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学校教育における電磁気学指導の諸問題(I)

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(1)Title. 学校教育における電磁気学指導の諸問題(I). Author(s). 倉賀野, 志郎. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 34(1): 253-267. Issue Date. 1983-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4915. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 「学校教育における電磁気学指導の諸問題」(1). 倉 賀 野. 序章. 志. 郎. 電磁気学教育を考えていくにあたって. 第1節. 電磁気学教育を考える4つの基本的 「柱」. 電磁気学教育を考えていく場合,古典物理学における電磁気学の位置と特徴とを考え合わせ ると , 次の4つの基本的柱が設定しうると思われる それぞれは 教材化において中心的な課題とな てい っ . く。. ① 「場」 の物質性 M, Faraday J C Maxwe l l in らによって構築されてきた電磁気学の te ns , . . , H. A.Lorentz , A.Ei. 主要な対象は 「物質と場」 の相互連関の 問題であり 「場」 の物質性が把握されてきた ことに電磁気 , ) 重力のみによ って特徴づけられる古典力学の 「力 学の大きな特徴点のひとつがある1 」 は 「場」 と . して一般化さ れていくようなものではなかった そこに電磁場を媒介する電気力・磁気力が加わ っ . ていくことによって 「力」 の 「学」 である力学への反省もおこり 「場」 の物理学が構築されてい っ , た の であ る.. この 「電磁場」 の物質性を, むづかしすぎる として電磁気学 教育から排除することは 本質を , , ぬいたかたち で現象そのものを教授しようとするものと同じで 結果的に暗記になら ざるをえなく , する. ②特殊相対性理論とのつながり 「場」 の問題は, さらに, そこでの作用の伝播速度が有限 であるということを介して特殊相対性 理論と結びついている.この場合,両者が本 質的につながっ ていることを確認しておく必要がある2 ) , 特殊相対性理論は, マックスウェル方程式の運動物体における電磁気学の 「共変性」 と結びついて いるもので, 「特殊相対論的電磁 気学」とあらため て言う必要がない程に表裏一体の関係にある 歴 . ) それに比してニュ ートン力学の相対論的力学への移 史的な過 程をみても, そのことは指摘しうる3 . 行は, 「拡張」 に値するもの で, 力学の範囲内ではそれを考えていく必然性はなかっ たもの である . 特殊相対論そのものの授業プロ グラム化を電磁気学を媒介として考えていくという課題も ここから 出てく る. マックスウェル方程式に, なぜ光速度 が出てくる のかといっ た問題や 運動による電場 磁場の , , 変化な どは, 方程式の物理的背景としての相 対論的側面にま で遡源して みなければわからない . ③エネルギー保 存と転化 電磁気学だけ でエネ ルギー保存と転化を論ずること は一面的なようだが エネルギー概念の実体 , 的な意味を考えていく上 で, 電磁気学は中心的な役割をはたすものと考 える . 253.

(3) . 倉賀野 志. 郎. エネルギー概念の形 成にとっ て, 歴史的には異種 現象間での 「質的転化」 が重要な役割を果たし ており, その視点からすると, 力学的エネ ルギーを教材化にお いて最初の導入として扱ってよいか )また力学の範囲内では位置エネルギーは 力からの単なる構成量とみるこ どうかは検討に値する4 , とも論理的には可能で, 「場」 に実在するエネルギーの 「実体性」 は電磁気学ではじめて意識化しう ) この第3の柱 る. 実際, ジュールのエネ ルギー概 念の形成過程でも「電磁誘導」が関係 している5 . は, 第1, 第2とは相対的に独自な単元として教材化していっ た方がよいと思われる.. ④電子論の物性論 電子実体による電磁気力の把握は 「物質」 そのもの性質を問うていくことにつながる. 「質量」 に になわれている重力も 「物質」 の 「質」 そのものにかかわっ ているが, それのみでは, どのような 「質」 なのか問うことは意識化されない. 「物性」 を理解していくためには, どう してもただのツ ブツ ブとしてのアトム概念から, さらに 一歩進んで電気を帯びたツ ブツ ブとしての 電子・電子論への拡張が必要となる。 電磁気学教育は, この物性を教えていくという課題ももっ ているの であるが, この点も第3と同 様, 独自な単元として教材化していくべきものと思われる. この点に関しては, 「場」の概念を中心 とした 「電磁気学」 の授業書の今後の展望にかかわるところ で再 びふれる. 現行の学校教育にお ける電磁気学は理科 ぎらいを生み出している ものの主要なひとつ であると いっ ても過言ではなかろう. 専門の立場か らしても実際には行なわれていないような計算が長々と 書かれている教科書も一部にはあり, 「計算式」の中に物理的意味がう もれてしまっている現状であ る。. このよう な現状の背景には, 電磁気学そのものの 「論理構造」 の分折をふまえない, 「式」 のみに 終始している傾向があると考える.電磁気学そのものが対象と している物理的実在に ま でもどっ て, 全体の論理構成や, さらには「方程式」に表現されている意味がよみとれるように 電磁気学教育(学 校教育に限定された範囲内 での) を組み直していく 必要があると考える. とりわけ物理的実在として 電磁気学において中心的な位置を占めるのは 「場」 の実在性で, 「場」 の存在の「直接的質」そのものに対する認識をどのように組ん でいくかというこ とは, 電磁気の「学」 を教えることを目 ざすならば中心的な課題となら ざるをえない. 電磁気学の各方程式にもりこ まれ ている対象は, 「場」 とそれにかかわる 電荷を有する 「物質」 であり, この 「場」 の問題をぬきに し て電磁気学を語ると, 「式」 の物理的意味はすっ ぽりとぬけおちることになる. 電場・磁場の相互転 化も, 電磁波も, そもそも相互作用そのものが 「場」 を介在とした 現象であり, そこを避けて通る こ と は でき な い.. 本論文 では, この 「場」 の概念を中心とした 「電磁気学」 の指導 プロセスを 「授業書」 という形. ) 態 で提 出 し, 考 察 し て い る6 .. 第2節. 電磁気学の教育内容を考えていくステッ プ. 「場」 の概念を中 心とした電磁気学の授業書を考えていくステッ プとして次のような段階を設定 して い る。. 第1に, 古典電磁気学の論理構造を, 「場」 の実在性に 焦点をあてることから, 「場と物質」 とい う視点からみなおす 必要がある. この場合, 現代物理も古典電磁場の特徴 を分折しておく 必要があ ることから, 関係のある範囲で考察することに なる. 古典電磁気学の論理構造の分折から, その電磁気学教育を考えていくにあたっての基本的な視点 254.

