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社会福祉理論研究序説 : “科学”からみえる社会福祉理論の視点

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(1)October 2 0 0 7. ―1 0 1―. 社会福祉理論研究序説* ――“科学”からみえる社会福祉理論の視点 ――. 直. 島. 克. 樹**. みに基づいているのかが第一義的に重要となる。. 1.はじめに. 実践を評価し、それを生かすことの意義は揺るが ないが、それは常にある一定の視点(特に科学的. 社会福祉とは、われわれの生活と密接に結びつ. 視点)から言及されているという認識が求められ. き、その生活を科学的に捉えることによって援. ている。また、様々な領域が社会福祉に関心をも. 助・支援を行うことを特徴としている。社会福祉. ち始めており、そういった状況の中で社会福祉が. において、実践が特に重要であり、そこに大きな. 自らの独自性を提示することは、一つの学際的領. 特徴を見出すものであることは否定できるもので. 域を主張する上で必要不可欠なことである。現在. はないが、その実践を可能とする社会福祉の本質. の社会福祉に固有な統一的見解はなく、その点に. 的理解、言い換えるならば、社会福祉とはどう. おいて社会福祉は学際的領域として自らのアイデ. いったものであり、どのような理論的枠組みをも. ンティティを明確にしきれていない状態が継続し. つのかということも等しく重要である。筆者の関. ているのである1)。それはある意味、社会福祉学. 心はこの社会福祉の理論的研究にあることは明確. としての存在の危機ともいえよう。折りしも本年. にしておきたい。. 度の社会福祉学会の大会テーマが、 「あらためて. 2002年に古川が指摘していたことであるが、社. 社会福祉学の固有性を問う」とあることも、筆者. 会福祉の理論研究は閉塞的状態、袋小路的状態に. には偶然の一致とは考えられないのである。従来. あり、先行諸理論を分析しているものもいくつか. の理論のアイデンティティを強調するという点に. みられるが、その問題点と克服が困難であること. とどまることなく、新たな理論の展開を模索する. を指摘 し て い る に 留 ま っ て い る と い う。古 川. 試みが、現在の社会福祉研究に求められると考え. (2002)が『社会福祉学』において新たな理論的. られる。. 枠組みを提起する試みを行ってはいるが、社会福. 本研究プログラムでは、最終的に新たな社会福. 祉の理論的研究の閉塞的状態は現在においてもあ. 祉理論の構築、展開を目指しており、そのため本. まり変化しているとは考えられないし、現在進行. 稿では、社会福祉理論研究の準備段階として、科. 形といえよう。このような状況は、社会福祉に. 学というものに着目し、そこから社会福祉が取り. とって危機的状況を招くことも予想される。すな. うる“科学”的視点を提示することを目的として. わち、近年社会福祉においてはアカウンタビリ. いる。具体的 に は、A. H. チ ャ ル マ ー ズ(1985). ティの重要性が指摘されているが、この役割を果. などの議論を参考に、帰納主義や反証主義で用い. たすためには、科学的であることはもちろんのこ. られる帰納法・演繹法の特徴を明らかにするとと. と、そもそも社会福祉とはどのような理論的枠組. もに、科学史における社会福祉以外での、様々な. *. キーワード:科学性、帰納・演繹法、自己組織性 関西学院大学大学院社会学研究科博士課程後期課程 1)岡村理論(1 9 8 3)は社会福祉の固有性を主張しているものとして、現在もなお大きな影響力をもっているが、そ の本当の価値は未だ十分に認識されていないと思われる。すなわち、なぜ理論成立から半世紀が経過しているに も関わらず、社会福祉原論として位置づけられるのかということはあまり明確にされていないと考えられる。た だ、本稿ではあくまでも社会福祉学理論の研究視点を導き、考察することが目的であり、このことに関しては別 の機会で論じていくつもりである。. **.

(2) ―1 0 2―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. 分野での理論的発展を概観する。結論を先に述べ. このことは、社会福祉の性質上特に重要であり、. るならば、社会福祉の理論、特にその理論が社会. 社会福祉の理論を検討する際の一つの視点ともな. 福祉の本質部分に迫るものである場合、経験に基. りうるものである。. づく帰納法と、論理に基づく演繹法では捉えきる. 社会福祉がその観点として生活に焦点を当てる. ことのできないものであると考えることができる. ことはいうまでもないが、その生活と科学とは密. のである。人間の知的探求にとって、帰納法や演. 接に結びついているものである。国家の発展、社. 繹法が必要不可欠であることは明らかである。し. 会の繁栄には科学技術の成長が大きな役割を果た. かし、科学史の研究が明らかにしてきているよう. している。あらゆる研究活動も、科学的でなけれ. に、これまでの科学の発展は、帰納的に、そして. ばならず、科学的であるがゆえに多くの人の生活. 演繹的に説明できないものである。 “科学”とい. に影響を与えるものとなる。しかしながら、例え. うものは、意味論的側面を考慮に入れなければ理. ば、チャルマーズ(1985)の研究からは、我々が. 解できないものと考えられる。このことは、社会. 科学的であるとしてきた考え方に、大きな注意を. 福祉の理論を検討する際の重要な視点となるもの. 要することが喚起されている。我々が科学的であ. といえる。こういったことからどのようなことが. ると主張するとき、それはある科学的な方法に基. 導き出されるのか。本稿ではこの点についての考. づき研究が行われていることを仮定している。こ. 察を行いたいと考えている。. の科学的とみなされうるある方法に基づいている からこそ、科学性は確保されると考えられるので. 2.科学に対する先行研究. ある。では、我々はいかなる方法をもって、科学 的であると主張し、科学的理論の発展を考えてい. 社会福祉の理論的研究を進めていくうえで、ど. る の だ ろ う か。以 下 で は 主 に チ ャ ル マ ー ズ. のような視点をもち議論を進めていくかというこ. (1985)の研究成果をレビューすることによって. とは、まずもって行わなければならない必須事項. その点を明らかにしていきたい。. である。理論的研究においてこの論証は生命線で ある。近年の社会福祉研究において実証的志向の. (1)帰納主義. もと、EBP などが主張されており、そこでは主に. 科学的方法として最も重要な役割を担っている. 帰納法と演繹法を用いた方法が前提に置かれてい. のが、帰納法と演繹法である。以下の図①は、そ. る。例えば、藤井(2004)は、クライエントだけ. れを簡単に表したものである。帰納的な考え方の. ではなく、一般社会、ソーシャルワーク専門職者. 最大の前提は、科学は観察から始まるということ. 自身に対するアカウンタビリティを担保するため. である。その観察は先入観を持たない観察者が行. にも、ソーシャルワークは EBP に注目していか. うべきであるとされ、この観察から得られた言明. ねばならないことを主張している。そこで、ソー. (観察言明)が法則や理論(普遍的言明)を導く. シャルワークにおける実証的研究を主に量的研究. 基礎を作ると考える。チャルマーズ(1985)の整. と質的研究に大別しており、ソーシャルワークの. 理によれば、有限な数の観察言明から普遍的言明. 研究の全体的な流れとして、帰納法と演繹法が用. を導くためには、以下の3つの条件が満たされる. いられていることを示している。このこと自体非. 必要がある。. 常に重要なプロセスであり、実践を視野に入れた 研究にとって欠くことができないものであるのだ が、社会福祉の本質的部分、社会福祉の理論的検 討を行う場合、後の説明で明らかにするが、それ. ①一般化の基礎をなす観察言明の数が多くなけ ればならない ②観察は多様な条件化で繰り返されなければな らない. が新たな理論的展開を狙う際には、単純にそれを. ③受け入れられた観察言明のどの一つも、そこ. 受け入れるわけにはいかないのである。それはあ. から導き出された普遍的法則と矛盾すべきで. る意味、帰納法と演繹法を用いた論理実証主義と. はない. しての科学的研究の限界とも密接な関係がある。. この条件を満たし、有限の観察言明からたった一.

