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認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究

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(1)認知科学的アプローチによる 中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 1993. 大道正樹.

(2) 目次. 第1章. 1. 緒論 ・◆・・・・・・・・・…. 1.1 本研究の目的 ・・・・・・・・…. 1. ◆. 1.2 技術科教育における技能の位置づけ ・・. 2. !.2.1 認知科学的観点からみた技能 ・・…. 2. 1.2.2技能遂行時の生徒の内的過程 ・・…. 4. 1.2.3 技術科教育で取り扱われている技能的課題. 6. 1.3 従来の研究 ・・・・・・・・・・…. 7. 1.4 本研究の基本方針. 9. ・・・・・・・…. 第2章 技能の初期段階の習得過程 …. ◎. 11. ◆・. 11. 2.1 緒言 ・・・・・・・・・・・・… 2.2 実験方法 ・・・・・・・・・…. 11. ◆・・. 2.3 実験結果および考察 ・・・・・・…. 14. 2.3.1 遂行成績の測定 ・・・・・・・・…. 14. 2.3.2技能の図式の形成度の測定 ・・・…. 15. 2.3.3技能習得過程における生徒の類型化 ・・. 20. 2.4 結言 ・・・・・・・…. ’○.’●●●. …. 27.

(3) 第3章. 技能の学習における認知と遂行. 28. 3. 1. 緒言 ・・・・・・・・…. 28. 3. 2. 技能習得の類別実験・・…. 28. 3. 2. 1. 実験方法 ・・・・・・…. 28. 3. 2. 2. 実験結果 ・・◆・・・…. 30. 類型別の技能指導・・・・・・・・・・・・…. 35. 3. 3. 1. 実験方法 ・・・・・・…. 38. 3. 3. 1. 実験結果 ・・・・・・…. 39. 考察 … ◆・・・・・・・・・・・・・…. 42. 3. 4. 1. 指導と技能の成績 ・・…. 42. 3. 4. 2. 類型別の技能指導による効果. 43. 3. 4. 3. 技能的課題の指導法 ・…. 47. 3. 5. 結言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 48. 第4章. 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・…. 50. 3. 3. 3. 4. 謝辞 文献.

(4) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 第1章. 緒 論. 1.1 本研究の目的 今日の科学技術の進歩はめざましく,われわれの生活もその恩恵 を受け,豊かで快適なものへと変化してきている。便利な生活は余 暇を与え精神的な豊かさを生み出す。一方,それらを生み出す機器 は複雑になり,その仕組みや原理が見えにくくなってきている。こ れらの環境の中で,生活体験や労働体験の不足から手先が不器用な 子供たちの問題が指摘され,中学校技術科の指導法にも少なからず 影響を及ぼしている。技術科では物を作る教材が多く用いられ,簡 単な技能の習得は内容を理解する為の重要な要因であると考えられ ている。. 鈴木1)は技能を学習することが,主体的に技術を理解する方法の. 一つとして,重要であると説いている。しかし,現状では技能の学 習の意味や方法について,必ずしも理論だてられているとは言えず,. 教育現場の指導に関しては,個々の教師の経験による勘やコッとい った客観性に欠ける方法に委ねられていることが多い。. 本研究では,学習者の側から技能習得の過程を調査することによ り,技能の学習の基礎的なメカニズムを明らかにし,その意義と指 導法に提言を与えようとするものである。. 1.

(5) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. ユ.2 技術科教育における技能の位置づけ 1.2.1 認知科学的観点からみた技能. 従来から,技能の研究は行動科学の立:場から行われてきた。ブラ イアントとバーター2)の古典的な研究は電信技能の学習曲線として. 有名である。氏らは,技能が発揮される状況を変化させて,得られ たパフォーマンスの違いから,その運動的な側面から,そのメカニ ズムを明らかにしょうとしたものである。一方,近年では,認知科 学の発展により,認知が技能に関するパフォーマンスを規定してい ることが徐々に明らかにされてきた。梅本3)は認知のないパフォー マンスは存在しないと述べている。また,神宮4)は「スキルには,. 運動的な側面と認知的な側面が関係している。運動技能と認知的技 能との区別は,単にどちらの側がより強くそのパフォーマンスを規 定しているのかということにすぎない。」と述べている。技能習得 に関する認知的な過程も一般的な学習における認知的過程と同様の モデルにより説明できると考えることができる。フィッッ5)は情報 理論を運動学習に適用して,技能学習の過程を初期段階,中間段階,. 最終段階の3つの段階に区分し,熟練された技能の特徴について述 べている。その後,クラウスマイヤー6)は情報論的立場から技能の. 学習過程の質的な変化について,その特徴を述べている。これらの. 2.

(6) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 研究は,人をひとつの情報処理系としてのシステムとみなして,こ のシステムそのものを研究の対象としている。システム論的研究は その後,多くの研究がおこなわれるようになった。. 最近の研究では,認知的技能のモデルを図1のように考えるのが 一般的である7>。長期記憶から短期記憶に呼び起こされた「行動. のプログラム」が,その場の状況に応じて階層的に具体化していく (イメージを形成する)と考えられている。またこれらの処理につ いて,制御的処理と自動的処理の2つの処理様相が考えられている。. 長期記憶 行動のプログラム. 短期記憶 一連の動作の パラメーターの決定. 唾}〉[三]. 行動に対する イメージの形成. 図1 認知的技能のモデル [神宮,1993]. 3.

(7) 認知科学的アプローーチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 制御的処理は各動作が意識的に制御されている場合で,自動的処理 は一連の動作に対する内的表象(イメージ)によって,これらが遂 行され意識的な制御がなされない場合である。新たな行動が獲得さ れ,行動のプログラムの下でその行動が自動的に遂行された場合,. その段階で,行動を遂行するのに必要な知識及び,動作の巧みさに 関する外的評価が加わったとき,それはスキルと呼ばれている。. 本研究では,認知心理学的に規定されているスキルを中学校技術 科の技能学習に適合し,認知科学的なアプローチにより技能の学習 のメカニズムに迫ろうとしたものである。. 1.2.2 技能遂行時の生徒の内的過程. 本研究は技術科における技能習得の過程で形成される行動のプロ グラムを「技能の図式」と呼ぶことにする。これは知覚図式を提唱 したナイサー8)のモデルを運動技能を含んだ技能習得の過程のモデ. ルとして置き換えたものである。技能の図式は行動に関するプログ ラムであり,一連の動作に対する抽象的なプランであると考え, 「言語的,非言語的な形式で伝えられた技能に関する情報を,独自. の非言語的な水準で個々の運動に融合すること」と仮定した。技能 の図式が形成された,また,修正されたことの現われる特徴として,. 協応化,自動化,及び運動感覚ブイードバックの利用に注目した。. 4.

(8) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. これらは情報論的立場を取るクラウスマイヤー9)が述べている技能. の習得過程での質的な変化の特徴の中から,技能習得の初期段階に 比較的顕著に現われる特徴として選択したものである。それらにつ いて説明すると,. ①協応化:2つ以上の既存の運動パターンを1つの運動パターン としてまとめること。つまり,のこぎりの片手引きにおける右手と 左手の連係など,同時的なまとまりや,のこぎり引きの引く動作と 押す動作の繰り返しのような,継時的なまとまりの有無を意味する。. ②自動化:技能が習得されるにつれて,行動のコントロールは意 識的なものから無意識的なものへと変化する。初めのうち,行動は 言語的なプランによってコントロールされるが,技能が向上するに つれ,しだいに非言語的な無意識の階層的プランによってコントロー ルされるようになる。. ③運動感覚フィードバックの利用:行動が計画通り行われている か否かを感知するフィードバックについて,最初はほとんど視覚に たよっているが,やがて視覚以外の運動感覚から得るようになる。. 以上を技能の図式の形成過程で現われる特徴とした。また,形成 された後の技能の図式は不変なものではなく“さらに多くの情報を 手に入れるための運動や探索活動を方向づけ,それによって得られ た情報によりさらに修正される”10)ものである。技能の習得の過程. 5.

