1.はじめに
官製ワーキングプアが巷間を賑わして久しい。この用語自体は 2007 年の朝日新聞の記事が初出とされている。官製ワーキングプアが何を指 し示すかは必ずしも明確ではないが、この用語が広く関心を集めた背景 にはいわゆる「非正規」と呼ばれる働き方が増加する中で、ともすれば 比較的安定した、条件のよい職場であると考えられている公共団体にお いて、むしろ民間よりも劣悪な環境で働く人々が多いということに対す る驚きがあったと思われる。 実際のところ民間の企業において認められている権利が公務員の臨 時・非常勤職員には認められないなど、法律面においても不利な環境に ある。これまでも上林(2012、2015)をはじめとして研究が積み重ねら れてきた。また昨年 12 月には、総務省から「地方公務員の臨時・非常 勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会報告書」(以下 総務省 2016 報告書)が発表された。さらに 2017 年 5 月には地方公務員 法が改正され、臨時 ・ 非常勤職員の扱いが制定以来初めて大きく変わる ことになった。これに対し自治労の臨時・非常勤等職員全国協議会が臨 時・非常勤等職員の処遇改善、雇用安定を求めて総務省要請をおこなう など労働側の動きもある。しかしながら現場の問題、実践の問題として 《研究ノート》臨時 ・ 非常勤雇用の公務員の
問題点についての聞き取り調査
武 谷 嘉 之
はまだまだ不十分である。本稿ではこのような公務における「非正規」 労働者の問題を実践的、実証的に考察するための準備的作業としておこ なった聞き取り調査を報告するものである。なお本稿において公務員と しているのは地方公務員であり、調査の対象は地方公共団体における臨 時・非常勤職員である。
2.公務労働における「非正規」労働者
2.1 公務における「非正規」労働者の種類と問題の所在 まず公務労働における「非正規」労働者を雇用主という点で大きく分 類すると、臨時・非常勤公務員と公務事業の民間委託先の被雇用者に分 けられる。後者についてはやや注意が必要である。民間の業者への委託 である以上、期限の定めのない労働者、いわゆる正社員である可能性も あるわけだが、実際には公務事業の委託の多くは年数を限った契約でお こなわれ、契約期間満了後は新たに入札により委託先を選定することに なる。このため受託企業としては職場を確保できるかどうかわからない ために、いきおい期限の定めのない労働者を雇うことを躊躇し、最大で も委託契約期間に限った臨時雇用で対応することになる。このため事実 上委託事業が増えれば増えるほど、不安定な雇用の労働者が増えるとい う結果をもたらす。また入札については受注額も大きな要素となるため 委託事業における労働者の賃金水準は、従来自治体が直接事業をおこ なっていた場合の賃金水準よりもはるかに低いことが多い。 上述のように委託事業における「非正規」労働にも大きな問題が含ま れているが、本稿ではまずは地方公共団体における臨時・非常勤職員、 特に公営企業職員に準じた扱いとなっている「単純な労務に雇用される 職員」(技能労務職員)の臨時・非常勤職員について検討したい。委託 事業においては公的機関の外側にワーキングプアを作り出しているが、 「非正規」公務員問題は地方公共団体の内部にワーキングプアを作り出している。聞き取りからもはっきりするように、業務の内容や勤務時間、 勤続年数において「正規」公務員と同じように働いているにもかかわら ず、公務員ならば当然期待できる生活の安定もなく、昇給もほとんどな く、逆に民間労働者ならば当然認められる労働権も制約されている。さ らに「単純な労務に雇用される職員」は、一般職非常勤職員には認めら れている人事委員会・公平委員会への「勤務条件に関する措置請求」も できない。次節以降で詳しく見るように彼らの労働条件を改善する方策 は限りなく閉ざされているのである。 2.2 「単純な労務に雇用される職員」(技能労務職員)の位置づけ 法律上は「単純な労務に雇用される職員」と規定されているが、この 呼称は業務の実態とは合致していない。そのため一般に技能労務職員、ま たは現業職員といわれる。(本稿では以下技能労務職員とする。)具体的に は清掃職員(ゴミ収集職員)、用務員、学校給食員などとされている。* 1 このような業務は、地方公共団体が直営事業とする場合もあるが、公営 企業としておこなう場合も多い。業務の内容として「行政事務を担当す る者以外」* 2とされているので、いわゆる一般行政職とは、実際上も 法律上も区別されている。給与の基準となる法律も違う。人事委員会に よる給与改定の勧告もない。このためその給与に関しては一般の行政職 とは別の条例で定める必要があるが、本稿の対象である K 市では、そ の条例において、50 年前から「当分の間」一般職の給与と全く同じ扱 いとなっている。* 3これは K 市が特殊なわけではなく、3 分の 1 の地 方公共団体が一般行政職と同様の給与体系となっている。* 4人事委員 *1 総務省(2009)。 *2 昭和 26 年 2 月 15 日政令 25 号「単純な労務に雇用される一般職に属する地方公 務員の範囲を定める政令」。本政令は翌年 10 月には失効しているが、現在でもそ の範囲は解釈上一致するものとされている。 *3 K 市条例第 12 号「企業職員の給与の種類及び基準等に関する条例」昭和 43 年(1968 年)3 月 21 日公布。 *4 2008 年 1 月 1 日現在における総務省調査を元に計算。原データは公表されてい ないが、総務省(2009)研究会第 2 回における資料 3 として公表された数値に基 づいた。
会勧告制度がないことから技能労務職員は一般行政職と違って、労働組 合の団体交渉によって賃金を決定し、労働協約を結ぶ権利を持っている が、K 市では一般行政職と給与体系が同じなため、「正規」の技能労務 職員については独自の交渉を持っていない。 2.3 臨時 ・ 非常勤の技能労務職員の労働環境 前項で述べたように技能労務職員は一般行政職とは違った扱いを受け ているが、技能労務職員の臨時 ・ 非常勤職員はさらに複雑な扱いを受け ている。まず一般行政職を含む「非正規公務員」全体の状況としてはす でに上林(2012、2015)によって明らかにされているとおりである。上 林が指摘している 4 つの格差「雇用格差」「処遇格差」「情報格差」「権 利救済格差」は技能労務職員の臨時 ・ 非常勤職員にも当てはまるが、「雇 用格差」「権利救済格差」に関しては一般行政職の臨時 ・ 非常勤職員よ りもさらに厳しい状況にある。 まず「雇用格差」については技能労務職員が携わる業務が外部委託の 圧力に強く晒されていることがある。公務員の定数削減に伴って「正規」 職員の減少と臨時・非常勤職員の増加といういわば置き換え現象が急速 に進んでいるが、* 5技能労務職員については、置き換えでなく、業務 そのものの外部化が進んだため、「正規」職員が減少しても、臨時・非 常勤職員が増加するわけではない。直近の 2012 年と 2016 年を比較すれ ば全国で 98,548 人から 94,838 人に 3,710 人減少している。* 6この時期 の他の業務における臨時・非常勤職員はおおむね増加しており、* 7臨時・ 非常勤の技能労務職員は他の業務における臨時・非常勤職員よりも厳し い雇用環境にあることが見て取れる。 *5 上林(2015)p.33。 *6 総務省(2013)および総務省(2017)を元に筆者計算。技能労務職員に給食調理 員が含まれていなかったので合算した。 *7 その他に減少しているのは医師と保育士等であり人手不足が深刻な分野であると 言える。