(3) October 2 0 0 7. ―1 0 3―. 法則・理論. 帰納. 演繹. 観察から得られた事実. 予言・説明 図①. 出典:A. F. チャルマーズ著、高田紀代志・佐野正博訳(1 9 8 5) 『科学論の展開―科学と呼ばれているものは何なのか?―』恒星社厚生閣、p.2 5. つの普遍的言明に進むその推論を帰納的推論と呼. ある(村上、198 6)。そこでは、観察を通じて感. んでいる。そして、帰納的推論によって構築され. 覚から得られる言明が多くなればなるほど、より. た法則・理論より予言、説明されたものが演繹的. 真理に近づくという進歩主義(村上、1976)が前. 推論と呼ばれるのである。演繹法は、論理学とい. 提とされている。ソーシャルワークに対しても大. う専門分野を構成している。演繹とは、例えば、. きな影響を与えた要素還元主義も、こういった. 前提 A が真であり、前提 B が真であれば、結果. ベーコンの考えがガリレオ、デカルトなどを経. C も真であるということを導くものである。しか. て、ニュートンによってその完成をみたものであ. しながら、この演繹では、事実に関する真偽を確. る(直島、2006)。Wolfram(2002)は、こういっ. かめることは不可能である。前提が真であるか偽. た様々な場面で見られる細分化は、それがもつ複. であるかは論理学が決められることではないので. 雑性に直接対処するためではなく、むしろ複雑性. ある。たとえ、実際には偽である前提が含まれて. を避けるためになされていると主張しているが、. いるとしても、結論はなんの矛盾なく導かれ、演. 社会システムや教育システムにも当てはまる要素. 繹法は成立する。つまり、帰納法と演繹法を用い. 還元的な考え方(吉田、1997)が、のちの科学を. る場合、その真と偽とを明らかにしようとすれ. 発展させ、近代化の構築に貢献したことは歴史が. ば、論理ではなく経験に頼らなければならない理. 証明する通りである。. 由はここにある(チャルマーズ、1 985)。演繹法. しかしながら、帰納法には大きな問題がある。. はあくまでもすでに与えられている言明から他の. それは帰納法それ自体が本当に正しいのかどうか. 言明を導くために使われる客観的方法と位置づけ. というものでもある。帰納の原理が科学的である. られるのである。このことから、帰納主義では、. と証明するためのアプローチには主に2つの道が. まずは観察によって事実を確認し、それを帰納的. ある(チャルマーズ、1985)。一つは論理学を用. 推論によって法則・理論を導き、様々な初期条件. いるというものである。しかし、上述したよう. を設定し終わって初めて予言と説明が行えると考. に、演繹的論証をもってしては帰納が正しいこと. えている。これが科学的説明の一般形式であると. は証明できない。ある帰納的推論の前提が真で. されているのである。この科学観は、個人的な主. も、同時に結論も真でなければならないことはな. 観性が入り込む余地はなく、観察も帰納的推論も. いのである。演繹法は、ある前提に基づきそれと. 客観的であるということから信頼性が高いとみな. 矛盾しない結論を導く方法でしかない。よって第. されている。こういった、観察された事実は絶対. 二の道として、帰納の原理が経験から導き出され. 的であり、客観性が確保されている方法こそ科学. るということを示すしかないということになる。. 的であると最初にみなしたのは F. ベーコンであ. 様々な領域において帰納法が用いられ、例えば、. ると言われている。事実に対して最大の価値を置. 光学や天文学などの分野で大きな成功を収めてい. き、理論は事実によって真にもなり偽にもなると. る。しかしながら、こういった点も帰納の原理を. 考える方法は、ベーコン主義とも呼ばれるもので. 正当化することにはならない。18世紀の半ばより.

(4) ―1 0 4―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. 指摘されていることであるが、帰納的論証を正当. こういった帰納的方法の発展は、確率論の内部. 化しようとして様々な経験に訴えることは、帰納. としては興味深いものであるが、科学の本質に迫. の原理を帰納法で証明しようとすることであり、. るものではないということが理解できる。ヒュー. 循環的である。経験に基づき経験を証明しようと. ムはこれによって科学は合理的に正当化できない. すれば、さらに別の経験を用いてという無限の循. と考え、法則や理論に対する信頼というのは、観. 環に陥ってしまうのである。帰納を正当化するた. 察の繰り返しによる心理的習慣に過ぎないとし. めに帰納を用いることはできず、このことは伝統. た。それは T. S. クーン(1971)において、パラ. 的に「帰納の問題」として呼ばれているものであ. ダイムにおける研究者集団の問題として説明され. る。この問題に対しては、未だ明確な答えは出さ. ていることとも結びつく。また、科学が帰納に基. れていない。. づいていることそれ自体を否定する道をとったの. また、チャルマーズ(1985)によれば、帰納的. が反証主義であった(K. R. ポパー、1974)。科学. 推論の条件である、多数の観察、多様な条件化で. が帰納に基づかないということが証明できれば、. の観察というのも疑わしいとする意見がある。多. 帰納の問題は避けることができる。次節では反証. 数のというのは一体どれくらいの数をいうのか曖. 主義とはどういったものなのか、帰納主義を乗り. 昧であるし、多様な条件化というのは、表面的な. 越えるものなのか、さらにその点について考察を. ものを含めて無限にあると考えられる。さらに、. 行っているチャルマーズ(1985)の研究を参考に. 多様な条件を区別するためには、その状況を定義. 明らかにしていきたい。. する理論が必要となり、観察が科学の基礎である とする帰納の大前提を脅かすことにもなる。この. (2)反証主義. 深刻な問題を避けるために導入されたのが確率論. 反証主義者の特徴は、帰納法がもつ前提に対し. である。観察の数が増え、観察する条件の多様さ. て批判することから生じているといっても過言で. が増えるにつれ、導かれた結果の真である確率が. はない。その批判の対象となる前提とは、科学が. 増大す る と 考 え る 立 場 で あ る。M. カ プ ラ ン ら. 観察から始まるということと、観察が知識を導き. (2007)は、こういった確率の科学は、我々の人. だす確実な基礎を生むのだということである。結. 生に馴染みやすい科学だと述べている。ただ、こ. 論から述べるならば、この2つの前提は反証主義. の確率論をもってしても、チャルマーズ(1 985). 者によって否定されることになる。まず、帰納主. が明らかにしているように、伝統的な帰納の問題. 義が前提としている観察についてであるが、これ. は解決されないし、そもそも確率論に基づく普遍. は、観察者が外の世界を直接受け取り、ある対象. 的言明が真である確率はゼロである。普遍的言明. を見た観察者が同じものを見るということがここ. は無限の可能な状況について主張しているもので. では仮定されている。しかしながら、様々な視覚. あり、それを確率で表すことは、有限数を無限で. 実験によってこのことは否定される。例えば2人. 割り算することになる。このことを避けるため. の観察者がいて、その2人が同じ対象を見ている. に、さらに帰納主義者がとった道が、法則や理論. とは限らない。ここに帰納主義の誤りがあるので. に確率を付与するということを諦め、確率を個々. あり、すなわち、観察者の視覚経験は、部分的に. の予測の正しさに向けるということである。これ. は過去の経験、知識、期待などに依存することに. によって個々の予測にゼロでない確率を付与する. なるのである(チャルマーズ、1985、村上、2002)。. ことができるようになったのである。ただ、この. このことは帰納主義の前提を大きく揺るがすもの. 個々の予測に確率を付与するということには無視. である。それぞれの知覚は異なっているという点. できない問題が潜んでいる。すなわち、その予測. を見つけた場合、帰納法の前提にある斉一性が成. が正しいとする確率は、ある法則と理論に依存す. り立たなくなり、帰納法に必須とされる条件を満. ることになるということである。いったん法則や. たせなくなるのである。近い将来、さらなる脳・. 理論が関わることになれば、再び真であるとする. 神経科学の発展により、脳に直接情報を送ると. 確率はゼロにと戻ってしまうのである。. いった人工的に視覚を作り出す技術が実用的段階.