(9) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. では個々の生徒に技能の図式が形成され,. さらに練習とともに修正. されるものと考えられる。. 1.2.3 技術科教育で取り扱われている技能的課題 一般的に技能と言えば,運動的側面を持ち,熟練を要するパフォー. マンスに使われることが多い。しかし,技術科教育において,元木 ωは, 「技術行動」という概念を設定し,労働手段の体系に関する. 知識(技術体系)と区別してこれらを情報選択,処理し,表現する 行為が技能であると述べている。中学校技術科においては知識を個 々の学習者が体系化し,それを具現化する行為が技能であると考え ることができる。この行為が発揮される課題を学習内容から探索す ると,運動技能を多く含んだ課題,認知的側面を多く含んだ課題, あるいは,.その中間の課題などさまざまな課題が存在する。フィッ ツ「a)は日常的な行動を運動成分と知覚成分に区分し,それらの関係. を比較している。図2は,それを例に中学校技術科の技能を含む課 題の分類を模式的に示したものである。広義には,元木13)の言うよ. うに運動技能をほとんど含まない課題に関しても技能と規定される 場合があるが,本研究では特に運動技能がそのパフォーマンスと遂 行結果に強い影響を及ぼすものに焦点を当て,調査した。. 6.

(10) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. LOW. HIGH ノ プログラミング. / 材料取り 一 はんだづけ. / 認知的技能. 運動技能. のこぎり引き ノ たがねによる切断. ,. 釘打ち ’ やすりがけ. ノ. LOW. HIGH. 図2 技術科の技能的課題における運動技能成分と 認知的技能成分に関する模式図. 1.3 従来の研究 技術科における技能に関する研究は多くの研究者によって取り扱 われている。それらは大きく分けて,(1)運動技能に注目した研究 (2)技能の測定と評価に関する研究,(3)指導方法と技能の成績と. の関係についての研究,及び(4)認知的技能に注目した研究,に分 けることができる。. 7.

(11) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. (1)運動技能に注目した研究 末富14)は随意運動の能力を鍛えることが重要であると考え,線引. き作業における巧緻性を測定する研究や捻る力,握力などの純粋な 運動技能そのものを計測し,中学生の学習の補助的前提となる運動 能力を明らかにしている。また,土井15)はかんなによる切削に関す. る動作の筋放電を測定することにより,熟練者と未熟練者との差を 比較し検討している。しかし,これらの研究には認知的側面が省か れており,認知的要素なしでは実験室内のデータの範疇を超えるこ とはできない。. (2)技能の測定と評価に関する研究 松原16>は釘打ちの技能に関して,その能力の男女差や学年間の差. を比較検討するため,定量的な測定分析手法を提案している。近藤 17)は図形を模写する課題を使って,短時間に生徒の操作能力を測定 する方法を提案している。 (3)指導方法と技能の成績との関係に『ついての研究。 向山18)19)は釘打ちとのこぎりびき技能に関して手続き化された知. 識(氏はこれを勘,コツと呼んでいる〉を伝授することにより技能 成績の向上を図る研究をしている。また村肝。)は示範の有無とその. 時期の違いによる学習効果に注目して,のこぎり引きの指導法を調 査している。. 8.

(12) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. (4)認知的技能に注目した研究。. 城21)は,ほぞの加工において,概念の多段階的形成理論を技能習 得に当てはめ実験的に検証している。また,足立22)は認知心理学的. 観点からスキーマ理論に基づき生徒の認識過程を考察している。足 立の研究は生徒を対象とした認知過程の実証的な検証まではされて おらず,教授・学習過程の設計に関する提案に留まっている。. 最近の研究では運動技能のみに限定した研究は少なくなり,認知 科学的な観点からの研究がおこなわれるようになってきている。. 1.4 本研究の基本方針 これまで述べてきたように,認知科学の分野では日常のささいな 行動に関して認知的操作と行動との関係に関する研究が進んできた。. 技術科教育の分野では技能に関する認知的操作と遂行の関係を個々 の生徒の内面から調査した研究は見当たらない。. そこで,本研究では,第1章で技能についての従来の研究を調査 し,認知科学的な見地より技能の遂行に関する認知モデルを設定す. る。第2章では,技能習得の初期段階における生徒の操作を技能の 図式(行動のプログラム)の形成と遂行成績の観点から分析する。. そして,技能習得の過程から生徒を類型化し,その特徴を明らかに. した。第3章では,2章で明らかにした,生徒の類型別に,認知的. 9.

(13) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. な側面を支援する指導,運動技能の側面を支援する指導を個別にお こない,それぞれについての結果について技能の図式の形成度と遂 行成績の観点から分析する。そして,技能遂行における指導の方法 を探索する。. 10.

(14) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 第2章 技能の初期段階の習得過程 2.1 緒言 技術科の技能を含む課題に対して,個々の生徒はどのような認知. 的な操作をしているのかを調査した研究は見あたらない。第1章で 述べた技能の遂行に関する認知モデルをもとに,本章では,被験者 が未経験である「たがねによる板金の切断場面」を取り上げた。未 経験の技能を取り上げることによって,技能習得の初期段階におけ る認知的な過程が明らかにされるものと考えられた。また,技能に おけるパフォーマンスを遂行成績と技能の図式の形成度の両面から 評価し,その変化の特徴から技能習得の過程にある生徒の類型化を 計った。. 2.2 実験方法 実験はH大学附属中学校でおこなわれ,被験者は金属加工領域未 履修の中学1年生12名(男子10名,女子2名)である。課題は, 50㎜×50㎜厚さ0.5㎜の溶融亜鉛めっき鋼飯(以下試片)の中央 にけがき線を一本引いておき,その線にそって万力,ハンマー,た がねを用いて切断させた。実験は放課後におこなわれた。生徒を一 人ずつ個別に呼び,ラポールをとり,親睦目的と同時に先行経験の. 11.

(15) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 有無,健康状態などの個別の条件も調杢した。ラポールの後,作業 の手順を教示した。その後,実験者が,見本の切断をおこない,被. 験者に1回目の課題に取り組ませた。1回目の切断が終わった後, 設定した手順に従い,切断の行為時の内観を聞き取り調査した。ま た,切断行為の下位技能のそれぞれについてテストした。切断行為. と内観聴取をひとまとめにし,2枚目以降も同様にして,繰り返し 行なった。40分をめどとして,実験を終了した。作業のようすと内. 観報告はすべて,VTRに録画した。図3は実験室の見取図,図4は 実験中のようすを示したものである。. 実験に先立って,本研究では,たがねによる切断を実行するに必 要な要素を分析し,切断の実行の補助的前提となるたがねの切断に 必要な「下位技能」として次の3つを設定した。 (a)たがねの刃先角を一定の角度に保持する。. (b)ハンマーを使い,たがねの頭を適度な強さで打つQ (c)刃先を切断位置に移動させる。 教示した手順は ①たがね及びハンマーの持ち方。 (a) ②姿勢と打ち方。 (b). ③たがねの角度を合わせる。(a) ④右から左へ移動させながら切断する。(c). 12.

