筆箱の中身から見る消費行動の実態調査 : 大学生と中学生の比較から
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 筆箱の中身から見る消費行動の実態調査 ― 大学生と中学生の比較から ―. 伊藤 大貴・佐々木美乃里*・川邊 淳子** 北海道教育大学大学院教科教育専攻家政教育専修 *. 北海道教育庁宗谷教育局. **. 北海道教育大学旭川校家庭科教育研究室. Investigation on Actual Consumption Behavior From the Contents of Pencil Cases ― Comparison between college students and junior high school students ―. ITO Taiki, SASAKI Minori* and KAWABE Junko** Graduate school of education, Hokkaido University of Education, Asahikawa campus *. HOKKAIDO Government Board of Education, Soya District Office of Education. **. Department of Education, Asahikawa Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 消費行動をとる場合は,その過程で多くの意思決定を含んでいる。そこで本研究では,大学 生と中学生を対象とし,筆箱の中身からニーズとウォンツの調査を実施し,その違いを明らか にすることを目的とした。調査対象は本学学生127人およびA中学校56人,調査時期は2016(平 成28)年1月ならびに2017(平成29)年1月,調査方法は自記式質問紙法,集計・分析方法は Excel2010を用いた。各文房具類の所有数ごとに「指定単価」をかけ,「授業中と授業以外でも 使う」 , 「授業中に主に使用」,「授業以外で主に使用」および「入れているだけであまり使わな い」で,所有数ごとに,その金額に頻度の割合「0.8」,「0.6」,「0.4」および「0.2」をそれぞれ かけて小計を算出し,それらを合計して「使用頻度別に見る金額」を算出した。所有する文房 具類の合計金額は,大学生は最高6,300円,最低310円であり,平均1,762円であった。一方中学 生は,最高10,699円,最低1,140円,平均4,691円となり,すべてにおいて中学生が大学生を上回っ た。また,使用合計金額を所有合計金額で割った利用価値においては,利用率が大学生は20~ 60%が66.1%,61~80%が33.9%,一方中学生は,20~60%が57.1%,61~80%が42.9%となり, 中学生の方が利用率は高い傾向にあった。所有文房具は,中学生の方がシャープペンシルなど において,高額なもので数も豊富に有していたが,大学生は中学生よりも低額で精選されたも. 407.
(3) 伊藤 大貴・佐々木美乃里・川邊 淳子. のを所持する傾向にあることが分かった。. 1.はじめに. (平成27)年12月~2016(平成28)年3月子ども のくらしとお金に関する調査第3回)では,小学. 近年,消費者教育の必要性が叫ばれ,2012(平. 生の7割強,中学生の8割強,高校生の約8割が. 成24) 年8月に 「消費者教育の推進に関する法律」. お小遣いをもらっていることが分かった。さらに,. が制定された。この背景の一つに日常の消費生活. ベネッセの調査(2011(平成23)年10月)では,. と環境や経済社会への影響が挙げられると消費者. 子どものお小遣いの使い道を把握していない保護. 庁は発表している。現在,GDPの6割を個人消. 者が約5割もいることが分かった。大人の管理下. 費支出が占めていることから明らかなように,消. ではなく,知らないところでお金を自由に使える. 費者の日々の意思決定や行動が,総体として経済. 子どもがいるということは,きちんとした金銭に. 社会に大きな影響を与え,そのあり方を規定する. 関する道徳観や価値観を形成していなければなら. といっても過言ではない。このように消費行動が. ないことを指しており,万が一それらが備わって. 多様化・複雑化する中では,消費者トラブルも多. いない中であると,子どもも消費者トラブルに遭. く生じることが予想される。実際,消費者庁の報. 遇する機会が増すことが予想される。消費行動を. 告(2009(平成21)年~2011(平成23)年消費者. とる場合は,その過程で多くの意思決定を含んで. 問題及び消費者政策に関する報告)では,43,152. おり,消費行動を常に考えていくことは,生き方. 件のトラブルが報告されている。この中には,高. を考えるということにもつながる。つまり,大切. 齢者が被害者になったものやインターネット関連. で限りある金銭で,何を選択し購入するかを常に. のものも多く含まれており,現在の高齢化や高度. 考える機会を与え,子どもの頃からの消費者教育. 情報化の時代背景が反映されていることも分かっ. は大変重要である。. た。さらに,インターネットの人口普及率は2011. 現在,消費者教育は様々な場所で行うことが必. (平成23) 年の時点で約8割にものぼり,インター. 要と言われている。消費生活センターでは,消費. ネット上の契約などにおけるトラブルも絶えな. 者被害の救済だけではなく,商品・サービスの基. い。現在の日本は,幅広い世代の人々が,消費者. 