(5) October 2 0 0 7. ―1 0 5―. に入ったとしても、上記の主張が揺らぐことはな. 学史の研究から明らかにしている。それゆえ、反. い。. 証主義では、「理論というものは、人間の知性に. 帰納主義によれば、多数の観察言明から帰納に. よって形成された思弁的で仮説的な推測である」. よって普遍的言明としての法則・理論が導き出さ. とされる(チャルマーズ、1 985)。すなわち、科. れる。個々の観察は観察者の主観的な経験ではな. 学というものは一連の仮説から構成され、我々の. く、客観性が確保された公的な観察言明として言. 世界を正確に表すために提案されるものであると. 語化される。公的な言語と関わるという点におい. する。そしてその仮説は、反証可能なものでなけ. て、観察されたことは何らかの理論と関わること. ればならない。反証主義の大きな特徴の一つとし. になる(村上、2002)。すなわち、帰納主義は、. て、反証可能であればあるほどよい理論であると. 科学は観察から始まるものだという前提のもとで. みなすのである。つまり、反証可能な理論が科学. 正当化されるのであるが、上述したことは、理論. 的なのであって、反証が不可能な理論、例えばフ. が観察に先立つものであるということを明確に示. ロイトの精神分析学などは科学的理論ではないと. している。「一つの観察言明の妥当性を確立しよ. みなされる。また、より多くの反証に耐えつづけ. うとすれば、理論に訴えることが必要であり、妥. る理論ほどよい理論であるともみなされるのであ. 当性をより確かにしようとすれば、ますます広範. る。この反証主義にとって、科学の重要な目標は. 囲な理論的知識を用いる こ と に な る」 (チ ャ ル. いかに理論を反証するかであって、科学における. マーズ、1985)。これによって観察言明が100%正. 進歩はこの反証を繰り返すことによって可能とな. 確であるということは言えず、理論同様誤りがあ. る。反証を繰り返すことによって理論はますます. るかもしれないということになってしまうのであ. 発展していくことが前提とされているのである。. る。概念が必ず経験から導き出されるということ. このように反証主義の考えでは、科学の進歩につ. は、反証主義のこのような主張によって誤りであ. れて、理論はより反証可能性を増大させ、その内. るといわざるをえない。. 容も、提供する情報もさらに大きくなっていくこ. ある種の理論が観察に先立つということは、観. とを仮定している。その結果、修正が行われた理. 察言明を捨てるということではなく、帰納主義で. 論が、その前の理論よりも反証可能性が小さいこ. 言われている観察言明への役割に修正を迫るもの. とは認められないということになるのである。さ. となる。すなわち、観察や実験というものは、あ. らにチャルマーズ(1985)によれば、反証主義で. る理論をテストするため、その理論の説明の幅を. 重要なことは、上述してきたような仮説の反証の. 広げるために行われるものとなるのである。理論. みによって科学的進歩が達成されるということだ. は誤っているかもしれず、観察に誤った方向性を. けではないという点である。大胆な推測の確証、. 与えることもありえるので、こういった場合に. 用意周到な推測の反証ということによって科学に. は、むやみに観察を繰り返すのではなく、理論を. おける進歩が達成されるのであり、例えば、アイ. 見直し、修正したり、拡張したりすることが必要. ンシュタインの功績などは前者に属するものであ. となるのである。観察に対する絶対視は建設的で. るとされる。大胆な推測とは、その時代で一般に. はないということである。いずれにせよ、理論が. 受け入れられ確立している科学理論としての背景. 観察に先立つということは帰納主義の考えを大き. と比較してという意味である。そして、この背景. く脅かすものである。反証主義はこの点を明確に. 知識とも言われるものが用意周到な推測でもあ. 示しているのである。反証主義的な考えとよく対. る。このような捉え方は、反証主義が歴史的文脈. 比させられるクーンの考えも、この点に関しては. に依存しているということを示しており、帰納主. 共 通 し て い る と 本 人 も 認 め て い る(ク ー ン、. 義との大きな違いでもある。反証主義では、この. 1990)。. 2つの確証、反証によって科学的進歩が達成され. 反証主義は、観察は理論を前提とし、理論から. ると考えるのである。. 導かれるものであるということを認めている。村. しかしながら、この反証主義においても、観察. 上(2002)も、このことは否定しようがないと科. 言明が理論に依存し、誤りうるものであるという.