(16) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 説 明. L〕一. 被験者. 図. @rOへ 穿 試票片1. 平だがね. 万力. ハンマー. 工作台. VTRカメラ. ∬ 実験者. 図3 実験室の見取図. .蔚. ザT 響 .. 寮 }翼 ’. 業拳野・・. 謡騰諦.. ロ コ. ・. 欝螺 7. 、 昌rrr7. 馬 ・セ聾 . FL」鯵,r、 し. 評∫. げド. 糞. 欝一一≒ 図4 実験のようす. 13.

(17) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. (ただし左利きの被験者の場合は左から右となる。). また,今回は切断行為のみに焦点を絞ったため,試片を万力へ取 り付ける操作については調査の対象とはしなかった。不正確な取り 付けをした場合は修正するよう指導した。. 2.3 実験結果及び考察 2.3.1 遂行成績の測定. 本実験は,たがねによる切断に関する技能の習得過程を技能の図 式の形成,及び遂行成績との関係という視点から見ようとするもの である。. 遂行成績は実験後の試片のできばえと操作時間より結果を得た。. 遂行成績の測定の尺度,つまり切断された試片のできばえについて. は切断面の面積,傷,曲がり及び打ち込み数の4点について調査し た。. ①切断面積:切断された試片を写真撮影し,さらに画像スキャナー. よりコンピューターに入力,画像処理し,その面積を測定した。得 られた切断面積は小さいものが正確であるとし,5段階に変換し, 切断面積の評価とした。. ②切断線付近の傷:切断された試験片の切り口付近に付いた切断 の際の傷を観察し、目視により、5段階の評価を行った。. 14.

(18) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究 L. ’♂. ?ψ, 勢. 飽.. W一 8. ㌻∵ 弓L. h「. 一ト. 一. 一. 臨.. 擢寸. 漸 噸. ・. 「. 図5 試片の例(被験者No.12の1枚目と6枚目). 16.

(19) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 12 操作結果の成績. 10 8 聖. 6 時間(変換). 4 2. : ge 一一e 遂行成績. 1 2 3. 4. 試行回数. 図6 全被験者の成績の平均. 動をあてはめ以下の観点を設けて分析した。. 内観報告は被験者が試行を終えるごとに,試行中の状況を次の観 点で質問し,報告を得た。. ①操作の途中に手順や下位技能についての宣言的な知識について 意識したり考えたことがあるかどうか。具体的には「作業中に,た がねをあてる角度のことを考えていましたか。」の質問をした。. ②操作中に会話をしたり,操作以外のことを考えるといった無意. 17.

(20) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 識操作が可能であるかどうか。「作業中に話しかけても手を止めず に続けられますか。」や「まったく他のことを考えながら作業がで きますか。」などの質問をしている。. ③ハンマーを打った時に切れたか,切れていないかが覗き込まず とも感じとられるかどうか。. 以上の3項目が内観聴取の観点である。図7は,内観報告の例で ある。これらを観点別に分析し,内観聴取による内的な技能の図式 の形成度の評価尺度とした。. 行動観察については,被験者の試行を撮影したVTR画面より次の 観点について判定した。 ①協応動作が見られる:下位技能の(a)たがねの刃先角を一定の 角度に保持する。と(b)ハンマーを使い、たがねの頭を適度な強さ. で打つ。については同時的なまとまりのある動作として,また,こ の動作と(c)刃先を適当な位置に移動させる。については継時的な. まとまりのある動作として認められたかどうかを判定した。. ②操作が中断しない:手を止めて切り口を覗き込んだり,操作方 法を考えるなど,何らかの要因で操作が中断されたかどうかについ て判定した。. ③操作に一定のリズムがある:打ち込みと刃先の移動に被験者個 々のリズムが認められるかどうかを判定した。. 18.

(21) 認知科学的アプロL・一一チによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 被験者の内観報告. 実験者の質問. 観 点. 今回の感想はどうですか。 さっきより楽に切れたけど, 失敗してしまった。. ①. 今,やりながら考えていたことを いってください。. 何を考えていましたか。. 気を付けてやろうとしたことを 考えていました。. ということは,角度ということで キか。 はい。. ずっと考えていたのですか。 だいたいは.__. どっちの角度ですか。 両方_... 叩く強さは考えていなかったので キか。 考えていたけど_...,. 一応考えてた。. 切る位置をずらせることはどうで キか。 あんまり考えてなかった。. 切りロを見なくても様子を想像で ③. きますか。 9 隔 騨 畢 , 6 騨. うまく切れたとか,切れていない とか,そんな様子だけど,まあ, のぞき込めば分かるんだけどね。 できないです。. さっきも聞いたんだけど,作業中 に喋っても続けられますか。. ② はい。. 一一一一 @略. 一一一. 一一一一 @略. 一一一. 観点;①協応動作,②操作の中断③操作のリズム,④視線の安定. 図7 内観報告の例 19.

(22) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. ④視線が安定している:熟練されたものは刃先に視点が集中する ものと予想される。しかし,たがねの頭を正確に打つことに対して 不安がある場合,視線はたがねの頭にも移動し,安定しないものと 考えらる。そこで,視線の安定に注目し,これを判定した。. 以上の4項目が行動観察による技能の図式の形成度の評価尺度と した。. 内観聴取による3項目及び行動観察による4項目を技能の図式の 形成の7項目とし,これらの項目を各生徒の試行毎に評価した。. (1)式に示すように,試行毎に7項目は合計し,切断行為に費や した時間を自然対数変換(Y=logeX X:素データ, Y:変換データ,. e=2.71828)したもので除した値を技能の図式の形成度とした。. s一 図8は被験者No.10の行動観察の結果の例である。また,分析 にあたっては経験年数10年以上の中学校技術科の教師3名に独立 に判定をしてもらい,その結果を平均した。. 2.3.3技能習得過程における生徒の類型化 前述の遂行成績を縦軸にとり,技能の図式の形成度数を横軸にと. 20.

(23) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 方法. 行動観察. 行動観察. 行動観察. 1枚目. 2枚目. 3枚目. 4枚目. 5枚目. 6枚目. A. ×. ○. ○. ○. ○. ○. B. ○. ○. ○. ○. ○. ○. 判定者. 具体的判断基準. 協応動作が見られる. 操作が中断しない。. 操作に一定のリズムがある。. C. ×. ×. ×. ○. ○. ○. A. ×. ×. ○. ○. ○. ○. B. ×. ×. ○. ○. ○. ○. C A. ×. ×. ×. ○. ○. ○. ×. ×. ○. ○. ○. ○. B. ×. ○. ○. ○. ○. O. ×. ×. ×. ○. ○. ○. ×. ×. ×. ×. ○. ○. B. ×. ×. ○. ○. ○. ○. C. ×. ×. ×. ×. ×. ○. C A 行動観察. 視線が安定している。. ○:判断基準に合致している. ×=判断基準に合致していない. 図8 行動観察の例(被験者No.10). つたものが図9である。点線縦軸は全被験者の最終試行時の技能の 図式の形成度数を平均したものである。同様に,点線横軸は全被験 者の最終試行時の遂行成績の平均である。試行を繰り返すにつれて,. 遂行成績と形成度数は大きくなっているが,その形成過程において. 3つのタイプが認められる。すなわち,家中の左下より始まり最終 の試行が右上に達している,遂行成績と技能の図式の形成度のバラ ンスがとれているタイプ(バランス型〉,左上から中央付近に達す. 21.