礎知識や契約知識について情報を発信する役割を. トラブルに巻き込まれる可能性が高いと言える。. 担うことで,地域の消費生活を支え,情報発信の. また,自己破産が成立した件数は,2012(平成. 業務の一環として啓発活動をしている。国および. 24)年で約8万件といわれている。このことから. 地方公共団体は,保護者の行う家庭教育を支援す. も,現在では,目に見える金銭のやりとりという. るため,公民館や図書館などの社会教育施設や学. よりも,電子マネーやクレジットカードなどの見. 校における就学時検診や保護者会,PTAの活動. えない金銭でのやりとりも多く,実感を伴わない. などの多様な場を活用し,学習の機会や情報の提. 金銭の消費によって,多くの新たな社会的問題を. 供を行っている。その中で,金銭に関するしつけ. も発生させている。. やインターネットの適正な利用をテーマとした講. また,内閣府の調査(2014(平成26)年2月青. 座の実施を推進している。. 少年のインターネット利用環境実態調査)におい. 先に述べた,2012(平成24)年に制定された「消. て,小学生から高校生のスマートフォンの所有率. 費者教育の推進に関する法律」では,自立した消. が発表されている。小学生で13.6%,中学生で. 費者育成はもちろんのこと,消費者市民社会を目. 47.4%,高校生で82.8%と高い所有率が報告され. 指す教育の推進が叫ばれている。2017(平成29). ていた。また,金融広報中央委員会の調査(2015. 年3月に出た新学習指導要領においても,その流. 408.
(4) 筆箱の中身から見る消費行動の実態調査. れを十分に含んだ形での消費者教育のさらなる充. することでは,男女とも「値段」や「色やデザイ. 実が求められている。今後ますます,自らの消費. ン」よりも「使いやすさ」をより重視する傾向に. 行動が現在および将来にわたって影響を及ぼすこ. あり,食品や衣服などの選択とは少し違う傾向を. とを自覚して,主体的に消費者市民社会の形成と. 持ったものであることも分かった。. 発展に寄与することができるような教育が,ます. そこで本研究では,自由に自分の文房具を学校. ます重要となってくると思われる。. でも持てるようになる中学生と将来中学生の指導. 現行の学習指導要領では,消費者教育について. 者となる教員養成系の大学生を対象とし,彼らの. は「家庭」はじめ, 「社会」, 「総合的な学習の時間」. 身近な商品としての文房具の所有および利用の実. および「道徳」などでも多く取り扱われている。. 態を,筆箱の中身から見るニーズとウォンツ調査. 特に,小学校「家庭」では,お金は自らが稼ぐも. から明らかにすることを目的とした。その上で,. のではなく,家族が働くことによって得られた限. 消費者市民社会の形成を目指した今後の消費者教. りあるものであり,物や金銭が自分と家族の生活. 育の方向性と可能性およびよりよい消費行動で社. を支えていることから,それらを有効に使うこと. 会を形成する人材育成をするための消費者教育の. の重要性に気づくようにしている。 「物や金銭の. 今後のあり方の示唆を得たいと考える。. 大切さに気付き,計画的な使い方を考えること。」 と「身近な物の選び方,買い方を考え,適切に購 入できること。 」と「自分の生活と身近な環境と. 2.研究方法. のかかわりに気付き,物の使い方などを工夫でき. 研究方法は,実際に対象者が持つ筆箱を調査し. ること。 」を指導内容としている。さらに,中学. ながら,アンケートに回答する形をとった。調査. 校「技術・家庭」の「家庭分野」では,自立の視. 概要は以下に示した通りである。. 点に基づき,消費者の権利と義務を基本として,. ⑴ 調査日時. 「販売方法の特徴について知り,生活に必要な物. <大学生> 2016(平成28)年1月. 資・サービスの適切な選択,購入および活用がで. <中学生> 2017(平成29)年1月. きること。 」と「自分や家族の消費生活が環境に. ⑵ 調査対象. 与える影響について考え,環境に配慮した消費生. <大学生> 本学学生2~4年生:127名. 活について工夫し,実践できること。」を指導内. <中学生> 上川管内A中学校:56名. 容としている。. ⑶ 調査方法. 一方,2016(平成28)年のバンダイの調査では,. 自記式質問紙法. 小学生から中学生になるとお小遣いの金額も増え. ⑷ 調査内容. ること,さらに,身近な買い物として,飲食物を. 主な調査内容は,以下にあげる6項目であった。. 購入することが多いという結果が出ている。中で. ①筆箱の中身の文房具類の所有数. も文房具等は,小学生から中学生になると,自由. ②①から合計金額の算出. に選択して購入できるものとして順位を上げ,特. ③筆箱の中身の文房具類別の使用頻度. にその傾向が女子に顕著である結果が出ている。. ④③から合計金額の算出. さらに,2000(平成12)年のベネッセの高校生を. ⑤筆箱調査から分かったこと・考えたこと. 対象とした調査では,文房具を購入する上で,購. ⑥今後の買い物時に気をつけたいこと. 入時は店頭で見てその場で判断して購入する傾向. 実際のアンケート調査内容の一部については,. が高く,男子と女子とでは,すぐ購入するか考え. 以下にあげる19種類の文房具について,筆箱に. たり我慢するかで行動に違いが表れることが報告. 入っている数に指定単価(一般的な販売価格を,. されている。さらに,文房具を購入する時に重視. ネット通販などで検索したもの)を掛け合わせ,. 409.