(6) ―1 0 6―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. ことで、そ の 主 張 が か な り 危 う い も の と な る. いる。それに対して反証主義は、純粋な観察とい. (チャルマーズ、1985)。反証とは、観察言明から. うのは不可能であり、理論があらゆる観察に先立. 理論を構成している普遍的言明を検証し、その矛. つものであることを前提に置く。科学における理. 盾点を示すことで、仮説としての理論を発展させ. 論というのは仮説であって、反証されない限りと. ていくものであるが、ここまで指摘してきたよう. いう暫定的なものであり、一度反証されるとその. に真なる観察言明など存在せず、理論が常に否定. 理論は否定される。反証主義ではその点に関して. されるとは限らない。反証主義では理論の受容は. 質的差異を認めているのである。大胆な推測の確. 一時的なものであり、反証は決定的なものとして. 証も科学の発展に寄与するものと考えられてはい. 考えられているわけであるが、理論の否定も決定. るが、ここでの確証は絶対的なものではなく、相. 的ものとはなりえない。反証主義では、この点を. 対的意味での確証であるからである。しかし、こ. 考慮し、観察言明は公的なものと、私的なものと. れら帰納主義、反証主義ともに、観察言明が理論. に区別されるものであるということを主張してお. に基づいているものであり、それゆえ誤ることも. り、これによって、観察言明は現在の科学の発展. あるという指摘によって、その科学観の基盤が危. 段階において暫定的に受容可能であるとする。た. ういものとなるのである。. だ、このように分類したとしても、観察言明が誤. チャルマーズ(1985)は、反証主義が帰納主義. りうるものであるという点には変わりはない。絶. に与えた批判は価値があるものとして評価する一. 対的に確実な観察上の基礎などないので、決定的. 方、科学理論の発展の歴史を振り返ってみたと. な反証は不可能である(チャルマーズ、1 985)。. き、もし反証主義が主張するような方法論が厳密. 絶対的な観察言明は存在しえないのである。実. に守られていたら、科学理論は現在のように発展. 際、科学理論といわれるものは、単一の言明では. しなかったと述べている。ニュートンの場合も. なく、普遍的言明の複合体として存在しており、. ボーアの場合も、マックスウェルの場合もコペル. 理論を実験的にテストする場合、実験装置に関す. ニクスの場合もそうである。分子の存在を証明し. る補助的仮定、初期条件などを付け加えることが. たアボガドロも、カオス現象の生みの親とされる. 必要である。仮に観察によってその結果が理論の. ポアンカレも、1 00年経ってその成果が花開いた. 予測する結果と異なっていても、このような前提. 熱力学のギブズ(大江、2004)もそうである。こ. のどれかが間違っていることも考えられる。しか. れらの理論はその当初、反証されていたにもかか. もテストの状況が複雑化してきている今日におい. わらず捨てさられることなく、長い年月を得て評. て、そのどの前提が間違っているかを特定するこ. 価されたのである。チャルマーズ(1985)は、新. とは非常に困難であり、理論が決定的に反証され. しい理論における初期の定式化の中で、不完全で. ないということはほぼ間違いがないといえるので. はあるが新しい概念が含まれているということを. ある。. 示している。ガリレオの大きな貢献は、ニュート ン力学の基礎となっていることからも分かるよう. (3)先行研究のまとめ. に実は力学にあるのだが、そこでの力や慣性とい. 以上、主にチャルマーズ(1985)の研究成果に. う概念は注意深い観察や実験を行って導き出され. 基づき、帰納主義と反証主義についてそれぞれ述. たものではないのである。すなわち、帰納主義的. べ、その特徴と問題点を明らかにしてきた。帰納. に導き出されたものではない。また、理論の反証. 主義の基礎は観察にあり、その観察言明から一定. の結果導き出されたものでもない。この歴史的事. の条件を満たした帰納的推測によって普遍的言明. 実は、帰納主義や反証主義の科学観とは明らかに. としての法則・理論が生み出されることになる。. 異なるものである。村上(1986)も述べているよ. そしてそこから演繹的推論が行われ、ある現象に. うに、科学における理論的発展の歴史は、新たな. ついて予言や説明がなされることになる。そこで. 「事実」群が急激に入手された結果では説明する. は、科学は全く先入観を持たない観察者による観. ことができないのであり、以前まであった「事. 察から始まるということが大前提として存在して. 実」群を別の概念枠で再編成することによって成.

(7) October 2 0 0 7. ―1 0 7―. 立しているのである。特にコペルニクスはその典. なる。3者の分離が生じ、 “科学”が独立的に考. 型といえる(村上、1986)。「事実」が同じでも、. えられるきっかけが生まれたのである。それは、. その背景となる意味空間の違いが、別の概念枠を. 人間中心的な発想を強化し、さらにアメリカの独. 構築し、導かれる内容に決定的な違いをもたらす. 立戦争、フランス革命の成功などにより、人間が. のである。すなわち、主な科学理論の進歩は、帰. 社会を発展させることができるという進歩主義的. 納主義や反証主義ではつかむことのできない構造. 発想を生み、科学はそれに貢献できるものとし. をもっていると考えられるのである。この点に関. て、技術と密接に結びつく世俗化が起こったので. しては ク ー ン の 議 論 も 参 考 に な ろ う。ク ー ン. ある(村上、1980)。ここには間違いなく、意味. (1990)は反証主義が主張する事実のもつ理論依. 論的転換があった。 “科学”には常にその意味空. 存性には同じ立場を示しているが、この反証が現. 間が存在しており、その意味空間が違えば、同じ. 実的に起こることは、彼の枠組みで説明するなら. 事実もまったく違った内容で描かれることにな. ば、パラダイム革命に結びつく特殊なものであ. る。このことは何も宗教的側面に限ったことでは. る。そこに上記で説明した帰納主義や反証主義で. なく、我々の文化、そして研究にも当てはまって. は、理論的発展を説明しえない部分があることを. くることである。社会の主流を占める意味空間. 認めているのである。クーン(1971)によれば、. が、個人や小さな集団がもつ意味空間と異なるこ. 理論に大きな変化が起きるパラダイム転換には、. とは大いにありえることである。仮に社会福祉の. 社会的側面に加えて、専門家集団の心理的側面も. 立場から考えるのであれば、そういった意味空間. 大きな影響力をもつのである。それは理論を考え. から生まれる差異が、機能的に非常に大きな問題. ていく中で、価値的・意味論的側面も無視できな. となり、その点に対して機能的に働きかけること. いということでもある。. によって、充足を試みる一連の社会福祉実践がみ. 村上(2002)は、西欧近代“科学”と現代の科. えてくる。また、研究の前提とする意味空間が違. 学とを理解するためには、キリスト教を媒介させ. えば、同じ事実でも結論が異なってくることもあ. ることが有効であることを示している。現代の科. りえる。例えば、理論は、その前提とする意味空. 学の構造は、キリスト教のもつ心身二元論の構造. 間如何によってまったく違ったものともなりうる. は残しつつも、キリスト教のもつ神による目的論. であろう。岡村理論と孝橋理論でそれぞれ同じ事. 的原理を排除し、機械論的原理(因果論的原理). 実を説明しようとすれば、まったく違った内容が. を取り入れていくことによって成立したものであ. 明らかになる。こういった“科学”としての説明. る。それは聖俗革命(村上、1976)とも呼ばれ、. は、意味空間と関連させることが必要であると考. “科学”が世俗化されていく過程でもあった。そ. えられるのである。 “科学”が意味の空間を無視. の点について、特に啓蒙思想が大きな役割を果た. することは不可能であり、その重要性を認識して. し た の で あ る(村 上、1 980)。す な わ ち、元 来. いくことが、社会福祉にとっても必要となってく. “科学”とは、(伝統的なギリシア哲学(思想)と. ると考えられる。この意味の空間を考慮に入れて. 融合した)キリスト教思想に基づく神への賛辞が. いくことこそ、社会福祉の“科学”を考える糸口. 込められたものであった。機械論的な考えを示し. であり、ここから、社会福祉理論を検討するため. たデカルトでさえも、その最初の運動の始まりは. の視点について考察していくことが可能となるの. 神が引き起こしたものであるとしていたし、運動. である。. 論のニュートンも常に神の力を認めていた。現在 の科学の礎を築いたとされる彼らでさえも、神と. 3.社会福祉理論研究の視点. いう存在をその“科学”体系の中に常に含ませて いたのである。哲学や神学は、 “科学”と一体の. 近年の社会福祉の世界では、実証的研究が行わ. ものであった。しかしながら、J. ロックに代表さ. れ、帰納と演繹に基づいた研究が進んでいる。筆. れるような啓蒙思想が生まれてくることによっ. 者はその点について批判を試みているわけではな. て、“科学”の捉え方に変化が生じてくることに. い。当然それは社会福祉の実践を発展させていく.