(24) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 注1 i. 20 No.5(4). 1. 口. □. MMNo.7 (s) 1 No,11 (9) No,14 (s). i. 口No.161(4). £ヨ. i No.6 (7). No.10 (6)【ゴ日□No・17 (6). 注2. El No,8 (5)iNo,12 (10). 督 10. i ロN・・13(了). ke. 1 口No.9: (6)l. i i l. :. o. 0. 1. 2. 3. 形成度数 40分間試行()内は試行時間 注1:全被験者最終試行平均度数 注2:全被験者最終試行平均成績. 図9 技能の図式と遂行成績の関係. る,始めから遂行成績はよいが技能の図式の形成が途中の段階であ るタイプ(認知型),さらに左下から右へ移動し成績の向上は少な いが,技能の図式の形成度に向上が見られるタイプ(パフォーマン ス型)の3つのグループに分類できる。 認知とパフォーマンスの関係については梅本25)が方略の違いによ. るものと,パーソナリティの類型の違いによるものの両側面を認め ている。. バランス型の技能の習得過程を図10に示した。遂行成績も形成 度数も比較的安定して向上し,バランスのとれたものになっている。. このタイプの被験者の遂行成績は,一般的な中学校技術科の授業に. 22.

(25) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 注1. 20. 注2 10. i十 No,6 (7). 1ご. 一一.一一.. Ct>, No.11 (9). + No,14(5) o 0. 1. 2. 3. 形成度数 40分間試行()内は試行時間 注1:全被験者最終試行平均度数 注2=全被験者最終試行平均成績. 図10 技能の図式と遂行成績の関係 (バランス型). おける「たがねによる切断」の技能に関した指導目標をほぼ達成し ていると思われる。これはまた,操作も滑らかで,技能の図式の形 成度も高い。. 認知型の技能の習得過程を図11に示した。このグループは遂行 成績は向上している,もしくは初めから良いが,技能の図式の形成 度について低い値を示している。このタイプの被験者は行為にたい して慎重な態度を示している。手順に対して正確で丁寧な操作を示 しているが,滑らかな操作が見られない。知識から行動を制御しよ. 23.

(26) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 注1. 20. 縢1…=ピ!. o. l. 注2 10. 一m No.5 (4). に. + No.7 (5). + No.16(4) o o. 1. 2. 形成度数. 3. 40分間試行()内は試行時間 注1=全被験者最終試行平均度数 注2=全被験者最終試行平均成績. 図11 技能の図式と遂行成績の関係 (認知型). うとする認知的な側面が強いタイプである。. パフォーマンス型の技能の習得の過程を図12に示した。このグ ループの被験者は操作の滑らかさは見られるが,遂行の成績はあま り向上しない傾向を示している。このタイプの被験者は一定時間内 での試行回数が比較的多い,つまり操作に費やす時問の短い行動的 なタイプである。手順や操作方法が説明通りでなく,また不正確な. 24.

(27) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 注1. 20. 注2 10 No,8 (5). !¢. No.9 (6). No,10 (6) 奄rt一一... No,12 (10). Z一・一一一一一一一. No.13 (7). ”一’一一“一一. 一一一一一一一. No.i7 (6). o o. 1. 2. 形成度数. 3. 40分間試行()内は試行時間 注1:全被験者最終試行平均度数 注2:全被験者最終試行平均成績. 図12 技能の図式と遂行成績の関係 (パフォーマンス型). 操作も見られる。認知的なプランにたよらず,行為の結果や感覚的 なフィードバックから行為を制御しようとする態度の強いことが認 められた。. このように,中学生の生徒に未経験の技能的な課題を与え,単に 教示をしただけで試行させた場合,その初期段階においては,遂行 成績及び技能の図式の形成度はともに向上することがわかった。し. 25.

(28) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. かし,その習得の過程は一様ではなく,遂行成績と技能の図式の形 成の関係から3つのタイプに分けることができた。このことより, 中学校技術科で「たがねによる切断」のような,技能習得の課題を. 指導する場合,遂行成績と技能の図式の形成の2つの側面から生徒 を観察し指導する必要があると考えられる。このことは一般的にお こなわれている指導で言い替えると課題作品に対する評価と実習時 の生徒の行為そのものの評価にあたるといえる。しかも,この結果 は課題作品の製品としての評価と生徒の技能に関する能力は必ずし も一致していないことを表わしている。本実験では初期段階の技能. の習得過程で3つのタイプがあることが明らかにされた。それぞれ のタイプの生徒には共通する行動と内観に特徴が見られたので,タ イプに応じた指導が必要であるといえる。また,評価に関しても遂 行成績と技能の図式の形成の両面から評価することが適切であると 考えられる。つまり,作品のできばえの評価だけでなく生徒の内部 に存在する技能の統合的な能力についても評価の対象に加える方が より正確な評価につながると考えられる。一般的に教師はこれらの ことを机間巡視などをとおして経験的に感じているものである。し かし,生徒の技能に関する内的な変化をどのように指導し,どのよ うに評価するかといった問題はこれまであまり注目をされず,また 整理されてこなかった。今後は,さらに技能の習得に関する認知的. 26.

(29) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. な過程が明らかにされ,より適切な指導と評価が行われるよう望ま れる。. 本研究は,たがねによる切断という課題で実験を行ったが,一般 的な技能の初期段階においても同様の結果が得られると推察される。. 2.4 結言. 本研究では中学校技術科で取り扱われる技能に相当する「たがね による板金の切断」場面を通して,技能の図式を定義し,これが形 成されると,協応化,自動化,および運動感覚フィードバックの利 用に関係した生徒の行動や内観に変化が起きるという仮説をたてた。. 技能の図式の形成と遂行成績との関係から生徒の技能習得の過程を 観察した結果,以下のような点を認めることができた。 1.遂行成績と技能の図式の形成度は試行回数とともに向上した。. 2.生徒の技能習得の過程の違いからバランス型,認知型,及び パフォーマンス型の3つのタイプに分けることができた。. 3.中学校技術科の技能の習得に関する課題に対して遂行成績及 び技能の図式の形成の,両面から指導と評価を行うことの必要が明 確になった。. 27.

(30) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 第3章 技能の学習における認知と遂行 3.1 緒言. 前章では,技能の初期段階の過程について,認知的な側面から調 査した。その結果,パフォーマンス型,認知型,バランス型の各タ イプの存在と特徴が明らかにされた。前章では未経験の技能につい て取り上げたが,本章では,先行経験にばらつきがあり,系統的な 学習がされていない課題に対して前章同様の調査により類型化をは かった。さらに類型化された各タイプの生徒個別に指導をおこない,. 遂行成績と技能の図式の形成度に表われる特徴を調査した。. 3.2 技能習得の類別実験 3.2.1 実験方法. 実験はH大学附属中学校でおこなわれ,被験:者は木材加工領域を. 未履修の中学1年生17名(男子11名,女子6名)及び履修済みの中. 学2年生7名(男子5名,女子1名)である。課題は,アルマシが 材(厚さ12㎜,幅100㎜,長さ600㎜)の両端から300㎜の位置にのこ. ぎり引き用にけがき線を一本引いておき,その線にそって両刃のこ ぎり(学校用品基準準拠,刃渡り210㎜)と工作椅子(学校用品基. 28.

(31) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 準準拠)を用いて切断させた。実験は放課後におこなわれた。生徒 を一人ずつ個別に呼び,ラポールをとり,親睦目的と同時に先行経 験の有無,健康状態などの個別の条件も調査した。ラポールの後,. 課題に取り組ませた。切断が終わった後,設定した手順に従い切断 の行為時の内観を聞き取り調査した。作業のようすと内観報告はす. べてVTRに録画した。図13は実験室の見取図,図14は実験中のよ うすを示したものである。. 国 被験者. 心. 工作椅子. 実験材 [==] 両刃のこぎり〔=〔=コ. 工作台. ℃)ノ VTRカメラ 実験者. 図13 実験室の見取図. 29.

