夫婦のみ高齢世帯におけるソーシャル・キャピタル
醸成のための予備的調査
夫婦のソーシャル・キャピタルの特性での区分による
身体活動状況、閉じこもり傾向、抑うつ傾向の比較
竹 中 友 希・川 村 晃 右・十 倉 絵 美
田 邉 幹 康・伊 藤 弘 子・木 村 知 紗
深山つかさ・堀 妙 子・松 本 賢 哉
要旨 目的:本研究では、夫婦のソーシャル・キャピタルの特性での区分による、閉じこもり傾向、 身体活動状況、抑うつ傾向を比較することで、ソーシャル・キャピタル醸成に向けた 支援を検討するための資料を得ることを目的とした。 方法:65歳以上の夫婦のみで生活する者を対象にソーシャル・キャピタル、身体活動状況、 閉じこもり傾向、抑うつ傾向に関する質問紙調査を実施した。ソーシャル・キャピタ ルの平均点を用いて対象者を区分し、その他の変数を比較した。 結果:質問紙は682通配布し、夫婦揃っての回答が得られた272名(136組)を分析対象とした。 夫婦それぞれで、ソーシャル・キャピタルの平均値を用いて区分し、夫婦ともに高い 群、低い群、夫のみが高い群、妻のみが高い群の組み合わせで比較したところ、夫婦 ともにソーシャル・キャピタルが高い群は、外出に対する自己効力感が高かったり、 夫のみが高い群でも抑うつ傾向が低かったりすることが明らかになった。 結論:ソーシャル・キャピタルを夫婦のサブシステムで検討する場合、特に夫に焦点を当て た支援が重要となることが推察された。Ⅰ.緒 言
現在、日本では社会の希薄化が問題となっており、地域や組織などのコミュニティにおける 人と人のつながりの強化が喫緊の課題である。地域住民とのつながりを表す概念として、ソー シャル・キャピタルが注目されており、先行研究ではソーシャル・キャピタルが低いと主観的 健康感不良や抑うつを強めること(1)などが明らかになっている。 一方、日本の高齢化は年々進み、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の約半数となっている(2)。 世帯構成に目を向けると、核家族化により夫婦のみの世帯は最多となっており、約 3 割(2017) を占めている(2)。また、現在の平均寿命は男性81.09歳で、女性87.26歳であるため(3)、平均寿 命の違いから妻との死別を経験した男性は約 1 割に対し、夫との死別を経験した女性は約 4 割高齢者は、身体機能の低下だけではなく、退職、失業による収入の減少、知人や配偶者の喪 失体験を経験する(5)。そして、配偶者を亡くした男性では、孤独感や悲嘆が生じ、近所付き合 いが減少し、親戚付き合いも希薄になること(6)、女性では、家庭内役割や趣味がなく、友人と 交流しない者が多いことが指摘されている(7)。このように、高齢者は加齢に伴う身体機能の低 下に合せて、配偶者との死別を経験した場合、人間関係の希薄さが影響し、閉じこもりとなり やすい(8)。 閉じこもりは日常生活における活動空間がほぼ家の中のみへと狭小化するため、活動性が低 下し、廃用症候群を進行させたり(9)、死亡率を高めたりする(10)。しかし、閉じこもりの改善 のための効果的な介入についての報告はほとんどみられず、さらに、閉じこもりとなってしま うと、地域の民生委員でも把握が困難な現状がある(11)。筆者らは、将来、単独世帯に移行す る可能性が高く、そうなった場合は閉じこもりとなるおそれのある、夫婦のみ世帯を対象とし、 閉じこもりに影響する要因について調査を行った(12)。そのなかで、夫婦別々に支援を行うの ではなく、夫婦を一つのシステムとして捉えて支援を行うことの重要性も窺えた。そこで、本 研究では、第一報(12)と同じ解析対象者から、夫婦揃って回答が得られている世帯を抽出し、 夫婦のソーシャル・キャピタルの特性をふまえて区分し、身体活動状況、閉じこもり傾向、抑 うつ傾向を比較することで、ソーシャル・キャピタル醸成に向けた支援を検討するための資料 を得ることを目的とした。
Ⅱ.用語の操作的定義
ソーシャル・キャピタル:本研究では、林(13)らの文献を参考に、地域における住民相互の つながりや信頼関係とした。Ⅲ.方 法