(4) . 学校教育における電磁気学指導の諸問題 (工). が設定されるこ とになる. どのような視点を設 定するか ということは教材化において何に着目し , ていくのか, ということに関係してくる (第1, 1 1章) 。 第2に,「論理」そのものを歴史的に考察していく ということ である 教育内容 授業書構成の「す . , べての子どもに理解可能な順序」 に基づく 「順次性」 が 歴史的順序にしたがうと考 えるわけ では , ない. 「歴史」 を考察することの意味は次の点にある . 現代科学といえども超歴 史的に存在するもの ではなく 人類の 「類」 としての認識発達過程の現 , 時 点での断面においてとらえられた 「科学」 が現代科学である この意味 で 科学の論理構造は . , , すべて過去の歴史の 「所産」 という性格をもっ ている その論理構造を歴史にま でもどっ て考察す . ることは, 当のカテ ゴリーが形成されてくる「類」としての過程を考察すること であり そこに「類」 , としての認識過程の 「諸契機」 をよみと る可能性が出てく る このことによ って 「個」 の認識過程 . の 「諸契機」 をさ ぐっていく手がかりを得ることができるかも しれない このような認識の 「諸契 . ) それ故 「諸契機」 を考察しえな いような 機」 を抽出していく ことに 「歴史」 考察の意味がある7 , . 「通史」 や, 科学の 「論理構造」 の分折をふまえない歴史考察は 教育内容・教材を構成 していく , ) に あ た っ て 充分 な威力を発揮 しえない8 . 「場」 に焦点をあてている ので, 当然のことな がら 「場」 の概念の形成過程 がここでは問題とな , る。 特 に M.Faraday に 着 目 して い る (第1 1 1章) .. 第3に, 以上の分折 を経た後に, 古典電磁気学の範囲内にお いて教育内容として提出すべき電磁 気学的自然像が吟味される. この段階では電磁気学そのものの論理構造 を 「すべての子どもに理解 可能な順序構造」 という視点に基づき組み直していく必要がある 教授学における教育内容構成論 . の段階である。 (第IV章) 第4に, その教育内容を授業過程をも規定している 「授業書」 へと対象化し 授業実践にかける , 段階である. (第V章) 本論文の全体構成も, このような順序にしたがっ ている . 本稿では第1にかかわって展開されている 。. 第1章 第1節. 電磁気学の 「論理構造」 を考えていくにあた って 「矛盾」 という視点からの 「論理構造」 の考察. 拙稿 「『力学の矛盾』 と力学教育」 において, 「力学の矛盾」 を 「力学の論理構成の問題」 として ) 「電磁気学」 教育を考えていく にあた て 「電磁気学」 そのものの 「論理構成 とらえた9 っ , 」 の分折 。 が必要となるが, その 「構成」 も 「矛盾」 という概念より考察していくことを考えている 古典電 。 磁気学の理論の破綻点より, その 「論理構造」 を考えていこうというわけである いわゆる 「マ ッ 。 クスウェル方程式」 だけで「構造」を考えることは不充分 であると考えるから である それらの「方 。 程式」 に 「表現」 される 「電磁気現象」 そのものにま でもどっ て吟味することなしには ただ 「与 , 件」 としての 「方程式」 の諸連関をいじくりまわすだけの可能性が出てくる . このため, まず 「電磁気学」 そのものの考察にはいる前に, 「力学の矛盾」 の展開をまとめてお こ つ。. 「全体構成」 は次のよう になっている . 0, 「衝突」 現象によって, 物質の物質としても つ性質が発現してくる 「衝突」 が起る という . , 255.

(5) . 倉賀野. 志. 郎. ことは 「相互作用」 が起る, ということに 相当している. 「場」 概念の物質2を媒介と しての分離がおこる. 物質 1 ,1) この 「衝突」 によ って, 物質1の 1の 「場」 と 「物質」 の内的対 立は, 外的対立と して現象する. 2) 物質2の 「場」 は, 物質1の 「物質」 に 「作用」 をおよぼす。 物質2の 「場」 は, 物質1 の 「場」 の外的に対象化されたものであり, この段 階 では2の 「場」 は, 1への 「作用」 と して現われる. 形式的に書くと 次のようになる. △ P I= △1 2. △P:運動の 「量」 の変化分 △1: 「作用」 の 「量」 3) △Pより 「運動量」 の概念の抽出 作用の働かない状態として 「一様」 な運動, それに基づく 「一様」 な 「時間・空間」 とい ,ぅ 概念が確立さ れる. 「慣性」 という概 念の形成. 「超時間」 として3 での 「時間」 と区分する) によ 4) △1の二つの物質に 共通する 「時間」 ( る 展 開. △ 1 を F △ T と す る. T : 超 時 間, F : 「力」. 5) △P=F△T (運動の第二法則) 物質2の 「作用」 は 「力」 として現われる. これは, 古典力学上での 「自己媒介性」 を捨象 した段階 での 「矛盾」 の現象形態と なっ ている. (田中一) 6) △PとF△Tとの 役割の交換. 1と2との役割 は, さらに他との 「衝突」 を考えていくこ とによ って交換される. 運動の 「量」 的側面からみた時, 「衝突」 は 「運動量保存」 という形 で理論的に 再構成される し, 「作用」という側面からみた時, 「運動の第 三法則」が出てくる. 2. 「1」 での 論理は, 物質1の外的に対象化された 「力」 が, いかに運動の 「量」 を変化させる か であ っ た.. この物質1そのものの運動の「量」がどのような「力」を生じるのかが展開されることによっ て全体の 「論理」 が閉じる. 形式的には, F=F(P)となる. 古典力学の範囲内 では, 源2からの働きかけは 「作用」 としては現われるが, その 「作用」 をに なう実体が「場」であるか どうかは直接には問われてはいない。 この意味で, 力学の範囲 内での「矛 盾」 は 「慣性と力 (作用)」 という形 では現 われるが, 「物質と場」 という問題は背景にしりぞけら れている. 電磁気学では, それが顕わに出てくることになる. 第2節. 古典電磁気学のかかえている 「自己矛盾」. 「矛盾」 という視点より古典電磁気学の 「論理構造」 を考えていく前に, 古典電気学の理論その ものがかかえている 「自 己矛盾」 点をみておこう. 古典電磁気学の理論の破綻 点をしめす意味における 「矛盾」 は, 大きく二つに区分することがで きると思われる. 一 つは 「場と物質」にかかわるものである. ある※という相 互作用において, 「※ という物質を規 定する質」 と 「※場」 とが外的対立して設定される. 電磁気学の場合, 「質量」 その ものと 「電荷」 との二つが前者に 含まれる. (後述) もう一つは 各物理的実在を 「所与」 のものとせ ざるをえないという 点にかかわる 破綻点である. 電荷の不連続性, 電子・陽子の質量差などがこれ にあたる. 一般に後者の破綻点は, 「矛盾」 として理論を展開 していく 「問題」 として提 出していく 256.

