 130 号 pp.85-113 速水健朗(2012)『都市と消費とディズニーの夢−ショッピングモーライゼーションの時代』角川書店 東浦亮典(2013)「「郊外住宅地」再生への挑戦−WISE City を目指して」三浦展・藤村龍至(編)『現在知 Vol.1 郊外 その危機と再生』NHK 出版,pp.219-246 松本真澄(2013)「多摩ニュータウン再生−高齢化への兆戦」三浦展・藤村龍至(編)『現在知 Vol.1 郊外 そ の危機と再生』NHK 出版,pp.153-178 三浦展(2004)『ファスト風土化する日本−郊外とその病理』洋泉社 三浦展(1995)『「第四山の手」型ライフスタイルの研究「家族と郊外」の社会学』PHP 研究所−英文・独文−
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