本研究の分析データは、筆者らが第一報(12)で分析したものであるが、その一部を本研究の 目的に合わせて抽出し、新たに分析したものである。 1 .対 象 A大学が隣接するB地区において、65歳以上の夫婦のみで生活する者を対象とした。 B地区は、高度経済成長期に都市近郊のベッドタウンとして市街地化が進み人口が急増した が、現在は横ばいとなっている。また、高齢化率は30.5%で(14)、65歳以上の夫婦のみの世帯は 30.4%である(15)。夫婦のみ高齢世帯におけるソーシャル・キャピタル醸成のための予備的調査 2 .調査方法 B地区の民生委員等(以下、研究協力者)に対し、本研究の趣旨や倫理的配慮等について文書を 用いて口頭で説明し、研究への協力を依頼した。研究協力者を通じて、夫婦のみで生活する高 齢者を訪問して本研究の依頼文書、質問紙、質問紙封入用封筒、質問紙封入用封筒を封入する 返信用封筒を配布してもらった。対象者には、研究の趣旨や倫理的配慮等を文書で説明し、自 由意思により無記名自記式の質問紙への回答を依頼した。質問紙の回収にあたっては、回答し た質問紙を夫婦それぞれ別々の質問紙封入用封筒に投入してもらい、さらに、夫婦であること が分かるように一つの返信用封筒に投入してもらい、郵送法で回収した。 質問紙の内容は、ソーシャル・キャピタル、身体活動状況、閉じこもり傾向、抑うつ傾向、 属性とした。 ソーシャル・キャピタルについては、林ら(13)が用いた 5 項目をソーシャル・キャピタル (social capital: 以下、SC)として用いた。 5 項目の内容は、「この地域は居心地がよい」「この地 域の住人のほとんどが、私のことを知っている」「この地域の人々にどう思われているかが気 になることがある」「この地域に住む人々がお互いに良い関係を保っている」「この地域で何か 問題が生じた時は、住人がそれを自ら解決することができる」である。「そう思う( 4 点)」か ら「そう思わない( 1 点)」の 4 件法で回答を求め、「この地域の人々にどう思われているかが 気になることがある」については「そう思う( 1 点)」から「そう思わない( 4 点)」を配点した。 得点が高いほど、ソーシャル・キャピタルが高いと評価される。 身体活動状況については、虚弱高齢者の身体活動セルフ・エフィカシー尺度(rating scale for self-efficacy of physical activity in frail elderly people: 以下、身体活動 SE)(16)を用いた。身体活動 SE は、身体機能と有意な相関がみられるとされ、「歩行」「階段昇り」「重量物挙上」の 3 項目の 各下位項目に「全く行うことができない( 1 点)」から「絶対行うことができる( 5 点)」の 5 件 法で回答を求める。得点が高いほど、身体活動に対する自己効力感が高いとされる。 閉じこもり傾向については、地域高齢者の外出に対する自己効力感を測定する尺度 (self-efficacy scale on going out among community-dwelling elderly:以下、SEGE)(17)を用いた。SEGE は、 外出頻度と相関関係にあり、閉じこもり傾向を心理的側面からも測定することができる尺度で ある。 6 項目から構成され、「全く自信がない( 1 点)」から「大変自信がある( 4 点)」の 4 件法 で回答を求める。得点が高いほど、外出に対する自己効力感が高く、閉じこもり傾向が低いと される。 抑うつ傾向については、老年期うつ病評価尺度短縮版―日本版(Geriatric Depression Scale Short Version-Japanese:以下、GDS-S-J)(18)を用いた。GDS-S-J は、15項目から構成され、「はい」また は「いいえ」で回答を求め、対応する 0 点または 1 点で得点化される。得点が高いほど、うつ 傾向が高いとされる。 属性については、年齢と性別を確認した。
SC の平均点を算出し、夫婦をそれぞれで平均点より高い群と低い群に区分した。さらに、 それぞれの組み合わせにより 4 群に区分した。 4 群において、年齢、身体活動 SE、SEGE、 GDS-S-J を比較した。比較には Kruskal-Wallis 検定を、多重比較には Bonferroni 補正を用いた。 統計解析には IBM SPSS Statistics 24を用い、統計学的有意水準は 5 %とした。 4 .倫理的配慮 対象者には、研究協力者を通じて、研究の趣旨や方法、本研究への参加は自由意思で行われ、 無記名のため個別的な同意の状況や記入内容は第三者に知られることはなく、それによる今後 の地域での生活に影響を及ぼすことは一切ないこと、結果は学術集会での発表や論文投稿によ り公表するが、その場合にも個人情報は保護されることなどの倫理的配慮について文書で説明 した。同意が得られた場合、質問紙に回答、封筒に封入してもらい、後日、返送してもらうよ う依頼することで、研究への同意の任意性が得られるように配慮した。なお、本研究は、京都 橘大学研究倫理委員会の承認(承認番号18-27)を得て、実施した。