(6) . 学校教育における電磁気学指導の諸問題 (1). ことはむずかしい. それがいかなる意味における 「問題」 であるかを性格づけることが困難 である か ら であ る。. 以下, 「場と物質」 の矛盾にかかわっ て考察していく。 R. P. フ ァインマンは 「古典的な電磁気学の理論はそれ自体が不満足な理論である」 と述べて 0 ) 電磁気学の「困難は電磁気的な運動量とエネ ルギーとの概念を電子などの荷電粒子に適用し いる1 。 ようとする時に生じる」 。 そこでは「単純な荷電粒子の概念と電磁場の概念とはある意味で矛盾した 1 0 もの」 となる 1 これらのことは, 電子それ自身に対しておよぼす力という問題を考えると表面化する。 加速度運 動を考察して 「電子の各部分の間の力を調べると, 作用と反作用とが完全に等しくなくて, 電子は それ自身に対して加速度と逆向きの力をおよぼすことがわかる.」しかし, これを認めていくと,「自 0 〉 身に対する作用」 は 「無限大」 となってしまうのである1 。 この場合, 「電子は自分自身に作用することはないということが -- 困難のすべて」 となってく る. 「電子が自分自身に作用する可能性を追い出すような理論」も提案されたが, この場合, 電荷を 加速すると電磁波が出るという基礎的な事実さえもが説明 できなくなるの である。 「電磁波」などを o )電磁 説明するためには 「電子の一部が他の部分に作用すること -- しかないように 思われる.」l 波という, ある意味では単純な事実でさえもが 「場と物質」 の 「矛盾」 にかかわっているのである. 「古典的な電子理論は窮地にお しやられ」 ることになる. 困難をさけようとして 「電気力学に量子力学的な修正がなさ れなければならない」 とすることも できそうだが 「矛盾」 はちがう形でもちこさ れていく だけで 「量子力学的な修正」 の後にもマック 点電 スウェルの理論は困難を残 しているのである。「マッ クスウェルの電気力学を量子化した理論は, 荷に対して無限大の質量を与える。」「今までのところ, 修正した どの理論についても量子論的な自 o } 己無どう着な理論をつくることには成功していない。」l 量子化された電磁気学において生ずる 「質量」 と 「電荷」 の自己場による 「発散」 問題を 「くり こみ」 という方法で回避した朝永振一郎氏も次のように述べている。 「われわれの理論はたしかに自己矛盾を含ん でいる。 この矛盾がどこからきたかというと, そ れは, われわれの持っ ている場とその間の相 互作用という二つの概念を古典的な(量子化しない) 1 1 ) 場 の 理 論 か ら そ の ま ま 持 っ て き て い る」 .. 電磁気学の 「マッ クスウェル方程式」 という論理構成から考えるならば, 電場, 磁場はひとつの 物理的実体である 「電磁場」 の具体的に現象した部分的な成分でしかなく, 両者の関係を 「矛盾」 と して と ら え る こ と は でき な い。. しかし, 歴史的に考えるならば, 19世紀の電磁気学の形成過程において, 静電気学, 静磁気学か らみれば電場, 磁場の両者が連関をもつことは, 当時の 「理論」 においては 「矛盾」 であ った。 当 「異質的」 なものとして設定しておく方が積極的な意味をもつ 時においては, この両者の 「場」 を, こととなっ た。 電場, 磁場をただ単なる力の数学的形式において 「矛盾」 を 「解消」 した 「電気力 学派」 は, 結局のところ, その 「矛盾」 をより高次なレベ ルにおいて統 一していく電磁気学をつく り出すことは でき なかっ たのである。 電場, 磁場を 「矛盾」 として設定していくことは 歴史的には 2 ) 意 味 が あ っ た わ け であ る1 .. これと同じように, より高次な認識のレベ ルに到達している 「ゲージ理論」 に組みこまれた 「電 磁気学」 においても, その体系における 「矛盾」 が設定されてくる. 古典電磁気学における 「場と 物質」 の 「矛盾」 は形を変えて現われてきている. 257.

(7) . 倉賀野 志. 郎. ゲージ理論に基づく 「ゲー ジ場」 においても, 源があっ て, そのまわりに静的には逆二乗の法則 に従がう力を生じる. 「場」 ができること, その力が, その源のもつ量子数 (電磁場の場合は電荷) に比例 し, その量子数につき保存則が成立することなどが指摘さ れている. しかしこのゲージ理論 においても 「フェルミオン」 と 「ボゾン」 との対立は止揚されておらず, 「表現空間」 , 「変換群」 に ま で抽象化された段階では, 「局所的対称 生」 を要求することによっ て, その 「表現空間」 において 生ずる であろう 「力の場」 と, その 「場の法則」 も論理的にそこに含まれているにすぎない. フェルミオンとボゾンの 「超対称性」 を考えていく 「超重力理論」 なども検討されてはいるよう 3 ) しかし牧二郎氏な どは 「物質の窮極像」 にかかわっ て 「もしなんらかの意味での宇宙方 である1 , . 種~式のようなものが想定しうるのだとしても, それが真実を含むためには -- いくつかの 〔非可 換・局所ゲージ対称〕 な相互作用をそこから導き出すことが可能でなければならない」 として, 「そ うだとするとゲージ場に複数の成分がなげれが非可換ゲージ理論にならないから, 物 質の 〔成分〕 もまた複数個必要」となり「おそらく プランク質量以下の領域では -- 物質の一元論には到達しえ ず, また, 〔物質〕 と 〔力〕 という概念はひき続き相異なるものとして残る であろう」 と予測してい 4 ) る1 .. 古典電磁気学における 「場と物質」 の 「矛盾」 というのは, その歴史的段階における 「位相」 に おいてとらえられた限りでの 「矛盾」 であるわけ である. 第3節. 「矛盾」 という視点からの 「論理構造」 の展開. 〔展開にあた っての予備的考察〕 「衝突」 が起るためには互いに 「等質」 である必要がある. 今, ある※というレベ ルの 「相互作 用」 に基づく 「衝突」 を考える時, その 「※」 によ って規定される 「※という物質を規定する質」 (以下 「※という質」 と略) と 「※」 という作用をになう 「※場」 が 「外的対立」 として最終的に 展開されていくはず である. また 「※という 質」 は, 物質そのものともかかわりをも つので, 「慣性」 によ って規定される 「質 量」 (慣性質量) との関係もある. このように考えると, ある※というレベルにおける方程式は, 自己媒介性を捨象して外的に 「対 象化」 されている段階 では3つあることになる. これらは 「作用量」 という視点からみると次のよ うになる. 「与えられた電磁場のなか で運動する粒子に対する作用は2つの部分 -- 自由粒子の作用と, 粒 子と場との相互作用を記述する項からなっ ている. 後者は, 粒子を特徴づける量と, 場を特徴づけ る量との両方を含むはずである.」「電磁場との相互作用に関する粒子の性質は, 粒子の電荷eとよ ばれるただ1つの パラメーターで規定され」 , 「場 の性質は4元ポテンシ ャ ルとよばれる 4 元 ベ ク ト 1 5 )(一般的には 「※という質」 は1つであるとは限らない) ルによ って特徴づけられる.」 「場に対する作用の形」 は 「電磁場はいわゆる重 ね合わせの原理を満足する」 という性質から決 6 )現 在 知 ら れ て い る 4つの相互作用のうち「光子と光子の散乱」を考え 定 し て いく こ と が で き る.1 ,. なければ, 電磁的相互作用 に基づく 電磁場は, 源から生じた場そのものが新たな場を生み出す源と ならない 「アーベ ル場」 としての特徴をただひと つもっ ており, また重力相互作用と同様に力を媒 介する粒子の質量が0なので無限大の到達力をもっている.アーベ ル場であるという特徴は,「物質」 と 「場」 を外的に二分した形 でとらえやすいことを意味しており,.電磁場の特殊性がここにある. 以上, まとめると, 全体として 「作用函数」 は 「自由粒子に対する作用」 , 「粒子と場との相互作 258.

