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心理臨床家を養成することと資格取得

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Academic year: 2021

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[巻頭言]

心理臨床家を養成することと資格取得

       発達心理臨床研究センター長  

遠 藤 裕 乃

 長年、心理職の国家資格化に向けて活動されてきた先輩諸氏のご尽力が実を結び、2015年9月、公認 心理師法が成立した。それを受けて本学大学院においても2018年度に公認心理師養成を開始した。発達 心理臨床研究センターで学生研修員として登録している大学院生の多くは、従来の臨床心理士資格に加え て公認心理師資格の取得を目標に日々精進している。  心理職の国家資格が誕生し、心の専門家が社会的位置づけを得るのは望ましいことである。資格はクラ イエントに提供する心理的支援の質保障につながり、我々の専門性に対して対価を得る根拠となる。  一方、心理職が資格化されたことよって失うものはないだろうか。資格養成のカリキュラムが整備され る陰で、葛藤を抱える力、あいまいさに耐える力、圧倒的な喪失や強烈な悲嘆に向き合い続ける力、こう した心理臨床家の根幹となる力を培う土壌が痩せていくのではないか。カリキュラムのキーワードは明示 され、その時間数はカウントされる。しかし、我々がかかわるクライエントの心痛は、キーワードに置き 換えられることを拒み、客観的な計測を許さない。  洋画の巨匠であり随筆の名手でもあった中川一政は、美術学校で画を教えることの根本的問題について 次のような文章を綴っている。  生徒は与えられないから取ろうとする。  飢えた獣はどうしても餌をさがす。  求道心ある生徒は取ろうとする。  与えれば生徒の自発心を封じる。  与えられて満足しているようなものは求道心のない生徒だから、これは問題にならない。  与えられれば得をしたと思う。  そうではない。損をしたことだ。  美術学校の生徒を見よ。みな損をして卒業する。  (出典:中川一政『随筆 八十八』講談社)  心理職の国家資格化を受けて、私たち大学人は学生に「餌」を用意してはいないだろうか。与えること には、学ぶ者の自力を奪うリスクが潜んでいる。資格養成をする側として、カリキュラムに沿って教える ことの逆説を肝に銘じておきたい。

参照

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