次に「権利救済格差」については、臨時・非常勤職員は法律上の位置 づけが曖昧なために、「労働法と公務員法の狭間の中で、どちらの法か らもその権利を保護するシステムから排除され、どちらからも救済され ない」* 8のであるが、残されたわずかな権利救済システムとして、一 般行政職の臨時・非常勤職員は「勤務条件に関する措置の要求」、つま り地方公共団体の人事委員会または公平委員会に給与を含めた勤務条件 の改善を要求することができる。人事委員会または公平委員会は、その 要求を審査し判定して市長等の任命権者に必要な勧告をすることになっ ている。* 9また非常勤職員に限れば人事委員会または公平委員会に対 して自身がうけた「不利益処分に関する審査」を求めることができる。 実際にはこれらのシステムは活用されているとはいいがたい状況であ るが、これらの権利すら技能労務職員には認められていない。その代わ りに技能労務職員には労働組合を結成する事が認められており、団体交 渉をへて賃金その他の労働条件について労働協約を締結することができ る。ところが、これも技能労務職員の臨時・非常勤職員にとっては絵に 描いた餅なのである。 まず公務員の労働基本権について簡単に確認すると、団結権について は警察職員、消防職員を除いてすべての公務員に認められている。逆に 争議権についてはすべての公務員に禁止されている。技能労務職員とそ の他の公務員に違いがあるのは団体交渉権であり、上述のように技能労 務職員には団体交渉権と協約締結権がある。つまりその他の公務員と違 う待遇を求める権利を持っているということになる。ところが現実には K 市の例を挙げたように一般行政職の公務員と同じ組織に属し、独自の 交渉をしていない場合が多い。そもそも臨時・非常勤職員の組合加入率 は非常に低いが、例え加入していたとしても、全体交渉の中で臨時・非 *8 上林(2015)p.7。 *9「地方公務員法」第 46 条 - 第 48 条。
常勤の技能労務職員の利害が反映される可能性は低い。また技能労務職 員独自の交渉を持っている場合でも、「正規」の職員と臨時・非常勤職 員との労働条件の格差があまりに大きいだけでなく、業務そのものが外 部化され、縮小されていくという環境の中で、「正規」と臨時・非常勤 職員が連携できる条件はきわめて限られていると言わざるをえない。し かも「正規」と比べて強い「雇用格差」に晒されている臨時・非常勤職 員にとっては万が一労働条件の向上を勝ちとったとしても、パート労働 法や労働契約法の適用を受けないために半年後には合法的に雇い止めさ れるのではないかという不安にさいなまれる事になるのである。 2.4 K 市の環境事業所における臨時・非常勤職員の労働環境 技能労務職員が置かれている労働環境について本稿で聞き取りをおこ なう、K 市環境事業所の臨時・非常勤職員について事実関係を確認して おく。本来的に公務労働において臨時・非常勤職員は例外的であるとさ れている。いわば正規職員が何らかの理由で一時的に業務に就けない場 合に臨時職員を雇うという形が本来的なあり方である。ところが現実に は地方財政の逼迫を背景に、行政改革等の名の下に「正規」職員の定数 削減=人件費削減がおこなわれた結果、必要な公務労働に対して「正規」 職員の数が恒常的に足りないという現象が起こった。そこで本来は例外 的であった臨時・非常勤職員を「常勤」の職員として「任用」するとい うことが起こったのである。このため法律上の「任用」根拠が混乱して いる状況が続き、特別職として任用された非常勤職員が一般事務をおこ なうという法律と現実の間に大きな齟齬がある自治体が少なからず存在 した。今回の地方公務員法の改正は主にこの問題を解消することを目的 としていると思われる。* 10 K 市の環境部環境事業課の清掃-ごみ収集職員の定員は 27(平成 28 *10 本稿では触れないがもうひとつの目的は臨時・非常勤職員の待遇改善にある。 改正地方公務員法の問題点については上林 (2017a , b) を参照のこと。
年 4 月 1 日現在)である。* 11これ以外に臨時職員が 9 名(募集人数 12 名)、 非常勤職員が 7 名で日々の業務をおこなっている。3 分の 1 以上が臨時・ 非常勤職員であり、業務上不可欠な存在である。 業務内容については臨時職員は主にゴミ収集、非常勤職員は「正規」 職員と同様にゴミ収集に加えて事務もおこなっている。 任期については臨時職員が 6 ヶ月更新、非常勤職員が 1 年更新で毎回 更新の手続がとられている。K 市としては更新はしないことを建て前と しているが、現実には 10 年以上にわたって働いている臨時・非常勤職 員もいる。最も長い非常勤職員は 19 年間在職している。 労働時間については「正規」職員の労働時間は 1 日 7 時間 45 分、こ れに対して臨時職員は 1 日 6 時間 30 分で週 1 回だけ 7 時間 30 分、非常 勤職員は 7 時間 30 分、すべて週 5 日勤務である。法律上はフルタイム とされている臨時職員の労働時間が短く、パートタイムとされている非 常勤職員の方が労働時間が長い。どちらにしても「正規」職員の労働時 間の 4 分 3 は超えている。判例上はどちらも常勤職員とみなされる労働 時間である。 賃金については臨時職員は時給計算であり、時給 1,329 円(就業 1 年未満 は 1,276 円)、非常勤職員は月額 23 万 2,300 円である。昇給はない。ベースアッ プに関しては臨時職員は直近 10 年間で 9 円と時給にして年に 1 円程度、非 常勤職員には直近 10 年ではない。賞与、退職手当などはない。また K 市 は臨時・非常勤職員の給与に関しては条例の規定が全くない。* 12 *11 総務省「平成 28 年地方公共団体定員管理調査 市区町村(指定都市除く)デー タ」。 *12 唯一、「K 市一般職の職員の給与に関する条例」第 24 条に「非常勤職員の給与」 として「常勤を要しない職員(再任用短時間勤務職員及び任期付短時間勤務職員 を除く。)については、任命権者は、常勤の職員の給与との権衡並びに職務内容 及び職務経験等を考慮し、月額 330,000 円の範囲内で給与を支給する。」と原則と 上限についてのみ規程がある。しかし、判例上は今回聞き取りをおこなった職員 は「常勤を要する職員」に分類されると思われる。K 市ではほぼフルタイムで働 く正規でない職員についての規程はないのである。
労働組合については「正規」職員はほぼ全員が自治労または自治労連 傘下の労働組合に加入している。但し、上述のように環境事業所職員と して労使交渉に臨むことはない。臨時・非常勤職員は独自の組合を結成 し、連合傘下の合同労組に加入し、独自の交渉をおこなっている。
3.聞き取り
* 13による K 市における臨時・非常勤職員の現状