(8) ―1 0 8―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. 上で必要不可欠なものである。しかしながら、上. うにこれらが結びつけられるのかは明らかにされ. 記までの先行研究から明らかになっているよう. ることはない。なぜならば、繰り返しになるが、. に、科学における理論的発展というのは、意味論. 科学とは一切の意味論的側面を排除し、構造と機. 的側面が関与しているといえる。論理実証主義で. 能の関係を明らかにするものと一般的に考えられ. はない側面も考慮に入れねばならないのである。. ているからである。純粋な客観性の確保が前提と. 特に社会福祉の技術論も含めた社会福祉理論で. されているのである。そういった中で社会福祉. は、そのことは極めて大きな意味を持つと考えら. は、自らは価値に基づく“科学”であると主張し. れる。この点に関し考察を行っていくことが本稿. ていることは、重要な認識であろう。. の目的であり、社会福祉における理論的研究を進. チャルマーズ(1985)はラカトシュ(1986)の. めていくうえでの視点を切り開く意味で重要であ. 議論を高く評価しているが、ラカトシュ(1 986). る。. は、科学の研究プログラムには絶対反証されるこ. 社 会 福 祉 の 構 成 要 素 を 考 え て み る に、山 縣. とのない堅い核となる前提があることを示してい. (2000)は、主に4つの側面に分類できることを. る。その点に関して、例えばコペルニクスとプト. 示している。一つ目の側面は社会福祉が対象とす. レマイオスの議論などは非常に分かりやすい。現. る問題であり、いわゆる生活困難や生活問題とい. 在では地球が太陽を中心に自転しながら廻ってい. われるものである。二つ目の側面はそのまわりに. ることは当たり前であるが、コペルニクスが活躍. ある環境であり、問題を解決する資源である。そ. した当時ではプトレマイオスの地球中心説が当た. して三つ目として、その両者を結びつけ、問題を. り前であった。この地球中心説は、実はかなり計. 解決する援助者・援助技術である。この援助技術. 算が難しいものであり、そのため様々な工夫が時. に方向性を与えるのが四つ目の側面としての援助. 代ごとに施されながら、その中心的な命題である. 観や福祉観、人間観といわれるものである。科学. 地球を中心に太陽も含めた他の惑星が廻っている. では、意味論的側面は排除される傾向にあること. ということは決して変更されることがなかった。. はすでに述べた。ベーコン主義ともいえるこの考. 理論の適用に関していくつかの問題があったが、. え方は、現在でも尚科学の世界を支配していると. それはあくまで初期条件などの問題点と考えられ. いっても言い過ぎではない。科学=没価値性と. ていたのである。村上(2002)の研究からは、コ. は、我々が無意識的にも認識している点である。. ペルニクスの太陽中心説が突然現れたわけではな. 社会福祉の構成要素でこのことを考えるならば、. いことが明らかにされているにしても、絶対に否. 対象となる問題とそれを取り巻く環境、資源は構. 定されることのなかった前提が一度否定される. 造的側面であり、その両者を繋ぎ、調整する援助. と、大きくその理論体系は変貌を遂げるというこ. 者、援助技術が機能的側面、援助観・福祉観・人. との好例でもある。実際、プトレマイオスとコペ. 間観を意味論的側面と考えることが可能である。. ルニクスが手にしたデータは、ほぼ同じであった. その中で、客観的側面を主張できるのは機能的側. のである。この科学史から理解されることは、こ. 面に絞ったときのみである(村上、1986)。しか. の理論の変化は、新しい事実を帰納的に推論した. しながら、例えば、岡 田(1 971)も 社 会 福 祉 は. 結果導かれたものではないということ、そして、. ヒューマニズムという第一次的な価値の上に成り. ある前提となる準拠枠が理論の発展に大きく貢献. 立っていると述べているように、社会福祉は意味. するということである。天文学のケプラーや生理. 論的(価値的)側面が重要であるとの認識があ. 学のヴェサリウスなどがそのよい例である(村. り、この点は無視できない部分でもある。社会福. 上、2002)。そして、村上(2 002)が明らかにし. 祉が一般的に科学といわれているものに違和感を. ているように、近代科学に潜む意味論的な部分. 覚えるのは、このズレがあるからだと考えられ. が、その科学に与える影響を無視できないという. る。科学的であるということと、客観的であると. ことである。上記したコペルニクスの例に限ら. いうことが等しいと考える中では、この意味論的. ず、ある概念枠を採用することは人間の思考に決. 側面は付属的な役割しか果たさず、また、どのよ. 定的な意味を与え、そこから旧来の事実群が捉え.