(32) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 噸 ,チ. ll鱒. 鎌 コ ロ. ロ. ゴ幽」. 、拶撒. 紺. 夢. ン:門川’. .一 垂蝿黶o一A一.. t一. 図14 実験のようす. 3.2.2 実験結果. 本研究は,前章と同様に,のこぎり引きに関する技能の習得過程 を技能の図式の形成,及び遂行成績との関係という視点に立って考 察しようとするものである。技能の図式の形成度については,切断. 行為のVTR録画視聴からの行動分析と,そのプロトコルを分析す ることにより推測できると考えた。すなわち,行動分析とプロトコ ル分析により次の7項目の有無を判断し,確認された項目が多いも のほど技能の図式が高度なものとみなした。つまり技能の図式の形. 30.

(33) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 成度が向上すると考えた。その7項目を以下に示す。 (1)遂行中に手順や要領について考えているか。 (2)無意識操作は可能か。 (3)感覚的フィードバックの利用は可能か。. 以上の3点の結果についてはプロトコル分析から判定した。図15 は被験者No.14のプロトコルの例である。さらに,. (4)協応動作がみられるか。 (5)作業が中断しないか。 (6)操作に一定のリズムがあるか。 (7)視点が安定しているか。 以上(4)∼(7)の4点については行動観察から判定された。図16. は行動観察の例である。なお,判定に関しては客観性を得るために. 教職経験10年以上のベテラン技術科教師3名によって別々に判断さ れたものから平均値を行動観察による技能の図式の形成尺度とした。. 以上の7項目について各々の生徒の行為にその項目が認められた か否かの判定をおこない,これを合計した。合計されたものを分子 に,切断行為に費やした時間を自然対数変換(Y=logeX X:素デー タ,Y:変換デー一一一一タ, e=2.71828)したものを分母にして技能の図式. の形成度とした。. さらに,遂行結果として,切断された実験:材を次の5つの観点か. 31.

(34) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 被験者の発言. 実験者の発言 略一一一一. はい。ありがとう。 うまくいきましたか?. まだわからん。 (切りロを見て). うまくいったんじゃないですか。. 今,切りながら考えたことを 言って欲しいのですが。. 切りながら?. はい。. やっぱりまっすぐにのこぎりをたてて…. まっすぐにたてるとは どういうふうにですか?. こういうふうにならないように (のこぎりの刃の角度を水平に近くして). 引いていくと時々引っかかったりするから… なるほど,まっすぐにすると 引っかからないと思ってるんですね?. はい。. できるだけ線に合わせて… 線に合わせることも考えてたの? 曲がったら修正してたのですか? ずれてないだろうと思ってたのですね? あとは?途中は? 修正しましたか?. はい。. してません。最初合わせたのが,そのまま… 最初はずれてなかったと思う。. あとで,ちょっとずれたかなと思った。 しょうと思ったけど,切ってる途中に 直らないと思ったので,まあ…. 直らないと思ったのですかそれとも 直らなかったのですか?. こっちに曲がったので,. 結果がそうならなかったのですか?. はい。. こっちによせようとしたのだけれど… 日. 一. 一. 隔. つ. し. 一一. 日、、一 言た、一 一 ・・. こ穎 、. 鉄. 一. N. @ 、つ 一. つ. N5 hN… ±=’ {, N±一一 t, N. s’ 一 ・・ 、つ. なるほど手が出てそして思い出したのですか? 角度なんかはどうですか? さっき,自分でいってたこと… 考えなかった? あてにしてなかった?. N. 一一 @」評 一た. 照. はい。. 別に思わなかった。. はっきり言って,記憶がたしかでないので… はい。. 十一…一…. 図15 プロトコルの例(被験者No.14). 32.

(35) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 被験者 行. 動 の 観 点. No.01. No.02. ×. ○. No.03. No.04. No.05. No.06. No.07. No、08. ×. ○. X. O. ○. X. No.22. No.23. サ定者. A 協応動作がみられる. 操作が中断しない. ○. ○. ○. O. X. ○. ○. ○. ○. C. O. O. O. ○. ×. ○. ○. ○. ○. O O. 小計. 2. 3. 2. 3. 0. 3. 3. 2. 3. 3. ○. ○. A. X. O. ×. ○. ×. ○. ○. B. ×. ×. X. ○. x. ○. ○. ×. X. ×. C. ×. ×. X. ○. X. O. ○. x. ○. ○. o. 1. o. 3. o. 3. 3. o. 1. A. X. O. ×. ○. ×. ○. B. ×. ○. ○. ○. ×. ○. O O. C. X. ○. ×. ○. ×. O. ○. ×. ○. ○. o. 3. 1. 3. o. 3. 3. 0. 2. 2. ○. O. 小計. 視線が安定している. ○. B. 小計. 操作に一定のリズムがある. ○. ×. ×. ×. 1. ×. ×. ○. ○. A. ○. ○. O. ○. X. ○. ○. ×. B. ○. ○. ○. 0. ×. ○. ×. ○. ○. C. ○. ○. ○. ○. ×. ○. ○. ○. 0. ○. 3. 3. 3. 3. 0. 3. 2. 2. 3. 2. 3,333. 2. 4. 0. 4. 3,667. 1,333. 3. 小計. 行 動 観.察 合 計 / 3. 1,667. 図16 行動観察の例. ら評価した。. (a)切断線からのずれの程度 (b)垂直方向の角度 (c)割れや欠けの程度 (d)引き肌の程度 (e)切り込み数. 一 33 一. ×. 2,667.

(36) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 注1. 30. ;. 認知型. 口4. △16 ロ22. ;. 20. 、. 稲会恥. 口6ム2歪. 、㌧. 掘3 2’…一季…込^2α幽 口11. 晶晶 血晶晶晶・晶輔. v. @ 葦 囲14口8. 10. 口9. 5. 留1. @ ㌧ △慣、. 占. 幽占ゐA桑. AAA争桑Aゐ幽 卓A÷A幽や幽ややや. や. 注2. 齪1. △ 2年男子 & 2年女子 ロ 1年男子 日 1年女子. 、. 、. 、 、. 、 、. ’パフォーマンス型 田1 3. 数字は被験者整理番号. 、. 、. ㌔. 、. 、. 、. 、 、. 、. 注1:全被験者平均形成度 注2.全被験者平均遂行成績. 、. 、. o. 、. o. 1. 3. 2. 技能の図式の形成度数. 図17 技能の図式の形成度と遂行成績の関係. 以上の5項目については各5点満点,合計25点満点として評価し, これを遂行成績とした。. 横軸を技能の図式の形成度,縦軸を遂行成績とし,技能習得の類. 別実験の結果を表わしたものが図17である。この図の右下領域に 属する被験者からパフォーマンス型の傾向を示すものとして3名 (N・.7,NO.13, No.23),左上領域に属する被験者は認知型の傾向. 34.