3.1 属性について 今回聞き取りをおこなったのは K 市環境事業所で勤務する 40 代後半 の技能労務職員 A 氏である。A 氏は環境事業所に勤務して 9 年を超える。 昨年 A 氏を中心に環境事業所の臨時・非常勤職員が労働組合を結成し た。その関係で連合大阪の事務所をお借りして 7 月初旬に 4 時間に渡っ て K 市の技能労務職員が置かれている労働環境について聞いた。 A 氏が環境事業所で働くようになった経緯は次の様なものである。 「僕は最初はサラリーマンでしたし、家庭の事情もあってやめて、それか ら友人といっしょに起業したりもしたんですが、そんなにうまくいくはずも なくて。それで環境事業所で募集があるというので、普通に、軽い気持ちで ね、応募したんです。そんな何年も、こんな 10 年も続けるなんて思ってなかっ たんで、当時はね。」 特別に公務員であることや、環境事業所の業務に関心があったという わけではなく、ひとつのアルバイトとして就職したということである。 3.2 環境事業所における臨時職員と非常勤職員 上述のように K 市環境事業所では臨時職員と非常勤職員が一定の割 合を占め、不可欠な役割を担っているが、A 氏によると当初は非常勤職 *13 今回の聞き取りでは個人が完全に特定されることを防ぐために、趣旨を損なわ ない範囲で A 氏がよく知る別の職員の話も意図的に組み合わせてある。諒とされ たい。なお聞き取り内容に関しては聞き間違い、誤解等も含めてすべて筆者の責 任である。員という職階はなかった。 「(9 年以上前に)臨時職員で入職して、それから非常勤になりました。入職 したときは臨時職員しか募集がなかった。そもそも非常勤職員という枠組み が環境事業所にはなくて、(僕が)入ってから非常勤職員ができた。」 「市役所の事務の方はそれ以前から非常勤がありました。現業職(技能労務 職員)でも給食センターなんかはあったんかな。学校校務員なんかも非常勤 職員というので K 市はまかなっている。」 「(環境事業所では)平成 21 年にできた。(非常勤は)最初 3 人募集で、僕も 手を挙げたんですが、落ちたんです。次の年の 3 名募集で、非常勤になりま した。」 「臨時職員からの募集です。(非常勤職員は)今も一般公募はしていない。臨 時から非常勤という流れ。」 なぜ非常勤という任用の仕方が生まれたかについては 「新規では正規はとらないということがルール化されている。」 (どこかに書かれてあるのか?)「どこにも書いてない、イヤどこかに書いて あるかな。一寸その辺はわからない。」 「それで、ドンドン正規職員は減っていくという中で、アルバイト(臨時職員)* 14 だけでは、アルバイトと正規職員だけでは対応できないので。正規職員に準ずる 形で非常勤職員(という任用の形態がうまれた)。」 簡単にまとめれば、環境事業所では正規職員の新規採用がある時期か らおこなわれなくなった。そのため後に述べるように収集作業を中心と した業務をおこなう臨時職員(アルバイト)だけでは業務がまわらなく なり、正規職員と同様の仕事を正規職員に「準じて」おこなう非常勤職 員を設けたということである。環境事業所全体としては正規職員は一貫 *14 聞き取りの中では臨時職員をアルバイトと表現している部分がある。臨時職員 とアルバイトは全く同じ意味である。本稿では現場での呼称を尊重し、聞き取り 部分に関しては用語の統一をおこなわず、アルバイトと臨時職員を混在させたま まにした。
して減っており、結果的には臨時・非常勤職員の割合が高まるというこ とになった。 では A 氏が非常勤職員に応募した理由はなんだったのか。 「非常勤になったのは、給料は確実に増えるというのはわかっていたし、仕 事の内容が濃くなるというか、収集の仕事だけではなくて、事業所の運営に 関わっていけるような仕事に就けると思って。それが魅力的でした。やはり 仕事にやりがいを求めるというところがあるので。臨時でやっているうちに こうしていきたい、ああしていきたいという欲も出てきて。」 「(再任用について非常勤の方が有利になるという意識はあったのか)そうい う意識もなかった。アルバイトは半年で、非常勤は 1 年毎。でも僕が入った ときは(現在はおこなわれている再任用の際の)面接とかそんなんはなかっ たんですよ。半年ごとに自動更新みたいな。雇用通知書ももらってたかどう か。自動自動でズッと。だから毎回退職してるなんて気は全然なかったし。」 アルバイトとして軽い気持ちで臨時職員となった A 氏であるが、非 常勤職員に応募するときには主体的に環境事業所の業務に関わりたいと いう欲求、いわば腰掛けでなく職業意識が生まれてきたと言えるだろう。 高まる職業意識と、非常勤職員という待遇の懸隔が A 氏の思いの原点 にあるように思われる。では正規職員と非常勤職員、また臨時職員の間 でどれほどの業務内容の違いがあるのだろうか。 3.3 任用の違いによる業務の違い A 氏からの聞き取りによれば K 市環境事業所の業務体制は次の様な ものである。 3.3.1 収集業務 まず基本となるゴミの収集業務については 11 台のパッカー車で収集 コースが組まれている。これが人員減の影響で本年度に入ってからは 9 台でまわっている。* 15この点に関する労働強化と臨時・非常勤職員の *15 水曜日におこなわれる資源ゴミと粗大ゴミの収集に関しては 12 台体制。
憤りについては後ほど触れる。パッカー車は号車番号で呼ばれるが、号 車ごとに収集コースと運転手が決まっている。運転手は正規職員から選 ばれ、原則変更されない。収集業務は 3 人で行うことになっている。つ まり号車ごとに決められた正規職員の運転手と、作業員 2 人である。作 業員は正規職員、非常勤職員のグループと、臨時職員のグループに分か れていて、それぞれのグループから 1 ヶ月のローテーションでひとりず つ各号車に配置される。つまり作業員については 1 ヶ月ごとに組み合わ せがかわる。基本的には正規・非常勤職員と、臨時職員の組み合わせに なる。現実には人数のバランスから正規職員と非常勤職員の組み合わせ になることもある。正規職員と正規職員の組み合わせになることは原則 的にはない。 3.3.2 事業所の行政的業務 ゴミの収集業務以外の業務については、事業所内で業務ごとに班が組 まれていて、正規職員と非常勤職員は班に属し事務作業を含めた業務に 当たる。正規職員と非常勤職員のデスクには原則パソコンがある。臨時 職員は班には属さず、デスクはあるがパソコンはない。班の業務におい て人手が必要なときに適宜仕事を振られる。 3.3.3 その他業務 その他の業務は多岐にわたる。ここですべてを書き上げることはしな いが、後に触れるようにその他の業務を遂行する際に臨時職員が「身分 差別」を感じることが多いようである。その他の業務に関しても正規職 員と非常勤職員が同様の仕事をしている例が多い。例えば業務上必要な 備品や消耗品の購入は正規・非常勤職員しかできない。購入の補助(運 搬など)のためについていくことはあるが、支払はできない。逆に臨時 ・ 非常勤職員のみの仕事としては構内の溝掃除がある。また事業所から 離れた場所にある粗大ゴミの中間処理施設の用水路の掃除は 「ポリバケツに 10 杯とか。スゴい量のヘドロみたいなのがでて、めちゃくちゃ