(9) October 2 0 0 7. ―1 0 9―. なおされることによって新たな理論的展開が生じ. 討する“科学”的視点となりうるのである。それ. てくるのである。この概念枠の採用は、意味論的. は、それぞれ切り離して議論できるものではな. 側面の影響を考慮に入れなければならない。そし. い。三者関係を明らかにするためには、観察帰納. て、それが構造的・機能的側面と関連してくると. 法・仮説演繹法・意味解釈法の変換理性(今田、. いう三者関係が重要なのである。. 1986、2000、2005)から、社会福祉は捉えられな. 社会福祉というのは人間と関わり、その生活を. ければならないと考えられる。従来の理論に対す. 観点とするものであるから、上述してきたことは. る先行研究は、この点に関してあまり関心を払っ. 非常に重要な点といえる。科学の先行研究として. ているように思われない。例えば、松井(1 982). 今回概観しているチャルマーズや村上は、主に自. は先行理論を「マルクス主義に準拠した福祉論」. 然科学に対してその関心の比重をかけているので. と「構造機能分析に準拠した福祉論」とに分けて. あるが、その議論は決してその中だけで収まるも. いるが、構造と機能と意味との関連性に関する議. のではない。むしろ、 “科学”そのものの根幹に. 論には至っていない。また、古川(2002、2004). 関わるものといえる。“科学”とは、意味論的側. は、本質論争以来続く政策と技術との問題につい. 面を考慮に入れたもののことを示しており、それ. て触れ、その統合に対する検討への道を4つに分. を無視したものは単なる知的営為でしかないので. 類しているが、上記のような科学的思考の視点に. ある(村上、1980)。確かに客観性の確保が重要. 対する指摘はみられない。社会福祉を読み解く視. 視され、その取り組みが様々な成功を収めてきた. 点として、政策と技術は重要ではあるのである. ことを否定できないが、それでもなお、その背後. が、そういった中の基本要素を探り本質を明らか. にある意味空間は無視できない。それを無視した. にすることから理論に取り組むのではなく、それ. 視点では、理論的発展はない。そういった視点か. をも含む構造・機能・意味のダイナミクスがどの. ら捉える社会福祉学の理論研究の重要な問題は、. ような原理を持つのかという視点が、これからの. 構造的側面、機能的側面、意味論的側面との力動. 社会福祉の理論研究に早急に求められる。この視. 的過程に対する原理、あるいは準拠枠を持ってい. 点は、古川(2004)も指摘しているように、近年. ないことにあると考えられる。山縣(2000)の示. の科学研究の最先端でもある、人文科学や自然科. す社会福祉の構成要素を参考に考えるならば、図. 学といった伝統的な分類枠にとらわれない試みと. ②に示すように、問題・資源としての構造、援助. いうものとも通ずるかもしれない。筆者は、 「政. に関連する機能、そして援助観・福祉観・人間観. 策と援助を一体的に把握することなしに社会福祉. としての意味のダイナミクスを明らかにしなけれ. 学の研究はありえない」とする古川(2004)の指. ばならないということである。この社会福祉を捉. 摘には同感である。そのためにも、ある単一の学. えるダイナミクスの原理こそ、社会福祉理論を検. 際領域からの枠組みではなく、まずは、構造、機 能、意味という側面から現れ、あらゆる“科学” を貫くと考えられる原理を社会福祉の理論的研究. 援助観など (意味論的側面). の柱に据えることが必要不可欠であると考えられ るのである。この原理こそ、本研究プログラムの 基盤となる視点でもある。. 問題 (構造的側面). 資源 (構造的側面) 援助者/援助技術 (機能的側面). この点に関し、重要と考えられるのが、変換理 性 と い う 考 え 方 で あ る(今 田、1 986、2000、 2005)。変換理性とは、理性的手続きと呼ぶ現象 についての認識を存在に接続する“科学”の方法 を具現化するものであり、 「仮説・観察・意味の. 図②. 各認識的な構えをそれぞれ演繹・帰納・解釈の方. 出典:山縣文治編(2 0 0 0)『ソーシャルウェルビーン グ事始め』有斐閣、p.1 8を一部改変. 法的手続きによって、反証・検証・了解の可能性 としての各存在(経験)に接続する《メソドロ.

(10) ―1 1 0―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. ジーの三角形》」を基礎とし、科学的活動をその. また、自己触媒によって強化され、新しい秩序の. 三角形を自由に移行する形で成立可能であると考. 形成に至るのであり、それは自己再新でもある。. える(今田、2005)。そこでは、仮説演繹法、観. 重要なことは、持続的に自己再新を図り、自分自. 察帰納法、意味解釈法の3つの方法論によって構. 身を参照する自己言及性という性質をもつ散逸構. 成されるのである。今田(2005)によれば、「仮. 造においては、その自己再新のプロセスそのもの. 説演繹法は抽象的な仮説から命題を演繹し、時空. も相互進化していくことである。このような相互. を超えて成り立つ普遍的リアリティを導くことを. 進化性を有する散逸構造の特徴が自己組織性に認. 特徴とする。また、観察帰納法は具体的な観察. められ、そのダイナミクスは、生物・非生物両者. データを収集し、そこで分析された性質を社会全. を結び合わせるものでもある(ヤンツ、1 986)。. 体(母集団)に一般化することを特徴とし、さら. まさに、社会福祉が依拠すべき原理がここにある. に、意味解釈法は個別でしばしば特殊な事例を選. と考えられるのである。. 択し、そこに社会的出来事の本質を見抜くこと」 に特色がある。そして、この変換理性を基盤とし. 4.社会福祉と自己組織性. 現れるのが自己組織性である。この自己組織性の 原理が働く分野では、法則的な認識に適した一般. 社会福祉は、岡村(1983)が主体的側面に社会. 化可能な現実把握のみでなく、かなり個別で特殊. 福祉の固有性をみたように、個別で特殊な状況に. な要因を組み込んだ現実把握がその対象となる. 関わる側面をもつ。このことは今も尚重要な考え. (今田、2005)。すなわち、対象とする世界から一. であり、この視点を否定することは困難であろ. 定の秩序を取り出すといった従来の視点を A と. う。個別・特殊な現象を捉え、そこに本質を見よ. し、他方、世界は混沌から離れ秩序の分節化が可. うとする側面と、法則的な認識の一般的側面とが. 能であるとする背後仮説をもつのではなく、むし. 絡み合うところに自己組織的現象が起こるのであ. ろ秩序や混沌といった状態は区別が不可能であっ. れば、社会福祉で捉えようとする現象はまさにそ. て、それらは相互に浸透しておりどちらでもある. こにあると考えられるのである。そして、社会福. という逆説的な背後仮説をもった視点を B とす. 祉における主体的側面でも明らかなように、ここ. れば、そ れ ら A、B 両 者 の 間 に は 境(カ オ ス の. でいう意味論的側面は決して主観的なものではな. 縁)があり、そのカオスの性質を理論化しようと. い。そこは二元論が通用しない世界であり、そう. する志向性をもったものが変換理性による自己組. いった視点の下に意味論的側面を捉えなければな. 織性である(今田、2005)。さらに、この自己組. らない。社会福祉は一般に科学といわれているも. 織性は、E・ヤンツ(1986)によれば、生命と環. のとなんとなくズレがあるように感じられると上. 境との相互進化を、二元論を超えたところで把握. 記で述べたが、それは主観と客観が独立したもの. することの出来るパラダイムである。その発展に. として存在するという一つの前提、特に西欧科学. 寄与したのが、196 0年代から70年代にかけて、. の枠組みのもつ科学観(村上、2002)をわれわれ. I・プリゴジンによって進められた散逸構造理論. が持っていることにも由来すると考えられる。岡. の研究である。プリゴジンら(1987)が示したの. 村理論を研究している松本(1999)の考察によれ. は、システムの「ゆらぎ」というものに着目する. ば、岡村理論の「主体性」の原理は独自なもので. ことである。つまり、元来無視されがちであった. あるが、それには西田哲学の影響が認められる。. システムの「ゆらぎ」 、ズレといったものが、実. 戦前に成立した西田哲学は、戦後西欧諸国の文化. はシステムの挙動に大きく影響を及ぼすこともあ. が入ってくる中で、日本の軍国主義化に寄与した. り、ほんの小さな「ゆらぎ」が他の「ゆらぎ」を. として厳しく批判されたものではあるが、西欧に. 巻き込み、そして、大きな挙動となりシステム自. は見られない哲学的意義があることは確かであ. 体を変革してある秩序を形成するというものであ. る。その意義について考察する力量は今の筆者に. る。このどのようなシステムにも常に存在する. は不足している。しかしながら、岡村理論から受. 「ゆらぎ」は、平均的発想に収まるものではなく、. け継ぐべき点の一つは、全てそのままというわけ.