(5) 伊藤 大貴・佐々木美乃里・川邊 淳子. 使用頻度(4段階)に応じて,さらに金額を算出. ⑸ 集計・分析方法. し直した。 (表1). Microsoft Excel 2010を用いた。さらに,カテ. 〇書くもの(3種類):鉛筆(黒),シャープペ. ゴリー分析には,KJ法を用いた。. ンシル,油性ペン 〇色をつけるもの(5種類):鉛筆(黒以外), 単色ボールペン,2色以上のボールペン,色. 3.結果および考察 ⑴ 文房具類の所有率. ペン,蛍光ペン 〇測 るもの(3種類):定規,三角定規,分度. 1)中学生と大学生の比較 19種類の文房具類の所有率について,中学生と. 器 〇消すもの(3種類):修正テープ,修正ペン,. 大学生の比較を示した(図1)。さらに,中学生 の所有率から大学生の所有率を引いたものも併せ. 消しゴム 〇目印をつけるもの(1種類):付せん. て表した。(図2)。. 〇くっつけるもの(1種類):のり. 中学生では,「シャープペンシル」の所有率が. 〇切るもの(1種類):はさみ. 100.0%と一番多く,次いで, 「消しゴム」 (96.4%),. 〇形を作るもの(1種類):コンパス. 「定規」(94.6%)と続いた。. 〇削るもの(1種類):鉛筆削り. 一方,大学生では,「シャープペンシル」の所 有率が98.4%と一番多く,次いで,「消しゴム」 (95.3%), 「単色ボールペン」 (86.6%)と続いた。. 表1 アンケート内容例 指定 単価 文房具等. 記入例) 鉛筆 (黒). 所有数 合計. 3本. (単価が 分かって いる場合 はその 値段). 60円. 所有数 から みる 金額 合計. 180円. 入れて いるだ けであ. 授業中 と授業. 授業中 に主に. 授業以外 で主に. 以外で も使用 (毎日 使用) ×0.8. 使用 (ほぼ 毎日 使用) ×0.6. 使用 まり使 (あまり わない 使用しな (ほとん い) ど使用 ×0.4 なし) ×0.2. 2本 120円 ×0.8= 96円. 0本. 0本. 1本 60円 ×0.2= 12円. 使用 頻度 から みる 金額 合計. 中学生とは,「定規」の所有率が中学生と大きく 利用 率. 違っていた。 15種類の文房具類で,中学生の方が所有率が高 かった。特,に大学生との差が大きかったものと. 108円. 60.0%. しては, 「のり」(49.2%), 「コンパス」(46.9%), 「鉛筆(黒)」(42.4%),「定規」(38.7%),「修正 テープ」 (27.5%), 「はさみ」 (26.8%), 「油性ペン」 (22.4%)等であった。一方で,大学生の所有率. 図1 文房具類の所有率(中学生と大学生の比較). 410.