しんどいんですけど、ほとんどアルバイトの人だけでやってますね。」 などのように肉体的にきつい仕事を臨時職員にまわすということがお こなわれているようである。 3.3.4 職場の運営に関する違い 正規職員は安全衛生委員会をはじめとする職場の各種委員会に代表を 送っている。これに対して非常勤・臨時職員は発言する場がない。一方 事業所内での週 1 回の職場会議には正規・非常勤職員は参加するが臨時 職員は参加できない。 「特殊な情報ですとか、今でいうと、一部ゴミ有料化に伴ってのいろんな事 務作業とかは、シークレット扱いというか、アルバイトに対しては情報を出 さない。市民に公開されていない情報は臨時職員にも知らせない。」 臨時職員に関係する事項のみ、のちにアルバイト会議という形で伝達 される。 3.3.5 小括 このように細かい違いはあるが、大きな違いのみでいえば正規職員と 非常勤職員の違いは 「敢えて違うのはパッカー車の運転ができない。パッカー車に限って。軽ダ ンプとか、ワンボックスの軽とか、1 トントラックだとか、他の車は僕たち も運転する。正規でもパッカー車運転する人は実際は限られているんですけ どね。」 ということであり、正規・非常勤職員と臨時職員の違いは収集業務以 外を振り分けている班に所属せず、それに伴う事務作業に携わらないこ とといえる。また本稿では詳しくは触れないが、リユース自転車の組み 立て・整備は主に臨時職員が担当している。* 16 *16 リユース自転車はイベントなどで市民に抽選で提供される ほか、震災支援と して被災地に送られる、海外に寄贈されるなど、K 市の施策の中で一定の役割を 果たしている。
3.4 任用の違いによる賃金の格差 3.4.1 任用別の賃金の額面上の格差 業務の違いは正規・非常勤職員と臨時職員で大きいが、金額的な格差 は正規職員と臨時・非常勤職員の隔たりが大きい。 非常勤職員の給与は勤続年数が何年であっても一律で約 23 万円であ る。年収ベースで見ると、ほぼ K 市の大卒初任給と同額である。正規 職員は当然昇給があるので、A 氏と勤続年数が同じぐらいの正規職員で あれば、おおよそ A 氏の年収の 2 倍程度と考えられる。* 17臨時職員の 場合は時給計算なので、月によって変動するが月収ベースで 18 万円弱、 休日出勤、時間外勤務などを含めても年収では 200 万円をわずかに超え る程度である。 この点について A 氏は 「(賃金の格差の理由について)僕の主観で言うと仕事が違うとは思わない。 任用の違いだけだと思う。入職の仕方が違うだけ。」 としつつも 「(賃金の格差については)でもそれは最初からわかっていたことですし。」 と話し、月額賃金の格差については不満ではないというよりも、動か しがたいものと感じている様子が見て取れる。 むしろ A 氏が拘るのは各種手当てである。 「(ゴミ回収業務には)特殊勤務手当というのがつくんです。日額 500 円。(最 近まで知らなかったので)こんなんでてるんや思て」「(動物などの死骸を処 理した場合には)屍獣手当もある。1 件 300 円。」「これは僕らもやっている んやから当然貰えると思うんです。これは正規職員とか臨時とか関係ない じゃないですか。」「別に(屍獣手当の)300 円がどうしても欲しいって言っ ているんじゃないですよ。なんでそんな差別をするんですかって言っている *17 K 市「K 市の給与・定員管理等について」(27 年度)による。なお K 市の給与 は近隣自治体と比較して高水準というわけではない。
んです。」「(団交では)時給に含まれていると言うんです。ビックリしました、 そんなん初めて聞きました。最近(市側も)おかしいと思ったのか言わなく なりましたけど。」「この前の団交では屍獣の処理は正規職員がすると言うん です。非常勤やアルバイトは屍獣処理はせんでええと言う。でも実際ね、市 民さんにそこでネコ死んでる言われて、僕ら非常勤やからさわれませんね んって言えないでしょう。」「正規の人でもそんなんイヤやからやらへんって 言う人もいるし、実際これまでアルバイトがやらされてきたんですから。(市 側の)非常勤、臨時の職員にそこまでさせるわけにはいかないとか、どの口 がゆうてんねんとか思います。」 A 氏が指摘する業務に関わる手当以外にも賞与に当たる期末手当・勤 勉手当、退職手当などの手当が正規職員以外には支給されない。現時点 でも最も勤続年数の長い非常勤職員が退職するとすれば、もし彼が正規 職員としての任用であれば 20 ヶ月程度の退職手当がでるはずである。 非常勤職員は定年まで勤続したとしても退職手当はない。 3.4.2 臨時職員と非常勤職員の賃金体系の違い 臨時職員と非常勤職員の賃金は時給に換算すれば 100 円程度の違いで しかない。しかし賃金体系が全く違う。 「賃金、金額も違いますが、賃金体系が違う。僕らは月額報酬で臨時は時給 換算の給料。」 公務労働における報酬と給料の違いについて補足が必要であると思わ れる。非常勤職員については地方自治法第 203 条 2 において「報酬を支 給しなければならない」とされている。この報酬と必要経費の弁済のみ が規定されている。これを運用すると月額報酬と通勤手当ということに なっている。これに対し臨時職員は同法第 204 条において給料及び旅費、 その他の手当を支給しなければならないことになっている。 非常勤職員に関する規程は本来は技能労務職員には適用されない。技 能労務職と一般行政職の法律上の位置づけが違うからである。ところが
K 市では最初に触れたように、正規職員の場合どちらも同じ給与体系に なっているので、後に団体交渉に関する聞き取り内容で触れられるよう に、人事課は環境事業所の非常勤職員に関して他の非常勤職員と法的位 置づけが違うとは意識していなかった。つまり K 市においては技能労 務職であっても臨時職員から非常勤職員に「あがる」と、通勤手当を除 くあらゆる手当* 18が支給されなくなる可能性がある。この点を意識し ていたのかどうかについては、 「実際臨時のときもなんの手当も付いていなかったですから気にしていな かったですね。最初から一時金も、退職手当も何もなかったですから。例え ば屍獣手当なんかもアルバイトには出えへんとゆうことは知っていました けど。労働組合をつくろうとゆうときにいろいろ調べているうちになんや正 規の職員さんについている手当が全く出ていないんやと。」 少なくとも不利になるという認識はなかったのである。実際の給与は 当時は手取額にして2万円程度の差があったという。時給の違いが約 100 円であるからその程度の差が出るだろう。しかし現在では上述のよ うに賃金差は 5 万円程度まで大きくなっている。これは非常勤職員の月 額報酬が上がったわけでも、臨時職員の時給が下がったわけでもなく、 次項で扱う労働時間に関わっているのである。 3.5 任用の違いによる労働時間の違い 労働時間については近年の総務省通達や地方財政再建の影響がもろに 現れている。 「時系列で言うと、その時(平成 20 年頃)は臨時も、正規も、全員 8:45 か *18 法律で列挙されているのは「扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、 通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含 む。)、へき地手当(これに準ずる手当を含む。)、時間外勤務手当、宿日直手当、 管理職員特別勤務手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、管理職手当、期末手当、 勤勉手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、任期付研究員業績手当、義務 教育等教員特別手当、定時制通信教育手当、産業教育手当、農林漁業普及指導手当、 災害派遣手当(武力攻撃災害等派遣手当及び新型インフルエンザ等緊急事態派遣 手当を含む。)又は退職手当」(地方自治法第 204 条2項)