(37) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. を強く示すものとして2名(No.3, No.5)を抽出して,技能指導の. 実験の被験者とした。. 3.3 類型別の技能指導. 3.3.1 実験方法. 技能習得の類別実験の実施後,前回と同様,H大学附属中学校で おこなわれた。被験:者は上記のとおり技能習得の類別実験の結果抽. 出された者,5名(男子3名,女子2名)である。なお,その間に 技術科の授業では木材加工の学習はおこなわれていない。課題は技 能習得の類別実験と同様であるが,実験手順については,簡単なラ ポールの後,タイプ別にそれぞれ個別の指導をおこない,課題に取 り組ませた。切断終了後の処理も技能習得類別実験:と同様である。. 指導については以下の観点から個別におこなわれた。. (1)認知型生徒への指導 認知型の生徒は,宣言的な知識あるいは手続き化された知識26)を. 重視し,認知的な活動は得意であるが,それらの認知的活動を随意 的運動制御活動へ変換する行為が不得意なタイプであると考えられ る。そこで,随意的運動制御能力27)に直接働きかける指導として,. 感覚的な情報を伝えることに重点を置いた。. 35.

(38) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. ①見本を見せる。. ②感覚的なことばで操作の方法を教示する。 ③手をとって教示する。. 以上の3点を重視した指導をおこなった。認知型の被験者,No.. 3の生徒に対しておこなった指導の記録を図18に示した。 (2)パフォーマンス型生徒への指導 パフォL・一・一マンス型の生徒は宣言的な知識を手続き化させる等の,. 認知的な操作を優先するのではなく,表象されたプラン28)は乏しく. とも,自己の随意的運動制御能力をたよりに,行動に移すことので きるタイプであると考えられる。そこで,宣言的知識と一部手続き 的知識と思われる知識を,中学校技術・家庭科の教科書29)30)ののこ. ぎり引きの掲載箇所から次の12項目を抽出した。すなわち,①材. 料の固定の方法②刃の選択 ③柄を持つ位置④切り始めの場所 と切る方向 ⑤切り始めに案内をつける⑥切り始めに引き溝を作 る ⑦のこぎりの角度 ⑧姿勢(柄が当たらないように体を少し左. に避ける) ⑨目の位置⑩刃渡り一杯に使う ⑪引くときに力を 入れる ⑫切り終わりに欠けを防ぐ方法,等である。これらを技能 向上に有効な宣言的知識とした。また,被験者の短期記憶31)も考慮 に入れ,事前に個々の被験者の技能習得の類別実験:のVTR録画を観. 察して,各項目毎にチェックし,これらの宣言的な知識の中で個々. 36.

(39) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 被験者の発言. 実験者の発言. 略・一一一一一一一一…一…一…一一一一………一一一一一一一一・. それから,人間は歩くときに手を振りますが そのように,. 自然に手が振れるようにしてください。. 正面に構えると体がじゃまになりますからs 少し体を避けてください。. はい。. そうすると,目の位置がかわって, 斜めから見るようになりますから,. 目の位置だけをのこぎりの真上に してください。. のこぎりを真上から見ると 線のように見えますよねえ 以上ですがわかりましたか?. はい。. 何を云ったか繰り返してもらえますか?. はい。. 歩くみたいな感じで手を動かして切るのと, 刃の所が木と垂直になるのと, 刃が線に見えるくらい真上から見る。. はい。今云ったなかで、一番 なるほどと思ったのは何ですか?. 手の振り…. 今度はs私が切ってみますので, よく見ていてください。. はい。. (.見本を見ぜる2. どこを見ていましたか?. 板と手と足。. 形ですか?. 場所とか…. あと,刃がどうなっているとか… ここがどういう感じで動いているとか,. 刃?. 音とか。. 感じはわかりましたか?. はい。. どうですか自信はありますか?. 前よりは自信がある. その理由は?. やり方を前は詳しく知らなかった。. 前は迷いながらやりましたか?. はい。. それでは,お願いします。 略一…………一一一_,..一__.一.一一一一一…一一・. 図18 認知型生徒(被験者No.3)への指導のようす. 37.

(40) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 被験者の発言. 実験者の発言. @ws 一一一一一一一一一一一一一一一一一一p一一一一J一一一一J一一一一一一一一一一一一一 一一一一一一一一一一一一一一tt一一一一一一一一一一一一一一一一t一一一一一一一一一一一一一. 今日はいくつかいいますのでよく聴いて下さい。. はい。. 最初は,のこぎりを短く持って 左手を添えて 手前の方で,押しながら, 少し溝を作るのですね。. 溝が出来たら,のこぎりは横へいきませんから それが一点。それから曲がってしまうのは のこぎりを引くときに 体がじゃまになっているのですね,. だから,じゃまにならないように 体を少し避けてやらなくてはなりませんね, そうすれば楽に真直ぐ引けます。 それが,二点目ですね。. それから,最後に,最後の所ですが, 折れてしまいましたよねえ,. 折れなくするには,最後の所に来たら 切れ落ちるほうを 支えなくてはなりませんね,. だから,左足で踏んで,切れ落ちるほうを 左手で支えて切ってください。 わかりましたか?. はい。. それでは,繰り返していってください。. 切り始めは左手の親指を添えて溝を付けて それで,. 引いたら,体に当たらないように避ける。. 最後は,ちょっとつつ,右足で踏んで切る はい。右足では踏めないんだけど 左足で踏んで,左手で支えて. えっ. 右手で切ってください。. はい。. わかりましたか?. はい。. それでは,やってもらいましょう。 自信はありますか?. まあ. この前より上手に切れるという自信は?. 守ったら出来ると思う。. はい。それでは,お願いします。 ……………一…一一一一一…一………一…一…一. ェ. 図19 パフォーマンス型生徒(被験者No.7)への指導のようす. 38.

(41) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. の生徒の行為から大きく欠けていると認められる2,3項目を口頭 (一部手ぶりを加えて)で説明した。. パフォーマンス型の被験者,No.7の生徒に対しておこなった指. 導の記録を図19に示した。指導に要した時間は各被験者5分から 10分程度にとどめ,指導内容を口頭で反復させ,説明について誤っ. た理解を示した場合は再び説明を繰り返し訂正した。また,1回目 の試行以降は質問された場合以外,指導はおこなわれなかった。. 3.3.2 実験結果. 類型別の技能指導の実験では,被験者一人に対して3回ののこぎ り引き試行の記録のそれぞれについて,技能習得の類別実験と同様. に技能の図式の形成度と遂行成績を求めた。図20は図17に認知型 として抽出された被験者No.3および被験者No.5の指導後の遂行の. 結果を重ねたものである。被験者No.3の遂行成績はあまり向上し ていないが,技能の図式の形成度が著しく向上している。技能習得 の類別実験では,認知型と区分されたが,技能指導の実験ではむし ろ,パフォーマンス型へ移行している。さらに,指導後に一時,遂 行成績に後退現象がみられた。一方,被験者No.5は認知型の傾向 を残しながら,比較的バランスのとれた拉能の向上のようすを示し. 39.

(42) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 注1. 30. I I I. 認知型. ),. E. ム. き }. 20. D Bn A ”. AA p−it’ ’m ,. 1 ...一一. r. 注2 亡【’. 回. に. ロ. A”. △ 2年男子. 導 呂. 田. io. ミ ミ ミ ミ. ム. “. A 2年女子. ウ. ロ 1年男子. sl. 疽. m 1年女子. パフォーマンス型. 一◆一被験者No.3 一●一被験者No.5. t. 注1 全被験者平均形成度 注2 全被験者平均遂行成績. o o. 1. 3. 2. 技能の図式の形成度数. 図20 No.3とNo.5の指導後の結果. ている。. パフォーマンス型として抽出された被験者No.7,被験者No.13,. および被験者No.23の指導後の遂行の結果を重ねたものが図21であ る。被験:者No.7は指導直後に遂行成績が向上し,技能の図式の形. 成度が退行している。続いて次の試行では遂行成績が後退し,技能 の図式の形成度が向上するという逆の変化を示し,更に次の試行で. 40.