(8) . 学校教育における電磁気学指導の諸問題 (1). 用」 , 「場それ自身の性質に依存する作用」 の3つの部分からできていることになる。 前の2つから 「運動方程式」 が, 後ろの2つから 「場の方程式」 が導出される。 こ の 2 つ の 方 程 式 は 次 の よ う な も の であ る。. 「※」 における運動方程式 ( 「1」 ) 源2の 「※場」 によっ てひきおこされる 「※作用」 は, 源1の 「※という質」 に働き, 源1 の 「運動状態」 を変化させる. 「※」 の方程式 「※という質」 の源が, 「※場」 をつくる。 ここでの 「※という質」 は, 「1」 における 「※という質」 とは区分さ れる。 前者は 「場」 を 生み出す 「質」 であり, 後者は 「場」 の効果を受容する 「質」 である. 「ニュ ートン力学においては厳密には, 質量を3種類の異なっ た質量に分類する。」 「1) 慣性質 里.ニュ ートンの運動の第2法則によって, 質量とは独立である力に対する反応を通じて決定され る.」「2) 能動的重力質量:重力場を作る物質源として -- 重力を 〔誘導〕 する質量として定義さ 7 } れる.」 「3) 受動的重力質量: -‐ 重力を感受し受けとる 質量として定義されるJ1 「古典力学では, これらの質量に関する三つのカテ ゴリーには普遍的な比例性がある。」「慣性質 1 7 量と受動的質量との比例性は,古典物理においては単に 一- 偶然的なことにす ぎない」 1重力相互 作用の場合, 「重力 質量」 という重力によ って規定される 「質」 は, 「慣性質量」 と 「原理」 的 ( 「等 価原理」 ) に等しいとされ, 「作用函数」 は電磁気と比較してひとつ少なくなる。 このことは 「相互 作用」 において 「重力」 が特殊な性格をもっていることをしめしている。 時空概念は本質的な意味 で重力とのつながりをもっていることになる。 (しかし, この時空概念が, ある※というより本質的 な相互作用によっ て展開される 「※空間」 , 「※時間」 に認識論的に深化しうる可能性を排除す るも のではない。 「力学」を展開するフレームそのものも科学の対象であり, 認識の発展によ っ て深化し うる.) しかし 「能動的, 受動的重力質量の間の比例性は, ニュ ートン力学の原理のなかに深く根づいて 1 7 )それは「ニュ ートンの第3法則」 (作用・反作用の法則)の結果である 電磁気の場合 「作 いる.」 , 。 用・反作用」 の関係から, 能動的質 (電荷) と受動的質 (電荷) とは一致する。 〔 「矛盾〕 という視点からの展開〕 自己媒介性を捨象した段階で展開される方程式は「力学の矛盾」から考えられるように, 「※とい う質における運動方程式」 と 「※場の方程式」 との2つである。 この2つの前提とすると, 両者は 外的に独立化したものでしかない。 「衝突」から, 2つの方程式へと展開さ れていく プロセスが吟味 されなくてはならない。 この部分が 「電磁気学の矛盾」 の展開にあたる。 この論理過程を吟味して おくことは, また, 「場」 そのものの実在性の 「認識論的契機」 をさ ぐる手がかりも与えてく れる, と 考 え て い る。. 力学の範囲内では, 他者からの働きかけは 「作用」 ではあるが 「場」 としては発現していない。 「作用」 が 「場」 として現われるためには 「場」 そのものが独立した存在としてしめされなければ ならない。 この意味から, 「力学の矛盾」の論理の流れに即しつつも, 運動方程式と場の方程式とい フ 二つに外的に 分離された表現形態をとるまでの プロセスを, 「場」 の実在性とかかわらせて再度, 考察し直していく必要がある。 この 「展開」 の出発 刻ま , 古典電磁気学そのものがかえている 「矛盾」 である 「自己場」 である。 自己の自己場との 「作用」 を考えるならば, 自己の物 質としての 「質」 は, 自己との 「作用」 によっ 259.

(9) . 倉賀野 志. 郎. て生じている, ということが 「力学の矛盾」 から指摘しうる. 自己の物質としての 「質」 としては二つの側面を区分しておく 必要がある. 「※相互作用」 におい て 「※という質」 と 「※場」 が区分さ れることから, ここ での 「質」 と しては 「慣性質量」 と 「電 荷」 が出てくる. かつて 「自己場」 とのかかわりによ って生じる 「質量」 (電磁気的質量) によって 「慣性質量」 のすべ ての説明 できるの ではないかと 考えられた時期があ っ たが, 電磁的質量を差し 8 )電磁的相 引いても, なおかつ残る「慣性質量」の部分があることがしめされうまくいか なかっ た.1 互作用が 「物質」 の有するすべての相 互作用を代表するものではないことを考えるならば, そこに おける 「自 己場」 とのかかわりによっ てすべ ての物質の 「質」 がくみつくさ れることがなかったの はある意味では当然だといえる. ここでの 「自己場」 はすべての相互作用を包括した意味でのそれであり, 具体的にそれが他者と のかかわりの中で展開される時に, 特殊的な相 互作用 (ここでは電磁的相互作用) となって現われ るわけ である. どのレベ ルによる相互作用によって物質をみていくかによ って, 物質のもつ 異なっ た 「質」 が見えてく る. また, その逆に, より物質の内奥に入りこんでいくことによって様々なレ 9 ) ベ ルの相互作用が発現してくる 可能性もある.1 この 「衝突」 を 「※という相互作用」 において考える時, 「※という質」 と 「※場」 が出てくるわ け である. ここでは 「電磁的相互作用」 が問題となる. 「衝突」 という相 互作用においては, 他者の 「場」 によって源1の運動量の変化が起こるという 形で, 運動方程式があらわされているが, 自 己がつくり出す自己場との 「作用」 が前提としてあっ て, それが 「衝突」 によ っ て外的に対象化し, 他者 (源2) からの 「作用」 として発現する時に, 源2がつくり出す場として現われている と考えることができる. このように考えると, 「衝突」 においては, まず自 己の自己場との 「作用」 そのものの 「変動」 が 生じており, それが源1においては「運動量の変化」という形で現われていることに なる。 つまり, そこにおいては自己との 「作用」 が変動するのであるから, 源1の物質にかかわる運動量ばかり で なく, 源1の 「場」 そのものの変動も生じているはずである. これらを形式的に次のように 表わす. 源1のまだ無規定的段階における運動量変化を△ とすると, それに対応するものは源1の, こ れもまだ無規定的段階における△ Fo(場の変動) である. 源1において発現してい なかった△ , △ Foが 「相互作用」 によ って展開さ れていく. △ Poそ の も の は, 自 己 がつ く り 出 し て い る 場 の 変 動 であ る △ Foに よ っ て 生 じて い る. こ の 源 1 だ. けにおける自己と自 己場との△ , △ Foの関係が, 他との相互作用によ っ て変化していくのであ る. 源1だけをみている段階 では 「物質」 (P) との 「場」 (F) との区分は未分化である. この△ Foが外的に対象化される時に, 源2の F2場によ って「作用」がひきおこされたという形 で 現われる. FとPとの 分離はこの時にはじまる. △Pは源1として, Fは源2として, 顕存化する. この時, 重要なことは, 相互作用によ っ て本来ならば 「場の変動」 も起こっ ているはずなのに, それが源2の F2場によ って源1に 「作用」 が働らき△ P.(△ Poとは異なり△1 2に対応して規定さ れている) を生 じる, として顕わに出てこ ないということ である. 「自 己媒介性」を捨象した段階で の 「矛盾」 の現象形態である 「△ P,=△1 2」 では, 「場」 の変動もまた捨象されている. )(場の方程式)も, 場の変動や, それに対応する運動量変化(自己場に関して) 同じく F2=F(P2 との関係によ って基礎づけられているという プロセスを捨象した方程 式としてみていくことができ る. そ こ では △ P,に か か わ っ て, どの よ う な △ F,が 生 じて い る の か は 直 接 に は しめ さ れ て い な い.. このように考えると, 相互作用においては, 運動方程式や場の方程式によ ってはくみつくされて 260.