(6) 筆箱の中身から見る消費行動の実態調査. 図2 文房具類の所有率(中学生と大学生の差). の方が中学生より高かったのは,19種類の文房具. 男性では,「シャープペンシル」の所有率が. 類の中で4種類のみで, 「修正ペン」(-2.5%), 「2. 96.4%と一番多く,次いで, 「消しゴム」(91.1%),. 色以上のボールペン」(-1.5%), 「黒以外の鉛筆」. 「単色ボールペン」(87.5%)と続いた。定規以. (-0.8%) , 「鉛筆削り」(-0.6%)であった。. 外は,中学生の男子と同様の傾向であった。 一方,女性も「シャープペンシル」(100.0%). 2)中学生の男女差. が一番所有率が高かったが,次いで, 「消しゴム」. 19種類の文房具類の所有率について,中学生の. (98.6%), 「単色ボールペン」 (85.9%)となった。. 男女差を表した(図3) 。. それ以下は「蛍光ペン」 (84.5%), 「定規」 (67.6%). 男子では, 「シャープペンシル」と「消しゴム」. と続いた。男性と同様に,定規以外は,中学生の. の所有率が100.0%と一番多く,次いで, 「定規」. 女子と同様の傾向であった。. (92.6%) 「単色ボールペン」 , (85.2%)と続いた。. 「鉛筆(黒)」 「黒以外の鉛筆」 「単色ボールペン」. 一方,女子も「シャープペンシル」 (100.0%). 「2色以上のボールペン」 「三角定規」 「コンパス」. が一番所有率が高かったが,次いで,「単色ボー. 「鉛筆削り」が男性の方が所有率が高く,所有の. ルペン」と「定規」が(96.6%)となった。それ. 無かった「分度器」を除き11種類では女性の方が. 以下は「消しゴム」と「蛍光ペン」が(93.1%). 高くなり,特に「付せん」「修正テープ」「定規」. と続いた。. の3種類では顕著であった。. 「鉛筆(黒) 」 「三角定規」 「分度器」 「コンパス」 「修正ペン」 「消しゴム」の6種類のみが男子の. ⑵ 所有する文房具類ごとの一人当たりの単価. 方が所有率が高く,同じ割合だった「シャープペ. (中学生と大学生の比較). ンシル」と「黒色以外の鉛筆」を除き11種類で女. 所有する文房具類ごとの一人当たりの単価を,. 子の方が高くなった。特に「付せん」 「はさみ」 「色. 中学生と大学生で比較したものを示した(図5)。. ペン」の3種類では顕著であった。. 中学生では,「シャープペンシル」が1,515円と 圧倒的に高く,次いで, 「2色以上のボールペン」. 3)大学生の男女差. (646円), 「単色ボールペン」(573円)と続いた。. 19種類の文房具類の所有率について,大学生の. 一方,大学生では,「はさみ」が443円と一番高. 男女差を表した(図4) 。. く,次いで, 「単色ボールペン」(328円), 「色ペン」. 411.
(7) 伊藤 大貴・佐々木美乃里・川邊 淳子. 図3 文房具類の所有率(中学生・男女差). 図4 文房具類の所有率(大学生・男女差). 図5 所有する文房具類ごとの一人当たりの単価(中学生と大学生の比較). 412.
(8) 筆箱の中身から見る消費行動の実態調査. (265円)と続いた。. 一方,女子では,最高が9,010円,最低が1,140. 全体的に,中学生の方が文房具当たりの単価が. 円となり,平均は4,800円となった。. 高く,特に「シャープペンシル」は1,000円を超え. 最高・最低では男子が,平均では女子が上回る. る差があり, 「2色以上のボールペン」や「単色ボー. 結果となった。また,合計金額の平均より少ない. ルペン」いずれでも単価の差が大きくなった。. 人の割合が,多い人より男女とも高くなったが,. これからも,中学生の方が,特に書く用途の文. 特に男子の方が6割を超えその差が顕著であった。. 房具に関しては,強いこだわりを持って,より機 能的で高価なものを所持している傾向があること. 3)大学生の男女差. が分かった。. 所有する文房具類の合計金額について,大学生 の男女差を示した(表4)。. ⑶ 所有する文房具類の合計金額. 男性では,最高が3,110円,最低が310円となり,. 1)中学生と大学生の比較. 平均は1,484円となった。. 所有する文房具類の合計金額について,中学生. 一方,女性では,最高が6,300円,最低が470円. と大学生の比較したものを示した(表2) 。. となり,平均は2,027円となった。. 中学生では,最高が10,699円,最低が1,140円と. 最高・最低・平均すべてで女性が上回る結果と. なり,平均は4,691円となった。. なった。最高では3,000円を超えた。また,合計. 一方,大学生では,最高が6,300円,最低が310. 金額の平均より少ない人の割合が,男女とも高く. 円となり,平均は1,773円となった。. なったが,特にその差は女性の方が大きくなった。. 最高・最低・平均すべての項目で,中学生が上 回る結果となり,その差も,最高で4,000円を超え,. ⑷ 所有する文房具類の使用頻度による合計金額. 平均でも約3,000円の差となった。また,合計金. 1)中学生と大学生の比較. 額の平均より少ない人の割合が,いずれもわずか. 