ら 12:00、1 時間休憩で 13:00 から 17:15 でした。非常勤職員が 21 年度 にできたんですが、全く同じでした。ところが平成 23 年 4 月に正規だけ休 憩時間が 45 分になったんです。現場ではそんな意識されないんですけど。 それで平成 24 年度に臨時と非常勤も 45 分休憩にするからということで、そ のかわり終業を 15 分早めるというようなことらしくて、8:45 から 12:00、 45 分休憩で 12:45 から 17:00 に終業時間が 15 分早くなった。その後、臨 時が月火水木は 16:00 終業に、水は 17:00 終業、さらにその後に臨時につ いては第 5 水曜日は「勤務を要しない日」ということになった。土日祝はそ れまでも「勤務を要しない日」で。」 つまり、まず平成 23 年に正規職員について休憩時間を短くした上で、 次年度に臨時・非常勤職員の休憩時間の短縮と終業時間の変更を行った のである。ここで巧妙に市側は正規職員と臨時・非常勤職員の勤務時間 に格差をつくることに成功している。臨時・非常勤職員の勤務時間を短 くしたことについては総務省の 21 年通知* 19の影響であると思われる。 21 年通知は臨時・非常勤職員の適切な任用を求めているが、多くの自 治体でそうであるように K 市でも非常勤・臨時職員の待遇の改善や正 規職員への登用という形での適切化ではなく、正規職員と臨時・非常勤 職員の違いが明白になるような制度改革を行ったのである。それが端的 に言えば 15 分早い終業時間であった。* 20これは臨時職員にとっては 1 日当たりの収入の減少、月収の減少を意味した。非常勤職員にとっては、 月収が減るわけではなかったが、 「同じ仕事をしていて、5 時になったから帰りますわ、とか言えないでしょう。 会議とか打合せとかしていて、僕ら非常勤やからもう終わりますとかあり得 *19 平成 21 年 4 月 24 日付総務省自治行政局公務員部公務員課長・給与能率推進室 長通知「臨時・非常勤職員及び任期付短時間勤務職員の任用等について」(総行 公第 26 号)。 *20 これによって後に触れる業務上の災害に関する保険の取り扱いも地公災から労 災にかわった。
ないじゃないですか。」「(団交では)だから、17:15 に戻してくれといって いるんです。別に 15 分ぶんの給料くれと言ってるんじゃないんですから。 今までと同じ給料で働くといってるんですけど(市は認めない)。」 次に、おそらく財政上の要請から臨時職員の勤務時間がさらに短く なった。最初に書いたように 1 日で 1 時間、第 5 水曜日がなくなったせ いで年間 4 ~ 5 日分の減収となった。この減収については 「(団交では正規の)労働組合とキチンと話し合ったと市側は言うんです。で もそこに臨時の意見なんか入ってないんです。経費削減の必要性はわかりま す。でも結局一番弱い立場の人間に負担が押しつけられる。時給はこの 10 年で 9 円しか上がってないですし。」 と話している。K 市環境事業所の場合、臨時職員も月~金で毎日業務 に就いている。事実上常勤の労働者である。1 時間早く終わったから別 のアルバイトをするというようなことができるわけではない。臨時職員 を不可欠の戦力として雇用しながら、処遇を改善するわけでもなく、た だただ 1 ヶ月の生活給を実質的に削ることによって環境事業所としての コストを下げている。 3.6 正規職員と臨時・非常勤職員のその他の格差 これまで述べてきたように業務の違い以上の、賃金格差があることは 明白であると思われるが、A 氏が感じているのは賃金とは別の格差であ る。 「今回聞き取りがあるからっていうので、(臨時の)みんなに言うたら、4 時 間ずっと、終わらなくて。みんなたまってんねんなぁと。」 このとき A 氏が聞き取った内容は表にまとめた。先に触れたように 肉体的にきつい仕事は臨時職員に負わせるということだけでなく、臨時 職員の雇用上の立場の弱さを感じさせる事例が多い。いくつかとりあげ て説明を加える。
3.6.1 パッカー車の管理 パッカー車の管理は正規職員である運転手の責任である。しかし、実 際には臨時職員に洗車や整備を丸投げしていることが多い。事業所に パッカー車は現在予備も含めて 18 台あるが、そのうち 15 台は臨時・非 常勤職員が点検、洗車、整備をおこなっている。臨時・非常勤職員とし ては本来正規の仕事であるはずなのにという気持ちがある。 事 項 内 容 休暇の日数 有給休暇については法令どおりであるが、例えば夏季特別休暇 などは正規職員と非常勤職員、臨時職員でそれぞれ違う。 勤務時間中 の風呂 作業上、汚れることも多く、匂いもつくので収集作業が終わったあとに入るための風呂が事業所には用意されているが、正規 職員は勤務時間中に入ることが出来るのに、明文化されたルー ルではないが、非常勤・臨時職員は入れない。風呂の経費も相 当かかっているように思う。 パワハラ 暴力がある。業務以外でパシリをさせられる。クビにするぞと 脅される。名前ではなく、アルバイトとか呼ばれたり、書かれ たりする。 雇用更新 1 年に一度、必ず面接がある。毎年同じ履歴書を出すことになる。 備品につい て 更衣室のロッカーを正規・非常勤職員は複数使っている人もいるのにアルバイトはひとつだけ。 休日出勤手 当について 休日出勤の際の割増率が正規と、臨時と非常勤でそれぞれ違う。 回収業務の 割当につい て 「まごころ」は臨時がいくことになっていたり、遠いステーショ ンは臨時が取りに行けと言われる。しんどいところにまわされ る。 業務上の怪 我について 公務員災害補償基金からいつの間にか外されている。怪我が多いのにキチンとした説明がない。 職場での発 言 権 が な い。情報が ない。 臨時は職場会議に参加できない。安全衛生委員会に臨時・非常 勤職員の代表を送ることを拒まれる。臨時については「一部ゴ ミ有料化」の説明もない。臨時は(市役所イントラネットの) 情報パソコンが見れないので、自分の労働条件に関する市の要 綱や実施要領なんかも見られない。 イベントな ど行事への 参加 イベントごとは臨時はほぼ半強制的に参加させられる。正規は こない人もいるのに。
3.6.2 イベントなどの行事への参加 環境事業所がおこなうイベントなどの行事は主に休日に行われるが、 正規・非常勤職員は任意での参加であるのに、臨時職員は実態上強制的 に参加させられる。 3.6.3 業務連絡に関する臨時職員の排除 K 市では今年度中に一部ゴミを有料化する。これについて正規・非常 勤職員は説明を受けているが、臨時職員についてはこれまで全く説明が ない。市民から質問があっても対応できないことに不安と不満が強い。 3.6.4 業務上の事故に関する補償について 「突然ね、(業務上の怪我に対する扱いが)労災になったみたいで。前まで地 公災だったんですけど。いつの間にか僕らだけ外されて。」「なんの説明もな いですよ。」「走ってコケたり、粗大ゴミで手を切ったり、串や枝、トゲなど のゴミが刺さったりすることは日常茶飯事なんで。腰を痛めたりすることも 多いですし。いちいち労災いわないですけど。手を怪我して頑張って片手で やってたら、(正規)職員があんなんやめさせろ言うてたとか。きりがない ですけど。怪我の補償が勝手にかわってたのは不安ですね。」 A 氏自身はいつから変わったのかわからないということであったが、 おそらく業務上の災害保険については 24 年 4 月に臨時・非常勤職員の 1 日当たりの勤務時間が正規労働者よりも短くなったときに切り替わっ ていると思われる。地公災法と政令によれば 1 日当たりの勤務時間が 1 分でも短ければ地公災の適用外となる。この場合、労基法別表 1 記載の 業務に関しては労災適用となる。付言すれば一般行政職は条例で定める ことになっていて、自治体によって扱いが違う。 3.6.5 ゴミ収集ルートの作成 「水曜日は粗大ゴミの収集なんですが、地区によって担当号車が決められて いるんです。粗大ゴミは個別回収なので、毎週収集コースを号車ごとに決め ないといけないんです。どこにどんな粗大ゴミがだされるか、毎週違います