(43) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 注1. 30. =. 認知型. 口 △. ◆. 20. □. レ. △. 一■一9の内A. 瑚 □. 【 【 門 【 【. △. ロ9. △《 か・ A. 【AA門A内. AAAA∩∩AA AA AAA A内AA. @ヒ. に. 鈷ミ. 、. 巴. 10. 、. 圃. A. 1、 △ ” 、. 租. 1年女子. ≒ モ 、. …. 、、 、. 、. 紅. 、、. ミ. 、. パフォーマンス型 、. 、 、. 、. →一被験者No.7. 、. 、. 、. 、. △ 2年男子 注2△ 2年女子 □ 1年男子. k. 、. 、. +被験者No.13. 、. 、 、 、. 、. →←被験者No.23. こ. ミき’1’. 、、. ・ こ、、こごこ. 、 、. 注1 全被験者平均形成度. 、. 、. 注2 全被験者平均遂行成績. 、. ヒ. o. 、. o. 1. 2. 3. 技能の図式の形成度数. 図21 No.7, No.13,及びNo.23の指導後の結果. はまた指導直後の変化の方向に戻るという複雑な変化を示した。被 験者No.13は,指導直後に著しい遂行成績の向上がみられたが,そ の後の2回の試行では大きな変化はみられなかった。被験者N・.23. は指導直後,著しく技能の図式の形成度が後退し,次の試行から再 び微増している。その間,遂行成績は向上している。技能習得の類 別実験でパフォーマンス型の傾向を示した被験者は,指導の後の試. 41.

(44) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 行ではいずれも認知型の傾向を示す結果となった。. 3.4 考察 3.4.1指導と技能の成績. 未履修の1年生グループと履修済みの2年生グループを図17に より比較することができる。技能の図式の形成度および遂行成績の 何れにおいても,2年生の方がよい成績であった。さらに図の上で,. 1年生の広がりに対して2年生はバランスのとれた位置近くに属し ている者が多い。このことは履修,未履修という指導による効果が. 考えられる。2年生については実験前に,技能に対する知識の聞き 取り調査を行った。結果は履修済みにもかかわらず,のこぎり引き 技能に関する知識を明確に表象できた被験者はほとんどいなかった。. しかし,のこぎり引きの遂行成績と技能の図式の形成度については. 1年生と比較してよい成績を示している。つまり,それらの宣言的 な知識はそのまま記憶されずに,行為を制御する表象不可能な知識 と共に融合された技能の図式として,記憶されていたものと推測さ. れる。このことは,図15において,被験者自らがおこなった行為 に対するプロトコルの例からも考察することができる。したがって,. 技能についての学習の効果に関して調査する場合には,筆記テスト 等の知識のみによる調杢方法では正確に判定できないことがうかが. 42.

(45) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. える。また,本実験での2年生の方が遂行成績と技能の図式の形成 度の両方の成績がよいことは学習の効果が表われているものと推測 される。. 3.4.2類型別の技能指導による効果 前章で類型化された技能の習得過程における生徒のタイプのうち,. 認知型及び,パフォーマンス型の特徴を示した生徒について,それ ぞれに対応する指導をこなった。その結果,認知型及びパフォーマ ンス型の生徒について,指導後に以下に述べるような特徴が認めら れた。. (1) 認知型の生徒. 認知型の生徒に対しては,前述のとおり感覚的な情報に重点を置 いた指導をおこなった。指導後,遂行成績に一時,後退現象がみら れる場合がある。この現象について向山32)は釘打ち作業に関する研. 究の中で「指導の直後の技能はかえって後退する。この後退は練習 により回復させることができるが,教師の説明的な指導だけでは効 果が上がらず,練習による効果のほうが大きいように思われる。」 と述べている。しかし,氏はのこぎり引きに関する研究33)の中では. この点については明確な結果が得られておらず,またそれについて 言及されていない。村冊)はのこぎり引きに関する研究の中で女子. 43.

(46) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. にこの現象を捉え,言及はしているものの解明はしていない。向山 および村田の研究では技能の遂行成績の観点からのみ被験者ののこ ぎりびきの技能を評価している。本研究では遂行成績が後退した被 験者(被験者No.3)は認知的なタイプに属しており,その行動観 察と内観聴取から,手順や方法に関する表象はできるが行為がとも なわない場合と考えられる。つまり,認知的な処理に関しては問題 ないが,知識と行為をつなぐ操作および,随意的運動制御能力に問 題があるように思われる。しかし,技能の図式の形成が進むにした がって,手続き化された知識が随意的運動制御能力と円滑に結合さ れ,その結果,スキーマが形成され,行為が巧みになり,遂行成績 も向上している。つまりこのタイプの生徒には技能の図式の形成を 支援するための指導が必要であると考えられる。被験者No.5につ いては,技能の図式の形成を支援する指導が効果を上げたものの例 である。3回の試行で遂行成績が漸増する学習曲線を示している。 これについては,被験者No.5の操作が合理的な操作となっていな い(合理的な切断の方法を知らない)点にあると思われる。つまり,. これらについての知識が認知的にも,技能の図式としても獲得され ていないとためと思われる。さらに,新たな合理的な操作の方法を 宣言的知識として与えても,遂行に移行することが巧みでないため,. 技能の図式の形成度,あるいは遂行成績が後退したものと推測され. 44.

(47) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. る。. (2)パフォーマンス型の生徒 パフォーマンス型の生徒には宣言的知識および手続き的知識等,. のこぎり引き操作の正しい知識を示す指導がおこなわれた。いずれ の被験者も指導された内容が遂行中に想起されていたことが事後の プロトコルよりあきらかになった。新たに知り得た知識を利用して,. 今までいだいていた,のこぎり引き技能に関する技能の図式を修正 することにより,技能の図式の形成度が退行したものと考えられる。. このことは,図9に示されるとおり,被験者No.7と被験者No.23に ついて現われている。被験:者No.13はのこぎり引きの経験がなく,. 合理性に欠ける操作方法をとっていたため指導後はそれを修正する ことによって,著しく遂行成績が向上したものと考えられる。被験 者No.7や被験者No.23のように,認知的な指導を受けずに経験(練. 習)を繰り返しても技能の図式の形成度は向上するが,遂行成績は さほど向上していない。また,指導前までに形成された技能の図式 を再構築する必要がある場合,すなわち,指導前の誤った方法を修 正するときに,技能の図式の形成度が高いほど修正が困難である,. と考えることができる。またその困難さが技能の図式の形成度,あ るいは遂行成績の後退現象として現われるものと考えられる。被験. 45.

(48) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 者No.7の場合, 「指導直後の試行では刃を大きく使うことを強く意. 識していたが,次の試行では先の試行がうまくいったので,刃を大 きく使うことをあまり意識せず,他のことを考えていた。」といっ. た報告を得た。すなわち,この報告と図21の被験者の試行の過程 をたどると,認知的な操作が遂行を制御していることが推察できる。. このように認知的操作を遂行に移し,その結果からまた,認知的操 作をするという行為は,宣言的知識を被験者自身の技能の図式に組 み込む操作の過程でおこなわれる試行錯誤であると思われる。した がって,認知的操作と運動的操作のずれをなくする試みが技能の向 上に影響を与えるものと考えることができる。 パフォL…一マンス型として抽出された,3人の被験者全員が認知型. に移行している。このことは,被験者が指導された内容を従順に受 け止め,これを忠実に実行しようとした結果,意識が指導された内 容に集中し,認知的処理が優先され,認知型に移動したものと考え られる。また,外部からの宣言的な情報が与えられていない場合,. 総じてパフォーマンス型は認知的操作をすることが少なく,無意識 的なフィードバックから反射的に遂行をコントロールしている場合 が多いものと思われる。. 46.