所有する文房具類の使用頻度による合計金額に. ながら高くなった。. ついて,中学生と大学生の比較で示した(表5)。 中学生では,最高が7,650円,最低が806円とな. 2)中学生の男女差. り,平均は2,817円となった。. 所有する文房具類の合計金額について,中学生. 一方,大学生では,最高が3,030円,最低が192. の男女差を示した(表3) 。. 円となり,平均は951円となった。. 男子では,最高が10,699円,最低が1,150円とな. 最高・最低・平均すべての項目で,中学生が上. り,平均は4,674円となった。. 回る結果となり,その差も,最高で4,500円を超え,. 表2 所有する文房具類の合計金額(中学生と大 学生の比較). 最高 合計金額. 中学生. 大学生. 10,699. 6,300. 表3 所有する文房具類の合計金額(中学生の男 女差). 差. 4,399 合計金額. 差. 男子. 女子. 最高. 10,699. 9,010. 1,689. 最低. 1,150. 1,140. 10. 平均. 4,674. 4,800. -126. (中学生―大学生). (男子―女子). 最低. 1,140. 310. 830. 平均. 4,691. 1,773. 2,918. 平均金額. 多い. 44.6%. 45.9%. -1.3. 平均金額. 多い. 38.5%. 48.3%. -9.8. より. 少ない. 55.4%. 54.1%. 1.3. より. 少ない. 61.5%. 51.7%. 9.8. 10.8 . 8.2 . 23.0 . 3.4 . (円). (円). 413.
(9) 伊藤 大貴・佐々木美乃里・川邊 淳子. 表4 所有する文房具類の合計金額(大学生の男 女差). 最高 合計金額. 男性. 女性. 3,110. 6,300. 表5 所有する文房具類の使用頻度による合計金 額(中学生と大学生の比較). 差. 大学生. 最高. 7,650. 3,030. 4,620. 最低. 806. 192. 614. 平均. 2,817. 951. 1,866. (男性―女性) -3,190 合計金額. 差. 中学生. (中学生―大学生). 最低. 310. 470. -160. 平均. 1,484. 2,027. -543. 平均金額. 多い. 46.2%. 40.7%. 5.5. 平均金額. 多い. 42.9%. 41.4%. 1.5. より. 少ない. 53.8%. 59.3%. -5.5. より. 少ない. 57.1%. 58.0%. -0.9. 7.6 . 18.6 . 14.2 . 16.6 . (円). (円). 平均でも約1,800円の差となった。また,合計金. ⑸ 所有する文房具類ごとの一人当たりの利用率. 額の平均より少ない人の割合が,中学生も大学生. (中学生と大学生の比較). も高くなった。. 所有する文房具類ごとの一人当たりの利用率に ついて,中学生と大学生の比較を示した(図6)。. 2)中学生の男女差. 中学生では,「定規」の利用率が72.1%と一番. 所有する文房具類の使用頻度による合計金額に. 多く,次いで,「修正テープ」(71.7%),「のり」. ついて,中学生の男女差を示した(表6) 。. (67.7%)と続いた。. 男子では,最高が7,650円,最低が806円となり,. 一方,大学生では,「消しゴム」の利用率が. 平均は2,886円となった。. 69.9%と一番多く,次いで, 「修正テープ」 (65.3%),. 一方,女子では,最高が5,326円,最低が864円. 「2色以上のボールペン」(62.3%)と続いた。. となり,平均は2,816円となった。. ほとんどの文房具で中学生の利用率の方が高く. 最高・平均では男子,最低では女子が上回る結. なったが,特に「定規」「のり」「はさみ」 「コン. 果となり,その差は,最高で2,000円を超えた。. パス」 「鉛筆けずり」等は,その差が顕著となった。. また,合計金額の平均より少ない人の割合が,男 女とも高くなった。. ⑹ 文房具類の使用頻度 (中学生と大学生の比較). 3)大学生の男女差. 所有する文房具類の使用頻度について,利用率. 所有する文房具類の使用頻度による合計金額に. の分布を表した(図7)。. ついて,大学生の男女差を示した(表7) 。. ここで,利用率20.0~59.9%を「利用率が低い」,. 男性では,最高が1,768円,最低が192円となり,. 60.0~80.0%を「利用率が高い」とした。すると,. 平均は780円となった。. 中学生では,利用率が高い人の方が全体の42.9%. 一方,女性では,最高が3,030円,最低が260円. と低い人よりも多く,一方,大学生の方は,利用. となり,平均は1,103円となった。. 率の低い人が全体の66.1%と高い人よりも多い傾. 最高・最低・平均で女子が男子を上回る結果と. 向にあることが分かった。. なり,その差は,最高で1,200円を超えた。また, 合計金額の平均より少ない人の割合が,男女とも. ⑺ 利用率ごとによる合計金額. 高くなったが,特にその差は女性の方が大きく. (平均金額より少ない割合). なった。. 利用率ごとに,合計金額の値がその平均値より 低いものの割合を,中学生と大学生の比較の中で. 414.