んでね。このコース決めというのは本来その号車の正規の運転手の仕事とし てあるんです。正規の。車によってはそれを、毎回、コースを決める、(粗 大ゴミの)リストを組むというんですが、パッカー車が進むコースのルート をアルバイトに組んでもらっている。もちろんそのリストの中にはどこの 誰々が、名前・住所・電話番号、地図も添付されていますし、それから出す 粗大ゴミの種類、すべて記載されている。要は個人情報のかたまりなんです よ。それは、粗大ゴミの収集が終わったあとは廃棄処分にするような書類な んですけど。それを臨時職員に市民さんの個人情報みたいなんを触らせて、 普通にそれがおかしいともなんとも思っていないという。」 「運転手が、班の業務なんかもあって忙しくて、組む仕事というのができな いというか。収集業務に関わることなんで、実際作業をするアルバイトさん が組んでる方が、まわりやすいというのはあるんですけど。」 本来臨時職員の仕事とはされていない事務作業や、職場会議に参加さ せない理由でもある個人情報にかかわる業務を臨時職員が担当すること に違和感を持っている。 3.6.6 回収業務について 通常の回収業務に関することだけでもいくつかの不満が上がっている が、例えば K 市では「まごころダイレクト収集」というサービスがある。 これは日常のごみ出しが困難な高齢者や障がい者世帯で現にヘルパー サービスを受けている市民を対象に戸別の玄関先でゴミを収集するサー ビスである。 「これはいわば本来のコースから外れて、作業員が取りに行くんですね。こ れはほとんどアルバイトさんが取りに行く仕事みたいになっている。これを やろうと思ったら、地図が頭に入ってないといけませんし、どこが「まごこ ろ」の対象かということを覚えていないとできないですよね。」 ルートから外れた場所まで走って取りに行くのは臨時職員の仕事のよ うになっている。
3.6.7 非人格的な扱い 「名前でなく、雇用形態で呼ばれたり、書かれたりする。」「正規職員の個人 的な買い物のお使いに行かされる」「クビにするぞ、といわれる。」 など、いわゆるパワハラに値する事例が挙がった。 また、臨時・非常勤職員だけではなく、環境事業所での技能労務職員 全体が、 「本庁の人から上から見られるというか」「現業のくせにとかゆうてる人間が おるとか、聞くんでね。」「(市役所内正規内差別みたいなものが)あると思 います。(正規職員で)実際勤続年数が同期なんか皆係長、課長なってるゆ うても、いつまでも主任ですかね。係員のままとか。(ポストが少なく人数 が多い環境事業所は)出世は遅いんでね。」 と述べている。環境事業所における技能労務職員全体に対する差別構 造が最も立場の弱い臨時職員に先鋭的に現れてきていると言えるのでは ないだろうか。 3.7 労働組合活動について 3.7.1 臨時・非常勤職員の労働組合結成のきっかけ 「やっぱり職員との格差。いろんな意味で。仕事やればやるほど感じる。こ の仕事は非常勤やからやらんでいいというのも出てくるし。お金のこともそ うですし。でもそれは最初からわかっていたことですし。」「最初は非常勤だ けで組合をつくろうと思ったんです。非常勤が団結すれば職場内での発言権 も増すと思って。直接当局と交渉できるというのも魅力じゃないですか、自 分らの意見をね。公式な場で言えるというのが。だから、非常勤が全員加盟 しないと意味はないと思ってたんです。既存の組合に加入することも考えま した。」「そういうときに正規職員から非常勤職員へのパワハラがあって、そ ういう(組合加入の)話を一緒にしていた非常勤のひとりがやめたと。そう いうときに今ある正規職員の組合の動きや当局の動きを見て。パワハラとい うか、警察沙汰にしてもいいような、勤務時間中に蹴って殴ってというよう
な完全な暴力事件だったんですよ。ところが、それに対して、今ある正規職 員の組合は、殴った方も組合員なんですけど、その殴った方が入っている組 合も、もうひとつの(既存の別の)組合も、管理運営の責任がある管理職側 も、何一つそれに対して行動をおこさなかった。これは一寸職場として健全 じゃないと、かなり思ったんですよ。僕は裁判とかそういう話になったら全 面的に支援すると彼にいったんですけど、まぁおおごとにはしたくないとい うことで、やめるというようなことになって。俺がやめてそれでええわとい うような。」 「そのやめたあとも職場としてどういう対応とっていくのかきっちり見とい て報告すると言ったんです。でも何も動きがないと。このままやったら次の 被害者っていうか、でるんじゃないかと。そうなったときに、今まで非常勤 は大切やとか言うてた人も声を上げなかったのをみて、自分らの身は自分ら で守らないと、誰かがまた犠牲になってからじゃ遅いと思って。その事件、 事件そのものもおおごとなんですけど、それに対しての職場の反応というの があまりにも期待外れというか。そういうのはやっぱり僕らが非常勤やから と思うんですよ。」 と述べている。賃金よりも格差、立場の弱さを組合結成によって克服 したいという意図が見られる。結局臨時職員も加えた形での組合結成と なったことについては 「また暴力事件を起こした人が、発言権のある力のある人だったんですよ。 それが違う正規職員だったら、当局の対応も、組合の対応もかわってくるん やろうなと。場合とか人を見て、俺らは助けて貰えなかったりっていうこと があるとわかったんで。残念ながら全員加入とはいかなかったんですけど。 非常勤だけでつくるということになると、正規職員が非常勤をっていうのと 同じことになると思ったんで。アルバイトというのは一番立場が弱いんで、 それを守るという組合じゃないとダメなんじゃないかなと思ったんで。」 と述べている。
3.7.2 雇用の不安定さについて 「いちばん長い人で 19 年、次が 17 年と 3 ヶ月、その次が 15 年。職員やった ら(勤続 20 年で取得できる)リフレッシュ休暇貰えるぐらいになってます。 アルバイトでも 13 年、彼はその前に短期でもアルバイトをやっていたから ホントはもっと。新卒で環境事業所入ってズッと続けている。」 「(長く続いていることについて)人間関係や、休暇がきちんと取れるってい うことが大きいと思う。」「(A 氏自身は)やっぱりサラリーマンやってたと きは年休なんか取れへんのが当たり前だったんでね。特に僕は営業職やった から風邪引いても、自己管理が悪いからやとか言われてね。それを隠して出 勤するとか。そういう会社やったからそういうのに比べると、今の環境事業 所は 1 年 1 年の不安定な雇用ではあるけど、年休なんかもちゃんと使えるし。 家族の体調のこととかもあって、年休が取れるというのはありがたかったで すね。職場の人間関係もスゴくいいですし。仕事はしんどいですけど、しん どいからやめたんやとか言われるのもイヤやし。」 「組合とかをつくって初めて、自分の身分が不安定やということがわかって きた。アルバイトの人なんかは勤務時間がドンドン減らされていって、それ で、どうなんかなって。職員さんの組合なんかは、また 5 時に戻すようにズッ と言うてると。でも全然アカンねんとか。言うてて。時給なんかでも上げる ように要求はしてるねん。してるけどなかなかなと。そういうので頑張って んねんけどな、みたいな感じで。そういうの聞いてると「ああ頑張ってくれ てんねんなぁ」と(組合結成前は思っていた)。もしかしたら戻るんちゃう かなって思ってたんですけど、結局時間は減らされるし。」 「組合作るときに、僕ら(臨時・非常勤の)公務員というのはスゴい身分は 不安定なんですよっていう話をして、初めてこれはやばいなと。だから、組 合作ってへんかったら、もしかしたら(就業時間が)木金 3 時になっている かもしれへんよなというような感覚はある。」 「職員さんなんかでも、(労働契約法による無期転換申込権が発生する)来年