(11) October 2 0 0 7. ―1 1 1―. ではないが、この哲学的意義にあるのではなかろ. ている。ただ、それは西洋の科学的思想を否定. うか。岡村理論が半世紀にもわたり、有効性をも. し、東洋的思想へ移行するということでないと認. ち続ける理由も関連してくると思われる。自己組. 識しておかねばならない。ま た、加 茂(2 003、. 織性を扱う複雑系の研究が東洋的思想に着目して. 2006)が展開している構成主義を取り入れたソー. いる(泉、2003、山崎、2003、藤井、2003、池田、. シャルワークの具体的な取り組みも、その背後仮. 2005)ことからもわかるように、自己組織性は西. 説としてゆらぎや曖昧さを積極的に評価し、その. 欧の思想のみで理解できるものではない。西欧の. 差異化を狙うといった自己組織性の科学観が潜ん. 思想を否定するのではなく、むしろ、その両者が. でいると考えられる。以上のものは、古川の指摘. 合わさって、さらに既存の考え方が洗練されるこ. 以外、ソーシャルワークの理論的・実践的検討の. とが必要であり、そこに新しい“科学”といわれ. 中で自己組織性について触れているものである. る所以が存在するといえる。こういった自己組織. が、社会福祉学の理論研究として自己組織性に注. 性とは、社会福祉の本質に関わるものであり、社. 目していたのが高田(2003)であるといえよう。. 会福祉学の理論研究において、さらなる検討を必. 高田はこれからの社会福祉が捉えていくべき関係. 要不可欠とするものだと考えられるのである。. 性のキーワードのひとつとして自己組織性を挙げ. 社会福祉の領域において、この自己組織性はい. ている。それによれば、社会福祉に関する関係. くつかの文献においてその重要性が指摘されてき. は、①人間と自然の関係、②人間と集団の関係、. ている。例えば、須藤(1999)はソーシャルワー. ③人間と人間の関係となり、生命系として捉えて. クの立場から、近年のシステム理論の研究成果を. いくことが必要である。そのためにも、社会福祉. 評価し、ゆらぎや曖昧性といった自己組織性のも. は以上の関係を自己組織性に着目して理解してい. つ“科学”観が、これからのソーシャルワークの. くことが不可欠であると述べている。残念なこと. 理論・実践にとって重要であることを示してい. に、それは自己組織性が重要であるとの指摘に留. る。鈴木(1999)も、家族システム理論の立場か. まっており、それ以降自己組織性という言葉を用. ら、自己組織性を組み込み、その変換理性を基盤. いたより詳細な検討は行われていない。しかしな. とする自己組織性の理論に基づいた研究を展開し. がら、高田理論の特徴であるエントロピー概念を. ようと試みている。さらに、佐藤(2001)は、こ. もった社会福祉混成構造論(1993)、社会福祉内. れからの社会福祉学の課題として、社会福祉実践. 発的発展論(2003)において、その中の理論的展. 理論のパラダイム転換が必要であり、21世紀は東. 開は、プリゴジンら(1987)の散逸構造論とも結. 洋的思想がその重要さを増してくることを指摘. びつくものがあり、関係性に関して自己組織性に. し、そこで自己組織性の考え方の存在を述べてい. 結びつくのは必然的ともいえる。高田(2003)が. る。谷口(2003)も、エコロジカル・ソーシャル. 強く主張していた共生概念も、この自己組織性と. ワークの検討を行い、これからのソーシャルワー. 関連したものと考えられる。この点については今. ク理論・実践を考えていく上で、自己組織性の考. 後の筆者の検討課題でもある。. え方をもって取り組んでいくことが必要不可欠と. これらの先行研究は社会福祉の領域から自己組. なることを示している。またその中で、この自己. 織性に着目したものであり、その科学観が見える. 組織性が主客二元論の克服とも密接に関わってい. ものである。それは比較的新しく、ほぼすべて10. ることが指摘されている。そもそも主客二元論と. 年以内のものであることを考えてみても、まだま. いうのは西欧的思想の特徴(村上、2002)であ. だゆらぎの発想を取り入れるという初期段階とい. り、佐藤(2001)の議論とも連動してくるもので. えるし、そもそも理論としての社会福祉において. ある。例えば古川(2005)も、文明としての社会. 自己組織性に直接取り組んでいるものはないとい. 福祉を検討する中で、社会福祉とは西洋的近代社. えよう。本稿では、社会福祉理論の先行研究を詳. 会が追求してきた文明の成熟度を示すものであ. 細に検討するのではなく、科学的方法、科学史な. り、現代は社会福祉の中に組み込まれている西洋. どの先行研究より、社会福祉の理論的研究には変. 的近代化の考え方を再検討する時期にあると述べ. 換理性が必要となることを明らかにした。社会福.