(49) 認知科学的アプロV一・Eチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 3.4.3 技能的課題の指導法. 生徒の技能習得の過程は認知的な操作と運動的な操作を合わせた 技能の図式の形成を追及することによって明らかにされた。その過 程は,運動的な操作中心から認知的な操作中心へ,あるいは,認知 的な操作から運動的な操作へ,あるいは再び認知的な操作へと生徒 の内的操作の状態が複雑に移行し,生徒の個性,経験,運動制御能 力,環境によりさまざまである。そこで,生徒の技能習得を支援す る方法として,まず,個々の生徒にはその技能習得の状況に応じた 指導をおこなうことが重要である。このことは実際の教育現場では 下間巡視において,教師の経験的な勘によって日常的におこなわれ てきた。本研究の結果より認知的な操作のつまずきと運動的な操作 のつまずきとに分けて診断し,欠如した方に重点をおいて指導する ことによって,生徒の技能習得に有効に作用することができたと考 えられる。一方,学級全体の指導の場では,技能的な課題の特質を,. 認知的な操作の側面,運動的な操作の側面の両面から分析し,両側 面の習得の困難度,効果的な配列等を勘案して指導計画を作成する ことが:重要であると考えられる。先行研究においては指導法と技能 の習熟との関係について調査されたものは多くみられる。たとえば,. 村田16)は指導法の及ぼす学習効果への影響のとして,のこぎりびき. について,予め試行経験をもたせた後に,教師のモデル行動を試範. 47.

(50) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. する方法が,試行経験なしに試範を行うより有効的であることを指 摘している。このことは,実験的に検証されているが,さらに生徒 の技能の図式の形成の状況などの認知的な検証により,宣言的な知 識,試範,および試行の時期や方法等,より有効な指導法について 明らかにされるものと考えられる。. 3.5 結言. 本研究は木材加工の教材である,のこぎりびきを取り上げ,技能. の図式の形成過程を7項目からなる構成要素に分析し,それぞれの 生徒の遂行について調査した。技能の図式の形成度と遂行結果の成 績を比較し,個々の生徒を類型化し,各タイプに応じた指導をおこ なった。これによる影響と生徒の技能の図式の形成状態を分析した。. その結果,以下のことが明らかになった。. 1.のこぎり引きの技能においても,生徒の技能習得の状態を認 知型の状態とパフォーマンス型の状態に区分することができた。. 2.その判断要素は,遂行の結果生じた対象作品の評価と遂行時 の行動分析,および生徒の内観から得ることができる。. 3.認知型を示した生徒に対して,運動制御を支援する指導をお. 48.

(51) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. こなうと技能の図式の形成度が向上した。 4.パフォーマンス型を示した生徒に宣言的,および手続き的な,. すなわち主として知識による指導をおこなうと,技能の図式の 形成度は後退するが,遂行成績は向上し,認知型に移行した。. 5.技能的な課題における指導を受けた生徒は技能の図式および 遂行成績が一時後退することがある。. 6.指導後の一時後退現象は生徒の内部における技能の図式の再 構築が原因であると推測される。. 7.これらの結果を踏まえて,技能的な課題は,生徒の技能の図 式の形成の状況に応じた指導をおこなうのが有効であると推察 される。. 49.

(52) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 第4章 結論 技術科においては,過去に科学的論理性を欠く物作り主義の傾向 があるとの批判を受けた時代があった。その反省から工学をはじめ 各専門分野の論理的な体系を背景に指導内容を構築する試みがされ るようになった。物作り主義の製作課題の操作結果のみを重視した 授業方針への批判は的を得ているが,生徒の実践的な活動をなくし て座学に徹することを意図したものではない。むしろ技能の習得を 含む実践的な課題が体系化され,効果的に配置されることが望まし いと考えられる。また,このことは人間の全的発達の観点からも必 要な課題であるといえる。しかし,技能学習について,その意義と 枠組みは必ずしも明確にされているとはいえず,またその内容も体 系的な配置が考慮されているとは思えない。そこで,技術科教育に おける技能学習の位置づけの為の資料が必要であると考えられる。. しかし,従来の技能の研究は外的条件と結果から明らかにされたも のが多く,このような資料にはなり難い。そこで,技能習得の過程 を認知的な側面から個々の生徒の内的な過程を調査することにより,. これらの基礎的な資料の一つとして提供することを目的として本研 究を行った。. 本研究では,情報処理論的立場をとり,認知モデルに基づいた独. 50.

(53) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 自の技能におけるパフォーマンスの判定を試みその結果を検討した。. 本研究で明らかになったことは以下のようである。. 第1章は,従来の研究から問題点を明らかにし,本研究の目的を 考えた。また,情報処理論的立:場から技能の発揮される:場面の認知. モデルを仮定した。技能遂行に関するスキーマを「技能の図式」と し, 「技能の図式」とは「言語的な形式で伝えられた技能に関する. 情報を,独自の非言語的な水準で個々の運動に融合すること」と考 えた 。技能の図式が形成されると,協応化,自動化,及び運動感 覚フィードバックに関係した特徴が表われ,変化のレベルを技能の 図式の形成度とした。. 第2章は,生徒が未経験である「たがねによる板金の切断」場面 を取り上げ,技能の図式の形成度の判定を試みた。スキーマ形成に よる内的な変化はプロトコル法により,また外的な変化にはVTR録 画の観察により判定をおこなった。また,従来の遂行結果の判定と 比較し,独自の分析方法により検討し,以下のようなことを明らか にした。. 1.遂行成績と技能の図式の形成度は試行回数とともに向上した。. 2.生徒の技能習得の過程の違いからバランス型,認知型,及び パフォーマンス型の3つのタイプに分けることができた。. 3.中学校技術科の技能の習得に関する課題に対して遂行成績及. 51.

(54) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. び技能の図式の形成の,両面から指導と評価を行うことが必要であ ることが明確になった。. 第3章は, 「のこぎりびき」場面を取り上げ,技能の図式の形成. 度と遂行成績を調査した。さらに各々の被験者に応じた個別の指導 をおこない,その成果を技能の図式の形成及び,遂行成績の両面か ら分析した。その結果,以下のようなことが明らかになった。. 1.のこぎり引きの技能においても,生徒の技能習得の状態を認 二型の状態とパフォーマンス型の状態に区分することができた。. 2.その判断要素は,遂行の結果生じた対象作品の評価と遂行時 の行動分析,および生徒の内観から得ることができる。 3.認知型を示した生徒に対して,運動制御を支援:する指導をお こなうと技能の図式の形成度が向上した。 4.パフォーマンス型を示した生徒に宣言的,および手続き的な,. すなわち主として知識による指導をおこなうと,技能の図式の 形成度は後退するが,遂行成績は向上し,認知型に移行した。. 5.技能的な課題における指導を受けると技能の図式および遂行 成績が一時後退することがある。. 6.指導後の一時後退現象は生徒の内部における技能の図式の再 構築が原因であると推測される。. 7.これらの結果を踏まえて,技能的な課題は,生徒の技能の図. 52.

(55) 認知科学的アプローチによる中学校技術科の技能習得に関する基礎的研究. 式の形成の状況に応じた指導をおこなうのが有効であると思わ れる。. 以上の結果より,技能の習得レベルは,技能の図式の形成度の 判定により規定できることが明らかになった。また,技能のパフ ォーマンスは認知的な操作と運動的な操作の比重により,認知型,. パフォーマンス型及び,バランス型に類型化できることが明らか になった。. 53.

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