(10) 筆箱の中身から見る消費行動の実態調査. 表6 所有する文房具類の使用頻度による合計金 額(中学生の男女差). 最高 合計金額. 男子. 女子. 7,650. 5,326. 表7 所有する文房具類の使用頻度による合計金 額(大学生の男女差). 差. 女性. 最高. 1,768. 3,030. -1,262. 最低. 192. 260. -68. 平均. 780. 1,103. -323. (男子―女子) 2,324 合計金額. 差. 男性. (男性―女性). 最低. 806. 864. -58. 平均. 2,886. 2,816. 70. 平均金額. 多い. 42.3%. 44.8%. -2.5. 平均金額. 高い. 40.4%. 39.0%. 1.4. より. 少ない. 57.7%. 55.2%. 2.5. より. 低い. 59.6%. 61.0%. -1.4. 15.4 . 10.4 . 19.2 . 22.0 . (円). (円). 図6 所有する文房具類ごとの一人当たりの利用率(中学生と大学生の比較). 図7 文房具類の使用頻度(中学生と大学生の比較). 図8 利用率ごとによる合計金額(平均金額より少 ない割合). 示した(図8) 。. が多くなる傾向があったが,大学生の方がその差. 大学生では,利用率が高い方が平均金額よりも. が顕著であった。. 少ないものが多くなる傾向があったが,中学生で は,利用率が40.0~49.9%で一番その割合が増え. ⑻ 自由記述. る傾向が見受けられた。また,中学生と大学生共. 最後に,筆箱調査から分かったことおよび考え. に,利用率が高い方が平均金額よりも少ないもの. たこと,また,これから買い物をする時に気をつ. 415.
(11) 伊藤 大貴・佐々木美乃里・川邊 淳子. けたいことについての自由記述を,KJ法によっ て分類し,以下にまとめた。. 表8 所有する文房具類の合計金額(大学生の男 女差) 中学生の場合. 1)筆箱調査から分かったこと(表8). お 金 が 眠 る 筆 箱 意外と多くのお金が筆箱の中にある。. 中学生の場合は, 「お金が眠る筆箱」というこ. (11). (8). 思ったより眠っているお金があってショック. とが一番多く挙げられていた。文房具にこだわり. だった。. がありつつも,身近なものにこれだけのお金がか. 使ってないお金は自分にとって大きい。 (1). けられていること等,金額にして確認してみて初. 本数が少なくても筆箱の中に眠るお金はたくさ. めて分かることへの驚きとショックがあり,無駄 遣いしないようにしなくてはならないことに改め. んあることがわかった。. (1). (1). 使っていないもの 使っていない物が思った以上に筆箱に入ってい 多い(7). た。. (6). て多くが気づいていた。. 半分はないけどある程度肥やしになっているこ. 一方,大学生の場合は,お金に置き換えて考え. とがわかった。物が多くても使う機会が少なく. てはみたものの,金額そのものというよりは,利 用頻度の向上や買い物時のニーズとウォンツのバ. なるから増やしすぎも良くないと思った。 (1) お金の無駄(3) 使っていないペンなどは,お金をムダにしてい る。. ランスなど転換がうまくなされていることがうか. 筆箱の中にも使ってないものもあったし,家に. がえた。. も使っていない文房具があってお金の無駄使い だと分かった。. 2)筆箱調査から考えたこと(表9) 中学生の場合は,筆箱に入っているものの把握 と整理が大事であること,それを有効に使い切る ことの大切さを考えていた。また筆箱だけでなく. た。 一方,大学生の場合は,中学生と同様に把握や. (1). いらないものが筆 いらないものを筆箱に入れても邪魔なだけだな 箱に(1). と思いました。. (1). なくてもやってい いつも使っているからといって,それがなくて け る も の が 多 い もいいようなものがけっこうあって,それは, (1). 買った時点でもうマイナスになることが分かっ た。. 部屋などや他のものでも同様な結果が出るのでは ないかということを考えているのが特徴的であっ. (2). (1). 大学生の場合 使用状況(74). 不要な物や使用頻度が低いものが多く,うまく 使えていない。. (47). 整理についてはお金に置き換えて考えるものの,. どの筆箱の中身が不要なものか明確になった。. 金額そのものというよりは,利用頻度の向上や買. . (14). い物時のニーズとウォンツのバランスなど転換が. 使用率が高いこと。. (10). うまくなされていることがうかがえた。. ニーズよりウォンツの方が上回っている。 (1) 同じ文房具が複数あり,まんべんなく使用でき ていない。. 3)これから買い物をする時に気をつけたいこ. (1). 筆箱の中に入れたのを忘れていた文房具があっ. と(表10). た。. 中学生の場合は,まずは必要かどうかを考えて. 自分の買い物の仕 筆箱の中身にお金をかけている。. 