(12) ―1 1 2―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. 祉の理論研究は、そのダイナミズムを明らかにし なければならない。どのような構造にもその秩序 に収まらない部分が含まれており、それが内発的 な誘因となって新たな展開を可能にするのであっ て、それは意味論的側面を考慮に入れなければ把 握できない。むしろ、先行研究が示唆しているこ とは、“科学”の本質は常に意味論的側面を考慮 に入れたところにあり、社会福祉はその成立よ り、その“科学”にこだわってきたのである。そ れは、近代が構築してきた科学とは少し趣を異に する部分がある。そして、この変換理性によって 捉えるところには自己組織性の原理が働くが、自 己組織性は、宇宙論、生態学などにも現れる原理 であり、生命系でもある人間が生きていく中の一 貫した原理であると考えられるのである。この自 己組織性の原理こそ、これからの社会福祉の理論 的研究を進めていく上での視点となるということ をここでは主張してきたのである。社会福祉のお かれている危機的な状況を打破するためにも、社 会福祉は、理論的研究の視点ともなる自己組織性 に着目していくことが必要不可欠であると考え る。筆者は、この自己組織性を社会福祉の理論的 研究が拠って立つ準拠枠に据えることが、閉塞的 状態にある社会福祉の理論を、新たな展開に導く 可能性を高めると捉えている。新たな視点から社 会福祉理論に対する先行研究を検討していくこと がこれから課題となってくると考えられるのであ る。 参考文献 古川孝順(2 0 0 2)『社会福祉学』誠信書房 岡村重夫(1 9 8 3)『社会福祉原論』全国社会福祉協議会 藤井美和(2 0 0 4)「ヒューマンサービス領域における ソーシャルワーク研究法」『ソーシャルワーク研 究』2 9 (4) 、pp.2 8―3 5 A. F. チャルマーズ著、高田紀代志・佐野正博訳(1 9 8 5) 『科学論の展開―科学と呼ばれているものは何なの か?―』恒星社厚生閣 村上陽一郎(1 9 8 6)『近代科学を超えて』講談社学術文 庫 村上陽一郎(1 9 7 6)『近代科学と聖俗革命』新曜社 直島克樹(2 0 0 6)「ソーシャルワークにおけるシステム 理論再考―自己組織性の視点からの考察―」関西 学院大学修士論文 S. Wolfram(2 0 0 2)A New Kind of Science, Wolfram. Media Inc 吉田和男(1 9 9 7)『複雑系としての日本型システム―新 しい社会科学のパラダイムを求めて―』読売新聞 社 M. カプラン、E. カプラン著、対馬妙訳(2 0 0 7)『確立 の科学史―「パスカルの賭け」から気象予報まで ―』朝日新聞社 T. S. クーン著、中山茂訳(1 9 7 1)『科学革命の構造』み すず書房 K. R. ポパー著、森博訳(1 9 7 4)『客観的知識』木鐸社 村上陽一郎(2 0 0 2)『西欧近代科学〈新版〉―その自然 観の歴史と構造―』新曜社 T. S. クーン著、立花希一訳(1 9 9 0)「発見の論理か研究 の心理学か」I. ラカトシュ、A. マスグレーブ編、 森博監訳『批判と知識の成長』木鐸社、pp.1 0―3 9 村上陽一郎(1 9 8 0)『動的世界像としての科学』新曜社 大江秀房(2 0 0 4)『早すぎた発見、忘られし論文―常識 を覆す大発見に秘められた真実―』講談社 山縣文治編(2 0 0 0)『ソーシャルウェルビーング事始 め』有斐閣 岡田藤太郎(1 9 7 1)「社会福祉理論の課題」『社会福祉 学』1 1、pp.2 3―3 3 I. ラカトシュ著、村上陽一郎ほか訳(1 9 8 6)『方法の擁 護―科学的研究プログラムの方法論―』新曜社 今田高俊(1 9 8 6)『自己組織性―社会理論の復活―』創 文社 今田高俊(2 0 0 0)「リアリティと格闘する―社会学研究 法の諸類型―」今田高俊編『リアリティの捉え方』 有斐閣アルマ、pp.1―3 8 今田高俊(2 0 0 5)『自己組織性と社会』東京大学出版 松井二郎(1 9 8 2)「社会福祉理論の体系化をめざして― 諸理論と検討(戦後社会福祉の到達水準と今後の 課題―体系化と争点・到達点と分析・課題) 」『社 会福祉研究』3 0、pp.8―1 3 古川孝順(2 0 0 4)『社会福祉学の方法―アイデンティ ティの探究―』有斐閣 E. ヤンツ(1 9 8 6)『自己組織化する宇宙―自然・生命・ 社会の創発的パラダイム―』工作舎 I. プリゴジン・I. スタンジュール著、伏見康治ほか訳 (1 9 8 7)『混沌からの秩序』みすず書房 松本英孝(1 9 9 9)『主体性の社会福祉論―岡村社会福祉 学入門〈増補版〉―』法政出版 泉美治(2 0 0 3)「科学時代と唯識」統合学術国際研究所 編『文明の未来、その扉を開く―近代文明を超え る新しい思考の原型(モデル)を求めて―』晃洋 書房、pp.1 2 5―1 4 3 山崎勇夫(2 0 0 3)「理法を知る」同前掲書、pp.1 4 5―1 6 6 藤井教公(2 0 0 3)「一念三千論の形成と展開―性具説か ら心具説へ―」同前掲書、pp.2 2 1―2 4 6 池田善昭(2 0 0 5)「 『複雑さ』を巡る科学と仏教―一念.

(13) October 2 0 0 7. 三千論における複雑系の問題―」統合学術国際研 究所編『複雑系、 諸学の統合を求めて』晃洋書房、 pp.2 0 1―2 0 8 須藤八千代(1 9 9 9)「ソーシャルワーク実践における曖 昧性とゆらぎのもつ意味」尾崎新編『「ゆらぐ」こ とのできる力―ゆらぎと社会福祉実践―』誠信書 房、pp.2 6 3―2 9 0 鈴木孝子(1 9 9 9)『社会的構成アプローチと家族援助― 新しい福祉臨床のための援助技術―』川島書店 佐藤豊道(2 0 0 1)『ジェネラリスト・ソーシャルワーク 研究―人間:環境:時間:空間の交互作用―』川 島書店. ―1 1 3―. 谷口泰史(2 0 0 3)『エコロジカル・ソーシャルワークの 理論と実践―子ども家庭福祉の臨床から―』ミネ ルヴァ書房 古川孝順(2 0 0 5)『社会福祉原論』誠信書房 加茂陽編(2 0 0 3)『日常性とソーシャルワーク』世界思 想社 加茂陽編(2 0 0 6)『被虐待児童への支援論を学ぶ人のた めに』世界思想社 高田眞治(2 0 0 3)『社会福祉内発的発展論―これからの 社会福祉原論―』ミネルヴァ書房 高田眞治(1 9 9 3)『社会福祉混成構造論―社会福祉改革 の視座と内発的発展―』海声社.

(14) ―1 1 4―. 社 会 学 部 紀 要 第1 0 3号. An Introduction to Social Well-being Theory Studies : A Perspective on the Social Well-being Theory from “Science.” ABSTRACT Traditional ways of studying social well-being theory have not considered the dynamic principle of factors or elements because of the demand that the essence of social wellbeing is only one factor or element. Social well-being has a perspective in which one’s life is structured by several factors or elements. Thus, social well-being theory which is structured by only one factor or element is inadequate. The main purpose of this study is to focus on a “Science” which can guide us towards a new perspective on social wellbeing in order to develop the theory. Using the inductive method and the deductive method is insufficient if we are to explain the development of scientific theory. The development of scientific theory connects to the semantic side : scientific development itself has the dynamics of structure, function and semantics. This fact is important to social well-being which is based on values. In this study the social well-being theory is re-examined using the concept of “Changing Sense”, which has as its basis the hypothesis-deductive method, the observationinductive method and the semantics-interpretative method. It is possible to guide or follow the principle of “Self-organization” using these methods in combination. The principle in question is not dualism, and we need to pay attention also to several disciplines. In order to further develop social well-being theory, we need to focus on the concept of “Selforganization,” which itself is based on the dynamism of structure, function and semantics. Key Words : Science, Inductive and Deductive method, Self-organization.

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