(10) . 学校教育における電磁気学指導の諸問題 (1). いない 「場の変動」 などの物理的な過程が存在しているとみるべきものであることになる. △Pより 「P概念」 がつくられることは 「力学」 の場合と同じである。 ここでの 「運動の量」 は 相互作用の 「質」 に規定されている。 当然のことながら, そこでの 「時空概念」 も相互作用の 「質」 に 基づ、い て い る.. 「電磁気学」 における運動の記述としての 「時空」 が重力相互作用とのかかわりをも つ 「時空」 によ って置き換えることは, 力を媒介する粒子の 質量が両者とも0であること (作用の到達距離が 無限大で, 光速度) であることを除けば, 古典物理学の範囲内 では 「偶然」 としかいいようがない. 源1の自己場の変動は△1 2として対象化される。 しかしここでの 「作用」 は源1における物質と 場との関係から生じたものであり, それ故, 「作用」のすべての原因を源2に還元することは できな い。 △1 2は, 源2によっ て生み出された 「場」 が, 源1のその相互作用のレベルにおける 「質」 に 働きかける, という形で展開される。 ※という相互作用 で考えるならば, △1は「※という質」 (こ こ では電荷) , と 「※という 質に働きかける他者の※場」 (ここ では電磁場) との 「対」 によって展 開さ れる. 源1そのものの内的な過程を経て, 作用が働いたのであるが, 「※という 質」 と 「※場」 が展開された段階では, 源2の※という質が源2のまわりに※場を生ずるという形 で「場の方程式」 が展開される。 F2=F(P2 ) 。 P2の変化を考えるならば, F2の変動も定式化しうるが, それは, 源1 の 「自己場」 の 「変動」 を形式的に表現するものとして△ F =F (△ P。 ) というような書き方をす ると, これとは本質的に異なっている. (源1において場ま で含めた状態は「定常」に保たれている。 「定常」ななか でも△ Poと△ Foは生じているのだが顕在化しない。 他者との相互作用によってそれ らが現象してくる. 形式的にこの段階の関係を表現するものとして△ Fo=F(△ P, ) と書く.) F P △ o=F(△ 。 ):この形式的に表現された式は, 自己との作用を考えているという点で 「矛盾」 とかかわっており, 電磁気学のマッ クスウェル方程式中には存在しないものである。 この関係に基づいて, 他者との相互作用 (衝突, 運動学的な表現でいえば 「加速度運動」 ) によっ て 「場」 の変動が物理的に実体化するところに, 「場」 の実在性の認識論的契機を考えていくカギも あると考えている. この形式的に表現された式を前提として, 外的に対象化された形態として 「運動方程式」 と 「場 の方程式」 があるとみていくことができる。 「矛盾」 という視点からみた場合の 「電磁気学の論理構成」 はしたがっ て 「場の変動」 に直接つ ながる 「自己場」 に着目したところからはじまる. ◎ 「自己場」:△ Fo=F (△ Po ) ◎ 「衝突」 による 「場」 の変動の実体化. ◎運動方程式と場の方程式へ ◎ 「衝突」 , 「場の変動」 の理論的再構成 ◎ 「自己場」 のかかえる 「矛盾」 への認識論的無限接近 「場」 の実在性や, 「場」 の自己とのかかわりなどを考え ざるをえないような物理的な過程は, 事 実, 「相互作用」 (運動学的には加速度運動) において生じている. その 「典型」 としてあげうるの 0 )いわゆる 「双子のパラ ドックス」 は は特殊相対論効果における 「時間のおくれ」 の問題 であろう。2 実験によってしめされているように実在するもの である。 この場合, 「おく れ」を「他の系からみて もそのように見える」 という通常の説明方法で理解 できるものではない. 加速度運動によって生じ る 「絶対的」 な意味における 「時間のおくれ」 は, 「時間」 そのものが物質にとって何 であるのかを 考えていくための 「カギ」 を提供するものであろう. 相互作用の結果, 生じている加速度運動にお いて, 「場」 に変動がおこり, 「場」 の一部が物質からはがれていっていることを考えるならば, 物 261.