購入することが多く挙げられ,少数意見ではあっ. 方(21). (1) (12). 使用しないものを購入してしまっていた。 (6). たが,使い切ってから購入すること,使う目的や. 周りの人と比べてお金をかけていない。 (2). 先のことを考えて購入することが挙げられていた。. 自分の買い物の仕方の考え方を知れた。 (1). 一方,大学生の場合は,購入するタイミングの. 使用方法(4). 筆箱の中身は必要最低限のものだけで十分であ. 再確認が多く挙げられていたが,長く使えるもの. る。. や環境のことに配慮したり,値段だけでなく機能. 有効活用すれば所有額と使用頻度額の差が少な. 面も重視することなどがあげられていたのが特徴. くなる。. 416. (2). (2).
(12) 筆箱の中身から見る消費行動の実態調査. 表9 筆箱調査から考えたこと. 表10 これから買い物をする時に気をつけたいこと. 中学生の場合. 中学生の場合. 今後の筆箱の中身 必要なものもあったと思うけど,それ以前に筆. 必要かどうか考え 本当に必要かを考えてから,買物をしていきた. (6). る(16). 箱が汚かったから,もっと整理すればムダがな くせると思った。. (2). (2). 自分の筆箱の内身をきちんと理解しておく必要 があると思った。. (2). 有効な使い方 (3) 筆箱がぱんぱんになっているのも,無駄なもの. かというところに気をつけていきたい。 (3) 使わない物は買わ これから買い物をする時は,使わない物は買わ ない(7). (6). けだから,家で使おうと思った。. かり考えて買う。. に,考えて買い物をしたい。. たに購入(2). (1). らもっと無駄な買い物をしているものもあるあ ると思った。. (1). (1). から買おうと思う。. (1). 持っているものがなくなるまでペンなどを買わ. (1). 他のものでも同様 文房具でこの結果だったけど,他のものだった. (1). 使いきってから新 買い物をする時は,使いきってない物を使って. 筆箱に入る量 (1) 筆箱にそんなにはいんない。これからもあまり お金をかけないようにしたい。. (4). 買い物をするときは同じものをかわないよう. (1). (1). . 段も見ないで買っていたので,これからはしっ. んあった。そのお金が無駄にならないようにこ. あまり使わないものは筆箱をパンパンにするだ. (7). ほしいものがあったら安そうだなと思ったら値. (1). 自分の筆箱にはけっこうつかわない物がたくさ んどからは全体的に使いたいと思う。. ないようにする。. 考 え て 購 入 す る 本当に使うものだけにして,考えて買うこと。. ばかりが入っているからだと改めて感じた。使 い方が下手だなと感じた。. (13). 今後は使うか使わないかではなく,必要かどう. これからは中身を減らして,本当に使うものだ けにする。. い。. ないようにする。. (1). 使う目的を考えて ものを買うときは,使う目的があって買うか, 購入(1). その目的が終わった後のことも考えて買いた い。. (1). 先のことを考えて これから,買い物をするときは,しっかり先の. 大学生の場合. 購入(1). ことを考えて買い物をしたいと思った。 (1). 今後の筆箱の中身 使い方,頻度を考えて整理していきたい。 (14) (33). 念のために使用頻度が低くても入れておきた い。. (9). 購入したからには使用頻度を上げていきたい。 . (6). 友人に貸したいので整理は考えない。. (1). ストック品は入れておきたい。. (1). 使用頻度が高かったので今後も同じ買い方をし たい。. (1). 定期的に筆箱の点検をしたい。. (1). 自 分 の 消 費 行 動 ウォンツの部分が大きくならないように買い物 (11). をしたい。. (9). 他にも自分のものやお金で無駄なものがあると 予想できる。. (1). 筆箱の中身以外でも調査を行ってみたい。 (1) 調査について (10) 児童にも取り入れると良い。. (3). 簡易的で楽しく気づきやすい。. (3). 良い機会となった。. (3). 筆箱の中身以外だとより使用頻度が低くなると 予想できる。. (1). 大学生の場合 購入時(137). 使用頻度を考え,購入するタイミングを再確認 する。. (86). 今後長く使用できるものを選択する。. (11). 必要な量であるか再確認する。. (9). 事前に所有しているものを確認する。. (8). 環境の負荷を考える。. (6). 値段と機能が見合っているか考える。. (5). 代用できるものはないか考える。. (5). 金額だけを選択基準にしない。. (3). 使用頻度が高いものは購入し,低いものは共有 する。. (2). 所有金額をよく確認する。. (1). 購入した後のメリットとデメリットを考える。 筆箱の中身(8) 購入したものはしっかり使用する。. (1) (5). ストックしないで必要なものだけを筆箱に入れ る。. (3). 417.