Ⅳ.結 果
1 .対象者の状況について 質問紙は682通配布し、384名から回答が得られた(回収率:56.3%)。そのうち、夫婦揃って回 答が得られた272名(136組)を分析対象とした(有効回答率:39.9%)。 対象者の年齢の中央値は77(範囲:65-92)(男性:78(65-92)、女性:75(67-87))歳、平均は77.0± 4.9(平均±標準偏差)(男性:78.3±5.2、女性:75.7±4.3)歳、SC の得点の中央値は16(8-20)(男性:16 (8-20)、女性16(9-20))点、平均は15.7±2.4(男性:15.7±2.3、女性:15.8±2.4)点、身体活動 SE の歩 行の得点の中央値は24(5-25)(男性:24(5-25)、女性:23(5-25))点、平均は21.5±4.9(男性:21.9±4.7、 女性:21.1±5.2)点、階段昇り SE の得点の中央値は20(5-25)(男性:22(5-25)、女性:18(5-25))点、 平均は18.8±5.9(男性:20.0±5.5、女性:17.5±6.1)点、重量物挙上 SE の得点の中央値は24(5-25)(男 性:25(9-25)、女性:23(5-25)点、平均は22.0±4.3(男性:23.0±3.4、女性:21.1±4.8)点、SEGE の 得点の中央値は18(6-24)(男性:18(7-24)、女性:17(6-24))点、平均は17.8±3.9(男性:18.5±3.9、女 性:17.1±3.9)点、GDS-S-J の得点の中央値は 3(0-15)(男性: 3(0-14)、女性: 3(0-5))点、平均は 3.8±3.4(男性:3.8±3.3、女性:3.8±3.4)点であった。また、SC の Cronbach のα係数は0.73であっ た。なお、夫婦揃って回答が得られなかった回答者の男女比は男性49%、女性51%であった。 2 .夫婦のソーシャル・キャピタルの特性での区分による比較について 夫婦それぞれで、SC の平均点を用い、16点以上の群(以下、高群)と16点未満の群(以下、低群) の 2 群に分け、夫高群と妻高群で組み合わされる群(以下、Q 1 )、夫高群と妻低群で組み合わ夫婦のみ高齢世帯におけるソーシャル・キャピタル醸成のための予備的調査 される群(以下、Q 2 )、夫低群と妻高群で組み合わされる群(以下、Q 3 )、夫低群と妻低群で組 み合わされる群(以下、Q 4 )に区分した。なお、Q 1 の SC の得点の平均は17.6±1.3点、Q 2 の SC の得点の平均は15.7±1.6点、Q 3 の SC の得点の平均は15.5±2.3点、Q 4 の SC の得点の平 均は13.5±1.7点であった。 4 群で、年齢、身体活動 SE、SEGE、GDS-S-J を比較すると、年齢、身体活動 SE のいずれ の項目でも有意な差はみられなかった(表 1 ~ 4 )。 表 1 SC による 4 群の区分における年齢の比較 年齢 中央値 範囲 p Q 1 夫高群・妻高群 n=102(51組) 77 70-90 n.s. Q 2 夫高群・妻低群 n=44(22組) 75 65-90 Q 3 夫低群・妻高群 n=42(21組) 74.5 67-92 Q 4 夫低群・妻低群 n=84(42組) 77 70-92 Kruskal-Wallis 検定 *p<.05 表 2 SC による 4 群の区分における身体 活動 SE 歩行の比較 身体活動 SE 歩行 中央値 範囲 p Q 1 夫高群・妻高群 n=102(51組) 24 6-25 n.s. Q 2 夫高群・妻低群 n=44(22組) 24 6-25 Q 3 夫低群・妻高群 n=42(21組) 24 6-25 Q 4 夫低群・妻低群 n=84(42組) 23 5-25 Kruskal-Wallis 検定 *p<.05 表 3 SC による 4 群の区分における身体 活動 SE 階段昇りの比較 身体活動 SE 階段昇り 中央値 範囲 p Q 1 夫高群・妻高群 n=102(51組) 21 5-25 n.s. Q 2 夫高群・妻低群 