(11) . 倉賀野. 志. 郎. 質と自己場とのかか わりが物質そのものの 「時間」 にかかわっ ていることを予測させる. これは - 般相対論の考え方とも適合する. このように 「相互作用」 においては物質と場のより深いかかわり が顔を出す. この意味では, 素粒子論の研究も, 「衝突」 を方法論と し物質そのものの 「質」 により 深く 迫 っ て いく 研 究 と も い え る.. 第口章. ◆. 古典電磁気学の 「論理構造」. 前章での 「電磁気学」 の 「矛盾」 の 「場と物質」 という視 点に基づく考察より, マ ックスウェル 方程式など. 吟味してみると, 次のような点を指摘していくことができる. 第一に, 「式」には表現されていない物理的な過程が存在している, ということ である. 相互作用 の時間的な過程や, 自己場やその変動, といっ たことはそこでは捨象されている. 第二に, 方程式そのものとしてみた場合, 場と物質が外的に対立した段階 では, 様々 な式を 「運 「保存」 などにかかわるもの) と区分す 動方程式」 と 「場」 の方程式とに大別 し, その他の条件式 ( る 必 要 が あ る, と い う こ と で あ る.. 第三に, 「式」 そのものは表現形態である, ということを確認することである. 「場」 そのものは 物理的実在であるが, そのどの側面を強調してとらえていくかによ って, 「表現」のうちに対象化さ れる 「場」 は一義的ではない. 第一の点は 「教育内容構成」 にかかわっているので, ここでは第二, 第三についてのみ以下, 展 開しておく. 第1節. 電磁気学の方程式. 以下, この節に限っ て「微分形式」 で表現されたマッ クスウェル方程式を吟味していく. 「微分形 式」 表現は 「座標系」 に依存しない形で当の事象の表わしているので, 何が本質であるかをわかり やすくする. しかし, 本質がしめされるのは, この形式だけに限定されるもの ではなく, 4次元の ミ ン コ フ ス キ ー 形 式 でも 同 じ であ る.. 〔電磁気学の各方程式の 「微分形式」 表現〕 電 磁 ポ テ ン シ ャ ル を Woと す る と, ロ ー レ ン ツ ・ ゲー ジ は, d ☆ Wo= 0 と な る.. 「d」 は 「微分形式の理論」 における 「外微分」 で, 「☆」 は 「共役ベクトル」 への 「星印作用素」 ( を意味する.) 電磁場の定義は, d Wo= W,と な る W,によってなされる. W,の 「電磁場」 は電場と磁場を含ん でい る.. いわゆるマッ クスウェル方程式系は次の関係式から出てくる. まず最初は 「場」 の方程式 d☆ W.αW2 W2は電荷, 電流分布をしめており, そのまわりに W,の 「電磁場」 が上式の関係 で結ばれるよう に できているわけ である. この式は次のように考えることもできる. W2という電荷・電流分 布があ り, それが電荷保存, 連続の方程式としてd W2= 0 をみたすとする. そうするとd Wx= W2とな るような Wr x が☆ W,である, というわけ である. x が存在することが予想され, その Wr しかし, この 「場」 の方程式だけ でマッ クスウェル方程式のすべては出てこない. 262.

(12) . 学校教育における電磁気学指導の諸問題 (1). W,と Woとの関係から「恒等的」に出てくる条件を加えることによ って 磁荷が存在しないこと , , や電磁誘導にかかわる方程式が出てくる. d W.= d(d Wo )… 0 がそ れ であ る.. 電磁誘導が, 「場」 の方程式そのもの ではなく, それにかかわる 「条件式」 から導出さ れているこ とに 着 目 して お こ う. こ の 刻ま教育内容構成において重要な意味をもってくる (第I V章) . 〔 「方程式」 に含まれている物理的意味〕 このように考察してくると, いわゆる電場, 磁場を用いて 「表現」 された方程式に通常つけ加え られている解釈とは異なっ た様相が見えてくる. 微分 形式で表現しよう が, 4次元形式で表現しよう がマックスウェル方程式系そのものに含まれ ている物理的事象そのものに新たなもの がつけ加わる, ということはない しかし, 一般力学の場 . 合でも 「一般」 化された論理形式において中心的な役割を果たしている 「作用量」 が 量子力学に , おいて本質的な意味をもってくる, といっ た例においてしめされるように, 「論理構造」そのものの 整理は, 単なる 「表現方法」 の整理にと どまらない問題を含ん でいる場合がある この 「微分形式」 . に お い て も 同 様 な こ と が い え る.. ここ であえて, 電場, 磁場を用いての 「マ ックスウェル方程式系」 を次のように書き下してみる と, その 「表現」 に含まれるいくつかの問題点を, 「場と物質」 に焦点をあてた視点から指摘 するこ と が でき る. 「マ ッ ク ス ウ ェ ル方 程 式 系」 ア. divB= 0. イ. m 』 - ÷ & B. ウ divE = 4 冗p 。. ェ. mtB-÷ & E+ 乎 i. (ローレンツ力F=eE- ÷×B) i i この表現では, d vB と d vE が 「対」 として把握される。 しかし, 古典電磁気学の範囲内では物 i tE とを 「対」 とすべきであろう. またro 理的にはd vB とro tE=, という形で「電磁誘導」 を語る B t と「対」にするとの考え方から生ずるものだが, これも物理的にはおかしい 「電磁誘導」 のは,ro . の「場と物質」という視点からみた場合の本質は「mtE と ÷ &÷Bとの和がたえずoである」とい う こ と であ る。. また電荷・電流分布が 「場」 を生み出している, という視点からするならばd i tB とが物 vE とro 理的には 「対」 となる. この場合, ro tB= という表現も, 「源」 が 「場」 を生じるとするならば. 「mtB- ÷ & E=. J」 となる. なお, 歴史的には各々の仕方に出てく る物理事象への着目が意義を有していたことは別 の問題と してあることをつけ加えておきたい. 「イ」 で表現さ れた 「電磁誘導」 , 「ウ」 の表現に含まれている 2 ) 「変位電流」という考え方の重要性は歴史的に は意味をもっている 2 . ここ では, あくまでも「論理 構造」 の次元で問題を設定している。 第2節. 「電磁場」 の 「表現形態」 のいくつかの パターン. 「表現形態」 を考察していく場合の基本的な視点は, そこに, 「運動方程式」 と 「場の方程式」 の 2つ が 含 ま れ て い る は ず であ る, と いう こ と であ る 。. 前者は 後者は. 「源1の運動状態の変化」= 「源2の場」・「源1の質」 (電荷) ひとつの 「源」 がそのまわりに 「場」 をつくる, と表わされる. 263.

(13) . 倉賀野. 志. 郎. この 基本的な方程式を含みつつも, 「電磁場」 そのものの 「表現形態」 にはいく つかのパターンが あり, それらに対する評価を行なっておく 必要があると考える, それぞれの パターンには 「場」 の 実在性に対する考え方が含まれており, 学校教育において, どのような 「場」 の概念を提出してい く の か に か か わ っ て い る か ら で あ る.. パター ンは大きく わけると, 1つの源が場をつく り出すとするか, 2つの源によって場がつくり 出されるとするか, によっ て2つに区分することができる. 前者を 「一体場」 表現, 後者を 「二体 場」 表現とよん でおく. 1. 「一体場」 表現 ) A) 電磁ポテンシ ャルによる表現 (Ai 時空点の2点の ポテンシャ ルの 「傾き」 (空間的・時間的) によっ て 「源」 への 「作用」 の大き さを表現する. 「場」 は時空 点の2点において 定義されている. j ) B) 電磁場の 「テンソル」 表現 (Fi 「源」 へ 「作用」 する 「場」 を 「テンソン」 として表現する. この場合, テンソルは時空点の 1 点 に お い て 意 味 を も っ て い る.. (電磁場の 「テンソル」 表現は, あくまで表現であって, 電磁場が 「テンソル場」 であることを 意味するもの ではない. 重力場は「テンソル場」であるが, 電磁場は 「ベ クトル場」 で, それをテン ソル表現しているの であるから, 各成分間には 一定の関係が存在している. 式で書くと, 場の方程. i 鰻 次元電流密度.) i i- 畿テーゑ費, xiは時空, i i 式は F i 晶r 『iとなる。 ただしF. C)「電場」o「磁場」 表現 「テンソル」 の成分 である 「電場」 , 「磁場」 を用いての表現で, ひとつのテンソルの構成部 分が分かれて表現されているので両者は連関しており, その連関をしめす方程式が新たに加わ る. 通 常 の 「マ ッ ク ス ウ ェ ル 方 程 式」 が こ の 表 現 を と っ て い る.. 2. 「二体場」 表現 A)「応力テンソル」 を用いての表現 運動方程式と場の方程式を組み合わせることによっ て源1と源2との 「場」 の複合された 「緊 張関係」 が互いに対する 「作用」 を生み出していると表現するものである。 応力テンソルは時 空点全体の総和として意味をもつ. 電気力線や磁力線のたわみやつまり具合によっ て作用を説 明する場合は, この応力テンソルに 基づいている. i iでは, 運 iJ i 禽 α Fi i i (力αs i 歯 dv 覇:応力テン ル v: 3次元体積, ただし si . s. ,. i iを, 場の方程 jの中におしこめ られている。edx jとの相 互外在性が S jとedx 動方程式における Fi 「 が記述される 力 」 空間全体の体積積分の結果として 式を使うことによっ て消去し, .) 〔各 「表現形式」 に対する評価〕 各々 の 「表現」 への評価を考えていくにあたっ ての 「基本」 視点は, 電磁気学の方程式によって は す べ て はく み つ く さ れ て は い な い, と い う こ と と, 「場」の 実 在 性 の 認 識 に と っ て は, ま ず マ ル ゴ. トとしての 「場」 の 「質」 を最初に問うていかなければならないということ である. この 点をおさ えた上で各々の 「表現」 を吟味しよう. 1-A) 「一体場」 の 「ポテンシ ャ ル表現」 電磁ポテンシャ ルは古典 電磁気学の範囲内 では構成量とみなされても仕方がない側面もあるが, 3 )電磁 ポテンシャ ルそのものはロ ーレ 量子力学においては, その物理的実在性は確認 さ れている.2 ンツ変換の対象と なっており, 相対論的な現象も表わしていくことは可能である, しかし, 古典電 磁気学の範囲内では, その 「実在性」 がそのまま発現しているわけ ではない。 264.

