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環境問題に2つの視点を

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Academic year: 2021

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巻頭言

環境問題に2つの視点を

岡山大学副学長 環境保全協議会座長

 千葉喬三(岡山大学大学院自然科学研究科教授)

 中国周代,「杞」の国の人々は,空を見上げては,この天がいつかガラガラと崩れるのではない か,といつも心配していたという。よく知られた故事「杞憂」である。「まず起こり得ない」こと, そのことから「取り越し苦労」の意に用いられてきた。私たちの生活・生命を支えるさまざまな 「環境」が崩壊する,それも地球規模で起こるなどということはつい数十年前までどれだけの人が 想定したであろうか。まさに杞憂であった。  予見はあった。1972年ローマクラブが発表した「The Limits to Growth」は,発展を重ねてきた 人間社会が,「人口増加」,「資源枯渇」,「廃棄物汚染」などにより早晩衰退を余儀なくされること を予測した。このシミュレーションは,よくある「予言」の類とは異なり,根拠と過程を明示して 科学的になされたことにも意義があるが,なによりも大筋において正鵠をえた地球未来シナリオを 描いて見せたのは見事であった。ただ,時間軸上のズレはあり,とくに「廃棄物汚染」,いいかえ れば「環境問題」の推移は予測より大幅に早く進行しつつある。  このシミュレーションはよくできているが,重要な2つの視点(要素)が欠けている。この欠損 は今日の環境問題への対応においても基本的に同様である。その一つは,生物システムの無視ある いは軽視である。環境問題の客体である「自然」には物理・化学的自然だけではなく生物的自然が あり,両者の相互作用系を通じて地球そのものが形成されてきたことを忘れてはならない。そして, 早くC.Darwinが指摘したように,生物界は「Web of Life」として存在し,人類はその1構成要素に 過ぎないからである。  他の一つは,人間特有といってよい人文・社会的な価値やシステムを説明変数として取り込めな かった点である。他の生物には類をみない欲望とそれへの勝手な価値付け,人間によって方便とし て生み出されながら人間を支配する「経済」と称する妖陛。これらがいかに御しがたいものである かは,温暖化防止が政治問題化し,米国の大手企業による粉飾,民族・宗教紛争などをみれば瞭然 である。これらすべてが環境を破壊し,地球を終焉へと駆り立てる要因である。  現在進行中の環境問題といわれるものの殆どは自然科学的には解決・解消しうるであろうと考え られるが,それを実効化しえないのは,この人文・社会的な価値やシステムの存在であるといって よい。新しい地球成長パラダイムの構築を急がねばならない。いまは,その手がかりも見えない状 態であるが,一つの(というより唯一の)ヒントは生物的自然の特性,生物界が40億年の膨大な時 間をかけて構築してきた見事な存続システムにあると考える。 一1一

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