n=44(22組) 22 5-25 Q 3 夫低群・妻高群 n=42(21組) 21 5-25 Q 4 夫低群・妻低群 n=84(42組) 17.5 5-25 Kruskal-Wallis 検定 *p<.05 表 4 SC による 4 群の区分における身体 活動 SE 重量物挙上の比較 身体活動 SE 重量物挙上 中央値 範囲 p Q 1 夫高群・妻高群 n=102(51組) 24 5-25 n.s. Q 2 夫高群・妻低群 n=44(22組) 24.5 9-25 Q 3 夫低群・妻高群 n=42(21組) 24 6-25 Q 4 夫低群・妻低群 n=84(42組) 24 5-25 Kruskal-Wallis 検定 *p<.05 一方、SEGE においては、Q 1 がQ 4 より有意に高かった(表 5 )。つまり、外出に対する自 己効力感は、夫婦ともにソーシャル・キャピタルが低い群に比べ、夫婦ともにソーシャル・ キャピタルが高い群の方が高いという結果であった。
SEGE 中央値 範囲 p Q 1 夫高群・妻高群 n=102(51組) 19 7-24 * * Q 2 夫高群・妻低群 n=44(22組) 18 9-24 Q 3 夫低群・妻高群 n=42(21組) 18 10-24 Q 4 夫低群・妻低群 n=84(42組) 17 6-24 Kruskal-Wallis 検定・Bonferroni 補正 **p<.01 GDS-S-J においては、Q 1 およびQ 2 がQ 4 より有意に低かった(表 6 )。つまり、抑うつ傾 向は、夫婦ともにソーシャル・キャピタルが高い群および夫のソーシャル・キャピタルが高く、 妻のソーシャル・キャピタルが低い群の方に比べ、夫婦ともにソーシャル・キャピタルが低い 群が高いという結果であった。 表 6 SC による 4 群の区分における GDS-S-J の比較 GDS-S-J 中央値 範囲 p Q 1 夫高群・妻高群 n=102(51組) 2 0-13 * * * * * Q 2 夫高群・妻低群 n=44(22組) 2 0-11 Q 3 夫低群・妻高群 n=42(21組) 2.5 0-12 Q 4 夫低群・妻低群 n=84(42組) 5 0-15 Kruskal-Wallis 検定・Bonferroni 補正 ***p<.001 **p<.01
Ⅴ.考 察
1 .対象者の状況について 本研究において、全体の SC の中央値は16点であり、林らの研究(13)におけるソーシャル・ キャピタルの15点より、高い傾向であった。これは、対象となったB地区が高度経済成長期に夫婦のみ高齢世帯におけるソーシャル・キャピタル醸成のための予備的調査 都市近郊のベッドタウンとして市街地化が進み、転入してきた時期が概ね同じであったり、長 期の互酬性による人間関係が維持されていたりすることが影響していると考えられた。 身体活動 SE について、稲葉(16)らの研究では、平均が、歩行は22.4点、階段昇りは18.7点、 重量物挙上は23.1点であり、本研究も同様の値であった。これは、両者とも対象者の平均年齢 が70歳であり、身体的な加齢の変化により同様の結果が得られたことが考えられる。 SEGE について、山崎ら(17)の研究では、平均が17.1点であり、本研究も同様の値であった。 GDS-S-J について、小林ら(19)の女性を対象とした研究では、平均が5.3点であり、本研究は 低い傾向であった。小林ら(19)の研究の対象者の平均年齢は80歳を超えており、本研究の対象 者が若かったことが影響していると考えられる。 2 .ソーシャル・キャピタル醸成のための支援について 本研究において、夫婦ともにソーシャル・キャピタルが高い群は夫婦ともに低い群より SEGE が有意に高く、GDS-S-J が有意に低かった。つまり、夫婦ともにソーシャル・キャピタ ルが高かった場合、外出に対する自己効力感が高く、抑うつ傾向が低いということが示された。 これは、生きがいをもち積極的に外出している高齢者は、ソーシャル・キャピタルが豊かであ るという衛藤ら(20)の報告と同様の結果であった。また、夫婦のソーシャル・キャピタルの特 性での区分において有意差がみられたことは、たとえ身体機能の低下が起こっている場合でも、 家族関係が基盤となり、家族の協力によって積極的に外出し、高いソーシャル・キャピタルに つながっていたこと(21)にも符合している可能性がある。