(14) . 学校教育における電磁気学指導の諸問題 (1). 1-B) 「一体場」 の 「テンソル」 表現 「電磁場」 を全体としてマル ゴトに表現しており, しかもポテンシャ ルとは異なり, 現実的に現 われてくる 「作用」 をおよぼす 「場」 として把握されている. 4次元形式なので相対論的な形式性 を保持しているが, テンソルでしかも4次元ということで, それ自身を正確にイメージすることは 困難である。 また物理的には, ポテンシャ ルからの構成量であることをおさえておく必要がある。 1-C) 「電磁場」 テンソルの各成分である電場, 磁場の 「関係」 として表現さ れている。 「電磁場」 は具体的な「測定」においては電場, 磁場として現象するものであり, 測定操作と結びついている。 歴史的な経過も当然のことながら, これとかかわっている。 しかし 「磁場」 の 「電場」 とは異なっ た特質や, 電磁誘導の物理的意味, などが背景にかくされてしまう可能性をもっている。 2。 「二体場」 表現 この 「表現」 においてしめされる 「場」 と 「場」 の相互作用は古典電磁気学においては, それが 「非アーベ ル場」 となるため実在するものではない。 二つの源によって生 じている 「場」 に基づく 効果を組み合わすことによ って構成さ れた 「場」 である. しかし, 電気力線や磁力線によって 「視 覚化」 しうる側面をもっと同時に, 電荷間の 「作用」 の説明として一定の説得力をもつことも事実 である。 構成された「場」であるため, 相対論的な形式性はそのまま では保持してはおらず, 「説明」 以上に発展しうるモデルとはならない。 また, 他の源がくることによっ て, はじめてこの 「場」 が つくられるということから 「場」 の操作主義的解釈を生みやすい。 どのような物理事象を 「本質」 として教育内容構成におけるモデルなどを組んでいくかという問 題は,「表現」に大きく依存している面があることに注意しておかなければならない. 例えば, 電場, 磁場という形態をとっての電磁波の 「伝播」 の 「説明」 が, どのような物理的側面をそこに反映し ているか, といっ たことは個々の課題に即して吟味していかなければならない, さもないと「表現」 の特殊性に依存した, 架空の機構に基づく 「モデル」 を提出することにもなりかねない。 田中一氏と宮原将平氏との 「力学の矛盾論争」 の中で源がつくり出す場のエネルギーは-者にお いて存在するのか, 他者との相互作用において存在するのか, という論争があっ た。 「力学の矛盾」 を力学の3法則に限って考察し, 「物質と場」の問題として位置づけられることが少なかっ たので他 4 ) の 論 者 では, こ の こ と は あ ま り 意 識 的 に は と り 上 げ ら れ て こ な か っ た。2. 「場」 のエネルギーはどこにあるのだろうか ? ひ と つ の 源 に お い て 場 が つ く ら れ て い る と 考 え る ならば「場のエネ ルギー」はすでに一 者において存在している。 この場合, 他者との相互作用によっ て, 例 え ば M 1oM 2/r と し て 生 ず る ポテ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー は, 一 者 に お い て 存 在 し て い た も. のの一部が, 他者との 「緊張関係」 のうちに現われたと考えることができる。 また, 他者とのかかわりの中でしかポテンシャ ルエネ ルギーが論じられないとするならば, 両者 の 「緊張関係」 に含まれるものがそれであることになる. この問題は, 前述の 「表現」 の区分にしたがうならば 「一体場」 と 「二体場」 のどちらを 「物理 的実在」 と考えるのか, ということに帰着すると思われる。 「場と物質」 に基づく今までの論述に基づき, 前者に賛成したい. 質量とエネ ルギーの等価とい うことを考える時, その時に発生するエネ ルギーは質量そのものに含まれているというよりも, 場 まで含めた物質と場の相互作用の全体に含まれていると考える方が妥当であろう。この時,「自己場」 という視 点に基づくならば, 他者との相互作用による媒介作用を経ることによって 「エネルギー」 が発現することは事実だとしても, 一者そのものにす でに存在していると考え ざるをえない. 他者 とのかかわりも 「自 己媒介性の視点」 が必要 であると考える。 発現が他者とかかわることをもって 「相互作用」 (ここでは 「二体場」 ) に本質をおくと操作主義的な誤りにおちいりやすいの ではない 265.