4 月から無期雇用になんねんやろと言う人もいてるんでね、普通に。(労働 契約法やパート労働法の適用が)なんで公務員だけないんでしょうね。」 団交では突然の雇い止めはしないことを要求し、一定の回答を得てい るとのことである。 3.7.3 団体交渉における市側の対応 「(何度か団交を繰り返しているが)基本的にゼロ回答ですよね。」 「(市側は)口では頑張ってもらっているとか、大変なのは理解しているとか 言うんですけど、何にもない。」「本来11台でまわる範囲を実際には9台でやっ ている。* 21 (団交でも市側は)適正人数は 46 人といっている。それを 9 台 36 人でまわっている。しかも正規のうち 2 人は病休やとかでズッと休んで いる。めちゃめちゃ仕事がきつくなっているんです。それもわかっていると いう。でもアルバイトの時間減らして、理由を聞いたら、それで業務はまわっ ているという。なんでまわっているかってゆうたら、僕らが必死で走って回 収しているからじゃないですか。走ったらアカンのです。ルールでどっかに 書いてあったと思います。それを言うたら、走らんとって下さい、という。 時間間に合わなくていいんですか、って言うたら、それは困る(と市側は言 う)。」「人が足りないというのはわかっていると、正規職員の採用はしない ということやから、必然的に臨時・非常勤職員を増やすいうことになるんで す。募集はしていると。こないんやと。それやったら、それだけ今おる人間 に負担がかかっているわけですから、時給上げるとか、一時金出すとか、そ れこそ誠意を見せればいいじゃないですか。頑張ってもらっているのは理解 している、でも何もしません。そんな感じです。条例がないからできない(と 主張する)。時給とかは事業所で決めているんです。それを予算化して要求 する。人件費じゃなくて物品費扱いで。費目上は物ですから、僕ら。」「じゃ *21 2016 年度の実績でいうと、組合調べでは 11 台体制が組めたのは全体の 7%のみ。 その他はほぼ 10 台でまわった。2017 年度は 11 台で組んでいるコースを 6 月現在 すべて 9 台でまわっているとのことである。
あ来年の時給なり報酬なりをあげて貰えますか、っていうのには答えない。 予算請求しますか、っていうのにも答えない。あげる気ないとしか思えない。」 「実際予算あまってるはずですよね、本当は臨時を 12 人雇うつもりで予算組 んでるんですから。それが 9 人しかいない。正規の人だって今年のはじめに やめてて、(予算上)余剰がでることを市も認めているのに。」 「すごく感じるのは正規とあんたら(臨時・非常勤職員)は違うんやと言う こと。実際同じ仕事をしているというと、せんといてくれと。やらんとまわ らないじゃないですか。」「(屍獣処理について)正規に任せて欲しい、本来 は正規と非正規の役割は分けるべきだ、みたいなことを言うので、つい(臨 時・非常勤職員でもできるような)くだらないことではなくて、もっと大事 なことで正規らしくしてくれって言いました。」「屍獣の処理なんて、その場 にいたり、頼まれたりした職員がやればいいことじゃないですか。実際僕ら やってきましたし。なんでそんなところで差をつけんねんと思います。」 「(10 年以上勤めている職員が何人もいるにもかかわらず)あくまで 1 年毎の 任用だという。委託の可能性も検討しているので、正規で雇用するわけには いかないと。要するに委託になっても正規はクビを切れないから。逆に言え ば僕らはクビやと。団交でも何かというと委託を検討しているを繰り返すん です。脅しだと思います。検討会で検討していると言うので、どこまで検討 が進んでるんですかと聞いても、半年以上同じ答え。こっちもいろいろ調べ て(他市が委託している業者や費用などの)数字をあげたら、よくわかって ないみたいで。具体的な検討してるのか怪しいです。」「総務省の研究会でも 非正規公務員が問題になっていて、一時金とか出しなさいという流れになっ てきているんです。それを言うと、そういう波が来たら考えなければならな いと考えている、と。その時考えられるんならなぜ今考えないのか。目の前 に僕らがいるのに。見えてないんだと思う。」 団体交渉の経緯などを見ていると、市側にとって臨時・非常勤職員は まさに「非正規」な存在として考えていることがよくわかる。
3.8 収集作業のスキルについて A 氏が感じる格差に対する憤りの背景には収集作業に対する臨時・非 常勤職員のプライドがあるように感じられる。そのプライドの源泉は収 集作業のスキルが正規職員に対して劣っているわけではないという自負 である。最後に収集作業のスキルの意味するところを聞いた。 「作業員としての収集業務のスキルについては、臨時・非常勤職員のほうが優 れていると思います。もちろん正規にもスゴいなぁという人もいますけど。」 「(スキルというのは)簡単な話、コースを覚えているかどうか。どこにどれ ぐらいのゴミが出てるか、それをある程度予測して、収集の効率が上がるよ うにする。例えば、スゴくたくさんでているヤマ、ステーション(ゴミ収集 所)がある、そのちょっと先には少ししかでていないヤマがいくつかあると するじゃないですか、そうするとある程度、たくさんでている収集所の目途 がついたら、簡単に言うとひとりでもできる程度までゴミが減ったら、先に ちょっとしかでていない、いくつかの収集所のゴミを、先に走っていってま とめておくんです。そうするとパッカー車は一回しか止まらなくて済んで、 バックする時間とか、2 人かかるところを 1 人で済むとか、早く収集できる んです。他にも仕事の 1 歩先、2 歩先を読んでどうすれば効率が上がるかを 考える。それもだいたいどの収集所にどれぐらいのゴミがあるかが頭に入っ ていないと組めないです。」 「細かい話なんですけど、それがわかっていないと効率がスゴく落ちるんで す。パッカー車の構造上、後部の回転板と、車輪は同時に駆動できないんで す。切り替えボタンを押さないといけない。それを頻繁にやっていると、時 間をロスするので、(ゴミを入れる)ホッパー部分に入るゴミの量を計算して、 ある程度ゴミをまとめるっているのが大事なんです。どこで巻いて(圧縮し て)、どこで巻かずに、ポーンポーンと進んでいけるかということですね。 そういうのがわかっていない職員さんが、わかってなくて、アルバイトさん や非常勤に任せている人がいて、そのため無駄な動きが多くなる。粗大ゴミ