そのため、閉じこもり予防のための ソーシャル・キャピタルの醸成を検討する場合、個人に対して働きかけるだけではなく、夫婦 に対しても働きかける必要性が窺えた。 また、夫婦ともにソーシャル・キャピタルが高い群だけでなく、夫のソーシャル・キャピタ ルが高く、妻のソーシャル・キャピタルが低い群においても夫婦ともにソーシャル・キャピタ ルが低い群より、抑うつ傾向が有意に低かった。これらのことから、夫婦のソーシャル・キャ ピタルの特性で区分した場合、外出や抑うつ傾向には、とりわけ夫のソーシャル・キャピタル が関係していることが推察される。このような結果は、夫は妻と一緒だからこそ外出する機会 があると推察した先行研究(12)(22)とは異なる可能性がある。これは、高度経済成長期を生き、 いわゆる「男性は仕事、女性は家庭」という考え方の中で歩んできたことで形成された、夫の 優位性が高い夫婦関係が関係していることが推察された。そのため、ソーシャル・キャピタル の醸成のためには、夫婦のなかでも、とりわけ夫に焦点を当てた支援が重要であると考える。 しかしながら、いわゆる「会社人間」として働いてきた男性は、社交的ではなく、定年退職 後に地域で孤立してしまうため、地域住民の交流のためのイベントに参加する人は、たいてい 女性のほうが多く、男性高齢者の人間関係の乏しさが指摘されることが多い(23)。また、老年 期は、生きがいを構成する身体と精神の健康、経済的自立、家族や社会とのつながり、生きる 目的の 4 つの喪失を体験するといわれている(24)。これらの状況に直面する時、どのような行
査を進めていく必要がある。
Ⅵ.本研究の限界と今後の課題
本研究の対象地区は限局されているため、結果の一般化には限界がある。また、SC の Cronbach のα係数は0.73であり、一定の信頼性は認められるものの(25)、0.8以上が妥当である とする文献も多いため、本研究の限界である。しかし、本研究により、夫婦のソーシャル・ キャピタルの特性で区分した場合の、身体活動状況、閉じこもり傾向、抑うつ傾向への特徴が 明らかになったため、これらをもとにソーシャル・キャピタルの醸成につながる支援を検討す ることが今後の課題となる。Ⅶ.結 論
本研究では、夫婦のソーシャル・キャピタルの特性での区分により、身体活動状況、閉じこ もり傾向、抑うつ傾向を比較することでソーシャル・キャピタル醸成に向けた支援を検討する ための資料を得ることを目的とした。その結果、夫婦ともにソーシャル・キャピタルが高い群 は、夫婦ともに低い群より、外出に対する自己効力感が高かった。また、夫婦ともソーシャ ル・キャピタルが高い、または夫のみが高い群では、抑うつ傾向が低かった。これらのことよ り、ソーシャル・キャピタルの醸成を、夫婦のサブシステムで検討した場合、特に夫に焦点を 当てた支援が重要となることが推察された。 謝辞 本研究に、ご協力くださった皆様に、厚く御礼申し上げます。 文献 ( 1 ) 太田ひろみ(2014).個人レベルのソーシャル・キャピタルと高齢者の主観的健康感・抑うつとの関 連 男女別の検討.日本公衆衛生雑誌,61(2),71-85. ( 2 ) 内閣府.https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/01pdf_index.html(2019.09.05) ( 3 ) 厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life17/dl/life17-02.pdf(2019.09.05) ( 4 ) 総務省統計局.https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&layout=datalist&toukei=00 200521&tstat=000001080615&cycle=0&tclass1=000001089055&statdisp_id=0003149791 (2019.09.05) ( 5 ) 高橋祥友(2008).高齢者の自殺の精神医学的側面(特集 高齢者の自殺と自殺予防).老年精神医学 雑誌,19(2),162-168. ( 6 ) 白川あゆみ(2015).わが国における配偶者と死別した男性の心理社会的影響に関する文献検討.日 本地域看護学会誌,18(1),102-109. ( 7 ) 梅崎薫,笽島茂,関根道和,成瀬優知,鏡森定信(2003).高齢女性の配偶者死別とライフスタイル. 日本公衆衛生雑誌,50(4),293-302.