(15) . 倉賀野 志 郎. だろうか. しかし, この 「自己」 とのかかわりという問題はいわゆる 「発散問題」 として 「矛盾」 にかかわる だけに, その内的なメカニ ズムを語るには慎重でなければならない だろう.. 〔注〕 l lの 「電磁場」 についての考え方に相違がある, と指摘している. t r zと Maxwe 1) 広重徹氏は, Lo en )はなして, 場を独立の物 t 「Lor en z電子論のはたした最も重要な貢献は, 電磁場をふつうの意味の物質から切1 l lには,独立の物理的実在としての 質的実在としたことにある.」「ところが, 電磁場理論の開拓者である Maxwe l lの考えでは, 「エーテルを特別な場合として含むところ 電磁場という観念が欠けていた.」電磁場とは, Maxwe の誘導媒質のなかに生じた一種の弾性的な歪みの状態にほかなら」ず,「それは物質的実体がたまたまとる状態の 一種にすぎず, それ自身が実体であるのではなかった」 と広重氏は述べている. 7 3年 p t 広重徹 「Lor en z『電子論』とその歴史的背景」『ローレンツ電子論』 東海大学出版会 19 .3855 386 2号 8 0年第1 2) 拙稿 「『電磁学教育』 についての一考察」 - 特殊相対論的視点からの分折 -- 釧路論集 19 共立 所収 タイン選集第1巻 』 『 アインシ 」 ュ 3) アインシュタイン 「運動している物体の電気力学について 出版 19 76年 4) B. ヘッセン 「ニュートンとプリンピキアの社会的・経済的基礎」(山田大隆訳) 北海道科学史ノート刊行 97 9年 会編 『科学史ノート』 第5号所収 1 5 2 )たちをたずねて」 『科学史大系3 近代科学発展史』 中教出版 19 5) 高林武彦 「エネルギー原理のなr 年. 102 p .. 76年 「教 6)高村泰雄 「教授過程の基礎理論」 『講座 日本の教育6 教育の過程と方法』 新日本出版社 19 材の構造と授業過程を統一したものとして」「授業書」 が規定されている. 7) 科学史の科学教育における 「活用」 の方法は, 科学の論理構造の分析に即して, 科学史上に 「類」 としての認 識過程の諸契機を見い出すということ以外に, 現象的には,「授業書の系列的構成に活用するレベ ル」 ,「授業書の 構成要素への投入を行なうレベル」 , 「科学史そのものの授業書化」 等も考えられる. 「授業書」の中の「読物」と しては 「通史」 等も意味をもつことがある. 4号 8 2年 第1 拙稿 「教授学方法論についての覚え書き」 釧路論集 19 8) 鈴本秀一・太田邦彦の両氏は, 教授学研究の科学史とのかかわりを, 数学教育に限定して次のような述べてい る.「数学的概念の歴史的形成過程の研究は数学教育研究に資するところが大きく,-- 具体的な授業プラン作成 のレベルでの検討はひとつの重要な課題であろう. しかしこのことは, 歴史的順序に従うべきであることを意味 するものではない.」「むしろ, 現代数学も数学の歴史的発展過程の一局面であることを考えた時, 現代数学の視 点から数学教育をとらえなおすことが必然的な課題となるだろう.」 「現代教授学研究の課題1」第6回 『現 0 82年9月号 明治図書 p 代教育科学』 19 .12 1年9月 第32巻第1号 9) 拙稿 「『力学の矛盾』 と力学教授」 北海道教育大学紀要 198 V 電磁波と物性』(戸田盛和訳) 第7章「電磁気的質量 岩 ) R. P. ファインマン 『ファインマン物理学I 1 0 1年 波書店 19 7 77年 1 949年)『量子物理学の展望』 上 岩波書店 19 11 ) 朝永振一郎 「無限大の困難をめぐって」( 『科学の形成と論理』 所収 季 〔電磁場理論における電気と磁気の矛盾〕 ) 板倉聖宣 「物理学と矛盾論」 12 節社 19 73年 152 No.7 『科学』 1 9 82年7月 Vo ) 藤井保憲 「素粒子論と重力理論の統一をめ ざして」 1 3 2年 ) 牧二郎 「物質の窮極像をめぐって」 日本物理学会編 『物質の窮極を探る』 所収 培風館 198 1 4 ) しかし, これらは訳者 1 964年 P 5 ) ランダウ・リフシッツ 『場の古典論』 東京図書 広重徹・他訳 1 1 5 . の「注」にもあるように「経験的事実の結果とみなされるべき」もので, 「電磁場の中の粒子に対する作用の形は, 相対論的不変性の要求というような一般的な考察だけからは定めることができない.」事実, ヤーノシーは, 電荷 の計測量の問題にふれて, 電荷eの関数(≠=≠(e))としてクーロンの法則等を考えていくことができて, 「小 についてはいかなる知識を得ることもでき」ず, 「関数 ≠ の選択はまったく任意であり -- ≠(e)=eをとって いる と いう 点において」 クーロンの法則などは 「一つの定義を含んでいる」 と述べている. 小(e)=eという表 現は, 電荷の 「加算」 にかかわるもので 「計測量が加算的であるような, 矛盾のない尺度を得ることが可能であ るということは, 測定対象のある特別な性質を表現している.」 ヤーノシー 『物理的相対性理論 〔宮原将平 他. 266.

(16) . 学校教育における電磁気学指導の諸問題 (1). 訳〕』 講談社 19 ) 1 74年 p ,89~9 16 9 ~ 1 ) 前掲 「場の古典論」 p 7 8 . ) マックス・ヤンマー 『質量の概念』 17. 〔量子力学と場の理論における質量の概念〕 (大規義彦 他訳) 講談社. 1977 年. ) W. パウリ 『相対性理論』 荷電素粒子の理論 講談社 1 1 8 97 4年 1 ) 寺沢英純氏は, どのような 「相互作用」 によって 「物」 をみていくかによって, 物の現われ方が異なることを 9 次のよう に 述べ て いる.. 「風船のなかにあるものは, 触覚だけに頼る人にとっては連続体であり, -- 〔ガンマー線で見る〕 人にとって は多数の原子核と電子であり, 〔ニュートリノで見る〕 人にとっては, 一一 多数の上・クォークと下・クォークと 電子や, 多数の元であるように見えるのである.」「(物は何でできているか)という問いに対する正解も唯一の絶 対的なものではなく, それを観測する -- 手段 -- によっても変わりうる相対的なものである」 . また氏は 「物質の階層は, 有用ではあるが真実ではない幻影である」 とまで述べ, 「〔物質には階層が存在する〕 という ドグマから解放されなければ, 説明できないこともある」といいきっているが, 「理論物理学の終り」(S . Hawk i ) が近づきつつあるという主張とも合わせて認識論的に吟味しておかなければならない課題であろう. ng 少なくとも 「幻影」 であるという主張にはいくつかの問題点が含まれている. 寺沢英純 「〔元物理学〕 と原機何学」 『物理学最前線2』 共立出版 1 9 82年 ing S. Hawk. 「理 論 物 理 学に 終り は み えて いる か」 『科 学』. 1981 年. VO I .51 No ,5. 『電磁気学教育』 についての一考察」 ) 拙稿 「 2 9 21 ) 前原昭二 「線形代数と特殊相対論」 日本論社 1 9 8 1年 i ) E,T. Wh t takerrエーテルと電気の歴史」 上・下第6章 8章 講談社 1 22 9 76年 , )R 1 1 電磁気学』 2 3 (宮島 興訳) 「ベクトルポテンシャルと量子 ,P .ファインマン 『ファインマン物理学1 力学」 岩波書店 1 9 6 9年 ) 田中- 「力学の弁証法」 「唯物論」N 2 4 2 3 1 9 7 5年 札幌唯物論研究会 :宮原将平 「田中論文 『力学の o . 「唯物論」N 23 1 弁証法』 について」 9 4年 7 o . (本学講師・釧路分校). 267.

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