なんかでも、大きくてそのままでは巻けないようなものをその場で潰して巻 ける状態にするんですが、そういう潰すテクニックがなかったりとか。タン スなんかでもコツというか、壊し方があるんですけど、それを知らないとな かなか小さくできない。」 「そういった細かいスキルの積み重ねですよね。」 「(スキルの差ができる理由について)非常勤とかアルバイトというのは、ス キルの高い正規職員と作業をする機会があるんです。例えば 1 ヶ月とか同じ 組で乗るんで。そうするとそこでやり方を学ぶんですね。イヤでも覚えてい くんです。」「配車表というのがあるんです。3 人組で作業するので、まず運 転手は固定です。原則的に作業員二人が正規、非常勤とアルバイト一人の組 み合わせで毎月かわっていくんです。だから原則的に正規と正規は組み合わ されない。ですからスキルの低い正規職員は、学ぶ機会がないんです。」「(運 転手がリーダーのような感じだが、作業員から上がるのか。)そうですね、 でも K 市の場合は減車していっているんで、誰かやめない限り運転手にな ることはなくて、ズッと長い間、20 年とか同じ号車の運転手というような ことがあります。僕が入ってからはだいたい同じ人が運転しています。もち ろん休んだ場合は代わりに、予備の運転手という位置づけの普段作業してい る(正規)職員さんがいます。」 「廃プラ収集に関しては作業員の負担軽減のために、運転手が交代で作業す るようなこともあります。そんなことがあって、ちょっとはコースを覚えて きたんですけど、こうなる前は自分のコース以外は知らんという人(運転手) ばっかりでしたから。」「作業員でもアルバイトさんが頑張ってるおかげで コースのことよく知らんとできるということもありますけど。」 「パッカー車 3 人で乗車していて、本当はアルバイトが真ん中に座って、作 業員の正規が助手席に座るんですけど、一人でやれるような作業は正規がす るということだと思うんですけど。端からアルバイトにとってもらおうと 思って、アルバイトを助手席にのせるようなこともあるんです。助手席に乗
りたいというアルバイトも多いんですけど。仕事がしんどくても、自分が やった方が早く終わるというか。まぁ助手席の方がゆっくり座れますし。」 法律上は「単純な労務に雇用される職員」ではあるが、その中でもス キルの差は厳然とある。スキルに特化して聞き取りを行えばもっと細か い技術的な話も聞けたと思われるが、そのような業務に対するスキルと、 処遇とが全く関係づけられることなく、「任用の根拠」「入口の違い」で 決まってしまうことが不安定雇用の中で労働組合を立ち上げた原点であ るように思われる。
4.結びにかえて
4.1 臨時・非常勤職員問題の本質 一般的な問題点はすでに上林(2012,2015)によって詳細に指摘され ているので、本質的であると思われる点だけを簡単に述べる。 K 市の技能労務職における臨時・非常勤職員の問題点は次のように言 えるだろう。 4.1.1 明示的かつ潜在的な雇用不安 今回の聞き取りではっきりとしたように、K 市環境事業所の臨時・非 常勤職員はその仕事内容が他市に比べてきついこともあり、非常に短期 間で退職する職員と、長期にわたって働く職員とに大きく分かれる。し かし、例えば5年以上勤めていても、契約上は6ヶ月または1年であり、 労働契約法が適用されないので、適法にいつでも雇い止めされる可能性 がある。これが明示的な雇用不安である。 さらに K 市は現在ほとんどが直営でゴミ収集をおこなっているが、 他の自治体も含めて大きな流れとしては民間に委託する方向が示されて いる。A 氏の認識によれば、民間委託の方がコスト高になるから、当分 直営が維持されるのではないか、ということであるが、この直営の低コ ストを支えているのは、彼ら臨時・非常勤職員の低賃金である。つまり、労働条件向上を目指せば目指すほど、他の業務に比べて職場を失う可能 性が高いと言える。団交の際に市側から業務委託について度々言及があ るのも、この点を暗に強調しているものと思われる。これが潜在的な雇 用不安である。 雇用が不安定であることが、職場において特に臨時職員の立場を弱く し、パワハラの温床となっていると考えられる。 4.1.2 キャリアパスが見えない 将来の展望が見通せない点は他の「非正規」労働と同様であるが、ゴ ミ収集業務は体力が必要とされるばかりでなく、安全性が高いと言える 職場でもないので、問題は深刻である。低賃金な上に昇給も身分の保障 もなく、退職手当も期待できないという現状である。だから欠員がでて 募集を掛けても応募が少ないし、いったん着任してもすぐに辞めるとい うことが頻発するのである。このような現状の臨時・非常勤職員によっ て市民サービスに不可欠のゴミ収集が担われているのであって、いわば 市民の快適な生活は彼らの将来を食い潰すことでなりたっている。 4.1.3 身分差別 聞き取りの中でも何度か発言があったが、「正規」職員との格差は非 合理的で、身分差別と表現するしかないものがある。A 氏らは格差の解 消を訴えるが、それは「正規」職員と全く同等の賃金を要求するもので はない。いわば格差をつくるための格差をなくせという主張である。象 徴的なものは終業時間である。「正規」職員は 17 時 15 分、非常勤職員 は 17 時のこの 15 分の格差は、「正規」と非常勤は「違う」ということ を明確化するためだけの措置である。判例上は常勤の 4 分の 3 以上の勤 務実態があれば、契約形態が非常勤であっても常勤とみなすことが確立 しているし、A 氏らは 15 分労働時間が増えたとしても賃金を増やさな くてよいと団交で発言したということなので、法律上も経営上も全く意 味がない。
4.2 今後の課題 本稿でおこなった聞き取りは一事例であり、ただちに普遍化、一般化 できるものでない事は言うまでもない。最初にも触れたように、地方公 務員法が 5 月に改正され、これまでの臨時・非常勤職員のほとんどが 2020 年には会計年度任用職員として任用される流れとなった。これが 本稿の K 市における技能労務職員にとってどのような影響を及ぼすか はまだはっきりとしない。しかし、現状の臨時職員と非常勤職員は法文 上は等しくパートタイムの会計年度任用職員とせざるを得ない。わずか 15 分の勤務時間の違いが退職金などを支給しない根拠となる。実際に はおそらく法解釈上の争いとなるだろう。このような点も含めて、全体 の動向を見定めつつ、個別の事例を丁寧に見ていかなければ問題は見え ない。本事例は、臨時職員がパートタイムで、非常勤がフルタイムであ ること、技能労務職員の特有の問題が見られること、臨時・非常勤職員 のみで労働組合を結成して(一般)合同労組に加盟しているなど、いく つかの点で他の調査にはない特徴があり、臨時・非常勤職員の雇用のあ り方が自治体によって大きく違うということがよくわかる事例であると 思われる。今後事例を積み重ね、現在の「非正規」労働問題に関して研 究を深めると共に、筆者の研究の全体構想である、低賃金で不安定な労 働者の連帯の歴史に接続していきたいと考えている。
〈参考文献一覧〉 総務省(2009)「技能労務職員の給与に係る基本的考え方に関する研究 会報告書」。 - (2013)「臨時 ・ 非常勤職員に関する調査結果について平成 24 年 月 1 日現在」。 - (2016)「地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等 の在り方に関する研究会報告」。 - (2017)「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査結果」。 上林陽治(2012)「非正規公務員」日本評論社。 - (2015)「非正規公務員の現在」日本評論社。 - (2017a)「欺瞞の地方公務員法 ・ 地方自治法改正(上)」自治総研 463 号。 - (2017b)「欺瞞の地方公務員法 ・ 地方自治法改正(下)」自治総研 465 号。