(13) 伊藤 大貴・佐々木美乃里・川邊 淳子. 的であった。. kodomo2015/pdf/15kodomo.pdf 6)ベネッセ『ベネッセ教育情報サイト』 http://benesse.jp/kyouiku/201112/20111215-1.html 7)文部科学省『小学校学習指導要領解説 家庭編』. 4.まとめ. http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/. 特に中学生においては,学校に持って来る文房. micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/. 具が決められていたり,所有を制限されていた小. 1234931_009.pdf. 学校時代と比べると,自由に保護者からもらうお 小遣いなどによって購入できるようになることか. 8)文部科学省 『中学校学習指導要領解説 技術・家庭編』 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/ micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/01/05/. ら,多額の金額に相当する文房具類を多種類・多. 1234912_011_1.pdf#search=%27%E5%AD%A6%E7%B. 数筆箱に所有していることが分かった。. F%92%E6%8C%87%E5%B0%8E%E8%A6%81%E9%A0. また,文房具類全体の利用率に関しては,中学. %98+%E4%B8%AD%E5%AD%A6+%E5%AE%B6%E5 %BA%AD%27. 生よりも大学生が低い傾向にあることも分かっ. 9)文部科学省『高等学校学習指導要領解説 家庭編』. た。さらに,文房具類の種類による所有率や所有. http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/. 合計金額・利用頻度による合計金額・利用率にお いては,男女差があることも示唆された。 日常的に中学生や大学生なら,誰もが使用して いる筆箱であっても,その中には,多くの財産が 存在し, それをいかに選択・購入・利用するかは, 自らの生活・消費行動が問われるものである。今 後はこの調査結果をさらに発展させ,消費者市民. micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2010/07/29/ 1282000_10_1.pdf 10)ベネッセ『モノグラフ・高校生』「消費者としての高 校生」Vol.62 http://a111.g.akamai.net/f/111/143111/15m/benesse1. download.akamai.com/143111/j/monographpdf/3/ 3vol62.pdf#search=%27%E6%B6%88%E8%B2%BB%E8 %80%85%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%8 1%AE%E9%AB%98%E6%A0%A1%E7%94%9F%27. 社会を担えることを目的とした,よりより買い物. 11)消費者庁『消費者教育の推進に関する法律』. を筆箱から考える,中学生では教材づくり,大学. http://www.caa.go.jp/information/pdf/120822_. では指導資料作成を検討していきたいと考えてい る。. houritsu.pdf. (伊藤 大貴 旭川校大学院生) (佐々木美乃里 宗谷教育局) . 引用・参考文献 1)文部科学省 『消費者教育の推進に関する基本的な方針』 http://www.caa.go.jp/information/pdf/130628_ kyoiku_houshin3.pdf 2)消費者庁『消費者問題及び消費者政策に関する報告』 http://www.caa.go.jp/adjustments/houkoku/honbun. html 3)金融広報中央委員会『多重債務に陥らないために!』 https://www.shiruporuto.jp/finance/trouble/saimu/ saimu001.html 4)内閣府『平成25年度青少年のインターネット利用環 境実態調査』 http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/ h26/net-jittai/pdf/kekka_g2.pdf 5)金融広報中央委員会『子どものくらしとお金に関す る調査(第3回)2015年度』 https://www.shiruporuto.jp/finance/chosa/. 418. (川邊 淳子 旭川校教授) .
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