夫婦のみ高齢世帯におけるソーシャル・キャピタル醸成のための予備的調査 ( 8 ) 栗原(若狹)律子,桂敏樹(2003).ひとり暮らし高齢者の「閉じこもり」予防および社会活動への参 加に関連する要因.日本農村医学会雑誌,52(1),65-79. ( 9 ) 厚生労働省.https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1_07.pdf(2019.09.05) (10) 山崎幸子,藤田幸司,藺牟田洋美,安村誠司(2016).外出に対する自己効力感を高める訪問型支援 の効果:高齢者の閉じこもり改善に向けた試み.応用老年学,10(1),27-36. (11) 杉澤秀博,石川久展,杉原陽子(2012).民生委員を通じた閉じこもり高齢者把握の可能性.日本公 衆衛生雑誌,59(5),325-332. (12) Kawamura K, Takenaka Y, Tokura E, Kimura C, Tanabe M, Ito H, Miyama T, Hori T, Matsumoto K (2019). An investigation of the factors affecting social seclusion and of the social activity needs in elderly couplesʼ households. Journal of Academic Society for Quality of Life, 5(1), 1-12. (13) 林千景,前馬理恵,山田和子,森岡郁晴(2018).現健康推進員、既健康推進員、非健康推進員のヘ ルスリテラシー、ソーシャルキャピタルおよび健康行動の特徴.日本公衆衛生雑誌,65(3),107-115. (14) 京 都 市.https://www2.city.kyoto.lg.jp/sogo/toukei/Publish/Analysis/News/086Respect_for_the_ aged.pdf (2019.09.05) (15) 京都市.https://www2.city.kyoto.lg.jp/sogo/toukei/Population/Census/basic1.html#kourei_s (2019.09.05) (16) 稲葉康子,大渕修一,岡浩一朗,新井武志,長澤弘,柴喜崇,小島基永(2006).虚弱高齢者の身体 活動セルフ・エフィカシー尺度の開発.日本老年医学会雑誌,43(6),761-768. (17) 山崎幸子,藺牟田洋美,橋本美芽,野村忍,安村誠司(2010).地域高齢者の外出に対する自己効力 感尺度の開発.日本公衆衛生学雑誌,57(6),439-447. (18) 杉下守弘,朝田隆.(2009).高齢者用うつ尺度短縮版―日本版(Geriatric Depression Scale — Short Version-Japanese, GDS-S-J)の作成について.Japanese journal of cognitive neuroscience, 11 (1), 87-90. (19) 小林美奈子,森田久美子.(2017).世代間交流を導入した高齢者うつ予防プログラムの開発 笑い ヨガとタッピング・タッチの活用.四日市看護医療大学紀要,10(1),1-10. (20) 衛藤緑里,山田雄大.http://www2.am.nagasaki-u.ac.jp/physical/2013/ARGH09-03.pdf(2019.09.05) (21) 松田晋哉,筒井由香,高島洋子(1998).地域高齢者の生きがい形成に関連する要因の重要度の分析. 日本公衆衛生雑誌,45(8),704-712. (22) 小池高史.https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/koreisha-koritsu/koreisha-koritsu-danseimondai. html(2019.09.05) (23) 鎌田晶子,田中真理,秋山美栄子(2015).高齢期の夫婦共同行動としての消費行動と主観的 well-being.生活科学研究,37,125-133. (24) 奥野茂代,大西和子(2014).老年看護学 概論と看護の実践 第 5 版,ヌーベルヒロカワ,東京. (25) 中村好一(2019).論文を正しく読み書くためのやさしい統計学.診断と治療社,東京.